新・流通用語集

知っておきたい、「新しい売り方」に関する用語

第3回状況に応じて価格が変わる「ダイナミックプライシング」

続々登場する流通小売業に関する用語や新しいコンセプト。この連載では流通小売業に携わる方であれば知っておきたい新しい用語を取り上げ、解説していきます。今回は、「ダイナミックプライシング」「シェアリングエコノミー」など「新しい売り方」に関わる用語です。

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ダイナミックプライシング

従来、一律で据え置き型だったさまざまな商品やサービスの価格が、消費者と提供者間の需要と供給のバランスによって変動するようになってきました。これをダイナミックプライシング(Dynamic Pricing)といいます。夏休みや年末年始になると、ホテル代や航空券が普段よりも高くなるのはダイナミックプライシングの代表的な例です。

これまでダイナミックプライシングは、販売実績や在庫など、主に自社で得られる情報を用いて算定してきましたが、AI(人工知能技術)の進歩に伴い、天候データなど社外のさまざまなビッグデータを活用し、複雑な条件下においても素早く精度の高い結果を返すことが可能となりました。ECサイトの取引では、その瞬間のアクセス数や購入数に応じて、リアルタイムに価格変動させることも可能です。

近年、日本ではプロ野球の観戦チケットにダイナミックプライシングを導入する動きがあります。首位攻防戦や人気選手の引退試合など、需要が高い試合は価格が上がり、逆にストーブリーグは価格を下げることで空席を埋めることができるという仕組みです。

シェアリングエコノミー

シェアリングエコノミーは、直訳すると「経済の共有」という意味で、ヒトやモノ、コトなどを、複数の人と交換したり共有したりする仕組みのことをいいます。従来のように欲しいものを購入するのではなく、他人と共有し、必要なときだけ利用するという考え方が根底にあります。

シェアリングエコノミーの先駆け的存在が、Airbnbです。インターネットを介し、個人の持ち家の一部や全部を他人に貸し出すサービスとして急成長を遂げました。インバウンド需要で宿泊施設不足が懸念される日本でも、規制緩和により「民泊」という形態が生まれ、注目を集めています。ほかにも、自家用車をシェアするシェアライドや、家事・育児代行からPC・英会話等のプライベートレッスンなど、個人のスキルをシェアするサイトなど、さまざまなシェアサービスが登場しています。

日本でシェアリングエコノミーを活発化するための課題としては、現行法の改正や各種民間団体との調整、また、主にインターネットを介して取引が行われるため、顔の見えない個人対個人のやり取りに対する信頼性の担保などが挙げられます。

インバウンド

インバウンド=Inboundは、「外から中へ入る、内向きの」という意味を持ちます。近年、海外から観光のために来日する外国人が急増していますが、観光分野において、外国人が日本を訪れる旅行のことをインバウンドといいます。なお、インバウンドに対し、日本人が海外旅行へ出かける場合は、インバウンドに対して「アウトバウンド(Outbound)」といいます。

日本は2008年に観光庁を設置。観光立国を国の施策として掲げ、ビザ取得要件の緩和や免税措置を施すと、折からの円安基調で、2103年以降、日本を訪れる外国人観光客数は急増しました。インバウンド需要は観光業界のみならず小売業への影響も大きく、「爆買い」という言葉が誕生するほどの勢いを見せました。

一方で、訪日外国人客の増加に伴い、宿泊施設の不足が深刻化したことから、旅館業法を緩和して「民泊」を認めるなど、インバウンドが新たなムーヴメントを引き起こしています。

観光分野で注目されがちなインバウンドという言葉ですが、マーケティング分野などさまざまなビジネスシーンでも使われます。例えば、InstagramなどSNSで自社の情報を発信し、それを見た顧客が自ら企業に接触してくることを「インバウンドマーケティング」をいいます。

独身の日

中国では、毎年11月11日は「光棍節」と呼ばれています。「節」がつくものの公式な祝日ではなく、「1」が4つ並んでいたことから発した独身者のための記念日で、独り者を表す「光棍」という文字が当てられています。

2009年、11月11日の独身の日に、中国のECサイト「アリババ」が「双11(ダブルイレブン)」と呼ばれる大規模なインターネット通販セールを仕掛けたことから、中国では「独身の日」イコール「ネットセールの日」として浸透しました。近年では、アリババの通販サイトだけでなく、百貨店やスーパーマーケットなどのリアル店舗でもセールを開催。独身の日が国をあげてのセール期間となっています。

なお、2017年の独身の日に伴うセールでは、アリババの売上高は253億ドル。アメリカにおける同年のブラックフライデーによるオンラインセールの売上高50億ドルの5倍以上ものセールスを記録しました。

アリババなどの通販サイトは、優遇税率が適用される越境ECを運営しているため、日本でも「独身の日」セールにあやかろうと、越境ECに参入する企業が増えています。

サイバーマンデー

アメリカ合衆国では、11月第4木曜日が感謝祭(Thanksgiving Day)が行われますが、翌日金曜日から年末セールがはじまります(ブラックフライデー)。サイバーマンデー(Cyber Monday)は、感謝祭の休暇が明けた月曜日をいい、この日からEC各社がセールを開始します。インターネット上で行われるセールなので、「サイバー」というわけです。

巨大ECサイトのAmazonは、アメリカ本国だけでなく日本でもサイバーマンデーのセールを開催。日用品や家電、ファッションアイテムといった商品を割引価格で購入することができます。日本を代表するECサイトの楽天市場やYahoo!ショッピングでも、年末にかけて大々的なセールを開催しますが、今後日本でもサイバーマンデーの認知度が高まれば、この時期EC事業社あげての一大セールイベントになる可能性があります。

なお、12月第2週月曜日のグリーンマンデー(Green Monday)、同じく、12月中に行われる配送無料キャンペーンの日、フリーシッピングデー(Free Shipping Day)は、サイバーマンデーと同じく、ECの売上が急増します。

ブラックフライデー

ブラックフライデー(Black Friday)は、アメリカ合衆国の感謝祭(Thanksgiving Day)翌日の11月第4金曜日のことをいいます。日本語では「黒字の金曜日」とも呼ばれるように、小売業にとって1年で最も多い売上を記録する日といわれています。ブラックフライデーは、感謝祭休暇の在庫一掃セール日でもあり、実質上の年末商戦の幕開けでもあります。

日本では、トイザらスやGAPなど、アメリカ発祥のショップでブラックフライデーが行われていましたが、近年ではイオンリテールが「イオン ブラックフライデー」を展開。クリスマスやお正月を前に一時的に消費が冷え込む11月の売上を伸ばすものとして期待され、定着する兆しを見せています。

ブラックフライデーを皮切りに年末商戦に入るアメリカでは、感謝祭明けの月曜日にはサイバーマンデーがはじまります。Shop.orgやAmazon.comなどのECサイトが一斉にオンラインセールを開始。ブラックフライデーによる実店舗の売上、サイバーマンデーによるオンラインショップの売上と、アメリカの小売業界が1年で一番活気づく時期です。

著者プロフィール

MD NEXT編集部

お江戸日本橋で日夜売り方・買い方を研究し続けています。コンビニマニア、ECマニア、100均マニアなどなどが集まる、日本で一番「お店」のことが好きで研究し続けている編集部です。