今週の視点

「働き方改革」で増える休日に 小売・サービス業はどう対応すべきか?

第32回小売業の正月休み増加、10連休など年間休日増加

「働き方改革」の影響で、労働者の休日を増やす政策が加速しています。今年の正月を休日にする小売・サービス業が、一気に増えた平成最後の正月でした。私の自宅近くの「サミットストア」は、1月1日と2日を2連休としました。月刊MDを創刊した20数年前は、正月三が日を休む小売業も結構ありましたが、その後は、年中無休が常識になり、24時間営業店も増加し、小売・サービス業の営業時間はずっと増えてきました。

  • Facebook
  • Twitter
  • Line
  • Hatena

12月31日15時から1月1日終日を全店休みにして話題になったラーメン店チェーンの「幸楽苑」の新聞広告。

小売・サービス業の正月休みが増加した平成最後の年

しかし、2019年からは、正月休み、お盆休みなどを取る小売・サービス業が増えていくと思われます。最大の理由は、労働人口の減少によって、慢性的な人手不足が続いており、「正月くらいは休める」ということを採用対策、ES(従業員満足)向上の目玉にしようと考える企業が増えていることです。また、休日を問わずアマゾンでなんでも買える時代に、無理して正月営業をする経済効果はどの程度なのか? という議論も出ています。

冒頭写真のラーメン店チェーン「幸楽苑」は、12月31日の15時から1月1日の終日、全店を休みにして大きな話題になりました。また、11月に幸楽苑の社長に就任したばかりの新井田昇・新社長名で、12月31日の朝刊に「2億円事件」という見出しの新聞広告を掲載したことも大きな話題になりました。

広告内容を要約すると、『いつからでしょうか。お正月にいろいろなお店が営業するようになったのは。私たち幸楽苑も、いつしか年中無休のラーメン店チェーンを売りにしていました』『企業にとって売上や株価は大切ですが、新社長としての初仕事は「働く人の気持」を守ることです。1月1日の売上は「およそ2億円」にのぼりますが、「働き方改革を、お正月にも」との思いから、創業64年で初めて元旦の休業を決めました』

また、自動車販売店の「レクサス」は、12月28日~1月4日を休業にしました。以前は、正月休みには「新車の初売り」のテレビCMがずっと流れていましたが、そういえば今年は新車の初売りのCMが少なかったですね。季節の風物詩だった「正月に新車を見に行く」というライフスタイルも廃れていくのかもしれませんね。

ドラッグストア(DgS)ではサッポロドラッグストアーが一部の店舗を除き2019年1月1日を休業としたそうです。この流れはいろいろな業態に波及していくことが推測されます。

今年のGWは10連休。どんな変化が起こるのか?

皇太子さまが即位される2019年5月1日と、皇位継承のための「即位礼正殿の儀」が行われる2019年10月22日を、1年かぎりの祝日にする法律が11月13日に閣議決定されました。そうすると今年のGW(ゴールデンウイーク)は10連休になります(下記図参照)。

その結果、2019年は、土日祝日、年末年始休暇(12月20日~1月3日)を合計すると、年間休日日数は125日。なんと1年の34%が休みになります。休日が増えると「働き方」も変化しますが、消費の仕方も変化すると思います。

BIGLOBEの調査によれば、「GWに何をして過ごしますか?」という質問に対して、第1位が「自宅で休息する(41%)」、第2位が「決めていない(27.4%)」と、この二つの回答で58.4%を占めます。そして第3位が「ショッピングに行く(24.0%)」です。ちなみにGWの出国ラッシュが毎年テレビで話題になる「海外旅行に行く」と回答した人はわずか2.2%です。そういう意味では、10連休の時間の使い方を決めていない消費者に来店を促すことができれば、10連休は小売・サービス業にとっては大きなビジネスチャンスになります。

また、10連休の期間は、保育施設も休日になるので、日頃、子供を保育施設に預けて働くお母さんにとっては、10連休は大きな負担になり、10連休の大きな弊害といわれています。10日間、子供とずっと一緒にいるお母さんが、リアル店舗に行きたくなるようなイベントやサービスを企画してもらいたいですね。

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。