野放しだった「代理購買」の規制強化が始まった
中国人による「代理購買」が始まったのは2006年頃といわれています。もともとは留学生や日本で働く中国人が帰国の際に、親類・知人に頼まれた有名ブランド品や化粧品を持ち帰り、差額で小遣い稼ぎをしたのが始まりといわれています。
その後、代理購買がビジネスとして急成長しました。2008年の北京オリンピック後に発生した「メラミン入り粉ミルク事件」(日本でも大きく報道)などもあり、自国製品を信用していない中国人にとって、日本のDgS(ドラッグストア)で販売している商品は、爆買いの格好のターゲットになりました。
日本に住む中国人バイヤーは、郊外のDgSチェーンを何店もハシゴ訪問し、紙おむつや粉ミルクを大量に購入し、コンテナで中国に送りました。さらに、代理購買を目的とした「爆買いツアー」が登場し、特定商品が爆発的に売れるインバウンド需要が急増しました。ツアーといっても、旅行客ではなくて、実態は代理購買業者だったわけです。
ほぼ野放し状態だった代理購買に規制のメスが入ったのは、昨年の中国の国慶節(10月1日からの7連休。その前の土日も含むと9連休)の大型連休を終えた旅行者が帰国する時でした。日本のテレビでも報道されましたが、上海空港では、海外から帰国した中国人旅行者が「税関」の携帯品検査を受けるために長蛇の列をつくっていました。彼らの大半は、「代理購買」を仕事とする業者や個人でした。
従来の税関検査は「おざなり」なもので、爆買い商品を簡単に中国国内に持ち込むことができました。しかし、昨年秋以降は、税関検査が厳しくなり、いちいちトランクを開けさせられて、帰国者の携帯品を詳細に検査し、免税範囲外の外国商品を見つけては関税をかけるようになりました。事実上の密輸ともいえる「爆買いツアー」による外国製品の輸入を減らすことが目的なのは明らかです。
代理購買を減らし、国産品重視に転換か!?
代理購買規制の流れの延長線上で、2019年1月1日に中国の「電子取引法」が施行されました。インターネット上で代理購入の商品を仲介する電子商取引などの「EC代理購買業者」も電子取引法の規制の対象となります。代理購買規制のポイントは以下の3点です。
第1は、代理購買を行うためには、商品の「買い付け国」と「中国」の両方で営業許可証を取得することが条件になりました。同時に両方の国での「納税」も義務付けられました。つまり、代理購買業者は、中国で納税するだけでなくて、買い付け国でも法人税や所得税を払う必要があり、代理購買ビジネスの旨味は大きく減少します。
第2は、中国語のラベルがなく、「国家認証認可監督管理委員会」が認証した工場で生産していない粉ミルクや保健品などは販売できないという規制です。メインドインチャイナを信用していない中国人に、「中国製の粉ミルクを買え」といっているわけです。
第3は、電子取引法に違反した場合は、「電子商取引業者」には最高で200万元(約3,240万円)の罰金、「代理購買業者」には最高で50万元(約810万円)の罰金を科すというものです。
個人旅行のインバウンド需要はまだまだ底堅いと思われますが、業者によるインバウンド・爆買いの売上は減少していくのは間違いないようです。