39社・509店舗を徹底分析!

DgS顧客満足度調査2018、選ばれる店の条件は「人の要素」だった

2012年にスタートした月刊マーチャンダイジングの「顧客満足度調査」。月刊マーチャンダイジング2018年12月号に掲載した今年の調査では39企業、509店舗が対象となった。この記事では、月刊マーチャンダイジングに掲載された記事の中から、今年の調査で判明した、「選ばれる店の条件」について紹介する。

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基本的な調査項目と総合満足度に対する評価を集計

図表1は調査対象の企業と店舗名(屋号)の一覧である。ホールディングス(HD)傘下であっても異なる屋号で営業している企業は個別に調査している。また、調査店舗は9~18店舗の間で各企業の店舗数に比例させた。(図表はクリックで拡大可能)

調査内容は大きく2つに分けられる。

①基本的な調査項目:「店舗設備・クリンリネス」「基本接客・商品知識」「商品陳列・品揃え」「レジ対応」の4カテゴリー、合計32問、いずれも3点満点の基本設問。

②総合満足度に関する評価:「この店で買物することを知人に勧めることができますか?」という問いに対する回答を0~10の11段階で評価してもらった。

設問の全体像は、月刊マーチャンダイジング2018年12月号をご覧になってもらいたい。

各設問を総合満足度との相関から4つに分類

各調査項目の点数、総合満足度の点数に加えて重要なのが各設問と総合満足度との「相関」である。

ここで、今回の調査で重要になる「相関」と「相関係数」という概念について簡単に解説する。

要素Aが高い(低い)とき、要素Bも高い(低い)といったように2つの要素に関係性があるとき2つの要素には相関があるといえる(図表a)。

たとえば、「身長が高いと体重も重い」「塩分の摂取量が多いと血圧は高い」など、2つの要素(数値)の関連性を意味する。日常生活でもよく用いる考え方だが、それを数値化したものが「相関係数」だ。

本調査では、ある調査項目の評価が高いとき総合満足度も高ければ、その調査項目は重要(相関係数が高い)と考えた。正の相関係数は0から1の間に収まり、目安は図表bのようになる。

さて、図表6にある青いドットと番号は6〜37までの設問番号である。横軸は総合満足度と調査項目との相関係数を偏差値化したもので、数値が大きいほど、つまり右にあるほど総合満足度へ与える影響は強い、相関が強いことになる。

そして、図表6ではさらに各設問を4つの分野に分類した。戦略的、効率的に顧客満足度を改善、強化するためには、ポートフォリオで各設問がどこに位置づけられているかを俯瞰的に見て考えることが重要となる。

①重点維持分野:相関係数は高く、個別の満足度も高い。つまり、総合満足度に影響を与える項目の点数が高く、個別満足度(図表6タテ軸の数値)でも高い点数を得ている分野だ。

たとえば、設問番号29、「問い合わせした店舗従業員は丁寧に対応したか」という項目は相関係数の偏差値が75と今回もっとも総合満足度との相関が強かった。さらに、この項目は個別満足度でも56と目安の50を超えて好成績を出している。29に代表されるように「相関係数が高く」「個別満足度」も高いものは、重点的にその状況を維持すべき分野となる。一般的に取組み優先順位は4分野のうち2番目。

②維持分野個別満足度は高いが総合満足との相関は低い分野。できている項目なので維持には努力すべきだが、総合満足度との相関が低い。一般的に取組み優先順位は3番目。設問番号8「入口の段差への配慮」、個別満足度は61とかなりの高レベルだが、総合満足度との相関は35と目安の50を大きく下回る。入口の段差に配慮があっても、その店で買物することを知人に勧めようとはあまりおもわないということだ。

ベビーカー、車いすなどの通過頻度はさほど高くなく地味な項目ではあるが、整備は必要。ベビーを持つ母親は優良顧客であることが多いし、車椅子対応があるか否かは店舗の基本姿勢を表しており、長期的な地域の支持には影響を与えるだろう。ただし、優先順位から見れば、入口段差よりも先に着手した方がよい項目はあるはずだ。

③改善分野:個別満足度が低い、総合満足度との相関係数も低い。つまり、現状できていないのだが、そこに注力して改善しても総合満足度との関係は弱いので、一般的に優先順位は4番目の分野である。

設問番号31「牛乳の賞味期限の管理は徹底されていたか」は今回の調査でもっとも総合満足度との相関係数が低かった。これは、賞味期限の種類が1~3個のうちいくつあるかで、管理の徹底ぶりを見る調査だが、複数あってもそれほど不快や不信の念は持たないということだ。

④重点改善分野相関係数は高いが、個別満足度が低い。総合満足度に強い影響を与える項目にもかかわらず、点数が取れておらず、即改善が必要。一般的に、取組み優先順位は第1位の分野である。

設問番号27「従業員は常に顧客を意識した行動がとれていたか」という項目は、相関係数は71と非常に高いが個別満足度では44と目安の50に達していない。最大限の努力を払って優先的に改善すべき項目となる。この分野を上げることが顧客満足度を上げることにつながるので、特に重視すべきである。

今回は39社、509店舗の傾向を出したが、企業個別で調査をすれば、自社の顧客満足ポートフォリオをつくり改善・強化策を立てることができる。

総合満足度へ影響を与えるのは問い合わせ対応など「人の要素」だった

図表8は、総合満足度に影響を与える調査項目の上位10項目である。1位は問い合わせへの対応。2位は滞在時間中の従業員の態度、行動、3位が風邪薬の相談対応、4位が従業員の挨拶、5位会計時の挨拶、6位ファンデーションへの問い合わせ対応と、上位6位までが人の要素という結果になった。

こうした相関関係から考えると、従業員は常にお客を意識したキビキビとした態度をとり、いらっしゃいませの挨拶は欠かさず、聞かれたら答えられるという店舗運営態勢によって総合満足度は上がるということだ。

DgSは来店客との接点が持ちやすく、人による差別化がしやすい業態だ。接客や勤務中の態度・行動など「人の要素」は、小商圏の中で同業態、他業態に優位性を持てるところなので、積極的に磨くべきだ。特に「セルフ販売」という基本は持ちつつも、聞かれたら対応できる、なおかつその対応が好印象を与える、購買につながるという態勢づくりは重要だろう。しかし、人手不足のなか、この態勢づくりはそれほど容易ではない。

ちなみに「声掛け」に関しては、医薬品売場での声掛け(設問番号19)の相関は45、化粧品売場での声掛け(同25)の相関は42といずれも50に届いていない。これも「人の要素」ではあるが、声掛けがあったからといって、総合満足度が高くなるわけではないという結果が出ている。

しかし、営業上は声掛けから、カウンセリングに発展し購買に結び付くこともあるので、声掛けも軽視してはいけない項目といえよう。