今週の視点

ビッグデータですべてがつながる時代へ

第26回IoTによって「店頭欠品」をリアルタイムで可視化できる

2018年11月12日、シンシナティのクローガー社(米国最大のスーパーマーケット企業)を公式訪問し、情報システムのR&D(研究開発)部門の幹部の取材をしてきました。詳細は、月刊マーチャンダイジング誌上にて発表しますが、テクノロジーの発達によって変化する小売業の未来の一部を紹介します。

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画像情報、商品の位置情報、在庫情報がすべて統合・可視化できる

IoT(Internet of Things)時代とは、すべてのモノやビッグデータがインターネットにつながる社会のことです。IoT社会の到来によって、小売業の「売り方」や「作業」は劇的に変化します。

たとえばクローガーは、棚上の「カメラ」を活用して、「店頭欠品」の可視化の実験を行っていました。監視カメラの画像情報だけでは、欠品状況の可視化はできません。カメラの「画像情報」、その商品が棚のどの位置に陳列されているかという「位置情報」、その商品が何個あるかという「理論在庫情報」がすべてIoTでつながることよって、店頭欠品情報を可視化することが可能になります。

カメラで撮影されたゼロ欠品の棚には、A商品が陳列されており、その理論在庫がいくつあるというビッグデータがすべて紐づけられます。その欠品一覧をデータ化したものが以下の写真です。右側のOOSという言葉は、「out of stock」の略で、棚に在庫の存在しないゼロ欠品商品のことです。写真の赤線より上のOOS商品は、棚在庫はゼロであるが、理論在庫上は在庫があるはずの商品です。棚は欠品していますが、バックヤードや棚上に在庫があることが推測できます。


写真のOORという言葉は、「out of reach」の略で、その商品が本来あるべき位置にはなくて、手の届かない棚の上部に在庫があるか、もしくは棚の下部に陳列されている商品のことです。このように、欠品状況、陳列位置の乱れを可視化できるのは、「画像情報」「位置情報」「在庫情報」の3つのビッグデータがつながっているからです。

クローガーでは、OOS情報をもとに追加発注をかけたり、陳列位置を変更したり、バックヤード在庫を確認する作業を、毎日決められた時間に実施しているそうです。IoT時代の到来で、現場の欠品作業も大きく変化します。

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。