購買行動は「計画購買」と「非計画購買」に分けて理解する

購買行動の理解なくして、お客に喜んでいただける店づくりは不可能です。お客は店頭で商品を購入するとき、いったいどのような理由でその商品を手に取るのでしょうか?お客の立場から購買行動をあらためて分析します。ポイントとなるのは、その買物が計画的かどうかです。

計画購買と非計画購買

購買行動には、「計画購買」と「非計画購買」の2種類があります。

「計画購買」とは、入店前にそもそも何を買うのかを決めている購買行動のことです。たとえば、家で使っているA社のラップを買うという目的で来店し、実際にA社のラップを買ったというように、「入店前の意向」と「入店後に購入したもの」が結果として同じであった場合を「計画購買」と言います。

一方の「非計画購買」はたとえばA社のラップを買おうとしていたものの、店舗で実際に購入したのはB社のラップだったというように、入店前の意図とは違うものを買うことを指します。そもそも買うつもりがなかったものを、店舗で見つけて購入したり、ビールを買うつもりだけれども銘柄は店頭で決めようという購買行動も非計画購買に入ります。

非計画購買の4種類

非計画購買には4種類あります。(非計画購買の分類は人によって違うことがありますが、筆者は4種類に分ければ十分だと考えています)。

1つ目は「純粋衝動購買」です。売場を歩いていて気になった「これいいな」と思ったものを購買することです。もともとビールを買うつもりはなかったのだけれども、ビールの新製品が出ていたので買ってみたというものです。

2つ目は「想起衝動購買」です。日常の必需品を売場で思い出して購入することを指します。たとえば、売場でPOPを見て「そういえば家のマヨネーズがそろそろ切れそうだ」と思い出して購入することです。これは、売場で何かを思い出したことによって発生した非計画購買と言えます。

3つ目は「提案受入衝動購買」です。一番わかりやすいのが、店舗の従業員が薦めてくれたものを購入する例です。ドラッグストアの店頭で「最近疲れがたまっているんです」と相談したところ、店員さんが栄養ドリンクをお勧めしてくれたので、それを購入したというような購買行動を指します。当然接客による推奨だけではなく、POPやデジタルサイネージ、大量陳列による提案を受け入れて購入することもこれに含みます。「提案受入衝動購買」も、売場に行かなければ発生しない非計画購買です。

4つ目は「計画的衝動購買」です。「入店前に買うものの品種までは決めているけれども、品目までは決めていない」場合などがこれにあたります。「キャベツを買うと決めているけど、どの産地・サイズのキャベツを買うかは店に行ってから決めよう」「一番安いシャンプーを買おう」などの購買行動を指します。鮮度や品揃え、特価やクーポン値引き、ポイント還元率のアップなど、店頭で提供される情報によって品目が選定されます。

カテゴリーによって購買行動の種類・割合は違う

業態やカテゴリーによって、どの購買がどの比率で起きるのかは異なります。

たとえば、生鮮食品や日配は非計画購買が多いカテゴリーと言えます。これらの食品に関しては、店頭で実際に買うものを決めようと思うお客が多いのです。皆さんも「肉を買う」とは決めていても、具体的にどの肉をどれぐらい購入するのかは、その日の価格や鮮度、品揃えを見て店頭で決めることが多いのではないでしょうか。納豆を買うときも「今日は特売の納豆にしよう」とか「少し高いけどおいしそうな納豆にしよう」と考えて購入している人が多いはずです。ですから食品スーパーマーケットは、8割がた非計画購買であるといわれています。

一方、医薬品や調味料のような必需品は計画購買が多いカテゴリーです。「いつも使っているあの風邪薬を追加で購入しよう」「冷蔵庫のあのメーカーのマヨネーズがもうなくなりそうなので買いに行こう」という必需品の追加購入が多いからです。

計画購買の需要を満たすことは、客数に影響します。一方、非計画購買をいかに起こすかによって、客単価が影響します。

次回はこのことについて詳しく説明していきましょう。

(談、まとめ:編集部 鹿野恵子/イラスト:一秒)

契約社員にも退職金?変わりゆく賃金の常識

いわゆる正社員(通常の労働者のこと、以下同様)に対して、パートタイマー(短時間労働者のこと、以下同様)をはじめとした非正規社員の待遇をどう考えるべきなのか、2018年の働き方改革法成立に伴い定められた「指針」や判例などをもとにこれまで3回にわたって解説してきました。今回は今後、どのように対応を考えていくべきかをまとめました。

「基本給」でも不合理な格差が認められた?

「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(以下、「指針」)において、「基本給」の考え方の原則は、同一の能力・経験、業績・成果、勤続年数に応じて支払われる賃金は同一のものでなければならないとされています。

これは、雇用形態や就業形態によって待遇に差を設けないという「同一労働・同一賃金」の考え方のベースともいえます。ただし、支給の趣旨がある程度特定できる手当や賞与と違い、(さまざまな事情が考慮される)基本給の支給趣旨を整理して、同一の状況かどうかを判断するのはたいへん難しいものでしょう。

たとえば、有期雇用の契約社員4人が訴えを起こしたメトロコマース事件では、比較対象の正社員給与に対して72.6~74.7%の範囲という給与水準は、不合理ではないという判決が出ています(2019年2月20日・東京高裁)。

(この事件は、有期雇用の契約社員の「退職金」の不支給が不合理、という判決が出たことで注目を集めた事件です。「長年の勤務に関する功労報償の性格を有する部分」は、支給すべきで、その金額は、正社員の給与の少なくとも4分の1とされました。)

一方で、「基本給」の待遇差に関しても、正社員と臨時職員との賃金差について「不合理」を認める判決も出ています(2018年11月29日・福岡高裁・産業医科大学事件)。

このケースでは、個別の事情が重視されました。それは「臨時職員という名であるにもかかわらず、30年以上の長期にわたり雇止めもなく雇用されていた」というものです。そして、その差は、一定の範囲で違法(不合理だ)とされました。一定の範囲とは、同学歴の正規職員の主任昇格前の賃金水準(約21万6000円)よりも3万円安いという部分です。

まずは、その差を「説明できること」が必要

こうした判決を見ても、個別事情によるところが多く、特に金額については「これならOK」「これならNG」というルールを一般化できる状況ではないことがわかります。そうした際に企業としてまず重要なのは、会社として給与の差について「説明できること」になります。

2018年の働き方改革法成立に伴い、「待遇差」に関して、従業員から求めがあった場合、その相違の内容と理由を説明することは事業主の義務にもなりました ※1。

この際、「雇用形態や就業形態が違うから」といった理由だけではもちろんNGです。さらに「指針」では、賃金制度において、正社員と正社員以外の従業員との間で賃金の決定基準・ルールの相違があるときの「理由」とは「通常の労働者と将来の役割期待が異なる」といった主観的または抽象的なものであってはならないとされました。

「指針」の注で入れられたこの内容は、第9回でもふれたように、「どんな職務内容であっても正社員に比べてパートタイマーは待遇が悪いのが当たり前」というふうに捉えてきた企業に、「今後はそれだけではダメですよ」と、釘を刺すものとも言えそうです。

上図であれば、AさんとBさんの500円の時給ギャップは何を根拠にしているか、ということを雇用形態・就業形態の差や「将来的な期待」といった抽象的な理由ではなく、具体的な根拠を説明する必要があるということです。「これまでそれが常識だったから」という理屈は通用しなくなっているのです。

※1  この改正に関する施行は2019年4月から(中小企業を除く)です。一方で施行前である現在も、「同一労働・同一賃金」で不合理を認める判決が次々にでていることから、企業側の対応は待ったなしとも言えます。

多様化する従業員、企業としての軸を定める

具体的な根拠を示すには、誰にでも説明できる賃金制度になっているかを再点検する必要があります。その際に、従業員からの納得感を得られるものかという視点は大変重要です。それが「訴えられないこと」につながるのはもちろん、従業員満足(ES)向上や人材定着につながるからです。

賃金は生活を保障する水準を支給するといった、いわゆる「生活給」の考え方が納得感を得やすい時代もあったでしょう。ただし、個々人の人生が多様化した現在、家族構成やライフステージなど、職務とは関係ない従業員の個別の事情によって「賃金」を決定することは、かえって不公平感のもとになるとも言えます。

職務に応じた納得感のある賃金を設定するうえで「人事評価制度」は大切な役割を果たします。これまで「人事評価制度」というと、「結果」としての成果を評価し、限られた原資を配分するためのもの、と捉えられがちでした。しかし、今後は、企業がどのような仕事ぶりを評価し、何を賃金に反映させるのかという、企業としての「軸」を従業員と共有するためのツールという視点がより大切になるでしょう。

特にオペレーションの徹底力が重要なチェーンストアにおいては、結果を得るための「プロセス」の評価に重点を置くことをおすすめします。つまり「頑張り」が評価される仕組みです(もし、頑張っていても最終的な成果が出ていないのであれば、その点の検証も必要です)。

人事評価は企業から従業員へのメッセージです。人材獲得の際、福利厚生を強調することも、もちろん大切ですが、「企業のメッセージに共感できる人」という視点は、長く働いてもらううえで欠かせないものと言えます。

 同一労働・同一賃金の「先進企業」に学ぶ

「同一労働・同一賃金」に対応する賃金や人事評価制度の構築にあたっては、取組み先進企業が参考になるでしょう。たとえば、広島県の老舗食品スーパーのフレスタでは、「同一役割同一賃金」という名称で、一般職、チーフ、管理職などの役割に伴う給与をベースに、地域や時間限定といった働く条件(有期か無期かといった雇用形態ではないことに注意)を組み合わせ、そこに能力評価をオンする仕組みを取り入れています(『月刊MD』2019年8月号より)。

また、パートタイム労働者活躍企業好事例バンク(https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/koujirei-bank/)でも、先進企業が数多く紹介されています。

働き方改革法のなかでも「同一労働・同一賃金」に関する内容は、これまでの常識を覆すようなものもあり、企業側にとっては特に厳しい要求だと捉えられるかもしれません。だからこそ、従業員とともに企業が成長する好機と捉えて、前向きに取り組んでいただければと思います。

ツルハ、ウエルシアを抜き僅差で売上高1位に。ココカラ+マツキヨ連合で再編進むドラッグストア業界

月刊マーチャンダイジングでは、毎年10月号で上場ドラッグストア企業の決算を特集しています。今回は2019年の売上高ランキングと、2020年の予想売上高ランキングの状況から、ドラッグストア業界の将来の展望について学びます。

(※本記事は2019年度の決算をまとめたものです。最新のドラッグストア業界決算に関する記事はこちら)

ウエルシア・ツルハのトップ2は売上8,000億突破![ドラッグストア決算2020まとめ]

売上高はウエルシアを抜きツルハがトップに立つ

上の図表はDgS上場企業各社が2019年に発表した決算の実績です。以下により細かい内容を記しています。(画像はクリックで拡大できます)

売上高に関しては、ツルハホールディングス(HD)が昨年トップだったウエルシアHDを抜いて、僅差ではありますが7,824億円で1位となりました。

ツルハHDの期首初めの売上高予想は7,436億円でしたが、期中に140店舗の新規出店(純増84店舗)を行うなど積極的な出店政策を進めたことと、2018年5月に中部圏を地盤とするビー・アンド・ディーHDを子会社化したことで67店舗が加わったことが、大幅な売上増につながる結果となりました。

ウエルシアHDも前期比12.1%増と高い伸びを示したものの、ツルハHDとは33億円の差が付いて7,791億円となりました。

コスモス薬品3位に、収益重視のマツキヨHD

さらに、2017年度に売上高で5位だったコスモス薬品が、2019年5月期(2018年度)決算で6,000億円の大台を突破して3位に躍り出ました。コスモス薬品も期中に93店舗の出店(純増81店舗)を進め、期末店舗数は993店舗と1,000店舗に迫っています。(2019年10月現在1,020店舗を出店)

4位は、同4.2%増で5,880億円のサンドラッグ。売上高構成比で約4割を占めるディスカウント事業(ダイレックス)の売上高が同7.6%増と、全体を牽引した形です。

マツモトキヨシHDは、同3.1%増の5,759億円と5位に落ち着きました。3年前の2015年度まで業界のトップを走ってきた同社ですが、上位企業の中では伸び率が高いとはいえません。

その理由は、この数年規模拡大よりも収益改善を重視してきたことがあります。その代表がプライベートブランド(PB)の拡充で、2019年3月期(2018年度)のPBの売上高構成比は前年度から0.5ポイントアップして10.6%にまで高まっています。営業利益は360億円とツルハの418億円に次いで業界2位。営業利益率は6.3%と業界トップです。

出店強化でクリエイト、クスリのアオキHDも好調

中堅DgSの中でも堅調に業績を伸ばしている企業が、クリエイトSD HD、クスリのアオキHD、Genky DrugStores、薬王堂です。

クリエイトSD HDも新規出店を積極的に進めており、生鮮食品を取り扱う専門店と協業した店舗や、前期から展開しているビューティ強化型の新業態Cremo(クレモ)などを含め44店舗の新規出店(純増39店舗)を行いました。

出店を強化しているのは、クスリのアオキHDも同様です。同社は期中にDgS業態を85店舗出店(純増84店舗)。DgS併設調剤薬局を40薬局新規に開設して、期末店舗数はDgS535店舗(うち調剤薬局併設239店舗)、調剤専門薬局6店舗の合計541店舗となっています。

マツキヨ選択は、効率性とPB開発力が決め手

DgS業界で、いまもっとも耳目を集めているのがココカラファインとマツキヨの資本業務提携でしょう。

8月14日、ココカラファインはマツモトキヨシHDとの経営統合に向けた協議を開始すると発表しました。いよいよDgS業界で1兆円企業が誕生することになります。

4月のココカラファインとマツモトキヨシHDとの資本業務提携に関する協議開始の発表を端にして、その後スギHDがココカラファインに秋波を送り、ココカラファインは6月に特別委員会を設置して、どちらとの連携がより相乗効果を生み出すかなどについて検討を重ねてきました。

いずれも店舗網などに関しては補完関係にあるとされ、PBなどの商品戦略に強みのあるマツモトキヨシHDか、調剤に強みのあるスギHDのどちらを選択するのか、業界関係者は注目してきたが、ココカラファインは「店舗作業の効率性やPB商品の開発などについて、大きなシナジー効果が生じる可能性」があると判断しました。

これまでのDgS業界のM&Aは、中小が生き残りをかけて大手の傘下に入るという図式が続いてきましたが、売上で5,000億円規模の大手同士でさえ手を組まなければならなくなったという状況が生み出されています。

日本チェーンドラッグストア協会によると、2018年度のDgS企業409社2万228店舗の推定売上高は、前年度比で6.2%増の7兆2,744億円でした。わずか10年で2兆円強を上積みする勢いで成長しているということです。

市場が約10兆円のコンビニエンスストア業界を、DgS業界は規模において視野に入れるようになりました。最近では、食品を強化するDgS、ヘルス&ビューティを強化するコンビニと、取扱い品目でお互いの垣根は低くなっています。

そのコンビニ業界は、実質、セブン−イレブン、ファミリーマート、ローソンの3社で、市場の約9割を占めるといわれています。

いずれDgS業界も、コンビニ業界同様に上位3社ほどで占められるだろうという見方があります。

前項のDgS売上高ランキングのうち、上位10社・グループの売上高合計は5兆5,153億円です。これは、前年度から3,430億円の増加で、中堅DgS1社が加わるのと同じ勢いです。

単純な比較はできませんが、2018年度に上位10社がDgS市場全体に占める割合は約75%。ちなみに同様の試算で2017年度は約70%ですから、この1年間で5%伸びたことになります。一方で、コンビニ業界に比べると、寡占化の動きにはまだ伸びしろがあるともいえるでしょう。

2019年度は5,000億円以上が6社に

上場DgSの2019年度の売上高予想を見ると、ツルハHDは8,200億円。一方のウエルシアHDは8,500億円となっているので、来年はまた順位が入れ替わることになります。

コスモス薬品(売上高予想6,585億円)、サンドラッグ(同6,164億円)、マツモトキヨシHD(同6,000億円)と、各社は強気の予想を立て、スギHD(同5,200億円)も5,000億円台を見込みます。2019年度は5,000億円以上のDgSが6社誕生することになり、食品スーパー業界の5社を超えることにります。

さらに、実際の数値が反映されるのは2020年度以降になるが、マツモトキヨシHDとココカラファイン(同4,090億円)の2019年度の売上高予想を単純に合計すると1兆90億円です。1兆円を上回ることによる、仕入れや商品開発、投資効率のスケールメリットは計り知れません。

上位企業が、この動きに対して座して待つとは想定しにくいでしょう。スギHDも次の施策を練ってくるはずです。業界再編の次の一手はどこなのか、DgS業界で本当に生き残れるのはどこなのかが注目されています。

MIYOSHI「無添加 白いせっけん 3P」リニューアルが問う、本当の「無添加」

ミヨシ石鹸が固形せっけんの主力商品「白いせっけん3P」をリニューアルした。配合成分のグレードアップはもちろん、脱酸素フィルムを採用した斬新なパッケージや、「全成分表示」などのこだわりで本当の「無添加」とは何かを市場に問いかける製品に仕上がっている。

素材を踏み込んで伝えることがメーカーの「誠意」

「無添加 白いせっけん」は、精製度の高い食品用天然油脂を使用し、本釜焚で製造している同社こだわりの主力商品だ。その人気商品を今回リニューアルした背景には2点あると、ミヨシ石鹸取締役営業本部長の中野浩之さんは言う。

1つが「全成分表示」だ。

「これまでは薬事法に従い、パッケージに記載する原材料について『せっけん素地と水』という表示をしていました。それを今回のリニューアルから脂肪酸レベルまで分解して表示することにしたのです」(中野さん)

新商品のパッケージには「牛脂脂肪酸Na、パーム核脂肪酸Na、水、グリセリン、塩化Na」と記載されている。これはPCPC(The Personal Care Products Council)の定めたINCI(国際的表示名称)に準ずる形式だ。

「食品業界を中心に、本当の無添加とは何か?ということが議論になっています。無添加という言葉には、いまのところ規制がない状態です。メーカーが名乗ろうと思えば『香料無添加』『防腐剤無添加』のようにいくらでも名乗ることができます。弊社はそうではなくて、本当の無添加とは何かということを提示しようとしています。これまでは水とせっけん素地からできているとお伝えしていたものを、さらに踏み込んでお客様にお伝えすることが我々の誠意ではないかと考えました」(中野さん)

ミヨシ石鹸は、この「白いせっけん」を皮切りに、ビューティーケアの商品を全成分表示に切り替える予定だという。

脱酸素フィルム採用でさらに環境にやさしく、新鮮に

今回のリニューアルのもう一つの理由が「パッケージの変更」である。

石鹸は空気に触れると変色することがあり、同社の既存商品は個包装のひとつひとつに脱酸素剤を封入していた。しかしこれは最終的にはゴミになってしまう。

「パッケージを開けるときまでつくりたてが続く、というコンセプトでこれまで脱酸素剤を封入していました。しかし、これも小さなことですが、ゴミとして処理しなければならないため、今回三菱化学さんと共同で脱酸素フィルムを開発しました。個包装に脱酸素剤を練りこみ、それ自体が脱酸素剤の代わりとなります。一般には食品・菓子に利用されているもので、日用品では弊社製品以外採用の予定はないそうです」(中野さん)

フィルムへの印刷も環境に配慮したバイオマスインキを採用している。少し灰色がかった個包装は、あえてフィルムの素材の色をそのままにしたもの。このフィルムは酸化すると変色するが、もし変色したのであれば、それはきちんとフィルムが酸素を吸っている証拠と言える。

全体のパッケージもリニューアルを行った。通常3個入りの石鹸は、石鹸を平たく並べるため、寝かせた状態でしか店頭に陳列できない。今回はそれをサンドイッチのように3つ積み重ねた形状にした。

「きちんとお客様の方を向いた商品にしたいと考え、この形を選びました。実はこのパッケージの上部を止めるのは手作業でかなりのコストがかかるのですが、すべてにおいて人にやさしく、環境にやさしくするためにはどのようにすればいいのかを考えながら商品を設計しています」(中野さん)

もちろん製品の品質自体もパワーアップしている。原料の一つである牛脂成分のグレードを上げ、硬化牛脂にしたことで、これまでより泡もちよく、とけ崩れしにくくなった。

「使っているうちに乾燥してひび割れしてしまう石鹸は少なくありませんが、この白いせっけんは、最後までしっかりと使い切ることができます。継続して使っていただいているお客様には、使い心地の改善点を、はじめての方には、あらためて固形せっけんのよさを感じてもらえるはずです」(同社広報 櫻井利枝さん)

いたるところにこだわりが詰め込まれた「ミヨシの白いせっけん」。本当の意味での「無添加」とは何かを問いかけてくる商品だ。

環境にやさしい食品原料の「殺虫剤」「除草剤」がトレンドに

2015年9月に国連で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals「持続可能な開発目標)」に関心が高まる中、地球環境にやさしい新商品が続々登場しています。そういう商品を消費者が積極的に支持するようになり、メーカーのマーケティング戦略も大きく変化しています。

食品原料99.9%の園芸用殺虫剤「ロハピ」(アースガーデン)。

99.9%食品原料の園芸用害虫対策商品「ロハピ」

10月10日に園芸業界最大の商談会「国際ガーデンエクスポ」に行ってきました。園芸・ガーデニングの人口は確実に増えています。たとえば、「家庭園芸薬品市場」は、2013年約250億円が、2019年は約320億円(フマキラー調べ)と着実に市場が拡大しています。

市場拡大を牽引しているのは、「除草剤」「園芸用不快害虫」です。注目すべきは、草を枯らす、害虫を殺すことを目的とした商品が、地球環境にやさしい食品原料の新商品が主流になっていることです。

アース製薬の展示ブースの一押し商品は、園芸用不快害虫対策の「ロハピ」でした。ロハピとは、「ロハス+ハッピー」の略で、環境にやさしい商品であることを強調したネーミングになっています。食品原料99.9%の病害虫対策商品です。以前の殺虫剤では、たとえばトマトの収穫の1週間以上前には使用を禁止する必要がありましたが、ロハピでは収穫の前日まで安心して使用できます。

また、アースガーデンでは、「まもるくん」というキャラクターをLINE登録し、病気にかかった葉・実・花の写真をスマホで送ると、AIが病名を特定して、対策をアドバイスしてくれるサービスを開始しました。スマホで園芸相談ができる時代なのですね。

LINEで園芸相談できるサービスも開始した(アース製薬のホームページより)。

酢の力ですばやく枯らす食品原料の除草剤「ビネガーキラー」

フマキラーも、食品生まれの除草剤「ビネガーキラー」を新発売しました。食品原料のお酢を使用した、安心・安全の除草剤です。2010年の1月20日より、全国のドラッグストア、ホームセンター、スーパーで販売する計画です。除草剤は、2013年対比で市場が約165%も成長している有望市場です。

小さな子供のいる家庭では、除草剤を使うのは心配と考える人がほとんどでした。私も小さな子供がいた時代は、庭に除草剤をまくのをためらい、夏場に汗だくになって除草したことを覚えています。ビネガーキラーは、食品原料の除草剤なので、小さな子供やペットのいる家庭でも安心して使用できます。また、畑や花壇の除草にも躊躇せず使用できるのは良いですね。

お酢でできた除草剤「ビネガーキラー」(フマキラー)。

「ロハピ」「ビネガーキラー」ともに、SDGsの流れに合った、地球環境にやさしく持続可能な新商品です。最近の消費者は、商品選びをするときに、社会に貢献している商品かどうかを重視する傾向が高まっています。新しい消費の主役「ミレニアル世代」(1980年代から2000年代初頭までに生まれた人)にその傾向が顕著なようです。自然環境にやさしい殺虫剤、除草剤も、ミレニアル世代に選ばれる商品です。

また、スターバックスコーヒーが、「このコーヒー豆は、労働環境の良い農場でつくられた商品(フェアトレード)である」とシアトルのワシントン大学の売店でアピールしたところ、価格が高いフェアトレードコーヒーが爆発的に売れたそうです。これ以外にも、ピンクリボン運動を支援しているメーカーの商品を積極的に購入するなど、社会貢献のストーリーが売れ方に大きく影響を与える時代です。このトレンドを「社会貢献型マーケティング」といいます。

チェーンストアは 「平均点」を上げる教育が重要だ

2020年には1,000店を超える「4桁チェーン」のDgS(ドラッグストア)が、8社も登場します。1企業当たりの店舗数は10年前と比較すると桁違いに増えました。チェーンストアは店舗数が増えれば増えるほど「標準化」が重要になります。標準化とは、人による「バラツキ」、店による「バラツキ」を減らし、平均点を上げることです。「大量店舗」時代だからこそ、標準化の重要性を再確認すべきです。そのために、月刊マーチャンダイジング2011年7月号に掲載した「今月の視点」を再掲載します。今読んでも十分に通用する論理であると自負しています。

凡時徹底が組織力を高める

「小売業はイチローである」という話を講演でしたことがあります。対比すればメーカーはホームランバッターです。打率は2割3分台で、ヒットを打つ確率は低くても、一人の天才的研究者が稀に画期的な特許を取得したり、一人の天才的マーケッターが満塁ホームラン的メガブランドを当てれば、大きな売上と利益を獲得することができます。

一方、小売業には画期的な発明はほとんど存在しません。イチローのように、内野安打やシングルヒット、盗塁のような日々のコツコツとした「店内作業」を繰り返し、徹底することが最大の差別化策です。

「凡時徹底が非凡を産む」という言葉があります。だれにでもできる平凡な店内作業を、全店全員が徹底することは、とてつもなく非凡なことです。つまり、小売業の教育は、一握りの天才をつくる教育よりも、現場社員の平均点を上げる教育の方がはるかに重要なのです。

組織としての平均能力の高さこそが、小売企業の最大の差別化戦略です。たとえば、「レジ対応」は、買物客(ショッパー)が店舗で必ず通るコミュニケーションポイントです。どんなに安い商品を購入し、どんなに親切な接客を受けたとしても、最後のレジ対応で嫌な思いをすると、それまでの幸せな買物体験の記憶は吹き飛び、その店に対する印象は最悪の結果に終わってしまいます。「レジ対応」は、店の印象を決めるもっとも大切な最後の関所なのです。

「そんなこと分かっているよ」といわないで欲しい。マニュアル通りのレジ打ち作業と言葉使い、身だしなみ、笑顔を全店全員が徹底できている小売業は多くはありません。店の印象を決めるもっとも重要なコミュニケーションポイントであるにもかかわらずです。まさに凡時徹底が非凡を産む作業の典型が「レジ対応」です。

「100の指示より1の徹底」。ダメな組織ほど、社長、副社長、専務、常務、部長—etc.と、ありとあらゆる方向から膨大な異なった指示が現場に降り注いでいます。しかも、命令者はその時の気分で指示を出し、命令の出しっぱなしで報・連・相を要求しないから、現場は「やらなくても怒られない」ことが分かると、馬耳東風になり、「100の指示が来るが何もやらない」というダメ組織の典型になります。

行動改革で強い「企業文化」をつくる

企業の競争力は、「組織力」の強化です。そのためにもっとも大切なことは、「行動改革と強い企業文化づくり」です。意識改革をいくら教育しても、行動が変わらなければ意味はありません。経営者がいっていることと、現場の行動が異なる、つまり「いっていることとやっていること」の異なる組織では競争には勝てません。

「魂は細部に宿る」という言葉もあるように、現場での「行動」の細部を突き詰められるかどうかが勝敗を分けます。企業経営は、「企業文化づくり」に始まり、「企業文化づくり」に終わるといわれます。企業文化とは、その企業の「経営理念」や「経営哲学」が、単なるお題目ではなくて、その企業に属する社員全員の意識に深く浸透し、それが全員の「行動」の変化に結びついた状態のことをいいます。店数が増えれば増えるほど、行動改革を繰り返して、強い企業文化をつくることが、もっとも重要な経営対策になります。

小売業の教育は、現場の平均点を上げる教育であると同時に、結果よりも「行動(プロセス)」を評価する教育です。チェーンストアは、組織が有機的に連携し、チームワークで任務を遂行する組織です。そのためには、「結果管理」よりも、「プロセス(行動)管理」を重視しなければなりません。

一般的に、チェーンストア組織のスーパーバイザー(エリアマネジャー。7~10店を統括)は、担当エリアの売上・粗利・営業利益の数値責任を持ちます。しかし、「店長」は、売上責任の割合は少なくて、売上結果よりも、決められた行動・職務を徹底したかどうかのプロセスを評価する割合の方が高く、結果管理よりも、プロセス管理を重視します。

チームワークで任務を遂行する組織にとってもっとも重要なルールは、報・連・相(ほうれんそう)の徹底です。報・連・相とは、組織としてスムーズに仕事を遂行するための、上司への「報告・連絡・相談」のことです。仕事の問題点、解決策の相談・途中経過・終了報告を、指示を出した上司に伝えることで、個人プレーではなくて、チームワークで仕事を行う行動様式を徹底することです。報・連・相は、組織で仕事をするためのすべてであるといっても過言ではありません。

スーパーバイザーは「標準化」の徹底者

平均点を上げる教育とは、別の言葉を使えば「標準化」を進めることです。標準化とは、「バラツキを少なくすること」です。店舗によるバラツキ、人によるバラツキを極力少なくし、どの店に行っても一定の誤差の中で均質化されたサービスを受けられることがチェーンストアの本質的な価値です。

標準化を推進するためのキーマンがスーパーバイザー(≒エリアマネジャー)です。彼等は、担当しているエリアの店舗間格差を少なくするために、店舗を巡回し、不完全作業を摘発し、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)で、その場で手本を示して作業方法を教育し、人による作業のバラツキを減らし、「完全作業」の精度を高めることが最大の「職務」
です。

スーパーバイザーがOITで完全作業を徹底させる責任者であるならば、スーパーバイザーは最新の機械の使い方、最新の作業方法を常に習得し続けなければなりません。ややもすると、現場から離れて、最新のレジを使えない「上司」という役割だけのスーパーバイザーになってしまいます。スーパーバイザーは店内作業のプロフェッショナルでなければならないのです。

また、完全作業を徹底するだけでなくて、PDCA(プラン・ドゥ・チェック・アクション)を繰り返し、常に最新の作業方法などの新しい仕組みや制度を創り出すことも、スーパーバイザーの重要な職務です。いわれたことだけをやるのではなくて、新しい制度を創造し、それを新しいルールとして水平展開し、新しい作業方法をOJTで教育する「PDCAサイクル」も担当してもらいたいと思います。

また、小売業に属する実務家は、「現場感覚」を常に研ぎ澄ます必要があります。常に商品に触ったり、棚卸し作業をやったり、最新の現場作業を習得し続けることで現場感覚は磨かれます。現場感覚の鋭いスーパーバイザーや店長は、売場とバックヤードを見ただけで、およその「在庫金額」が分かるはずです。

セブンイレブンのOFC(オペレーションフィールドカウンセラー)の初期教育は、「棚卸作業」です。棚卸作業を繰り返すことで、売場を見ただけで在庫金額が分かるレベルまで商品と原価を覚えることが、OFCが経験する最初の教育だそうです。

(月刊マーチャンダイジング2011年7月号の「今月の視点」を一部修正して掲載)

「店舗数減少」でも売上を伸ばすウォルマート、ホームデポの戦略

アメリカの大手小売業は、新規出店投資を抑えて、EC、IT投資を拡大することで、既存店の売上を増やす方向に大きく舵を切っています。店舗数が減少しても、企業全体の売上を増やすためのオムニチャネル戦略の現状を分析してみます。

ウォルマートもホームデポも店舗数が減少している

月刊MDの読者が多い日本のドラッグストア(DgS)は、大量出店、陣取り合戦の真っただ中です。大手DgSは、今期も100店ペースの新規開店を継続しています。2020年の予測では、店舗数が1,000店を超える「4桁チェーン」のDgSが8社も誕生します。

一方、ウォルマート、ホームデポなどのアメリカの大手小売業は、この数年、店舗数を増やさないで、オムニチャネル化によって既存店の売上を増やす戦略に大きく転換しています。
図表1は、ウォルマートの過去5年間の店舗数の推移です。毎年、100店舗以上の新規出店を継続してきた同社ですが、2017年頃から出店ペースが鈍化し、2019年は前年比で約350店舗も店舗数が減少しています。

店舗数が約350店も減少しているにもかかわらず、2019年は前年比で2.9%も売上を増やしています。特筆すべきは、既存店売上伸長率が前年比で4.0%も増えていることです。

同様にホームデポも過去5年間、店舗数は横ばいです(図表2)。2019年は、2018年比で18店舗も店舗数が減少していますが、売上高は9.3%も増えています。ウォルマート同様に既存店売上伸長率が5.2%と高いことが、店数が減っても売上が増えている理由です。

オムニチャネル化で買物体験の質を向上

ウォルマートは、2019年期も実店舗とオンラインを融合させたオムニチャネル戦略を推し進め、新規出店投資を削減し、EC関連の投資を強化しました。オンラインで注文した食品を店舗の駐車場で受け取るオンライン・グローサリー・ピックアップ(カーブサイドピックアップ)の対応店舗は期末までに2,100店を超えました。また、オンラインで注文した食品を店舗のパーソナル・ショッパーが集め顧客の自宅まで届ける宅配サービス、オンライン・グローサリー・デリバリーを提供する店舗の数も800店に増えました。

オムニチャネル化を進めることで買物の便利性と選択肢を増やしたことが、既存店・既存顧客の売上増につながったようです。5年前の既存店売上伸長率が0.5%と低迷し、アマゾンの影響をモロに受けていましたが、2019年は既存店売上伸長率が4.0%と大きく伸びており、オムニチャネル化によるアマゾン対抗策の手ごたえを感じているようです。

一方、ホームデポは2017年から導入された「ワン・ホーム・デポ」戦略によって、オムニチャネル化を着実に進めています。店舗とデジタルのシームレス(つなぎめのない)な買物体験を推進し、顧客満足度を高めています。通常の店舗では3万から4万のアイテムが在庫されていますがが、オンラインでは100万以上のアイテムが販売されています。

オンラインでの買物は、BOPIS(Buy OnlinePickup In Store:オンライン注文、店舗でピックアップ)、BOSS(Buy Online Ship to Store:オンライン注文、店舗に配送)、BORIS(Buy OnlineReturn In Store:オンライン購入、店舗で返品)、BODFS(Buy Online Deliver From Store:オンライン注文、店舗から配達)の4つのプログラム(選択肢)を用意しています。オンライン注文した人の50%以上の顧客が「店舗ピックアップ」を選択しています。リアル店舗では在庫していない商品の売上が加わることで、店舗数が横ばいでも、既存店の売上を増やしているわけです。

日本のDgSは現在「大量出店時代」の真っただ中にあります。しかし、日本は人口が減少し、いつかは店舗数が飽和化し、大量出店時代は終わります。また、1店当たりの商圏人口が減少し、既存店の売上が低下する時代が必ず到来します。ウォルマート、ホームデポの現状は、日本の小売業の未来です。「オムニチャネルなどまだ先の話」と考えないで、売上減少時代に今から備える必要があると思います。

「パートタイマーにも賞与」は常識になる?

前回は、今後求められる有期雇用労働者やパートタイマーの給与の考え方のうち、「手当」について解説しました。今回は賞与や基本給についてみていきましょう。

「手当」の趣旨にそった支給がされているか

まず、前回解説した「手当」の考え方について簡単におさらいしておきましょう。賃金制度趣旨に沿って支払いがされていることが重要で、雇用形態(有期雇用であること)や就業形態(パートタイマーであること)だけを理由として、手当を一律ナシするのは、問題になるというものでした。

逆に、合理的な理由があれば問題にはなりません。指針の考え方の例について、図表をもう1度、みておきましょう。

こうした指針を踏まえ、裁判でも、手当の「名称」ではなく、手当の「趣旨」によって、不支給が問題かどうかの判断をしています。

たとえば、「住宅手当」について、前回も触れたハマキョウレックス事件※1では、「住宅に実際に要する費用の補助」との趣旨から、異動がない契約社員に支給しないのは合法(不合理でない)とされました。

一方で、「住宅の実際の負担に関わらず支給されており、福利厚生的な位置づけ」とされた案件(メトロコマース事件※2)では、契約社員に「住宅手当」を支給しないのは違法(不合理だ)とされています。

そのため、手当について、支給実態や位置づけがどうなっているか、企業は改めて見直す必要が出てきていると言えます。

※1:2018年6月1日・最高裁判決。有期雇用の契約社員(ドライバー)と正社員の給与格差について争われました。

※2:2019年2月20日・東京高裁判決。有期雇用の契約社員(販売員)と正社員の給与格差について争われました。

2019年2月に出た「アルバイト職員にも賞与」の判決

こうした考え方は、賞与でも同様です。業績貢献に応じて賞与を支給としている場合、パートタイマーへも貢献に応じた部分について同一の支給をしなければなりません。職務内容や貢献等にかかわらず正社員には全員賞与支給、パートタイマーへは全員不支給、などとしている場合は問題となります。

賞与に関しても、アルバイト職員(時給制の有期雇用労働者)にも支払うべきという判決(大阪医科大学事件)が今年2月に出て、注目を集めました。

このケースでは、賞与は「就労していることへ自体への対価」の性質であるとされ、就労していたことには正社員と変わりがないアルバイト職員にも相応の賞与が支給されるべき、とされたのです。

賞与は、労務の対価の後払い、功労褒賞、生活費の補助、労働者の意欲向上など様々な性質があることをふまえ、判決では、支給実態に照らし合わせた企業内の実質的な位置付けが重要視されています。

ですから、賞与についても、どのような「趣旨」で支払っているのかを企業において改めて定義しておく必要があります。

なおこの事件では、組織内の名称が「アルバイト職員」ですが、フルタイムで勤務していたということから、通常の短時間労働者(いわゆるパートやアルバイト)とは違うとは言えます。

それでも、「正社員=賞与あり、非正規社員=賞与なし」(で問題ない)という日本人がいままで当たり前と捉えてきた固定観念を覆した判決と言えるでしょう。

さまざまな要素で構成される基本給をどう考えるか

では基本給はどのように考えればいいのでしょうか。指針における基本給の原則の考え方は、正社員と同一の「職業経験・能力」や「成果」「職能」「勤続年数」に応じた部分に関しては同一の賃金を支払わなければならないというものです。

つまり、正社員に対して「職能給」「成果給」「勤続給」などを支給している場合、パートタイマーへも対応する「職能給」「成果給」「勤続給」を支払わなければならないということです。そのため、正社員には販売目標に達した分「成果給」を支払っているのに、パートタイマーには支払わない、というのは問題となります。

ただし、「職務内容、配置の変更範囲、その他の事情の客観的・具体的実態」などに応じて、金額の差を設けるのは構わないとなっています。そのため、たとえば、販売目標の達成責任がある正社員が、それがないパートタイマーよりも高額の基本給をもらうことは問題ない例として挙げられています。賞与と含めて、整理したのが次の図表です。

基本給は、様々な要素がからみあうため、賞与と手当以上に判断が難しいと言えるでしょう。そうしたなか、基本給の格差についても、不合理だと認める判例が出てきました。次回は、そうした判例も含めた、現状の正社員と非正規社員の待遇差をとりまく状況や考え方をまとめていきたいと思います。

10年前とは様変わりしたドラッグストアの勢力図

この10年間でドラッグストア(DgS)の勢力図はどのような変化を遂げたのでしょうか?10年前の売上ランキングと現在のランキングを比較してみます。

上位15社の売上合計は約5.6兆円に達した

上場DgS15社の決算発表が出そろったので、図表1にまとめてみました。売上高第1位がツルハHD、僅差の第2位がウエルシアHD。この2社は8,000億円弱の売上に達し、グループで1兆円突破も視野に入っています。

第3位がコスモス薬品です。前年4位でしたが、サンドラッグを抜いて単独3位に入りました。上位2社がM&Aによって規模を拡大しているのに対して、コスモス薬品は自社の出店だけで成長しており、何年間も純増店舗数100店規模の高速出店を継続しています。

バローグループの中部薬品を含むDgS15社の売上高合計は約5.6兆円です。DgSは上位寡占化が一気に進んでいます。

10年前は40社で3.5兆円の売上高

図表2は、10年前の月刊MD2008年10月号の『ドラッグストア白書』で掲載した売上高ランキングです。未上場の企業も含めた40社のランキングを掲載しました。この40社の売上高合計は約3.5兆円です。10年前と比較して、企業数が大幅に減少し、40社対15社の比較ですが、売上高合計が1.6倍に増えています。

ちなみに、昨年の月刊MD2018年10月号の『ドラッグストア白書』 では、集約化が進み、未上場企業も含めて正確な数値が取れる企業数が減ったために、30社ランキングを掲載しています。10年前は、DgS企業が群雄割拠していたが、それが、この10年間で淘汰と集中が進んだことがわかります。

売上高ランキングも10年間で大きく変化しました。10年前の売上高第1位はマツモトキヨシHD、第2位がスギHDでした。現在は同5位、6位に順位を下げています。ココカラファインHDとの経営統合計画を進めている両社ですが、M&Aによって起死回生を図ろうとしているようです。

現在のウエルシアHDは、10年前は「グローウェルHD」という名称でした。懐かしいですね。グループ企業は、ウエルシア関東、高田薬局、寺島薬局、イレブンの企業名が入っており、この当時から積極的なM&Aを仕掛けていたことがわかります。10年前のグローウェルHDの売上高は約1,930億円なので、10年間で4倍も売上を増やしており、この10年間で驚異的な成長を遂げたことがわかります。大手DgSの中ではナンバーワンの成長率です。

中堅企業の中で、この10年間でもっとも成長した企業は、クスリのアオキです。10年前約490億円だった売上高が、2018年度決算では約2,500億円と、5倍以上の売上高成長を達成しています。また、薬王堂も10年前約375億円の売上高が、2018年に約910億円と10年で3倍近くも売上高を増やしています。

中部薬品も10年前の売上高約460億円が、2018年に約1,270億円と、こちらも約3倍も売上高を増やしています。ゲンキー(現在はGenky Drug Stores)も10年前約370億円が、2018年は約1,030億円と10年間で大きく規模を拡大しました。

10年前の売上高ランキングを見ると、この10年の間に、M&Aなどで屋号がなくなった企業がたくさんあることがわかります。群雄割拠していた戦国時代は、個性的な経営者がたくさんいて面白かったなあ。寡占化の進行は、産業として成熟していく過程では不可欠なプロセスなのでしょうが、ちょっと寂しい気もします。

ミヨシ石鹸がSalesforce導入で目指す新しい営業像とは?

2019年5月16日、WeWorkなんばにて「WeWork×Salesforceで持たない経営を志向するミヨシ石鹸のリアルボイスと共に」と題したイベントが開催された。新しい時代のBtoB営業のありかたについて、セールスフォース・ドットコムの敏腕営業マンとミヨシ石鹸の営業部長が取組を発表。WeWorkの洗練されながらもアットホームな雰囲気のなかで語られた本イベントの概要をレポートする。

国内CRMツールのリーディングカンパニー、トップ営業の仕事術

本イベントでは、まず、株式会社セールスフォース・ドットコム 関西支社 第7営業部部長の西澤宗さんが「セールスフォース・ドットコム敏腕営業が語る、成果に結びつく営業のコツ」と題して、同社の営業手法について語った。

西澤さんは、2017年にセールスフォース・ドットコムへフィールドセールス(営業)として入社。最短・最年少で部長へ就任し、現在は関西支社においてフィールドセールスのマネージャとして多くのお客への提案活動に取り組んでいる。

Salesforceはクラウド上で提供されているCRM(カスタマーリレーションマネジメント、顧客関係管理)ツールだ。単なるCRMではなく、中心に顧客のデータベースを置きながら、営業支援、カスタマーサービス効率化、マーケティング効率化などさまざまなソリューションを提供しているというのが特徴だ。

多くの中小企業は、顧客管理、マーケティングのためのメール配信、顧客管理、ユーザーサポートなど、業務ごとに異なるシステムを使っているため、経営の見える化が進まず、生産性が下がっているという課題を抱えている。しかし、Salesforceを活用すれば、一元的に顧客情報を管理し、業務を効率化することができるのだという。

逆算思考で月何案件対応するかを設定する

そのセールスフォース・ドットコムでトップ営業マンとして活躍する西澤さんは営業の際に「プランニング」「マインド」を意識しているという。

まずプランニングでは、目標を掲げ、どうそれを達成するかの計画をたてることが重要です。中でも重要なのは『逆算思考』。目の前の案件をとにかくこなすのではなく、目標の数字から逆算して、どう達成するかを考えています」(西澤さん)

西澤さんの方法論はこうだ。営業案件は、「新規」と「既存」の2つに分かれるので、まず新規と既存の受注金額の目標を設定。さらに「新規」と「既存」の受注金額の平均から、では何件の商談をクローズ(=受注)すればよいのかを算出する。そしてその受注数を獲得するためは、どれだけの商談を行えばいいのかを確定する。この数字を月次でレビューし、年間計画を立てる。計画通りにいかないときには、プランを立て直し、その月に何件案件をつくるかを目標にすることで「確実に勝てる戦い」をする。

「既存と新規、受注金額の大小、どちらにも依存せず、確率論で勝てる戦い方をするべきです」(西澤さん)

次に、お客様と接するときにどう考えるか「マインド」についても西澤さんは言及。「勝てない商談」を見極め、リソースをかけるべきところに集中するのが重要であるという。

ではいったいリソースをかけるべきところとそうでないところをどう優先順位づけるべきなのか?西澤さんは「提案価値」と「推進力」で判断することを薦める。

自分の提案がお客にとって価値があるのかどうかを「提案価値」と呼ぶ。企業経営において重要なのは、いかにして継続的に利益を上げ続けるかだが、これは「売上を上げる」「コストを下げる」「原価を下げる」ことに因数分解することができる。たとえば日報をシステムに登録して営業活動を管理することをお客に提案したとき、それが最終的に「売上」「コスト」「原価」のどこにつながるのか。そこの部分まで提案するのだ。

そして担当者に推進力があるかどうかを見極めたうえで商談に臨む。BtoB営業は、推進力のあるキーマンに接触しなければ受注にはつながりにくい。ここが担保できない場合、商談としての優先順位を引き下げると西澤さんは言う。経営目線で我々の提案にどのようなインパクトがあるのかを訴求することで、最終的には担当者の株をあげるような提案を心がけているという。

このほか、西澤さんはセールスフォース・ドットコムにおける敏腕営業を生み出すための組織体制や仕組みなどについても紹介。いかにして「売れる営業」を組織的に作り上げるかについて紹介をした。

情報共有の推進は「データを持たせない」こと

次に登壇したのは、ミヨシ石鹸取締役営業本部長の中野浩之さん。同社のSalesforce活用について紹介した。

ミヨシ石鹸は2018年年末に大阪営業所をWeWorkなんば内に移転。そのタイミングで営業車も廃止し、「持たない経営」を志向している。

「訪問する営業から来訪していただける営業に変わるため、営業車を廃止して公共交通やカーシェアリングを使うことにしました。持たないということは、気軽に新しいことに取り組めるという意味でもあります」(中野さん)

ミヨシ石鹸は、それまで情報共有に関していくつかの課題を抱えていた。一つは、東京と大阪に営業所が分かれていることにも起因して、情報共有ができていないという点だ。さらにエクセルで情報管理をしていたこともあり、顧客管理や営業案件管理も十分にできていなかった。そして社内に散らばるさまざまなデータを統合して分析・活用することも課題だった。

そこで中野さんが考えたのが「個々人のコンピュータ上にデータを持たせない」ことだ。データの管理はSalesforceに一元化。売上の推移を日次で確認できるのはもちろんのこと、営業日報や、コールセンターに届くお客様の声もSalesforceにインプットすることで、ベストプラクティスや課題を全社で共有することができるようになったのである。

AI「Salesforce Einstein」で製造ラインの効率アップ目指す

「これまでは営業の状況は担当営業しか把握していませんでした。ですが、Salesforce使って情報共有をしたことで、誰がどんな商談をして何が決まったのかを関係者が知ることができるようになりました。営業自体のレベルも上がったと感じています」(中野さん)

カスタマイズも簡単で、項目ごとの集計もできる。ミヨシ石鹸では、営業の業務内容を「商談」「内勤」「打ち合わせ」「店頭フォロー」などいくつかの種類に分類。それぞれにどれだけ時間を割いているかを数値化し、会社全体でどのようにリソースを割いているのかなどを分析しようとしている。将来的にはダッシュボードに掲載して、利用者全員が見られるようにしたいと中野さんは語る。

現在ミヨシ石鹸は、株式会社コアコンセプト・テクノロジーと共同で営業の状況などから生産計画を自動で作成するシステムを開発中だ。商談レポート、在庫データ、配荷店舗数、前年実績、直近の出荷実績などをセールスフォース・ドットコムが提供する人工知能エンジンである「Salesforce Einstein」(アインシュタイン)に入力し、より効率のよい製造計画を策定しようとしているのだ。

中小のメーカーはほとんど人が情報を整理し予測を立て製造ラインを動かしているのが現状。それをAIを活用することで、きちんと根拠のある判断ができるようにしたい」(中野さん)

システム導入で肝心なのは「あきらめないこと」

パネルディスカッションでは、司会をつとめたセールスフォース・ドットコム スタートアップ戦略部 広域ビジネス戦略部の福本加央里さんが登壇者たちに質問を投げかけた。

まず、Salesforce導入時に難しいと感じた点については、中野さんが「とにかくはじめは言葉がわからなくて苦労しました。時間はかかりましたがやっていくうちに少しずつ理解できました。あきらめないことが大事」と回答。

「持たない経営」やそれにともなうSalesforce活用で不便を感じたことは無いかと?いう質問に対しては、ミヨシ石鹸の営業担当者が、「個人的にはそんなに不便とは感じていません。情報の入力に関しても、スタート時には入力が大変と感じたが、今はスマートフォンからの入力ができるようになるなど、現場の要望に応じて改善をしてくれているので楽になった」と答えた。

Salesforce活用の今後について聞かれると、最終的にはCRMを目指していると中野さん。

社内にある様々な情報を、まずはSalesforceで整理し、Salesforce Einsteinにインプットする事でどのような結果が得られるのかを試してみたい。その時に一番大切になるのは『目的変数』です。何を最大化すべきか、何を最小化すべきかという軸を私たち自身が持たないと、いくら優れたAIで分析をしても意味が無い結果になってしまいます。最終的にはCRMを実現していきたいです。」(中野さん)

懇親会では登壇者と参加者がビールを片手に意見を交換し、盛況のうちにイベントは幕を閉じた。