【速報】ドラッグストアの「生き残り戦略」最前線!マツココ、スギHD、新生堂薬局のトップが語る“変革”の真実

「変わらなければ生き残れない」――。社会保障費の抑制と健康寿命の延伸という国家的な課題に直面し、日本のドラッグストア業界は今、かつてない変革期を迎えています。単なる「モノ売り」から脱却し、地域社会の「ヘルスケアインフラ」へと進化を遂げようとする、3社のトップ戦略を紹介します。

月刊MD note版では、マツキヨココカラ&カンパニー、スギホールディングス、新生堂薬局のキーマンたちが語った、ニューフォーマット戦略とデジタル活用の全貌を公開します。

デジタルと新業態が牽引する「店頭起点のマーケティング」革命

👉【変わらなければ生き残れない】ニューフォーマット開発、プラットフォーム構築で店頭起点のマーケティングを進化させる:マツキヨココカラ&カンパニー 取締役 松田崇氏

マツキヨココカラ&カンパニーの戦略は、業界平均を大きく上回る化粧品と医薬品の構成比72%という、高付加価値型のビジネスモデルを基盤としています 。彼らは、「ユーザー数×LTV」を最重要指標と捉え、LTVを向上させるドライバーとして「チャネルの併用」と「サービスの併用」を促進しています 。特に注目すべきは、アプリを活用したデジタルサービス(メイクシミュレーション、調剤デジタルサービス、在庫を使った宅配サービスなど)の利用が、顧客のLTVを最大3.1倍にも引き上げているという具体的な実証データです

さらに、同社はオフライン戦略として、美容感度の高いお客様が集まる都市部に「旗艦店」や化粧品特化型の「ビューティフラッグシップ店舗」といったニューフォーマットを展開しています 。しかし、この新業態開発の真の目的は、従来のマス広告に依存した手法ではなく、「店舗発・店頭起点のマーケティング」を実践し、その有効性を示すことにあります

店頭での購買をきっかけにクチコミやSNSの投稿が自然発生的に盛り上がるという、従来の購買プロセス(セールスファネル)を逆転させた成功事例(資生堂アネッサとの共同企画商品など)は、小売業界の常識を覆すほどのインパクトを持っています

👉【変わらなければ生き残れない】ニューフォーマット開発、プラットフォーム構築で店頭起点のマーケティングを進化させる:マツキヨココカラ&カンパニー 取締役 松田崇氏

リアル店舗を進化させる「ヘルスケアインフラ」への挑戦

👉【変わらなければ生き残れない】地域客の一生涯の健康を支援する「トータルヘルスケア戦略」を推進する!:スギホールディングス 副社長 杉浦伸哉氏

スギホールディングスは、地域客が生まれてから亡くなる直前まで、一生涯の健康をトータルで支援する「トータルヘルスケア戦略」を推進しています 。その根幹となるのが、DgSと調剤薬局のネットワークを基盤に、在宅医療や介護施設との連携を図り、地域社会の「ヘルスケアのインフラ」となることです

調剤の収益性が下がる中でも、地域客の来店が見込めるDgSでの調剤事業に注力し、「訪問調剤」や「訪問看護」といった地域包括ケアシステムのインフラ整備に動いています 。また、専門性を強化するため、薬剤師向けに「専門薬剤師」の育成プログラムを実施し、有資格者の質を高めている点も注目に値します

一方、福岡・熊本を中心に展開する新生堂薬局は、DgSを脱却し、「ヘルスケアステーション®」という医療機関のようなポジションを確立しようとしています 。彼らが目指すのは、「処方せんがなくても健康の悩みを何でも気軽に相談できる地域一番の薬屋」です 。この理念を実現するために、膨大な顧客データと専門家の知識を結びつけたデジタルカウンセリングツール「健康台帳®」を開発・活用しています 。このシステムは、登録販売者のカウンセリング能力を飛躍的に向上させ、顧客の購買パターンなどから病気のリスクを察知し、適切な受診勧奨を行う仕組み(特許取得済み)を組み込むことで、実際に店頭でがんなどの早期発見に貢献する実績を上げています

👉【変わらなければ生き残れない】地域客の一生涯の健康を支援する「トータルヘルスケア戦略」を推進する!:スギホールディングス 副社長 杉浦伸哉氏

「データの一元管理」が変える顧客との関係性

👉【変わらなければ生き残れない】健康寿命延伸と社会保障費抑制のためニューフォーマットを推進し「健康台帳®」を活用:新生堂薬局 代表取締役社長兼CEO水田 怜氏

この変革の根底にあるのは、顧客との接点をデジタルで統合し、データを最大限に活用するDX戦略です。スギ薬局は、すべてのアプリとデジタル台帳の顧客データを同一の「統合ID」で管理することで、スタッフが同じデータに基づいたOne to Oneの提案を可能にしています

また、マツキヨココカラ&カンパニーは、店舗、EC、調剤すべてのチャネルの売上と顧客データをDMP(データマネジメントプラットフォーム)で統合的に管理し、施策の実行から効果検証までを一気通貫で自社で行うことで、ロイヤルティの高い顧客の特定とLTV向上施策の最適化を実現しています

新生堂薬局もまた、ID-POS、カウンセリング履歴、レセプトデータ、アプリデータなどを集め、DMPで一元管理することで、「健康台帳®」の高度なカウンセリングを支えています

👉【変わらなければ生き残れない】健康寿命延伸と社会保障費抑制のためニューフォーマットを推進し「健康台帳®」を活用:新生堂薬局 代表取締役社長兼CEO水田 怜氏

各社のトップが赤裸々に語った、この「ヘルスケアインフラ」と「店頭発マーケティング」を両輪とする戦略は、あなたのビジネスモデルを根底から変える示唆に満ちています。デジタルとアナログを融合させ、「人」の専門性と「テクノロジー」の力をどのように掛け合わせるのか。そして、いかにして抽象的なスローガンではなく、計測可能な数値としてLTVを極大化するのか。

なぜ、彼らはこれほどまでにLTVにこだわるのか? DXによって、なぜLTVが劇的に向上するのか? 「健康台帳®」が店頭にもたらした具体的成果とは?

これらの疑問の答え、そして変革の詳細なデータと具体的な施策は月刊MDでしか読むことができません。

👉【変わらなければ生き残れない】地域客の一生涯の健康を支援する「トータルヘルスケア戦略」を推進する!:スギホールディングス 副社長 杉浦伸哉氏

👉【変わらなければ生き残れない】健康寿命延伸と社会保障費抑制のためニューフォーマットを推進し「健康台帳®」を活用:新生堂薬局 代表取締役社長兼CEO水田 怜氏

ドラッグストア業界、データが示す「戦略の二極化」:「高収益」と「高速回転」

日本のドラッグストア(DgS)業界は、単に「店舗数」や「売上高」を競う時代を終え、今や「収益性の質」と「財務の安全性」をめぐる高度な戦略競争に突入しています。大規模なM&Aや経営統合が進行する裏側で、各社は「高粗利・高販管費」か「低粗利・低販管費」かの「戦略の二極化」を鮮明にしています。月刊マーチャンダイジング2025年10月号は、この複雑な業界の真の姿を、財務・商品・収益性の3つの側面から徹底的に分析した『ドラッグストア白書2025 データ編』を特集します。

儲けの構造が明確に二分!「高収益」対「高速回転」の戦い

上場DgS企業を分析すると、その収益構造(売上総利益率と販管費率)が大きく2つのタイプに分類されていることが分かります 1

高粗利・高販管費型:マツキヨココカラ、スギHD

マツキヨココカラ&カンパニーは、売上総利益率で35.1%と業界トップの水準を維持しています 。これは、高付加価値の医薬品や化粧品の売上構成比を高める戦略が功を奏しているためです 。

一方で、販管費率は高くなる傾向にありますが、営業利益率7.7%と優良企業の目安を大きく上回り、業界内での強力な競争優位性を示しています 。

低粗利・低販管費型:コスモス薬品、Genky DrugStores

対照的に、コスモス薬品Genky DrugStoresは、食品の売上構成比が高いフード&ドラッグ業態です 。Genky DrugStoresはついに食品の構成比が70%を突破しました

彼らは、粗利益率は低いものの、究極のローコストオペレーションにより販管費率を業界最低水準(Genky DrugStoresは15.6%、コスモス薬品は17.1%)に抑え 、一定の営業利益率を確保する戦略を徹底しています 

この粗利益率と販管費率の差こそが、各社の経営戦略と収益性を一目で示す鍵となります。

データが語る「真の経営力」:財務の安全性とキャッシュの秘密

「儲け」の構造だけでなく、企業経営の安定性を測る財務データにも大きな変化が見られます。

在庫管理の極意と「販売キャッシュフロー」の壁

在庫の効率性は、小売業のキャッシュフローを握る生命線です。

  • コスモス薬品は、商品回転率9.0回転と圧倒的な高水準を維持し、在庫管理の効率化を極めています 
  • この徹底した在庫効率により、小売業独自の指標である「販売キャッシュフロー」がプラス(40日)になっているのは、上場12社中わずか2社(もう1社はクリエイトSD HD)です。これは、商品代金を支払う前に在庫を現金化する「回転差資金」でキャッシュを生み出していることを意味します

しかし、キャッシュレス化調剤売上の増加により、クレジットカードや調剤報酬の入金ラグ(売掛金)が増加し、業界全体の販売キャッシュフローはマイナスで推移するという困難な状況に直面しています 

M&Aの資金調達と「安全ライン」の攻防

大規模なM&Aは、企業の財務バランスに直接影響を及ぼしています。

  • スギHDは、M&Aの資金調達(短期借入金420億円)もあり、自己資本比率が低下しました
  • マツキヨココカラは自己資本比率が73.1%と、優良企業の目安である60%を大きく超え、流動比率も理想とされる200%(224.0%)を唯一達成しており、極めて高い経営安定性を示しています 
  • また、ROA(総資産経常利益率)もマツキヨココカラが12.0%とトップを走り、収益性と投資効率の高さを見せつけています

DgS業界の「儲け方」「稼ぎ方」「倒産しにくさ」の全貌

DgS業界の戦いは、表面的な売上高の競争から、商品構成、在庫効率、財務レバレッジを最適化する「経営の質」の戦いへと移行しました。

あなたの会社は、どの戦略の裏側にいるのか? 業界のどの企業が最も効率よく稼ぎ、どこが最も安全な財務基盤を持つのか?

これらの疑問に答える詳細なデータ分析と解説を、以下の4本の有料記事に集約しました。

▼ドラッグストア白書2025 データ編

  1. 【ドラッグストア白書2025】データ編① DgS・調剤上場企業の業績
    売上高、営業利益率、粗利益率、販管費率など、企業ごとの「稼ぎ方」を徹底比較 
  2. 【ドラッグストア白書2025】データ編② DgS上場企業の部門別商品販売状況
    医薬品、化粧品、食品など、部門別構成比から「集客と粗利戦略」の狙いを解析 
  3. 【ドラッグストア白書2025】データ編③ DgS上場企業の在庫効率性、財務状況、収益性、安全性
    商品回転率、自己資本比率、ROE、ROA、キャッシュフローなど、「経営の安全性と効率」を徹底評価 
  4. 【ドラッグストア白書2025】データ編④DgS上場企業の出退店状況
    新規出店率から1店舗当たり売上高、利益高まで、店舗から読み説ける情報を分析

ドラッグストア業界、歴史的激変の2025年:9兆円市場の頂点に立つ「2兆円連合」とトップ企業が明かす「次なる戦略」の全貌

国内ドラッグストア(DgS)市場が、今、歴史的な変革期を迎えています。2025年決算のデータが揃い、市場規模はついに9兆円を突破。その内実は、巨大な「再編」と「戦略転換」の渦中にあります。長らく続いた「規模の追求」時代は終わりを告げ、トップ企業は次なる生存競争、すなわち「収益性の追求」「デジタル変革」「グローバル展開」へと舵を切り始めました。月刊MD10月号は、この激動の業界を多角的に分析した『ドラッグストア白書2025』で業界の「今」と「未来」を徹底的に解き明かします。

業界勢力図を塗り替える「2兆円連合」の衝撃

2025年の最大のトピックは、ウエルシアホールディングス(HD)とツルハHDの経営統合です。

約2兆円規模のこの「メガDgS連合」の誕生は、業界のパワーバランスを一変させます。さらに、マツキヨココカラが新中計で「1兆3,000億円+α」を掲げ、コスモス薬品が4社目の1兆円企業となり、スギHDがM&Aで急浮上するなど、トップランナーたちの戦いはすでに次なるステージへ。

DgSはもはや「薬屋」ではなく、日用品や食品スーパーの需要まで取り込む「生活インフラ」へと進化。その成長の勢いは、主要14社の既存店売上が37ヵ月連続プラスという驚異的なデータに裏付けられています。

月刊MD note版の『売上高ランキングとグルーピング』記事では、最新の売上高データに基づき、この激変した業界勢力図を可視化。誰がトップに立ち、誰が急追しているのかを明らかにするとともに、DgS業界の主要な「グループ構成・勢力図」を整理しています。

トップ経営者が語る「戦略の深層」:なぜ今、投資するのか?

しかし、ランキングの順位だけでは、真の戦いの行方は見えてきません。

トップ企業の経営戦略は、驚くほど大胆に、そして急速に変化しています。

例えば、統合を控えるウエルシアHDは決算説明会で「規模から利益への転換」を宣言し、既存店の収益力強化に集中する方針を打ち出しました。一方、マツキヨココカラは「美と健康のプラットフォーマー」構想を核に、購買の全プロセスをデジタルで支配する戦略を始動させています。

さらに、クスリのアオキHDは、売上高5,000億円を達成しつつも、翌期に減益を見込むという計画を発表。これは、M&Aと新規出店に過去最高の投資を集中させるという、一時的な利益をいとわない「成長投資フェーズ」への移行を意味します。

月刊MD note版の『決算説明会レポート』記事では、ドラッグストア主要上場企業の最新の決算内容と経営者の発言を詳細に分析。

  • 「規模から利益へ」の方針転換の裏側で、各社が本当に注力しているPB強化、調剤DX、ローコストオペレーションの具体的な施策とは?
  • コスモス薬品Genky DrugStoresローコスト経営を極限まで突き詰めながら、なぜ「毎年、過去最高の出店」を目指し続けるのか?
  • クリエイトSD HDが創業以来の「自力成長」方針を転換し、M&A専門チームを発足させた真の狙いとは?

業界の「未来図」を読み解くために

2025年のDgS業界は、単なる成長市場という言葉では片付けられない、複雑な戦略と再編の時代に入っています。

この歴史的転換期において、業界の全体像(ランキング)と、各社の個別の戦略(決算レポート)の両方を把握することが、次のビジネスの成功に不可欠です。

以下の2本の有料記事で、日本のDgS業界の「未来図」を読み解いてください。

  1. 【ドラッグストア白書2025】売上高ランキングとグルーピング
    https://note.com/mdnext/n/n74ef3d4a258a
  2. 【ドラッグストア白書2025】決算説明会レポート
    https://note.com/mdnext/n/n8b343ead2c41

【特別企画】なぜ今、「敏感肌ケア」が店の売上を左右するのか? 1,000億円市場の裏側と、お客様から“選ばれる店”になるための5つの視点

読者の皆さんの化粧品コーナーを訪れるお客様の中に、「なんだか最近、肌の調子が悪い…」という漠然とした不調を抱える人が増えていませんか? 季節の変わり目のゆらぎ、原因不明のかゆみや赤み、長引くマスク生活でこじらせた肌荒れ。これらは今や、一部の特別な人の悩みではありません。実は、日本人の約7割が自らの肌を「敏感」または「やや敏感」だと感じているというデータがあります。この静かなる“肌悩み大国”で、今、小売業にとって無視できない巨大なビジネスチャンスが生まれています。それが、1,000億円を超える「敏感肌市場」なのです。

拡大する敏感肌市場を活かしきれていない店頭

この市場は、化粧品全体の売上が伸び悩む中でも着実に成長を続け、この10年で実に1.77倍にまで拡大しました。しかし、多くのお店では、この巨大なチャンスを活かしきれていないのが現状ではないでしょうか。

「敏感肌向けの商品は一通り揃えているはずなのに、なぜか売上につながらない…」

「お客様に何をどう勧めればいいのか、実は自信がない…」

もしそう感じているなら、それは当然のことかもしれません。なぜなら、敏感肌市場の攻略は、ただ商品を棚に並べるだけでは決して成功しないからです。

お客様一人ひとりの複雑な悩みを解き明かし、専門家として信頼される知識を持ち、そして、その知識を「売上」という結果に結びつける戦略が不可欠なのです。

今回、『月刊マーチャンダイジング note版』では、この巨大で魅力的な「敏感肌市場」を徹底解剖する特別企画を実施しました。市場の全体像から、具体的なブランド戦略、そして明日から使える売場のヒントまで。5つの記事を通して、あなたのお店がお客様から“選ばLばれる”ための羅針盤を示します。

この記事は、その特別企画のエッセンスを凝縮したダイジェスト版です。ぜひ、読み物として楽しみながら、ビジネスの新たな可能性を感じ取ってください。


視点1:【全体像】そもそも「敏感肌市場」とは何者か?データが語る巨大な可能性

まず、私たちが対峙している市場の大きさを正確に把握することから始めましょう。

最初の記事 『【高機能&高付加価値で成長し続ける敏感肌市場】市場の状況と売り方のポイント解説』では、この市場がいかに“おいしい”市場であるかを、豊富なデータと共に解き明かしています。

出荷金額ベースで1,000億円超。この数字だけでもインパクトは十分ですが、小売業にとって重要なのはその「質」です。驚くべきことに、敏感肌基礎化粧品の購入者は、店舗全体への貢献度が一般の化粧品購入者の1.36倍も高いというデータが出ています。つまり、敏感肌のお客様は、一度信頼関係を築けば、お店にとって非常に価値のある優良顧客になってくれる可能性を秘めているのです。

さらに、このカテゴリーは20代の若年層を店舗に呼び込む強力なフックにもなります。ライフタイムバリューの観点からも、若いうちからお店のファンになってもらうことの価値は計り知れません。

しかし、なぜこれほどまでに市場が拡大しているのでしょうか?記事では、その要因を「乾燥」「環境要因」「加齢」「ストレス」など8つに分類し、それぞれに合わせたアプローチの必要性を説いています。

「敏感肌」と一括りにするのではなく、お客様がどの要因で悩んでいるのかを見極めること。それが、信頼されるカウンセリングの第一歩です。この記事は、そのための基礎知識と、市場全体を俯瞰するための「地図」を提供してくれます。

👉『【高機能&高付加価値で成長し続ける敏感肌市場】市場の状況と売り方のポイント解説』


視点2:【顧客分析】データは正直だ。ID-POSが見せる「お客様のリアルな姿」

市場の地図を手に入れたら、次に知るべきは、そこを歩いている「人」のことです。お客様は一体誰で、何を買い、何を買っていないのか。

2本目の記事 【高機能&高付加価値で成長し続ける敏感肌市場】ID-POS分析から見る売り方の傾向 は、膨大な購買データから、お客様のリアルな姿を浮かび上がらせます。

この記事を読んで、多くの人が衝撃を受けるであろう事実。それは、敏感肌化粧品の購入者の約8割が、フェイスケア、ボディケア、ヘアケア、メイクアップのうち「1つのカテゴリーしか購入していない」という現実です。特に、購入者の4割以上が「基礎化粧品のみ」の購入に留まっています。

これは何を意味するでしょうか?

全身の皮膚は一枚で繋がっています。顔の肌トラブルに悩む人は、頭皮や身体にも同じ悩みを抱えている可能性が非常に高い。にもかかわらず、その潜在的なニーズに応える「トータルケア提案」が、ほとんどの売場でできていないのです。

記事ではさらに、圧倒的なシェアを誇る「キュレル」を筆頭に、各ブランドがどのような顧客層に支持されているかを分析。冬に売上がピークを迎える保湿アイテムの動向や、敏感肌の人が意外な「家庭用手袋」や「ビタミン剤」を同時に購入している傾向など、ID-POSならではの生々しいデータが満載です。

データは、私たちに「ここにまだ大きなビジネスチャンスが眠っている」と雄弁に語りかけてきます。この記事は、その声に耳を澄ますための「聴診器」となるでしょう。

👉【高機能&高付加価値で成長し続ける敏感肌市場】ID-POS分析から見る売り方の傾向


視点3:【ブランド戦略①】絶対王者「キュレル」は、なぜここまで強いのか?

市場を理解し、顧客を知れば、次に具体的な「武器」である商品のことを深く知る必要があります。敏感肌市場の絶対王者として君臨する「キュレル」。その強さの秘密はどこにあるのでしょうか。

3本目の記事 【高機能&高付加価値で成長し続ける敏感肌市場】乾燥性敏感肌をセラミドでケアする「キュレル」 は、花王への直接取材を通して、その戦略に迫ります。

キュレルの強さの根幹は、「セラミドケア」という明確なコンセプトだけではありません。フェイスケアからボディ、頭皮、果ては「衣料用洗剤」まで、生活のあらゆるシーンに寄り添う圧倒的な商品ラインナップにあります。

この記事で特に注目すべきは、「多箇所展開」という売場戦略です。

例えば、『潤浸保湿 ファンデ負担防止ベース』という化粧下地。これを本来の化粧下地コーナーだけでなく、ファンデーション売場にも陳列したところ、売上が1.2〜1.3倍に伸び、さらにファンデーション自体の新規顧客獲得にも繋がったというのです。

同様に、ボディケア商品を入浴剤コーナーに置く。スプレータイプの化粧水を日焼け止めコーナーに置く。これは、お客様の「ついで買い」を誘発するだけでなく、「ああ、こんな時にも使えるんだ」という新たな発見を提供する、極めて高度なマーチャンダイジングです。

キュレルの成功事例は、一つのブランド研究に留まりません。あなたのお店にある他の商品にも応用できる、普遍的な「売れる売場の作り方」のヒントが隠されています。

👉【高機能&高付加価値で成長し続ける敏感肌市場】乾燥性敏感肌をセラミドでケアする「キュレル」


視点4:【ブランド戦略②】アベンヌが提唱する“未来への投資”

敏感肌ケアのニーズは、今や全世代に広がっています。特に、少子化の中で注目度が高まっているのが、デリケートな赤ちゃんの肌ケアです。

4本目の記事 アベンヌに学ぶ、全世代・全身へのアプローチと店舗での実践方法 では、ピエール ファーブル ジャポンへの取材から、さらに一歩踏み込んだ市場へのアプローチが見えてきます。

この記事のキーワードは「アレルギーマーチ」

これは、乳幼児期の乾燥による肌のバリア機能低下が、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、ぜん息…と、アレルギー疾患の連鎖を引き起こす可能性がある、という医学的な概念です。つまり、新生児期からの適切な保湿ケアが、その子の将来のアレルギー発症リスクを低減させるかもしれない。これは、もはや単なる美容の域を超えた、「健康への投資」と言えるでしょう。

アベンヌは、この皮膚科学的知見を背景に、「新生児から使える」という高い安全性を強みとして打ち出しています。そして、小売業に対してこう問いかけます。

あなたのお店の敏感肌ケア商品は、なぜ化粧品コーナーにしかないのですか?

赤ちゃんの保湿ケアを探している親は、まず「ベビー用品」コーナーに向かいます。加齢による乾燥に悩む高齢者は、「介護用品」コーナーの近くを探すかもしれません。

メーカーが作ったカテゴリーの壁に囚われず、お客様の“悩みの出発点”に商品を配置する。この記事が提唱する「生活者視点の売場づくり」は、これからの小売業にとって必須の考え方となるはずです。

👉アベンヌに学ぶ、全世代・全身へのアプローチと店舗での実践方法


視点5:【トレンド分析】季節と悩みに寄り添う「アルージェ」のヒット戦略

最後のピースは、「今、何が求められているか」というトレンドを掴む視点です。

5本目の記事 乾燥や肌荒れ等の肌トラブルに特化したスペシャルケアが好調!存在感発揮する「アルージェ」 は、全薬工業への取材を通して、特定の肌トラブルに特化したアイテムがヒットする現代の市場を映し出します。

かつて敏感肌の悩みといえば「冬の乾燥」が代表的でした。しかし、今やその悩みは年間を通じて存在します。春は「花粉」、夏は「紫外線や汗」、秋もまた「花粉」と、季節ごとに悩みの質は変化します。

アルージェは、こうした**“瞬間的な肌トラブル”**に寄り添う「スキントラブルケア リキッド」のようなスペシャルケアアイテムで大きく売上を伸ばしました。

彼らの戦略で興味深いのは、SNSの活用法です。同じ悩みを抱える人の口コミを参考にするユーザーが多いことから、X(旧Twitter)上で“敏感肌悩み界隈”のインフルエンサーを起用し、ピンポイントで情報を届ける。このデジタルとリアルを連動させた販売戦略は、他のブランドを売る上でも大いに参考になるでしょう。

👉乾燥や肌荒れ等の肌トラブルに特化したスペシャルケアが好調!存在感発揮する「アルージェ


◆続きは、ぜひ「月刊マーチャンダイジング note版」で

ここまで、5つの記事のダイジェストを通して、巨大で奥深い「敏感肌市場」の輪郭をなぞってきました。

実際の特集記事には、本稿では触れられなかった数多くのグラフやデータ、より詳細なブランド担当者の生の声まで踏み込んだ情報が詰まっています。

『月刊マーチャンダイジング note版』は、小売業の最前線で日々奮闘する皆様と共に考え、悩み、そして具体的なアクションに繋がるこのような「武器」を提供するためのパートナーでありたいと考えています。

もし、この記事を読んで、少しでも「もっと深く知りたい」「自分の店の売上を変えたい」と感じていただけたなら、ぜひ下のリンクから私たちのnoteマガジンをご購読ください!

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「Stailer」が切り拓く小売業DXの未来――デリシア(長野)が示すラストマイル黒字化への道

スタートアップの株式会社10X(テンエックス)は、ネットスーパーを中心にスーパーマーケットのDXを支援する「Stailer(ステイラー)」を展開。2025年5月20日に実施された同社の新戦略発表会には、大手・地方問わず12社以上のスーパーマーケット・ドラッグストアが導入済みという実績が示された。なかでも長野県でチェーン展開するデリシア社の成功例が大きな注目を集めている。

ネットスーパーの成長と課題

冒頭、10X CEOの矢本真丈氏は、次のように時代背景を解説。

「食品スーパーマーケット業界は、1960年代前半に業態が確立し、1990年代後半まで急速に店舗数を拡大してきました。しかし、2000年代以降は店舗数の増加が緩やかとなり、人手不足や原価高騰による粗利圧迫など構造的な課題に直面しています。こうした背景から、各社がDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用し、労働生産性を高めることが喫緊のテーマとなっているのです」(矢本氏)

同社が提供するStailerは、ネットスーパーを構築・成長させるためのプラットフォームだが、単なるシステム導入にとどまらず、販促施策やオペレーション効率化など、多面的なサポートを提供する点が特徴だ。

既存のネットスーパー市場はEC成長率が10%前後と比較的緩やかだが、Stailer導入企業全体でみると、同期間の流通総額成長率は約56%を記録。年間流通総額は数百億円規模に達している。利用客の中心は子育て世帯やヤングファミリー層で、ネットスーパー利用開始後、1人あたりの小売への支出金額が大幅に上昇する(ライフタイムバリュー向上)傾向も確認されている。

出典:10X発表資料より

以下の図は、ネットスーパーにおける1カゴ当たりの売上から商品原価・ピッキングやパッキング・配達などのオペレーションコストを差し引き、最終的な営業利益がどう生み出されるかを示したものだ。ネットスーパーの場合、店舗側が受注後のピック・パックや配送を担う必要があるほか、稼働していない時間帯のアイドリングコストなども発生しやすいのが特徴である。

株式会社10Xでは、こうしたコスト構造を踏まえ、大きく3つの観点でパートナー企業の収益改善をサポートしている。

  1. カゴ単価の向上:商圏設定や配達料設計、検索体験・商品レコメンドの最適化などにより、1回の買物での購入金額を高める。

  2. カゴ粗利率の改善:ネットならではの詳細な購買データを活用し、価格弾力性を捉えながら商品価格(粗利)を最適化する。

  3. オペレーションコストの削減:ピッキング・配送スタッフの作業をモバイルアプリで可視化し、店舗や配達の稼働率を分析。課題を抽出し、地道な改善を重ねることで生産性を高める。

デリシアが示す“ネットスーパー黒字化”の道

今回の記者発表会では、長野県でスーパーマーケット「デリシア」を運営する株式会社デリシアの代表取締役社長・森 真也氏が登壇。Stailer導入前後の変化を次のように語った。

「当社はかなり早い時期からネットスーパーを運営していましたが、店頭との商品マスタ連携問題や紙ベースでのピッキングなど、システム的・オペレーション的な課題を解決できないまま拠点だけが増減していた状況でした。欠品率も高止まりで、コストばかりが先行していたのです」(森氏)

こうした課題を10Xとともに解決するため、デリシアでは2022年9月末からStailerを導入。結果として稼働会員数は約1.4倍に増え、欠品率も4%から1%に改善。売上高は2.5倍に拡大し、店舗段階での営業利益率はマイナス31.4%から1年半で黒字化へ転じた。

出典:森氏発表資料より
出典:10X発表資料より

「10Xさんは、システム導入だけでなく、販促業務の効率化やデータ分析、課題に即した施策提案まで含めて伴走してくれました。定期的なデータ共有と振り返りで、PDCAを実行しやすかったのが黒字化の鍵だと考えています」(森氏)

スーパーマーケットDXを加速させる「Stailerマルチプロダクト戦略」

今回の発表会では、Stailerの新戦略として「小売業のDX全体を支えるプラットフォーム」への進化が示された。具体的には、オンライン・オフラインの会員IDや購買データを一元化し、販促を最適化する「Stailer OMNI」、商品別の価格をAIで最適化し、粗利確保を支援する「Stailer AIプライシング」、商品・販促データを集約し、バイヤーの業務を効率化する「Stailer MD」、需要予測と在庫管理をAIが行い、発注の手間を軽減する「Stailer AI発注」、各システムに散在するデータを統合し、外部連携もしやすい基盤を提供する「Stailer データストア」という複数プロダクトの提供を開始する。

7月にはまずAI発注がリリースされ、その後、冬にAIプライシングやMDが投入される予定だ。

DXは現場を解放し、経営を変えるか

10Xの矢本氏は、新プロダクトの狙いを次のように説明する。

「スーパーマーケットは粗利益の確保と人手不足という二重苦を抱え、労働生産性の向上が大きなテーマになっています。Stailerでは、ネットスーパーだけでなく、基幹システムや在庫管理、価格戦略など店舗運営の根幹を支える仕組みを強化し、AIとデジタル技術で一気通貫のDXを進めていきたいと考えています」(矢本氏)

一方で、デリシアの森氏は自身の店舗運営を踏まえ、こう展望する。

「10Xさんとは現場をともに回り、データと業務プロセスを丁寧に見直すところから着手しています。価格設定や商品管理など、DXで最適化できる業務はまだまだ多い。今後も同じゴールを共有するパートナーとして、一緒に取り組んでいきたいです」(森氏)

小売各社がネットスーパーやEC戦略を加速させる一方、収益化の難しさも指摘されてきた。しかし、デリシアがStailer導入により店舗段階で黒字化を実現した事例は、特に地方中堅小売業にもDXの可能性を示唆する。

「Enpowering Retail’s Future with Tech & AI」を掲げる10Xと、従来の慣習や枠組みを抜本的に変えようとする地方スーパーマーケット――両者のパートナーシップは、店舗中心の商売をベースにしながらも、デジタル技術を融合させて経営改革を進める1つのモデルケースとなり得るだろう。

ネットスーパーは社会インフラになり得るか?10X CEO矢本氏が語るスーパーマーケットの課題と展望

株式会社10Xは、小売チェーンストアにECプラットフォーム「Stailer(ステイラー)」を提供するスタートアップ。代表取締役CEOの矢本真丈氏は、2024年12月に「スーパーマーケットのこれまでとこれから」と題した資料を発表し、現在のスーパーマーケット(SM)が抱える課題と、SMに求められている変化について提言した。提言に込めた思いや10Xの今後の展望について、矢本氏に聞いた。(聞き手:MD NEXT編集長 鹿野恵子)

小売業の持続的な成長に不可欠なのは「労働生産性の向上」に他ならない

――「スーパーマーケットのこれまでとこれから」を非常に興味深く拝見しました。小売業、特に食品小売業は今後どうなっていくとお考えなのか、改めてお話いただけますか。

 

矢本:小売業が持続的な産業であり続けるためには、今までのあり方から、生産性を突き詰めたあり方に変わっていかなくてはなりません。これまでの発展の延長の仕方では、SMやドラッグストア(DgS)といったチェーンストアがインフラとして残っていくことは難しいと思います。

生産性の向上は誰もが目指しているところですが、実現は容易ではありません。そこに対して何をしていけばよいのでしょうか。

矢本:今広く言われている「生産性」とは、そもそも何の生産性なのかが抜けています。私が強く訴えているのは、「労働生産性」を向上させなければならないということです。

ベンチマークする数値をしっかり設定し、従業員一人あたりがあげる粗利を高めていかなくてはなりません。例えばSMの従業員一人あたりの粗利の中央値は700万円程度ですが、これをどのぐらいまで上げるべきなのか。この数値目標がないことには、業務改善のためのデジタルソリューションを入れても、それによって本当に労働生産性が上がったかどうかまでは測れません。私が小売業の経営者の方と話していて、労働生産性がいくらかを訪ねても、すぐには返ってこないことが多いですね。

そもそもの数字が出てこないわけですね。

矢本:はい。これまでは売上が上がれば企業としてはOKとされてきたと思いますが、今後は人口が集中している一部のエリア以外では、売上を上げるのも難しくなっていきます。

そうであれば、「どうすれば今の売上規模のまま利益をたくさん出せるようになるのか」、「どうすれば今の10分の1の人数で今と同様の売上規模を維持できるか」といった、経営の土台を築くための方策を考えるべきです。シェア争いばかりを続けていても、お互いの体力が削られていくだけです。

それは、ここ数年でパートナーさんをサポートしていく中で見えてきたことですか。

矢本:そうですね。我々はネットスーパーを支援してきましたが、ネットスーパー事業はこの10年ほどで「儲からない事業」という市場の認知が作られすぎてしまいました。

我々がパートナーさんにネットスーパーのプラットフォームを売り込んでいく際に、一番のボトルネックになっていたのはその部分です。ほとんどの会社は、「10Xのプラットフォームに乗る・乗らない」ではなく、「ネットスーパー自体をやらない」という選択をされました。

ではやらない理由は何かというと、「儲からないことをやっている余裕がない」とのことでした。

つまりネットスーパーは社会インフラとしての価値があることはわかっているけれど、事業の経済性・生産性に問題があるために広がっていかないというわけです。であれば、我々はこの問題を真正面から解決して、市場を広げていこうという方向に舵を切り直したのが昨年のことです。それと同じことがネットスーパーだけでなく、小売業全体にも起きていると思います。

デリシアを2年で黒字化へ導いた3つの柱

――そういった中で、長野県のSMのデリシアさんのネットスーパー事業を黒字化されたと伺いました。何をしたことで結果を出せたのでしょうか。

矢本:大きく3つの柱があります。1つ目は単純に、商圏の方からしっかり認知いただいて、たくさん受注して売上を伸ばせたということです。コストだけ改善したところで、売上に一定の規模がないと、利益を出せるようにはなりません。デリシアさんではStailerを導入してから2年強で、ネットスーパーの売上規模が2倍以上になりました。

2つ目の大きな柱がプライシングです。お客様自身がピックパック(ピッキングとパッキング)して持ち帰る店舗のサービスと、ピックパックから配達まで全部店舗が行うネットスーパーで、同じ値付けをしていては儲かりません。

Stailerには受注から配達・決済まで、全てのタッチポイントのデータが集まるので、データを見て適切なプライシングを提案することができます。そこで、価格弾力性が低い商品は何なのかをデータを使って見定め、お客様の許容範囲まで価格を上げることでしっかり粗利を取り、全体の粗利率を改善することに取り組みました。

例えばECでは、カートのはじめに投入されるのは、お客様がそれを欲しいと思って(そのウェブストアに)来店される商品です。たとえば果物や日配商品などは、はじめの方に投入されることが多いですね。こうした商品は、値段を上げるとお客様は気づいて離脱していきますから、むしろ少し価格を下げて、来店していただくための理由にしてもらいます。

一方でカートに後の方で投入される商品…例えば一部の冷凍食品やカップ麺などは、「せっかく配達してくれるなら一緒に買おう」というように、利便性で購入されています。お客様はこれらの商品の値段はそれほど気にされていないので、少し値上げをご提案します。

またケースの水など、配達コストが大きい商品は少し値上げしますが、それでもamazonなどで買うよりは安価な価格を提示できます。このような商品のプライシングも、カートへの投入順序のデータを持っているのでしやすいわけです。

3つ目の柱は、ピッキング・パッキング・配達のオペレーションの効率化です。この点についても、「誰がどのお店でピッキングしているか」、「1時間あたりのピッキング点数が何点か」などのデータは全て取れています。そこで、平均値や中央値よりも低い店舗はどこに問題があるのかを探り、改善する取り組みを実施しました。

また、ピックパックを配達業者に委託している店舗のデータを見たところ、1件あたりのコストが上がっていることがわかったため、内製に切り替えました。このように一つ一つの問題点を地道に直す作業をしていきました。

デリシアでの店内作業の様子

今年はデリシアさんでやったことをある種の機能として、さらに研ぎ澄ませたものを作り、「Stailerを入れれば放っておいても黒字になる」というプロダクトにしていきたいですね。

ネットスーパーで利益を出してエコシステムを成立させる

――導入から2年で黒字化とはすばらしい事例を生み出されましたね。デリシアのある長野県では配送のオペレーション構築の難易度が高そうにも思えます。

矢本長野県は山と雪がありますから配達効率をあげていくのは難しい地域です。デリシアさんの事例は、その中でもビジネスが成立しているということに大きな意味があると思っています。

どの会社にも共通して言えることですが、配達自体にはあまり工夫の余地がありません。例えば「店舗Aには配達用のバンが1台あり、1日の出荷の上限は24件」といった配送の上限を設定した場合に、先にキャパシティが足りなくなるのは「ピッキング・パックキング」などの店舗作業の方です。出荷件数を増やすためには、まずは配達の前工程であるピッキングやパッキングのキャパシティを拡張して生産性を上げる方が効果的だと考えています。

――ネットスーパーというビジネスモデルは今までは儲からないままで拡大してきましたが、ようやく黒字化の事例が出てきましたね。

矢本:はい。これまでは店舗事業で出た利益を持ってきてなんとかネットスーパーを回しても、そこで利益が出ずに抜けていってしまう状態でした。利益が再投資に回るエコシステムの形になっていなかったのです。ネットスーパーで利益が出れば再投資されて回っていくので、雪だるま式に大きくなっていきます。その段階にいかに早く全ての会社が到達できるようにするかが重要です。

イオンさんや西友さんのような巨額投資はなかなか真似できませんが、ネットスーパーの売上もまだ数億円規模というデリシアさんのような会社でも、利益はしっかり出ています。であれば「自分たちにもできるかもしれない」と思う会社はもっと増えると思いますし、今年以降はそうした事例をたくさん作っていきたいですね。

地方スーパーマーケットの課題

――採用難に人口減、インフレと大きな環境変化の中、地方のSMは今後事業継続が厳しくなってくる企業も少なくなさそうです。矢本さんはどうお考えですか。

矢本:地方であるかどうかに関わらず、SMの市場環境は非常に厳しいと思います。需要の面でも供給力の面でも人が減っている中、「原価」「人」「電気」の三大コストは全て上がっていきます。SMはそれを価格に転嫁する能力を30年間持ってこなかったのに、これからこの産業をどうやって維持していけばいいのか。この厳しい問題に、地方のスーパーはより強く晒されています。

彼らがそのような環境においても生産性を上げて、独立して利益を上げられるようになれば、「大手SMやDgSに買われる」か「独立独歩で地域のインフラとして継続経営していく」の2択から出口が選べるようになります。3択目の「倒産する」が消えるだけでも、非常に価値があること。今、地方の多くのSMが、2択から選べるようにしていけるかどうかの分水嶺にいると思います。

一方でM&Aの状況を見ても、なかなか買い手がいないのが現実です。今、SM業界の買い手で一番大きいのはDgS、次いで同業のSMですが、SMのサプライチェーンは厳しく、地方をまたがって買収するのは難しい。また利益が出ない店舗を買うことは考えづらいことからも、M&Aもあまり活発だとは言えません。

となると、第一の選択肢となるのは自分の足できちんと立って経営し、高齢者を中心とした、地方に残っている多くの人たちのインフラになることだと思います。

――DgSへのネット販売導入においてはどのような役割を果たせそうでしょうか。

矢本:やはり薬やDgSでしか取り扱っていないもの、またSMでは品揃えが少ないオムツや介護商品などを配達で受け取りたいというニーズはあります。ただしそれらはamazonなどでも購入できるので、ネットDgSにそこまで強いニーズがあるのかについては、正直なところまだ我々もわかっていません。

我々が支援しているネットDgSでも、はじめにカートに入れられるのは食品が多く、ネットスーパーの別物として扱われている部分があります。薬王堂さんなどはEDLP(エブリデー・ロー・プライス)なので、SMと比べて一部の商品が常に安いといった面で使われている側面が強いと思います。

そういったニーズを探っているうちに、DgSは業界再編がすごく進んでしまっていますね。

20、30年かけて長期でネットスーパーのエコシステムをつくる

――業界は大きく変化していて、個人的にはこの数年に一つの山場があると感じています。こういった中で御社ではどのような形で事業を展開してきたのか、また今後の展望をどう描いているのか教えてください。

矢本:我々はそもそも、ネットスーパー市場を支援し続けてきました。ネットスーパー市場は直近では毎年10数%ずつ伸びていて、これは社会インフラになるべきものだと思っています。インフラの条件の一つが、利益が出て、それが再投資されて大きくなるという、エコシステムが回っていくことです。今はそれを実現するための機会だと感じていますし、20年、30年かけて、長期で取り組んでいくつもりです。

今までのStailerは高い価格で導入していただくものでしたが、大手ではない会社さんも手軽に導入できるように、我々の中でコスト構造を見直し、会社のリストラクチャリングも進めてきました。

その結果、小さい会社さんが1店舗からでも導入でき、その地域にとってネットスーパーが必要なものなのかどうかの実験もできるようになってきました。今後はそういった小さい会社さんへの導入が進んでいくと思います。

併せて、大手の会社さんがしっかり伸びていくことがマーケットの先端を広げていくことになると考えており、今年は大手リテーラーへの導入も決まっています。大手と小さな会社の2つの支援を同時に進められる企業であり、プロダクトになっていきたいですね。

また、昨年小売の経営者さんと対面したり、現場調査をしたり、各社の財務諸表を分析したりする中で、やはり課題が膨大にあると感じました。今のSMの一番の課題は、間違いなく生産性の問題です。ならば「どの生産性をどのように変えていくのか」ということに対して自分たちのプロダクトを用意したいと考え、現在新規事業にも取り組んでいるところです。

我々は日本の小売業のDX部になりたいと思っていますが、30年かけて取り組もうと思ったら、まずは自分たちが30年戦える体にならなくてはいけません。我々自身もしっかりと利益を出しながら成長する体制を作り、小売業さんたちと一緒に歩んでいきたいと考えています。

――ありがとうございました。

月刊MD note版、MD NEXT、2024年の人気記事ランキング

明けましておめでとうございます。2024年に月刊MD note版と、MD NEXTでよく読まれた記事をご紹介します。(2023年12月~2024年12月までに公開された記事を対象としています)

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読まれただけでなくよくご購入いただいた記事です。具体的なデータ分析の手順に対し、売場改善につなげたいというニーズがあるようです。

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2024年に業界を震撼させた統合に関するニュースへの、鶴羽順社長のアンサー記事がよく読まれています。

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2024年はテレビでの露出も多かった「クルベ」に関する記事が閲覧数ナンバーワンに。来年も新店舗オープンの予定があり、期待が高まります。

2025年が読者の皆様によってよい年になりますようお祈り申し上げます。

Preferred Networks、チェーン向けツール「MiseMise」で小売ソリューション事業に参入

高度なAI技術を持つスタートアップ・株式会社Preferred Networks(PFN)は2024年10月9日に東京・大手町にある同社オフィスにて、新規事業となるリテールソリューション事業を開始すると発表し、記者会見を行なった。チェーンストア向け業務改善ソリューション「MiseMise」を提供する。(ライター:森山和道)

「MiseMise」は品出し、AI値引き、棚割、自律移動ロボット、分析の5つのツールから構成されており、人手不足や食品ロスなど、リテール業界におけるチェーンストアの課題をPFNのDX・AI・ロボット技術の組み合わせで解決する新ソリューションだという。

ビジネス的にはSaaS型で、コンサルティングも交えて進めていく。初年度売上目標は10億円、3年後には100億円。BtoB型ビジネスを進めてきたことによる現場に入り込んだ連携が強みだという。

MiseMiseのサービスイメージ。AIで判断を、ロボットで行動を拡張し多くの店舗業務を楽にする

小売世界の拡張を目指し、主力事業の一つとして取り組む

Preferred Networks(PFN) 代表取締役最高経営責任者 西川徹氏

まず、PFN 代表取締役最高経営責任者の西川徹氏は今年で創業10周年を迎える同社の事業概略を紹介した。PFNではハードウェアからソフトウェアまでAI技術のバリューチェーンを垂直統合して多くの課題に取り組んでいる。そのなかでも小売関連の取り組みは5年以上前から続けてきたという。

PFNの事業イメージ。AIバリューチェーンを垂直統合し、ソリューションを各分野に水平展開

西川氏は「リテールは皆様にもっとも身近な領域。生活には必要不可欠で、さまざまな分野があって市場も大きい。歴史も長いので人によるオペレーション最適化・効率化も進んでいる。いっぽうで、まだ伸び代がある。機械によって便利にできる余地がたくさん残されていることも事実。人の力をエンハンスできる余地がたくさんあることはエキサイティングだ」と述べた。

小売分野への取組理由については「ITを取り込むことで、効率化できる部分が多い。昨今のAIの発展が、ますますリテール分野を加速できる。将来性も含めて主力事業の一つとするべきだと考えて、リテール・ソリューションの発表に至った」と語った。

そして「まだまだ面白い世界がたくさんある。現場の皆さんとディスカッションしながら進めている。今後、『ものを売る』という行為は、その世界自体も拡張していくし、新たな世界観を目指していきたい。全力を注いで一大事業としていきたい」と述べた。

「人による認識の限界」を超えるためには

PFN SVP 最高マーケティング責任者 富永朋信氏

小売り業界では少子高齢化や人件費行動の影響を受け、人手不足が慢性化している。人材育成のための時間を取ることも難しい。PFN SVP 最高マーケティング責任者の富永朋信氏が新規事業の業界背景について語った。

富永氏は「お店が質的に変化を遂げたのがチェーンストアの誕生。誕生後、現在に至るまで本質的な変化は起きていない。POSなど部分的に効率向上のアイデアはあったが、本質的な変化とは言えない」と話を始めた。

富永氏はチェーンストア・オペレーションとは「多くの認知的負荷がかかる作業」だと述べた。本社の手間も、店頭の手間も大きい。数万の商品をフローのなかで最適化していくことがチェーンストアの業務だ。最適化のためには商品部のデータなどをもとに精度の高い棚割りを作り、配信していくことが重要だが、「チェーンオペレーションがちゃんと回っているチェーンはあまりないのではないか」と述べ、「店舗と本社のあいだが断絶しており、お店で実際に起きていることがブラックボックス化してしまっているからだ」と語った。

この「断絶」と「ブラックボックス化」には、大きくわけて二つの要因があるという。一つは複雑性だ。店舗は非定型で、本社で決めたことをそのまま実現することは難しい。品切れは売上機会損失だけでなく、今後の売上にも響く。情報の流れがコントロールができてないことによる、本社と店舗間のコミュニケーションも課題となっている。

これらには「人による認識の限界がある」と富永氏は述べた。店舗内全てに目を行き渡らせることは人間にはできない。一人一人の作業も個人のなかで完結してしまっており、ジョブのノウハウの共有も進まない。こういった点をPFNの技術で解決することを目指す。そして「100年間変わってこなかったチェーンストアをアップデートしたい」と語った。

「何を改善するか」見定めて逆算してデータを取得することが重要

PFN リテール担当VP 海野裕也氏

「MiseMise」のサービス概要の詳細は、PFN リテール担当VPの海野裕也氏が紹介した。海野氏はチェーンストアの経営全体を支援し、「社歴1日でも誰でもベテランになれる」ソリューションだと語った。

海野氏も「認識の限界を超えるためにはデータに基づくことが重要だ」と話を始めた。よくある失敗は「今あるデータをいかに活用するか」ということから始めてしまうことだという。「ありもの」のデータは基本的に「副産物」として生まれているものに過ぎず、業務改善に本当に必要なデータではない。では何が必要なのか。

POSや受発注データをいかに分析しても、一番重要なデータである「店舗の売り場」そのものデータは出てこない。それらは人の頭の中にしかない。まず、それをデータ化する必要がある。そしてデータに基づいた意思決定、あるいは行動など、「何を改善するか」を見定めて、そこから必要なデータを逆算して取得しにいく必要があると海野氏は強調した。そこでPFNでは実際の現場に張り付いて、何のデータが必要なのかを調べながら「MiseMise」を作ったと述べた。

ソフトウェアとオペレーションを再定義し一気通貫で改善支援を行うことを目指す

たとえば実際に品出しを手伝おうとしても、商品の場所が探せない。バックルームがデータ化されておらず、在庫バックヤードに行っても初見では見つけることが難しいからだ。ところが店員へのインタビューではその課題には気づけなかったという。それぞれの担当者は自分で整理しているため不便を感じていないからだ。しかしこれでは「その人」がいないと業務が回らないし、担当外の人が応援に来ても役に立たない。

すなわち、業務が属人化しており、チーム作業ができなくなっているのだ。PFNではこのような「欠けているデータ」を調べてIT化するためのツールを作り、業務設計を行った。

開発用にPFN社内に作ったバックルーム

開発のために、まずPFNのオフィスにバックルームを作った。かご台車を実際に並べて、自分たちのプロダクトが本当に役立つのかどうか検証を行なって、フィードバックをするなど「地に足がついた製品開発を繰り返した」という。

MiseMiseで「現場の真実がわかる」という

「MiseMise」は一言でいえば「お店で何が起こっているのかをログ化できる」ツールであり、結果的にその情報に基づいて意思決定ができるようになるという。さらにそこから新たな変化を起こすことができる。

PFNの売りである「AI」や「ロボット」は業務の観点から見ると「部品」でしかなく、業務のなかの一部分しか担えない。そのため、これらの「道具」がある前提で、新たに業務全体を見据えて考え直し、新たな業務を発明することが重要だと語った。

MiseMiseツールは5種類

MiseMiseツールは5種類から構成される。

1)探す手間をなくす「MiseMise品出し」

MiseMise品出し

MiseMise品出しは品出し・在庫管理を支援する。入庫してきたかご車に看板をつけて商品データと紐付けし、ケース単位で在庫管理を行うことで、バックルームのどこに何があるのかをデータ化する。これにより、誰でもすぐに品出しができるようになる。

具体的には店頭でハンディ端末を使って商品をスキャンすると、在庫がどこのかご車に載っているのかが担当者でなくても、すぐにわかるようになる。補充する品をメモする必要もなくなる。これにより商品を探す時間が50%下がり、売り上げが4%向上したという。特にバックルームに何が何個あるのかわかるので、「ないものを探し続ける手間がなくなる」点が大きいとのことだった。もちろん重たいかご車を何度も引き出す手間もなくなる。

ハンディ端末を使って在庫探しが容易になる
積み出すべき在庫がどこにあるのか明示される

2)誰でもベテラン同様の高精度値引きが可能になる「MiseMiseAI値引き」

MiseMiseAI値引き

MiseMiseAI値引きは、惣菜値引きなどを適切に計算する。商品をスキャンしすると値引き率が計算されるので、残っている惣菜個数を入力すると、適切な値引きシールが印刷される仕組みだ。商品データ、蓄積データ、当日変数、担当者や店舗の意思を反映した上で、誰でも高精度な値引きができるようになり、廃棄ロスを減らせる。

スキャンするだけで適切な値引き率が計算される
適切な値引きシールが印刷される。なお既存のシール印刷機との連携も可能とのこと

3)精度の高い棚割を自動作成「MiseMise棚割」

MiseMise棚割

MiseMise棚割は本部向けの棚割ツールで、どういう商品構成にするべきかを自動計算して、各店舗に送信できる。棚割りは店舗数が多いと負担が大きい。しかも質が高い棚割りを作るのは大変だ。そこで一定の基準を設けて棚割りを自動作成する。たとえば現在は日中の品出し回数を減らすことが求められているが、品出し回数が少ない効率の良い棚割りなどを作ることができる。「なるべくたくさんの切り口を提供できるツールとして開発されている」という。

店舗への配信はスマホや紙などで出力できる。店頭側に対する情報の出し方も工夫しており、指示書を使って、置けてない商品がなんなのか分かりやすく明示する。発注最適化ツールとの連携などはまだ行っていない。

4)自動で欠品や値札の間違いを発見する「MiseMiseロボット」

MiseMiseロボット

MiseMiseロボットは、店の状況を把握するためのロボットで、カメラとAIを使って欠品などをチェックできる。計画どおりの棚割りができているのかの検知や値札間違いのチェックも行える。ロボットは自律移動し、障害物そのほかは安全に回避する。バッテリー持続時間は3〜4時間程度。子会社のPreferred Roboticsと共同で開発した。

ロボットによる欠品チェックが可能
人作業との共存も可能
ロボットはPreferred Roboticsと共同で開発

5)在庫推移だけでなく従業員作業ログも見られる「MiseMise分析」

MiseMise分析

MiseMise分析は、お店で何ができるのか一元管理して分析するためのツールだ。様々なプロダクトを使って店舗の実情に近いデータを収集されてくるので、それらを見える化する。バックルームから何の品出しが1日に何回行われているのか、従業員の誰が一番品出しを行なっているのかといったことも一目でわかるようになる。

ユニバースその他で実証実験、在庫削減や欠品削減に効果

株式会社ユニバース 店舗運営本部 店舗支援部門長の小泉徳彦氏によるコメントも紹介された

実際にMiseMiseを試験導入したユーザーの事例も2つ紹介された。北東北3県のスーパーマーケットチェーンであるユニバースでは「MiseMise品出し」を導入。バックルームのどこにどの商品があるか誰でもすぐにわかるようになり、在庫や補充作業の実態をデータで把握できるようになった。

データを活用することで商品の補充回数を減らし、品出しに関連する作業を1日平均5時間も削減。さらに、バックルームに滞留している在庫を把握し、2ヶ月で最大5割の在庫削減に繋がったという。株式会社ユニバース 店舗運営本部 店舗支援部門長の小泉徳彦氏によれば、意外な発見もあったそうだ。

また、「MiseMiseロボット」を試験導入したある店舗(社名非公表)では、店頭における欠品状況を日々確認したり、商品の発注数量と閉店時の在庫数量を適正化したり、値札の価格チェックができるようになった。その結果、営業時間中の欠品を1ヶ月で約50%削減し、売上機会の損失抑制に繋がったとしている。

現場作業と協調しながら新たな小売ビジネスの姿を模索

PFNの「計算力」が最大の差別化ポイントだという

導入リードタイムはおおよそ1ヶ月から2ヶ月。まずは現状把握から始めるため、最短でも2週間はかかる。最初は試験導入から始めるパターンが多いとのこと。

導入コストに関しては明示されなかったが「どのくらいのターンオーバーがあるかによる。売上20億円の店舗なら月額20万円くらいの価格感」(富永氏)とのことだった。

今後PFNでは個別店舗ごとに異なるシステムやオペレーションとの協調を進めつつ、ソリューションの数を増やしていく。

AIやロボットは他社も行っている。差別化について質問された西川氏は「AIは各要素をノリのように繋げるモデル間の連携を担う。PFNではデータを高度なAIで分析してオペレーションに結びつけることができる。各モジュールだけではなく、それらを結びつけるためには高度なAIが必要であり、そのためには計算力が重要。PFNは計算力を効率よく実現できる。そこが大きな差別化要因だ」と語った。

【ダイソー】ストアソング「ハッピープライスパラダイス」に秘められた謎!!

久々、ストソン探偵の登場です!今回紹介するストアソングは100均の王ダイソーの「ハッピープライスパラダイス」!少しずつ変化する歌詞に秘められた思いとは?あの人も参加している歌声の秘密…!本部直撃取材で見えてきた、想像もしていなかったあのストアソングの裏側に迫ります。(まんが:店橋花里)

ツルハHD 2024年5月期決算発表レポ「売上高1兆円超えを達成。収益改善フェーズの3ヵ年中期計画は最終年度へ」

2024年6月24日に開催されたツルハHDの2024年5月期決算発表会のレポートをお届けする。(談・文責/編集部)

売上高が1兆円を突破 営業利益も過去最高に

執行役員・管理本部長 村上誠氏:2024年5月期決算概要についてご説明いたします。よろしくお願いいたします。

決算ハイライトでございます。売上高1兆274億円、前年対比5.9%増、営業利益492億円、前年対比8.0%増と、売上高、営業利益とも過去最高、売上高は初めて1兆円を超えました。

事業概要でございますが、前期は人流の回復、季節品の好調などにより、コロナ関連商材のマイナスを吸収し販売が回復いたしました。また、化粧品の回復や食品を中心に適正売価設定による粗利率の改善も見られました。高騰が続いておりました水光熱費も落ち着きましたが、支払手数料、人件費などの増加により、販管費率は0.1%上昇いたしました。

売上高は13か月既存店が累計で前年比2.9%増、新店も順調に進捗し、全店で前年比105.9%と、ほぼ計画線で着地いたしました。売上総利益に関しましては、検査キット、マスク等の販売減など、コロナ関連商材の反動がございましたが、化粧品、食品、調剤などの寄与により、前年比106.4%、粗利率も前年比プラス0.2%の30.4%の着地となりました。

一方、販管費ですが、人件費等は計画どおりで進行をいたしましたが、水光熱費などが想定を下回ったことなどにより、営業利益は計画を上回る結果となりました。なお、純利益については、子会社ののれん減損を41億円計上したことにより、前年対比、計画対比ともに下回る結果となりました。

続きまして、13か月経過店舗の売上高前年比でございます。13か月既存店の売上高前年比の推移でございます。累計で2.9%と、やや計画を下回る結果となりました。人流回復等により客数は回復傾向、品単価は商品値上げの影響で上昇、一方、販売点数はマイナスという傾向が続いております。会社別の状況につきましてはご覧のとおりです。

調剤の売上は伸長するも粗利率はやや減少

続いて、商品群別の実績でございます。まずは調剤でございますが、薬局開局により処方箋枚数が増加し、売上は継続して伸長いたしました。粗利率については診療報酬改定、薬価改定の影響があり、累計で0.8%減という結果となっております。

OTCにつきましては、総合感冒薬、咳止め薬等の販売が好調でしたが、抗原検査キットの反動減もあり、売上前年対比はやや鈍化いたしました。

化粧品につきましては、人流回復、インバウンド需要等により売上は回復傾向が続いております。日用雑貨は、PB商品の伸びは堅調でございましたが、販売数量が前年割れをしており、やや低調な結果となりました。

食品については、消費者の価格志向の強さ、また値上げの影響で前年対比108.5%と高い伸びを維持いたしました。加えまして、適正値付けの浸透で粗利率が改善しております。その他につきましては、マスクの販売減少および健康食品の販売不振の影響で前年を割る水準となっております。

調剤店舗数、PB商品実績です。調剤店舗数は累計で子会社化を含む新店が104店舗、閉店23店舗、純増81店舗で、計936店舗となり、調剤店舗数の割合は35%となりました。プライベートブランドにつきましては、売上高前年比109%、PB比率も10.5%と上昇いたしました。特に食品につきましては前期比119%と、PBの売上の伸長に大きく寄与いたしました。他方、粗利率はマスクなどのコロナ関連商材の減少により1.7%減の41.8%となりました。

販管費、自社建て物件の増加で地代家賃を抑制。水光熱費の上昇も一服

続きまして、販売費・一般管理費です。販管費の計画、前年対比の実績でございます。

人件費につきましては、ベースアップ、最低賃金上昇の影響もあり、前年比106.7%となりましたが、計画対比では99.8%と適正なコントロールができたと考えております。

販売促進費につきましては、チラシ販促の強化等により、前年比119%の伸びとなりました。地代家賃ですが、前年比103%と、自社建ての物件の増加が寄与し、伸び率を抑制できております。

水光熱費ですが、前年比100%と上昇が一服いたしました。減価償却につきましては前年比108%と、これは出店増加によるものでございます。

その他の経費ですが、前年比108%と、この要因につきましてはキャッシュレス手数料の増加等が原因となっております。

会社別、地域別の出店・閉店の状況でございます。開店128店舗、閉店69店舗、子会社等による増加5店舗の純増64店舗で、前期末の店舗数は2,653店舗となりました。出店は計画比2店舗、閉店は計画比で5店舗超過という結果となっております。地域別の状況につきましてはご覧のとおりです。

バランスシートにつきましては、ドラッグイレブンの株式追加取得により117億円の現預金が減少。また、冒頭に触れました子会社ののれん減損等により、無形固定資産が57億2,500万円減少いたしました。また、自社建ての出店の増加により、有形固定資産が増加しております。これで私からの説明を終わらせていただきます。

続きまして、中期経営計画と当期の取り組みについて、鶴羽社長よりご説明いたします。ご清聴ありがとうございました。

3ヵ年の中期計画は最終年度へ

代表取締役社長執行役員 鶴羽順氏:ここからは、私、鶴羽より、中期経営計画と当期の取り組みについてご説明いたします。よろしくお願いいたします。

2023年の5月期から始まりました3カ年の中期経営計画ですが、前期が終了いたしまして、いよいよ2年が経過いたしました。今期、2025年5月期が中期経営計画の最終年度となります。この中期経営計画の3年間を収益改善フェーズと位置付けまして、収益改善を最優先課題として、次なる成長の足場固めとして重点戦略の取り組みを行ってまいりました。この後、各項目の進捗についてご説明させていただきます。

重点戦略の一つ目、店舗戦略になります。

中計では今期末、店舗数2,750店舗の目標としております。出店済みの地域へ、さらなるドミナント出店を重点的に行いまして、出店精度向上を重視して取り組んでまいりました。今期も111店舗の出店計画があるものの、スクラップ&ビルドの推進または不採算店舗の閉店の前倒しによりまして、今期末の店舗数は2,677店舗と、実際に中計の目標を下回る計画でございます。

これは、中計でわれわれがこだわっております収益改善のために、1店舗当たりの収益性向上を目指した結果であることをご理解ください。新店の早期黒字化が近年の課題でしたが、こちらに関しましては物件選びの基準を高めるとともに、店舗の立ち上がり、オープン時の販売促進などを強化してまいりました。結果、早期にお客様への認知度を高めることによりまして、黒字化へのスピードが今期に入って回復傾向となっております。

また、店舗年齢は全店で6年7カ月と今はなっております。こちらは前期の期首は6年10カ月でスタートしておりますので、いわゆる店舗の若返りの傾向があるということになっております。スクラップ&ビルド、または全面改装によります、今申しました店舗の若返りに努めまして、今後も競争力を維持していきたいと考えております。

調剤売上は1,400億円突破を目指す

重点戦略の二つ目、調剤戦略になります。こちらは今期末、調剤売上1,400億円が中計の目標でございます。

調剤店舗数は、当初計画していた店舗数には届きませんが、この1,400億円の売上計画は達成の見込みでございます。これは中計作成時に、当初の予定より、いわゆる1店舗当たりの売上、収益性が結果伸ばすことができたと思っております。こちらも調剤開局後の認知度アップ策を強化いたしまして、調剤の新店の立ち上がりも良くなってまいりました。

患者様への利便性の向上ということで、いわゆる処方箋枚数の増加策といたしまして、処方箋の予約送信を強化してまいりましたが、こちらは全体の処方箋枚数の6%を超え、好調を維持しております。

また、セルフ処方箋受付機や受け取りロッカーなど、こういった取り組みを開始しました。その結果、処方箋枚数の伸びは前期も112%と好調を維持しております。

前期から調剤のレセコン、または薬歴システムなどの入れ替えをいたしました。これにより業務効率化を推進してまいりました。その結果、調剤における人件費率が前年より0.4%改善して業務効率化が図られております。

PB売上目標は順調に推移 今期末の目標は商品売上構成比率12%

重点戦略の三つ目、PB戦略になります。今期末、PB売上構成比12%が中計の目標でございます。前期は、原材料高騰によりまして新規商品の開発遅れ、または既存商品の原価高騰によりまして廃盤なども多く、商品のSKUの増加というのはなかなか予定どおりに進まないことも実際ございました。

ただし一方で、このPBのグループ各社への導入がさらに進みまして、また既存商品の育成、売上増が寄与したこともありまして、PBの売上目標自体は順調に推移をしております。前期のPB全体売上の前年比は109%でした。

また、カテゴリー別に見ますと、食品SKUが143プラスとなっております。それによって、売上も前年比、食品は119%と、PBの中では伸びました。大手メーカー様との共同開発も行っております。これは今後も増加の予定でございます。

こうした結果、前期末のPB売上比率は10.5%となっております。目標の今期末12%に向けて、予定どおりの進捗と評価をしております。

アプリDL数は940万件を突破 MA導入で1to1マーケティングに拍車をかける

重点戦略の四つ目、DX戦略になります。基幹系システムの刷新にここ数年取り組んでまいりました。多少のスケジュールの遅れはありましたが、いったんのゴールをまさに今迎える予定でございます。

そうした結果、各部署の作業や分析の効率化が今後図られるものと考えております。また、お客様に対してデジタル顧客設定の出発点をスマホのアプリとわれわれは位置付けまして、このアプリのダウンロード数を伸ばすことにここ数年注力してまいりました。

ダウンロード数は前期の実績は940万件を超えました。デジタル会員比率は45%となり、こちらも順調に推移していると考えております。デジタル会員に向けたMAツール、マーケティングオートメーションの導入によりまして、個別にお客様に対応した販促の実施を開始しております。こういったことによりまして、お客様の離脱率の改善、または来店促進につながる施策を実施しております。

営業利益率、ROEとも中計目標を達成の見込み

重点戦略の五つ目、財務戦略になります。こちらは今期末、営業利益率5%以上、ROE10%が中計の目標でございます。それに対しまして、営業利益率5%、ROE10.4%の着地予定で今期は計画をしております。

配当は、引き続き50%以上を維持し、今後もIRやSRを通じた市場との対話の強化、または開示の充実を図ってまいります。

こちらは今期の、2025年5月期の通期計画になります。ご覧のとおりになりますが、売上高1兆800億円、営業利益額535億円、営業利益率5.0%、これは中計の売上高、営業利益率の目標達成はもちろんのこと、過去最高益を目指して努力してまいります。既存店売上高は通期で2.6%を見込んでおります。上期、下期の内訳も記載しております。ご確認をお願いいたします。

こちらは今期の出店計画です。出店111店舗、閉店87店舗、純増は24店舗。これは先ほど申しましたとおり閉店が多く純増が少ないのは中計でこだわっている収益改善のため、1店舗当たりの収益性向上を目指した結果でございます。

こちらは人的資本経営のマテリアリティの前期の結果と今期の目標を記載しております。ご確認をお願いいたします。

イオン、ウエルシアとの経営統合の協議を開始

こちらは2月28日にイオン、ウエルシアホールディングスとの資本業務提携契約を締結したページでございます。

こちらは既にリリースしているとおりですが、3社間でグローバル規模におけます地域生活者の高次なヘルスケア、ウェルネスの実現を目的といたしまして、各社の持つ経営資源を最大限に活用し連携することによって、いろいろな分野でシナジーを発揮して、日本最大のドラッグストア連合体を創生していくということになります。そして、働く従業員の限りない成長機会を創出することを目指して、経営統合の協議を現在開始しております。

必要とされる法的な手続きなどがいろいろありますので、これをクリアした上で、できるだけ早く統合できるように努めてまいります。

以上、私からのご説明を終わります。ご清聴ありがとうございました。

(談・文責/編集部)

資料出典:
https://www.tsuruha-hd.com/content/files/ir/result/material/2024/20240621.pdf