日本でもお馴染みの明洞ブランド完全復活!

最新!! 韓国コスメ情報 | ソウル明洞(ミョンドン)エリアで化粧品通りが復活!!

コロナ禍も沈静化して、韓国の繁華街に賑わいが戻っている。今回はソウルでも有数の繁華街で韓国コスメ流行の発信地でもある明洞とそこに出店する人気コスメショップを、韓国在住の実業家で日韓のコスメ事情にも精通した本誌韓国特派員のユン・モンラク氏がリポートする。(月刊MD韓国特派員/株式会社Love Cosme代表 ユン・モンラク)(月刊マーチャンダイジング2024年2月号より転載)

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コロナ禍から急速に回復する「明洞(ミョンドン)」

コロナ禍の収束以後、海外からの韓国訪問者は増加傾向で、2023年10月に韓国を訪れた外国人観光客は123万人(昨年同月比158%、韓国観光公社発表)で4ヵ月連続100万人を上回っている。また、国別の累積では、日本は184万人と最も多く、次に中国が154万人、その次に米国の79万人と続いている。

[図表1]1~10月の累計訪韓数の国別比較(2022年/2023年)

訪韓外国人観光客がよく訪れる明洞では、商圏の勢いがコロナ以前の水準に復活しており、その中でもコスメショップの成長が顕著だ。明洞商圏内でのコスメ関連商材が売場に占める割合は今年上半期で33%に及び、昨年と比較して約2倍も成長しており、Kビューティーの中心地として知られた明洞のコスメ商圏が蘇りはじめている。

その中でもロードショップ(単独ブランドの旗艦店・路面店)と呼ばれる主に観光地や繁華街に出店する中小規模の単独ブランド小売店舗が相次いで新規店舗を増やすケースが目立っている。

日本でもお馴染みの明洞ブランド完全復活

人気ブランドを抱えるエイブルCNCのミシャ(MISSHA)は、2023年9月末に「明洞メガストア店」のリニューアルを行った。同店では、その他アピュー(A’pieu)、チョゴンジン(CHOGONGJIN)、スティラ(Stila)、セラピ(Cellapy)、ラポティセル(Lapothicell)などエイブルCNCの主力ブランドをすべて見ることができる。

ミシャの店舗外観
ミシャ店内

リニューアルオープン後1ヵ月間で、1日の平均売上高は前月比約40%増加、外国人顧客の売上は約30%増加したということだ。同社は「メガストア店は外国人観光客の影響などでフェイスマスクの売上が他店舗より18倍以上多い」と語る。現在ミシャは明洞に2店舗を運営しており、2024年1月にも新規出店を行う計画だ。

ミシャが展開するスティラブランド

また、高品質で手頃な価格帯、さらにパッケージのかわいさで人気を集めるトニーモリー(TONYMOLY)は2022年10月末から2023年5月にかけて相次いで4店舗を明洞エリアへ出店している。同社は「コロナ禍が収束したことにより、外国人観光客が増加したことで明洞のビジネスが急速に回復している。この状況を受けて出店を加速しており、売上も急増している」と語っている。

トニーモリー外観
フルーツリップ&バーム商材のプロモーション展開
いちご型のテスターも目を引く

その他、自然派スキンケアブランドとして人気の「ネイチャーリパブリック(NATURE REPUBLIC)」は、2022年12月と2023年1月に明洞エリアに出店。さらに2023年8月には、「明洞ワールド店」をリニューアルオープンした。

ネイチャーリパブリック外観
ネイチャーリパブリック店内

同社は「明洞ワールド店は20〜40代の女性海外観光客が主な顧客層。中国や日本などアジア圏だけでなく、米国や英国などの観光客も必ず訪れる旗艦店である」と強調した。

フルーツ・植物をモチーフとした色鮮やかなテスター
ハンドクリームのプロモーション展開

また、韓国最大手化粧品メーカーであるアモーレパシフィックが運営する、エチュードハウス(ETUDE HOUSE)も昨年2月に2店舗を出店し、明洞に3店舗展開している。

エチュードハウス外観(アモーレパシフィック運営)
ピンクを基調とした店作り
若者に人気のピンクアーカイブのディスプレイ

最も注目を集める オリーブヤング明洞タウン店

オリーブヤング外観

その明洞の化粧品店で、最も注目を集めているのが、韓国を代表するドラッグストア「オリーブヤング」のグローバル旗艦店「オリーブヤング明洞タウン店」だ。2012年12月にオープン、2023年11月にリニューアルした売場面積1,157㎡(約350坪)の2階建て店舗は、韓国内のオリーブヤング全店舗で最大規模を誇り、明洞のその他店舗の中で売上1位を獲得している。

多くの買物客で賑わうオリーブヤング店内

Kビューティーのトレンドに乗って新興コスメブランドの売上が急増しており、外国人が購入した上位10ブランドのうち9ブランドが韓国の中小、中堅ブランドだ。その中でも「ビューティ オブ ジョソン(Beauty of Joseon)」、トリデン(Torriden)、ダルバ(d’Alba)など人と環境に優しい「クリーンビューティー」をコンセプトにした中小ブランドの売上が前年対比で20倍以上急増したという。

ビューティ オブ ジョソン(Beauty of Joseon)
トリデン(Torriden)
ダルバ(d’Alba)

一日平均約3,000人が訪れるこの店舗は約90%が海外顧客で、売場は韓国中小企業のブランド商品を紹介する場として活用することに重点を置いている。良質のショッピング体験を提供し、オリーブヤングでの買物体験を通じてよりポジティブなブランド認知を得ることを店舗開発のコンセプトに掲げている。

1階はスキンケアやマスクなどの商材が中心で、2階はメイクアップ、オーラル、ボディ・ヘアケア、男性化粧品、ヘルスケア関連など幅広い商品群を取り揃える売り場展開をしている。

海外からの顧客が大幅売上増に貢献

オリーブヤングによると2023年初めから10月末までの海外顧客によるインバウンド売上は、前年同期比で840%増加しており、コロナ以前は、中国人観光客による購買が多かったが、2023年からは日本、東南アジア、英国、米国などからの来店が増加し、顧客層が拡大したという。

これと連動して海外顧客によるECの利用も活発化し、同社が運営する、海外150ヵ国余りの顧客を対象にKビューティー製品を販売する越境EC「オリーブヤンググローバルモール」の売上も前年同期比で77%増加。売上比重が高い国は東南アジア、日本、中国、英米圏の順で、特に日本人顧客の売上が前年同期比で急増している。

このような動向を受けて、実店舗においては店内案内サービスを英語、中国語、日本語の3言語で対応。「オリーブヤング明洞タウン」の専用モバイルページも開設し、フロア別案内や人気ブランドの陳列位置なども3言語で提供している。さらに外国語での意思疎通が可能な職員を多く配置することで海外顧客を重視した店作りを実現していることも売上増加の要因である。

“余白”のある売り場づくり

また、オリーブヤング既存店の売場と異なる点は、顧客のショッピング体験を重視した什器配置である。“余白の美”を最大限に生かし、顧客が増えても移動に支障がないよう、店内に十分な顧客動線を確保しつつ、人気商品および戦略商品は複数箇所に陳列することで、購買を促進できるような売場づくりを行なっている。

人気のメイクアップブランドのラインナップが充実
ビタミン界のエルメス、オースモル(Orthomol)

最先端のリテールDXが組み込まれた売場づくり

同社は今回の店舗開発にあたりデジタル技術を活用し、この店舗でしか見られない限定商品や、差別化されたプロモーションと商品構成を通じて、ショッピングの楽しさが感じられる売場づくりに重点を置いたという。

ダイエットサプリ「フードオロジー(FOODOLOGY)」のプロモーション

1階と2階をつなぐ階段の壁面は美彩なサイネージで覆われ、リテールの未来を感じさせる顧客体験を与えている。

階段壁面のサイネージ

また、新たな試みとして、視覚的にもユニークなギフト発行機を休憩スペース“グローバルサービスラウンジ”に設置。これは壁面の案内からQRコードでオリーブヤングのサイトへアクセスし、同社の越境ECサイトのアカウント(オリーブヤング グローバルモール アカウント)を登録するとギフト発行機からウェルカムギフトがもらえる、という仕掛けだ。

ギフト発行機

買物に少し疲れた顧客は無料Wi-Fiの完備された休憩スペースでこのアカウント登録をすることでそばにあるギフト発行機から嬉しいプレゼントを手に入れることができると共に、そのアカウントがあれば帰国後もお気に入りのオリーブヤング商品を海外から気軽に購入できる、という顧客心理を十分に研究したマーケティング施策を展開している。

ギフトの中身

同社は、「この新店は、圧倒的な商品競争力を基盤に、新興のKビューティブランドの魅力を集約して紹介する海外顧客に特化した旗艦店であり、旅行中には明洞タウン店を通じて、さらに帰国後も同社の越境EC(オリーブヤンググローバルモール)を通じて、いつでもどこでもKビューティーショッピングが楽しめる強力な販売チャンネルとして位置づけられていくだろう」と語っている。

顧客動線の最後となる売場1階のレジまでの動線の随所に商品を配置しており会計の直前まで購買を誘発できるよう細心の注意が払われている。そして14台のレジ台が並ぶカウンターは空港内の国際線デスクを連想させ、横長の巨大サイネージがオリーブヤングの提供する強力なショッピング体験を最後までサポートするよう空間設計がなされている。こうした一連のショッピング体験を顧客視点から再設計しているところがオリーブヤングの新しい旗艦店の特筆すべきポイントだ。

変化の中で急激に進化するKビューティーと、韓国のコスメショップの王者に君臨するオリーブヤングのグローバル旗艦店「明洞タウン店」の今後の動向に注目していきたい。

 

《筆者プロフィール》

株式会社 Love Cosme
代表
ユン・モンラク(YOON MONG RAG)