交差比率を棚割の設計図づくりに活用する

商品の機能性を理解してもらえるような台所消耗売場を作ろう

食器洗い用のスポンジや食品にかぶせるラップ、ごみ袋など「台所用消耗品」は、洗剤と並んでキッチン関連カテゴリーの中では市場規模の大きな領域である。また、機能性の高い商品も多く情報発信が重要となる。このカテゴリーの利益を最大化するためには何が大切か、日用品の大手中間流通業ジェムコに取材した。(月刊マーチャンダイジング2020年1月号より編集の上転載)

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「ラップ・ホイル」「ポリ袋」は台所消耗品の2大カテゴリー

家庭日用品の中間流通業ジェムコ(本社/群馬県佐波郡、代表取締役黒田克己氏)では、調理器具から食器用洗剤、スポンジなどキッチン回りの日用品を幅広く扱っている。今回はその中でも同社が「台所消耗品」と位置付けるカテゴリーについて取材した(台所用洗剤を除く)。

図表1は台所消耗品を構成するカテゴリーと市場規模および有力小売業が各カテゴリーにどの程度のスペースを割いているかを示している。この中では「ラップ・ホイル」カテゴリーの市場規模がもっとも大きい。ラップ・ホイルカテゴリーにはラップ、アルミホイルに加え、いずれも構成比はひと桁だがジッパーバッグ、クッキングはシートなどが含まれる。

食品保存やレンジアップの際に使われるラップはこのカテゴリーの中で約60%を占める主要アイテムで、素材別に「ポリ塩化ビニリデン」(84.4%)、「塩化ビニル樹脂」(その他と合わせ6.1%)、「ポリエチレン」(9.5%)の3つに分類できる(カッコ内はラップ内金額構成比/2018年インテージSRI)。

ポリ塩化ビニリデンは分子間の隙間が小さくバリア性が高いので、ニオイ、湿気、空気を通しにくく耐熱性も高い。サランラップやクレラップなどシェアの高い有力ブランドがこの素材を使っている。コストがかかるので他素材の商品と比べると単価は高くなる。

塩化ビニル樹脂は伸縮性と耐久性が高いのが特徴。よく伸びて丈夫なので食品スーパーで生鮮食品をラップしたり、麺類の出前で器にかけたり業務用として使われることが多い。

ポリエチレンはもっとも安価で酸素を通しやすい特性がある。耐熱性は弱いので電子レンジには適さないという難点もあるが、酸素を通しやすいので野菜や果物など鮮度を保つために酸素の供給が必要な食材には向いている。コストが低いのでプライベートブランド(PB)商品の素材に使われることが多い。

2番目の市場規模を持つ「ポリ袋」とはごみ袋や流しに置く水切り、保存用のポリ袋を指す。ごみ袋は一般的なごみ袋のほかに自治体など行政が指定したものがあり、その金額は図表1には入っていない。別データでは行政指定袋は約172億円という数値があり、相当な額になる。自治体によって異なるが行政指定や認定の製造、流通経路があるため図表からはあえて外してある。

種類豊富なスポンジ、ニーズ減のアルミ成型品

「たわし・布巾」カテゴリーの主要アイテムは食器洗い用のスポンジである。スポンジには持ちやすく力の入れやすいハードタイプ、折り曲げて食器の縁など洗えるソフトタイプ、表面にネットを付け汚れをかき落とすネットタイプ、近年使用者が増えているメラミンタイプ、昔ながらのヤシの実の繊維を使ったパームタイプなどがある。

金額構成比ではハード、ソフト、ネットで約6割を占める(2018年インテージSRI)。その他主要なアイテムでは、メラミン8.4%(同)、パーム3.4%(同)、PB10.8%(同)となる。

「家庭用炊事手袋」には「薄手」「中厚手」「厚手」、デザインなどを工夫した「付加価値」といったサブカテゴリーがある。薄手と中厚手で5割以上の構成比となる。

「アルミ成型品」とは、コンロの周囲にアルミ製のボードを立てて油はねを防ぐ商品などである。レンジガードとも呼ばれる。油がはねやすい天ぷらや揚げ物のときに使うことが多く、揚げ物は近年スーパーの総菜を買う人が増えたこともあり、近年は売場を縮小する小売も多い。

「油処理」は揚げ物や天ぷら用の油を固める素材や油汚れを拭くシート材などで構成される。

情報発信用にフリー棚の設置を提案

台所用消耗品に属するアイテムは、前段で説明したように、機能や特徴によっていくつかに分類される。それぞれの機能は専門性が高く、買物客はそれを理解していないことが多い。

「台所用消耗品は特徴を知ったうえで実際に触ってみないと違いがわからない商品が多いです。ラップにしても3つの素材の違いやそれぞれが何に適しているかを知っているお客さまは少ないでしょう。炊事用手袋の厚さは触って確かめないと実際の使用感がつかめません。こういった商品は売場にテスターを置くことも必要だとおもいます。弊社が提案しているのは、定番棚の中に1本、商品販売を目的としないフリースペースを置いて商品に触って確かめてもらう、あるいは情報発信やテスティングにより新商品のプロモーションをすることです」(鈴木伸明氏)

厳しい競争の中で棚効率を下げるようなリスクを冒したくないというのが小売業の本音だろう。しかし、台所消耗品は機能性の高い商品が多いので、情報発信することで、高機能高単価商品を納得して購入するお客が増え、カテゴリーの収益性が向上する可能性が高まる。

棚1本分のフリースペースを取る余裕がなければ、高機能で高単価の商品にテスターや説明ボードを付けるなどの工夫も有効ではないか。

ラップに関していえば、ポリエチレン製の低価格PB商品を購入して、電子レンジで加熱してラップが溶けたなど不満を感じる人は多い。素材による適切な用途を知らなければ、ラップだけでなくPB全体や企業への不満、不信にもつながるので、情報発信による適切な商品理解は重要である。

交差比率を棚割の基準にする

ジェムコでは棚割をつくるときに基準となる指標が必要だと考え、交差比
率(※)をその指標にすることを提案している。図表2はジェムコの考える売場の設計図だ。横軸に売場スペースを、縦軸に市場規模を置いて、4象限で考えている。各カテゴリーの基準となる交差比率を最初に設定し、棚割を決めることでその交差比率に近づけるような売り方をする。

※交叉比率:儲けを表す指標で、〈粗利益率×商品回転率(年)〉で求められる。粗利益率30%の商品が年7回転すれば交差比率は210%。200%以上が合格点とされる。

たとえば、カテゴリーDは、市場規模が大きくて売場スペースを広く取っているので高い商品回転率が見込める。最初に交差比率を設定していれば大体の粗利益率や売価も決まる。交差比率150に設定しているということは、利益よりは高回転で集客を狙っており、下段で大陳する売り方が考えられる。

このようにジェムコでは交差比率を決めることで効率的で全体最適につながる売り方、売場づくりを設計することを提案している。その他、同社が設計図で重視する点は「商圏に合わせた品揃え、組合せ」「都市型か郊外型か」「競合店および競合店の業態」「強化カテゴリー、見切りカテゴリーの見極め」などである。

競合店の業態に関しては、地方で店舗が少なく同一商圏内でドラッグストア(DgS)、ホームセンター(HC)が競合する場合、DgSがHCのシェアを取るためには台所関連品の品揃えを厚くしなければいけない。

たとえば、アルミ成型品は商品が大きく売場スペースをとるうえ、家庭内で揚げ物の調理、あるいは調理そのものが減少してニーズは低下傾向にある。とくに「食」を強化しているスーパーでは家庭用品の売場縮小に伴い、アルミ成型品をまったく扱わない企業も最近見受けられる。

アルミ成型品のチャネル構成比の半分はHCだが、自店がDgSで競合する業態がスーパーであれば、限られた売場であってもあえてアルミ成型品の最低限の品揃えをすることで日用品を網羅する店舗イメージを与えられる。また、大型商品の陳列がスペース的に難しければ、写真などを掲示して客注を受けられる仕組みを採用することでお客の利便性は上がる。

これはアルミ成型品だけでなく、ほかのカテゴリーにもいえること。商圏内のライフスタイル、競合との戦い方を考え品揃えの設計図をつくる必要がある。

異なるメーカーの商品を組み合わせて併買促進

ジェムコで現在考えているのは、「A社のアの商品」と「B社のイの商品」とを組み合わせて使ってもらうことで利便性が上がり併買を生み出す売り方だ。

たとえば、浸け置き洗いを推奨する台所用洗剤と水をためるボウルを併買する。手に付くとニオイが気になる塩素系漂白剤と炊事手袋を同じ売場で展開するなど。

台所用消耗品は機能性が高く説明を要する商品が多い。単品の機能性を説明し、理解・納得して購入してもらうことに加え、組み合わせることで利便性が上がる商品を見つけ出し、適切な情報を付けて併買を促せばカテゴリーの収益性は上がる。

発信すべき情報を探して販促物をつくる。併買促進のアイデアを考えるなどのプロセスではカテゴリーを横断的に見るベンダーの存在は貴重だ。

多くの小売業やメーカーと取引があり、豊富な情報を蓄積したベンダーをカテゴリーコンサルタントとして活用することで、台所用消耗品の販売効率も上がっていくだろう。