物流倉庫のイメージがひっくり返る!?
今日の案内役をつとめるのは本誌連載でもおなじみのPALTAC研究開発本部長の三木田雅和さん。前職では自動車メーカーでロボットエンジニアをしていたという異色の経歴の持ち主。






















入庫エリア:人にやさしい物流倉庫を目指して










パレット自動倉庫:どんな状況でも出荷体制を守り続ける






AIケースピッキングロボ:目と脳を持つロボに「柔軟性」を感じる













後編に続く
小売業やメーカーがどんな業務なのかを理解しやすいのに対して、その間を結ぶ卸売業の役割は多くの人にとって謎に包まれています。そこで今回、MD NEXTでは1周年を記念して、タレント/エンジニアの池澤あやか(@ikeay)さんに、日用品卸大手のPALTACが2018年夏にオープンした大型物流倉庫「RDC新潟」のレポートを依頼。ロボットやAIについての知識も豊富な池澤さんに、卸売業がどんな役割を担っているのかを現地取材してもらいました。(構成・文/MD NEXT鹿野恵子、写真/千葉太一)
今日の案内役をつとめるのは本誌連載でもおなじみのPALTAC研究開発本部長の三木田雅和さん。前職では自動車メーカーでロボットエンジニアをしていたという異色の経歴の持ち主。



















































後編に続く
お客が、スマホのアプリで買物商品を注文すると、店舗のスタッフが売場を回って商品をピックアップ(買物代行)し、駐車場の専用場所で買物商品を受け取れる「カーブサイド・ピックアップ」が、アメリカで急速に普及しています。「買物時間」を短縮できる新しい「買物体験」が、アメリカの消費者に支持されているようです。
ダラス郊外のシャーマン地区にあるウォルマートスーパーセンターでは、店舗の側面のカーブサイド・ピックアップで、オンラインで注文した商品を無人で受け取ることができるサービスを開始した。
テキサス州のダラス郊外のシャーマン地区にあるウォルマートスーパーセンターでは、カーブサイド・ピックアップをオートメーション化(無人化)する実験を行っています。「ウォルマート・グローサリー」という名称で、オンラインで注文された生鮮食品を含むすべての商品を、自動販売機のような仕組みで無人で受け取ることのできるサービスです。
上記の写真のように、店の左側面が一面ピックアップのスペースになっています。「オートメイテッド(自動)・ピックアップ」のスペースは、横幅が約40m、5つの専用窓口でピックアップできます。消費者は、スマホのアプリを使ってオンラインで商品を注文し、指定した時間に車でピックアップスペースに取りに行けば、店内に入らないで買物を完結することができます。


消費者は、ピックアップスペースに車を駐車し、上記写真の窓口(端末)に、スマホに届いたコードをかざすと、1~2分後に扉が左右に開きます。3つの青い箱(オリコンのような箱)に置かれた買物袋(注文商品)を取り出すことができます。注文商品が多い場合は、「2グループのうち1つを用意できました。バッグをお取りください」と表示されて、次のグループの商品が再度運ばれてきます。買物袋に入った注文商品をすべて取り出すと、扉が自動的に閉まってピックアップが終了です。スタッフから手渡しされる従来のピックアップ・サービスよりも、無人のオートメイテッド・ピックアップの方が手軽なので、利用者が増えているそうです。
一方、テキサス州とメキシコに約400店を展開するリージョナルスーパーマーケットの「HEB」は3年前から、カーブサイド・ピックアップの実験を開始し、現在では100店以上の店舗に導入しています。カーブサイド・ピックアップの1日の注文件数が50件以上、平均の客単価が120ドルの店もあり、リアル店舗での買物プラスアルファの売上増に貢献していることがわかります。ネットスーパーを別にやるよりも、店内商品をヒックアップした方が在庫や廃棄のロスが少なくて、効率的だと思います。
カーブサイド・ピックアップに取り組む「ウォルマート」と「HEB」には、オンラインで注文した商品を店内でピックアップ(買物代行)する専門スタッフがいます。ウォルマートは、専用のショッピングカートで商品をピックアップしていました。一方、「HEB」は大量の注文を処理できるような専用のカートでピックアップしていました(下の写真)。
ネットで何でも買える時代において、リアル店舗の価値づくりこそが、もっとも重要な経営戦略です。「リアル店舗で買える」「オンラインで注文して配達してくれる」「オンラインで注文して店で受け取ることもできる」といった買物の「選択肢」を増やし、リアル店舗の買物をもっと便利にすることが、リアル店舗がネット販売に対抗するための回答のひとつだと思います。


職務内容や転勤範囲などが違うパートタイマー(短時間労働者のこと、以下同様)の待遇について、いわゆる正社員(通常の労働者のこと、以下同様)とのバランスをどう考えるべきなのでしょうか。今回は2018年の働き方改革法成立に伴い定められた「指針」をもとに、その考え方について解説してきたいと思います。
前回は、職務内容や転勤範囲などが同じパートタイマーの待遇は正社員と原則、同一でなければいけない(差別的な取り扱いをしてはならない)ということや、職務内容が違うパートタイマーへも食堂・休憩室・更衣室が正社員と同じように利用できるよう配慮すべきということを説明しました。

このような「同じ」待遇のことを「均等待遇」と言います。これに対し職務内容や配置の変更の範囲、その他の事情を考慮して求められる「バランスの取れた」待遇のことを「均衡待遇」と言います。
法律※1では、正社員とパートタイマーや有期雇用労働者との待遇差が、職務内容や配置の変更の範囲、その他の事情を考慮して「不合理であってはならない」ことが定められています。
給与(賃金)も、待遇差が「不合理ではあってはならない」ことが求められるものの1つです。2018年の働き方改革法成立によって、条文上で「待遇」とされていた部分が「基本給、賞与その他の待遇」と変更されることが決まり、そのことがより明確にされました※2。
そして注意が必要なのは、「不合理であってはならない」待遇に給与を含めることが、この変更によって「新たに決められた」わけではない点です。
現在も、給与に関する均等・均衡待遇への配慮は必要であり、後述するように、非正規労働者と正社員との給与差に関して「不合理」を認める判決が最近、次々と出されているからです。
※1 この内容は、パートタイマーに関しては、現行の通称パートタイム労働法8条に、有期雇用労働者に関しては労働契約法20条に定められています。
※2 通称パートタイム労働法の対象が、有期雇用労働者にまで広げられ、通称「パートタイム・有期雇用労働法」となります。施行は2020年4月で、中小企業への適用は2021年4月からです。
さて、待遇差が「不合理であってはならない」と言っても、どこまでが不合理で、どこまでがそうではないのか、その判断は難しいところでしょう。

この点、2018年の働き方改革法成立に伴って出された「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(以下、「指針」)が参考になります。
これは、2016年に策定された「同一労働・同一賃金ガイドライン案」をベースに、その内容が補強され、正式に指針化されたものです※3。
基本的な考え方を大まかに捉えると、待遇差の理由が、雇用形態(有期雇用か無期雇用か)や就業形態(パートタイムかフルタイムか)で、それ以外の明確な理由がない場合や、各企業で決めた賃金制度趣旨にあった支給がされていない場合などが「問題になる」というものです。
つまり、賃金制度趣旨からすれば当然支払われるべきものが、有期雇用だから、パートタイムだからという理由だけで支払われていなければ問題となるということです。逆に、雇用形態や就業形態以外の明確な理由がある場合や、賃金制度趣旨に沿っていることがきちんと説明ができるのであれば問題になりません。
なお、ここでいう「問題になる」とは、法律で定められた「不合理であるもの」と認められる可能性がある場合を指し、「不法行為(法律違反)」として訴えられたら、相応の支払い(損害賠償)が発生する可能性もあるということです。
※3 正式な適用は、改正法の適用時期と同じ(中小企業を除き2020年4月~)です。
では、具体的にはどのように考えればいいのでしょうか。まず、支給される目的やその性質が比較的わかりやすい「手当」から見ていきましょう。
たとえば、「役職手当」は、「店長」といった役職の内容に対して支払う性質のものですので、パートタイマーだからナシというケースは問題になります。ただし、所定労働時間に比例した分を支払うことは、問題にならない例として挙げられています。たとえば、所定労働時間が正社員の半分のパートタイマーの手当が通常の半分といったことです。
同様に、通勤手当や出張手当は、「通勤していること」「出張したこと」に対して、手当を支払うものです。ですから、これもパートタイマーだからナシ、というのは問題になります。ただし、フルタイム(週5日)の場合は定期券相当額を支給、週3日以下の従業員には、日額の交通費を支給といった差を設けるのは、問題ないとされています。
つまり、正社員ではないから、手当が一律ナシは問題だけども、その有無や金額に合理的な説明があれば(「不合理ではない」といえるため)OKということです。これらを含めその他、指針の手当の例をいくつか表にまとめました。

特に注意すべきは、前述したように、この「指針(旧・同一労働同一賃金ガイドライン案)」に沿ったと思われるような、給与面の待遇差を「不合理」とする判決が最近、次々と出ていることです。
たとえば、有期雇用の従業員へも「作業手当」「給食手当」「通勤手当」「皆勤手当」などを支払うべきという判決(2018年6月1日/12月21日・ハマキョウレックス事件)や、同じく有期雇用の従業員へも「住宅手当」などを支払うべきという判決(2019年2月20日・メトロコマース事件)です。
いずれも、手当の趣旨からすれば、有期雇用だから支払わないというのは不合理だ、と判断されたわけです。
こうした動きをふまえ、次回は賞与や基本給についても、解説したいと思います。
WEBメディア「MD NEXT」はこの6月でリリース1周年を迎えることができました!これもひとえに皆様のおかげです。そこで今回は1周年を振り返り、この1年でどの記事が読まれたのかをご紹介します。(MD NEXT編集長 鹿野恵子)
この6月に1周年を迎えることができたMD NEXT。手探りで立ち上げたWEBメディアではありますが、おかげ様でアクセスも徐々に増えており、しっかりと読者の方に読んでいただいている手ごたえを感じています。
MD NEXT読者の皆さんはどんなことに興味を持っているのでしょうか…?この1年でどのような記事が読まれたのか、上位10記事をカウントダウン形式でご紹介します。
第10位は2019年の新年第一弾の「今週の視点」の記事。①リアル店舗の価値づくり、②ブランディング・商品開発、③ESとCSの向上、④行動改革と、強い企業文化づくり、⑤生産性革命(省人化・無人化)、⑥スマートストア化、⑦個別化(パーソナライゼーション)、7つのリアル店舗の重点課題を解説しています。
2019年がスタートして半年たった今、振り返りの意味でもぜひお読みいただい記事です。
小売業に薬剤師(マネージャ)として勤務しながら、自身のブログでOTC医薬品の情報を発信している薬剤師ブロガーのkuriさんに、Twitter上で実施した授乳中のOTC服用に関するアンケート調査の結果から得られた所感を寄稿していただきました。OTC医薬品はまだまだ掘り起こせる分野ですので、いろいろな記事を今後も掲載していきたいと思っています。
九州から中国、関西、中部…と北に店舗網を拡大してきたコスモス薬品が、ついに関東にも進出をスタートするというニュースの解説記事です。圧倒的な安さと顧客満足度、従業員満足度の高さで評判の同社。その動向は、どの地方のどの小売業にとっても気になるところなのでしょう。
ちなみに月刊マーチャンダイジング誌主幹の日野眞克による連載「今週の視点」は毎週1回の連載で、2019年6月17日時点で52回まで書き進めることができました。DgSやメーカー、卸売業の経営者の方にも愛読者が多いコーナーなんです。
新しい売り方を紹介するというコンセプトでスタートしたMD NEXTでは、リテールテクノロジーに関する記事が非常によく読まれています。トライアルさんは積極的にスマートストア化の実験を行っていて、MD NEXTでは定点観測をさせていただいている企業の一つ。近日中に「トライアルクイック大野城店」の記事も公開予定ですのでお楽しみに!
100円ショップ大手のダイソーさんの情報システムに関するを記事化しました。AWSを活用し、5,300店舗、7万アイテムをオペレーションする同社のシステムの規模ににSNS上からも感嘆の声が聞こえました。
TBSラジオの平日昼の人気番組「ジェーン・スー 生活は踊る」ではリスナーの投票による「スーパー総選挙」や「ドラッグストア総選挙」を実施しています。そこで当媒体ではパーソナリティのジェーン・スーさんに2019年3月に行われたドラッグストア総選挙の企画意図や、DgSに対する所感などを伺いました。ラジオのリスナーの方にもたくさん読んでいただき、上位にランクイン。
この取材がきっかけで、MD NEXTに「【マンガ】ストアソング研究」を連載している月刊マーチャンダイジング編集部の店橋が、先日「ストソン探偵」としてTBSラジオ「アフター6ジャンクション」に出演。ストアソングの面白さを世に伝えるよいチャンスにつながった記事でもあります。
この1年間はさまざまな決済方法の登場に現場が振り回された1年でもありました。そんな状況を反映してか、よく読まれた記事でした。去年秋の記事にもかかわらず、すでにかなり古い情報になってしまっているという点には、決済周りの変化のスピードを感じずにいられません。
日用品卸売大手のPALTACさんの記事も複数回掲載させていただきました。特にその中でも読まれているのがこちらの記事。AIとロボティクスを活用し、大幅に生産性を向上させている同社の取り組みに多くの読者が注目しています。
MD NEXTではリリース1周年を記念し、さらにこのRDC新潟に深く食い込む取材を敢行。近々皆さんにご覧いただけると思います。こうご期待!
ドラッグストア上場14社の売上総利益率と販管費率を比較した記事。同じ営業利益率でもそれを稼ぎ出す方法は企業によって全く違うということを示しました。営業利益率と販管費率の関係についても言及し、経営数値について苦手な方でもわかりやすい内容に仕立てています。
この1年で最も読まれたのが、DgS業界の全体像を俯瞰するのに便利な、各社の業績に言及したこちらの記事でした。この1年だけでも大きな経営統合の話題などが複数ありましたが、どのDgSが生き残り、どのDgSが姿を消すのか、リサーチに余念がない業界関係者の姿が感じられる結果となりました。
以上、MD NEXT、この1年のアクセスランキングでした。
今後も小売業で働く方にとって、そしてメーカーや中間流通業で働く方にとっても読みごたえがある記事を引き続き提供してまいります。そしてこの1年支えてくださった読者のみなさま、スポンサーのみなさま、執筆者のみなさま、取材に応対していただいた企業のみなさま、そして業務をサポートしてくださっているみなさまにお礼を申し上げます。これからもMD NEXTを応援よろしくお願いします!
資生堂が世界最大のドラッグストア(DgS)チェーン「ワトソンズ」と業務提携し、アジア圏での市場拡大を目指すそうです。プレスリリースによると、「資生堂の研究開発力およびブランド力と、ワトソンズの保有する小売ネットワークと消費者インサイトデータを融合させることにより、日本への興味や関心をさらに喚起させ、アジアを中心とするお客さまに適した商品とサービスを提供していきます」とあります。この背景にある時代の動きを解説します。
従来のメーカーと小売業の関係は、これまでリベートや価格などの「条件交渉」に終始していました。しかし、今回の資生堂の決断は、これからのメーカーは小売業と戦略的に提携し、消費者の購買データなどを分析し、店頭起点でブランドを育成することが重要になっていることを示唆しています。
ワトソンズは、1841年に香港で設立されたDgSです。現在、25か国で約1万5,000店をチェーン展開しています。店舗とECサイトを合わせた年間の総客数は52億人にものぼるそうです。
現在、資生堂は10ブランドを超える商品をワトソンズで販売しています。今回の提携によって資生堂は、ワトソンズの顧客データ、購買データなどのメーカーでは入手できない「顧客接点」のデータを分析し、メーカーとしてのマーケティング、ブランド育成、新たな商品開発につなげる計画です。
現在、メーカーの「マーケティング費用」の大半は「マス広告」に使われています。しかし、マス広告の効果が低下していく時代において、ワトソンズのような大規模チェーンストアと戦略的に提携することで、店頭起点にブランドを育成することは、これからのメーカーにとって重要なマーケティング戦略の転換です。
また、マーケティングの最大の目的が、「消費者のことを理解すること」であれば、ワトソンズの1万5,000店の店舗網、ECサイトも含めると年間52億人にものぼる顧客の購買データは、消費者理解のための情報の宝庫です。こうしたデータを分析することで、新たな新商品の開発につなげることができれば、メーカーのマーケティングのやり方が変わっていく可能性があります。
小売業側も、「POSデータを販売して儲ける」という旧来の発想から脱却し、顧客接点のデータをメーカーに積極的に開示し、メーカーのマーケティングの高度化に活用してもらった方が、長期的には小売業側にもメリットがあると思います。
しかも、新商品が100%ワトソンズの店頭に陳列されることも、小売チェーンと提携するメーカー側のメリットです。
ワトソンズ(小売業側)の最大のメリットは、資生堂との共同開発商品(専売品)を販売できることです。ワトソンズと資生堂は、敏感肌向けのスキンケアブランド「dプログラム」の「アーバンダメージケア」を共同開発し、2018年10月からタイと台湾で販売し、今年7月からは中国全土で販売する予定となっています。
現在、リアル小売業の最大の経営課題は、「アマゾンと差別化すること」です。その対策のひとつが、「アマゾンで販売していないオリジナル商品」を増やすことです。オリジナル商品は、(1)PB(プライベートブランド)、(2)ストアブランド(SB)、(3)専売品の3種類に分けることができます。
PBは、小売業が仕様書まで書いて自主開発する商品です。SBは、メーカーが小売業のブランド名の商品をOEMで供給するものです。「ダブルチョップ」と呼ばれることもあります。
そして、資生堂のような大手メーカーと小売業が戦略的に提携する場合には、その小売業だけで販売する「専売品」を共同開発することが、小売業の最大のメリットです。「専売品」を販売することで、競合他社やアマゾンとも差別化できます。
小売業が「専売品」を共同開発する場合に重要なことは、「店頭実現力」と「売り切る力」を高めることです。店頭で売場づくりを100%実行し、そして、その状態を維持することも、専売品の育成には不可欠です。また、ID-POSデータや、来店客の購買行動データなどを共同で分析し、「売り方」を開発し、店頭起点でブランドを育成し、売り切る力をもつことも重要です。
しかし、もっとも重要なことは、小売業とメーカーの「信頼関係」です。売れなかったら専売品も返品するような小売業とは、メーカーも組みたがらないでしょうね。
PALTACの物流技術を担う三木田雅和氏が新しい中間流通業のあり方を提言する連載。第2回目は卸売業の技術の肝となる「需要予測」についてその必要性と目指すところを語ります。
需要予測は卸売業の肝となる技術であり、今後ますます磨いていくべき部分です。弊社では、小売業さんと商品情報を共有化し、当社独自のシステムで販売傾向、需要予測に基づく適正在庫および発注サイクルの最適化を行っています。
需要予測の精度を高めることにはさまざまな効果がありますが、「在庫の削減」と「返品の削減」は中でも重要な課題です。
まず在庫の削減です。我々卸売業は、在庫が多ければ多いほど、大きな物流センターが必要になり、効率も落ちます。「在庫ゼロ」が究極の理想形ではありますが、さすがにそれは不可能です。ですから在庫は少なければ少ないほどいいと考えています。しかし、いつどんな発注が来るのか予測できないと、在庫を多く持たざるを得ません。正確な需要予測を行うことができるようになれば、在庫数をぐっと減らすことができるでしょう。資金繰りも楽になります。
在庫削減によるメリットは、卸売業だけが享受するものではありません。
小売業さんは、欠品による機会損失を無くしたいと、なるべく多めに在庫を持とうとします。メーカーさんはメーカーさんで、卸からいつ発注が来るかわかりませんから、こちらも在庫を持とうとします。つまり、卸、小売、メーカー、それぞれが在庫を持っていることでサプライチェーン全体で非常に大きな無駄が発生しているのです。ですから、それぞれの在庫を減らすことができれば、高効率な経営ができるはずです。
また、小売業さんは、なるべくバックヤードの面積を減らして売場面積を増やしたいとお考えです。しかし在庫をたくさん持とうとすると、どうしてもバックヤードの面積を広くとる必要が出てきます。店舗が持つべき在庫を減らすことができれば、バックヤードに割く面積もぐっと減らし、その分売場面積にあてることができます。
このように、在庫の削減は、小売業さん、メーカーさん、卸の三者にとって非常にメリットが大きいのです。
もう一つ需要予測を突き詰めることで得られる大きなメリットが、返品の削減です。
小売業さんは、欠品による機会損失をなくすために、在庫を多く持たざるを得ず、結果、返品が多くなってしまいます。小売業さんからの返品は、われわれ卸売業を通過してメーカーに戻ります。この返品の量は驚くほど膨大です。
返品を減らすことができれば、製配販すべてにおいて余分なコストをおさえられ、消費者の方もより安く、より良い品を購入できるようになるでしょう。
ですから私たちは適切な需要予測をすることで、返品を減らすことに挑戦していきたいと考えています。
これまで弊社では「移動平均モデル」という世間一般で広く使われている方法をさらに弊社向けにチューニングした需要予測モデルを採用していました。しかし、人間が調整を行なっているのでどうしても限界があります。そこで全く違うモデルを採用して需要予測の自動化を行うことができないか研究をしています。
今私たちが研究しているのが、「自己回帰モデル」です。
「移動平均モデル」は簡単に言うと、過去の売上の推移の平均を算出して将来を予測する手法です。
一方「自己回帰モデル」は、説明が難しいのですが、現在の状態と未来の状態との間に、何かしらの関係性があると考えて、その関係性の過程を、過去の状態にさかのぼって(これを「回帰する」と言います)、過去・現在・未来の相関関係を数式で表しましょうというものです。
別の言い方をすると、移動平均モデルは、単純にデータをざっくりとした直線に落とし込んで、未来は過去から現在までに引いた直線の延長線上になると考えます。一方の自己回帰モデルは点と点の相関関係を数式で表します。
移動平均モデルだけですと、たとえば過去6週間のデータについて適用すると、普段は適切に予測できるのですが、突発的に起こった事象に対して適切な対応をすることが難しいという課題がありました。一方の自己回帰モデルは、過去のデータそのものを使うわけではないので、突発的な事象にも対応できるという利点があります。
ですが、過去のデータをつかわない自己回帰モデルだけではなかなか予測が難しいので、両者のおいしいところを組み合わせて、需要予測を行おうと考えています。(ちなみにこれを、自己回帰移動平均モデルといいます)
今までの移動平均モデルでは、カテゴリーによって精度が異なってきてしまうため、人間が手作業でパラメーターの調整を行ってきました。これを人間の手を介さず、チューニング無しで運用するために、コンピュータが自動的に予測をするモデルを作っていきたいと考えています。
もともと私は自動車メーカーでロボット開発のエンジニアをしていました。そこで人との混在環境でロボットを歩行させる研究の中で、人の動きを予測するため自己回帰移動平均モデルを活用していたのです。PALTACに転職したときに、需要予測に移動平均モデルを使っていると聞き、ならば自己回帰モデルを加えたほうがより精度が高くなるのではと考え、自己回帰移動平均モデルの研究をスタートさせました。
研究して日が浅いのですが、現時点で従来モデルと遜色ない精度を実現しています。今後数年かけてより精度を高くし、小売店さんにご提供することで、サプライチェーン全体に価値を提供していきたいと思っています。
(談・文責/編集部)
ニュー・フォーマット研究所では、この度デジタルシフトを実現したいと考えながらも、どこから手をつければいいのか悩んでいる小売業の経営幹部の方に向け、企業のIT化の最前線で活躍する実務家・コンサルタントの方によるワークショップを開催することといたしました。最新情報にキャッチアップし、自社の立ち位置を俯瞰して確認する機会を提供するとともに、参加者による相互サポートを実現していきます。
・デジタルシフトを担うIT人材を育成したいと考える小売業様
・小売業のデジタル化の最新動向について関心がある卸売業様、メーカー様
※業務部門の方と情報システム部門の方、ペアでのご参加をおすすめしています。
・日程:2019年7月11日(木)
8月22日(木)
9月12日(木)
10月10日(木)
・時間:開場 13時30分/セミナー14時~17時30分/懇親会18時~20時(参加は任意)
・会場:Showcase gig会議室(青山一丁目駅直結)
東京都港区北青山1-2-3 青山ビル7階
※参加人数により会場は変更になる場合がございます
※懇親会会場は参加者に別途お伝えいたします
・募集定員:20名(最少催行人数 10名)
・参加費:20万円/1名(全4回)
※テーマは変更になる可能性があります。
「デジタルシフトと小売業における全体最適」
オムニチャネルコンサルタント 逸見光次郎
1994年三省堂書店入社。以後、ソフトバンク、イー・ショッピング・ブックス社(現 セブンネットショッピング社)、アマゾンジャパン、イオンを経て、2011年キタムラに入社。執行役員 EC事業部長としてオムニチャネル化に尽力。その後オムニチャネルコンサルタントとして独立。
「パルコのデジタルシフトをどのように実現してきたのか?」
パルコ 執行役 グループデジタル推進室担当 林直孝
パルコ入社後、全国の店舗、本部及びWeb事業を行う関連会社 株式会社パルコ・シティ(現 株式会社パルコデジタルマーケティング)を歴任。 店舗のICT活用やハウスカードとスマホアプリを連携した個客マーケティングを推進する「WEB/マーケティング部」等を担当。 2017年より、新設された「グループICT戦略室」でパルコグループ各事業のオムニチャル化、ICTを活用したビジネスマネジメント改革を推進。(2019年にグループデジタル推進室に組織名称変更)
「小売業におけるデータ分析の実践」
統計家/データビークル 西内啓
東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野助教、大学病院医療情報ネットワーク研究センター副センター長、ダナファーバー/ハーバードがん研究センター客員研究員を経て、2014年株式会社データビークルを創業。著書に『統計学が最強の学問である』、『統計学が日本を救う』(中央公論新社)などがある。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)アドバイザー。
「世界のリテールITの現状と国内モバイルオーダーの未来」
Showcase Gig新田剛史
上智大学卒業後、東京ガールズコレクション・プロデューサーとして数々のプロジェクトを手掛ける。2009年、株式会社ミクシィ入社。SNSを活用した新たなマーケティングの企画を実施。コンビニエンスストアと連携した数々のO2Oキャンペーンにおいて、オンラインから店頭への集客を成功させた。2012年、企業のオムニチャネル化を支援する株式会社Showcase Gig設立。
「デジタルシフトのための組織作り」
デジタルシフトウェーブ 鈴木康弘
1987年富士通入社。その後、ソフトバンクを経て、ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立。2006年同社がセブン&アイHLDGS.グループ参加に入り、2014年同社執行役員CIOに就任。グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。デジタルシフトを目指す企業の支援を実施。著書に「アマゾンエフェクト!」(プレジデント社)がある。
(1枠調整中)
「ヘルス&ビューティー業態のデジタルシフトの実態」
店舗のICT活用研究所 郡司昇
店舗のICT活用研究所代表。薬剤師。前職ココカラファインにおいてM&Aに伴う各種プロジェクトに関与した後、マーケティングとEC事業の責任者としてグループ統合マーケティング戦略を立案・実行。現在は主に(1)IT企業のCRM、位置情報、画像AI解析などの小売業活用(2)事業会社のEC・オムニチャネル改善についてコンサルティング活動中。
(1枠調整中)
・お申込みは以下のお申込書にご記入の上、申込みメールアドレスまでメールにて送付ください。
・お申込み締め切り:2019年7月1日(月)
※申込書到着後、請求書を発送させていただきます。
※ご入金後、理由の如何に関わらず、返金は致しません。あらかじめご了承ください。
※恐れ入りますが、定員を越えた場合は締め切らせていただきます。お早めにお申し込みください。
・全4回すべて同じ方に受講いただきます。
・演習を予定していますのでwifiに接続できるノートPCをご持参ください。
・双方向型のワークショップを目指しております。参加者の方には、積極的な発言、発表をお願いいたします。
・事前にレポートをご提出いただきます。また事後にレポートを提出いただくこともございます。
住友商事株式会社は、2019年2月から調剤併設ドラッグストア「トモズ」の松戸新田店にて、調剤業務の効率化に向けた調剤オペレーション自動化の実証実験を開始した。シロップ・粉薬・軟膏など薬の形状に合わせた調剤機器のほか、複数の薬剤を一包ずつパックする「一包化」を行う機器を導入する。これらによって薬剤の調製・収集業務のうち9割を自動化・半自動化する。特定の薬に対応した機器を導入するだけではなく、大規模な自動化を図るのは国内初の試みだという。(ライター:森山和道)
トモズは住友商事の事業会社で、首都圏を中心に174店舗(2019年3月末時点)を展開しているドラッグストアチェーンだ。
高齢化によって増大傾向にある社会保障費用の抑制と、生産年齢人口の減少による人手不足解消や後継者問題が社会課題となっている。人手不足問題は薬剤師を含む医療従事者や個人薬局も例外ではない。国民医療費は、2017年度の42.2兆円から2025年度には61兆円にまで拡大すると考えられており、調剤医療費も2017年度の7.7兆円から2025年度にかけて増大すると予想されている。
いっぽう政府は、持続可能な社会保障制度を確立するために「地域包括ケアシステム」を推進している。薬剤師に対しては、在宅医療の一端を担う存在として、患者への対面業務(服薬指導等)に従事することが期待されている。
これらの社会背景のもと、薬局においては、調剤業務の効率化が調剤サービスを維持・発展させていく上で必要不可欠なものとされているという。調製・収集業務の自動化によってバックヤードでの業務が効率化できれば、薬剤師は、より付加価値の高い、患者との対面業務に注力できるようになる。
今回実証実験の場所となったトモズ松戸新田店は、新京成線の松戸新田駅から徒歩およそ5分程度の商業施設「グリーンマークシティ松戸新田」の中にある。売場面積は約200坪、医薬品や化粧品のほか、日用雑貨、食品などを扱っている。

扱っている処方箋枚数は月間 5,500枚。1日平均だと200枚弱。トモズの入っている建物の2Fには総合クリニックがあり、処方箋の8割はここから来る。残り2割は周辺地域からで、およそ240医療機関からの処方箋を受け付けている。薬剤師の人数は10名。臨時を入れると11-12名。

処方箋に基づいて医薬品の秤量、混合、分割等を行う作業を「調製」という。そして薬局での調剤業務は基本的に以下の手順で行われる。
1.患者から受付した処方箋を調剤事務がレセコン(レセプト・コンピューター。診療報酬明細書を作成するシステム)に入力する
2.レセコンから出力されたデータを薬剤師が確認しながら薬剤を実際に調製・収集する
3.薬剤師が鑑査(処方内容の確認と正しい薬が揃っているかどうかの最終確認)を行う
4.投薬カウンターで患者に薬剤を渡し、薬の説明や用法の確認等を行う
トモズにはもともとトーショーの調剤監査システムが導入されている。薬剤を調製・収集するときにはハンディ端末を用いて、患者一人ずつに必要な薬剤のバーコードをスキャンして確認し、整合性をとりながら調剤している。レセコンに入力されたデータは、各自動機にも飛んでいる。
今回の実証実験での自動化の対象は上記4手順のうち2の工程で、人が手で薬剤をピックアップしていた作業を自動化した。軟膏や貼り薬を除く、およそ9割の薬が機械からでてくるようになったという。なお一部の自動払出機の作業はレセコンに入れられた瞬間から自動で進められるが、最終鑑査は人間が行なっている。


では、実際に導入された機材を見ていこう。「トモズ」松戸新田店では、今回の自動化機器導入のため薬局待合スペースの一部を潰して調剤室のスペースを広げた。そして改装前から導入済だった薬剤払出支棚など3種類の機器に加え、今回新たに4種類の機器を追加し、合計7種類の機器を導入して、調製・収集の9割を自動化した。
薬剤には、粉薬や軟膏、シロップなどの種類があり、それぞれの形態に応じた自動化機械がある。
まずは散薬(粉薬)の調剤自動化からだ。散薬調剤ロボット「DimeRoⅡ」(株式会社湯山製作所)は、処方データを流すだけで薬品の選択、秤量、配分、分割、分包といった散薬秤量調剤を行うロボットシステムだ。複数の粉薬を処方に応じて混ぜて分包する機械である。

従来の散薬分包機は分包しか行えず、薬品の選択はもちろん、秤量も人が秤量皿を用いて計量し、混ぜていた。「DimeRoⅡ」の内部には粉薬を入れた散薬カセット(500cc)が30個内蔵されている。カセットにはRFIDが埋め込まれており、薬品認識に用いられている。カセット内部には常温で保存ができ、よく出る薬剤がセットされている。
処方データが「DimeRoⅡ」に流れて来ると、その指示に従って内蔵された水平多関節ロボットアームが動き出して散薬カセットを取り出し、装置下方にある円盤部分に横向きにセットする。そして振動を使って散薬を少しずつ「R円盤」に出していく。「R円盤」とは、もともと湯山製作所が開発した振動回転機構で、散薬を混ぜる自動分包機ではデファクトスタンダードになっている機材だ。一言で散薬といっても、パウダー状や細粒など様々な状態のものがあるが、いずれも問題なく撒けるようになっているという。
設置部分は天秤となっており、秤量しながら出せるようになっている。なおカセット保管部分も天秤になっていて、そこで再計量を行うことで秤量誤差をダブルチェックする仕組みだ。指定された散薬を全部出したら前述の「R円盤」を使って均等に薬剤を広げ、混ぜていく。カセット設置部は3つあり、一度に3薬品を円盤に撒ける。1処方では最大12種の薬品を混合分包することができるという。
こうして混ぜた薬を一回あたりの分量に合わせて自動分包する。朝昼晩に用量が異なるような複雑な分包にも対応している。
分包後には自動清掃することでコンタミネーションを防ぐ。一度に186包の大量分包が可能である一方で、1薬品あたり総量0.5gから払い出しできるため、子供向けの少量分包にも対応している。分包速度は50、45、40、35、23包/分の5段階から選択できる。
作業時間自体はベテランの薬剤師とあまり変わらないが、機械を使うと薬剤師の手が空く。そのぶん他の仕事ができる。
小児科用として用いられることが多い液体の薬(水剤)については、水剤定量分注機「LiQ」(株式会社タカゾノ)を用いている。人手で行う場合は、2、3種類の薬品から薬剤師が測りとって瓶に入れていく。「LiQ」は投薬ボトルをセットし、スタートボタンを押すだけで、注出が完了する。水剤瓶は最大10本まで搭載できる。これも粉薬の自動機と同じで、複数の薬剤瓶から重量センサーで計測しながら正確な分注を行って注出を行う。

医師は体重で用量を決めるので、必ずしも混ぜたときに入れる量が、ちょうどいい量になるとは限らない。その場合は精製水やシロップなどを入れて一回あたりを飲みやすいように調整する。それもワンボタンでやってくれる。また、薬剤のなかには事前に良く振って混ぜる必要があるものもあるが、その作業ももちろん行ってくれる。最後にプリントアウトされたシールをボトルに貼る。
全自動錠剤分包機「Xana-1360EU」(株式会社トーショー)は、スライドキャビネットのなかに最大136種類の錠剤カセットを収納できる機械だ。なかには錠剤投入ホッパーと包装機も内蔵されており、レセコンからの指示に従って、患者ごとに異なる多剤一包化ができる。「一包化」とは、患者の服薬漏れを防ぐため、朝・昼・晩など服薬のタイミング毎に服用する複数の薬剤を一包ずつパックする作業である。特に薬の種類が多い高齢者向けには必須の機能だ。分包速度は最大で54包/分。カセットの誤挿入防止機構のほか、分包紙も容易に交換できるようになっているという。


取材で見せてもらったケースでは、1包みあたり9種類の薬剤が入っていた。これがちゃんと全部入っているのか、それを鑑査するための機械もある。オランダ製の錠剤一包化鑑査装置「MDM」(販売代理店:トーショー)は、薬の束を入れると一包みずつ撮影し、錠剤の粒と形状から正しい薬が入っているかどうかをPC画面上でチェックできる機械だ。問題なければ緑色、錠剤が重なっていたり、立ってしまったりして判別が難しい場合は赤のチェックマークがつく。


エラーが出たものについてはクリックすると拡大表示され、同時にたとえば「6包目をよく見ろ」と指示されるので、それを薬剤師が肉眼で見てチェックを行う。どの薬がうまく認識できないかといったことも指示される。チェックのときにはエラー内容も一緒に記録し、なぜエラーが出たのかも記録していく。

従来は全て肉眼で数えて、中の印字が合っているのかもチェックしていた。それと比べるとおよそ1/3から1/6程度と大幅に早くすむようになったという。「一包化は入力から終わるまで1時間くらいかかる作業。全部機械でやると10分から15分で行えるようになった。これが一番効果が高い」とのことで、特に量が多くなればなるほど時間短縮効果は高くなる。
なおデータは全てサーバの中に保存されるので、何か問題があった場合には遡ってチェックすることができる。日本国内では30-40台程度だが、既に北欧では数千台も販売されている機械で、多くの実績があるという。
これまで一台構成だったものを3台構成に増やしたのが、PTPシート全自動薬剤払出機「Tiara」(株式会社タカゾノ)だ。PTPシートとはPress Through Package、すなわち錠剤やカプセルなどを1錠ずつプラから押し出すタイプの包装のことである。内服計数調剤(手作業で薬を収集する作業)の多くを占める錠剤やカプセル剤を1錠単位まで端数カットして自動的に払い出すことができる。
通常、錠剤は10個で1シートになっている。それをシートと端数が最適な組み合わせになるように自動計算して、指定の個数に合わせて切り出すのである。


タッチパネルでスタートしたあともゴトゴトと音はするが、動作している様子自体は外からは見えない。だが一分少々待つと、きれいにシートがカットされた薬剤が、処方どおり1錠単位で正確に払い出されて、トレイに入った状態で出て来た。何が払い出されたのかという情報を記したプリントアウトも一緒だ。

残った端数の薬剤個数ももちろん記憶されており、次に端数が発生するときに使用される。まれにシートに傷がつく場合もあるが、「Tiara」は他店でも既に使われており、大きなトラブルはないとのこと。
薬剤払出支援調剤棚「Mille Shelf」(株式会社トーショー)は、この「Tiara」に入らない薬に用いる自動調剤棚だ。もともと、多くの薬剤から、目的の商品を、指定された数量ずつ取り出すのは大変な作業だ。今日ではジェネリック医薬品の増加もあって、類似した医薬品名の薬がさらに増えている。

自動調剤棚は薬の取り間違いによるヒューマンエラーを減らすことができる機材で、データに応じて、取るべき薬が入った引き出しが点灯して自動で開くので、人はそこから薬剤を取り出せばいい。具体的にはヒート包装(散剤や顆粒剤に用いられる、ラミネートフィルムの袋をヒートシールしたタイプの包装。SP包装)された薬などを、この棚で扱っている。

スタートを押すと機械が「4下」といったかたちで、どの棚のどこにあるのかという大雑把な情報を声で教える。指示された棚を見ると、指定されている薬剤が入った引き出しがLEDで点灯されていると同時に、ロックが開いて少しだけ出ているので、薬剤を取って閉じる。するとすかさず「5上」と次に探すべき薬剤の場所を教える。最後まで取ると「完了しました」と指示されて、患者一人分の薬を取り終わったことがわかる。

このほか、軟膏を混ぜる自転・公転ミキサー「なんこう練太郎」(株式会社シンキー)も用いてる。軟膏が処方された場合、複数の薬剤をこれまでは手で混ぜていた。この作業には20分くらいの時間が必要だった。だが猛烈な回転で軟膏を混ぜる自動機械を用いることで、わずか30秒で済むようになった。

今回の自動化によって「トモズ」松戸新田店では9割の薬の払い出しが自動化された。6割が「Tiara」、3割が「Mille」から出て来るという。残り1割は漢方薬や貼り薬、また半年に1度くらいしか出ない使用頻度の低い薬剤だ。機材の大きさや調剤室の広さなどの物理的な問題から考えても、自動化については、このあたりが現実的なところなのではないかと考えていると株式会社トモズ取締役薬剤部・在宅推進室分掌役員の山口義之氏は語る。
「調剤は、物販とちがって我々が薬を選べません。全部機械化するのは物理的にも経済的にも無理があるので、使用実績を見ながら機械をそろえていった結果、このくらいが一番妥当なところかと思ってます」(山口氏)。
トモズ松戸新田店に追加した機材は、散薬調剤ロボット「DimeRoⅡ」、水剤定量分注機「LiQ」、錠剤一包化鑑査装置「MDM」、薬剤払出支援調剤棚「Mille
Shelf」だ。「Tiara」や「DimeRoⅡ」、「MDM」などは他店でも導入されている事例はあるが、全部をまとめて入れたのは松戸新田店が初めてだ。
なお今回の自動化実証実験に伴い、レセコンに入力したデータをどの機械に回すのかを指示するシステムについては新しく作り込んだ。いまのところ、うまく制御できているし、人のオペレーションもうまくいっているという。
「2月頭に機械を入れて、一ヶ月は機器の安定稼働を目的にオペレーションしている段階ですので、今はオペレーションは変えてません。ただ、残業は減っているとは聞いています。花粉が飛び始めて処方箋枚数が増えている今の時期(取材は3月半ば)でも、待ち時間は15分程度に収まっていて、残業も減っているので、効果は出ているのかなと思います」。(山口氏)

現場の意見も伺ってみた。薬剤師になって二年目の木村俊介氏は、最初は「機械に薬を充填する作業のような新しい仕事が増えたので、戸惑いはあった」そうだ。しかしほどなく馴れると「薬剤を集める時間を、患者さんと喋る時間に還元できるようになりました。仕事としても、人と喋る時間が増えて、『薬剤師やってるな!』という気持ちになれるようになってきました。調剤室での作業時間が長いとどうしても自分も機械のようになってしまうところがあるので、患者さんと喋ることでやりがいを感じられます」と非常にポジティブな意見を語ってくれた。
今回はあくまで将来にさらに人手不足が進んだ時代を見据えて、医療の質を維持しながらどこまで最小限の人数で今と同じサービスレベルを維持して運用できるのかを検証するための実証実験であり、経済的なメリットやコスト優先で導入したものではない。だが既に今も、人手不足感は常にあるという。
ただし、どこまでも機械化できるかというとそうでははない。前述のとおり調剤室が広くない薬局には機械を入れるのは難しいし、入れてもペイできるだけの処方箋枚数があるかどうかといった課題も当然ある。そのため、全店での機械化は現実的には難しいという。
機械化に向くかどうかは処方箋枚数だけではなく単価にもよる。処方箋単価が低いと、一回に出る処方の量が少ないので機械にフィットしやすい。しかし処方人数が増えて来ると、今度は機械への補充が大変になってくる。バランスが重要だ。一年半を予定している実証実験のあとも、機材はそのまま運用予定だ。単なる概念実証ではないということだろう。
トモズではこの実験を通じて、分包センター(各地域の薬局からの依頼を受け、手間のかかる一包化調剤を大規模な機器で効率的に行い、一包化した薬剤を薬局や介護施設等へ配送を実施するセンター)をはじめとした欧米諸国の新たな事業モデルに対応できるよう知見を集積していくとしている。
視野に入れているのは増大しつつある在宅調剤への対応だ。トモズでは基本的に患者のニーズや地域のケアマネージャーからの依頼に応えていただけだったが、それでも在宅ニーズは増大しており、2017年4月には在宅推進室を設けて在宅調剤への対応を全店で始めた。だが今までと同じ作業をしていると在宅への需要に応えられない。そういう面でも機械化は必要だと考えているという。
TBSラジオの平日昼の人気番組「ジェーン・スー 生活は踊る」。新進気鋭のコラムニスト ジェーン・スーさんをパーソナリティに、毎日を彩る生活情報や、鋭くも温かい悩み相談などをグッドミュージックとともに放送している。同番組のヒットコンテンツが、リスナーの投票で食品スーパーのナンバーワンを決定する「スーパー総選挙」。これまでに2回行われ盛り上がりを見せていたが、2019年3月、総選挙シリーズ第2弾として「ドラッグストア総選挙」が行われた。企画背景やドラッグストア(DgS)についての所感を、ジェーン・スーさんに伺った。
―今回、「ドラッグストア総選挙」を行われたということですが、企画の背景や経緯を教えてください。
「スーパー総選挙」が第1回、2回とかなり皆さんに楽しんでもらえましたので、DgSもやってみようよ、という流れだったんですが、スタッフ内では最初に温度差があって。というのも、DgSといったときに、テンションがアガる人と、必要なものしか買いに行かないけど何が楽しいの?という人がぱっくり分かれたんですよ。個人差はありますが、傾向として、DgSで時間を使って楽しんでいるのは女性が多くて、男性はどこに何があるのか、どんな商品が置いてあるのかもわからなかった。
うちの番組の信条は「困ったときはリスナーに訊け」なので、総選挙をやる前提で、番組でDgSについてアンケートをとったら、性別関係なくDgSが大好きという方からたくさんメールをもらえて。これはやったら楽しいだろうな、いけるなと。
―「ドラッグストア総選挙」をやってみて、いかがでしたか。
総選挙というシステムは本当に優秀で、物語が生まれるんですよね。ウエルシア1位というのはなんとなく予想していたんですけど、サンドラッグが2位、クリエイトが3位につけてくるとは思っていなかったんです。
でも、サンドラッグを応援する人のメールってすごく熱くて、「スーパー総選挙」でいうところのヤオコーを推している人と近い。オーケーもそうでしたが、上位の企業には、信仰心にも似たユーザーのサポートや推しがありますね。あと、誰もが入ると思っていたトモズ、セイムス、ココカラファインなどがギリギリトップ10入りしなかったりとか。

―票数は731票でした。前回の「スーパー総選挙」の5,149票比べると、まだまだですね…
そうですね。でも「スーパー総選挙」も、1回目と2回目で票数は3倍以上違うので、「ドラッグストア総選挙」も、これからどんどん伸びていく可能性はありますよ。総選挙前には、まだDgSの楽しみ方がわからないリスナーに向けて、DgSにはどういう商品が置いてあるのか、どういう楽しみ方があるのかを丁寧に1週間かけて全曜日で紹介していきました。レクリエーションや啓蒙活動があった上で、総選挙を行ったという感じですが、おおいに盛り上がったと思います。

―リスナーから寄せられたメールでは、どのような声が目立ちましたか。印象として残ったものがありましたら教えてください。
一番驚いたのは、食料品店としてスーパー代わりに使っているという声がすごく多かったこと。そこは男女関係なく、みんななぜか「うどん一玉いくら」とか、とにかくうどんがいかに安いかを強調してきて…最終的に一玉8円までありましたからね! あとは、パンが安いとか、生鮮食品も売っているとか、卵を買っているとか。
リスナーのDgSの利用状況から、日本の社会が透けて見えるようで非常に興味深かったです。なぜDgSで食品を買っているのかというと、家のそばにあったスーパーがどんどんつぶれているから。あと、高齢の両親が車がなくても行ける場所にあるから。都会の人だと、もらった処方箋を調剤薬局に持っていく時間がないから。ライフスタイルの変化に加えて、もともとあった店がなくなっていく状況のなかで、DgSがライフラインとして残っているケースが多いんだなと思いました。
―ポイントの話題も、かなり盛り上がっていました。
すごかったですね。毎月20日にTポイントが1.5倍になる、というウエルシアのポイント錬金術(笑)。生活者もみんな本気なんですよ。
メールをもらって思ったことですが、DgSってスーパー以上に生活と密接に関わっているのかもしれません。男性で家事をメインにやられる方もいらっしゃいますし、介護に関わっている方はDgSに行くんですよね。トイレタリー商品のストックや、おむつを買ったり、生活者の店なんだな、と思いました。
―ドラッグストアショーにも行かれたそうですね。
入って右手のパネルコーナー、あそこがめちゃくちゃ楽しかったです。あと5時間くらいいたかったくらい。ずっとあそこにいましたね。何がすごいって、協会が考えているセルフケア・セルフメンテナンス、今後地域の健康相談の拠点となるDgSの「ハブ」的役割のような話が、リスナーのメールにも書いてあったりするんですよ。ちゃんと伝わって機能しているんだと思いました。
あと、資料をみたら、食品の売上構成比が上がって3~4割くらいになっていて。リスナーがいっていた「DgSで食品を買う」っていうのが、完全に売上にも反映されていたので、なるほどねと。「DgSってどこも置いてあるものが一緒、どこが楽しいの?」という人は、結局10年くらい前のDgSの商品構成―化粧品があって、トイレタリーがあって、薬があって―という記憶のままなんですよ。通っている人はその構成比が変わっていることを知っているし楽しめているというのはあるんじゃないでしょうか。

―ご自身で、ドラッグストアは利用されていますか。
いきます。仕事帰りとか、仕事の合間とか。ぱぱすをよく利用してますね。dポイントも使えますし。買うものはトイレタリーとか化粧品、サプリですね。ネイチャーメイドのマルチビタミンやイージーファイバーとかも買っています。
―ドラッグストアとのエピソードがありましたら教えてください。
いちばん覚えているのは、何年か前の年末に仕事でめちゃくちゃ煮詰まって、プライベートでもあまりいいことがなくて、むしゃくしゃしてしょうがなかったんですけど、そのストレスを解消するのに「よし、DgSに行こう」と思って。もう大人買いだ!と、洗い流さなくていいトリートメントを、目に入った欲しい商品片っ端からバーッと全部買ったんですよ。6、7本くらい。
いつもだったら、こんなにたくさんいらないとか、そんなに内容違わないだろうとか、商品の裏側見てにらめっこしながら、口コミをネットで探して買うんですけど。もうテンションぶちあがりまして、嫌なこととか全部忘れられました。使い切るのに1年くらいかかりましたけど。
―(笑)。ちなみに、番組内でマツキヨのプライベートブランド(PB)「アルジェラン」が紹介されていましたが、DgSの商品、売場についての印象はいかがですか。
あれは素晴らしかったですね。アルジェランは絶対買おうと思っています。あのシャンプーでいちばんびっくりしたのは、洗浄成分にこだわっているところなんですよ。シャンプーにラウレス硫酸Naを使っていない。デザインがどうとか雰囲気とか、そんな話じゃないんだよ!と。DgSはメーカーさんとの付き合いがあるので難しいとは思うんですが…私がシャンプー、ボディソープを選ぶ基準はそういうところなので、これをもっと押し出せばいいのにと思いましたね。「これはこういう洗浄成分で○○です」とか。メーカーの推しているPOPじゃないPOPが見たい。
ドラッグストアショーでも、とにかくプロがつくった惹句(※1)であふれていて、きれいな言葉で何がいい、という情報が大量。判断がつかないじゃないですか。そうなると、絶対にキュレーター(※2)が必要になってくるので、そういう情報が売場にも欲しいですね。

―売場における、商品選択のサポートですね。小売の重要な役割だと思います。
DgSのヴィレッジ・ヴァンガード化を、私は期待しています。頭痛薬とかも、どんな成分がどう効くのか、私たちにはわかりにくいじゃないですか。どういう人に何がおすすめなのかを、店員さんの言葉で知りたいですね。
DgSって、いつもそうなんですけど、行って比較して検討するのは楽しいのに、あるタイミングから、選ぶことが精神的な負荷になって、すごくつらくなってくる。できるだけ種類がたくさんあるお店に行きたいと思いつつも、それが同時に疲れにもつながるんですよ。選ぶ負荷をどれだけ下げられるかっていうのは、結構大きいポイントになると思いますよ。
―最後に、DgSで働く店長の皆さんにメッセージをお願いします。
いつも、本当にお疲れさまです。そしてありがとうございます。人の管理、在庫の管理、衛生管理、本部からは予達、予達といわれて本当につらいと思いますが、DgSにいくと気分が晴れたり、楽しいこともあって助かってます。どうかお体壊さないように頑張ってください!
―ありがとうございました。ドラッグストア総選挙、第二回目も楽しみにしております。
(インタビュー/店橋 花里 撮影/千葉 太一 )
※1 主に広告文などで使われる、人の心を引きつけるために飾られ、誇張されたキャッチ・フレーズ。煽り文句のこと。
※2 近年、各分野において専門的な知識を持ち、自ら情報を収集・編集し発信する役割を担う人々を指す。従来は、美術館・博物館などで展示・企画・構成などを行う学芸員などの呼称。
ジェーン・スー
コラムニスト、ラジオパーソナリティ。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)で第31回講談社エッセイ賞を受賞。また、毎週月~金の11:00~13:00に、TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」のパーソナリティを務める。著書に『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)、最新対談集『私がオバさんになったよ』(幻冬舎)など。
「ジェーン・スー 生活は踊る」
TBSラジオ(FM90.5/AM954)にて毎週月~金曜日の11:00~13:00に放送中。今やTBSラジオの昼の顔となったジェーン・スーが、日々を軽やかなステップで渡っていくための「人情・愛情・生活情報」を、グッドミュージックとともに届け続けている。
https://www.tbsradio.jp/so/
前回ではパートタイマーにも有給休暇があるということを説明しました。今回から、パートタイマーの待遇に関する内容について解説していきます。
通常の従業員よりも短い時間で働くパートタイマーは小売業にとってなくてはならない存在といえます。その一方で、パートタイマーは、どんな職務内容であっても、正社員に比べて待遇が悪いのが当たり前、といったような形で長らく捉えられてきたところもあるでしょう。
もっともわかりやすい例は、部門長などの重要な職務を担っていても、パートタイマーだったら正社員よりも待遇が悪くても仕方がない、という風な捉え方をされてしまうことです※1。

それに対し、パートタイマーの待遇を法律で向上させようという動きが、活発になってきています。とくに2018年の働き方改革法の成立に伴い、雇用形態によって待遇を差別しないという考え方(同一労働同一賃金)にも注目が集まっています。
じつは、この働き方改革法の前にも、すでにこうした動きはありました。直近で大きなものが、2014年のパートタイム労働法※2の改正(翌年4月施行)です。今回はこの点を中心に、対応のポイントを押さえていきたいと思います。
この改正では「パートタイムタイム労働者の待遇の原則」が新設されました。それは、通常の労働者(いわゆる正社員)と待遇を変える場合は、職務の内容、人材活用の仕組み、その他の事情を考慮して「不合理であってはならない」というものです。
※1主なパートタイマーの担い手である(だった)主婦層の「夫の扶養内」で働きたいというニーズも背景にあるでしょう。こうした状況に対し、配偶者控除の条件金額引き上げなどの動きもあります。
※2通称パートタイム労働法(正式名称「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)は、正社員との間の待遇格差の対策として1993年に制定されました。
具体的にはどのようなことか見ていきましょう。まず、扱いの差異を判断する際に、ポイントとなるのは「職務の内容」「人材活用の仕組み」の2つです。
職務の内容は業務の内容及び責任のことを指します。(正社員のように)部門長を任されているといったケースはもちろんのこと、正社員と同じ職務内容や責任を負っているかどどうかを見ます。
「人材活用の仕組み」には、人事異動があるかどうか(やその範囲)などがはいります。正社員には異動はあるけど、パートタイマーは地域(店舗)限定勤務といった場合は、人材活用の仕組みが違うということになります。
そしてこの2つの観点から、パートタイマーの働き方を3つに分け、各々、どのような扱いにしなければいけないのかをまとめたのが次の図です。

ここで注意したいのは、無期雇用か有期雇用かでは分類しない、ということです。この改正で、無期雇用に限定されていた「差別的取扱いの禁止」の対象が、有期雇用のパートタイマーにも広げられたからです。現状、パートタイマーは有期雇用というケースも多いことから※3、法律の実効性が高められたとも言えます。
※3こうした状況に対し、勤続が長いパートタイマーの無期雇用化を促す法改正も行われています。
では、どのような扱いが問題になるのでしょうか。「賃金」「教育訓練」「福利厚生」の3つの観点で行わなければいけない対応をまとめたのが次の図です。

図で見てわかるとおり「通常の労働者と同視すべき人」は差別的な取扱いがすべて「禁止」となっています。職務内容も転勤条件なども正社員と同様であれば、勤務が短時間(かつ有期雇用)であっても、賃金、教育訓練、福利厚生のすべての面で正社員と同一にすべき、ということです。
このなかでも注意したいのが「福利厚生」に分類される、給食施設や休憩室、更衣室などの利用です。これらは、職務内容の差異に関係なく、配慮が「義務」とされており、差別禁止に次ぐ強い規定となっています。パートタイマーだからという理由だけで、社員がふだん当たり前に利用している設備を利用できないといったような状況ではいけないということです。
それ以外の項目に関しては、規定はあるものの、「均衡を考慮」などと表現されていて、実際にイメージがしづらい部分もあるでしょう。なかでも「賃金」については、どう考えるべきかが気になるところです。こうした状況をふまえ、働き方改革法に伴うかたちで、具体例を示したガイドラインがつくられました。次回からは、この内容について解説していきます。