韓国コスメリポート

ライフスタイルの変化を鋭敏に捉えるオリーブヤングの事業戦略

韓国における個人の消費傾向の変化を変化を巧みに捉え、成長を続けているのがオリーブヤングだ。2024年2月号では同社のDX戦略を具現化した新旗艦店「明洞タウン店」を取り上げたが、今回はそこに辿り着くまでの同社の事業の変遷、そして同社が現在最も注力するオムニチャネル戦略にスポットを当てて紹介する。(月刊MD韓国特派員/株式会社Love Cosme代表 ユン・モンラク)(月刊マーチャンダイジング2024年3月号より転載)

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ライフスタイルの変化を捉える新しいチャレンジで差別化に成功

最新の店舗は美彩な大型サイネージを積極的に投入しOLIVE YOUNGブランドの世界観を高いエンターテイメント性とともに伝えることに成功している

オリーブヤングの母体となるCJグループの発足はサムスングループ初の製造業として、1953年にサムスングループ創業者の李秉喆(イ・ビョンチョル)が前身の「第一製糖株式会社」を設立したことから始まる(のちに、CJ株式会社に社名変更)。製糖業をはじめとする食品工業で成功を収めた後、1997年にはサムスングループと分離独立。1999年にはヘルス&ビューティー専門店を初出店する。

[図表1]オリーブヤング事業展開の変遷

その後、2002年に分社化し、CJオリーブヤングが設立され、2012年からは積極的に店舗展開を開始。明洞にフラッグシップストアを立ち上げ、翌年には中国に初の海外店舗をオープン。その後も出店攻勢を緩めることなく、業績を拡大。2016年には売上1兆ウォン(日本円で約1,000億円)を達成し、2019年には1,200店舗を突破している。

明洞の中心地にある「オリーブヤング明洞タウン店」はオリーブヤング全店舗の中で最大規模を誇る
週末の店内は混雑しており、現地客と海外からの観光客で活気を見せていた

また、2011年からEC事業を開始し、現在のオムニチャネル戦略のベースとなるノウハウの蓄積が始まる。

常にライフスタイルの変化を敏感に捉え新しいチャレンジをし続けるのがオリーブヤングの差別化戦略の源泉であり、商品戦略としては、移り気で特別なアイテムを求める顧客ニーズに対応し、他では買うことのできないオリジナルブランドの創出・拡販に重点を置いている。販売戦略については、いつでもどこでも顧客が好きなタイミングで好きなものを簡単、便利に購入したいという顧客ニーズに対応し積極的にオムニチャネル戦略を磨いてきた。

壁面に投影される巨大なサイネージ。数十秒ごとに内容が変わる

こうした企業努力が韓国国内の感度の高い顧客に支持され、2017年には最優秀ヘルス&ビューティブランドに選出されている。

OMO(オンラインとリアルの融合)を強化し、購買体験向上を目指す

現在、オリーブヤングが最も力を入れるのがオムニチャネル戦略、いわゆるOMOと言われるオンラインとオフラインの体験を融合し、顧客の利便性を最大限に高める戦略である。

今回はオンライン/EC施策でオリーブヤングが注力する即日配送サービス「オヌルドゥリム」、アプリ内コミュニティコンテンツ「シャッター」、価格比較サービス「スマートスキャナー」、そして店舗からオンラインへの誘導を促すプロモーション施策と実際のユーザ体験を紹介する。

即日配送サービス「オヌルドゥリム」

「オヌルドゥリム」は3種の配送コースが選択できる。左/スピード配送:午後8時までに注文すれば3時間以内に発送(送料5,000ウォン)、中央/3!4!配送:午後1時までに注文すれば当日の午後3時〜4時に到着(送料2,500ウォン)、右/深夜配送:午後8時までに注文で当日の午後10時〜午前0時までに到着(送料2,500ウォン)。いずれも購入金額3万ウォン以上で送料が無料になるため、顧客にとって利便性が非常に高いサービスだ。

「オヌルドゥリム」は、ECの配送にかかる時間を最小化した、業界初の即日配送サービスとして、2018年より韓国国内で開始している。

同サービスは、店舗在庫のある商品をアプリから注文すると、注文当日に指定場所に配送される、忙しい現代人にとって利便性の高いサービスだ(20時以降の注文は、翌日13時までの配送となる)。店舗出荷のため、ECで品切れであっても、店舗に在庫があれば注文が可能となっている。

送料は注文金額が3万ウォン(約3,000円)以上であれば無料、3万ウォン未満の場合は2,500ウォン(約250円)が発生する。

また、最も早く配送されるスピード配送(3時間以内発送)も3万ウォン以上の購入で送料無料となり、(3万ウォン未満の場合は5,000ウォン/約500円の送料が発生)タイパ(時間効率)を重視する若年層を中心に幅広い層で人気を集めている。

韓国のトレンド発信地「カロスキル」にある「オリーブヤング カロスキルタウン店」。大開口窓が印象的な店舗で、他店舗とは異なり、植物などを取り入れたモダンでクリーンな外観・店内が特長的である
健康食品売場にもグリーンを配置し、基調にヘルシーなイメージ作りを行なっている
植物を随所に配置したカロスキルタウン店内

店舗ピックアップサービス「オヌルドゥリムピックアップ」

「オヌルドゥリムピックアップ」は、ECで注文した商品を店舗で即日ピックアップできるサービスで、ライフスタイルの変化に伴う顧客の細やかなニーズに対応している。顧客のメリットは、購入金額に関わらず送料負担がなく、自分のタイミングで商品をピックアップできること。

店内のレジ近辺にある「オヌルドゥリムピックアップ」の保管スペース。どの店舗でも棚の半分以上は埋まっていた印象がある
商品が入った紙袋に名前と注文番号が記載された紙が入っており、顧客が間違いなく商品をピックアップできる仕組みとなっている

また店舗側は、来店を促すきっかけづくりができ、ピックアップ予定の商品購入だけではなく、その他商品の「ついで買い」も誘発できることが大きなポイントとなる。使い方は簡単で、アプリから店舗を指定して注文後、そのまま決済を済ませると、SNSサービス「カカオトーク」からピックアップバーコードが送られるので、そのバーコードを店舗スタッフに見せるだけで商品のピックアップが可能となる。

アプリ内コミュニティサービス「シャッター」

アプリ内のコミュニティコンテンツ「SHUTTER」。現在は、韓国国内でのみ閲覧可能。ブラウザの日本語翻訳にて日本語表示もできる

「シャッター」はアプリのコミュニティコンテンツで、顧客同士のエンゲージメントを重視している。会員はインスタグラムなどのSNSと同様に、文章や写真、動画を共有することができ、閲覧者は「いいね」や「コメント」などのアクションも可能。投稿者・閲覧者の双方向でのコミュニケーションを図ることができる。

さらに、投稿には「商品タグ」が設置でき、投稿からそのままアプリ内の商品ページへ遷移できる「ショッピング機能」もあるため、顧客は検索する手間がなく、スムーズにアプリ内から直接購入することも可能。顧客に対し、購買意欲が冷めないうちに、購入へと結びつく行動を促すことができるのもメリットだ。

商品の価格比較が可能なスマートスキャナー

商品購入前にECでの価格をリサーチする顧客。どの売場でも価格を比較して購入を検討する顧客の姿が見受けられた

オリーブヤングは店舗とECが別に運営されており、商品価格に違いが生じる場合がある。そのため、双方の価格をリアルタイムで比較できるサービス「スマートスキャナー」を提供している。

使い方は簡単で、公式アプリから検索ボタンをクリックすると、検索窓の右側にバーコードボックスが表示されるので、これをクリックして商品のバーコードをスキャンすると詳細ページが確認でき、それぞれの価格が表示される。

無駄のないショッピングができるだけではなく、商品パッケージや価格表にあるQRコード、バーコードを撮影すれば商品レビューの確認や特典まで受けることが可能。店舗かECか、購入を迷った際に比較できる利便性の高いサービスである。

店舗からオンラインへの誘導を促すプロモーション施策

ECサイト/アプリをエンドユーザに利用してもらうために、最初にして最大の壁はアカウント作成、会員登録だ。どんなに素晴らしい品揃えのECでも、会員登録の壁を突破できなければ、サービスが利用されることはなく、普及させることもできない。

[図表2]オンライン誘導プロモーションの流れ

大量のインバウンド顧客が訪れる明洞タウン店では、この課題を解決するためにエンターテインメント性の高い方法で来店顧客に動機づけを行っている(図表2)。これにより、インバウンド顧客が帰国後もオリーブヤングとの継続的な関係性を構築し、ECによる販売が実現できるようなユーザ体験を提供している。

明洞タウン店2階奥の「グローバルサービスラウンジ」にて、ポスターやサイネージに表示されているQRコードを読み取り、公式ECサイト「オリーブヤンググローバルモール」の会員登録を行う。公式サイトは、英語・韓国語と2か国語から選択できるが、ブラウザの日本語翻訳にて、日本語表示も可能。必要事項を入力後、登録メールアドレスに認証コードが届くので、公式サイトにて認証コードを入力し、会員登録が完了。

店内のプレゼント告知からQRコード経由で会員登録へ

会員登録後は、プレゼント引き換え用のバーコードが表示され、「グローバルサービスラウンジ」内にあるプレゼント交換機にバーコードをかざすと、会員特典のポーチがもらえる。その他の特典として、「オリーブヤンググローバルモール」で使用可能なクーポンも発行される。ちなみに、会員登録の方法に不安があっても、登録方法に詳しい、日本語が話せるスタッフが近くに数名いるので、都度、質問することも可能だ。

会員登録は初期設定が英語で、店舗でのプレゼント他会員登録による特典をアピール

オリーブヤンググローバルモールの会員登録が店舗で完了するとそこから2日後、「新規会員登録時に取得した特典の有効期限が切れる」ことを知らせるオンラインでの購買を促すプロモーションメールが送信される。このメールは日本語によるもので、購入者の居住地をもとにサービスが適切にローカライズされているのがわかる。

会員登録から2日後に送られるプロモーションメール

さらに会員登録から4日後には最大60%オフというクーポンによる購買促進メールが送られる。ECの場合最初の購入のハードルが最も高いため、そのハードルを越えるためにかなり大胆なオファーを出していることがわかる。

会員登録から4日後に送られるプロモーションメール

データドリブンマーケティングの最先端をいくオリーブヤングの行うこうしたプロモーションのタイミングやメッセージは、これまでの顧客購買データの蓄積、分析の上になりたっているはずなので、同じようなオムニチャネル施策を重視する小売事業者の参考になるはずだ。

様々なオムニチャンネル戦略を通し、顧客と密なコミュニケーションを図ることで、K-ビューティーの魅力を全世界に発信しているオリーブヤング。このような多様なサービスにより、顧客の心をつかんでいることも成長を牽引する一つの要素と言える。差別化された購買体験を徹底的に追求することで、オリーブヤングの新たなライフスタイル提案はさらに飛躍するだろう。

プレゼント交換機横のバーコードスキャナーにバーコードをかざす
ポーチのカラーは全5色。カラーはランダムに選ばれるが、ポーチの中身の試供品はどのカラーも同じものが入っている

さらに、店舗、オンライン、それぞれで顧客に特典を提供することで、オンラインでの1回目の購買行動が効率的に行われるような顧客体験設計がなされており、今後オムニチャネルを検討する機会があれば参考にしてもらいたい。

「2023 OLIVE YOUNG AWARDS」受賞商品!

「2023 OLIVE YOUNG AWARDS」

オリーブヤングの商品MD戦略については次回詳しく取り上げる予定だが、今回は昨年発表された「2023 OLIVE YOUNG AWARDS」の受賞商品の中から、日本でも人気カテゴリーである、スキンケアからセラム・フェイスマスク・クレンジング部門で1位を獲得した3点をピックアップして紹介する。

「2023 OLIVE YOUNG AWARDS」:変化の激しいトレンドを素早くキャッチし、オリーブヤングが保有する1.5億件の顧客購買データ、商品販売量、MD戦略にもとづいて各カテゴリでその年、最も輝いた商品を選定。(2023年は33部門、138商品が受賞)

スキンケア部門 エッセンス・セラム《1位》 アイソイ ブレミッシュケアアップセラム

アイソイ ブレミッシュケアアップセラム

最上級のブルガリアンローズオイル配合で、肌に刺激を与えずにくすんだ肌をトーンアップしてくれる。オリーブヤングでは、2012年11月から11年間連続で売上1位を獲得。

スキンケア部門 フェイスマスク《1位》 Mediheal ティーツリー エッセンシャルマスク

Mediheal ティーツリー エッセンシャルマスク

従来品より約22倍のティーツリー成分を配合。しっとりとした竹由来のシートで、肌にうるおいを与える。シートマスク1枚にアンプル約1本分の美容液がふんだんに入っており、シリーズ全体で人気が高い

スキンケア部門 クレンジング《1位》 万葉ピュアクレンジングオイル

万葉 ピュアクレンジングオイル

植物由来のオリーブ、ホホバ、アルガンオイル配合。天然由来99.9%で肌にやさしいクレンジングオイル。しっかりクレンジングできるうえ、さらに保湿までカバーできるところが人気の秘密

 

《筆者プロフィール》

株式会社Love Cosme
代表
ユン・モンラク(YOON MONG RAG)