小売業とメーカーをつなぐ物流倉庫で学ぶ最先端技術(後編)

池澤あやかの卸売業突撃レポ!PALTACのRDC新潟で感じた「包容力」

タレント/エンジニアの池澤あやか(@ikeay)さんによるPALTAC「RDC新潟」潜入レポートの後編です。AIロボに感動したあとは、一見地味?なケースを自動で開ける機械が登場!そして池澤さんが物流倉庫に「包容力」を感じた理由とは?後編も、ここでしか見られない萌える技術のオンパレードです!(構成・文/MD NEXT 鹿野恵子、写真/千葉太一)

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オートカートンカッター:どんな箱でも器用に開封!

三木田
ここから先は、商品をバラの状態にして保管するための工程になります。この「オートカートンカッター」は、段ボール箱の上面を自動でカットする装置です。
池澤
わぁ、すごい!
三木田
上面をカットして、次の工程でバラバラにして保管します。
池澤
どうしてこれはピカッと光っているんですか?
三木田
人間の目で見ると同じように見えるケースでも、角がつぶれていたりして、一つ一つ状態が違うので、決められた位置に単純にカッターを当てて切るだけでは中のものまで傷つけてしまう可能性があります。
池澤
なるほど。
三木田
この装置は光ってカメラでケースの角の位置を推定し、カッターの位置を正確に制御することで、そのような失敗を防いでいるんです。
小さなカメラが付いたことで性能がアップした。
池澤
多少へこんでいても大丈夫なんですね。
三木田
はい。カッターで上面を切った後は、上の蓋を吸着してとって送り出します。
池澤
きれいにケースの蓋が取れますね!

 

三木田
実は先ほどお見せしたAIケースピッキングロボットよりもこちらの方が皆さん驚かれているんです。自動カッターを実現したのは弊社がはじめてで、この装置を使わせてほしいという企業様が多いので、外販を検討しております。
池澤
さすが。1つ1つ違う種類のケースが流れてくるのに、みんな同じようにスパッと蓋が取れるのは壮観ですね…!

三木田
ただ、ケースにびっしり商品を詰めているものに関しては、自動でカットすると中の商品まで切れてしまう可能性があるので、手作業で行っているものもあります。
池澤
やはり人間の手を介さないといけない部分もまだあるんですね。

 

三木田
そうですね。あの緑の道具が「SSカッター」といって、約4秒でケース上面をカットする弊社オリジナルのカッターです。ホームセンターでも販売していて、特許も取得しているんですよ。
池澤
特許、お好きですね(笑)。確かに作業が早いです!
三木田
やってみますか?
池澤
え、は、はい……。
緊張気味の池澤さん。
できた!この笑顔。
池澤
わ!簡単にできますね。でもそれなりに力も必要なので、オートカートンカッターの便利さがよくわかりました。

ストレージトレーステーション:バラエリア補充作業を歩行無しで実現

三木田
ここはストレージトレーステーションです。先ほどの上面を切ったケースが送られてきて、「保管トレー」に移し替えます。重量計がついていて、何個移しかえたのかを間違いなく数えることができます。
池澤
この保管トレーにバーコードがついていて、どの商品が何個、どのトレーに保管されているのかということがわかる仕組みなんですね。

三木田
その通りです。以前はこの作業を広い倉庫を歩き回りながら行っていたのですが、商品が手元に搬送されてくることで「歩行」がなくなりました。
池澤
だいぶ省力化できましたね。
三木田
商品を取り出した後の空き箱は全部頭上のコンベヤラインに乗せて、圧縮してリサイクル業者さんに販売します。
池澤
この作業はだいぶ複雑ですね。箱からトレーに詰めて、ケースを上に払う。ゴミの形状もバラバラですし。

三木田
おっしゃる通り、ケースの中にびっしり詰まっているものを取り出すというのがロボットは苦手です。ここの部分の自動化はまだ後回しだと考えています。
池澤
自動化にも順番があるんですね。
三木田
そうですね。この先は、小売業から出荷の依頼があった商品が、トレー自動倉庫などから出庫されて、小売業さんに送るために仕分けられる作業が始まるのですが、私はそこからロボット化したいと考えています。行ってみましょう。

MTCピックステーション:入庫と出庫を同時に行い、生産性2倍に

三木田
ここがMTCピックステーションです。奥の構造物が「トレー自動倉庫」です。トレー自動倉庫から自動的に出てきた保管トレーから、お店が必要としている個数だけ、バラ商品を青いピックトレーに詰め替えます。
池澤
この時点からお店の注文に従って商品を仕分けるわけですね。
三木田
はい。奥のトレー自動倉庫は、クレーンが「商品の出庫」と「商品の入庫」を同時に行うため、「出庫だけをする」「入庫だけをする」に対して効率は2倍です。新開発の技術でもちろん特許を取っています。特許大好き企業なんで(笑)。

池澤
入庫と出庫を同時にするということは、あのトレー自動倉庫の中でどうトレーが配置されるかというのって、意外と重要じゃないですか?

三木田
そうですね。どの商品をどこに置けば同時に出し入れができるかという「最適配置」を算出して制御しています。どの商品が何個、いつ頃出荷するかまで考えて配置する必要があります。現在は本当に簡単なアルゴリズムで配置していますが、もう一歩前進させたいです。

パックステーション:ロボット化、最後の難所

三木田
先ほどピックトレーに詰め替えられたバラ商品は、クロスベルトソーターで店舗ごとに割り当てられた間口に高速に仕分けられます。
池澤
本当に大きなソーターですね!

 

三木田
手元に搬送されてきたピックトレーのバラ商品は、人が手でオリコンに詰めます。
池澤
詰めるスピードがめちゃくちゃ早いし丁寧です!
三木田
バラ商品をどういう風にオリコンに詰めるかでトラックの積載効率が全然違いますから、なるべく満杯にしたい。満杯になったらプリンタからラベルが出てきますので、それを貼って出荷のラインに乗せます。
池澤
これはなかなかロボット化は難しそうですね。
三木田
そうですね。バラバラの形状のものを、なるべくオリコンをいっぱいにするように入れていくのは、ロボットには難しいです。ロボットは「置く」作業は簡単にできても「詰める」のは難しい。
池澤
人間だったら柔軟にできますけどね…。
三木田
ですので私はここがロボット化の最後の難所になるのではないかと考えています。

オリコンスタッカー:荷積みの順番まで考え、積載効率を上げる

三木田
これも当社オリジナルの技術「オリコンスタッカー」です。自動でオリコンを6段まで段積みします。
池澤
6段まで積むと、人の身長より高くなりますから、人間が手で行おうとすると大変な作業ですね。
三木田
あとはラベルに書かれた出荷口のところに運んで、トラックに荷積みして出荷します。どの順番でパレットやオリコンをトラックに積み込めば生産性が高いかということまで考えて作業をしているんですよ。
池澤
この段積みされたオリコンは、車輪がついた台車に乗っていて、女性でも簡単に移動できそうですね。
三木田
そうですね。でもこの工程もゆくゆくは自動化する予定なんです。自律移動ロボットで搬送したいと考えています。
池澤
まさに自動化の”鬼”ですね(笑)。

 

池澤
三木田さん、産業用ロボットは面白いですか?
三木田
楽しいですね。これまで自動車メーカーでロボット開発に携わってきましたが、こちらの仕事は使っている人の感想がダイレクトに届きますし、開発のサイクルも非常に速いです。
池澤
しかもこちらはダイレクトに企業の利益やコストカットにつながるところも面白いですよね。
三木田
そうですね。では最後の工程、返品の仕分けに行きましょう。

返品:減らすことで小売業もメーカーもお客様もハッピーになる

三木田
ここは小売業さんから送られてきた返品商品をメーカーさんごとに仕分けするソーターです。流通業界には膨大な量の返品があります。小売業さんは、消費者の方が商品を品切れで買えないという状況を避けるために、多めに発注されるんです。そうするとどうしても返品が発生してしまいます。
池澤
そんなにたくさん返品があるんですね!
三木田
バーコードを読み取ってメーカーさんごとに仕分けをして、最後はメーカーさんに送り返します。

池澤
ここはもうかなり効率化されているように感じます。
三木田
そうですね。ここを効率化するより、返品そのものをなくしたほうが根本的な問題の解決につながると私は思っていて、そのような研究をしています。余分なコストがなくなれば、メーカーも、卸も、小売りもハッピーになる。もちろん消費者の皆さんにも還元されます。

池澤
卸売業の皆さんが頑張っていただくと、もっと早く、安く、よいものが買えるようになる。全員幸せになりますね。頑張ってもらいたいです!

工夫の数々に「懐の広さ」を感じた

三木田
さて、これで見学は終わりですがどうでしたか?
池澤
思っていたより人は少ないし、機械と人が助け合っている様子を物流センターで見られるとは思っていなかったので、そのような光景が見られてびっくりしました。
三木田
そうですね。
池澤
製造業の工場では「ある一つのものを作る」ために同じ動きに特化したロボットを作ればいいのですが、物流センターは他社が作った商品を持ち寄っているので、取り扱うものの規格がバラバラで、そこにどう機械がフィットするかという工夫をたくさん見ることができました。懐の深さとか、包容力が必要なお仕事なんですね。秋にできる物流センターも楽しみにしています!
三木田
ありがとうございます!