今週の視点

AI、ロボットを活用した省人化の挑戦

第9回ピースピッキング生産性が2倍になったPALTACの次世代型物流システム

労働人口の減少は、日本社会の深刻な課題です。労働力不足を解決するための「省力化・省人化」の挑戦が、さまざまな分野で進んでいます。AIとロボット技術を駆使した省人化によって、物流センターの庫内作業の生産性を2倍に向上したPALTACの最新物流センター「RDC新潟」を視察してきました。

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顧客接点は有人で行い、単純作業は省人化を進める

無人レジの導入を進めていたウォルマートが、今年5月に「無人レジシステム(スキャン&ゴー)の導入を中止」という発表をしました。中止の理由は、無人レジシステムの導入でレジ人員を減らしても、生産性の向上には結びつかず、一方で、「顧客満足」の大幅な低下を招いたからです。

顧客との接点である売場を省人化しすぎると、リアル店舗の顧客満足は低下してしまいます。無人店舗で買物をするくらいなら、ネットで買物した方が便利ですし、リアル店舗にわざわざ行く理由がなくなってしまいます。

リアル店舗は、ネット販売では体験できない「接客してくれる」「試せる」「試食できる」「話せる」といった、人を介したリアルな買物体験の質を向上させることが、ネット販売との差別化につながります。顧客接点である買物体験(売場)には人手をかける一方で、物流センター、バックヤード作業、補充・発注作業などの顧客接点以外の作業の「省人化・省力化」はどんどん進むでしょう。

株式会社PALTAC(本社・大阪市、二宮邦夫社長)は2018年8月より、AIとロボットの最新技術を駆使した最新物流センター「RDC新潟」を稼働させます。AI(人口知能)とロボット技術などの最新テクノロジーと物流ノウハウを融合させた独自開発の次世代型物流システム「SPAID(Super Productivity Advanced Innovative Distribution)」を導入する第1号の物流センターです。

人が動かないで商品が動く、最新ピースピッキング

RDC新潟の最大の特徴は、「MUPPS(Multitaskcrane Piece Picking System)」と呼ぶ「ピースピッキング」の仕組みを根底から変革したシステムを導入したことです。

物流の単位は、コストのかからない順番で「パレット物流」「ケース物流」「ピース物流」に分類できます。ピース物流は、わざわざケースをばらして、ピース(1個)単位でピッキングするわけですから、当然、人手とコストがかかります。日本はアメリカほど店舗面積が大きくなく、また、PALTACの物流センターの取扱商品は、低回転の非食品が中心なので、必然的に「ピース物流」が主体になります。

従来のPALTACの「ピース物流」は、「摘み取り方式」と呼ばれる方法で、オリコンを搭載したカートを人間が動かして、在庫商品の場所に移動し、そこでピースピッキング(商品をオリコンに入れる)する方法でした。

今回PALTACが新開発した「MUPPS(マップス)」は、人間は所定の位置から動かず、商品が動くことでピースピッキングを行う方法です。ピースピッキングの作業の大半を占めていた「歩く」「探す」という作業がなくなり、ピースピッキングの生産性は2倍に向上したそうです。

メーカーから納品されたケースの商品を保管トレー(緑色)に詰め替える。保管トレーは、「トレー自動倉庫」に格納される。当然、人は歩かないですべての作業が完了する。
自動倉庫に格納された保管トレーが高速で移動する世界初のマルチタスククレーンシステム。1時間に1万トレー以上の仕分能力を持つ。
保管トレー(緑色)からピックトレー(青色)に詰め替えた後に、手元に搬送されたピックトレーの商品を店別のオリコンに詰める作業でピースピッキングは完了。人は動かない、商品だけが動く。

単品を詰めるピースピッキングも。ロボット化の実現を目指す

もうひとつの新技術が、「目(カメラ)」と「脳(AI)」を搭載した「AIケースピッキングロボット」です。ロボットが段ボールのデザインと形状を記憶するので、従来のピッキングロボットのような同じ動作の繰り返しではなくて、ランダムに置かれた段ボールを自動識別して、同じ種類のケースを選んで出庫します。メーカーから納品された段ボールケースが格納された「パレット自動倉庫」からの出庫作業の完全自動化を実現しました。1時間に600ケースを出庫でき、世界最速のスピードだそうです。

ロボットのピッキング作業を見学しましたが、ものすごいスピードでした。ロボットの良い点は、24時間稼働できること。当然、ピッキングの生産性は飛躍的に向上します。

PALTACは、「AIケースピッキングロボット」の技術を応用して、商品そのものをオリコンに入れる「ピースピッキング作業のロボット化」にも挑戦します。早ければ、2019年冬に開業予定の「RDC杉戸(埼玉県)」で、ピースピッキングのロボット化が実現できるそうです。映画ターミネーターで見た「未来」がもうすぐそこまで来ています。

AIケースピッキングロボット

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。