デジタルヒューマン「CONN(コン)」 は東映ツークン研究所の高精細スキャンやモーションキャプチャな どのデジタルヒューマン技術で生成されたビジュアルと、 NTT人間情報研究所のモーション生成AI技術や音声合成技術を 掛け合わせることにより、 より人間に近い自然なふるまいができる。2023年から「 バーチャルコンシェルジュ」等としての実験を行なっている
デジタルヒューマン「CONN(コン)」
「ロンドン大学工学部出身、シンガポール生まれの帰国子女」というペルソナが設定されている
ドラッグストアでの展開提案は、 富士薬品が2024年3月17日に開催した「 富士薬品お客様感謝フェスタ」の「未来のセイムス体験ブース」 で紹介されたデモと基本的に同じもので、外国語対応、 顧客に合わせたカウンセリング、専門家へのエスカレーション、 購買意欲を引き出すレコメンデーションなどに用いられている( 詳細は後述)。
ドラッグストアでの活用提案。富士薬品と共同で開発中
特定商品のクーポン提示なども可能
現時点では店頭などでの実験は行われていない。 また反応速度も遅いが、 これは特に音声合成部分の遅さによるもの。 今秋を一つの目処としてさらなる改良を進め、 ドラッグストアにおける課題への対応や、 バーチャルヒューマンならではの利点を探索し、 CXを超えた新たなEXへと進めていきたいとしている。
「OPEN HUB Park」は未来をひらくコンプセプトと社会実装の実験場
NTTコミュニケーションズ ビジネスソリューション本部 事業推進部 マーケティング部門長 OPEN HUB 代表 戸松正剛氏
会見の会場「OPEN HUB Park」 は未来をひらくコンプセプトと社会実装の実験場と位置付けられて いる。NTTコミュニケーションズ ビジネスソリューション本部 事業推進部 マーケティング部門長 OPEN HUB 代表の戸松正剛氏は最初に、 グループ各社のケイパビリティを統合して提供する「 ドコモビジネス」 のコンセプトを伝えるためにもこの場所を使っていきたいと話を始 めた。大企業向けには生成AI、マーケティングソリューション、 スマートワールド、IoTの4分野に注力する。
人手不足に応えるバーチャルコンシェルジュ
NTTコミュニケーションズ ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部長 福田亜希子氏
NTTコミュニケーションズ ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部長の福田亜希子氏は、NTT comの生成AIに対する市場の期待値は、 NTTグループが開発した大規模言語モデル(LLM)の「 tsuzumi」発表以来、どんどん上がっていると述べた。 5月末時点の案件数は370件を超えている。 生成AI関連のビジネスは幅が広いが、 今回はそのなかでも新たな顧客応対を実現するCXソリューション が紹介された。「バーチャルコンシェルジュ」 は人手不足に応えるもの。
生成AIを使ったCXソリューション
たとえば富士薬品では、店頭で「目が痒いです」 といったことを話しかけると「おすすめはこちらです」 と最新商品をおすすめしてくれるような顧客に合わせたカウンセリ ング、 薬剤師から第一類の医薬品を薦めるといった専門家へのエスカレーシ ョン、 購買意欲を引き出すレコメンデーションなどへの検討が行われてい ると紹介された。
バーチャルコンシュルジュによる顧客対応
多言語で対応、カウンセリングし、 人とも協働できるバーチャルヒューマン
ドラッグストア店頭でのバーチャルヒューマン活用デモ
バーチャルヒューマン自体の音声や表情のほか、 ディスプレイを使った画像やQRコード提示といったインタラクシ ョンも可能だ。会見では、 ドラッグストア店頭での活用をイメージした四種類の簡単なデモが 紹介された。
一つ目はインバウンド向けの外国語対応。 中国語で自己紹介を行なった。 多言語で同一の声で音声合成ができる。
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二つ目は来客の悩みを聞きながらおすすめ商品を一つ提案するとい うもの。
「目薬を買いたいのですが」
「目のお悩みはどのような症状ですか?」
「目がかゆくて赤みがあるのが気になっています」
「コンタクトレンズは付けていますか?」
といったやりとりを繰り返し、 実際に取扱のある商品を提案することができる。 生成AIを活用することで自然な会話のなかでオススメできる。 もう一つの特徴は、 実在商品のデータを連携させることでハルシネーションの課題を予 防する。
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3つ目は「人とデジタルヒューマンの協働」をイメージしたデモ。 生成AIにはまだ課題があるし、 法令面でも人との協働は不可欠だ。 たとえば第一類の医薬品は人間の薬剤師が説明して販売しなければ ならない。
そこで、来客の悩みの症状を聞いた上で、 第一類の医薬品の提案のほうが適切と判断された場合、「 第一類の医薬品からご提案したいので薬剤師を呼び出します。 QRコードをカメラで読み取って薬剤師とお話しください」 と言って、 デジタルヒューマンが引き継ぎ用のQRコードパネルを自分で掲げ る。
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4つ目は、売り上げ向上への貢献。 デジタルヒューマンだからこそ顧客ニーズに対応したサービスも可 能になる。たとえば「洗剤を買いたい」 と言ってやってきた来客に「衣類用洗剤ですね。 以前購入された衣類用洗剤のクーポンをお出ししますね。 柔軟剤のクーポンも同じので、 よろしければ一緒にお買い求めください。 QR コードを表示しますので、カメラを起動して少々お待ちください」 といったように購入履歴を踏まえたかたちでクーポンを出すような 応答を返すことができる。
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また、売り手がすすめたい商品をすすめさせるといった、 リテールメディアとしての使い方もできるという。NTT Comでは来店前後も含めたCX向上に向けたジャーニーを描いて いるとのことだった。
接客のパーソナライズ化を通じた新たな価値提供を模索中
国産LLMでCX分野のシェア3割を目指す
デジタルヒューマンは、 オンラインでの保険相談にも用いられている。 現時点ではヒアリングを行なっているが、 将来的には契約全てをAIとのやりとりで完結させることも目指す 。福田氏は「バーチャルヒューマンによって『 かゆいところに手が届く』サービスの実現を目指す」と語った。
東京海上日動とはコールセンターでの「アフターコールワーク」 を削減する取り組みを進めており、 おおよそ半分の業務負担を削減できそうだと見ていると述べた。
コールセンターでのオペレーター支援
また、 FAQリストを事前に作らずドキュメントのみから運用できるドキ ュメントチャットbot「COTOHA」 と生成AIを組み合わせることで、 有人チャットにおける回答生成を、 より効率よく進める取り組みも行なっていると紹介された。 オペレーター稼働を半分に出来たという。既存のFAQ がリストがずらっと並ぶところで終わってしまうのに対し、 生成AIはさらにそれを要約して伝えることができる。
既存のチャットボット+生成AIによるソリューション
福田氏は「CX分野のシェア3割は取りたい。『tsuzumi』 は国産であり、学習データが全て手元にある。 ハルシネーションリスクにも対応しやすい」と語り、「 tsuzumi」 が他社の大規模なモデルに比べて扱いやすいことと、 ファインチューニングしても自社データ流通の心配がない点をアピ ールした。
tsuzumiパートナープログラム募集開始
合わせて、「tsuzumi」のサービスへの組み込みや、業界・ 業務に特化したAIモデル開発を進めるための「 tsuzumiパートナープログラム」 を通したパートナー募集開始も発表された。「tsuzumi」 は軽量でクローズドな環境で動作させられるLLM で、日本語性能が高いとされている。
パートナー種別は3つ。ソリューションパートナー、 モデルパートナー、インテグレーションパートナーの3種があり、 今回は「ソリューションパートナー」と「モデルパートナー」 が募集開始対象となる。
「ソリューションパートナー」とは生成AI「tsuzumi」 を自社サービスに組み込んでサービスのアップグレードを志向する 企業。NTT comでは組み込み支援を行う。「モデルパートナー」 は特定業界向けに「tsuzumi」を提供するにあたり、 チューニングに必要な業界特有データを持つ企業。NTT comと共同で、「tsuzumi」のチューニングを進めて、 共同でマーケティングおよび拡販を行う。
「ソリューションパートナー」と「モデルパートナー」を募集
モデルパートナーにおいては、第一弾募集の今回は、 特に業界としては金融、自治体。 問い合わせ業務の効率化などを狙う。 業務としては小売りや観光などの「接客」、 医師や薬剤師など資格が必要な業務に対する「エキスパート支援」 を注力テーマとして設定して、モデルパートナーの募集を行う。 今後、さらに他の業界への拡大も構想する。
金融、自治体、接客やエキスパート支援を主な対象業務に
募集時期はソリューションパートナーは5月29日から8月31日 まで。モデルパートナーは同じく7月31日まで。 ただしここで終わりというかたちではなく、その後も続く予定だ。