今週の視点

アマゾンvsリアル小売業

第27回アマゾン4スターが挑戦するオンラインとリアルの融合

前回に続き、アメリカ視察ツアー報告です。今回は、現在大注目の「アマゾン4スター(Amazon4-Star)」を紹介します。「オンライン」と「リアル」の買物体験を融合したアマゾンの新業態は、リアル店舗にどんな影響をあたえるのでしょうか?

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マンハッタンのSOHO地区の古い建物に居抜き出店した「アマゾン4スター」。

ジャンルを問わず星4つの売れ筋を陳列

アマゾンは今年の9月27日、「アマゾン4スター」というまったく新しいコンセプトのリアル店舗を、NYマンハッタンのSOHO地区に開店しました。アマゾンのオンラインサイトで「星4つ」以上の評価を獲得した売れ筋商品だけを品ぞろえする店です。アマゾンによると、オンラインの「販売データ」と「ほしいものリスト」のデータを使って、さらに商品を絞り込んで、陳列商品を選定しているそうです。マンハッタンの中心の大都会なので、売場面積は130坪程度と、決して大きな店ではありません。

この連載の第14回で紹介した「アマゾンブックス」が書籍に限定しているのに対して、商品ジャンルを問わず、アマゾンの売れ筋商品を陳列しています。取扱商品のジャンルは、書籍、ギフト、アマゾンエコーなどのアマゾンデバイス、ルンバなどのスマート家電、キッチン、文具、生活雑貨、玩具などです。店に入ると、「現在オンラインでもっとも購入したい商品」を、ジャンルを問わず島陳列していました(下の写真)。


アマゾンは、オンラインサイトでの買物体験をリアル店舗でも実現し、オンラインでの買物体験とリアル店舗での買物体験を融合しようとしています。下の写真は「アマゾンブックス」の陳列ですが、「アマゾンで1万以上のレビューのあった本」だけを集めたエンド陳列です。従来のリアル書店では、絶対に実現できない陳列です。

オンラインの買物体験をリアル店舗に導入したアマゾンブックス。

130坪程度の売場で、売れ筋に商品を絞り込んでいるので、選べる楽しみはないのかと思っていましたが、どんな商品が「4スター」の評価を獲得しているのかを見るだけでも、とても楽しい買物体験でした。

アメリカ視察ツアーの参加者の中で、娘にオモチャを頼まれた人がいました。ウォルマート、メイシーズ、玩具専門店などをさんざん探し回ったが見つからず、あきらめかけていたところ、最終日に訪問したアマゾン4スターに、娘に頼まれたオモチャがあったそうです。超売れ筋の4スターを品切れさせないアマゾン、おそるべしです。

ダイナミックプライシングで価格もオンラインと連動

アマゾンブックス同様に、アマゾン4スターも「ダイナミックプライシング」を採用しています。ダイナミックプライングとは、アマゾンが採用している「値付け」の仕組みのことで、需要と供給に応じてリアルタイムに「売価」を変更する値付け方法です。

オンラインでの売価変更は簡単ですが、リアル店舗では「紙の棚札」を付け替える作業が発生するので、ダイナミックプライシングの採用は、現実的な方法ではありませんでした。アマゾンブックスでは、売場に売価表示の棚札を付けないで、店内にあるプライスチェッカーやアプリのスキャナーで書籍のJANコードを読み取り、書籍の売価を表示していました。

アマゾン4スターでは、下の写真のように電子棚札を採用することで、ダイナミックプライシングに対応していました。アマゾンのオンラインの売価が下がると、それに連動してリアルタイムにアマゾン4スターの売価も変わる仕組みです。

また、アマゾンブックスもアマゾン4スターも、「一般客」に比べて、「アマゾンプライム会員」の価格を思いっきり安くしており、プライム会員にならなければこれだけ損をすると徹底的に主張しています。アマゾンのすべての動線は、プライム会員の獲得につながっているわけです。

電子棚札でダイナミックプライシングを導入しているアマゾン4スター。電子棚札に星がいくつの商品かを表示している。

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。