商品の機能性を理解してもらえるような台所消耗売場を作ろう

食器洗い用のスポンジや食品にかぶせるラップ、ごみ袋など「台所用消耗品」は、洗剤と並んでキッチン関連カテゴリーの中では市場規模の大きな領域である。また、機能性の高い商品も多く情報発信が重要となる。このカテゴリーの利益を最大化するためには何が大切か、日用品の大手中間流通業ジェムコに取材した。(月刊マーチャンダイジング2020年1月号より編集の上転載)

「ラップ・ホイル」「ポリ袋」は台所消耗品の2大カテゴリー

家庭日用品の中間流通業ジェムコ(本社/群馬県佐波郡、代表取締役黒田克己氏)では、調理器具から食器用洗剤、スポンジなどキッチン回りの日用品を幅広く扱っている。今回はその中でも同社が「台所消耗品」と位置付けるカテゴリーについて取材した(台所用洗剤を除く)。

図表1は台所消耗品を構成するカテゴリーと市場規模および有力小売業が各カテゴリーにどの程度のスペースを割いているかを示している。この中では「ラップ・ホイル」カテゴリーの市場規模がもっとも大きい。ラップ・ホイルカテゴリーにはラップ、アルミホイルに加え、いずれも構成比はひと桁だがジッパーバッグ、クッキングはシートなどが含まれる。

食品保存やレンジアップの際に使われるラップはこのカテゴリーの中で約60%を占める主要アイテムで、素材別に「ポリ塩化ビニリデン」(84.4%)、「塩化ビニル樹脂」(その他と合わせ6.1%)、「ポリエチレン」(9.5%)の3つに分類できる(カッコ内はラップ内金額構成比/2018年インテージSRI)。

ポリ塩化ビニリデンは分子間の隙間が小さくバリア性が高いので、ニオイ、湿気、空気を通しにくく耐熱性も高い。サランラップやクレラップなどシェアの高い有力ブランドがこの素材を使っている。コストがかかるので他素材の商品と比べると単価は高くなる。

塩化ビニル樹脂は伸縮性と耐久性が高いのが特徴。よく伸びて丈夫なので食品スーパーで生鮮食品をラップしたり、麺類の出前で器にかけたり業務用として使われることが多い。

ポリエチレンはもっとも安価で酸素を通しやすい特性がある。耐熱性は弱いので電子レンジには適さないという難点もあるが、酸素を通しやすいので野菜や果物など鮮度を保つために酸素の供給が必要な食材には向いている。コストが低いのでプライベートブランド(PB)商品の素材に使われることが多い。

2番目の市場規模を持つ「ポリ袋」とはごみ袋や流しに置く水切り、保存用のポリ袋を指す。ごみ袋は一般的なごみ袋のほかに自治体など行政が指定したものがあり、その金額は図表1には入っていない。別データでは行政指定袋は約172億円という数値があり、相当な額になる。自治体によって異なるが行政指定や認定の製造、流通経路があるため図表からはあえて外してある。

種類豊富なスポンジ、ニーズ減のアルミ成型品

「たわし・布巾」カテゴリーの主要アイテムは食器洗い用のスポンジである。スポンジには持ちやすく力の入れやすいハードタイプ、折り曲げて食器の縁など洗えるソフトタイプ、表面にネットを付け汚れをかき落とすネットタイプ、近年使用者が増えているメラミンタイプ、昔ながらのヤシの実の繊維を使ったパームタイプなどがある。

金額構成比ではハード、ソフト、ネットで約6割を占める(2018年インテージSRI)。その他主要なアイテムでは、メラミン8.4%(同)、パーム3.4%(同)、PB10.8%(同)となる。

「家庭用炊事手袋」には「薄手」「中厚手」「厚手」、デザインなどを工夫した「付加価値」といったサブカテゴリーがある。薄手と中厚手で5割以上の構成比となる。

「アルミ成型品」とは、コンロの周囲にアルミ製のボードを立てて油はねを防ぐ商品などである。レンジガードとも呼ばれる。油がはねやすい天ぷらや揚げ物のときに使うことが多く、揚げ物は近年スーパーの総菜を買う人が増えたこともあり、近年は売場を縮小する小売も多い。

「油処理」は揚げ物や天ぷら用の油を固める素材や油汚れを拭くシート材などで構成される。

情報発信用にフリー棚の設置を提案

台所用消耗品に属するアイテムは、前段で説明したように、機能や特徴によっていくつかに分類される。それぞれの機能は専門性が高く、買物客はそれを理解していないことが多い。

「台所用消耗品は特徴を知ったうえで実際に触ってみないと違いがわからない商品が多いです。ラップにしても3つの素材の違いやそれぞれが何に適しているかを知っているお客さまは少ないでしょう。炊事用手袋の厚さは触って確かめないと実際の使用感がつかめません。こういった商品は売場にテスターを置くことも必要だとおもいます。弊社が提案しているのは、定番棚の中に1本、商品販売を目的としないフリースペースを置いて商品に触って確かめてもらう、あるいは情報発信やテスティングにより新商品のプロモーションをすることです」(鈴木伸明氏)

厳しい競争の中で棚効率を下げるようなリスクを冒したくないというのが小売業の本音だろう。しかし、台所消耗品は機能性の高い商品が多いので、情報発信することで、高機能高単価商品を納得して購入するお客が増え、カテゴリーの収益性が向上する可能性が高まる。

棚1本分のフリースペースを取る余裕がなければ、高機能で高単価の商品にテスターや説明ボードを付けるなどの工夫も有効ではないか。

ラップに関していえば、ポリエチレン製の低価格PB商品を購入して、電子レンジで加熱してラップが溶けたなど不満を感じる人は多い。素材による適切な用途を知らなければ、ラップだけでなくPB全体や企業への不満、不信にもつながるので、情報発信による適切な商品理解は重要である。

交差比率を棚割の基準にする

ジェムコでは棚割をつくるときに基準となる指標が必要だと考え、交差比
率(※)をその指標にすることを提案している。図表2はジェムコの考える売場の設計図だ。横軸に売場スペースを、縦軸に市場規模を置いて、4象限で考えている。各カテゴリーの基準となる交差比率を最初に設定し、棚割を決めることでその交差比率に近づけるような売り方をする。

※交叉比率:儲けを表す指標で、〈粗利益率×商品回転率(年)〉で求められる。粗利益率30%の商品が年7回転すれば交差比率は210%。200%以上が合格点とされる。

たとえば、カテゴリーDは、市場規模が大きくて売場スペースを広く取っているので高い商品回転率が見込める。最初に交差比率を設定していれば大体の粗利益率や売価も決まる。交差比率150に設定しているということは、利益よりは高回転で集客を狙っており、下段で大陳する売り方が考えられる。

このようにジェムコでは交差比率を決めることで効率的で全体最適につながる売り方、売場づくりを設計することを提案している。その他、同社が設計図で重視する点は「商圏に合わせた品揃え、組合せ」「都市型か郊外型か」「競合店および競合店の業態」「強化カテゴリー、見切りカテゴリーの見極め」などである。

競合店の業態に関しては、地方で店舗が少なく同一商圏内でドラッグストア(DgS)、ホームセンター(HC)が競合する場合、DgSがHCのシェアを取るためには台所関連品の品揃えを厚くしなければいけない。

たとえば、アルミ成型品は商品が大きく売場スペースをとるうえ、家庭内で揚げ物の調理、あるいは調理そのものが減少してニーズは低下傾向にある。とくに「食」を強化しているスーパーでは家庭用品の売場縮小に伴い、アルミ成型品をまったく扱わない企業も最近見受けられる。

アルミ成型品のチャネル構成比の半分はHCだが、自店がDgSで競合する業態がスーパーであれば、限られた売場であってもあえてアルミ成型品の最低限の品揃えをすることで日用品を網羅する店舗イメージを与えられる。また、大型商品の陳列がスペース的に難しければ、写真などを掲示して客注を受けられる仕組みを採用することでお客の利便性は上がる。

これはアルミ成型品だけでなく、ほかのカテゴリーにもいえること。商圏内のライフスタイル、競合との戦い方を考え品揃えの設計図をつくる必要がある。

異なるメーカーの商品を組み合わせて併買促進

ジェムコで現在考えているのは、「A社のアの商品」と「B社のイの商品」とを組み合わせて使ってもらうことで利便性が上がり併買を生み出す売り方だ。

たとえば、浸け置き洗いを推奨する台所用洗剤と水をためるボウルを併買する。手に付くとニオイが気になる塩素系漂白剤と炊事手袋を同じ売場で展開するなど。

台所用消耗品は機能性が高く説明を要する商品が多い。単品の機能性を説明し、理解・納得して購入してもらうことに加え、組み合わせることで利便性が上がる商品を見つけ出し、適切な情報を付けて併買を促せばカテゴリーの収益性は上がる。

発信すべき情報を探して販促物をつくる。併買促進のアイデアを考えるなどのプロセスではカテゴリーを横断的に見るベンダーの存在は貴重だ。

多くの小売業やメーカーと取引があり、豊富な情報を蓄積したベンダーをカテゴリーコンサルタントとして活用することで、台所用消耗品の販売効率も上がっていくだろう。

DgS顧客満足度調査2019、企業別順位はコスモスが2連覇

月刊マーチャンダイジング2019年12月号では38企業、500店舗を対象に「顧客満足度調査」を行った。この記事では前回に引き続き本調査の結果のうち、企業別順位、店舗別順位の一部をご紹介する。(月刊マーチャンダイジング2019年2月号より編集の上転載)

大躍進したザグザグ。トモズ、キリン堂、ハックドラッグも伸長

図表は今回の調査の企業別順位である。1位はコスモスで昨年に続き2連覇を果たした。しかし、前回の平均点と比較するとマイナス24.66で大きく下げている。2位のザグザグとも僅差だ。ザグザグは前回下から2番目の結果に終わったが今回躍進している。コスモスに1.36ポイント差と肉薄している。

トップ10企業を見るとザグザグのほかにも4位トモズ(前回22位)、6位キリン堂(前回20位)、7位ハックドラッグ(前回27位)は前回下位グループからの躍進となった。前回トップ10から大きく圏外へと落ちた企業も数社ある。

コスモス、杏林堂、クリエイトSDは上位の常連組となった。いずれも商品回転率の高い食品の構成比が高い企業であり、その分売場の維持管理は労力を要するが、それができている。HBC(ヘルス&ビューティケア)の売り方、接客の評価も高い。

次年度以降経営統合が予定されているマツモトキヨシとココカラファインは前者が23位、後者が31位といずれも芳しくない。都市型では品揃えや接客など他社と一線を画す魅力がある両社だが、店舗により評価が大きく異なり標準化されていないことが主な原因だ。

サッポロドラッグストアーなどローカルチェーンが健闘

図表2は店舗別のトップ20である(月刊マーチャンダイジング2019年12月号にはトップ50店舗を掲載)。

1位にはサッポロドラッグストアー清田2条店(札幌市)が入っている。270点満点で263.57点、100点満点に換算すると97.6点の好成績を挙げた。

2位はコスモスの福岡県小郡市にある店舗が入った。総合満足度の記述は「レジ対応がとにかく気持ちいい」。創意工夫では「店員さんたちがよくお客さまを見ていて、すぐに対応してくれる」とある。価格は食品スーパーよりも食品が安いと書かれている。

(1位と2位の店舗の取材記事は月刊マーチャンダイジング2020年2月号に掲載されます)

3位は千葉県を本拠地に茨城、埼玉、東京に店舗展開するヤックスドラッグ 玉造店(茨城県行方市)がランクイン。総合満足度10の理由には「清掃も行き届いており、照明も明るく品揃えも豊富なので、勧めたいとおもいました。レジ対応や接客も感じがいいです」と書かれている。

4位クリエイト エス・ディーの店舗は競合店よりも価格が安いこと、質問への対応が迅速で丁寧なことなどが評価されている。同社は、今後競争が熾烈になるとおもわれる関東を主要な商勢圏とするだけにこうした高評価店を増やしたいところだ。

同じく激戦区に拠点を置くV・ドラッグの岐阜県内の店舗が6位に入っている。ポイントの使いやすさ、品揃え、価格が高評価の理由。

トップ50に複数店入っている企業は、ウエルシア6店舗、コスモスが5店舗、サツドラ、キリン堂が各4店舗、ザグザグ、杏林堂、クスリのアオキが各3店舗、クリエイト エスディー、V・ドラッグが各2店舗などとなっている。

「お客の注目ポイント」を自由記述から読み取る

本調査の調査員から寄せられた、NPS高評価と低評価の店舗それぞれに対する自由記述を紹介する。

NPS高評価店舗へのコメント(カッコ内は店舗名とNPS)

お店は隅々まで掃除が行き届いており、とてもきれいでした。とにかく広い店内で、カートを押しながらゆったりと買物を楽しむことができました。(カワチ薬品 つくば桜店/10)

一番満足をした点は商品の豊富さとスタッフの好感の持てる対応です。野菜やお肉などから日用品やお薬まで、ほとんどの生活用品がすべて揃うのが魅力的でした。また、登録販売者の方やレジや品出しをするスタッフさんは、常に笑顔で対応してくださる方ばかりで大変気持ちのよいものでした。 (クスリのアオキ 成岩店/9)

セルフでも商品を選びやすいようPOP等での情報が多く、聞きたいことがあるときには、すぐに専門の詳しいスタッフさんに聞くことができる環境になっていたからです。(ザグザグ 中庄店/10)

店舗は、明るく広々としていて、品揃えよく、店員さんは、お客さまとすれ違うたびに、あいさつをされていて、質問したことにも親身になって聞いてくれたので、とてもよかったです。(サツドラ 恵庭黄金店/10)

お化粧品のブースとお薬のブースの2ヵ所でスタッフさんにいろいろ質問してみましたが、お二人ともとても親身になっておしえてくださり、とくにお薬の所では「喉が痛いときには飲み薬だけでなくトローチやうがいなども効果的ですよ。そういう症状があるときには乾燥にも注意が必要ですので、マスクをして乾燥予防にも努めてみてくださいね。お大事になさってください」と笑顔で優しくいたわりの声掛けをしていただきました。とてもうれしかったです。レジのスタッフさんも丁寧な対応で感じがよく、病んでいるときなどにはこちらのお店で温かい接客をしていただくとうれしいなとおもいました。 (ドラッグストアmac 富久店/10)

薬剤師が相談にのってくれて専門的な知識をもとにせき止めのシロップのいい点、悪い点を挙げたりして親身に話してくれた。レジに行った際、作業中でだれもいなかったが、すぐに来て待たせなかった。買ったものを手早く袋に入れて渡してくれた。化粧品を見ているときは声掛けしないでくれる方がいい。聞いたら親身に対応してくれた。相談テーブルでは化粧品の試供品付きのラッピング中だったので一時的に整理されていなかったが、通常はきれいになっている。(V・ドラッグ 富山呉羽店/10)

NPS低評価店舗へのコメント(カッコ内はNPS)

全体的に整理整頓ができておらず、あいさつしない店員、しても声が小さくて聞こえない。あまり感じがよくなかった。(3)

全体的に品物が高すぎます。他店では100円以下の食品が138円で売っていたり、そういう商品が多いため。(3)

品揃えは豊富でよかったのですが、価格がとくに安くはなかったからです。やはり価格は一番重視します。レジや売場でのスタッフさんの対応も普通でした。明るいお店ではあったものの、清掃が行き届いているという印象はなく、POPがはがれかけていたり、商品パンフレットが倒れていたりと残念な部分も見受けられました。これといった突出した魅力が感じられなかったため、こちらの評価にさせていただきました。(3)

カテゴリーごとのサインがなく、どこに何があるのかがわかりにくかったです。化粧品のテスターはあったものの、ティッシュやスポンジなどがないのでテスターを使用しにくく感じました。スタッフに風邪薬について質問した際には、「一般販売員」の名札を付けたスタッフが対応し、症状の確認はあったものの使用者の年齢や既往症の確認などは行われず、「喉とかせきとか、箱に書いてありますし、風邪薬は総合的に効くので大丈夫です」といわれ、具体的な商品提案はありませんでした。
化粧品についても、化粧品売場担当スタッフが対応してくれたものの、とくに肌悩みなどの聞き出しはなく「値段とかブランドよりも自分の肌に合っているものがいいんですけど…」といわれて、具体的な商品の提案や買いたくなるような説明などはありませんでした。(3)

DgS顧客満足度調査2019、「セルフで買いやすい環境」が重視される傾向に

月刊マーチャンダイジング2019年12月号では38企業、500店舗を対象に「顧客満足度調査」を行った。この記事では今回の調査で判明した「選ばれる店の条件」の変化を紹介する。(月刊マーチャンダイジング2019年2月号より編集の上転載)

新項目追加で「品揃え」「値ごろ感」「創意工夫」を調査

昨年から調査店舗を大幅に拡大、今年も全国のDgS38社、500店舗を調査した。広域出店している企業に関しては、出店数に応じて複数エリアで調査。上場14企業とその事業会社に加えて、大手非上場、有力ローカルチェーンも対象とした(図表1)。(図表はクリックで拡大可能)

調査内容は大きく2つに分けられる。

①基本的な調査項目:「店舗設備・クリンリネス」「基本接客・商品知識」「商品陳列・品揃え」「レジ対応」の4カテゴリー、合計43問、いずれも3点満点の基本設問。

②総合満足度に関する評価:「この店で買物することを知人に勧めることができますか?」という問いに対する回答を0~10の11段階で評価してもらった。

設問の全体像は、月刊マーチャンダイジング2019年12月号をご覧になってもらいたい。

今回の調査から、「この店はよく行く他の店と比べて品揃えが豊富だと感じましたか?」「この店はよく行く他の店と比べて安いと感じましたか?」「他のチェーン(違う看板のお店)にはない特長や工夫を感じましたか?」の3項目を追加、あくまで買物客目線の主観ではあるが「品揃えの豊富感」「価格優位性」「差別化施策」に関して追加で調査を行っている。

総合満足度は前回調査より若干低下

総合満足度とは「この店で買物することを知人に勧めることができるか」という質問に0から10の11段階で答えてもらうものだ。陳列、接客など個別分野の評価とは別に文字どおりその店舗を総合的に評価する重要な指標と位置付けている。

図表3と図表4は、前回(2018年)と今回(2019年)の総合満足度である。いずれも8の評価が多かったが、数のうえでは今回8が減りその分5以下が増えている。9、10の評価も減った。

総合満足度の評価のうち0〜6までが批判者(detractor)、7、8が中立者(passive)、9、10を推奨者(promoter)と定義づけて、中立者を除外し、推奨者(割合)から批判者(割合)を引いた割合を正味の推奨者割合としてNet Promoter Score (NPS)という値で表す。NPSは小売業だけでなく、外食産業、製造業などでも用いられている国際的な指標である。一般的に推奨者の方が少ないことから、優良な企業でもマイナスがつくことが多い。

図表6は今回の調査の全体平均と売上上位企業のNPSである。

平均値は−11.6、個別企業で見るとプラスの好成績を挙げているのはウエルシアHD、コスモス薬品、クスリのアオキ。とくにコスモス薬品のNPSは高い。平均値を超えているのはツルハHD。ほかはそれを下回る結果となった。ちなみに前回のNPSの全体平均値は6.9だったので、批判者が増えたことで全体のNPSも低下している。

改善項目に優先順位をつけると?

図表7は、対象全36の調査項目において顧客満足度を縦軸に、総合満足度を横軸に取ったチャートである。数値はそれぞれの平均値を50にしたときの偏差値だ。

たとえば、図中の設問番号15「ヘアケアの定番売場の欠品状況」は顧客満足度の偏差値(縦軸)は50を超えているが、総合満足度との相関係数の偏差値(横軸)は33であまり高くない。つまり、ヘアケア売場に多少欠品があってもほかの項目次第では知人にこの店を勧めるということになる。

もうひとつ例を挙げれば、設問番号43「ほかの店と比べて創意工夫があったか」は、顧客満足度の偏差値は30未満で低レベルだが、総合満足度との相関はもっとも高い。つまり、創意工夫があるほど知人にこの店を勧めたくなるのに、実際はそういう店は少ないということになる。ここを頑張って上げれば店舗運営のレベルが上がり集客できるようになる。

このように顧客満足度の達成レベルと総合満足度との相関という2軸で全調査項目を4象限に分けたのが図表7の「顧客満足度ポートフォリオ」である。

各象限の意味は次のようになる。

① 重点維持分野:総合満足度との相関が高く顧客満足度も高いのでこのまま維持しておくべき分野。
②維持分野:顧客満足度は高いが、総合満足度との相関は高くない。維持すべきだがそれほど注力しても総合満足度アップ(集客効果)にはつながらない。
③改善分野:顧客満足度も総合満足度との相関も低い。改善が必要だが優先順位は④が勝る。
④重点改善分野:総合満足度(集客効果)との相関が強いのに顧客満足度の達成レベルは低い。ここを頑張れば集客、他店との差別化が望める。

自社の店舗運営の現状を相対的に把握し、改善に優先順位をつけたいのであれば、独自でポートフォリオをつくるのもよいだろう。

セルフで買いやすい環境へのニーズが高まっている

図表8(16ページ)は総合満足度に強い相関を与えるトップ10である。

黄色で示したものは2018年にトップ10入りした項目だ。2019年の1位には今回から新設した「店舗の創意工夫」が入った。相関係数の偏差値を見ても75を超え非常に高い相関がある。2位は同じく新設の「品揃えの豊富さ」。3位はこれまでも常にトップ3以内に入っていた「お客を意識した行動」

以下図表のとおりだが、今回の調査で目立っているのは、「目薬のわかりやすい分類」(4位)、「洗顔料のわかりやすい分類」(6位)、「歯磨き粉のわかりやすい分類」(8位)など、セルフで買いやすい売場づくりに関する項目の相関が高いことだ。いずれの項目も前回調査ではトップ10圏外だった。

また、図表9の前回の調査と比較すると、前回は「風邪薬への問い合わせ対応」(3位)、「ファンデーションへの相談対応」(6位)とカウンセリング系の項目の相関が高かったが、今回の調査ではいずれもトップ10圏外、風邪薬への問い合わせ対応は21位と大きく順位を下げた。

理由は複数あるのだろうが、ひとつ推測できるのは大手DgSの高速出店、人手不足などから売場に人がいないのが常態化して、カウンセリングへの期待値そのものが下がったのではないかということだ。そのためセルフで買える売場のわかりやすさへの評価が高くなったという仮説も立てられる。

図中に黄色で示したものは今回、前回変わらずトップ10入りしたもの。「お客を意識した行動」は、再三述べているように人間の持つ自分の存在を認められたいという承認欲求を満たす基本的項目なので、来店客には関心、感謝の気持ちを持つという基本姿勢を持ちたい。ほかの2つ「問い合わせ対応」「レジ会計時のあいさつ」を合わせて「人系3項目」は総合満足度との相関が高い「鉄板」項目なので、店舗従業員は意識しよう。

POP、ポイント還元、品揃えなどに創意工夫を感じている

1位、2位に入った新設2項目について見てみよう。1位の「他のチェーンにない創意工夫」はその理由を自由記述してもらっているのでいくつか紹介する。

「プライスカードに、この商品の何がどうオススメなのかが書いてあるのでわかりやすく親しみやすかった」
「ポイントカードですぐポイントが使えて安く買える」
「オリジナルのPOPがあり、商品を選びやすかった」
「特定の商品を購入すると、Tポイントがもらえる特典があり、商品のプライスカードのすぐそばに表示されていたので、わかりやすく魅力的だとおもった」
「ヘアカテゴリーの種類が豊富で、ほかのお店ではあまり見掛けない商品がありました」
「目薬のコーナーはとくにPOPがたくさん付いていて、探しやすいと感じました。牛乳は、ケースを斜め置きにしている状態で販売していて、賞味期限が見やすく、商品は手に取りやすかったです」

…などなど大別すると「POPのオリジナリティ」「ポイントの充実」「品揃えのバラエティ感」「わかりやすい、独創的な売場」「他店にないサービス」などが挙げられる。「とくに工夫なし」「まったく工夫なし」という回答も多かった。

チェーンストアの標準化と印象に残るような創意工夫とは考え方次第では相反する概念ではあるが、ポイントは看板を書き換えてもわからないレベルまでの没個性化には注意すべきということだ。

特筆するような創意工夫、個性があればそれがブランディングとなり選ばれる店のポイントにもなる。個性がなければ集客、地域シェア獲得には特売やポイント還元など価格政策に頼りがちになってしまう。

接客、プライベートブランド(PB)商品を含む品揃え、価格(EDLP)、地域密着などを磨き、DgSはもっとブランディングという概念を追求すべきだろう。

セルフで買物できる環境は比較的対応できている

図表10は総合満足度と相関が強く、なおかつ顧客満足度でも偏差値50以上の高得点を挙げている項目である。

ここは維持することが大切で、逆にここを落とすと総合満足度も下がる。目薬、洗顔料、歯磨き粉、それぞれのわかりやすい商品分類と売場づくりは総合満足度にとって重要であり、一定レベルの水準に達している。テスター整備、プライスカードや販促ツールの付け方も重点維持分野なので、維持していかなければ集客に響く。

先述のとおり今回の特徴としてセルフで買物できる環境が重視されており、調査結果からその多くの項目が重点維持分野に入っている。したがって、各店対応は比較的よくできていることになる。入り口の清掃、床・通路の清掃も重視されるので、セルフ買物環境、クリンリネスで取りこぼすと厳しい競争から脱落する恐れがある。

一方、総合満足度との相関が高いのに、顧客満足度が低いのが図表11に挙げた「重点改善分野」である。

「他店にない創意工夫」「品揃え」「お客を意識した従業員の態度」など高度な項目とともに「トイレの清掃・管理」といった基本項目も重要改善の領域に入っている。競争が激しく厳しい戦いになっている現状、トイレが汚いといった店では勝ち残りは難しい。いま一度自店をチェックしてみよう。

コンビニ業界に吹き荒れたスイーツ旋風。購入金額アップの引き金になった「バスチー」

前回に引き続き、POB会員の「コンビニエンスストア大手3社」の購買データ(レシート総枚数:約130万枚:2018年4月~2019年10月)から、時間帯別の購入レシート金額推移、購入状況(平均レシート単価・買上点数)や、ローソン「悪魔のおにぎり」や「バスチー」などのヒット商品が与えたスイーツ・おにぎりカテゴリの影響を分析します。

前回の記事

コンビニおでんのピークは冬じゃない?揚げ物は企画・イベントで売れる!

時間帯別レシート購入金額割合、セブン・ファミマはランチ時間帯、ローソンは帰宅時間帯がピーク

来店時間帯別でレシートの購入金額割合の最高値は、セブン-イレブン(20.6%)および、ファミリーマート(20.0%)の2社はランチ時間帯12時~15時、ローソンにおいては、帰宅時間帯15時~18時(20.2%)となります。

また3社ともに、18時~21時においても《18.1%~18.3%》と2割近くのシェアを保ちますが、21時~24時になると《8.4%~10.4%》と10ポイント近くダウン。深夜時間帯になると《2.7%~3.0%》まで、下降します。

レシート1枚あたりの購入状況(平均レシート単価・買上点数)は、時間帯別で変化はあるのでしょうか。セブン-イレブンを例に分析します。

ランチ時間帯よりも、21時~深夜時間帯が平均レシート単価および買上点数が上昇する

セブン-イレブンを例に、時間帯別でレシート1枚あたりの購入状況(平均レシート単価・買上点数)をみると、図表1で購入金額の割合が下降していた、21時~24時が最高値となり、<平均レシート単価710円・レシート1枚あたりの買上点数3.2個>となります。レシートの購入金額割合が最高値となるランチ時間帯12時~15時は、<平均レシート単価586円・レシート1枚あたりの買上点数2.6個>であり、21時以降~深夜時間帯のほうが平均レシート単価、買上点数ともに上回っていたことがわかりました。

ファミリーマートおよびローソンの、時間帯別のレシート1枚あたりの購入状況の最高値についても、<ファミリーマート:21時~24時の平均レシート単価603円・レシート1枚あたりの買上点数2.9個>、<ローソン:深夜時間帯の平均レシート単価618円・レシート1枚あたりの買上点数3.2個>となり、同じ結果となりました。

次からは、主力商品カテゴリの「おにぎり」、「スイーツ」における全体のレシート購入金額の割合および、ローソン「バスチー」や「悪魔のおにぎり」などのヒット商品が与えたスイーツ・おにぎりカテゴリの影響について分析します。

おにぎりは、各社一定のシェアを保つ。セブンは定番商品リニューアル後の6月がピーク

まず、「おにぎり」のレシート購入金額全体に占める購入金額の平均割合をみると、セブン-イレブンは5.5%、ファミリーマートは4.8%、ローソンは3.5%となり、一定のシェアを保っています。

セブン-イレブンは2019年6月(8.9%)が最高値となります。背景には、夏のレジャーシーズンを前に同年6月に「リッチマヨ仕立てツナマヨネーズ(124円)」「二晩熟成紅しゃけ(151円)」他、定番5種類のリニューアルによる効果で、おにぎりの購入金額が増加していたことが考えられます。

また、おにぎりと言えば、ローソンから2018年10月に発売されシリーズ累計販売数が5,600万個(2019年9月末現在)を突破し、2019年の日経トレンディが選ぶ上半期のヒット商品となった「悪魔のおにぎり」があります。

発売後の「おにぎり」購入金額推移に、どのような影響があったのか調べてみました。

ローソン「悪魔のおにぎり」、発売後すぐに人気商品として定着

ローソン「悪魔のおにぎり」発売前月の2018年9月は、レシート購入金額全体に占める「おにぎりレシートの購入金額」の割合が(3.0%)、発売月10月には<おにぎり全体3.5%、うち「悪魔のおにぎり」0.3%>となります。SNSを中心に話題となり、発売13日で約265万個販売というニュースが流れ、11月には、<おにぎり全体4.2%、うち「悪魔のおにぎり」0.4%)>となりました。その後、<おにぎり全体3.1%~4.2%、うち「悪魔のおにぎり」0.2%~0.4%>で一定のシェアを維持。定番商品として定着していることがわかります。

次に、「スイーツ」のレシート購入金額全体に占める平均割合と、ローソン「バスチー」のレシート購入金額の推移をみます。

スイーツ金額シェア、ローソンのみ4%越え、バスチー発売・ウチカフェスイーツ10周年誕生祭が影響

「スイーツ」の、レシート購入金額全体に占める割合をみると、セブンイレブンは3.7%、ファミリーマートは3.4%、ローソンは4.8%で唯一ローソンのみ4%を超えています。

ローソンは2019年4月(6.9%)が最高値となり、同月3月発売の「バスチー」が影響していることがわかりました。(図表4-①)また、10月18日限定で、「Uchi Cafe Sweets [ウチカフェスイーツ]」10周年誕生感謝祭として、オリジナルスイーツ全品の半額セールを実施したことにより5.8%とシェアを伸ばしています。(前月4.3%)

バスチー発売の翌月、スイーツ購入金額、前月2ポイント以上の伸び、その後も定着

ローソン「バスチー」発売前月の2019年2月は、レシート購入金額全体に占める「スイーツレシートの購入金額」の割合が(5.5%)から、発売2か月後の4月には<スイーツ全体6.9%、うち「バスチー」1.3%>となり、「バスチー」の発売が、ローソンのスイーツレシート購入金額の拡大に寄与していることがわかります。

“第三のチーズケーキ”として、バスクチーズケーキ自体が各種メディアでも話題となっている中、セブン-イレブンでも10月に「バスクチーズケーキ」が発売されました。これにより、コンビニスイーツ全体が注目される相乗効果が生まれる可能性もあり、今後の動向に注目です。

コンビニエンスストアにおいては、スーパーやドラッグストアと比較すると、店舗数や(※)営業時間の長さ、コピーやFAX、ATMだけではなく、各種チケットや乗車券などの販売代行、宅配便やクリーニングの受け付け、光熱・水道費など公共料金の収納代行、様々なサービスにも対応しています。いつでも商品を購入することができるうえ、どこにでもあるため、利便性の高さにおいては優位性があると言えるのではないでしょうか。

しかしながら、根幹の24時間営業を巡っては、様々な議論が続けられ3社ともに時短営業を容認する動きがあります。コンビニエンスストア各社は、大きなビジネスモデルの転換期を迎え今後どのような価値を提供していくのか注目したいと思います。

(※)コンビニの店舗数は2019年6月時点で全国5万6485店(経済産業省「商業動態統計」)であり、小売業でコンビニ以外ではドラッグストア(1万6058店)やスーパー(5000店)が続きます。

2020年「小売流通業」の 5つの重点経営課題

1960年代に急成長したチェーンストアのマスマーチャンダイジングの成功体験がまったく通用しない10年が始まります。その元年である2020年の重点経営課題を整理します。

重点経営課題(1) 人口減少と生産性革命

2019年に日本国内の出生数が86万4,000人と、1899年の統計開始以来、初めて90万人を割り込む見通しとなりました(厚生労働省の人口動態統計より)。前年の出生数91万8,400人から約5万4,000人の大幅減です。一方、死亡数は137万6,000人と戦後最多で、自然減は51万2,000人と初めて50万人を超えました。日本という国は、人口減少が加速していることがわかります。

人口減少が減少すると、何もしないとGDPは自然減します。GDPの増加要因の半分は「人口ボーナス」(人口増によるGDPの自然増)といわれていますが、日本は人口ボーナスがマイナスの国です。人口減少時代の日本でGDPを成長させるためには、人口一人当たりの「労働生産性」を高めるしかありません。

しかし、日本のGDPの70%を占める、数字的には日本の基幹産業である「小売・サービス業」の労働生産性は、製造業よりもはるかに低く、米国の半分程度の低い労働生産性のままです。小売・サービス業の生産性向上が、日本という国全体の最大の課題といっても過言ではありません。人口減少が加速する2020年は、小売・流通業、サービス業の「生産性革命」元年であると思います。人海戦術からの根本的な脱却は、待ったなしです。

重点経営課題(2) スマートストア化

小売・サービス業の「労働生産性」向上のために、IT技術を活用した「スマートストア化」が2020年から加速すると思います。現在、レジフリー、レジ作業の省人化の実験が日米で進められています。店舗の人時数の30%を占めるレジ作業の省人化は、労働生産性向上のためには不可欠の技術になるかもしれません。

一方、リアル店舗は「接客」など、店員とお客のコミュニケーションを強化する必要があります。したがって、顧客接点以外の「単純作業」は省人化・無人化を進める一方で、顧客接点は「有人化」を目指すのが正しい方向性です。とはいえ、顧客接点の有人化もコストの壁があります。

たとえば、化粧品の接客強化といっても、営業時間中ずっと化粧品の専門家を売場に配置することは現実的ではありません。化粧品担当者の不在時をカバーするためにも、タブレットなどのITツールを活用した「接客のオートメーション化」が2020年以降に急速に普及すると思います。労働生産性向上と、接客強化を両立させなくてはなりません。

重点経営課題(3) マスMDの成功体験からの脱却

1960年代以降の人口急増時代に成長した日本のチェーンストアは、「大量生産大量消費」時代の「マスマーチャンダイジング」の成功体験から脱却できていません。しかし、人口ボーナスがマイナス時代のこれからの日本では、「不特定多数」の消費者に大量販売する手法は通用しなくなります。従来のようにマスマーチャンダイジングを推進すれば、人口減少と比例して、売上は減少します。

これからの日本の小売業は、不特定多数の浮動客相手の商売から脱却して、「特定多数の固定客(その店のファン)」を増やすことを目的にしたビジネスに転換する必要があります。そのためには、不特定多数向けのテレビ広告やチラシ販促ではなくて、個客の購買行動や属性に紐づいた「あなたのための販促」(パーソナライゼーション)を目指すべきです。2020年はマスマーチャンダイジングとの決別の元年になります。

重点経営課題(4) 差別化・ブランディング

2020年は、「同質競争」からの脱却、「差別化・ブランディング」の元年になると思います。日本の小売業は、看板を取り外せば、どの店かわからないほど同質化しています。

本誌で掲載したDgS(ドラッグストア)「2019年の顧客満足度調査」では、「ほかのチェーン(違う看板のお店)にはない特長や工夫を感じましたか? 」という調査項目を新たに加えたところ、この項目が、「総合満足度」に大きく影響を与えることがわかりました。総合満足度とは、簡単に言うと買物客の「再来店意向」です。つまり、上記の質問が、「またこの店に行ってみたい」という再来店意向にもっとも大きな影響を与えることがわかりました。

最近の消費者は、店舗に明確な個性や異質性を強く求めています。顧客満足度(CS)を上げるためにも、ブランディングは最優先の経営課題です。また、「プライベートブランド(PB)開発」に関しても、かつてのようにナショナルブランド(NB)にパッケージがそっくりで、価格が半値といった「低価格だけが価値のPB」からの脱却を目指さなければ、真の差別化は達成できません。

重点経営課題(5) リアル店舗の価値づくり

ネットで何でも購入できる時代において、われわれ小売・流通業に関わる者は、わざわざ時間とコストをかけて、リアル店舗に足を運んでもらえる「価値」とは何なのか? を自問自答し続けることが重要です。

リアル店舗の価値を真剣に追求するためには、「人手を減らして販管費を減らし、営業利益を増やす」といった会社の御都合主義を否定し、今取り組んでいることが本当に顧客のためになるかどうかを常に自問自答する、真の「顧客第一主義」に転換できるかどうかが何よりも重要です。

そして、ネットにはなくてリアル店舗だけが提供できる「触って試せる」「試食できる」「相談できる」「楽しい。ワクワクする」などの価値を磨き続ける必要があります。

買物客がリアル店舗に期待するニーズは、以下の4つですが、ネット販売にはない「リアル店舗のライブ感」を強化するためにも、「(4)エンターテインメントニーズ」の強化がとても重要になると思います。たとえば、低コスト化しているサイネージを活用して、店頭で動画を流す「店頭メディア化」も、2020年が本格的な普及の元年になると思います。

買物客がリアル店舗に期待する4つのニーズ
(1) コンビニエンスニーズ(近くて便利)
(2) ディスカウントニーズ(安い。ただし安売りで広域集客は×)
(3) スペシャリティニーズ(専門性、接客)
(4) エンターテインメントニーズ(楽しい、わくわくする)

発表!2019年にMD NEXTでよく読まれた記事ベスト10

2019年もいよいよ年の瀬。この1年でよく読まれたMD NEXTの記事10本を紹介しながら2019年のドラッグストア業界を振り返ります。一番読まれた時期は、実は年初に書かれた「あの」記事でした。(2019年1月1日から12月20日までのPV数順のランキングによる)

では第10位から順に記事をご紹介していきましょう!

第10位 3年間で約1万5,000店も閉店したアメリカ小売業は、日本の未来か!?

3年間で約1万5,000店も閉店したアメリカ小売業は、日本の未来か!?

しょっぱなからなかなか厳しいタイトルの記事ですが、かなりの読者の方にお読みいただきました。小売業の未来はどうなるのか、誰もが気になるところですが、本記事では、

●小商圏DS、ライフスタイルストア業態で店数を増やしている企業の例
●熱烈なファン(固定客)を増やすことで成長している企業の例

を紹介して、明日の小売業のあり方を前向きに提案ました。

第9位 小売業の正月休み増加、10連休など年間休日増加

小売業の正月休み増加、10連休など年間休日増加

2019年は「働き方改革」に注目が集まった年でもありました。本記事では小売業の正月休みが増加しているという現状を紹介するとともに、10連休となったGWにどのような消費の変化が見込めるかを推測しました。

10連休のGWなどの長期休みを適切にオペレーションして、売上を伸ばした小売業もあるようです。

一方、2019年は台風などの災害の影響で、「店を開けない」という判断をした企業も複数登場しました。Twitterでは「#台風だけど出社させた企業」というハッシュタグがトレンド入りするなど、働き方に関する価値観が転換点を迎えていることを感じる年になりました。

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第8位 低経費&絞り込み&激安に割り切った小型業態「トライアルBOX」に注目

低経費&絞り込み&激安に割り切った小型業態「トライアルBOX」に注目

新業態に関する記事は注目度が非常に高く、たくさんの方に読んでいただいています。この記事もその1本です。本記事ではスーパーセンターなどの大型店のイメージが強い「トライアルカンパニー」が最近展開を始めた「トライアルBOX」を紹介。小型のハードディスカウンター(BOXストア)の実験店として、注目を集めています。

2020年もMD NEXTはいろいろなリアル店舗の新業態を紹介していきます。

第7位 PALTACのRDC埼玉が竣工。ロボット適用範囲拡大し生産性を従来比2.3倍に

PALTACのRDC埼玉が竣工。ロボット適用範囲拡大し生産性を従来比2.3倍に

2019年、MD NEXTは取材の裏テーマとして「中間流通業」に注目してきました。

流通業のなかでもどのような役割を担っているのかわかりにくい「中間物流業」。その理解を促すため、繰り返し関連記事をお伝えしています。なかでも最新AI技術を使って自動化を行うPALTACさんの倉庫内のレポートは多くの人に興味を持っていただいたようです。

第6位 トモズ、調剤オペレーション自動化の実証実験を開始

トモズ、調剤オペレーション自動化の実証実験を開始

2019年、MD NEXTが掲げていた裏テーマのもう一つが「作業の自動化」です。2020年以降確実に小売業に訪れる圧倒的人手不足時代。乗り切っていくためには作業の生産性向上が必須の課題です。その中の一つの選択肢として取り上げたのが「自動化」でした。

本記事ではトモズが松戸新田店で行っていた、調剤オペレーション自動化の実証実験を紹介しています。自動化によって「患者と喋る時間が増え、やりがいが増した」という現場の言葉に、自動化の価値が集約されているように思います。

第5位 池澤あやかの卸売業突撃レポ!PALTACのRDC新潟で最新鋭AIロボに萌える

池澤あやかの卸売業突撃レポ!PALTACのRDC新潟で最新鋭AIロボに萌える

こちらも「中間物流業」に注目したPALTACさんのRDC新潟に関するレポートです。タレントの池澤あやかさんにご登場いただき、わかりやすく中間物流業の裏側について解説する本記事は、ほんとうにたくさんの方にお読みいただくことができました。

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第4位 ココカラ、スギ、マツキヨ経営統合で1兆円企業が登場しても寡占化には至らない

[寄稿]ココカラ、スギ、マツキヨ経営統合で1兆円企業が登場しても寡占化には至らない

2019年のDgS業界の話題として最も大きかったのがココカラファインとマツモトキヨシの経営統合の話題です。

本記事ではまだ提携先が正式発表になる前のタイミングで、コンサルタントの郡司昇さんに、その背景などを解説していただきました。本記事では提携の鍵を「専売品」と「物流効率」と読み解いています。

第3位 ジェーン・スーが語るドラッグストア「DgSのヴィレヴァン化に期待」

ジェーン・スーが語るドラッグストア「DgSのヴィレヴァン化に期待」

2019年、MD NEXTに突如として巻き起こった「ストアソング旋風」。ジェーン・スーさんに取材させていただいたこの記事をきっかけに、ストアソング(小売業の店舗で流れている音楽類の総称)の漫画を月刊マーチャンダイジング・MD NEXTに連載していた月刊MD 編集部の店橋が、TBSさんのラジオ番組「アフター6ジャンクション」へ出演の機会をいただくなど、八面六臂の活躍を見せました。

ストソン探偵の漫画は現在最新作を制作中とのこと!刮目して待て!

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極上のごきげんストアソング「ラブリイ エブリイ」。ウキウキビートの秘密に迫る!!

第2位 コスモス薬品が2020年5月期から肥沃な「関東平野」で超ドミナント出店開始

コスモス薬品が2020年5月期から肥沃な「関東平野」で超ドミナント出店開始

成長企業の経営戦略はよく読まれる記事の一つ。2019年1月に発表されたコスモス薬品関東進出の報道は、DgS業界にとって一大ニュースでした。コスモス薬品はこの1年東京都の広尾、中野、西葛西、歌舞伎町に店舗をオープン。これらはいずれも都心型の実験店で、大型店は2020年5月に越谷に、6月に茨木に複数店舗オープンする予定になっています。

M&Aをしないで独自成長を続ける同社がこれからどれだけ勢力を拡大するのか。コスモス薬品は2020年もドラッグストア業界を席巻する台風のような存在であり続けそうです。

第1位 2019年、小売・流通業の7つの重点課題

2019年、小売・流通業の7つの重点課題

2019年に最も読まれた記事がこの2019年1月に公開した記事でした。本記事では、2019年の重点経営課題を以下の7点にまとめて提言。最後は「顧客接点は有人化、単純作業は無人化」が進むとまとめています。

2019年の重点経営課題
(1)リアル店舗の価値づくり
(2)ブランディング・商品開発
(3)ESとCSの向上
(4)行動改革と、強い企業文化づくり
(5)生産性革命(省人化・無人化)
(6)スマートストア化
(7)個別化(パーソナライゼーション)

2019年に公開した記事の中では一番掲載期間が長いので、たくさんの方に読まれて当然といえば当然なのですが、読者の皆様がMD NEXTを日々の業務の羅針盤としてお読みいただいているということがよくわかる結果となり、編集部一同少しほっとしております。

MD NEXTはヘルス&ビューティー業界に関わるみなさまに、2020年も「わかりやすい」「面白い」「役に立つ」記事をお届けし続けたいと思います。どうぞご期待ください!

読者のみなさまにお知らせ

MD NEXTは、2020年1月より、新規記事の公開を現状の週3本から週2本に変更いたします。より密度の濃い記事をお届けするよう編集部一同頑張りますのでよろしくお願いします!

日本の小売業がロケーション管理に弱い3つの理由

前回、計画購買しやすい店はどこで何を売っているかがわかる店であり、どの商品がどの売場で販売されているかをアプリなどで伝えることが重要とお話しました。しかし、日本でその実現が難しいのは、売場のロケーション管理(ロケ管理、商品陳列位置管理)ができている小売業が非常に少ないということです。なぜ日本の小売業は商品陳列位置の管理ができないのでしょうか?

メーカー任せになっている棚割

棚管理ができない理由の一つは、そもそも棚割の作成がメーカー任せになっているということが挙げられます。棚割を徹底的に考えて一から自社で作っている日用消費材小売業は多くはありません。

棚割は、小売業の商品部バイヤーと、メーカーの小売営業担当者が話し合って決めます。しかし、筆者が知る限り日本の多くのドラッグストアは、棚割管理ソフトを自社で持ち合わせていません。大手メーカーが持っているものを利用しています。

たとえば日用雑貨であれば、花王などの大手メーカーを小売業のバイヤーが訪問して棚割をつくります。大手メーカーは、データ会社等から業態毎に集めたPOSデータを購入していますし、次のシーズンの同業他社の新商品情報を揃えていて「このような棚割がいいのではないか?」とあらかじめ棚割の元ネタを用意しています。

それをもとに、それぞれの会社に合わせた棚割に修正します。「うちの店は提案された棚割のように歯みがき粉のコーナーを棚4本分も取れないから、2本分に圧縮しよう」だとか「掃除用の洗剤はPBがあるからこのNBを外そう」というようなことを検討して棚割が出来上がります。

読者のみなさんは、情報と分析力を持った大手メーカーの力に小売業各社が頼ると、どのような結果になると思うでしょうか?

ドラッグストアに関しての生活者調査を行うと「ドラッグストア各社は差別化できていない」という事実を突きつけられます。店舗を利用する理由の上位に並ぶのは「家から近いから」「価格が安いから」「ポイントがつくから」という回答です。つまり、生活者は、ドラッグストアに対して、品揃えや買いやすさ(棚割りを含めたインストア・マーチャンダイジング)で各社差がないという評価をしているわけです。

では、どうすれば、他社と違う結果を得られるのでしょうか?

スポーツをはじめようとする人はまず教則本を読んで学ぼうとすることが多いと思います。では、ゴルフの初心者が教則本を読むだけでスコアが良くなるでしょうか?なりませんよね。筆者は学生時代、弓道をやっていましたが、弓道の本を読んでも的に当たるようにはなりませんでした。どうすれば、上手くなるでしょうか?

いくら本だけ読んでもスポーツは上達するわけがないのです。ゴルフであれば練習場で何度も素振りをして、実際に体を動かすことがスコアアップへの近道といえます。

このようにスポーツでは誰もが反復練習することで、情報・知識を成果に繋げます。

そして、練習の重要性は「思考」においても同様です。「情報・知識」を「知恵」という成果に繋げるためには「思考の練習」が必要になります。

多くのドラッグストアに欠けているのはこの「思考の練習」です。品揃え、棚割りについての思考をメーカーに頼っているから品揃えや買いやすさについて各社差がないと評価されてしまうのです。

ドラッグストアは品揃え・棚割に関して徹底的に自社で考え抜くことが必要だと筆者は考えます。

店頭実現力が不足している

棚割の管理ができないもう一点の理由は、本部が店舗に指示した棚割を、現場がその通り実現していない/できないという点です。棚割を実現すべきとは考えていても、忙しくて実現できないケースと、勝手に現場でアレンジされているというケースがあります。

多くの企業では、棚割りについて4本パターン、3本パターン、2本パターンというように例を示すだけで、あとは店舗に棚割の調整を「丸投げ」してしまっています。しかし、任された店舗側の従業員は、接客やクレーム対応、品出し、レジ作業などの対応に追われています。売上が厳しくなれば従業員を減らされ、指示通りの棚割を実現することができません。棚割の実現度は本社が思っているよりもかなり低いという状況です。

さらに、店舗がアレンジした棚割を本部にフィードバックする仕組みがないと、本部で店舗ごとの棚状況がどうなっているか把握することができません。経営陣が「PDCAを回せ!」と命じても回らないのはなぜでしょう?それは「原因」である店舗状況がデータ化できていないからです。売れた「結果」であるPOSデータだけではPDCAを回せないのは当然です。

また、本部が指示した棚割を店舗が勝手にアレンジしてしまうようなことも少なくありません。店長が「これは今陳列している商品より売れないと思うから、並べないで返品してしまおう…本部が言うほど売れないだろうから1フェースでいいや…」というケースです。

欠品が起きたときに他の商品で埋めるというオペレーションを採用している企業もありますが、チェーンストアの陳列位置管理という意味では、本来欠品が起きたらそこを他の商品で埋めてはいけないはずです。

このように、さまざまな理由から本部の棚割指示は達成されず、現場を見なければ確認できないという陳列状況なので、現場の棚割を本部が把握しているようなドラッグストアは日本ではほとんどないのです。

店頭在庫・バックヤード在庫を管理できていない日本の小売業

陳列位置を管理するだけでなく、在庫がどこにあるのかの情報も持っている必要があります。

在庫に関して言えば、現在でも在庫データの更新を1日1回夜間バッチで行っている企業が多く「今この時間にアリエールが店舗に何個在庫しているか」を把握している小売業は非常に少ないのではないでしょうか。店舗の在庫数全体でさえこのありさまなので、当然店頭に何個陳列されていて、バックヤードに何個在庫しているのかということも把握できていません。

日本では店頭在庫とバックヤード在庫の管理をしている企業はあまりないと思うのですが、アメリカではどうも様子が違うようです。

元々はウォルマートの従業員教育用アプリであり、後日一般公開されたアプリで店の作業を体験するシミュレーションゲーム「Spark City」では、店の作業を体験することができます。このアプリ体験してみると商品がバックヤードに何個ある、店頭に何個ある、という情報が飛んでくるのです。つまりウォルマートレベルの企業になると、店舗の在庫を、きちんと店頭分とバックヤード分に分けて管理しているのではないかと考えられます。

ウォルマートのアプリ「Spark City」。画面右の端末に店頭在庫数とバックヤード在庫数が記載されている。

ウォルマートと日本のドラッグストアで、どちらが「PDCAが回る」ことでデータ活用できる企業だと思いますか?「本当の在庫管理」の重要性を日本のドラッグストア企業にも認識してもらいたいと、筆者は考えます。

調剤薬局の在庫シェアリングサービス「メドシェア」、AI医薬品発注システムを開始

医薬品在庫のシェアリングサービス「メドシェア」を軸に、現場起点のサービスを打ち出しているファーマクラウド。同社の山口洋介代表にサービスの利用状況と有料拡張版の新サービス「メドオーダー」の開発背景について話を聞いた。(聞き手:MD NEXT 鹿野恵子/構成:イシヤママキ)

調剤薬局の廃棄ロス問題を解決する「メドシェア」

ファーマクラウドの代表を務める山口洋介氏は九州大学薬学部を卒業後、製薬メーカーに勤務。東京都千代田区に「薬局お茶の水ファーマシー」を開局し、管理薬剤師として自ら薬局運営に携わった経験を持つ。2012年に株式会社ファーサス、2015年に株式会社ザイシ、2016年に株式会社ファーマクラウドをそれぞれ起業。ITエンジニアとしての顔も持ち、ITを活用した現場起点のソリューションを次々と開発している。

ファーマクラウドの基幹サービスが、2017年1月にリリースした「Med Share(メドシェア)」だ。「メドシェア」は医薬品在庫のシェアリングサービス。個店経営から20店舗程度の小規模薬局チェーンをメインターゲットに、医薬品在庫を可視化し、不動在庫を共有するサービスの無料提供を行っている。

薬局経営の中で最も難しいのが、在庫コントロールだ。各調剤薬局は病院や患者との日々のやりとりの中で品揃えを決めているが、多くの店舗ではこれら情報をデータ化せずカレンダーに患者情報をメモするなどアナログな手法で行っており、発注量については薬剤師のカンに因ることが多い。

また、薬局は社会のインフラ的側面もあることから、様々な医療施設の処方せんに対応するため、アイテムの絞り込みができず幅広い在庫を抱えることになる。その結果、状況によっては数十万円分の廃棄ロスが出ることもあり、個人経営の薬局にとって大きな痛手となっている。

不動在庫を作らないためには常に在庫状況を把握し、周辺の薬局と情報を共有して、過剰在庫を他店と協力し消化する必要がある。そこで、ファーマクラウドは不動在庫候補の検出から出品購入までをサポートする「メドシェア」の開発にいたった。

このサービスではレセプトデータ(診療報酬の明細書)を活用し、個人情報や調剤報酬に関する情報を完全に削除した状態でアップロード。アップロードしたデータから不動在庫を自動的に検出し、その中からシェアしたい商品を選び出品することで、その商品を求めている他の薬局が買い取るといった仕組みを採用している。不動在庫の可視化・共有の手間を劇的に削減することにより、接客など本来の業務に集中できるほか、廃棄ロスの削減により、キャッシュフローの改善にもつながる。

メドシェア出品画面

医薬品の分割譲受を行う「小分けサポート機能」を追加

「メドシェア」では、2018年末より新たな機能として医薬品の分割譲受を行う「小分けサポート」サービスを追加した。

門前薬局ではない郊外店など、処方せん枚数の少ない薬局の場合、在庫を持たない薬品の処方せんを受け取ることもある。調剤薬局業界では旧来より助け合いの文化があり、在庫のない薬がきた場合、近隣の薬局に連絡し融通してもらう。しかし近隣の薬局に在庫がなかった場合、最終的には取引先である医薬品卸に相談することになる。

特に当てもなく片端から電話で問い合わせるというアナログな手法は時間や手間がかかり効率が悪い。また医薬品卸にとっても直接の業務とは関係がない薬局からの問い合わせは悩みの種となっていた。

こういった状況を受けて、ファーマクラウドでは既存の不動在庫サービスの中に、どの薬局が薬を所持している可能性が高いのかを検索する「小分けサポート」機能を追加。調剤実績の多い薬局にピンポイントで問い合わせできるため、分割譲受における効率化が期待できる。

メドシェア小分けサポート画面

不動在庫だけでなく有動在庫でも活用しやすい「小分けサポート」機能の追加により利用頻度も上がり、薬剤師会や医薬品卸からの支持も得て「メドシェア」の知名度も拡大。月間で約4000回の検索があり、2019年11月現在、会員数は約800店舗まで広がっている。薬剤師会向けには説明会を実施するなど、特に会員数拡大を狙っている。

月3万円でつかえるAI医薬品発注システム「メドオーダー」

同社は、「メドシェア」の会員数拡大に伴い、利用者の要望にこたえるべく新規サービスとなる「メドオーダー」を2019年10月にリリースした。「メドオーダー」はAIを活用した医薬品の発注システム。使用料は月額3万円となっている。

現在、各薬局で使用されている在庫管理・発注システムは、多機能ではあるものの操作が複雑化しており、使用者の技術やITリテラシーが求められる機能が多い。そのため、ITリテラシーが高いスタッフの作業時間だけが長くなり、作業者と非作業者の作業量や知識量に大きな差が生まれていた。

「メドオーダー」のできることは、他社の発注・在庫管理システムに比べるとかなりシンプルだ。レセコンから処方情報を取り込むことで正確な出庫管理が可能。処方量や発注点など、発注のために必要な情報が1つの画面で管理できるようになっている。また、AIが処方実績を学習することで、発注点の適正化を実現する。

先発サービス「メドシェア」と合わせて利用することで、発注予定の薬を「メドシェア」で購入することもできる。在庫一覧で不動在庫を確認し「メドシェア」で出品することももちろん可能だ。

ファーマクラウドでは「メドシェア」のユーザーを中心に案内しており、「メドシェア」利用者の半数以上が有料サービスへの移行をするのではないかと見込んでいる。

メドオーダー発注画面

薬局と医療業者との関係を円滑にする仕組みづくり

「メドシェア」および「メドオーダー」開発の背景について、山口氏は以下のように語る。

「薬局経営において、売上を左右する薬の単価を決めるのは国であり、患者数は立地によるところが大きく、コントロールできるものは案外少ない。また人件費やテナント料などのコストも調整が難しいため、唯一コントロールできるのが在庫の管理だ。不動在庫の問題は発注管理の問題であり、薬局の適正在庫を作っていくために『メドシェア』や『メドオーダー』を開発した。1店舗の場合はアナログで管理できても、複数店舗になると人の目が行き届かなくなる。システムの導入により、患者に必要な薬がいつでも手に入る状態を、薬局から創出することができるだろう。人間にとって一番有効なインターフェイスはチャットボットなどではなく、あくまでも人間だと考えている。在庫管理などはシステムに任せ、服薬指導、突発的な問題への対処といった薬剤師の専門性が発揮できる業務に力を注いでほしい」。

ファーマクラウドの社員数は現在システム開発6名、営業3名、サポート4名の計13名。今後は、サポート体制を強化していくことで顧客の声を開発に反映させるサイクルを高速で回していく。

ファーマクラウドが目指すゴールは「医薬品流通の非効率をなくす」だ。調剤薬局には医薬品の安定供給という社会的使命があるが、その使命を全うするために、現状はアナログな方法で無理をしている部分が多々見受けられる。

同社では「メドシェア」「メドオーダー」のサービス提供を通じて、薬局のデジタルトランスフォーメーションを推進することで作業効率化と課題解決につなげていきたいとしている。

コンビニおでんのピークは冬じゃない?揚げ物は企画・イベントで売れる!

10月の消費税増税後、現金を使わないキャッシュレス決済を対象にポイントを還元する取り組みや消費税の軽減税率導入で弁当などの販売が伸びたことが寄与し、コンビニエンスストア大手3社(セブンイレブン・ジャパン/ローソン/ファミリーマート)における10月に既存店売上高はいずれも前年同月を上回ったと言います。そこで今回は当社アンケートモニターから独自に収集する購買データ「マルチプルID-POS購買理由データPoint of BuyⓇ」(以下POB)のうち、コンビニエンスストア大手3社の購買データ(セブン-イレブン/ファミリーマート/ローソン3社のレシート総枚数:約130万枚:2018年4月~2019年10月)から購買行動を分析し、前半・後半に分けて紹介します。

前半は、POB会員のレシートから購入状況・曜日別・時間帯別レシート購入金額を分析します。(図表1~図表3)

平均客単価は586円のセブンが最多。アイテム数は各社2~3個

まず、コンビニエンスストア大手3社(セブン-イレブン・ローソン・ファミリーマート)の購入状況は、セブン-イレブン<平均レシート単価¥586円・レシート1枚あたりの買上点数2.8個>、ファミリーマート<平均レシート単価¥502円・レシート1枚あたりの買上点数2.5個>、ローソン<平均レシート単価¥556円・レシート1枚あたりの買上点数3.0個>となります。平均客単価においては、もっとも高いセブン-イレブン(¥586円)と、ファミリーマート(¥502)の差は¥84円となりましたが、レシート1枚あたりの買上点数は大きな差は見られませんでした。

曜日別レシート購入金額は、各社金・土曜がピーク、ローソンは火曜も高い傾向あり

次に、来店曜日別の購入レシート金額割合をみると、セブン-イレブンは<金曜日14.6%>から、2.1ポイント上昇し<土曜日16.7%>でピークを迎えます。比較的曜日に限らず、安定して購入されていることがわかります。これはファミリーマートについても同様です。

一方で、ローソンにおいては<木曜13.0%>から、7.0ポイント上昇し、<金曜日20.0%>で来店のピークを迎えます。その後<月曜11.3%>までは下降しますが、再び4.7ポイントの上昇し、<火曜日16.0%>となり、レシート購入金額の推移に特徴が表れました。

その背景には、セールやキャンペーンの実施が来店に寄与している可能性が高く、ローソン公式HPのキャンペーン情報を確認したところ、火曜日はキャンペーンの開始日となるケースが高く(直近11月の情報のみ確認)、金曜は、2018年3月から毎週金曜(16:00~21:59)には「揚げ物」「焼鳥」のタイムセールが実施されていることがわかりました。

3社のカテゴリ状況について、レシートからどのようなものが購入されていたか分析します。

カテゴリ構成比、半数以上が食品関連カテゴリが占め、飲料、酒類が続く

まず、コンビニエンスストア大手3社(セブン-イレブン・ファミリーマート・ローソン)の購入レシートからカテゴリ構成をみると、各社「生鮮・惣菜(主に生鮮三品、おにぎり、スイーツなど)」および「食品(主に菓子類、調味料類、アイスなど)」の「食品関連カテゴリ」の構成比が半数以上となります。セブン-イレブンと(生鮮・惣菜38.7%/食品19.5%)、ファミリーマートの(生鮮・惣菜32.7%/食品19.7%)の2社は、生鮮・惣菜が食品カテゴリを10ポイント以上上回りましたが、ローソンは(生鮮・惣菜28.6%/食品25.4%)となりました。次に大きな構成比を占めたのは、「飲料カテゴリ<13.3%~17.9%>」、「酒類<4.9%から8.6%>」と続きました。各社2割近くの構成比を占める「その他」に関しては、雑誌や文庫本などの書籍、たばこなどが含まれています。

次からは、コンビニエンスストアの主力商品カテゴリでもある「おでん」と「揚げ物」をセレクトし、全体のレシート購入金額に占めるシェアをみます。

冬場じゃない、コンビニおでんは9月と10月に売れていた

「おでん」の、レシート購入金額全体に占める割合をみると、セブンイレブンは0.7%、ファミリーマートは0.2%、ローソンは0.1%となります。(各社平均割合)

季節商品のため、他商品よりも割合が小さくなりますが、店頭に並び始める8月~10月に各社TVCMやキャンペーンなどを投下し、それに伴い各社の購入金額も上昇していることがわかります。特にセブン-イレブンは9月(2018年3.3%/2019年3.2%)に跳ね上がっているのが特徴的です。

揚げ物は各社一定シェアあり。ローソンは企画実施月に大きな伸びをみせた

「揚げ物」の、レシート購入金額全体に占める割合をみると、セブンイレブンは2.9%、ファミリーマートは3.3%、ローソンは3.5%となり(各社平均割合)、3社に大きな差はありませんでした。

各社購入金額のピークは、セブン-イレブンは4月(4.7%)、ファミリーマートは3月(5.9%)となります。ローソは8月(6.0%)に大きな伸びをみせ、背景を調べるとdポイントカード会員先着60万名に、Lチキが1個無料でもらえるキャンペーンが実施されていため、その影響が考えられます。

また、ファミリーマート(5.1%)は12月にも伸びがあり、主力のファミチキなどの商品が、クリスマスパーティを盛り上げるフードメニューとして選ばれていたことが予想されます。

<前半のまとめ>

  • コンビニエンスストア大手3社平均客単価は500円台。586円のセブンが最多。アイテム数は2~3個
  • 来店曜日は、金・土曜が各社ピークだが、ローソンは火曜に再び上昇。キャンペーン、タイムセールが来店に寄与。
  • 主力のおでんは冬場ではなく店頭に並び始める9月10月にレシート金額がピークとなり、揚げ物においては、各社一定の割合は確保し続けており、ローソンはLチキ無料の企画実施月(2018年8月)に跳ね上がっていた。

資生堂、花王、カネボウ、コーセー…肌診断データ活用に本腰入れる化粧品メーカー

これまで店頭で行われていた肌診断のスマホアプリ化が進み、化粧品メーカー各社による肌データ獲得・活用の動きが活発化しています。先日コーセーはヘルスケアビューティーアプリ「Skin Diary」のリリースを発表。資生堂、花王、カネボウもこの数年で積極的な取り組みが見え出したこの分野。小売業はメーカー各社の動きにどう追随すべきなのでしょうか?(MD NEXT 編集長:鹿野恵子)

ソーシャルゲームのノウハウ生かしアプリの継続利用促すコーセー

今回コーセーが発表した「Skin Diary」は、毎日の肌状態を、睡眠や気分といった外的要素と組み合わせて記録するアプリです。継続して記録を続けることで、自分の肌の本当の性質や隠された傾向を精緻に知ることができるといいます。

「Skin Diary」の開発においてはソーシャルゲームの知見があるDeNAライフサイエンスと協働したことも非常に興味深い点です。日々の状態を記録するアプリはどうしてもモチベーションが保てず離脱してしまうユーザーが少なくありませんが、「Skin Diary」にはDeNAライフサイエンスがゲームやスポーツの事業で培った、独自のノウハウ『エンゲージメントサイエンス』が随所で活用されており、飽きずに楽しく使い続けてもらうことを目指しているそうです。

将来的には、お客が記録・蓄積した美容データを、店頭と連携して最適な美容アイテムを効率的に提案する仕組みも検討するとのこと。

「これにより、これまで店舗や美容ブランドごとに分断されていたお客さまの美容データが共通のデータとして統合されるため、お客さまごとにパーソナライズされた美容体験の提供が可能」になると、DeNAはプレスリリースで述べています。

資生堂は「Optune」でひとりひとりの肌状態に合わせたスキンケアを提供

大手化粧品メーカーの肌データ活用のなかで、一歩先をいっているのは資生堂の取組でしょう。

資生堂は「肌パシャ」というスマホだけで本格的な肌分析が行えるアプリを2017年から提供しています。2019年9月には、これまでのうるおい測定に加え、「ハリ・透明度・シミ・シワ・肌色分析」、総合結果「美肌チャート」を搭載するなど測定項目を強化しました。

また、同社が2019年7月にリリースした「Optune」はさらに一歩進んだサービスです。スマートフォンのカメラで撮影して測定した肌の状態、睡眠状況や今の気分、そして気温や湿度、紫外線、PM2.5など、肌に影響を与える環境データなどの情報を組み合わせて分析。

8万以上ものお手入れアルゴリズムから、その日の肌に必要なケアを決定します。

最終的には専用のツールからその人の状態に合わせたスキンケア剤が自動的に抽出されるというものです。まさにカスタマイズの最先端を行ったサービスでしょう。

Optuneは月額1万円の定額制で、スキンケア剤の抽出に使用するカートリッジは残量が自動管理され、無くなる前に自動で届く仕組みになっています。これは究極の顧客囲い込みと言えます。

LINE連携で軽快な「肌id」、水分測定センサ配布する「smile connect」

花王は2019年9月からスマートフォンのカメラで肌年齢を分析する「肌id」を開始しました。同社の化粧品ブランド「ソフィーナiP」と連動したサービスで、対話アプリの「LINE」で友だち登録することで同サービスを利用することができます。

これは、株式会社パーフェクトがARメイクアプリ「YouCam メイク」の「AI 肌チェック」のブラウザ向けモジュールを提供したもの。LINEと連携していて軽快な使い心地です。

カネボウは「smile connect」というアプリで肌診断を提供。こちらはキャンペーンでスマートフォンのイヤホンジャックに差し込んだ肌水分測定センサーを配布しています。カメラだけで測定する他社とは一歩違ったアプローチをしています。

小売業独自の提案をする準備をするタイミング

このように、2019年はメーカー起点でさまざまな肌診断アプリが登場(強化)された年のようです。小売業はこの動きをどのように考えるべきでしょうか?ポイントは2点あると考えます。

まず1点目はさらに専門的な肌分析が店頭では必要とされるようになるだろう、ということです。

スマートフォンを使うという性質上、環境や機種、ユーザーのリテラシーに左右されるカメラでの撮影に頼らざるをえません。今後カメラの機能はより高くなることが予想されますが、どんなにソフトウェアの性能が向上しても、ある程度の精度どまりになることは間違いないでしょう。本格的な診断を受けたい場合は店頭に足を運ぶというような動線ができていくはずです。

花王はAIスタートアップのプリファードネットワークスとともに「皮脂RNA」を使って肌状態にコミットする美容カウンセリングサービスの構築をめざすと発表しました。

花王とPFN、皮脂RNAモニタリング実用化プロジェクト開始

これはとても簡単に解説すると、あぶら取り紙のよなものからとった皮脂から肌の状態のモニタリングをする技術を確立しようとするものです。簡易な肌診断がスマートフォンでできるようになれば、今後店頭ではこのようなさらに専門的な肌診断サービスの提供が求められるようになることでしょう。

もう一つ、これらの肌診断アプリはメーカーが提供しているため、横断的に化粧品を購入されるお客にとっては使い勝手が悪くなっている状況ということも小売業は注目しておきたい点です。

お客様はスキンケアはA社、化粧下地はB社、ファンデーションはC社…という使い方をされていて、メーカーの縛りがある「メーカー発肌分析アプリ」の提案は効きにくく、アプリとしても使い勝手が悪いのではないでしょうか。

そういったニーズを汲み取ってか、NTTドコモとソニーが肌解析アプリ「FACE LOG」を2019年6月にスタートしました。中立的な立場からの肌診断アプリとしては注目に値するでしょう。

本来であれば、メーカーを横断してお客に商品をご紹介できる立場である小売業が率先してこのような取り組みをするべきなのかもしれません。

かつてメーカーごとに顧客台帳があり、顧客管理を複数の台帳にまたがって行わなければならなかったために、使い勝手が非常に悪かったことがありました。今はメーカーごとではなく、台帳の統一化がかなり進んでいます。

同様に肌診断をメーカーごとにばらばらにおこなっていたのでは店頭は回りません。アプリで顧客を取り込み、店頭でより精度の高い肌診断を提供し、商品提案はメーカー横断で行える…そんなツールを小売業が率先して用意することができれば「最強」です。

肌診断アプリで集客したお客を取り込むためには、店舗側では3つの準備が必須になるはずです。

1つ目は店頭で更に詳細な肌診断を行えるツールを準備すること(それがないとメーカー直販への顧客流出は免れません)、2つ目は個別対応の為に自社の統一台帳を作り運用すること(電子台帳ならより時間短縮できる上にデータを活用できます)、3つ目は診断結果や要望をもとにメーカーを横断して化粧品を提案できるカウンセリングツールを用意すること(タブレットカウンセリングツールなど)。

たとえメーカーほどの開発費をかけることができなくても、小売側で今から準備できることは山ほどあるのではないでしょうか。