[PR]ミヨシ石鹸、旗艦商品の詰め替え用ボトルを大幅刷新

ミヨシ石鹸は2019年3月に液体洗濯せっけん「そよ風 液体せっけん」と肌にも繊維にもやさしい液体せっけん「お肌のためのせっけん」の本体ボトルを大幅にリニューアルした。20代〜30代女性の生活行動の変化を汲み取り、先鋭的ともいえるらせん型の真っ白なバイオプラスチックのボトルを採用したのが特徴だ。

20~30代女性の間で詰め替え用ボトルが人気の理由

ホームセンターや100円ショップ、雑貨ショップなどで購入したシンプルな詰め替え用ボトルに、シャンプーやリンス、ボディーソープ、液体洗濯洗剤などの詰め替え用を入れて使用する20代~30代の女性が増えている。インスタグラムやインテリア共有サイトで「#洗剤ボトル」と検索してみると、思い思いのラベルやペイントでオリジナリティーを出した白いボトルの写真を何枚も見つけることができる。

自社の商品を少しでも店頭で目立たせようと、日用品メーカーはパッケージデザインに知恵を絞る。赤や青の原色を使った派手な見た目と商品ロゴ。自社の世界観を強く主張するデザインは、店頭でのプレゼンテーションに効を奏しても、いざ自宅に持ち帰り実際に使用しようとすると存在感が強すぎて、ランドリーコーナーのインテリアの統一を損なってしまう。真っ白な詰め替え用ボトルが人気となっている背景には、そういったメーカーのエゴともとれる派手なパッケージに対する消費者のNoが突きつけられていると言える。

この春ミヨシ石鹸が打ち出した新商品のパッケージリニューアルは、そんな時代の声を汲み取ったような、斬新なデザインだ。

らせん状の真っ白なボトル。首からかけられた商品名のタグを取ると商品名すら記載されておらず、白や生成りのタオルが積まれたランドリーコーナーにもよく調和する。

購入したお客様は、市販のラベルシールで自由にデコレーションしてもいいし、ペンを使ってオリジナルのペイントをすることもできる。

新規客層の取り込みを目指す

今回のパッケージリニューアルについて、ミヨシ石鹸取締役営業本部長の中野浩之さんはこう語る。

「当社の洗濯洗剤は、詰め替え用の売上は横ばいを維持しているものの、ボトルの売上は下降傾向で、てこ入れの必要性を感じていました。そこでボトルのリニューアルを企画したのですが、ただリニューアルしただけでは効果は得られないと考えたのです」。

そこで着目したのが、詰め替え用ボトルを思い思いに装飾して使うという顧客行動の変化だ。そして、そこからたどり着いたのが「ボトルを無地にする」という発想だった。

法令で義務付けられている使用方法説明や成分の表示は、タグをボトルの首からぶら下げることで解決した。できる限りシンプルにというコンセプトを貫き、タグに記載する内容も必要最低限の項目にしている。

同社の既存ユーザー層は40代以上の女性が中心だ。空きボトルに詰め替えて使うような生活行動をとるのは20代~30代女性で、若年層の取り込みという課題の解決にもつながる。

このように斬新な白いボトルだが、展示会では賛成・反対両方の意見を耳にしたという。否定的な意見の中で多かったのが「商品名が記載されているタグを外したら何が入っているのかわからなくなるのではないか」というものだ。しかし現在店頭では様々なラベルシールが販売されており、そういったものを張り付けるという生活行動は一般に支持されていてそれほど珍しいものではない。また、タグは故意に力を入れて外そうとしない限りは外れないので店頭におけるタグの紛失などの心配も無用だ。

今後、いろいろな小売業との取り組みの中で、オリジナルのラベルシールの制作も企画していきたいと中野さんは語る。

UL認証を取得。サトウキビ由来の原料使用で環境にも配慮

今回リニューアルをしたボトルは、環境にも配慮していて、原料の約65%がサトウキビ由来だ。UL認証も取得した。ULは、アメリカで1894年に設立された「Underwriter’s Electrical Bureau」を前身とする安全認証機関である。1,000を超える安全規格に基づき、材料、製品について試験や評価を実施、適合したものに対してULマークの表示を許可している。一般消費者向け商品としては国内はじめての取得となる。

液体洗剤は重量があるが、女性でも握りやすいように、持ち手のデザインに配慮しているのもポイントだ。

既存客が「従来の商品がカットされた」と勘違いしないよう、新商品への切り替えがわかるPOPも用意している。

「店頭に並んだときに『これはなに!?』とお客様に新鮮なおどろきを感じていただき、興味を持ってもらえないと、売上にはつながらないと考えています。中途半端な自己満足のリニューアルに終わらせないためにも、これくらい大きく変えるというチャレンジをしてみました」(中野氏)

新パッケージのコンセプトに共感し、新規で導入する小売業も増えており、以前の商品よりも配荷店舗数は増える見込みだ。

斬新すぎるといっても過言ではない今回のパッケージリニューアル。その潔さに、どんな人の暮らしにも寄り添おうとする、秘められた強い意志を感じずにはいられない。

PALTACは無人レジ技術の普及で日本の生産性向上をサポートする

PALTACの物流技術を担う三木田雅和氏が新しい中間流通業のあり方を提言する連載。第1回目は同社が志向するリテールサポートの未来について語ります。Amazon GOに代表される「無人レジ」店舗が日本で実用化される日もそう遠い未来ではなさそうです。

「ジャストウォークアウト」の技術を国内で展開

2019年2月に実施した弊社の展示会では、これまでと会場のレイアウトを大きく変えました。お気づきになった方もいらっしゃるかもしれませんが、会場冒頭には商品関連の展示を配置していたのですが、今年はそれを変化させ、物流関連の展示を持ってきたのです。これはまさしく弊社の「物流とリテールソリューションでの革新的進化」への意思表示と言えます。

近年ECがシェアを伸ばしていますが、その分、海外での例にもあるように店舗小売業がシュリンクしてしまう可能性も否定できません。しかし、お客様に最も近い接点で事業運営されている店舗小売業さんに元気でいただくことが、中間流通業の元気には必須です。ですから弊社は、リアル店舗へのリテールサポートに対してより一層力を入れていく所存です。

現在弊社が最も力を入れているリテールサポートのひとつが「無人レジ技術」、いわゆる「ジャストウォークアウト」です。その技術を国内の小売業さんに提供するため、2018年7月にジャストウォークアウトの技術を提供しているサンフランシスコのベンチャー企業「スタンダードコグニション」(以下SC)との協業を発表しました。

ジャストウォークアウトの技術で世界的に有名なのは「Amazon GO」でしょう。簡単に説明すると、店内に設置されたカメラやマイク、重量センサなどの機器を通じて、どのお客様がどの商品を手に取ったかを記録し、退店時に自動でAmazonのアカウントで決済を行います。

Amazon GOとSCの決定的な違いは、Amazonはカメラだけでなくゴンドラやリーチインの至るところに重量センサやマイクなどを組み込んだ設備が必要であるのに対して、SCは優れた画像認識の技術を武器に、カメラとサーバのみで無人レジを実現することができるという点です。

重量センサが不要となると、初期コストは安価に抑えられますし、何より棚のレイアウトの自由度が高くなるという大きな利便性があります。またカメラの台数も少なくて済むのも特徴です。商品の陳列状態や、商品棚の形状等にもよりますが典型的なコンビニサイズの店舗であれば20-30台のカメラで導入が可能です。高画素で特別なカメラが必要かと思いきや、カメラそのものは市販されているカメラで十分です。データを解析する技術が優れているのです。

SCの一番の強みは、お客様の棚前での購買行動の取得を念頭においたソリューションにつなげることができるという点です。カメラに記録された動画を分析することで、お客様がペットボトルのお茶を購入する際に、価格を見て手に取ったのか、商品背面の成分を見た上で購入されたのか、そういう情報まで踏み込んで取得することが理論的には可能で、今後そういった機能も付加していければと考えています。

ウェブ業界が当然として行っているような「どの商品とどの商品を何回比較したのか」「ある商品の前にどれぐらいの時間滞在したのか」「どれぐらい商品の前で迷われたあと、どのような状況で購買に踏み切ったのか…」そんな細やかな分析が可能になります。そしてその情報を小売業さんはメーカーにフィードバックし、よりよい商品開発や店舗運営につなげます。

棚卸しも不要に。課題はサーバ費用

SC方式にはまだ課題もあります。その一つがサーバの費用です。画像から全ての情報を取得するため、サーバにかなり負荷がかかる処理を行う必要があり、高性能のサーバが必要になりますので、その部分は高価にならざるを得ません。

高性能なサーバの台数を減らしていかに安価なコンピュータを活用できるかが実用化に向けたポイントと考えています。

店舗の状況はすべてカメラで記録されますから、商品管理もこのカメラ経由で行えると考えています。どこまでできるかはわかりませんが、棚卸を不要にすることも論理的には可能です。

SC社は2017年創業。もともとアメリカの証券取引所で違法行為を見つけるソフトウェアを作った方が立ち上げたスタートアップ企業です。私が初めてお会いした時は数人レベルの会社だったのですが、今は従業員70名以上で急成長しています。

Amazon Goのレプリカのようなサービスを提供する企業はたくさんあるのですが、すべて既存技術の組み合わせでやっているようです。しかしSCは圧倒的に他社技術と違っていて、技術的な発展性が魅力です。

たとえばAmazon Goだと、人と人が商品を受け渡すのは禁止されています。現時点では2名で店舗にいって、一人が棚から商品を取り、もう一人に手渡すというようなことができないのです。SCの技術はそういった点にも対応が可能なので、より自然な買物行動に即した店舗運営を実現できると考えています。ちなみにSCは現在(2019年3月時点)サンフランシスコに実験店を出していて、SKU数こそ少ないものの、実際に無人レジを体験できます。

サプライチェーン全体の未来を明るくするために

当社は薬王堂さんのご協力の下、宮城県仙台市内にSCの技術を導入したパイロット店舗をオープンする予定です。そこが成功すれば水平展開もありえますし、他のドラッグストアさんに導入していただく機運も高まるのではないかと思います。

今後日本にもAmazon Go、もしくはその技術を利用した小売業が進出してくるのは避けられないでしょう。しかしそこで私が懸念しているのは、ECのみならず実店舗での購買情報データも特定の企業に独占されてしまわないかということです。

これからの時代、小売業さんの発展にはデータ分析が切り札になると考えています。SCの技術を一刻も早くモノにして、日本の小売業さんに使っていただける環境を構築し、日本のリアル店舗小売業さんの未来づくりに貢献したいと考えています。新技術を積極的に取り入れ中間流通の立場で消費者まで含めたサプライチェーン全体の活性化のお役に立ちたいと思います。

(談・文責/編集部)

単純作業のAIロボット化を一気に進める「ウォルマート」

ウォルマートは、店内作業のロボット化を急速に進めています。目的は、掃除、棚管理、検品作業などの単純作業をロボット化・省人化し、人間は「接客」に時間を多く使うようにし、リアル店舗の「買物体験の質」を向上することです。

(写真はイメージです)

掃除ロボット、棚管理ロボットが人間の単純作業を代行する

engadget日本版」によれば、ウォルマートは4月に、1500台のフロアクリーナーロボット「Auto-C」を導入しました。社員は簡単な準備と、プログラミングをするだけで自動的にロボットが店内を清掃します。また、1300台の棚スキャンロボット「Auto-S」は、商品在庫の確認、棚の在庫位置、POPや売価の確認などの棚管理業務を行います。

そして、配送トラックからの荷物を受ける検品機能付きアンローダー「FAST」1200台を導入しました。荷受けに際し、優先度の高い補充商品を自動的にスキャン、ソートして積み降ろす事で、店内の在庫補充を速やかに行えるようにするロボットです。Auto-SとFASTアンローダーは、データを共有化し、従業員の棚管理作業の手間を省くことができます。

さらに、ウォルマートのECサイトで購入した商品を、近くの店頭ですぐに受け取れる自販機のような「Pickup Tower」も、追加で900台を設置すると発表しています。このような「オンラインで注文→店舗受け取り」のサービスを強化することで、いつでもオンラインで買物できて、近くの店舗で好きな時間に受け取れる「買物体験の質」を向上し、アマゾンなどのオンライン企業と差別化することが目的です。

ピックアップタワーは、最大300箱(箱の大きさは60cmx40㎝x40㎝以内)まで受け取り商品を格納できる。ピックアップタワーの前で、事前に配信されたバーコードをかざすと、5~10秒で箱が出てくる。

ウォルマートが店内作業をロボット化する最大の目的は、単純作業をロボットに置き換えて省人化を進め、従業員は空いた時間を「接客」などの顧客とのコミュニケーションに専念することです。ロボットができる作業は機械で、人間しかできない接客はリアル店舗の価値として強化する戦略です。人とロボットの共存を目指した試みといえます。

日本でも棚管理のAIロボットの導入実験が始まっている。POP期限チェック、売価チェック、品切れチェックなどの棚管理作業を深夜に行うロボット(動画はリテールテックの大日本印刷のデモを撮影したもの、再生時は音量にご注意ください)。

「電子陳列棚」の導入で店内作業が大幅に軽減

米国最大の食品SM(スーパーマーケット)「クローガー」の「Edge Shelf」(電子陳列棚)も、店内作業の省力化・省人化に大きく貢献します(下の写真参照)。小売業にとって、「売価変更」「棚割変更」という紙の棚札(プライスカード)を付け替える作業量は膨大でした。ほとんどの店舗担当者は、特売日の前日に夜遅くまで残業して売価変更作業を実施した経験があるはずです。また、棚割変更に伴う棚札の付け替え作業も膨大な人時がかかっています。

クローガーが開発した「Edge Shelf」は、店内のWi-fiなどの通信機能を活用して、プライスカードなどの「電子陳列棚」の情報をリアルタイムに更新することができます。たとえば、紙のプライスカードを付け替えなければならなかった「売価変更作業」に関しても、リアルタイムに売価を変更できます。しかも、店舗で変更できるだけではなくて、本部で大量の店舗の売価変更作業を一括で管理できます。

下記写真のクローガーの電子陳列棚に表示されているプライスカードは、「紙」ではなくて「映像」なので、プライスカードの位置を自由に変更することができます。その結果、棚割の変更作業が格段にスピードアップします。クローガーは、カテゴリーによっても異なりますが、週に1回程度の頻度で棚替え指示に基づいて、地域に合った棚割に変更しています。棚割の変更作業時には、プライスカードが棚割変更の位置に動いているので、あとはそれに合わせて商品を移動すれば棚割変更が終了します。

リアル店舗の売場がECサイトにどんどん近づいていき、オンラインとリアルの境界線が曖昧になっていくことが、リアル店舗の未来なのかもしれません。

売変作業、棚替え作業、補充作業の軽減化に貢献する「電子陳列棚」の「Edge Shelf」。写真の電子棚札のひとつが「赤枠」で囲まれている。これは、補充作業の際に商品のバーコードをハンドスキャナーで読み込むと、その商品を補充すべき位置の棚札が赤枠で表示され、それが点滅する仕掛けになっている。商品知識のない補修作業者にとっても早く正確に補充作業を行うことができる。

セブンの日本初「顔認証決済」店舗。AI活用による省人化も30店舗で実証実験

2018年12月、セブン-イレブンが国内初の「顔認証による決済」店舗をオープンした。場所は日本電気(以下、NEC)が入居するビルの20階。実証実験の技術を担うNECの従業員のみ利用できる特殊立地だ。(月刊コンビニ編集部 編集委員 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2019年2月号より転載)

入店客の顔画像から年齢、性別を推定ターゲットに合わせ広告表示

今回の実証実験店舗「セブン-イレブン三田国際ビル20F店」を成功させるには、「顧客体験(カスタマー・エクスペリエンス)の向上と、店舗運営(オペレーショナル・エクセレンス)の向上、この2つをセットにすることではじめて、省人化店舗によるさまざまなサービスが可能になってくる」とNEC取締役執行役員常務兼CTOの江村克己氏は説明する。

店を利用するお客と、店を運営する側の双方に対して、既存店にはないメリットが必要であるという。その実現のために、どのような技術革新を実践しているのだろうか。

はじめに、店を利用するお客に対して、3つの新しい体験を提供している。

第一に、顔認証による入店と決済。顔情報で認証を行い、自動ドアをスムーズに開ける。決済はセルフ方式で、お客は商品のバーコードをスキャナーにかざして、顔認証または社員証による認証を選択する。顔認証の場合は、表示画面の上部に設置したカメラを見て認証を受ける。認証されると表示画面に社員番号が表示されるので、正しければ確定して決済する。支払い代金は給与から天引きされる。社員証はカードリーダーに読み取らせて、あとの操作は顔認証と同じだ。

「NECの顔認証(技術)は世界一の評価を得ている。一連の購買行動を非常にスムーズに実現させた」(江村氏)

ただし、顔認証は個人情報保護の観点から、すぐに一般の店舗に導入できる技術ではない。特定企業の閉鎖商圏において、事前に承認した従業員を対象にしているので可能となった。決済はセルフ方式であるが、売場を管理する従業員を一人配置する。

三田国際ビル20階の店舗には、社員証をかざすか、カメラによる顔認証により入店する

第二に、ターゲットに合わせた広告サイネージ。入店したお客の顔画像から年齢、性別を特定して、ターゲットに合わせた広告を表示する。コンビニに来店するお客は、欲しい商品をイメージして購買に至るが、サイネージによるリコメンデーションにより、新たな需要の喚起を期待している。

人が通るとカメラが画像を認識して、性差、年齢に合った商品を紹介して需要創造する

第三に、レジ台に設置した「PaPeRoi」というコミュニケーションロボット。サイネージによるリコメンデーションと連携する形で、お客の顔を認識し、属性に応じたお薦め商品を提案する。店舗は事前に登録したNECの従業員のみが使用するので、一人ひとりを認識することが可能になっている。そのため、一人ひとりに合わせたリコメンデーションを提供することができる。

セルフでバーコードを読み取らせ、顔認証か社員証で決済し、給与から天引きさせる仕組みをつくった

「このような顧客体験の向上により、お客さまに、より快適さ、より便利さを提供できる。欲しいときに欲しいものが簡単に手に入る便利で心地よい購買体験を実現できる」(江村氏)

こうした技術革新により顧客体験を向上させる一方で、店を利用する従業員の満足度を高めるという観点からも、新しい店舗として位置付けられている。今回の店舗はNEC従業員が利用するビルの20階にあるが、もともと地下1階にセブンイレブンの既存店が出店している。1日4,000人が利用する高日販店であり、とくにオフィス内立地なので就業時間前や昼休みに多くのお客が集中する。高層階の従業員は、店までの往復時間、さらにレジに並ぶ時間を合わせると、ランチ1時間の多くが移動とレジ待ちに費やされてしまう。

「職場に近い場所にコンビニがあれば働き方改革の一環になる。買物がスムーズにでき、残りの時間を有効利用できる。昼休みに限らず、就業時間内でも、欲しいものが欲しいときに購入できれば働く環境が変わってくる」と江村氏は、マイクロマーケットへの出店の意義を語る。

今後は従業員として知っておくべき情報を、広告サイネージと一緒に提示することも可能になる。会社のイベントと商品をリンクした提示も考えられるという。

なぜ、その発注数量なのか?ホワイトボックスで明確化

次に店を運営する側に対して、どのような援助や支援が提供できるのか。

今回の実証実験店において、新たなテクノロジーを導入し、効率的な運用を可能とすることで、「従業員を接客中心の業務にシフトする」ことが、まず確認された。自動的にできること、サポートできることを積極的に導入して、従業員が、より多くの時間を接客に向けられるようにする。新たなテクノロジーの導入により、既存の業務をただ削減するのではなく、節約できた時間を接客関連の業務にシフトしていく方向感である。古屋氏は次のような見解を示す。

「機械化できることは、どんどんそちらにスライドさせる一方で、お客さまとのコミュニケーションなど、人にしかできない業務に注力していくことが大切。今回の省人化店舗と人手不足は何の関係もない。お客さまとのコミュニケーション、接客、それと変化対応が大切。寒い時季に、おでん、中華まん、フライヤーの商品を食べたくなったお客さまに、カウンターで接客をしながら販売していく。ファストフードは、お客さまに対する変化対応のなかで、もっとも影響の大きな売場。このような人にしかできない業務と省人化を一緒に考えてはいけない」

では、新たなテクノロジーを導入した省人化とは、具体的にどのような内容なのか。その第一が「AIを活用した発注提案」である。「異種混合学習技術」により、“発見したルールを説明できる”「ホワイトボックス型のAI」を導入している。

「推奨発注数の提案が、どのようなリコメンデーションによってなされたのかがわからないと、お店の方たちは安心して発注ができない。その点、ホワイトボックス型のAIは理由を合わせて提示するので理解しやすい」(江村氏)

推奨発注数だけが提示されるのではなく、どのような理由によってその数量が決まったのか、影響度の強い因子を発注端末にチャートで示すようにした。たとえば、梅おにぎりの推奨発注数が通常よりもプラスとなった場合、割引の「キャンペーン」と前日との「気温差」、さらにテレビ番組で放映された「梅特集」による「CM/メディア」といった影響項目を説明とともに示すようにした。

こうしたAIの援助により、発注数を決定するのは、あくまで店の発注者であるが、発注時間の短縮化が図れるようにした。

「お店の方たちが、短い時間で、的確な発注ができるようにAIがアシストし、品切れによる機会ロスや、在庫過多による廃棄ロスの削減に貢献したい。環境に優しく、作業生産性が上がる環境を提供する」(江村氏)

AIによる推奨発注提案のサンプル画面。なぜ、その発注数を推奨するのか、チャートで理由を説明して発注者が理解できる内容にしている

AI化が、どれだけ進んでも新商品は店長の意思で発注

店舗の発注業務に対して、AIがどの程度貢献するのかは明確にされていない。30店舗で実験を始めて7ヵ月になり(2018年12月現在)、「まだまだ、いろいろと難しい問題がある」と古屋氏はいう。

発注精度に期待も懸けられるが、原則として発注は店長の意思で行うもの。その意思決定の時間を短くすることによって、店長がお客対応に確保できる時間をつくることが実証実験の目的になる。ポイントは作業時間を短くすることだ。

省力型店舗は、人が本来、行うべき仕事を、機械が取って替わるのではなくて、人が意思決定を早くできるように、あくまでサジェスチョンをするだけという位置付けである。

AIが必要とするデータは、(30店舗の実証実験では)過去にどのような天気で、どのような気温だったのか、その条件でいくつ売れたのかは、店舗システムとして、自動的にデータを取っているので、店長の仕事が余計に増えるわけではない。

店舗周辺のイベントなどは個別に入力している。どの水準まで入れるかは店長の考え方になる。たとえば、7月第4週の土日曜は町内の夏祭りといった情報は個店の仕事になる。

新店舗については、たとえば、ロードサイドや住宅立地、ビルイン店舗など、カテゴリー分けしたデータを使うこともできるし、あるいは、エリアにある店舗の平均点からスタートさせて、店のデータが蓄積されてきたらカスタマイズするなど方法はいくつかある。

現状の実験は、過去の実績データが取れる店舗にて実施しているので、まったくの新店舗については推奨発注をしていない。

新商品の推奨発注提案については、NECの説明によると技術的には可能であるという。しかし、店長の意思決定をいかに援助するかが目的であり、新商品に関しては、まさに店長裁量の世界に入ってくる。新商品の発注は、店長が自らの意思で、おもい切って発注することが主題だという。

ただし、初日、2日目、3日目と、データが蓄積されていくほど、AIの提案は正確な値に収束していくので、どこかの段階で推奨発注数を参考にすることになる。

マイクロマーケット店舗で狭小商圏をさらに深掘り

新たなテクノロジーによる省人化の第二は「設備の稼働管理」。

店舗の運営を安全・安心に実現することが目的である。コーヒーマシンや冷蔵設備の掃除やメンテナンスなど、店舗設備情報をIoTにより収集し、故障の事前処置や速やかな復旧を施すことで「止まらない店舗」の実現を目指す。

従業員にとって身近なところでは、設備の稼働にIoTの力を借りて、最適な状況でコーヒーが提供される環境を支援している。コーヒーマシンのフィルターを適切に替えるタイミングを、IoTの設備管理から従業員に伝えている。それによりオペレーションが的確にできるので、コーヒーマシンに意識をあまり向けなくてよくなり、接客に重点を置くことができる。

また、冷蔵設備のメンテナンスなどは専門会社に委託する場合もある。その設備の保守を支える仕組みをつくり、店の運営を効率化することができる。たとえば、冷蔵設備に故障が生じた場合、店の従業員は冷蔵設備のどこに不具合があるのか詳細を報告するのが難しい。IoTの力を借りれば、具体的な修理箇所を関係各所に対して速やかに共有することができる。

省人化の第三は「映像解析によるエリアの管理」。店内画像を使用して、混雑状況や商品の欠品など店内の状況を可視化することで従業員の業務効率化に貢献する。安全・安心という意味では、侵入禁止エリアの検知機能により、不審な状況が起きたときへの対処が即時にできる。従業員が接客に時間を使用できる環境を支援する。

今回の「三田国際ビル20F店」は最新ITに目を奪われがちになるが、店舗展開においては、セブン-イレブンとしてマイクロマーケットへの初の本格出店になる。

実は今回に先駆けて、2014年12月に東京・四ツ谷の本社ビル7階に「7&i本社ビル店」をオープンしている。既に同じ本社下に外部の人間も利用できる「千代田二番町店」を営業しており、どの程度の影響があるのか注目していた。

7階の店舗がオープンする前の本社下店舗の売上指数を100とすると、4年後の2017年度は、本社下店舗の売上は指数84まで下がった。一方の7階の店舗は初年度の指数53から指数78まで上がった。両店の合計は指数162まで売上を拡大している。

本社ビルにはグループの社員3,000人が働いており、上層階の従業員が本社下の店舗まで下りて気軽に買物することが時間的に困難という実態があった。買物を諦めていた人たちの利用をマイクロマーケットの店舗が取り込んだ形になる。

「マイクロマーケットの出店は、どんどん拡大していきたい。鉄道、病院、工場などへ出店していく。そのテストとしては、今回の店舗は、素晴らしいスタートができたと期待している」(古屋氏)

顔認証は現段階では企業内店舗への出店のみと課題を残したが、最新テクノロジーを用いて、狭小商圏を、さらに深掘りしていく考えである。

バックルームを除く売場面積26㎡は、セブン-イレブンの最小店舗になった。通常店舗は170㎡
コンビニが社内にあり、しかも多くの移動時間を必要としないフロアへの出店により働きやすい環境に注力する

スーパーマーケットのシェアを奪うドラッグストアの食品部門

ドラッグストア(DgS)の「食品」購入額が大きく伸びています。高齢化社会に突入し、日本国民の胃袋が小さくなり、スーパーマーケット(SM)とコンビニエンスストア(CVS)の食品購入額が、「ほぼ横ばい&減少」で推移する中、DgSでの食品購入額の伸び率の高さが目立ちます。食品市場が増えない状況で、DgSの食品購入額だけが伸びているということは、SMとCVSの食品購入額をDgSが奪っているからです。

過去5年間で食品購入額を大きく伸ばしたDgS

図表1は、2013年(調査期間2012年11月~13年10月)と2018年(同17年11月~18年10月)の5年間における、カテゴリー別・業態別の食品購入額の伸び率を示したものです。このデータは、「2019年版スーパーマーケット白書」(全国スーパーマーケット協会発行)に掲載された図表を編集部にて加工したものです。

高齢化社会の到来で、日本人の食べる量が横ばいか減少に転じています。その結果、SMやCVSの食品売上が過去5年間で横ばい、もしくは減少傾向なのに対して、DgSがこの5年間で食品購入額を大きく伸ばしていることがわかります。

たとえば、SMの「主食」(米飯やパンなど)の購入額が5年間で-1.9%と減少しているのに対して、DgSは2.4%増と主食の購入額を増やしています。同様に、「嗜好飲料」(コーヒー、紅茶など)は、SMの購入額が-3.3%なのに対して、DgSは1.9%増です。

DgSの購入額伸び率の高いカテゴリーは、「乳飲料」(伸び率4.0%)、「酒類(伸び率3.6%)です。SMの伸び率は乳飲料が横ばい、酒類が-0.9%なので、明らかにDgSがSMの牛乳と酒の売上を奪っていることがわかります。とはいえ、SCIデータによれば、清涼飲料をのぞくすべてのカテゴリーでSMの購入先シェアが50%を超えており、まだ食品の購入先の主力業態はSMであることがわかります(清涼飲料水の購入先シェアは38%)。

SCIデータで、DgSの食品購入先シェアが10%を超えているカテゴリーは、「清涼飲料」(12%)、「酒類」(11%)、「乳飲料」(11%)、「嗜好品」(13%)です。現状のDgSの業態別購入先シェアは、SM、CVSに次ぐ2番手、3番手です。しかし、SM、CVSと比較すると、DgSの店舗数の増加率は極めて高く、今後、DgSが食品のシェアをさらに奪っていくことが予想されます。

DgSの食品構成比は年々増加している

図表2は、「月刊MD」2018年10月号「ドラッグストア白書」で掲載した上場DgS企業の食品の売上構成比の過去3年の推移です。

「ドラッグストア」と名乗りながら、食品の売上構成比が50%を超えている企業が2社(Genky Drugstores、コスモス薬品)、食品の売上構成比が40%を超えている企業が2社(薬王堂、カワチ薬品)も存在しています。また、マツモトキヨシ以外のDgS企業は、過去3年間で食品の売上構成比を高めており、近年のDgSの食品強化戦略が明確であることがわかります。

DgSの「食品」の強みは、(1)便利性、(2)安さ、(3)専門性の3つです。DgSは、商圏人口1万人を切る小商圏に密度濃くドミナント出店しています。SMよりも小商圏であり、自宅から近くに立地しており、SMよりも「近くて便利」なので、今後も便利性でSMから食品のシェアを奪っていくと思います。

また、「安さ」はDgSの最大の武器です。過剰な設備投資のないDgSは、SMよりも販管費率が低く、論理的に考えるとSMよりも安く売れます。DgSは、SMよりも「便利性」と「安さ」で優位に立っています。一方、便利性はCVSに劣るものの、「安さ」ではCVSよりもDgSの方が勝っています。郊外のCVSは、飲料、カップ麺、菓子などの「価格敏感商品」のシェアをDgSに奪われています。

さらに、HBC(ヘルス&ビューティケア)という「専門性」の高い商品を主力にしていることも、DgSの業態としての強みです。高齢化社会の到来で「食べる量」は減少しますが、「健康でいたい」「美しくあり続けたい」という人間の根源的な欲求は逆に高まります。つまり、成長するマーケットを対象にした業態であることも、DgSの強みです。「健康に良い食品」「美容に良い食品」を店頭起点に「需要創造」することのできる最適の業態です。

しかし、現状のDgSは、「売りやすい商品」を「安売り」することだけで、食品のシェアを奪っているのが実態です。HBC(健康と美容)と連動した食品売場の再構築こそが、DgSの最大の経営課題です。しかし、SMの方がトクホなどの健康志向の食品売場が充実しており、DgSの食品売場では「健康によくなさそうな食品」をただ安売りしている実態を目撃すると、とてもガッカリします。安さだけでシェアを奪うことはもう限界だと思います。

[PR]「わたしにもこどもにうれしい」ヘアケアブランド誕生

2018年9月、クラシエから発売された「マー&ミー ラッテ」は、忙しい母親と成長過程(3〜10歳)の娘が一緒に楽しめるという、これまでにない新しい切り口を持つヘアケアブランドである。ファミリー層を対象とした高シェア・マス系商品の収益性が頭打ちの中、小さな子供を持つ家庭に新たな楽しみを提供し、店舗にとっては高い収益性の見込めるブランドをヘアケアカテゴリー拡大に活用しよう。

メイン写真左から:マー&ミー シャンプー490mL参考価格800円(税抜)/マー&ミー シャンプー詰替360mL 参考価格500円(税抜)/マー&ミー コンディショナー490g 参考価格800円(税抜)/マー&ミー コンディショナー詰替360g 参考価格500円(税抜)/マー&ミー ダメージケアトリートメント180g 参考価格800円(税抜)

開発背景①:ユーザーの多い領域で新価値、新機能性で単価アップ

シャンプー、コンディショナー、ヘアトリートメントを中心とするヘアケア市場は約2,000億円の巨大な規模を持ち、ドラッグストア(DgS)では豊富な品揃えで対応し、来店目的にもなる主力カテゴリーと位置づけられている。

図表1はクラシエがまとめたヘアケアの主なセグメントである。S1/メガブランド愛用層(以下S1)がもっともシェアが高く半分以上を占めている。次いでS4/ファミリー・地肌ケア層(以下S4)となる。S1のシェアは高いが、有力ブランドが複数あり価格競争に直面している領域でもあるので収益性は低い。

「マー&ミー ラッテ」が参入するのはS4の領域で、ここには、数量的にはトップクラスのシェアを持つファミリー層から支持されている有力ブランドがあるが、価格面からは収益商材とはいい難い。多数のユーザーを有し、数量的にはマス領域であるS4でいかに単価アップできるかは、DgSのヘアケアカテゴリー成長の大きなカギである。

「マー&ミー ラッテ」は、新しい価値観、新しい機能性そして高い収益性を提供することで、S4セグメントを活性化し、カテゴリー拡大に貢献できる期待のブランドである。

図表1 ヘアケアのセグメント別金額シェア

クラシエ調べ

開発背景②:「I」でも「YOU」でもない第3の軸が新しい市場を創造

「ファミリー層を対象とし、多数のユーザーがいる領域(図表1/S4)で、新規客にとって魅力的な切り口は何か」。クラシエでは、子育て中の女性スタッフを中心に開発チームを立ち上げ、この課題と向き合った。その答えが、「自分(ママ)の髪でも満足できて、なおかつ娘(3~10歳)の髪にも配慮した処方でありあり、母娘(おやこ)で使用することでバスタイムが楽しくなること」であった。

クラシエの調査によると、小学生以下の子供を持つ女性の90%が、できればシャンプー/コンディショナーを子供と一緒に共用したいと回答、その多くが、浴室のゆとり(すっきり感)88%と子供の髪へのやさしさ68%を求めている(2018年調査 n=194)

こうしたニーズから、開発チームではヘアケア商品を購入するママのライフステージにおいて、使用ブランドを迷うタイミングは必ずある(図表2)。そのタイミングに合わせて「マー&ミー ラッテ」を訴求することで、大きなニーズを獲得できるという答を導いた。

このように、新商品が初回購入時に訴求する対象は「ママと娘」だが、最終的にターゲットとするのは大きな市場を持つファミリー層全体であることも留意しておきたい。

図表2 シャンプーの選択行動

クラシエの資料をもとに編集部作成

商品特長:子供の髪も実は傷んでいる。ミルクの力で母娘のダメージをケア

忙しく働くママの髪は産後変化しやすい。キューティクルが浮き上がり、めくれるような傷み方をしていることが多い。一方で、成長過程の子供の髪も繊細で、キューティクルに亀裂が入り込んで傷みやすい。

「マー&ミー ラッテ」には、ラクトフェリンとホエイ(ヨーグルト液)といういずれもミルク由来の成分から生まれた「プレミアムWミルクプロテイン」を配合。栄養豊富なタンパク質がママと娘の異なる髪のダメージをケアしてくれる。

また、この商品に向けクラシエが独自に開発したアミノ酸系の新洗浄基剤「HEA(ヘアー)※1は、素早く泡立ち「ぷるふわ」の感触で、子供でも洗い流しやすく指通りもなめらか。※1 ラウロイルヒドロキシエチル・β-アラニンNa

 さらに、ママと娘それぞれに特有のニオイ成分と発生メカニズムを解明し、汗と皮脂のニオイをしっかり抑制。やさしく包みこむような「アップル&ピオニーの香り」に仕上げた。風呂上がり以降、母娘で同じ髪の香りを楽しむ贅沢なひとときが味わえる。

商品特長

  • ママと娘の髪を芯から元気にする「プレミアムWプロテイン」配合
  • クラシエ独自開発の肌にやさしい新洗浄基剤「HEA(ヘアー)」使用
  • ママと娘のニオイに対応、優しく包み込む「アップル&ピオニー」の香り

売場・売り方:「2人のレディーを美しく」。情緒面から共感を得て、品質で納得

「マー&ミー ラッテ」最大の特長は、ママと娘が美しい髪を一緒に楽しめるように設計されていること。この情緒的価値は、テレビCM、雑誌広告などのマス媒体から、店頭の販促ツール、パッケージに至るまで一貫して訴求されている。

また、この情緒的な価値に共感してもらい、さらにそれを拡散するために「リンクヘアー」というワードを積極的に発信する。リンクヘアーとはママと娘が同じ髪型を楽しむこと。インスタグラムでは「#リンクヘアー」でコミュニティづくりを目指す。内向きだったシャンプーという作業を、リンクヘアーという行動に結び付けることで、開かれた楽しい趣味的な活動へと進化させる。

プロモーション売場ではブランドの世界観を表現したトップボード、「#リンクヘアー」の投稿写真や商品の使用感想をPOP化したツールなどを用意。店外プロモーションと売場との連動を図る。

9月の発売以来売上は好調で、あるDgSチェーンでは平均でシェア2.4%、4%近くを獲得した週もある(クラシエ調べ)。2018年9月の月初2週とそれ以降2ヵ月の購買を見ると、25.3%がリピート購入している(SOOデータ)。新発売ながら一度使えばその良さがわかる商品といえる。

「マー&ミー ラッテ」の世界観を表現した60秒動画広告

キービジュアル(イメージ)

ママと娘の美しい髪をアピール
インスタグラムに投稿されたリンクヘアーの写真を販促ツール化

提案プロモーション売場

世界観を訴求したプロモーション売場例

3月、4月の卒園、入園・入学時期は
ブランドスイッチの大きなチャンス
プロモーション売場で単価アップを狙おう

重要ポイントのまとめ

  • いままでになかった「ママと娘」の髪を美しくするヘアケア
  • 大きな市場を持つファミリー地肌ケア層での単価アップを狙う
  • 3月、4月はブランドスイッチによる単価アップのチャンス

老舗石けんメーカーが営業所をWeWorkに移した理由

スタートアップ企業向けに世界各国にコワーキングスペースを提供するWeWork。単なる「場所貸し」ではなく、入居企業同士のコミュニティを作ろうとする姿勢が注目を集めている。そのWeWorkが大阪なんばに新規オープンした拠点に営業所を移したのが無添加石けんを中心に展開するミヨシ石鹸だ。スタートアップ企業のひしめくコワーキングスペースと老舗石けんメーカーという一見不思議な組み合わせは、どのような狙いによるものなのか。

クリエイティビティを刺激する、絶景を見渡す執務スペース

WeWorkは2010年にアメリカで創業した起業家向けコワーキングスペースを提供する企業だ。27か国、101都市に580カ所以上の拠点を有し(2019年2月7日現在)会員に向けてコミュニティスペースを提供している。アメリカではスタートアップ企業の利用が多く、AirBnB、Uberなど成長を遂げたスタートアップ企業もWeWorkのユーザーだ。

日本においては2017年にソフトバンクグループとの合弁でWeWork Japanが設立され、拠点の運営を行なっている。日本には東京、大阪、名古屋、横浜、福岡の4都市に13カ所の拠点を置く。

そんなスタートアップ企業がひしめくWeWorkに大阪営業所を移転したのが無添加の石けんの製造で知られるミヨシ石鹸である。

WeWorkなんばスカイオは、南海鉄道なんば駅に直結するオフィスビル、なんばスカイオの26階~28階の3フロアを占める。入口を抜けると、オープンテーブルの共用ワークスペースが広がり、奥のエリアが企業向けのプライベートオフィスになっている。ガラスの壁で区切られたオフィススペースは、奥まった場所でも明るく、フロア全体の一体感がある。

写真は執務スペースのイメージ

特筆すべきはワークスペースの眺望の良さだろう。西側に大きく開かれた窓は遠く大阪湾を見渡し、天気がいい日には明石海峡まで見えるという絶景。デザイン性の高い家具が配置され、壁面をアート作品が飾る。

異業種の企業といかに接点を作るか

WeWorkなんばスカイオにはさまざまな業種の企業が入居している。電子決済、オーダーメイドスーツ、e-learning、シェアタクシー、EC、語学……スタートアップ企業が中心だ。そしてWeWorkの大きな特徴が、このような多彩な入居企業間のコミュニケーションを、コミュニティマネジメントチームがサポートしてくれるという点である。ミヨシ石鹸取締役営業本部長の中野浩之さんは今回WeWorkに営業所を移転した狙いの一つとして「異業種との交流」を挙げる。

「事務所やお得意先でのコミュニケーションだけでは、同じ業界内の情報しか共有することができません。WeWorkには、入居している企業同士が気軽に情報交換できるコミュニティスペースがあります。異業種の方と接することで、今まで考えたことのない発想や刺激を受け、それを仕事に生かせるチャンスが産まれると考えました」

たとえば、毎週入居企業を対象としたイベントを実施していて入居者同士のコミュニケーションを促している。取材に訪れた週は「本気で作る大阪ミックスジュース」というイベントや「WeWorkでマッサージ体験!」というようなイベントが予定されていた。

月曜日の朝には「TGIF」ならぬ「TGIM」というイベントが行われている。
一般的に金曜日は「花金」と呼ばれ、英語では「Thank God It’s Friday」(今日は金曜日だ!神に感謝します)という意味で「TGIF」というスラングが用いられることが多い。そこでWeWorkでは「TGIM」と言って月曜日を迎えられたことに感謝して、拠点によっては朝食を食べながら、入居者同士が交流を深めるためのイベントを開催しているのだ。

「訪問する営業から、来訪していただける営業へ」と中野さんは言う。

訪問しなければ会ってもらえない。だから訪問する。…そんな発想から、自社へ訪問していただき、商談だけで終わらず、本当の意味でのコミュニケーションの時間を過ごすことが、次のビジネスチャンスにつながると中野さんは考える。

入居者であれば誰でも使えるオープンキッチンは、フリードリンクも充実している。コーヒーや紅茶はもちろん、ビールサーバーまで設置されていて、就業時間後に従業員同士やお客様とコミュニケーションの輪を広げるツールとして活用できそうだ。

もちろん集中して作業をしたいときや、込み入ったやりとりをしなければならない場合などはコンセントレーションブースを活用することもできる。

「車があるから営業に出る」という固定観念から脱却

今回の移転の狙いについて、ミヨシ石鹸営業部の伊藤恒太郎さんはこう言う。
「もともとの営業所は雑居ビルの一部屋で、あまりよい環境ではありませんでした。こちらのオフィスのアクセスは非常によく、お客様先に出向くだけでなく、お客様にご来社いただいて、この環境を楽しんでいただくようなことも増えています」

ミヨシ石鹸の大阪営業所は、WeWorkに移転したタイミングで営業車を廃止した。基本は公共交通を利用して移動し、販促物を持参する必要があるときはカーシェアリングを使う。

本社では電気自動車を導入しているが、環境に配慮することを第一に考え、できる限り公共交通機関を利用することにしたのがその理由だ。取引先企業にWeWorkに来訪してもらい、和やかな雰囲気の中でコミュニケーションを取るケースも増加している。

ミヨシ石鹸の三木晴信社長は、WeWorkへ営業所を移転した意図についてこう語る。

「WeWrokには以前から興味を持っていました。たまたま上海を訪問した際にWeihai Luという地区のWeWrokを訪問したのですが、1930年代に建設された精製工場で、2000年代にはアーティストレジデンスとして活用されていた建築物。リノベーションされた内装は非常にデザイン性が高く、これは入居するしかないだろうと感じたんです。大阪に進出すると聞いて、ならばぜひ営業所を移転したいと考えました」

「まだ入居して日が浅いので総合的な評価はしづらいところですが、営業スタッフの働き方が変わったのは大きいと感じています。どうしても、仕事に集中すると同僚とのコミュニケーションをシャットアウトしてしまいがちですが、ここでは自然と会話をしながら仕事をするスタイルになっています。それに、狭い社内に閉じこもっていると、どうしても『うちはこういう会社だ』という固定観念ができてしまいがちですが、ここに来るとそれが解放される印象があります。クリエイティブな雰囲気に溶け込んで、スイッチが入る。そういう意味では生産性は上がっていると思います

WeWorkの利用を福利厚生と考えるか、生産性を上げるための施策と考えるかで、評価は全く違ったものになる、と三木社長は言う。さらに今回の営業所移転の背景には、これまでの社内文化を一新し、収益構造を変革したいという意図がある。

メーカーの営業業務は、取引先と会って商品を案内するルートセールスが基本だ。これは往々にして単なるルーチン業務になりがちで、工夫無しに毎日の業務を回すだけという状況に陥ってしまう営業担当者も少なくない。しかし情報化が進んだ今日、メーカーに求められるものは、工場で製造した商品を単に取引先に卸すことではなく、新しい価値を創造していく、知的な生産活動である。その知的な生産活動の場として、ミヨシ石鹸はWeWorkを選択したのだ。

「今後企業活動の鍵を握るのはダイバーシティです」(三木社長)

変化が激しく、さまざまな価値観が交錯する現代社会においては、異なる背景を持った人たちが一つの目的に向けて試行錯誤することでしかゴールにはたどり着くことができない。そういう意味で、ミヨシ石鹸は、ジェンダー、国籍、宗教…すべての意味で多様性を実現するための実験を行っているさなかであるといってもいいだろう。

「WeWorkには業種や国籍など、本当に様々なバックグラウンドの人がいらっしゃいます。弊社従業員には、この場の力にインスピレーションを受けて、新しい仕事の仕方に転換することを期待しています」(三木社長)

いかに既存の「営業」の固定観念から脱却するか。このような環境を従業員に提供するのも、営業活動そのものをダイバーシティーの実践とするための同社の試行錯誤の一環と言えそうだ。

しかし、従業員にとっては、これだけ自由な環境で、どこまで自分を解放していいのかという迷いも出てきてしまいそうだが。

「けれども、そういうものも含めて変化というのは面白いものではないでしょうか。仕事は大変なものという考え方があります。たしかに大変なものではあるんですが、ずっとそれだけでは疲弊してしまう。でもここであれば、どんな仕事の仕方をしていても、文句を言う人はいません」

自由な環境でこそ個人の能力は最大化される。その変化への対応は、従業員それぞれにとって短期的には迷いが出るものかもしれないが、長期的には個人の、そして企業の強さの底上げに確実につながっていくはずだ。

変わりゆくメーカーの本質。持たない経営が目指す先とは

コワーキングスペースを活用することはコスト削減にも直結する。Wi-Fiなどのネットワーク環境やインフラはすでに整っているので、入居企業側ではノートPCを1台用意しさえすれば仕事の環境をあっという間に構築することができる。ゴミの回収や清掃も任せられるので、総務部門の仕事もスリム化できる。

スケーラビリティも特徴の一つだ。事業規模に合わせて従業員の人数が増減した場合は、WeWorkの中で空いているスペースに移動をすればよい。大掛かりな転居は不要だ。

実はこのタイミングでミヨシ石鹸の大阪営業所は固定電話もなくした。名刺には電話番号が記載されているが、すべて本社に転送されている。フレキシブルでライトな運用、「持たない経営」を徹底しようとする姿勢が見て取れる。

メーカーという業種は、これまで工場を所有して製品を製造できる部分に本質的な価値があるとされていた。しかしその前提も情報化が進み、工場を持たない「ファブレス」メーカーも存在感を増してきているなど、環境の変化に伴い一つのターニングポイントを迎えていることは間違いない。メーカーという存在が、この先どのような価値を市場に提供していくのか。ミヨシ石鹸の営業所移転は、業界に対する一つの問題提起につながっているのではないだろうか。

(提供:ミヨシ石鹸)

「たくさん売る」から「買い続けてもらう」へ小売業は変化する

小売業に一家言あるコンサルタント・実務家の方々に2019年の展望を語っていただく特集企画「小売業界2019年業界展望」。最終回となる今回は、オムニチャネルコンサルタントの逸見光次郎さんが登場します。カメラのキタムラでオムニチャネル化に成功し、現在さまざまな企業でデジタルシフト、オムニチャネル化に取り組む逸見さん。今後小売業にとって重要になる戦略は「たくさん売る」ことではなく「買い続けてもらう」ことだと言います。(聞き手:MD NEXT編集長 鹿野恵子)

小売業はまだまだ変化が足りない

――2018年までの小売業は、どのような状況だったと思われますか。

逸見:まだまだ変化が足りないと思っています。

お客様はみなスマートフォンをお持ちになって、さまざまな情報にアクセスできるようになっています。しかしいまだに小売業の店舗では「エンドに商品を積みましょう」「原価率を低減しましょう」というような話ばかりです。「高付加価値で粗利の高いものを売りましょう」とか「PBを作りましょう」という話も相変わらず耳にしますが、重要なのは本当にそこなのでしょうか?

――購買行動が変化しているのに、実店舗は変化が追い付いていません。

逸見:そうですね。ECやデジタルと、まだ距離をとっている小売業も少なくありません。ECやデジタルに関する事業部が組織上(店舗運営部などの)事業部門と別になっていますし、戦略がない企業が多いと感じています。

もしEC事業部が事業部門と組織上わかれていたとしても、(逸見氏が以前オムニチャネル化を推進した)カメラのキタムラのようにEC関与売上のような指標を立てて「店舗運営部とEC事業部で一緒にカメラの売上を伸ばそう!」という目標に一丸となって向かうことができればよいのです。スマートフォン上のお客様との接点であるアプリはECの部署が作るけれども、店舗で商品を受け取れば売上と利益は店舗に入る…というような構造になっていれば、店舗運営部も積極的にアプリのダウンロードを推奨するはずですから。

ですが、お客様はネットもリアルも関係なく買物をするようになってきているのに、大手企業ではやはりEC部門と事業部門の組織が別になっている。もうそのようなやり方は限界がきていて、根本的に変わっていく必要があるのだと思います。

2018年は既定路線のままでいられる限界の年だった

逸見:2020年のオリンピックの後はかならず景気が落ちて、市場はシュリンクします。消費増税も控えていますし、消費は確実に冷え込むでしょう。日本だけを市場とみていると明らかにつらいところです。

そこでインバウンドに注目が集まっているわけですが、このインバウンドという言葉ひとつとっても、日本の小売業がお客様のことを見ていないということがわかります。日本の既存の小売業は、海外からいらっしゃったお客様をひとまとめにして「インバウンド」と呼んでいますが、これは「塊」のように見えても実際は世帯年収や年齢などの背景が全く違う方々の集団です。ユニークIDで管理できる「顧客」と考えるべきです。

――お客様一人一人を見ないというのは不思議です。なぜなのでしょうか?

逸見:今までお客様をそのように見る習慣がなかったのですから、仕方ないと思っています。ですが、経営者の方には、「お客様個人の行動が見えるようになったという事実はしっかり理解してください」と申し上げております。

たとえば無印良品のスマートフォンアプリを例に挙げれば、アプリを立ち上げて何かを検索すると、その時点でお客様がどこでどんな商品を検索しはじめたのかがわかります。店舗でチェックインしてくれれば、わざわざ来店したとお客様が宣言してくださっているということになりますね。店頭での商品購入時にもアプリを見せていただけますから、購入した商品の商品コードと店舗コード、顧客IDを紐づけることができる。

つまり、ID番号XXXX番さんが店内、店外でどのような行動をしているのかということが、つまびらかになったということです。

「ユニーク客数」を増やすのではなく「リピート率」をあげる

逸見:これが今までわからなかったから、商品カテゴリ単位で予算を組んで予実管理をしていたわけです。でも誰が購入しているかがわかれば、考え方が変わりますよね。当然、それを実現するためには膨大なデータを処理するという課題は浮かび上がってきますが。

端的に言うと、これまでとは完全に逆の流れになっているんです。これまでは「商品」つまり「何を」から分析することしかできませんでした。しかし現在のような状況では、まず「誰が」というのが見えて「何を」「何回」「何個」購入している、というのが見えてくる。

売上は「客単価×客数」です。そして、この客数の中身を今はもっと細かく分解することができるようになりました。以前は客数が1000人だといったときに、そこでAさんが何回購入したのか、という話は全く見えませんでしたが、まずそのお客様が新規客なのか、既存客なのかがわかりますよね。既存客の中でもずっと購入し続けてくださっているお客様なのか、それとも久しぶりにお買求めいただいたお客様なのか…そういうことも顧客IDを使えば分解することができるわけです。

その上で主に購入している場所がネットなのか店なのか、両方にまたがっているのかということまでわかります。もちろんお買い物のときにポイントカードやアプリを提示することが前提ですので、100%レジ通過客の属性がわかるわけではありませんが、80%ぐらい見えればデータとしては十分でしょう。

昨年年間30万円購入していただいた7000人のお客様に、今年はあと1万円追加で購入していただくためにはどのようなアプローチをすればいいのか。年間30万円を31万円にするのはそれほど大変なことではありませんが売上は7000万円アップします。その30万円を分解していくと、食品を買っている、医薬品を買っている…とカテゴリでの購買動向で分けることができるかもしれません。

ーー商品軸のマーケティングから顧客軸のマーケティングへの移行が必要ということですね。そういったデータを基準にしたマーケティングに小売業は全く着手できていない状況ということでしょうか。

逸見:そうです。データが見えているのに、その事実を見ないで経営しています。売上と利益と客数の塊しか見ていない。

今まで中期経営計画といえば絵に描いた餅にすぎませんでしたが、それが本当に必要になってきたとも言えます。3年、5年というスパンでお客様とどのようなリレーションを深めていこうとしているのか。どれだけ繰り返しお買い物をしていただけるようにするのか。一般的な、日本国内のみをターゲットにしているような小売業さんでしたら、ユニークIDを増やすということはなかなか難しいので、いかにリピートを上げていくかということを考えていくべきだと思います。

顧客行動の全体像を設計できているか?

――本来でしたらそういった施策をどこの企業も打つべきですが、なかなかそこまで至っていないというのが現状です。

逸見:どこの小売業さんも、業績が厳しくなってきてやっと気が付いてきたタイミングだと思います。投資力がある企業さんは、なぜかレジを進化させたりしていますが…。

ーーそれは方向性に問題があるとお考えですか?

逸見:そうですね。お客様へ提供する価値を高めるという発想であれば、商品やサービスのクオリティも重要ですし、店舗やネットでの買物の利便性も重要です。とにかくほとんどのお客様は、ネットでも店舗でも情報を入手してお買い物をなさるようになりつつある。その全体像をしっかりと設計していく必要があります。

昔はメールでの販促も手運用だったのでできませんでしたが、今はビッグデータを分解して、最後はお客様一人一人に対してコミュニケーションを最適化させることもできるようになりました。

ただ、問題なのは仮説を立てないでツールにデータだけ流し込んで、マーケティングオートメーションツールでメールを配信すればいい、とやってしまうことが多いので、余分なメールが届いてお客様も離脱してしまう。

今でもマーケティングのデジタル化が理解されていなくて、メールをたくさん配信したほうが売上が上がるというような一時的な話がなされているような状況です。

本当は継続し続けたらお客さんは減り続けるということが理解されてないわけですよね。メールの配信先は少なくても、ピンポイントで「あなただけのメール」を送れるかどうかの方が重要なのに。

――販促の個別化、商品の個別化が今後重要になってくるということですね。

逸見:そうです。その点ヨーロッパは進んでいて、技術寄りで荒っぽいアメリカとは違って、派手さはないのですが、店舗で発行しているポイントカードやアプリがメールアドレスと紐づいていて、適切に連動をしています。

要はお客様と適切につながり、どうアプローチできるかが大切なんです。最近うまくいっているのは顧客視点で全体最適を描ける小売業さんですよね。企業理念がしっかりとしていて、それを愚直に考え続けて「ここはデジタルにしたほうがいいよね」とか「ここは人間が対応したほうがいいよね」という組み合わせを考えることができる企業さんです。こういった企業さんは、良さを残しつつ生き残ることができています。

失敗している企業さんは、それがはっきりしていなくて、いろいろな技術をつまみ食いして「この技術が面白い」とか「CtoCだ」とか「AWSにデータを乗せて分析すればいいんだ」とかとか(苦笑)、技術が先行してしまいがちです。

小売業だけでは顧客満足の実現はできない

ーーお客様にどう認知していただくかが重要ですよね。もっとマーケティングのデジタル化に向き合わなければならないということでしょうか。

逸見:今店頭ですらモノがありすぎてほしい商品を探しにくくなっています。その上、昔は商品が進化していて「バージョンアップしたこの新しい型に買い替えなきゃいけないね」という購買行動が多かったのですが、今はそういうものがほとんどなくなってきていて、逆にお客様の方向性がどうモノを減らすかになっています。

世帯構成人数も大きく変化しています。日本人の6割が単身世帯か2人世帯です。典型的な家族構成は減ってきている。それではモノを買わなくなりますよね。

そういう状況を理解した上で、お客さん個人にアプローチをしていくべきだと思います。「たくさん売る」ではなく「買い続けてもらう」んです。在庫をたくさん持つ必要もなくなります。メーカーさんも、ものをたくさんつくる必要はなくなりますよね。工場を稼働させることが重視されていましたが、それを絞り込んでいかにお客様の必要としているものを生産するのか、という方向に変わっていければいいんです。

――小売業だけでは顧客満足の実現は不可能ということですね。

逸見:そうですね。今後、ますます卸、メーカー、小売はデータを共有しなければならない時代が来ると思います。小売業側には個人のIDに紐づくデータがありますし、メーカーには全国というセグメントのデータがあります。

これまでは巨大な小売業が同じ製品を日本全国津々浦々まで流通させようとするから、メーカーの生産量が追い付かなくなってしまいました。コンビニの大手チェーンも2万店舗体制になると、メーカーが生産・納品しなければならない商品の個数も膨大になります。小売業は大きくなりすぎてしまったのだと思います。

海外の小売業はNBのコントロール弁としてPBに力を入れています。それを販売するためにウォルマートも店舗網を増やしているといって過言ではありません。

メーカーはこれまでのように製造量を増やして原価を下げて消費者にコスパを提供するのではなくて、消費者が本当に必要なものを作って提供することによって、無駄を省き、利益を出す必要があるのではないかと考えています。

――どんぶり勘定の見込み生産では今後が厳しくなる企業が多そうです。

逸見:本当に、ぎりぎりにきていると思います。キャッシュに余裕があったトップ企業も転換しなければならないですし、収益性が厳しくなっている企業もたくさんあります。

そのような企業さんがこれまでと同様、たくさん売るために市場を獲得してシェアを上げて原価率を下げ利益を出すという発想をいまだに持っているのでしたら、この先厳しくなる一方ではないでしょうか?

でも変わる余地はまだあります。2018年は既定路線のままで進むことのできる限界の年でした。2020年や2030年を見据えて、2019年からは戦略を本当に変えていく必要があるのではないでしょうか。

ーー本日は興味深いお話をありがとうございました。

店長とSV、12の職務を改めて整理する

店舗運営部に属するSV(スーパーバイザー)や店長は、小売業の業績を左右するキーマンといっていいでしょう。ネットで何でも買える時代において、顧客接点の「現場力」を高めることが、リアル店舗の最大の差別化戦略です。店長はワーカー(作業者)でよかった過去とは異なり、店長の重要性は高まっています。SV(エリアマネジャーと呼ぶ組織もある)、店長の職務を改めて整理してみましょう。

店内作業の習得が店長教育の出発点

現場責任者であるSVと店長に求められる能力は、「現場のリアリティ」と、「数値に基づいて判断できる能力」の両方を持つことです。経験と勘によってのみ判断し、数値を軽視してはなりません。一方、現場のリアリティを無視して、数値だけで判断してもダメです。

たとえば、「在庫を減らせ」と本部から指示が来ると、現場では売れ筋の発注をしなくなります。売れ筋の発注抑制が、もっとも手っ取り早い在庫削減策であるという現場のリアリティを理解した上で、数値に基づいた在庫調整を行えるスキルが、SV、店長には求められます。

「現場力」を養うためにも、20代の店長候補者は、棚卸作業を含めた「店内作業」を完璧に習得することからキャリアをスタートすべきです。SV、店長のもっとも重要な職務のひとつは、OJT教育(自ら手本を示して部下に作業を教えること)によって店内作業の水準を底上げし、人によるバラツキを少なくすることだからです。

OJT教育を実践するためには、店長やSVは、誰よりも店内作業を早く完璧にこなすスキルが求められます。そのためには、新しいレジ作業や、新しい発注の仕組み、新しい売場管理方法など、日々更新される新しい店内作業を習得する努力を怠ってはなりません。

店内作業の実行と徹底がSVと店長の最大の職務

多店舗展開するチェーンストアの組織は、大きくは「商品部」と「店舗運営部」に分けることができます。商品部や販促部がMD(マーチャンダイジング)の計画部隊であるのに対して、店長やSV(企業によってはエリアマネジャー)が属する「店舗運営部」は、MDの実行部隊です。

多店舗展開するチェーンストアは、企画や計画も重要であるが、店舗での実行力や徹底力によって業績に大きな格差が生まれます。理由は、多店舗展開しているからです。たとえば、ある新商品や季節商品を〇月〇日に全店舗で陳列するという計画を立てたとします。陳列すべき当日に500店中8割の400店で陳列完了した小売業と、陳列作業が遅れて、500店中2割の100店でしか陳列完了しなかった小売業では、その新商品の売上には大きな格差が生まれます。

経験法則では、店内作業の徹底力は驚くほど低いのです。店頭実現力は2割(100店中20店しか実行されないという意味)程度の小売業も多く、店頭実現力を高めることが即、売上増、利益増に直結します。極端なことをいえば、チェーンストアの業績の7割は、店内作業の実行力・徹底力で決まるといっても過言ではありません。その店内作業を実行・徹底するリーダーがSV、店長なのです。

図表1に、店長の主要な「職務」をまとめてみました。既に述べた「完全作業の実行と徹底」「OJT教育」を最初に掲載しています。

店の状態や業績を良くするためには、店長はその店の経営者としてのリーダーシップを発揮する必要があります。図表1の「(3)コーチング、部下の士気向上(モチベーションアップ)、部下の育成」は店長の重要な職務です。また、何人の店長候補者を育成できたかも、店長の評価項目になります。

さらに、SV、店長の数値責任は「営業利益」の確保です。目標の営業利益を達成するために店長ができることの第1は、「(5)人時コントロールと人時生産性の管理」つまりコストコントロールです。そのために店長は、「(6)レイバースケジュール(稼働計画)の作成・実行」を確実に行う必要があります。

店長のリーダーシップやOJT教育によって、パート・アルバイトのスキルアップと「定着率向上」を実現できれば、少ない人員でも多くの作業量をこなせるようになり、「人の生産性」が向上。結果としてローコストオペレーションにつながります。逆にパート・アルバイトの離職率の高い店舗は、常にスキルの低い新人が多く、常に教育投資し続けなければならなくなり、人の生産性も低くなります。

 

中国「電子取引法」の施行でインバウンド・爆買いは終焉か!?

今年の1月1日から、中国で「電子取引法」が施行されました。インバウンド需要を牽引してきた中国人による「代理購買」を規制することが主な目的です。また、「メイドインチャイナ」の商品を、中国国内で優遇することも目的と考えられています。年明けから、インバウンド銘柄のマツモトキヨシ、伊勢丹などの株価が下落しています。DgS(ドラッグストア)の成長を支えてきたインバウンド・爆買いは終焉するのでしょうか?

野放しだった「代理購買」の規制強化が始まった

中国人による「代理購買」が始まったのは2006年頃といわれています。もともとは留学生や日本で働く中国人が帰国の際に、親類・知人に頼まれた有名ブランド品や化粧品を持ち帰り、差額で小遣い稼ぎをしたのが始まりといわれています。

その後、代理購買がビジネスとして急成長しました。2008年の北京オリンピック後に発生した「メラミン入り粉ミルク事件」(日本でも大きく報道)などもあり、自国製品を信用していない中国人にとって、日本のDgS(ドラッグストア)で販売している商品は、爆買いの格好のターゲットになりました。

日本に住む中国人バイヤーは、郊外のDgSチェーンを何店もハシゴ訪問し、紙おむつや粉ミルクを大量に購入し、コンテナで中国に送りました。さらに、代理購買を目的とした「爆買いツアー」が登場し、特定商品が爆発的に売れるインバウンド需要が急増しました。ツアーといっても、旅行客ではなくて、実態は代理購買業者だったわけです。

ほぼ野放し状態だった代理購買に規制のメスが入ったのは、昨年の中国の国慶節(10月1日からの7連休。その前の土日も含むと9連休)の大型連休を終えた旅行者が帰国する時でした。日本のテレビでも報道されましたが、上海空港では、海外から帰国した中国人旅行者が「税関」の携帯品検査を受けるために長蛇の列をつくっていました。彼らの大半は、「代理購買」を仕事とする業者や個人でした。

従来の税関検査は「おざなり」なもので、爆買い商品を簡単に中国国内に持ち込むことができました。しかし、昨年秋以降は、税関検査が厳しくなり、いちいちトランクを開けさせられて、帰国者の携帯品を詳細に検査し、免税範囲外の外国商品を見つけては関税をかけるようになりました。事実上の密輸ともいえる「爆買いツアー」による外国製品の輸入を減らすことが目的なのは明らかです。

代理購買を減らし、国産品重視に転換か!?

代理購買規制の流れの延長線上で、2019年1月1日に中国の「電子取引法」が施行されました。インターネット上で代理購入の商品を仲介する電子商取引などの「EC代理購買業者」も電子取引法の規制の対象となります。代理購買規制のポイントは以下の3点です。

第1は、代理購買を行うためには、商品の「買い付け国」と「中国」の両方で営業許可証を取得することが条件になりました。同時に両方の国での「納税」も義務付けられました。つまり、代理購買業者は、中国で納税するだけでなくて、買い付け国でも法人税や所得税を払う必要があり、代理購買ビジネスの旨味は大きく減少します。

第2は、中国語のラベルがなく、「国家認証認可監督管理委員会」が認証した工場で生産していない粉ミルクや保健品などは販売できないという規制です。メインドインチャイナを信用していない中国人に、「中国製の粉ミルクを買え」といっているわけです。

第3は、電子取引法に違反した場合は、「電子商取引業者」には最高で200万元(約3,240万円)の罰金、「代理購買業者」には最高で50万元(約810万円)の罰金を科すというものです。

個人旅行のインバウンド需要はまだまだ底堅いと思われますが、業者によるインバウンド・爆買いの売上は減少していくのは間違いないようです。