新生堂の完全キャッシュレス実験店、レジ関連作業を84分から34分に短縮

福岡県を中心にドラッグストア(DgS)・調剤薬局他の店舗を合計115店舗展開する新生堂薬局。2018年10月15日に九州では初となる、キャッシュレスDgS「ドラッグ新生堂スマートスタイル香椎駅前店」をオープンした。福岡市の「キャッシュレスFUKUOKA」というキャンペーンの一環の実証実験という位置づけだが、様々な発見があったという。

レジ後ろのサイネージで「現金が使えない」訴求

ドラッグ新生堂スマートスタイル香椎駅前店は福岡市東区の西鉄香椎駅ならびにJR香椎駅の徒歩圏にオープンした。駅前とはいえ周辺には住宅地が広がる郊外立地だ。売場面積は約40坪で、新生堂薬局の郊外標準店が250坪前後であるのと比べるとかなり規模が小さく、コンビニエンスストアのような使われ方を想定している店舗である。また、駅前であるがインバウンドを志向しているわけではなく、日常生活に沿った商品のみが品揃えされている。

売場面積は約40坪。平均的な店舗から品種や品目を絞っている。コンビニのように使える店舗を志向している。

一歩入店すると、レジの後ろの大型サイネージに赤地に白文字で「当店のレジでは現金が使えません」と大きく表示されているのが目に付く。入口付近には現金のチャージ機も3台並んでいる。この店舗は現金での決済は対応していない代わりに、クレジットカードはもちろん、各種電子マネーや交通系電子マネーでの支払いに応じる「キャッシュレス店舗」だ。

そのため、利用できる決済手段は幅広い。新生堂が提供するプリペイドマネーの「ハッピーカード」をはじめnanaco、WAON、楽天Edy、Apple Payなどの電子マネーや、nimoca、SUGOCA、はやかけん、Suicaなどの交通系電子マネーにも対応。d払い、LINE Pay、Origami Pay、楽天ペイ、PayPay、YOKA!Payなど、スマホ(QRコード)決済まで、多様な支払い手段を受け入れる。

店頭には3台のチャージ機を設置。うち2台がハッピーカード用で1台が各種交通系電子マネーや、nanaco、waon、楽天Edyへのチャージへ対応。

同社が「現金利用不可」という思い切った店舗を出店した背景には、福岡市の「キャッシュレスFUKUOKA」という取り組みがある。福岡市では「キャッシュレス FUKUOKA」というキャッチコピーのもと、消費者の支払い簡易化、民間企業の業務効率化、インバウンド消費の取り組み活動として、キャッシュレス化を推進している。この活動に賛同し、新生堂は完全キャッシュレス店舗としてこのドラッグ新生堂スマートスタイル香椎駅前店をオープンした。2019年1月に福岡市が開催する発表会で実験の結果を報告する予定になっている。

利用率はプリペイド35%、交通系電子マネー23%

新生堂は2013年4月からハウス型プリペイドカード「ハッピーカード」を導入している。店頭にある専用端末で現金をカードに入金して利用するもので、入金時と使用時にそれぞれポイントが貯まるので、お客にとってもお得な仕組みと人気だ。同社はもともとこのハッピーカードやクレジットカードの利用を推進していたため、既存店でも現金対それ以外の決済の比率が6:4と、他の小売業と比べてキャッシュレス比率が高い方だった。

ハッピーカードのアプリ画面。カードへの入金時と商品購入時にダブルでポイントがつくのでお客にとってはかなりお得に感じられる仕組み。

取材時は香椎駅前店オープンから数カ月で、使われている決済手段の傾向も見えてきた。最も使われている決済手段はハウス型プリペイドカードの35%、次いで交通系電子マネーが23%、クレジットカードが15%、WAONが10%、nanacoが5%。QRコード決済は各種合わせて5%程度にとどまる。

「誤差が無い」ことで、プレッシャーが無くなる

電子決済用の端末はPOSレジと連携しているので、レジ側の作業はお客が申告した決済方法をボタンで押すだけでよい。

キャッシュレス店舗を運営してみて、一番大きなメリットと感じたのは「現金の誤差が無いこと」だと、同社の代表取締役副社長兼COOの水田怜さんは語る。現金を扱っているという社員の心理的プレッシャーが軽減されるのは大きい。レジ締めをしてみて誤差が発覚すると、その原因を追求するのに膨大な時間が必要になるが、それも不要になる。従業員満足度向上のために、キャッシュレス化は一役買うというわけだ。

もちろん、店舗作業を大幅に削減できるのもキャッシュレスの大きなメリットだ。まだ実験の結果は出ていないが導入前の試算によると、それまで現金を取り扱っていたことにより、開店準備や精算、レジ点検、両替、レジ締めなどの作業に84分かかっていたところを、キャッシュレスにすることで34分にまで短縮できるという。レジにはマルチ端末を配備している。POSと連動しているため、お客様に決済手段を伺ったあと、決済手段を選択するボタンを押すだけでよいので、オペレーションも容易だ。

カードへのチャージ機があるため店内から現金がなくなったわけではないが、釣銭準備や現金管理コスト削減への影響は大きい。

キャッシュレスの説明から、接客につながる副次効果も

新生堂薬局によれば、レジ応対のスピードを、現金と現金以外の決済手段で比較したところ、一人当たり平均31秒ほど短くなったという。お客にとっても、いちいちレジで財布の中のお札や小銭を出す必要もなくなるので、レジ待ち時間が短縮され、顧客満足度向上につながる。自分の支払いが早く済むのもうれしいが、レジで自分の後ろに並んでいる他のお客を待たせずに済むというのもありがたい。

5年半年前、ハウス型プリペイドカードを導入した際に、ご高齢の方はあまり利用されないのではないかと考えていたのですが、意外とご高齢の方のほうが利用率が高いという結果になりました。小銭を出さずに済むのが便利という理由からのようです。いつもここの店で買物をするのであれば、1万円や5,000円をチャージ機やレジでチャージしたあとは、現金を使わずにスピーディーにレジを通過することができる。一度便利さを味わうと、もう後戻りはできません」(ドラッグストア事業部部長 馬場大輔さん)

また、キャッシュレス店舗というこれまでにないオペレーションを店舗に導入したことにより、お客に使い方などを説明するための接客の時間が増えたという。

ャッシュレスというと、店舗が機械的になるというイメージがありますが、説明をするためお客様とお話をする機会が増え、その流れでお悩みを伺うこともできるようになりました。逆に温かみのある接客ができるようになったように思います。精算業務の時間も減り、作業効率もよくなっています」と同店店長の山原雄太さんは語る。

「キャッシュレスは全く世間に浸透していない」

キャッシュレス=交通系電子マネーというイメージを持たないお客も多い(写真はイメージです)。

完全キャッシュレス店舗を運営したことで、気づかされたことは多い。その一つが、「キャッシュレス」の世間での浸透度の低さである。「キャッシュレスというものが、全く世の中に浸透していないということがわかりました」と水田さんは語る。

オープン日に「キャッシュレス店舗です」とお伝えすると面倒くさいと断られる。しかし、SUGOCAやnimoca、はやかけんなどの交通系電子マネーも使えることをお伝えすると一転して「それも使えるの?」と驚かれることが多いのだという。

「キャッシュレス」=「現金が使えない」=「ハウス型プリペイドカードを作らされる」と思い込んでいる人は多い。「交通系電子マネー」で店舗の支払いができるとは思っていない人が大半なのである。

さらに中国のようにキャッシュレスの決済手段がAlipayとWeChatPayが大半というような状況であればいいのだが、日本は決済手段が乱立していてわかりにくいというのもお客が混乱する一因となっているようだ。

「キャッシュレス」をお客にいかに伝えるか

ちなみに、同社がキャッシュレス店舗を出店するのに香椎駅前という立地を選んだのは、大学が近くにあるため若者が多く、60歳以上の人口が20.8%と他の地域と比較して高齢者が少ないことから、お客様の多くがキャッシュレスという新しい概念に親しみやすいだろうと考えてのことだった。しかし実際は高齢者でも交通系電子マネーの保有率は高く、一度利用さえしてもらえれば、継続利用に支障はないようだ。

順調にスタートしたように見える完全キャッシュレス店舗であるが、現在のところ新生堂は今後の水平展開を考えていない。今でも1日5名程度は「現金が使えない」と聞いて買物を途中でやめて帰るという。まだまだ現金だけでお買い物をしたいというお客様のニーズは根強い。将来的にキャッシュレス比率は50%程度まで引き上げたいと考えているものの、完全キャッシュレスへの道は遠い。

なお、意外なことにお客へキャッシュレスであることを伝えるための手段としては、レジ上や店頭のサイネージでの「現金は使えません」という訴求が中心で、店頭を見ただけではこの店舗がキャッシュレス店舗であるということはわからないようになっている。

ドラッグ新生堂スマートスタイル香椎駅前店店頭。キャッシュレスという言葉に抵抗感を覚えるお客もいるためキャッシュレスであるという告知文等はあまり目につかない。

「オープン時には、九州発のキャッシュレス店舗オープン!と銘打って店頭で訴求していたのですが、それを見て『私とは関係のない店だ』と思われたお客様も少なくなかった。我々はキャッシュレスという言葉はネガティブワードだと思っており、お客様に対してはなるべく出さないようにしています」(水田さん)。

キャッシュレス店舗の水平展開こそ行わないものの、この店舗で得られた経験は、他の店舗に波及させる予定だ。お客様への説明をどのようにすべきなのか、レジのオペレーションはどうするのかなど、様々な方面から検討し、現在展開している49店舗に広げて、キャッシュレス比率を上げていきたいと考えている。

今後キャッシュレス比率を高めるためには、お客にキャッシュレスであることをどう伝えていくか、どのような決済手段を選ぶべきなのかなどについて実験を続け、検討を重ねる必要がある。小売業の自己満足にならない店頭コミュニケーションを設計することに注力すべきだろう。

代表取締役副社長兼COO
水田怜さん

ドラッグストア事業部部長
馬場大輔さん

店長
山原雄太さん

DgS顧客満足度調査2018、選ばれる店の条件は「人の要素」だった

2012年にスタートした月刊マーチャンダイジングの「顧客満足度調査」。月刊マーチャンダイジング2018年12月号に掲載した今年の調査では39企業、509店舗が対象となった。この記事では、月刊マーチャンダイジングに掲載された記事の中から、今年の調査で判明した、「選ばれる店の条件」について紹介する。

基本的な調査項目と総合満足度に対する評価を集計

図表1は調査対象の企業と店舗名(屋号)の一覧である。ホールディングス(HD)傘下であっても異なる屋号で営業している企業は個別に調査している。また、調査店舗は9~18店舗の間で各企業の店舗数に比例させた。(図表はクリックで拡大可能)

調査内容は大きく2つに分けられる。

①基本的な調査項目:「店舗設備・クリンリネス」「基本接客・商品知識」「商品陳列・品揃え」「レジ対応」の4カテゴリー、合計32問、いずれも3点満点の基本設問。

②総合満足度に関する評価:「この店で買物することを知人に勧めることができますか?」という問いに対する回答を0~10の11段階で評価してもらった。

設問の全体像は、月刊マーチャンダイジング2018年12月号をご覧になってもらいたい。

各設問を総合満足度との相関から4つに分類

各調査項目の点数、総合満足度の点数に加えて重要なのが各設問と総合満足度との「相関」である。

ここで、今回の調査で重要になる「相関」と「相関係数」という概念について簡単に解説する。

要素Aが高い(低い)とき、要素Bも高い(低い)といったように2つの要素に関係性があるとき2つの要素には相関があるといえる(図表a)。

たとえば、「身長が高いと体重も重い」「塩分の摂取量が多いと血圧は高い」など、2つの要素(数値)の関連性を意味する。日常生活でもよく用いる考え方だが、それを数値化したものが「相関係数」だ。

本調査では、ある調査項目の評価が高いとき総合満足度も高ければ、その調査項目は重要(相関係数が高い)と考えた。正の相関係数は0から1の間に収まり、目安は図表bのようになる。

さて、図表6にある青いドットと番号は6〜37までの設問番号である。横軸は総合満足度と調査項目との相関係数を偏差値化したもので、数値が大きいほど、つまり右にあるほど総合満足度へ与える影響は強い、相関が強いことになる。

そして、図表6ではさらに各設問を4つの分野に分類した。戦略的、効率的に顧客満足度を改善、強化するためには、ポートフォリオで各設問がどこに位置づけられているかを俯瞰的に見て考えることが重要となる。

①重点維持分野:相関係数は高く、個別の満足度も高い。つまり、総合満足度に影響を与える項目の点数が高く、個別満足度(図表6タテ軸の数値)でも高い点数を得ている分野だ。

たとえば、設問番号29、「問い合わせした店舗従業員は丁寧に対応したか」という項目は相関係数の偏差値が75と今回もっとも総合満足度との相関が強かった。さらに、この項目は個別満足度でも56と目安の50を超えて好成績を出している。29に代表されるように「相関係数が高く」「個別満足度」も高いものは、重点的にその状況を維持すべき分野となる。一般的に取組み優先順位は4分野のうち2番目。

②維持分野個別満足度は高いが総合満足との相関は低い分野。できている項目なので維持には努力すべきだが、総合満足度との相関が低い。一般的に取組み優先順位は3番目。設問番号8「入口の段差への配慮」、個別満足度は61とかなりの高レベルだが、総合満足度との相関は35と目安の50を大きく下回る。入口の段差に配慮があっても、その店で買物することを知人に勧めようとはあまりおもわないということだ。

ベビーカー、車いすなどの通過頻度はさほど高くなく地味な項目ではあるが、整備は必要。ベビーを持つ母親は優良顧客であることが多いし、車椅子対応があるか否かは店舗の基本姿勢を表しており、長期的な地域の支持には影響を与えるだろう。ただし、優先順位から見れば、入口段差よりも先に着手した方がよい項目はあるはずだ。

③改善分野:個別満足度が低い、総合満足度との相関係数も低い。つまり、現状できていないのだが、そこに注力して改善しても総合満足度との関係は弱いので、一般的に優先順位は4番目の分野である。

設問番号31「牛乳の賞味期限の管理は徹底されていたか」は今回の調査でもっとも総合満足度との相関係数が低かった。これは、賞味期限の種類が1~3個のうちいくつあるかで、管理の徹底ぶりを見る調査だが、複数あってもそれほど不快や不信の念は持たないということだ。

④重点改善分野相関係数は高いが、個別満足度が低い。総合満足度に強い影響を与える項目にもかかわらず、点数が取れておらず、即改善が必要。一般的に、取組み優先順位は第1位の分野である。

設問番号27「従業員は常に顧客を意識した行動がとれていたか」という項目は、相関係数は71と非常に高いが個別満足度では44と目安の50に達していない。最大限の努力を払って優先的に改善すべき項目となる。この分野を上げることが顧客満足度を上げることにつながるので、特に重視すべきである。

今回は39社、509店舗の傾向を出したが、企業個別で調査をすれば、自社の顧客満足ポートフォリオをつくり改善・強化策を立てることができる。

総合満足度へ影響を与えるのは問い合わせ対応など「人の要素」だった

図表8は、総合満足度に影響を与える調査項目の上位10項目である。1位は問い合わせへの対応。2位は滞在時間中の従業員の態度、行動、3位が風邪薬の相談対応、4位が従業員の挨拶、5位会計時の挨拶、6位ファンデーションへの問い合わせ対応と、上位6位までが人の要素という結果になった。

こうした相関関係から考えると、従業員は常にお客を意識したキビキビとした態度をとり、いらっしゃいませの挨拶は欠かさず、聞かれたら答えられるという店舗運営態勢によって総合満足度は上がるということだ。

DgSは来店客との接点が持ちやすく、人による差別化がしやすい業態だ。接客や勤務中の態度・行動など「人の要素」は、小商圏の中で同業態、他業態に優位性を持てるところなので、積極的に磨くべきだ。特に「セルフ販売」という基本は持ちつつも、聞かれたら対応できる、なおかつその対応が好印象を与える、購買につながるという態勢づくりは重要だろう。しかし、人手不足のなか、この態勢づくりはそれほど容易ではない。

ちなみに「声掛け」に関しては、医薬品売場での声掛け(設問番号19)の相関は45、化粧品売場での声掛け(同25)の相関は42といずれも50に届いていない。これも「人の要素」ではあるが、声掛けがあったからといって、総合満足度が高くなるわけではないという結果が出ている。

しかし、営業上は声掛けから、カウンセリングに発展し購買に結び付くこともあるので、声掛けも軽視してはいけない項目といえよう。

いかに店を開け地域のニーズに応えるか~北海道胆振東部地震を乗り越えたツルハ【後編】~

2018年9月6日に起きた、北海道胆振東部地震を乗り越えたツルハの状況のレポート後編。相当な混乱下にあったにもかかわらず、早期に通常営業に戻ったツルハ。東日本大震災という未曽有の危機での経験が生きていたという。(月刊マーチャンダイジング2018年12月号より転載)

CASE2 札幌市豊平区・白石区エリアの対応

営業可能な店舗に優先順位を付け エリア全体の最適を考える

札幌市豊平区、白石区にある10店舗を担当するSV佐藤正也氏も地震発生時は自宅で就寝中だった。9月6日はツルハグループの全国のSVたちが拠点に集合してテレビ会議を行う日にあたっており、佐藤氏は10店舗の営業続行と会議への参加、両方を考える必要があった。そのため、軽々に店を回ることは得策ではないと考え、しばらくは自宅待機の態勢を取った。近隣のSVとグループLINEを組んでおり、SV間の連絡や情報共有は密に行っていた。店長たちからはそれぞれが店に向かうという連絡を受け、店舗に着いたら店の状況を写真で送るように指示を出した。

地震発生から1時間ほどたったころ、上司から当日のSV会議はキャンセル、店舗のサポートへ注力するようにという連絡を受けた。

佐藤氏は続々と届く被害状況の写真を見ながら、被害の規模、店長の店舗運営能力などを考慮して、早期復旧ができそうな店を担当10店舗の中から3、4店舗ピックアップ、まずはそれらの店舗の復旧と当日営業へ集中する方針を立てた。

午前4時15分ころ、優先順位の一番目に挙げた白石区にある菊水元町店に到着。店長とアルバイト数人が既に店に着いており、片付けを始めていた。この店は従業員の奮闘のおかげもあり6時ころには開店のめどがつき、佐藤氏は隣の菊水上町店に移動する。

「菊水上町店の被害が一番大きく、食品、酒の扱いもあったので、酒瓶が割れたりして店内はかなりダメージを受けていました。ここにもパート・アルバイトの方が応援に来て、復旧作業をしてくれました。店長方の日ごろのコミュニケーションや地域のお客さまへのおもいを伝えていたたまものだとおもいますが、どの店舗でも早朝、なおかつ自宅も被害があったにもかかわらず、従業員の方が大勢開店のために、店に来てくれました。なかにはお子さんを連れて店に来てくれた女性もいて、そこは本当に感謝しかありません」

菊水上町店も集まった従業員の働きにより、午前8時には営業することができた。佐藤氏が担当する10店舗のうち、1店舗だけはテナント出店しているオーナーの許可が下りず営業できなかったが、残りの9店舗はすべて当日営業をすることができた。

非常時には精算にも使えるハンディターミナル「POT」
什器の底部に付ける免震装備 揺れに応じて床をスライドすることで転倒を防止する。今回の地震でもこの装備のある棚は転倒しなかった

日々の意識づけこそが災害対策のカギになる

停電で信号機も消えており、交通に支障が出ることが予想されたため、佐藤氏は、その日担当エリアの一部地域にとどまり、そこで連絡を受け指示を出すという態勢を取った。上司からは細かく現状の共有や指示が出ており、それを必要に応じて店舗に伝え、店舗からの質問や相談に応じるというのが、開店後の主な作業になった。

停電に関して、翌日7日午前に10店舗中大半の店は復旧したが、白石区は復旧が遅れ、すべての店で復旧したのは、地震発生から2日目の8日(土)の朝だった。そこからは、佐藤氏は短縮営業から通常営業に戻るためのシフト態勢がもっとも大きな関心事となる。

「店を復旧させるために、店長や店長代行をはじめ、ムリして長時間の勤務を続ける従業員もいました。そうした者は早めに休みを取ったり勤務時間を短くしたりして、通常の営業時間に戻ったときにムリなく店を回せるように各店に指示をしました」

パート・アルバイト従業員から役員まで総出で復旧作業が行われた

相当な混乱下にあったにもかかわらず、早期に通常営業に戻ると予想して準備した根拠は何かを聞いた。

「東日本大震災のとき、私は札幌市にある店舗で店長をしていました。そのとき東北の店が大変な状況にもかかわらず店を開け、地域のお客さまのために頑張ったということは聞いていました。ですから、今度は自分たちの番だとおもい、そのための準備をしました。こうした考えに店長や従業員たちがだれ一人後ろ向きなことをいわず、前向きに仕事をしてくれたことは、本当にありがたいことだとおもっています」

ここでも、先の震災時の経験という「財産」が生かされている。東日本大震災という未曽有の災害を経験したツルハだからこそこれだけの素早い対応ができたともいえる。

それでは、東海地方や四国中国地方などで、東日本大震災に匹敵するような大地震が相当に高い確率で起こるといわれている状況にいかに対応すべきか。

そのひとつのヒントは、POTの毎日の作業や安否確認システムの訓練にあるだろう。こうした日々の作業や定期的な訓練を通じて、災害はいつか起こるということを従業員に「刷り込み」、その対応を自律的に考えてもらう、こうした態勢を取ることが、災害への対策、早期の営業開始で地域の生活を支えることにつながる。

〈 取材協力 〉

ツルハ北海道第一店舗運営部
スーパーバイザー 登録販売者
佐藤 正也氏
ツルハドラッグ千歳高台店
店長
保木 政人氏

いかに店を開け地域のニーズに応えるか~北海道胆振東部地震を乗り越えたツルハ【前編】~

2018年9月6日(木)午前3時7分、北海道胆振(いぶり)地方中東部を震源地とする地震が発生。厚真町(あつまちょう)鹿沼で最大震度7を観測するなど、揺れの大きさでは日本で発生した地震のなかでも最大規模を観測した。2011年3月11日に発生した東日本大震災では東北地方を中心に長期にわたり大きな苦難を経験したツルハが、今回の災害をいかに乗り切ったか、2人の現場責任者への取材をもとにリポートする。(月刊マーチャンダイジング2018年12月号より転載)

CASE1 千歳高台店の被害対応

午前3時7分地震発生 家族の無事確認後店舗へ向かう

地震の発生した胆振地方は北海道の南西部に位置し、室蘭市を中核とし、登別市、伊達市などで構成される西部と、苫小牧(とまこまい)市を中核とする、白老町、安平町(あびらちょう)、厚真町などで構成される東部とに分かれる(図表1)。

[図表1] 地震のあった北海道胆振地方と周辺

今回は胆振地方東部を震源地とし、内閣府の発表によると各地の震度は以下のようになる(5強以上のみ表記)。震度7/厚真町、震度6強/安平町、むかわ町、震度6弱/札幌市東区、千歳市、日高町、平取町(びらとりちょう)、震度5強/札幌市清田区、白石区、手稲区、北区、苫小牧市、江別市、三笠市、恵庭市、長沼町、新ひだか町、新冠町(にいかっぷちょう)。

取材した千歳高台店がある千歳市でも一部地域では震度6強の大きな揺れに見舞われている。同店店長の保木政人(ほきまさと)氏に発生当時からの状況、対応を聞いた。

保木氏は店舗から60kmほど離れた札幌市北部に在住、発生時は自宅で就寝中だった。強い揺れで目を覚ますと、まずは家族の無事を確認し、テレビをつけ、震度や被害状況などの情報確認を行った。ツルハのマニュアルでは営業時間外に震度5弱以上の地震が発生した場合、店長は自身の安全を確保したうえで店舗に向かうように決められているが、保木氏は震度4以上の地震が起これば状況確認のために店舗へ向かうことを普段から「自分のルール」として決めていた。

同社では地震・停電が発生した当日から、テナント出店するオーナー企業の許可が下りなかった店舗を除き、被災した店舗を含むツルハ全店が営業している。こうした強靱ともいえる災害対応能力は、先の震災の経験をひとつの「財産」として、伝え続ける同社の姿勢とは無縁ではないだろう。保木氏が普段から地震発生に対する自分なりの基準や対応策を持っていることからもそれはうかがえる。従業員の意識の高さが初動の速さ、連携の強さの背景になっていることは確かだ。

保木氏の行動に話を戻すと、テレビで情報確認中に停電、懐中電灯を頼りに身支度をして午前4時ころに自宅を出て店に向かった。移動に使う自家用車は、幸いガソリンを満タンにした直後だったので、当面の移動に不安はなかった。今回、地震直後の停電に見舞われた環境で、自動車は車載ラジオやテレビなどによる情報収集や、スマホ充電の手段として活躍することになる。

従業員12人が店舗に集結 当日開店の準備を進める

保木氏が途中で連絡をとった店長代行は、停電で自宅車庫の電動シャッターが開かず移動することができない状態だった。停電により、途中の信号もすべてダウン。ガソリンスタンドも電源がないことで給油機器が作動せず大半の店で営業できないなど、電気が使えないことは日常生活はもとより、地震からの復旧にも大きな影響を与えた。

「5時前に店に着くと、おもった以上に被害は大きかったです。まず、自動ドアがゆがんで普通の力では開かない。どうにかこじ開けてつくった小さい隙間から中に入るという状況でした。店内は至る所で、商品が棚から落ちており、酒売場では通路に落ちて割れた瓶から中身がこぼれ出していました。とりあえず応援が来るまで作業しやすいように通路を確保しようと、散乱している商品を通路からどける作業を行いました」

もう一人の社員を通じて、4時半ころに学生を除くパート・アルバイトへの応援要請をしており、保木氏が作業を始めてから30〜40分の間に、三々五々計12人が店に集合した。

「本当にありがたいとおもいました。皆さん揺れの大きかったエリアに住んでいて自宅も大変なのに、在籍している従業員のうち、半分以上が店に駆けつけてくれました。この協力がなければ店は開けられませんでした」

床に散乱した商品を、店内数ヵ所に置いたオリコンに入れることから作業を始め、そこから棚に戻せるものは戻して徐々に店を元の状態に近づけた。9月6日、札幌市のデータになるが、日の出時間は午前5時4分、5時過ぎから始まった店内の復旧作業は照明のない状態で、早朝の薄明かりの中で行われた。

7時を過ぎるころから、店外には物資を求める人が開店を待ち、列をつくり始めた。

「店の外にはいつの間にかお客さまが集まり開店を待っていて、少しでも早く店を開けなければいけない状況になっていました。スーパーバイザー(SV)にも連絡して8時の開店を決めました。大勢のお客さまが店内に一度に入ると危険ですし、余震の心配もあるので、風除室に机を並べそこで注文を取り、商品を取りに行って渡すというスタイルで営業しました」

地震当日の朝、店舗の前には開店を待つ人で行列ができた

東日本大震災では、今回同様、地域のために店を開けるという店長の判断で震災直後から営業した店は多かったが、会計に際してはレジがダウンしていたので、100円、200円など端数の出ないおおよその売価で販売する、いわゆる「ザルレジ」というやり方を取らざるを得なかった。

その教訓を生かして、ツルハでは発注などに用いる「POT(ポット)」と呼ばれるハンディターミナルでバーコードをスキャンすれば精算できるシステムを採用していた。POTで精算するためには、毎日担当者が売価情報をマスターからダウンロードする必要があり、フル充電に加えてPOTの非常時への準備は店舗のルーティン作業となっている。この作業も常に災害時対応を従業員に意識させるために役立っている。

ちなみに、POTの充電が切れた後は最終手段である「ザルレジ」を行う必要があり、500㎖の飲料100円、2ℓ入り飲料200円といった「ザルレジ」対応の売価感を持つことも同社の店長レベルでは必要とされている。

9月6日、地震発生当日は、水をはじめとする飲料、カップラーメン、パンなどの即食系の食品、電池、カセットボンベ、携帯電話用のモバイルバッテリーなど災害時関連の商品が午前中早々に売り切れになる。

「売り切れになった商品も多いのですが、お客さまは落ち着いており、お叱りの言葉はそれほどありませんでした。それよりもこんなときに店を開けてくれてありがとうという感謝の言葉が多く、そこは苦労したかいがあったとうれしかったです」

電気が復旧せず、欠品も多くなり、早朝から作業を続けている従業員の疲れもあったので、本部指示により、その日は日没前の16時で営業を終了した。

当初は復旧までに2週間を要するとまでいわれた北海道全域の停電だったが、関係各所の努力もあり、千歳高台店では2日目朝には電気が復旧した。しかし、40時間以上の停電で冷凍食品、冷蔵食品はすべて廃棄しなくてはならなかった。

また、地震、停電の影響で発注、納品が機能せず、2日目は食品やトイレットペーパー、災害時関連の商品が欠品するなか、洗剤など日雑商品が中心に売れていった。

物流が動きだし、商品が入ってくるようになったのは、地震発生から5日目を過ぎたあたりからだった。TGMD(ツルハグループマーチャンダイジング/商品部相当)からは、カテゴリー、アイテムに関して、どの程度発注に応えられるレベルにあるか密に連絡が来たので、ムダなく的確に発注できたという。

当日店内、プロモーションの商品も転倒、早朝の店内は薄暗い

幹部社員による対策会議を実施 役員たちも復旧作業に加わる

八幡政浩(やはたまさひろ)執行役員北海道店舗運営本部長は、東日本大震災発生時、宮城県、福島県を統括する店舗運営部長だった。地震発生当日の本部の対応を八幡氏に聞いた。

「東日本大震災の経験があったので、今回は私としても会社としても冷静に対応できたとおもいます。当日は地震発生直後に堀川政司社長の統率で、本部長以上の幹部社員が本社に招集されました。東日本大震災を教訓にして、パート・アルバイトに至るまで全従業員の安否確認をするシステムが導入されており、幹部社員の本部集合とほぼ同じタイミングでそれが発動されました。

集まった本部社員で対策会議が開かれ、堀川社長から基本的な指示があり、経験もあることから、以降の対応は私に一任という形になりました」

東日本大震災では津波による被害が大きかったため、八幡氏はまず海岸に近い店舗を担当する部長、および海岸に近い場所に住んでいるSVに電話して避難するように伝えた。その後、津波がないことを知り、その旨も改めて連絡した。

八幡氏が連絡を取ったのは、店舗運営部の部長と一部SV、指示や情報はそこから下に下りていった。まず、その日休業はせず店を開けるという方針を出し、何かあれば連絡を受ける態勢を取り、その後は幹部社員とともに近隣の店舗の復旧に向かった。

営業続行という基本方針は会社全体で共有されており、経営幹部からの指示は最小限で済んだ。また、社長、役員たちも店舗復旧の作業に加わっており、店を開けるためにトップから末端までがある意味自律的に動いているのが、同社の地震対応のなかでも特筆すべき点である。

酒類の瓶が割れ、中身が流れ出た店内

 

一品ずつ、一店ずつ積み上げてブランドを築き上げてきた「成城石井」のプロセス

毎日の商売に刺激を与える一冊をご紹介する「商売に効く本棚」。第2回目の今回は、成城石井の創業者 石井良明氏の半生を描いた自伝、「成城石井の創業ーそして成城石井はブランドになったー」をご紹介します。地元の人に愛される店としてどのように同社がブランドを作ってきたのかを学びましょう。(流通ジャーナリスト:流川通)

年収200万円の人も、2,000万円の人も買物をしたい店であるということ

日本を代表する都市型スーパーマーケットに成長した成城石井創業者である石井良明氏による小売ブランドづくりの思想と実践が詰まった好著。

本書は、小売業のカリスマ的創業者の名だたる著作に劣らず読み応えがある。ネット産業隆盛のさなかにあって、リアル店舗の価値を訴求し、一品ずつ、一カテゴリーずつ、そして一店ずつ積み上げてブランドを築き上げてきたプロセスを丁寧に辿っているからであろう。

成城石井が1号店の成城店をオープンさせたのは1988年。2号店はなんとその12年後に開店している。この長い年月の中で、試行錯誤を繰り返しながら、都市部における小型食品店経営のあり方(駅ナカ立地の開発)、核商品、核カテゴリーづくり(ワイン、惣菜など)、品揃え、プライシング(価格政策)、人材育成、設備投資といった基本戦略とコンセプトの根幹ができあがる。

成城石井は年収2,000万円の人をターゲットとして品揃えを行っているという。年収2,000万円の人は日本の人口の中でもほんの数パーセントだ。では成城石井に訪れるお客は皆、そんな高収入な層だけなのだろうか。答えは「ノー」である。

たしかに成城石井が提供する食材の数々を支持するのは高所得層であり彼らは上得意客だ。飲食店を経営するプロのお客も多い。おいしい飲食店を探すことを楽しむ層は、自宅でも同様の楽しみを得たいだろう。これは従来のスーパーマーケットが開発してこなかった顧客層だ。

一方で年収200万円の若い人でも、ときにお祝い事で彼女をもてなしたいこともある。そんなときはすこし奮発してグレードの高い商品を買うだろう。また収入は限られるが、ワインとチーズにはお金をかけたいというライフスタイルを持つ層もいる。彼、彼女らの購買動機をも併せて、ひとつひとつの商品をマス化してきたのが成城石井のMDの基本だ。成城石井には、年収2,000万円の人が選びたいワインがあり、チーズがあり、スモークサーモンがあるのだ。

ちなみに副題にある「ブランド」を英英辞典で調べると、「自分ではなく他者がその違いを語ることができる」という意味を持つ。

石井氏の言葉を借りれば、「高品質を追求するが、自分からは物語らない、お客様が語ってくれることに意味がある」と同義だ。

独自の体験価値を持つ商品がお客に語られるようになってはじめて「ブランド」となる。そして自分たちの街に成城石井があってほしい…地域住民に熱望されての出店こそ、小売がお客から与えられる最たる栄誉だろう。

冒頭で、英国の新聞記者が成城石井を評して、スーパーマーケット界のルイ・ヴィトンにたとえたというが、これはモノを知らぬ記者なのだろう。石井氏も思わず嬉しくなってしまったのだろうが、あえてたとえるなら、米国の人気スーパーマーケットチェーントレーダージョーズと米国の優れたローカルスーパーマーケットの特性を組み合わせて独自のポジションを築き上げているスーパーマーケットと言えないだろうか。

成城石井の炭酸水売場。硬度が高い海外の天然炭酸水が一同に揃う。珍しい国産の天然炭酸水(軟水)も発掘し、アピールする。硬水から軟水までまた天然と強炭酸を揃え、炭酸水の選択肢を増やし、尚且つ成城石井の核カテゴリーのひとつであるリキュールの割材のバリエーションを増やし、自分好みのテイストを見つけられるようになっている。核カテゴリーは品揃えのデプス(深さ)を訴求し、別のカテゴリーとも連動させながら目的来店性(デスティネーション)を創り出すことに成功している。

(石井良明著 日本経済新聞出版社)

IoTによって「店頭欠品」をリアルタイムで可視化できる

2018年11月12日、シンシナティのクローガー社(米国最大のスーパーマーケット企業)を公式訪問し、情報システムのR&D(研究開発)部門の幹部の取材をしてきました。詳細は、月刊マーチャンダイジング誌上にて発表しますが、テクノロジーの発達によって変化する小売業の未来の一部を紹介します。

画像情報、商品の位置情報、在庫情報がすべて統合・可視化できる

IoT(Internet of Things)時代とは、すべてのモノやビッグデータがインターネットにつながる社会のことです。IoT社会の到来によって、小売業の「売り方」や「作業」は劇的に変化します。

たとえばクローガーは、棚上の「カメラ」を活用して、「店頭欠品」の可視化の実験を行っていました。監視カメラの画像情報だけでは、欠品状況の可視化はできません。カメラの「画像情報」、その商品が棚のどの位置に陳列されているかという「位置情報」、その商品が何個あるかという「理論在庫情報」がすべてIoTでつながることよって、店頭欠品情報を可視化することが可能になります。

カメラで撮影されたゼロ欠品の棚には、A商品が陳列されており、その理論在庫がいくつあるというビッグデータがすべて紐づけられます。その欠品一覧をデータ化したものが以下の写真です。右側のOOSという言葉は、「out of stock」の略で、棚に在庫の存在しないゼロ欠品商品のことです。写真の赤線より上のOOS商品は、棚在庫はゼロであるが、理論在庫上は在庫があるはずの商品です。棚は欠品していますが、バックヤードや棚上に在庫があることが推測できます。


写真のOORという言葉は、「out of reach」の略で、その商品が本来あるべき位置にはなくて、手の届かない棚の上部に在庫があるか、もしくは棚の下部に陳列されている商品のことです。このように、欠品状況、陳列位置の乱れを可視化できるのは、「画像情報」「位置情報」「在庫情報」の3つのビッグデータがつながっているからです。

クローガーでは、OOS情報をもとに追加発注をかけたり、陳列位置を変更したり、バックヤード在庫を確認する作業を、毎日決められた時間に実施しているそうです。IoT時代の到来で、現場の欠品作業も大きく変化します。

メーカーとの店頭実験で店頭起点のマーケティングの高度化を目指す

小売業が消費税増税をはじめとする「コストプレッシャー」をどうはねのけるべきなのか。前回は小売業がメーカー、卸売業と協業する際に気をつけたいポイントを挙げました。今回は、店頭活動やリベートについての考え方を提案します。(月刊マーチャンダイジング2013年7月号より転載)

店頭活動の高度化でリアル店舗の価値は高まる

メーカーのマーケティング部門は、そのメーカーでもっとも予算を持っている。小売業は自らの店頭においてショッパーリサーチを今後より強化していく必要があるだろう。そのためには、優れたメーカーのマーケティングと協働して、販売促進活動に上手く活用することをお勧めする。

マスメディアによる広告は、以前のような効果がなくなりつつあると感じているメーカーは少なくない。店頭が消費者の商品やサービスに対する認知度・理解度を高める重要な媒体になってきていることは賢明な月刊MDの読者諸氏であればご存知のはずだ。

たとえば店内広告に対して広告費をインセンティブとして考えても良い。一方、ネット販売に対してリアル店舗の優位性を醸し出す「エンターテインメント性」の強化は今後重要な施策となろう。グローバルチェーン、メーカーでは「リテールテインメント」と呼ばれている製販協働の店内広告活動である。

これは知らず知らずのうちに、売場の楽しさに貢献する販売企画だが、重要なのは、戦略的に計画的に継続的に、そして、よりショッパーの心をひきつける魅力的な、差別化されたリテールテインメントを実施することである。

プロモーションも日常的に実施されているが、自社に来客しているお客様の特性をメーカーに調査してもらい、店頭実験を協働することにより、カテゴリー成長の促進を目的にプロモーション展開することが有効である。

一般的なメーカーが、消費者調査に使用している予算は大きな金額だ。そのうちの予算を何店舗かでブランドを購入するショッパーリサーチにあてれば、メーカーと協働してカテゴリーディシジョンツリー(意思決定の相関を判断する樹状図)を作成することも可能になろう。

そして、顧客データや店頭在庫データも活用し、店頭実験を行い、ショッパー起点の買いやすい定番売場を検証し、成功事例をスピード感もって、水平展開することが店頭起点のマーケティングの高度化へ結びつくのである。

POP等の販促物も、メーカーとの協働だ重要だ。小売業の意思と意図を反映させたPDQ(Pretty Damn Quick:プロモーションで使用されるエンド用アウターカートン)、RRP(Retail ReadyPackage:定番で使用される定番棚用インナーカートン)を作成すれば、陳列作業の効率化と、エンド管理の効率化をすることができる。

日本でも大陳キットがあるが、これは主にメーカーの供給事情に基づいたものが多いの対して、PDQやRRPは小売業のニーズに基づいて、協働で作成することが大きな違いである。

リベートをいかに戦略的に活用すべきか

最後に営業活動に関しての改革手順について述べよう。

ここで問題にしたいのは販促協力金「リベート」の扱いである。「リベート」はこれまで商品を扱いさえすればつけられるもの、あるいは売上の補てんというような後ろ向きの意味合いで使われることが多かったのではないだろうか。月刊MDでは、このようなネガティブイメージを払しょくするために、「リベート」という言葉よりも売上達成、あるいは利益アップのための機能フィーとしての「インセンティブ」という言葉を当てたい。

よって、小売業がよく口にする「他小売業に、うちより良い販促協力金をメーカーが提示しているのではないだろうか?」という疑問は販促協力金を「リベート」と思っているからである。メーカーの取引制度に関して、基本戦略はオープンになっているが、このリベート問題は残念ながらわからないとしか言えない。

というのは、目標達成(販売金額)・エンド展開・チラシ・数量インセンティブなどに加え、主に、メーカーのブランドが予算化しているブランド育成のためのインセンティブを絡めて、いくつものパターンとなる営業活動を実施しているのが通例だからだ。

例外メーカーもあるが、一般的には、メーカーのコンプライアンスが厳しくなってきている昨今、整合性のない「リベート」の運用は、出来なくなっている。このような状況下で、いかに整合性のある機能フィー、すなわち「インセンティブ」をメーカーから引き出し、利益に結びつけるかが、重要なアクションの一つとなる。

大半のメーカーは、ブランド育成のためのインセンティブは積極的であり、最近は、定番売場の強化に結びつく販促を重視するメーカーも多い。お客様の店頭での購買意思決定率は意外に高い。カテゴリーによってその数値は異なるが、小売業は、そういう重要な数値を把握しなければいけない。それらの数値に基づいて、利益率を絡めた定番商談を行うことは、小売業にとって利益が高まる。

新製品、改良品に関しては、メーカーも広告戦略、販促に非常に力が入るので、初動販売の成功を実現すべきである。初動販売の成功というのは、小売業にとってもショッパーロイヤルティが高まることにもなる。

また、メーカーは、現状新製品に多くのリベートを予算化しており、新製品の早期展開を条件に、メーカーに打診することも必要である。入れ替え・新規導入までのブランド育成予算について、メーカーと明文化し、全店舗で徹底させることである。

小売業はこの「徹底化」の中身、すなわち「売場実現」に関して最大限の組織能力開発と作業体系構築に注がねばならないだろう。

同時に、重点的に良いポジションをフェイシングしたのだけれど売れない場合、次の棚割りまで放置せず改善の対応もメーカーの販促金とリンクさせて取組みを実行すべきである。

[図表2]統合的サプライチェーン構築の基本概念

このような製販協働のサプライチェーンマネジメントの改革と高度化が、売場での「売り切る力」そして、「売り続ける力」の強化につながり、競合優位への近道となる。ぜひ実現に向けたアクションを起こしてほしい。

ATM、食品、雑貨、調剤も 「自宅の近く」まで届ける時代へ

高齢化、免許返納時代には、店舗に自力で行くことのできない高齢者が増加します。こういう時代には、店に顧客が来るのを待つだけではなくて、自宅の近くまで商品やサービスを届けることが重要になります。「届けるサービス」の事例を紹介します。

介護施設、限界集落で需要のある「移動ATM」

『国立社会保障・人口問題研究所』が2018年3月に発表した「日本の地域別将来推計人口」によれば、今から12年後の2030年の日本の人口は、2015年対比で93.7%(全国)に減少します。さらに、2045年には、83.7%(2015年対比)に減少します。もっとも人口が減少する「秋田県」は、2030年には79.6%(2015年対比)、2045年には58.8%(2015年対比)と、人口が半分近くに減少します(人口動態の詳細は、この連載の第19回参照)。まさに、何も手を打たなければ、間違いなく売上が減少する未来が到来することがわかります。

一方、人口構造は、「少子高齢化」が一気に進みます。高齢者の人口が増えると、「免許返納」した高齢の単独世帯が増加します。自分で車を運転できない高齢者は、ルートバスを使うか、息子や娘の車に乗せてもらうしか、買物手段がなくなります。買物だけでなくて、年金日にお金を引き出したいと思っても、ATMに行くことも困難になります。

先日、「CEATEC JAPAN」という展示会で、大手都市銀行が実験している「移動ATM」のデモを見てきました(写真)。担当者の方によれば、介護施設でニーズがあるそうです。介護施設に入居している高齢者は、通帳、印鑑、カードをヘルパーさんに預けており、お金を引き出す際には、ヘルパーさんにATMまで行ってもらうことが一般的です。それが、施設にいる高齢者の自尊心をひどく傷つけているそうです。「自分でお金も引き出せないのか」と。しかし、移動ATMであれば、年金支給日に介護施設に来てもらえば、自分でお金を引き出すことができます。

大手都市銀行が実験中の「移動ATM」。介護施設などで要望がある。

また、ATMが遠方の工場地帯、限界集落などでも需要があるようです。現在、手数料を高くしたり、低くしたりして、どのくらいの手数料が「お許しいただける範囲」なのかを実験している段階だと言います。「移動ATM」の実用化は、そんなに遠くないと思います。

限界集落で活躍する移動スーパー「とくし丸」

杏林堂薬局の移動スーパー「とくし丸」。店内の取扱商品に一律10%のマージンを乗せて販売する。

全国のSM(スーパーマーケット)が導入して話題の「とくし丸」という移動スーパーもまた、免許返納した高齢世帯向けの「届けるサービス」です。とくし丸に積み込む商品は、そのSMの売場で陳列している商品です。「プラス10円ルール」によって、一律、10円のマージンを乗せて販売します。10円割高ですが、店舗まで行く手段の少ない高齢世帯にとっては有難いサービスです。

DgS(ドラッグストア)でも、杏林堂薬局が2016年10月から、2店舗で、3台の「とくし丸」を稼働させています(月刊MD2018年6月号掲載)。杏林堂によれば、「お客さまのほとんどは高齢の方です。中には一度に6,000円も買ってくれる方もいて、購買力は高いです」とのことです。

また、「とくし丸を利用するお客の60%程度が、一人暮らしの高齢者を家族にもつ来店客です。たとえば、親の買物になかなか付き添えなくなった娘からの依頼が多いです。とくし丸を導入している『杏林堂和田店』は、売上構成比の45%が食品です。中でも刺身、精肉、青果などの生鮮食品の要望が多いですね」とも言います。

刺身、肉などの生鮮食品がよく売れる。

健康志向、惣菜強化、冷食拡充…注目4商品からコンビニの次世代を予測する

秋冬の商品政策について、セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、デイリーヤマザキを取材した。その取り組みの中で、事例として提示された商品を、(春夏の関連商品も含めて)幾つかピックアップした。チェーン独自の政策を具現化した商品もあれば、各チェーンに共通するコンセプトの商品もある。コンビニの新商品から次世代の成長戦略を探っていきたい。

牛丼専門店チェーンに対して優位性を発揮

一つ目は10月16日にリニューアルしたセブンのチルド商品、「熟成肉の特製牛丼(アンガス種牛肉使用)」398円(税込み、以下同)。外食チェーンとガチンコで戦える商品であることを示した。セブン-イレブン・ジャパン取締役執行役員商品本部長の石橋誠一郎氏が、その差別化ポイントとして挙げたのが塩分の使用量である。

一日に摂取してよい塩分量は、厚生労働省の指針が男性8.0グラム未満、女性7.0グラム未満、世界保健機構(WHO)は5.0グラム未満と、さらに基準値は厳しい。同商品を最初に発売した11年は塩分相当量が3.6グラムあった。食材と製法を変更し、肉のうま味を増すことで徐々に塩分量を削減し、今回は1.8グラムまで減量させた。

食品表示法に基づき2019年3月からは、現行の「ナトリウム」ではなく「食塩相当量」の表示が義務付けられる。この変更により消費者は塩分に対して、より意識するようになる。その変化に先駆けて対応した。

一方の、ある牛丼専門店チェーンは一食約6グラムの塩分を使用している。この点でセブンは「競合」を大きく引き離している。もはや牛丼専門店チェーンの補完的な商品ではなく、明確に戦える商品として展開していく。

若い男性客に冷凍食品を訴求する意図

セブン-イレブンは「蒙古タンメン中本 汁なし麻辛麺」321円(画像)を本年6月に発売、1店舗1日平均3.7個の売上は“冷凍商品においては、これまでにない実績を残すことができた(石橋氏)”ヒット商品である。

筆者は、この商品を発売当初に食べたとき、極端な辛さに驚いた記憶がある。辛さを売りとする繁盛店の商品を再現するのだから辛いのは当然として、こうした味覚の尖った商品を、他チェーンは発売しても、大衆路線の真ん中を走るセブンは、避けて通ると思っていたからだ。

発売から数カ月経ち、その狙いが明らかになった。「この商品は若い男性客に訴求できた。今までセブン-イレブンで冷凍食品を購入しなかった客層が一気に変化した。結果として冷凍食品の伸長が著しく高い。お客様に対して、購入してもらう“きっかけ”を提供することにより、どんどん(商品の動きが)変わる手応えを感じている」(石橋氏)

コンビニ各チェーンは冷凍食品売場を拡充している。買い物に慣れた主婦層であれば売場への寄り付きに抵抗はない。一方、若年層は、弁当類に馴染みがあっても、冷凍食品に手を伸ばす人たちが少ない。売場に意識を向けさせるため、あえて若者向けの味覚の尖った商品を投入したのだ。

しかも続きがある。11月19日の週に、カップのまま電子レンジで温められる冷凍食品「7プレミアム 炒め油香るチャーハン」「7プレミアム バター香る海老ピラフ(ともに213円)を投入する(執筆時は発売前で画像なし)。店内の業務用レンジで温められる即食性の冷凍食品は初めてである。皿に移さなくても、車の中やオフィスで食べることができる商品だ。

この食の場面を拡大する画期的な商品は、若い客層を中心に訴求できるだろう。その意味で、先の「蒙古タンメン中本 汁なし麻辛麺」から若い客層を引き付ける冷凍食品売場に対する政策には、一連の流れがあったのだろう。

コンビニは惣菜強化で夕夜間の売上拡大を図る

夕夜間の惣菜強化はコンビニ各チェーンの共通テーマである。時間のない有職主婦、近くで買い物がしたい高齢者、一人分の食事で足りる単身者、こうした客層を、既存のスーパーマーケットに取られるのではなく、コンビニが取り込んでいく政策である。

ただし、それだけではなく、購買行動の変化も起こっている。

ファミマは客数だけではなく、客単価にも注目している。ファミマの平均客単価は573円。一方で、惣菜や冷凍食品を購入するお客の客単価は高く、特に惣菜シリーズ「お母さん食堂」(画像)を購入するお客の客単価は1349円と、それ以外の客単価より圧倒的に高いことが判明したのだ
「スーパーマーケットの平均客単価が1902円(推計)だから買い方がスーパーマーケットに近づいているイメージ」とファミリーマート常務執行役員 商品・物流・品質管理本部長の佐藤英成氏は分析する。

客単価が高い理由は購入が「自分用」だけでなく「家族用」にもシフトしている。客単価が一気に高くなる「使われ方」の変化が起こっているのだ。

野菜は1/3日分から1/2日分、そして1日分へ

画像はデイリーヤマザキが、この秋に発売する「1日分の野菜が摂れるちゃんぽん」550円。炒めたり、ボイルした“1日分”の野菜が加わり手に持つとずっしりと重い。

同チェーンによると、野菜を多く加えると女性の購入率が高くなり、昨年は1日の2分の1の野菜が摂れるシリーズを発売したところ、女性の購入率が10%高くなったという。

それでも若い女性のお客から次のように聞かれた。
「じゃあ、残りの半分は、どうやって摂ったらいいの?」
このやりとりが、“1日分の野菜”のヒントになったという。

セブン-イレブンは今年度から“1/2日分の野菜を使用”と量目を数字で示すようになった。数字で示した方が反応は良いという。

コンビニは野菜不足のサポートを一斉に謳いだした。冬はサラダの需要が落ちるので温野菜系の商品もトレンドになっている。

一時期は不健康の代名詞のように呼ばれた「コンビニ弁当」も、もはや過去の話となりつつある。

食品構成比率60%に近づくGenky。部門別売上高構成比に見るDgS企業の営業戦略

月刊マーチャンダイジングでは、毎年10月号で上場ドラッグストア企業の決算を特集しています。今回は2018年の企業ごとの部門別売上高構成比率から各企業の戦略を読み解きます。

医薬品・化粧品よりも食品売上高構成比が高い企業も

図表は、2018年決算の企業ごとの部門別売上高構成比をまとめたものです。

企業別に見ると、食品の構成比率を高くして、その分、医薬品、化粧品などの構成比率は低めに抑えている企業と、医薬品、化粧品など高粗利益率の商材の構成比率を高めに維持しているグループに分かれることがわかります。

まず気が付くのが、ドラッグストアといいながら、食品の構成比率が高い企業が複数あるということです。Genky DrugStoresが58.7%、コスモス薬品は56.2%、カワチ薬品は46.3%となっています。また、食品だけの売上構成比率は決算の発表からは明らかではありませんが、クスリのアオキも食品の売上構成比が高いと推測されます。

少し前まではDgS業界における食品の構成比率が高い企業の代表格はコスモス薬品でしたが、一昨年、Genky DrugStoresが食品の売上高構成比率1位になり、今年もその状況は継続しています。同社は地方の7,000人商圏でも採算が合う生鮮強化型の新業態を開発していて、一般的なヘルス&ビューティ中心の接客型DgSとは違う収益構造にかじを切っていると言えます。

生鮮全店導入により7,000人商圏での勝ち残り図るゲンキー

そして、売上高上位3社は、粗利益率の高い医薬品・化粧品の売上高構成比率が高いこともわかります。ウエルシアHDは、昨年に引き続き医薬品の構成比率が上昇傾向です。その分食品を減らしています。

ツルハHDは医薬品、化粧品の構成比率が減少傾向で、食品が2016年の15.2%から4.6ポイント増加して19.8%となっています。マツモトキヨシHDは化粧品の構成比が40%を突破。一方で医薬品、食品の構成比率が落ちているのが特徴です。

集客に寄与する食品だが、取り扱いの難易度は高い

なお、食品の売上構成比の高い企業のほとんどが、以下の記事で「粗利が低く、販管費も低い」とされたグループに属しています。

同じ営業利益率4%でも稼ぎ方が全く違うウエルシアとコスモス

食品は粗利益率は低いものの、その分集客に寄与し、たくさんの客数を集めて在庫を高速に回転することができます。ただし、食品には賞味期限があり、回転率が高いことから発注、品出し、見切りなど、商品管理の手間もほかの商品に比較して非常にかかる部門です。そのため食品を取り扱う企業の販管費率は上昇する傾向にあります。食品を扱う企業は、そういう意味でも食品の商品管理の仕組み化によって販管費をいかに下げていくかが重要になるといえるでしょう。

<注>
・「医薬品」は基本的に「OTC」と「調剤」を合算した構成比を掲載
・ウエルシアHDの「医薬品」は「医薬品+調剤」
・ツルハHDの「その他」は、「育児用品、医療用品・介護、健康食品、その他」の合計。2018年度の「医薬品」は「医薬品+調剤」
・ココカラファインの「雑貨」は「衛生品+日用雑貨」、「医薬品」は「医薬品+調剤+健康食品」
・クリエイトSD HDの「医薬品」は「OTC+調剤」
・クスリのアオキの「医薬品は「ヘルス(=医薬品、健康食品)」、「雑貨・食品」は「ライフ」、「化粧品」は「ビューティケア」
・キリン堂HDの「医薬品」は「医薬品+調剤+健康食品」、「雑貨」は「育児用品+雑貨など」
・薬王堂の「医薬品」は「ヘルスケア(調剤・医薬品)」、「化粧品」は「ビューティケア」、「雑貨」は「ホームケア」、「食品」は「コンビニエンスケア」
・サツドラHDの「医薬品」は「ヘルスケア+調剤」、「化粧品」は「ビューティケア」、「雑貨」は「ホームケア」、「食品」は「フード」