「おもてなしNo.1」のドラッグストアとして取り組む

SDGs関連サービス提供で地域貢献するココカラファイン

流行語になる前から「おもてなし」という言葉を前面に掲げて営業してきたココカラファイン。最近では小商圏内でドラッグストア、調剤薬局、介護関連施設を連携させる「ヘルスケアネットワーク」の構築に注力している。地域貢献や社会的な意識の高い同社のSDGsに対する取り組みを取材した。(月刊マーチャンダイジング 2019年2月号より転載)

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まずは役員向けにSDGs勉強会をスタート

「私は企業品質部で主に品質管理を担当していますが、同時に社内で年2回開催しているCSR委員会の事務局責任者も兼任しています。それもあって、2015年9月に国連サミットで採択されたときからSDGsが気になっていました。少なくともこの中のいくつかは弊社がCSR(※)活動として実践していることにつながるとおもっていました」

そう語るのは、ココカラファイン(神奈川県横浜市)の武隈健司氏。とはいえ、SDGsという言葉自体わかりにくいこともあり、急にSDGsを社内で進めようとしてもうまくいかないと考えた武隈氏は、年2回のCSR委員会の中でSDGsの勉強会を行うことにする。

「CSR委員会に出席するのは、社長、副社長、各販社の社長、社内の役員クラス。まずは役職者がSDGsについて認識を深めることから始め、徐々に全従業員へ浸透させていく目的で、CSR委員会でSDGsの勉強会を開始しました」

勉強会では、「そもそもSDGsとは何か」から、わかりやすく説明。また、なるべくCSR活動にからめてSDGsを解説することで、企業の発展に大事なことなのだという意識を持ってもらえるよう心掛けたという。

「それと、SDGsの一環として実際にどんなことをすればいいのかを、他社の取組み事例を紹介することで理解してもらったりしました」

そんななか、今年、日本チェーンドラッグストア協会において「SDGs推進委員会」が発足、委員長にココカラファイン代表取締役社長塚本厚志氏が就任することに。それが追い風になって、社内でもSDGsに力を入れていこうという機運が高まった。

※CSR:Corporate Social Responsibilityの略。企業の社会的責任。あらゆる利害関係者の要求に適切に対応し社会的責任を果たすこと、社会貢献すること。

17のゴールから自社事業につながる3つからのスタート

ココカラファインは「人々のココロとカラダの健康を追求し、地域社会に貢献する」という経営理念と、「おもてなし№1になる」というコーポレートスローガンに基づき、事業活動を推進してきた。だから、こうしたおもいで展開している事業活動自体でCSRを実現しているという自負がある。

「そうしたなか、SDGsが出てきて勉強会も回を重ねるうちに、どういうものかは理解してもらえてきた。ただ、17の目標に向かってすべてを同時にスタートさせるのは到底無理なことで、自分たちにできることから始めることが大事であると考えました。そこで弊社の事業活動の中で、この目標につながるものを3つに絞りました」

選んだ3つのゴールは「③すべての人に健康と福祉を(保健)」「⑧働きがいも経済成長も(成長・雇用)」「⑪住み続けられるまちづくりを(都市)」。

とくに「③すべての人に健康と福祉を(保健)」はまさにドラッグストアが強みとしてとらえることができる点だ。ココカラファインは、介護施設事業も展開しているので福祉の面でもカバーできている。

「また、これは③だけでなく、「⑧働きがいも経済成長も(成長・雇用)」にも当てはまる内容ですが、全従業員とその家族が生き生きと働き続けられる環境づくりのための取組みの一環として『ココカラヘルスキャンペーン』を進めています。全従業員が健康に関する専門知識を深めるとともに、疾病予防や早期治療にさまざまな形で投資する取組みであり、同時にココカラファインを利用されるお客さま・患者さまの健康に関する提案力を強化する施策です」

この取組みは国にも評価され、今年2月、経済産業省と日本健康会議が共同で選出する「健康経営優良法人2019大規模法人部門(ホワイト500)」に認定されている。

弱点克服も見据えた自社独自の3つの主軸

自社の事業活動をSDGsにひも付けて考える作業のメリットは、すでに実践していることを明確にできると同時に、できていないことも見えてくることだ。武隈氏は、「⑪住み続けられるまちづくり」の面で、健康推進については地域で行う健康イベントなどを通して貢献できているものの、環境保全という観点からの貢献がまだ足りてないのではないかと気付かされたという。

「それと③と⑧に関しても、できている部分とできていないことがあったので、改めて自社が取り組むべきSDGs的課題として独自に3つの柱を設定しました」(武隈氏)

その3つは以下のとおり。

 ◇人権・労働慣行
 ◇環境
 ◇地域社会の貢献

人権・労働慣行は③、⑧、⑪いずれにも関わる項目。多種多様な雇用形態の全従業員が、最大限活躍できるよう支援し、従業員にとって魅力的な職場を目指すというもの。具体的にはCSR委員会の下部組織「安全衛生部会」のなかで、働き方、有給休暇などについて議論した。

「従業員の意見、要望、不満を受け付けるES相談窓口を設置しました。ちなみに2018年度は167件の相談を受け付け、対応しました。なお、ES相談窓口には相談しにくいという人のため、完全に第三者企業に委託したリスクホットラインも設置しています」

LED照明の積極導入などで環境問題にも取り組む

環境は「⑪住み続けられるまちづくりを(都市)」だけでなく、「⑫つくる責任、つかう責任(リサイクル)」、「⑬気候変動対策」もからんでくる課題。地球環境を保全しながら事業活動を進めていくため、LED照明の積極的導入など環境負荷低減とともに、事業を通して環境保全に取り組んでいくことを目標にしている。

「2019年から環境省の取組みRe-Styleのパートナー企業となり、循環型社会の構築に向け、3R(Reduce、Reuse、Recycle)に取り組んでいます。ドラッグストアでは弊社がはじめてだとおもいます」レジ袋も2020年から経産省が進めている有料化に向けて準備を進めているところだ。

「レジ袋という備品が有料化によって商品になるわけです。ただ、有料にすることが目的ではなく、あくまで地球環境保護のため、プラスチックを減らすためだという啓発をお客さまにどうやって伝えるかも課題のひとつです」

地域社会の貢献も、③、⑧、⑪のいずれにも関わってくる大切な目標。その一環として毎年、東京と大阪で実施しているのが「ココロ、カラダ、ゲンキ。フェスタ」。2019年は、東京は約3万人、大阪でも1万4,000人もの来場者数があったほどの盛況ぶりだ。

「今年は子供たちに薬剤師体験をしてもらったほか、3Rブースをつくってエコバッグを配布したり、薬剤師が健康相談を行ったり。小さなイベントであれば、各店ベースでたくさん実施しています」

また、日々の店でのお客さま対応も地域貢献にダイレクトにつながる大事な要素。

「さまざまなお客さまが買物しやすい環境づくりを進めています。そのひとつが全店に設置したウオーターサーバー。お買い求めいただいたお薬をその場で飲めるようになっています。2016年からは環境省と官民一体の『熱中症予防声かけプロジェクト』に参加し、水分補給をご案内しています」

なお、同社では2030年までに目標を達成するために、まず5年後の2024年で一区切りして、次の5年で何ができるかを考えていきたいという。

「今後は、弊社の取組みを随時、紹介しながら、業界内にSDGsを浸透させていければと考えています」

<取材協力>
ココカラファイン管理本部 企業品質部
品質管理担当 統括課長
武隈 健司氏