今週の視点

日野眞克 今月の視点特別編

第112回2023年の経営課題は「狭小商圏時代対応」。客数・売上対策の打ち手10

リアル小売業の商圏は、小さく狭くなっています。この原稿では、2023年年始の提言として、限られた商圏人口の中で、売上と客数を増やすための10の対策を整理します。大商圏時代のMDとは大きく異なることがわかると思います。(月刊マーチャンダイジング 主幹 日野眞克)

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「月刊MD note版」では毎月「日野眞克の視点」を連載。ドラッグストア経営における経営のヒントを教示します。是非ご購読ください!
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広域集客よりも来店頻度を増やす

リアル小売業が狭小商圏化している理由は2つあります。ひとつは、オーバーストアです。日本の人口をドラッグストアの総店舗数で割り算すると、ドラッグストア1店当たりの商圏人口は7,000人を切っており、狭小商圏化が加速しています。

もうひとつの理由は、ECでの買物の普及です。自宅から出て店に到着するまでに、車であれ徒歩であれ30分以上かかる買物は、ECの買物の方が便利です。特に日用品やビールなどの必需品の買物は、「近くて便利」な店でなければECに奪われて、どんどん狭小商圏化していきます。

リアル店舗の狭小商圏化が進む中で、客数と売上を増やすための10の対策を図表1に整理しました。第1は、広域商圏から集客するのではなくて、限られた商圏に住む固定客の「来店頻度」を増やすことです。広域商圏時代は、来店1回当たりの買物金額を増やすことが重視されましたが、狭小商圏時代は「年間買物金額」という考え方が重要です。たとえば、1回の買物で1品しか買わなくても、365日毎日来店してくれる顧客は、重要なロイヤルカスタマーだからです。

来店頻度を増やすためには、新しい品群や品種を増やす「ラインロビング」に取り組むことが基本対策です。ラインロビングによって「買物目的」が増えれば、必然的に来店頻度は増えます。ドラッグストアが「青果」や「精肉」をラインロビングすることを邪道だと揶揄する人もいますが、PI値(買上率)の高い青果・精肉をラインロビングすることは、狭小商圏で客数を増やすための基本対策なのです。

アソートメントで新定番を創造する

また、新しい市場やカテゴリーをつくることで需要創造することも重要です。

写真1は、さまざま売場に分散していた商品を、「糖質コントロール」という生活テーマで再編集した売場です。分散していた時には見逃されていた商品も、生活テーマでまとめることで気づきが生まれて、商品によっては3倍も販売数量が伸びたそうです。生活テーマで商品を再編集する「アソートメント」は、さまざまな商品を取り扱う小売業と卸売業だけが消費者のために提供できる代表的な技術です。アソートメントによる「需要創造」は、狭小商圏時代にはとても重要になると思います。

[写真1]糖質コントロール(左)とフェムテック(右)の新定番づくり。

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客層を広げることが狭小商圏では重要

狭小商圏で客数を増やすためのもうひとつの基本対策は、「客層を広げる」ことです。

最初は「性別を広げる」ことが重要です。同一商圏の男女の人口比が5対5と仮定すると、その店舗で少ない性別を増やすことが客層を広げることです。ドラッグストアであれば、女性客の比率が圧倒的に高いので、男性客を増やすことが最重点の客数対策になります。男性の固定客率の高い「酒類」を強化し、一人暮らしの男性のための「簡便食品」を品揃えすることも、客層を広げることにつながります。一方、男性客の多いコンビニは、女性客を増やすことが重点対策になります。

第2は「年齢層」を広げることです。非食品の中てPI値(買上率)の高い「オーラルケア」は、老若男女を問わず購入するので年齢層が広く、しかも消耗品なので頻繁に来店してくれます。オーラルケアは、狭小商圏で客数を増やすための戦略カテゴリーといっていいでしょう。

第3は、「価格帯の幅」を広げることです。従来のチェーンストア理論では、「商品構成グラフの左寄せ」という言葉があるように、なるべく価格帯は狭くて、左側の低価格帯に商品を絞ることが重要と言われてきました。しかし、狭小商圏時代に商品構成の左寄せをやりすぎると、狭小商圏に住む客を限定することになります。特定の住居エリアにさまざまな所得層の人が住む日本では、ある程度の価格帯の幅が必要です。とくに、「中・高価格帯の売れ筋を育成する」ことは、狭小商圏時代のMDでは重要だと思います。

最後は「季節を広げる」ことです。最近は、代表的な季節品である入浴剤、殺虫剤、日焼け止めなどの販売期間が延びており、「年間定番化」している季節品も増えています。季節を広げることも、狭小商圏時代のMDには不可欠の戦略になります。

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著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。