[PR] もっと「つや玉」が輝く肌へ。進化したエリクシールの充実したラインナップ

「つや玉の輝く肌に導く」というブランド訴求のもと、躍進を続けるエリクシール。2018年秋・冬は「つや玉」をより美しく、より輝かせるための「化粧水」「乳液」「朝用乳液」「ファンデーション」、しわ改善という新たな市場の創造と牽引に貢献している「リンクルクリーム」を中心にブランド強化を図る。

ブランドの特長

11年連続シェア1位(※1) スキンケア市場で圧倒的存在感

エリクシールの販売実績(ブランド別金額シェア)

エイジングケア(※2)ブランド「エリクシール」は、ブランド誕生以来、先進の研究・開発力を生かし「肌とコラーゲンの関係」に着目。2016年下半期からは、「つや玉」を軸にしたコミュニケーションを実施し、「つや玉」の認知も高まり、順調に実績を伸ばしてきた。

その結果2007年から2017年までの11年間連続でスキンケア市場シェア第1位を獲得(※1)。

※1 インテージSRIスキンケア市場2007年1月〜2017年12月
※2 年齢に応じたうるおいケア

3つのターゲットに分けてエイジングケアの拡大を狙う

図表1 エリクシールのターゲット戦略

リンクルクリーム

しわ改善市場でシェア75%(※3) 圧倒的な強さには理由がある

2017年6月、日本で唯一、「純粋レチノール」配合によるしわを改善する効能の認可を受け「リンクルクリーム(医薬部外品)」を発売。社会で広く注目され「しわ改善」という新たな市場形成の主導的な役割を果たした。

2018年6月にはリピーターの声も捉えてラージサイズを発売。この市場における数量シェアはNo.1と圧倒的な強さを見せている(※3)。

この強さの理由は有効成分「純粋レチノール」による確かな使用実感だろう。1989年レチノールへ着目したことを出発点に30年以上に渡り、140人以上の研究者が携わるという連綿とした研究の末生まれたのが「純粋レチノール」である。

製造にあたっては、工場内の温度、酸素濃度などを細かく管理。光、酸素を遮断した特殊な機器を使用している。こうした繊細な条件のもと資生堂だけがしわ改善の薬用有効成分として扱える有効成分「純粋レチノール」の圧倒的な強さの源泉となっている。

図表2 純粋レチノールの効果

※3「しわを改善する」効果効能が認められた薬用化粧品におけるアイテム別販売数量シェア 2017年1月〜2018年5月 資生堂調べ

本格エイジングケア層に向けた2018年9月21日からの提案売場

売場づくりの目的

本格エイジングケア層の立ち寄りが多い、スキンケアの定番外売場に、リンクルクリームと化粧水・乳液を同時展開。CM に接触して来店したエリクシールを使ったことがない本格エイングケア層に関心を持ってもらい、トライアルにつなげる

【STOP(足を止めてもらう)】
「テレビCMと連動した目立つ店頭」「しわ改善市場売上No.1」であることを訴求し、立ち寄りを促進する

【HOLD(棚の前に引き留める)】
純粋レチノールとヒアルロン酸、水分量との関係、しわが改善するメカニズムをPOP等で説明。「使用感がいい」などユーザーの実感クチコミを紹介。「首まで使えること」を訴求しテスターの近くに目線を移動させる

【CLOSE(購買決定へ誘導)】
「みずみずしい心地よい使用感」「お得な増量サイズがあること」「価格・容量」「すこやかな肌を保つには化粧水・乳液がお勧めであること」を訴求しリンクルクリームの購入と化粧水・乳液の併買を促進

化粧水・乳液・朝用乳液

10月21日リニューアル新発売

美しい肌の証「つや玉」の実感をより高める

「つや玉」とは、頬の高い位置に光るみずみずしいつやのこと(図表1)。ハリと透明感に満ちたすこやかで美しい肌のしるし。エリクシールでは「つや玉」のある肌へ導くことをブランドベネフィットとしている。

資生堂の調査によると、「つや玉が輝く肌」は、「女性らしい」「幸せそう」「好感が持てる」「褒めたくなる」という印象を与えるという。また「マット肌」「テカリ肌」と比較して「つや玉がある肌」は見た目の印象が平均で3歳若く見えるというアンケート結果も得ている(※4)。

こうした印象度に関する調査結果からも分かるように、「つや玉」があることは女性にとってベネフィットであり、「つや玉のある肌を目指しましょう」というメッセージは、カウンセリングやPOPのキーワードとしても有効である。

※4 資生堂調べ(2018年)

「つや玉」の認知率64% 「つや玉」を実感している52%

資生堂の調査によると「つや玉」を知っていると回答した人は64%、「つや玉」のある肌になりたい人は96%にも達している。一方で自分の肌には「つや玉」がないという回答も52%で、「つや玉」を認知している人のほぼ全員がつや玉のある肌を希望している※1。実感をより高めるために、エリクシールでは化粧水、乳液、朝用乳液をリニューアルした。

パッケージデザインはシンプルで上質感を感じるデザインに刷新

リニューアルされたパッケージデザイン

今回のリニューアルに際してボトルのデザインも変更。現代の消費者は分かりやすい高級感、プレミアム感よりも、軽やかさのある上質感を好む傾向にある。そこで新しいエリクシールは、さりげない輝きで透明感のあるパッケージにした。新成分と合わせリニューアルで訴求できるポイントだ。

つや玉ファンデーション

10月21日新発売

自然にカバーしながら「つや玉」が輝く新感覚のファンデーション誕生

化粧水、乳液で「つや玉」をつくっても、ファンデーションを塗ると隠れてしまうのではないかと懸念するユーザーも多い。こうした声に応えて、エリクシールでは、頬の高い位置に光を集めながら、シミ、毛穴などの肌悩みを自然にカバーする「つや玉ファンデーション」を新発売。

つけたときは、みずみずしく肌に溶け込むようになじみながら、伸ばすうちにサラサラに仕上がる、これまでにない新感覚の「生感触新タイプ」。ファンデーションに合わせて「つや玉」を表現した専用ケースとスポンジも発売する。

一般的にベースメイクは一度使って仕上がりや感触が気に入れば、同じブランドを使い続ける傾向が高い。新規客の獲得がブランドおよび化粧品部門の拡大につながる。「つや玉」という共通ベネフィットがあるので、エリクシールの既存客は特に有望な新規客候補である。ブランド全体の売場づくりが大事になる。

「つや玉ファンデーション」の特長

「つや玉ファンデーション」の仕上がり

毛穴やシミ・ソバカスなどの肌悩みを自然にカバーしながら、頬の高い位置に「つや玉」が美しく輝く仕上がり

エイジングケアエントリー層に向けた2018年10月からの提案売場

売場づくりの目的

エイジングケアエントリー層の立ち寄りが多いスキンケア定番外の売場に、化粧水、乳液と一緒にベースメイクも展開。CMに接触して、店頭に来たエリクシール未使用者のターゲット層をトライアル購買につなげる。

エンド展開提案

定番提案

各ターゲットのモデルビジュアルを設置し、各ターゲットが自分向けの商品を選びやすい売場展開を実施

化粧水、乳液のポイント

【STOP(足を止めてもらう)】
「テレビCMと連動した目立つ店頭」を訴求し、立ち寄りを促進する

【HOLD(棚の前に引き留める)】
「つや玉が目立たなくなること」、「コラーゲン研究により肌になめらかで、均一なハリを与えること」「エリクシールは11年連続で売上No1であること」を訴求し、テスターの試用を促進

【CLOSE(購買決定へ誘導)】
「心地よい使用感」「つや玉の実感」「ハリが気になる方にはエリクシール シュペリエルがあること」「ハリと透明感が気になる方にはエリクシール ホワイトがあること」「価格・容量」を訴求し、化粧水・乳液の本体購入を促進

ファンデーションのポイント

【STOP(足を止めてもらう)】
「テレビCMと連動した目立つ店頭」「10月21日新発売」であることを訴求し、立ち寄りを促進する

【HOLD(棚の前に引き留める)】
「自然にカバーしながらつや玉が輝くこと」を訴求し、テスター近くに視線を移動させる。「みずみずしい生感触タイプであること」「素肌に溶け込むようにフィットし、仕上がりはサラサラであること」「全6色あること」を訴求しテスターの試用を促進

【CLOSE(購買決定へ誘導)】
「つや玉がきれいに見える仕上がり」「価格・容量」を訴求し、ファンデーションの購入を促進

重要ポイントのまとめ

  • エリクシールは11年連続スキンケア市場で売上No.1
  • もっと「つや玉」。という分かりやすいキーワードを前面に出し販促
  • フック商品から化粧品、乳液、ファンデーションの基幹美類につなげることで固定化を図る

7割以上の企業が「労働生産性の向上」などに着手

2018年6月の働き方改革関連法案の可決を受け、月刊MDではドラッグストアおよび小売業各社にアンケートを実施、その関心度と各施策の取組み状況について調査した。集計結果と分析を読み解きながら、自社および自店の「働き方改革における課題」を精査してみよう。(月刊マーチャンダイジング2018年10月号より転載)(文/社労士事務所ワークスタイルマネジメント・小林麻理 調査/月刊マーチャンダイジング編集部)

調査概要

  • 調査時期/2018年7月
  • 調査方法/無記名式書面アンケート
  • 有効回答数/設問によって異なる(各図表に明記)

回答者属性

  • 協力社数/21社
    ドラッグストア 14社、コンビニエンスストア2社、食品スーパー1社、総合スーパー1社、バラエティストア1社、ホームセンター1社、100円ショップ1社
  • 対象者/人事もしくは労務部門の責任者、総務、店舗運営、マーケティング部門などに所属する広報担当者※各社において一人が回答

Q1 「働き方改革」はES(従業員満足)向上に寄与するとおもいますか?

「働き方改革」は取り組み方を間違えるとES低下の危機を招く

「働き方改革」はES向上に寄与すると回答した企業は75%。

そうした意識はほぼすべての企業が持っているだろう、と予想したのに反し、25%の企業が「どちらかといえば寄与しない」「まったく寄与しない」との回答だった。「働き方改革」は取り組み方を間違えるとES向上どころか、低下を招く危険があるということを感じさせる結果である。

たとえば、「残業削減」を現場に命令しつつも、業務量や業務手順がまったく変わっていなければ、当然ESは低下するだろう。

「残業削減は現場が頑張ればなんとかなる」というように、対応を現場任せにするトップのもとで、かけ声のみが先行する「働き方改革」は従業員にとって厳しいものとなる。大事なのは、号令をかけるだけで終わらず「どのような作業に時間がかかっているのか」といった現場の問題を把握し、働き方の仕組みを企業として見直すことである。

Q2 「働き方改革」に関連して自社ですでに実施していること、もしくは実施予定のことはありますか?

大半の企業が「働き方改革」の具体的な取り組みを実施

実施と実施予定の合計で上位にあがった「労働生産性の向上」「パートタイマーのキャリアアップ支援」「労働時間の削減」については、取組中の企業が7割以上となった。

また、パートタイマーの処遇改善に着手している企業は11社、関連する「多様な正社員制度」の導入済み企業も9社と一定数にのぼった。

そして、対応は遅れがちになるだろうと予想していた「有給休暇取得の推進」も10社が実施済みだった。制度解説で触れたとおり、一定の有給休暇の取得は義務化される。先行して取組んでいる企業が多いようだ。

「勤務間インターバル制度」については実施中の企業が3社(予定は5社)にとどまったが、全体として多くの企業が、「働き方改革」に具体的に取り組んでいることがわかる結果となった。

Q3 「働き方改革」に関して学びたい事項、関心のある事項はありますか?

「多様な正社員制度」とともに考えたい「同一労働同一賃金」

関心事の上位に「働き方改革」全般、法律(働き方改革関連法案)全般が挙がった。これは「働き方改革」が浸透している半面、すべての取り組み内容を把握するのが難しいほど幅広いものであることの裏返しともいえる(実際、今回アンケートで取り上げた内容も「働き方改革」の一部分のみである)。

法律に関しては、「裁量労働制」など一部の内容が大きく報道される一方で、実務としてどのような影響があるのかについての情報提供があまりなかったからという面もあるだろう。

また、法律全般と同様に「多様な正社員制度」が多くの票を集めたのは、勤務条件を限定して働くパートタイマーが多数活躍する小売業ならではかもしれない。「多様な正社員制度」は、職務に応じた賃金や評価制度について改めて考える必要がある。それを反映してか「多様な正社員制度」に関心がある企業は「同一労働同一賃金」にも関心あるという傾向が見られた。

小売業界がAIやデータ活用で失敗しないためにすべきこと

これまでの連載の中で、AIについて、また小売業界に限らず幅広い業界でAIやデータの利活用が進んでいることを紹介してきた。今回の記事では、AIやデータを利活用するにあたって必要な考え方や準備すべきことを紹介する。

事業におけるAIやデータ活用の有用性を考える

AmazonGoはもちろんだが、2016年末に中国のアリババが「ニューリテール戦略」を発表したように、中国などでは無人店舗が既に実現されており、O2Oなどの取り組みも進んでいる。そんな中、これからの小売業界がデータやAIを活用するという意思決定は必然だろう。

その際にまず考える必要があるのは、データ活用の有効性である。例えば「数店舗の展開で、来店客数が少ない会社」と「全国に1000店鋪以上展開し、1店鋪あたりの来店客数も多い会社」では、データ活用による有効性が異なることは直感的にお分かりいただけると思う。

上記の例は極端ではあるが、事業に対して、AIやデータ活用によってどのくらい効果が見込め、活用して行く必要性があるか、ということを考えるべきであると伝えたい。

一般的に、規模が小さい会社では、AIやデータ活用への投資に対する効果が規模が大きい会社よりも小さくなってしまう。AIやデータ活用は、主に数パーセントの改善や自動化で力を発揮する。

そのため、規模が小さい会社では、AIやデータ活用以外の部分に注力する方が効果が大きく、逆に規模が大きい会社、例えば、数パーセントの改善が大きくインパクトをする会社などは、AIやデータ活用によるコスト削減や、サービスレベルの向上に意味が出てくる。

AIやデータ活用で解くべき課題を考える

自社でAIやデータ活用によって、事業にインパクトが出そうかどうかを考えると同時に、AIやデータ活用で解くべき課題を考えることも必要である。AIやデータ活用のサービスを提供している立場ではあるが、それらはあくまで手段であり、課題解決のためのひとつの選択肢だと考える。

「AIが流行っているから、なにかやってみたい」

こういう一言も、「新しい技術を先駆けて取り入れてみる」という観点では素晴らしい。しかし、第二回目の記事で述べたように、実際にそのプロジェクトから成果を得るためには、課題の整理から行うべきである。

私の経験上、「とりあえずAIを使ってみたい」と始まったプロジェクトと、「特定の課題を解決するためにAIを使いたい」と始まったプロジェクトでは、プロジェクトの成功確率が全く異なる。

もちろん、前者の経緯で始まったプロジェクトでも、その目的が「その新しい技術で何が可能で、何が不可能かを検証する」というような内容であれば、プロジェクトとしては成功であると思う。しかしながら、実際には前者の経緯で始まったプロジェクトでも、事業上の成果を求められることがほとんどである。

具体的な企業名は伏せるが、AIやデータが必要な課題として、以下のような例がある。

「従来より、POSデータで分析を行ってきた。しかし、POSデータからは分析ができない”購入していないお客様”の年齢・性別、手に取った商品や見た商品を分析し、より購入していただけるような施策を打ちたい”」

例えば、この例であれば「既にPOSのデータを活用して購入者の情報を分析してきたが、それ以上の課題を解決することが売上向上には必要だと考えたから、購入していないお客様の分析もしたい」となっており、新しいデータを使わないと解けない課題があることがわかる。

AI・データ活用に必要なステップ

AIやデータ活用の有用性や解くべき課題が確認できたら、以下のようなステップに沿って進めていく。

  1. 目的設定
  2. 指標決定
  3. 必要なデータの取得・蓄積
  4. データの可視化
  5. 自動化可能な部分の特定
  6. AIを活用した自動化の検証
  7. 自動化のためのシステム開発

先ほどの例を使って説明する。今回は、「購入していないお客様に、購入いただける施策を打つ」という目的設定をする。

次に、この目的を達成するために、どのような指標を見るべきかを考える。指標の例としては以下のようなものが挙げられる。

  • 来店者数
  • 来店者の属性情報(年齢・性別)
  • 購入者数
  • 購入者の属性情報(年齢・性別)
  • 買上率(購入者数 ÷ 来店者数)

POSから取得できる指標もあるが、POSから取得できない、以下のような指標もある。

POSデータ以外で取得可能なお客様のデータ

これらのデータから、買上率が低い属性区分があることが発見できるかもしれない。また、特定の店舗が、来店者数は多いが買上率が他店舗に比べて低いなど、POSデータだけでは発見できない課題が発見できるかもしれない。これらの発見をもとに、施策を打てるようになる。

目的設定、指標設定まで終えたところで、「それらのデータをどのように取得できるか」について考えるというステップに移行する。

取得方法としては、店内にカメラを設置し、そのデータを取得、そのデータからAIを使って属性を判定するという方法がある。

  • 年齢
  • 性別
  • 購入客と非購入客の店内導線の分析

このような方法でデータが取得できるようになったら、エクセルなどを使って分析・可視化することをお薦めする。最初から高度な分析ツールを使う必要はなく、エクセルなどの手元にある身近なツールを使って分析し、設定した目標を達成できそうかを検証することが重要である。

これで、最初に設定した「購入していないお客様に購入していただける施策を打ちたい」という目標を達成するためのステップのイメージがついたと思う。

小さく、とにかく小さく始めることが大事

具体例を用いてAI・データ活用におけるステップを紹介したが、最初から「非購入者に購入していただけるようなOneToOneマーケティングがしたい」など、ステップを大きく跨ぐような目標を設定してはいけない。

小さく、とにかく小さく始めることが大事である。これにはいくつかの理由がある。

1つ目は有効性検証の観点である。十分な検証無しに、大きな費用を投下してしまうと、その取り組みによる効果が薄い、もしくは運用に乗りにくいと判明した場合に、大きな損失になってしまうからだ。まずは、上述の例のように、その分析により目的を達成できそうかを検証することが重要である。

2つ目は運用可能性の観点である。新たな取り組みという性質上、新たな業務が生じやすい。また、その業務に対して業務フローを構築する必要も出てくる。仮に、最初から全店舗で新たなシステムやデータ活用を始めた場合、その業務フローが不十分な設計だった際の影響度合いは大きい。そのため、小さく始めて、上記の有効性の検証を行いつつ、大規模に拡大した場合の業務フローもしっかりと構築することが重要である。

上記2点より、まずは少数の関係者で、小さい予算で始め、それを少しずつ組織に伝搬させていく、そのようなステップを踏むことも重要だ。

データ分析でやってはいけない4つの間違い

少し前に見た記事で、非常に興味深かった記事がある。それは、「The Four Cringe-Worthy Mistakes Too Many Startups Make with Data」という記事で、これはHotel Tonightというサービスを提供しているスタートアップの方が書いた記事だ。

この記事では、スタートアップがデータ分析をする際に陥る4つのパターンということで、以下の4つが紹介されている。

  • Starting with Metrics Instead of a Goal(目的の代わりに指標から初めてしまう)
  • Rampant Personalization(パーソナライズの横行)
  • Hiring a Dedicated Data Scientist(専門のデータサイエンティストを雇ってしまう)
  • Chasing After the Latest Toolset(最新のツールの追っかけ)

これらは本当によく陥りがちなことである。多くの場合、データ分析を始めるにあたって、最新のツールを使う必要も、専門のデータサイエンティストを自社で雇う必要もない。

上述のステップの通り、まずは目的を設定し、必要なデータを集めたら、すぐにエクセルなど手元にあるツールでデータを見る。そのデータから課題を特定し、施策を打つ。そして、この分析の有効性を検証する。これが最初の一歩である。

このような意識が薄いと、あくまで手段であるAIやデータ活用が目的に替わってしまいがちである。結果として、目的として押さえ続けるべき、事業成長に関わるアクションが手薄になってしまう。

AI・データ活用がスタンダードになるこれからを見据えて

世界的に見ても、これまで小売業をやっていなかったテクノロジーカンパニーが、新しい技術を使って無人店舗などの次世代店舗と言われるような取り組みを実施している。しかしながら、最初から同等の内容を実施するのではなく、「急がば回れ」の考えで、まずは小さく、始めることをお勧めする。

読者の中で「データを使って何かしてみたい」と思っている方がいれば、まずは何が目的なのか、そのために必要な指標やデータは何か、そして自分や周りの数名だけでできる小さな目標は何か、などを考えて見てはどうだろうか。

次回は、現在の小売とAI・データ分析で行われていることや、今実現できていることや将来実現できることについて紹介する。

浸水と物流ストップからの店舗復旧へ ~レデイ薬局の災害対応 後編~

「平成30年7月豪雨」では市内全域に避難指示が発令され、臨時休業の対応や情報収集に追われた㆑デイ東大洲(ひがしおおず)店。今回の記事では、浸水による被害や道路の不通による物流ストップを乗り越え、店舗復旧にこぎつけるまでの本部や現場スタッフの奮闘を紹介する。(月刊マーチャンダイジング2018年10月号より転載)

前編の記事はこちら

①店舗確認

2018年7月8日(日)
小康状態になった雨 9日の復旧作業への準備開始

7日(土)朝、3店舗の休業を決定してから、越智氏をはじめとする店舗関係者は自宅待機となる。雨は7日の日中は激しく降り続き、越智氏の住む2階建てマンションの1階部分はほぼ浸水。社用車は高台にある場所に移動していたものの、自宅からは出られない状況であった。東大洲店が浸水したのも、この日の午後比較的早い段階だったのではないかと推測できる。

大洲市の地形は場所により高低差があり、道路を隔てて隣り合う建物でも浸水したもの、免れたものがあり建物の立地により明暗が分かれた。

7日夜になり大洲市の雨は小康状態になった。道路の水も引き越智氏が店舗確認できたのは8日(日)の午前9時ころのことだった。7日に休業した3店舗で浸水被害に遭ったのは東大洲店のみで、8日、ほか2店舗は営業を再開することができた。

越智氏は東大洲店の店内に入り、店内の被害状況を写真に撮り、店舗運営部長に連絡。連絡を受けた本部では8日は現状のまま、9日に復旧作業を行うことを決定し、本部からの応援態勢、メーカー、ベンダーへの協力依頼を健康フェスタの開場前に行った。

田村氏の自宅がある伊予市から店舗までの道は、8日の時点でも開通していなかった。田村氏は東大洲店の写真を送ってもらうなど、自店の被害状況の把握に努め、9日の復旧作業に従事できる従業員の確認作業を行った。この日の大洲市の天候は雨が降ったりやんだりという程度であった。

7日までの大雨により大洲市内で営業している小売店は少なく、大洲店には水や食料などを求めて多くのお客が訪れた。越智氏は休業中の東大洲店から水や菓子パン、ベビーフード、紙食器などを大洲店へと移送する作業を行った。

浸水時の水位を示す田村店長。下2段目まで水が浸入した

②本部の対応

2018年7月8日(日)
四国への物流がストップ ツルハからも支援便が

本州と四国を陸路で結ぶ3つのルートは、豪雨により7日時点でいずれも不通。四国内にあるレデイ薬局の物流センターに土曜配送される予定の納品が滞る事態になっていた。

「瀬戸大橋※1、しまなみ海道※2が開通したのが8日の夜中くらいだったでしょうか、そこから物流が動きだすようになりました。センターへの到着が送れる分仕分け作業も遅れ、食品を中心にカップラーメンや水など緊急時に需要の高い商品は、発注しても限られた量しか手配できないという状況が続きました。ツルハグループになってよかったとおもったのはツルハグループマーチャンダイジングの江口社長が10トン車に水などの商品を積み必要なエリアに配送するという協力を申し出てくれたことです。当時トラックが到着できるのは岡山県までだったので、県内の数店舗に直納してもらう手配を取りました」(白石氏)

※1 岡山県倉敷市と香川県坂出市を結ぶルート
※2 広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶルート

店舗復旧

2018年7月9日(月)
従業員、本部スタッフ、協力会社総勢90人で復旧作業開始

田村店長の号令の下、東大洲店の従業員たちは午前8時、店舗復旧のため店に集合した。本部からの応援メンバーに加え、前日に依頼していたベンダー、メーカーの応援部隊も駆け付け東大洲店復旧チームは90人ほどになった。

「当日は道路が復旧していたこともわかっていたので、午前7時前には東大洲店に到着しました。当日駆け付けた従業員の中には、自宅が浸水したり断水になるなど困難な状況にある人もいましたが、自分がドラッグストアという地域に貢献する店に勤務しているという責任感から店舗復旧に駆け付けてくれた人もいました」(田村氏)

店舗復旧にあたり本部からは営業本部副本部長を筆頭に、商品部長、店舗運営部長の3人が陣頭指揮を執り作業が進められた。第一に行ったのが、浸水で廃棄処分となった商品の運び出し。それらすべてをいったん駐車場に集め、罹災証明用の写真を撮った後、設置されたコンテナの中に廃棄する作業が行われた。

当日は炎天下で作業に携わる人たちの熱中症に注意する必要があった。田村氏によると、冷蔵庫が浸水で故障したので、冷たい飲み物を十分には確保できなかったが、二次被害を出さないためにも、水や塩分の補給には注意したとのことだ。

店内から廃棄物を出し終わると、床や什器の清掃に取り掛かった。店舗内の床清掃、消毒には外注した清掃業者も加わった。

「事前の報告により什器の下段が浸水被害に遭ったということだったので、最下段と下から二番目の棚にある商品は前日に本部から発注をかけていました。9日午前に発注した商品が到着。廃棄物の撤去、床の清掃・消毒、商品の補充を終え東大洲店を再開させたのは10日の正午ころというスピーディな展開でした」(白石氏)。

田村店長は当初、被害状況から見て店舗の再開までには1週間くらいかかるのではと心配したが、作業に加わったメンバーのチームワークで、驚異的なペースで店は復旧していった。

越智大介氏(左) 田村博氏(右)

豪雨被害からの教訓

状況把握、情報の一元管理の難しさを痛感

大雨による被害として平成以降もっとも多くの犠牲者を出した今回の災害から、どのような教訓を得たかを聞いた。

「縦横の連絡の重要性をおもい知りました。店舗の従業員同士横の連絡を取り合い、それを上に上げる。そして上からの指示や情報を横に展開する。こうした縦横の連絡をいかにスムーズに取れるかが、災害時には大切だと実感しました」(田村氏)

「店舗運営部長から最初に『従業員の安全を何より優先させろ』という指示を受けたときには、この会社に入ってよかったとおもいました。教訓でいうと『判断』と『決断』することの難しさ、大切さを学びました。7日に店を休業するという決断を下さなかったら従業員やお客さままで危険にさらすことになったとおもいます。難しい判断だったとおもっています」(越智氏)

店舗という「現場」に直面している店長、SVの教訓に共通しているのは、状況をつかむことの重要性だろう。店長は緊密な横の連絡で状況をつかみ上に報告し、SV自身も集まった情報をもとに判断、決断した。

8日以降本部に常駐して、全出店エリアから情報を集め一元管理して対応を協議し決断、指示した立場の白石氏はこう語る。

「今回の災害で考えさせられたのは『避難指示』という言葉の重さです。避難指示が出ているエリアで店を開けるのか、従業員の安全をいかに守るのか、どの小売業も迷ったとおもいます。『避難指示』区域の状況もさまざまあって、一辺倒に開けろ、閉めろといえないので、SVや店長の情報のもとに考えなければいけないと、より一層考えさせられました」

SNSは即時性あるが真偽の裏が取りにくい

先述のように、白石氏は情報収集のためにSNSやインターネットを活用した。そこから得た教訓を次のように語る。

「広島県呉市の従業員が断水でお風呂に入れないという状況が続いたので、車で岡山の入浴できる施設まで連れていこうかと考えていたときに、インターネットで呉地域で営業中の温泉一覧のような情報ページがあり、それを参考に近くの入浴施設を案内することができました。

Twitterは速報性や瞬時に広がる強さはありますが、真偽のほどは確かめようがありません。私たちも状況を把握するためにTwitterを活用しましたが、勘違いやうわさも拡散してしまうという難点もあります。

速報情報としては頼りになるが、それをもとに何かアクションを起こすというレベルまでは至らないといった感想です。

今後、SNSを正式に緊急時対策用に使う予定です。社内SNSアプリを幹部やSV50人ほどをメンバーにして導入する予定です。

先ほど店長の話にもありましたが、今回従業員の対応には本当に頭が下がります。自分たちが大変なときに店や地域を優先させ、現場に駆け付けてくれました。こうした従業員の貢献は社長の三橋信也からも全社向けのビデオ朝礼で報告しましたし、今後折に触れ紹介していこうとおもっています」

今回の一件では、①広域で起こる自然災害対応の難しさ、②「避難指示」という新たな対策基準、③LINEを使った連絡網の有効性、④SNS、インターネット情報の活用法などが教訓として浮き彫りになった。

また、自分の困難よりも店舗復旧を優先させた従業員がいるように、同社では企業文化の定着に成功している。これは、不幸な出来事からの大きな収穫だろう。同社の企業スローガンは「すべては『お客様』のために」である。具体的なマニュアル整備とともに、企業文化の発信と定着も災害対策となり得る。

くすりのレデイ東大洲店のスタッフの皆さん

リアル小売業とIT企業の協業で取り組むべき5つの革新

ユニクロは9月19日、同社が目指す「情報製造小売業」の実現に向けて、アメリカのグーグル(Google)とIT分野で協業すると発表しました。これからのリアル小売業は、IT企業との協業、提携、もしくはM&Aは不可欠の経営戦略です。リアル小売業とIT企業の協業は、ネット販売だけにとどまらない多岐にわたるものになります。

ウォルマートは、グーグルホームに話しかけると商品が届くサービスも開始している

IT企業を買収し、事業モデルとIT人材を獲得したウォルマート

リアル小売業の「デジタルシフト化」は、今後加速していくでしょう。最近のニュースを見ていると、リアル小売業とIT企業の協働・提携によって目指すべき革新は、大きく分けると、以下の5項目になります。

「(1)ネット販売の強化」に、ものすごい投資をしているのはウォルマートです。同社は2016年に、ネット通販の有力企業「ジェット・ドットコム」を約33億ドルで買収し、創業者のマーク・ロア氏をウォルマートのネット戦略の責任者として抜擢しました。ロア氏は、ウォルマートのネット事業の急成長の中心人物といわれています。

ウォルマートは、ITベンチャーを買収することで、ITビジネスのノウハウを得るだけでなく、優秀なIT人材を獲得することが大きな目的だったようです。これからのリアル小売業は、IT企業との協働、提携、買収を行うことで「IT人材」に積極的に投資していく必要があります。この発想は、IT人材の少ないリアル小売業にとっては、とても重要なM&A戦略だと思います。

「ウォルマート・ドットコム」では、7,500万点の商品を取り扱い、リアル店舗では品揃えできない「ロングテール」に対応しています。

ウォルマートの2018年のネット販売(アメリカ国内)の売上は40%の急成長率を見込んでいます。アメリカのネット通販市場のウォルマートのシェア率は約5%に達しています。アマゾンのアメリカのネット通販市場のシェア率40%と比較すると、まだまだ低いですが、ウォルマートのネット販売の成長率はアマゾンを凌駕しています。

一方でウォルマートは、リアル店舗の新規出店を年間で30店以内にスローダウンさせており、リアル店舗よりもネット販売への投資を拡大しています。

ウォルマートは2017年、アマゾンと対抗するために、「グーグル」とネット販売事業で提携しました。グーグルのネット販売サービス「グーグルエクスプレス」に日用品10数万点を出品。アマゾンのアレクサに対抗して、グーグルのAIスピーカー「グーグルホーム」に話しかけると注文できるサービスも開始しました。

また、「ネットで注文して宅配」「ネットで注文して店舗受け取り」「店舗から自宅へのお届けサービス」など、買物の選択肢を増やす「(2)オムニチャネル化」も推進しています。この連載の第4回の記事「ウォルマートのピックアップタワー」で紹介したように、店舗受け取りの自動化・無人化にも取り組んでいます。ウォルマートのEC売上の50%強が、「ネットで注文して店舗受け取り」のようです。これはリアル店舗(拠点)を持つ企業の強みですね。

AIによる需要予測と業務の生産性向上

ユニクロとグーグルの協業に関する記事を読むと、ユニクロはまず、「(3) AI活用による需要予測」に関して、グーグルと協業するようです。グーグルが持つAI(人工知能)を使った画像認識技術を活用して、ユニクロの店舗で、接客を担当する社員がカメラに商品をかざすだけで、AIが商品のトレンドや併買商品、在庫情報などを瞬時に教えてくれます。文字による情報提供だけでなくて、音声で問い合わせれば、音声で回答してくれるサービスも実験するようです。

ユニクロは、顧客接点である店舗にデータ提供し、現場で意思決定することで、需要予測の精度を高めようとしていると思います。IT技術の進化によって、従来の「ピラミッド型の意思決定組織」から、「顧客接点の現場で意思決定できる組織」へ、リアル小売業の組織は大きく変わっていきます。

「中央集権型マネジメント」から、「自立型マネジメント」への変革も、ITの進化によって、これから起きる未来だと思います。

さらにユニクロは、店舗、本部、生産、物流拠点のすべてで、全社員が情報を共有するために、グーグルのグループウエア「G Suite」を採用します。グーグルとの協業によって、コミュニケーションの強化、「(4) サプライチェーンの効率化」を進めようとしています。

一方、グーグルは、全世界で、AIを活用した「カスタマーセンター(顧客からの問合せ窓口)」の省人化技術の、リアル店舗への導入を推進しています。今後、ユニクロが「AIカスタマーセンター」を実験する可能性もあります。

ユニクロが進めようとしている、グーグルのグループウエアの採用、AIを活用した業務の省人化などの協業の目的は、「(5)リアル小売業の業務の効率化と生産性の向上」です。ネット販売だけが、IT企業との協業ではないのです。

「顔に潜むハート形の診断」で店頭誘引、コーセー ルシェリの新しい「売り方」

コーセーのルシェリは2018年8月に誕生したエイジングケアのブランドである。顔の中に潜むハート形に着目した点が新機軸で、これを販促にも活用する。ここではハート形の診断機である「ハートリフト シミュレーター」、およびそれを使ったカウンセリングを中心に、店頭でのカウンセリングによる個の捉え方を見ていく。(月刊マーチャンダイジング2018年9月号より転載)

顔の中のハート形を4つのタイプに分類

人の顔の中には、鼻の頭を起点に鼻先・あご先を支点に、頬(ツヤ)のもっとも高い位置とフェースラインを結ぶことでハート形ができる。ルシェリではこれをハリ・ツヤのある肌の目安とし、美しいハート形を目指すためのブランドであるというメッセージを発信している。

写真1は特殊な撮影で顔のハート形を可視化したもの。加齢によりハリ・ツヤがなくなることで、「ハートのラインがガタガタ」になり、さらに肌のハリ・ツヤがなくなることで「ハートの山が低くなる」様子が見て取れる。

〈写真1〉 顔に潜むハート形

このように、肌のツヤやハリの状態を具体的なハート形で示すことで、目指すべき目標がわかり消費者は関心を持ちやすくなる。売り手側も商品の紹介がしやすくなる。

店頭でハート形を診断するのが「ハートリフト シミュレーター」。美容部員、営業担当、ラウンダー(店舗巡回担当)などコーセーのスタッフが持つ接客用のタブレットにアプリの形で搭載されている。

まず、対象者の顔写真をとると、画面にハート形がすぐに表れる(図解1参照)。

このハート形はカウンセリングの途中で必要に応じて消したり表示したりできる。さらに、画面に出てきたハート形は、次の4つの顔立ち印象の中から分類されている。

クールハート(右上) フェースラインが細くて頬の位置が高い。大人っぽいシャープ感のある、スタイリッシュでかっこいい印象
フレッシュハート(右下) すっきり感のあるヘルシーで爽やかな印象
フェミニンハート(左上) 女性らしいカーブ感のある優しくエレガントな印象
キュートハート(左下) 丸みや柔らかさのある、かわらしくピュアな印象

技術的には顔認証技術がベースとなっており、よりリアルなイメージをつくるための細かいプログラミングがされている。

〈図解1〉 ハートリフトシミュレーターでのカウンセリング法

①ピンクのガイドラインに顔を合わせて撮影する
②顔にハートが表示され、4つのタイプのハート形のうちどれに該当するか診断
③ハートリフトバーをUpにすると若返りを体験
④ハートリフトバーをDownにすると老け顔体験

ハート形をきっかけに個のニーズを引き出す

4つのハート形のタイプは、とくに優劣をつけているわけではない。それぞれ個性の表れとして捉え、現状のハート形を維持したいのか、別なタイプを目指したいのか、カウンセリングで聞いていく。

たとえば、クールハートの人がもう少し丸みのあるハート形の顔にしたいと希望する場合は、部分的にツヤを出すルシェリのグロウエッセンススティックを頬骨のやや外側下めに付けることで、ハートの山が左右に広がり丸みが出る。

ハートリフト シミュレーターの使用方法やカウンセリングの教育を担当する、チェーンオペレーション推販部美容教育課の鶴ヶ崎さんは次のように語る。

「このようなハート形が理想、こうしましょうという提案ではなく、あくまでお客さまの希望を聞きながらお話をします。ハート形の診断だけでなく、お悩みをうかがってパーソナルな提案をしていきます。今回の化粧水、乳液はそれぞれ3タイプを組み合わせることにより個人に合ったご提案ができる設計になっています」

エイジングケアは一般的には「年齢に応じた肌のお手入れ」と定義づけられ、ハリ、ツヤ、しわ、たるみなどが具体的な悩みとなる。ルシェリではそうした具体的な悩みを顔の中の「ハート形」にいったん集約させ、そこからカウンセリングによって再び個別の悩みを引き出すという販売プロセスを取る。顔の中のハート形およびハートリフト シミュレーションはカウンセリングにより個別の悩み、ニーズを引き出すためのきっかけになっている。

ハートリフト シミュレーターを使ったカウンセリングは「きれいなハート形の維持がエイジングケアにつながる」というわかりやすいテーマに基づいた推奨販売、販促の手法である。

さらに、ハートリフト シミュレーターの目玉機能ともいえるのが「ハートリフトバー」(図解1の③ ④ )である。Up方向にバーを動かすと、ハリ・ツヤが増し若返ったように見える。Down方向に動かすとハリ・ツヤがなく全体に老けた印象になる。

ハートリフトバーにより顔印象の変化を自分の顔で体験できるので、エイジングケアのモチベーションアップに役立つ。シミュレーションの写真を活用することで、ハリ・ツヤの度合いをイメージできる個別体験型の販促である。

デジタル技術を使ったカウンセリングが今後重要

インターネット、SNSの影響で、化粧品に関する情報源が多様化、複雑化している。とくにインフルエンサーと呼ばれるSNSやインターネット上で消費や購買行動に影響を与える個人を、大手から中小まで多くの化粧品メーカーが販促のために採用している。こうした流れについて鶴ヶ崎さんに聞いた。

「インフルエンサーの与える影響は大きいとおもいます。実際に役に立つ情報もたくさんあります。個人の意見として影響を与えていることが評価されていますが、大きな枠組みとしては一部マス広告と似てきているようにも見えます。インフルエンサーの情報にプラスして、店頭で自分だけに合ったスキンケアやメイクの方法を知ることも試していただきたいですね。ただスタッフと話すだけでも気分転換やストレス発散になるかもしれません。それも美容にとっていいことですよ」

インフルエンサーを使った販促の成功事例は多数ある。個人の中立的な立場からの情報発信が強みとされるが、多くのケースで、メーカーとインフルエンサーとの間に「契約」があることも事実である。

そういう意味では、インフルエンサー販促も、一部ではマス媒体化しているといっていいだろう。その次に何が来るのか、インターネット、SNSの販促には常に新しい手法が求められている。

ドラッグストアの店頭での販促を考えれば、アプリやマーケットオートメーションなどデジタルを使ってターゲットを絞る「個」の捉え方もある。一方で、ハートリフトシミュレーターのように、デジタル技術を使いながらも、カウンセリングによって個のニーズを捉えるという手法もある。後者は、リアル店舗の強みを出すため、ロイヤルカスタマーを育成するためには、今後強化すべき手法である。

その際は、メーカーの発想、技術を店舗で生かしてクロージングするという製販一体的な体制づくりが重要である。

「労働生産性」向上のための6つの重点経営課題

ネット販売との競争が激化している昨今、顧客の満足度を確保しつつ労働生産性を向上させるための経営課題について考えます。

働き方改革の第1の課題が「労働生産性」の向上

この調査は、「働き方改革」に関連して、「自社ですでに実施していること、実施予定のことはありますか?」という月刊MDからの質問に対する小売業21社の回答結果です(詳細は月刊MD10月号参照)。

その第1位が「労働生産性の向上」、第2位が「パートタイマーのキャリアアップ支援」という回答でした。労働人口の急速な減少を解決するためには、「労働生産性の向上と」「パートタイマーの戦力化」の2つが、最重点の経営課題であることがわかります。

「流通用語集」によれば、労働生産性とは、「小売業における人の生産性を総称して労働生産性という。また、ある一定期間における従業員1人当りの粗利益高のこと。労働生産性の目標値は月80万円、年間1,000万円が目安である(8時間換算)」と定義されています。現在、日本の小売業の労働生産性は800万円(年)程度と言われており、目標値である1000万円を達成するためには、現状よりも25%も労働生産性を向上しなければならないことがわかります。

一方で、ネット販売との競争が激化している現在、労働生産性向上のためにリアル店舗を無人化し過ぎると、顧客満足の低下を招くリスクがあります。無人レジの導入を進めていたウォルマートが、今年5月に「無人レジシステム(スキャン&ゴー)」の導入を中止した理由は、無人レジシステムの導入でレジ人員を減らしても、生産性の向上には結びつかず、一方で、「顧客満足」の大幅な低下を招いたからです。

リアル店舗は、ネット販売では体験できない「接客してくれる」「試せる」「試食できる」「話せる」といった、人を介したリアルな買物体験の質を向上させながら、物流センター、バックヤード作業、補充・発注作業などの「顧客接点」以外の単純作業の「省人化・省力化」を進めるという二面作戦が、現代の労働生産性向上のロードマップであると思います。

単純作業を「省力化・省人化」し労働生産性を向上する

単純作業の「省力化・省人化」を進めて、労働生産性を向上するための重点経営課題を以下に整理してみましょう。

この連載の第9回「ピースピッキング生産性が2倍になったPALTACの次世代型物流システム」の記事によれば、従来のPALTACのピースピッキングの仕組みは、オリコンに搭載したカートを人間が動かして在庫商品の場所に移動し、そこでピースピッキングする(オリコンに商品を入れる)方法でした。

PALTACの新しい仕組みは、人間は所定の位置から動かず、商品が動くことでピースピッキングを行う方法です。作業の大半を占めていた人が「歩く」「探す」という作業がなくなり、ピースピッキング生産性は2倍に向上しました。まさに「人の歩行距離を減らす」ことが、単純作業の労働生産性向上の急所であることがわかります。また、多くの小売業で挑戦している「通路別納品(カテゴリー納品)」も、人の歩行距離を減らす取り組みです。

「商品のタッチ回数」を減らすためには、「売れ数比例配分」の原則を徹底することが重要です。よく売れる商品の陳列量(在庫量)、発注単位、補充・物流単位を増やすことで、商品に触る回数を減らすことがローコストオペレーションの原則です。売れ筋が1フェースで陳列されていて、1日に何度もバックヤードから「ピストン補充」している作業状況では、労働生産性は向上しません。

補充・物流の単位は、コストの低い順番で「パレット物流」「ケース物流」「ピース物流」に分類できます。ピース物流は、わざわざケースをばらして、ピース(1個)単位で物流するわけですから、当然、人手とコストがかかります。

パレット陳列のできない小型店でも、販売数量の多い売れ筋商品に関しては、「ケース」や「ボウル」単位での発注・補充・陳列を行うことで、商品のタッチ回数を減らし、労働生産性を向上することができます。

箱(ケース)単位で、発注・補充・陳列を行うことで労働生産性を向上しているアメリカの「アルディ」の陳列。

「波動を少なくする」ことも、ローコストオペレーションのポイントです。人口減少時代のこれからは、無理やり売上を増やす「ハイ&ローの価格販促」から、EDLP(エブリデーロープライス。毎日同じ価格で売り続けること)の売り方に転換すべきだと思います。価格を上げ下げする販促は、作業量と在庫量に大きな波動が生まれ、結果として、作業コスト、在庫コストが増加します。

EDLPによって、「売れ方の波動」を少なくすることで構造的なローコスト経営体質を実現し、その結果として労働生産性を高めることが、これからの流通業の重要な経営戦略だと思います。「売上増」よりも「生産性向上」の方が重視される時代になります。

チェーンストアとは小さな改善を大きな利益にすること

チェーンストアの特徴は、1店舗での「小さな改善」を水平展開(標準化)することで、「1店舗の作業時間削減×店舗数×365日」となり、小さなコスト削減が、企業全体では膨大な利益の確保につながることです。

2018年に国内店舗数2万店を突破したセブン-イレブン・ジャパンでは、本社と同じビル内で営業するセブン-イレブン千代田二番町(以下、二番町店)で、作業改善のための新しい技術と設備の実験を行っています。

とくに商品陳列に関する技術と設備の実験が多く、「スライド式の棚(スライド棚)」はゴンドラ、チルドケース、冷凍リーチインケース、FFウォーマー(揚げ物用ケース)の各所で使用されており、作業時間削減に最も寄与しました。

たとえば、チルドケースと冷凍リーチインケースのスライド棚だけでも、1日54分の作業時間を削減しています。棚を前方にスライドさせることで、時間がかかる「先入れ先出し作業」をスムーズに実施できるため、作業時間の大幅な削減に直結するわけです。54分×2万店×365日≒約4億分の全店・年間の労働時間削減につながります。まさに、小さな改善が大きな利益に直結することが、チェーンストア経営の神髄であることがわかります。

生産性向上に大きく貢献する「スライド棚」。

接客の自動化(オートメーション化)も、顧客満足と生産性向上の両方にとって不可欠です。とくに、タブレット端末を活用する「接客のオートメーション化」への取り組みは、これからの最重点の経営課題です。専門家が不在時でも、誰でもがある程度の接客ができるようにITでサポートすることで、顧客満足の向上につながると同時に、「パートの戦力化」にも貢献します。

「IT化、AI化、ロボット化、デジタル化」は、労働人口減少の中で、単純作業を機械に置き換えることで、「省力化・省人化」を実現することです。PALTACの新型物流センターも、最新のAI技術、ロボット技術を活用して、省力化・省人化を実現しています。また、小売業の現場で季節で変わる「店内ポスター」を貼る、剥がすための作業人時数は想像以上に多くかかっており、今後は「デジタルサイネージ」の導入が一気に進むと思います。

流通先進国であるアメリカと比較すると、まだまだ低い日本の労働生産性。逆説的にいえば、労働生産性の低さこそが、日本の流通業の「伸びしろ」の大きさであり、利益増のチャンスだと思います。つまり、労働生産性の改善こそが、これからの日本の流通業の利益の源泉なのです。

小売各社PBを比較してみました~スムージー・サプリ編~

流通小売業各社が開発にしのぎを削るプライベートブランド(PB)。このコーナーは見て、触って、使ってみて、リアルな商品のホントのトコロを編集部員のNとTがチェックし、イチ生活者目線で大いに語らった記録です。お気楽にお読みください!(月刊マーチャンダイジング 2018年9月号より流用)

総合力はローソンが?「グリーンスムージー」

イオン、名称「生菓子」の衝撃

T
まずは、スムージーから。健康を気にする男女の手が思わず伸びるヘルス&ビューティな商品だとおもうのですが、現在プライベートブランド(PB)として取り扱っているのは、ほぼコンビニですね。私もランチ時なんかに1本買い足したりするのですが…。
N
ドラッグストア(DgS)にあるのは、粉末状のものが多いよね。
T
そうなんですよね。今回は4社全8品のPBスムージーを集めてみました。
N
ファミリーマートは、PBではなく専売品なんだ。
T
まずパッケージのデザインはどうでしょうか。
N
印象がよいのはローソンかな。表示も見やすい。レギュラーのものとワンデイとが少し見分けにくいかも。
T
あと、中ぶたを開けるための耳部分があるのはローソンとファミマのグリーンスムージーだけですね。まあ、コップに開けて飲むのか?という感じもしますけども。
N
ファミマのサラダスムージーは、容器もデザインも差別化できているよね。あまりない感じで。「モコズキッチン」風のイメージというか…。
T
味や食感はどうですか。
N
フルーツの甘味が強いものと、いわゆる青くさい系と分かれているね。セブン、ファミマのグリーンスムージーはリンゴの甘味が強い。その分、ジュースっぽくて飲みやすいともいえる。
T
甘い…ということで、気になる糖質ですが、そこまでの差はないですね。私は南国系のフルーツの臭みがダメなので、パインとかマンゴー、キウイがきついとちょっと…。ファミマのサラダスムージーは好みが分かれそうですね。コリアンダーとかハーブもいろいろ入っているのでアジア、タイ料理には合いそう。のどごしは一番いいです。
N
ローソンは全体的にケールっぽさが強いね。とくにワンデイ。青くささを求めている人はぜひ。レギュラーは、その中でも案外フルーティ。あらごし感の強い飲み口でいいね。
T
濃縮還元ではなくて野菜をつぶしてつくっている商品は安心できます。
N
スーパーフードのスピルリナが入っているのも(ナチュラル)ローソンらしい。
T
イオンはどうですか。パッケージはなかなかおしゃれな感じで仕上がっていますけども。
N
トロみというか、ドロみというかゼリーのようだね。(容器の表示を見る)え…これは…!?
T
名称、生菓子…!?
N
抹茶ペーストとかも入っているんだ!ちょっとびっくりする表記だね。 ライトの方は、糖質もかなり抑えて葉酸やビタミンDも入れて健康を考えた設計のようだけど…うーん。

[図表1] グリーンスムージー比較表(編集部調べ)

「サプリメント」は美容系成分も充実のスギが?


マツキヨはスタイリッシュに攻める

T
続いてサプリメントです。このカテゴリーは最近DgSでもPBが目立つようになってきましたよね。
N
正直、効果的なところは個人にもよるし、体感的な比較は難しいよね。
T
おっしゃるとおり! ですので、ここでは、パッケージのわかりやすさや手に取りやすさ、錠剤のサイズ感などで比較をしたいと考えております。
N
ダイソーも出してるんだね…!
T
40粒で108円…1粒2.7円。大体1粒4円代なので、やはり安いといえば安いですね。1日2粒で済むのも楽です。錠剤も一番小さいです。
N
イオンとカインズの錠剤サイズは同程度。スギは厚みが少し気になるかな。
T
カインズは栄養機能食品の表示ナシ。でも女性が気になる葉酸については、国の定める1日の摂取量240μgが含有されていたりします。
N
カロリーはスギさんが5kcalと高めだけど、その分美容系の成分や乳酸菌を入れていて、ターゲットの設定がしっかりされている印象かな。
T
たしかに。パッケージにも唯一、女性が描かれていますね。イオンはファミリーユース、カインズも幾何学模様で男女は選ばない印象ですが、少しケミカル感がありますかね。
N
イオンはおしゃれとはいい難いけど、これはこれで伝わるものがあるよね。成分の説明も表面にあって、ポイントがハイライトされている。
T
ダイソーは、金と赤で訪日客受けする高級感を感じます。
N
マツキヨは、デザインされた線の色と太さを配合成分とシンクロさせていて、中身が目で見てもわかりやすい。成分もあえて絞っている印象だね。
T
管理栄養士推奨、という表示もDgSならではの安心感を感じさせていいですね。

[図表2] サプリ比較表(編集部調べ)

アイシャドウ選びを「5つの選択肢」で簡素化したマキアージュの「売り方」

口紅やチークなどは自分に合う色味が重要で、とくにアイシャドウは色のバリエーションも多く、カウンセリングには技術を要するといわれてきた。マキアージュのアイシャドウでは2017年「運命のブラウン」というコンセプトのもと5種を発売、「瞳に合った色を選ぶ」という新機軸で大きなヒットを飛ばした。インターネットで膨大な情報が飛び交う時代、選びやすく購買につながる販促手法を見ていく。(月刊マーチャンダイジング2018年9月号より流用)

瞳の色に合わせてアイシャドウを選ぶ

自分の瞳の色に合ったアイシャドウを選んでくれるスマホサイト I(EYE)SHADOW

マキアージュでは「黒目」と呼ばれている虹彩の色(写真1)が個人によって異なることに着目。瞳の色を調査、研究し、自分の瞳の色に合わせてアイシャドウを選ぶことで、自然に大きな目もとを演出できることを提案している。瞳の色の明るさを5段階に分類し、それぞれの瞳色に合わせた5種のアイシャドウを発売し、「運命のブラウン」と名付けた。自分の瞳の色に合うアイシャドウとの運命の出会いという趣旨である。

〈写真1〉アイシャドウの仕上がりに影響を与える瞳の色

このキャンペーンは消費者に響き、「運命のブラウン」アイシャドウは2017年8月の発売から同12月までの売上金額で前年の215%を記録するという好調ぶりを見せた。

この好調を支えたのが店頭販促ツール「瞳色チェッカー」と「I(EYE)SHADOW」というスマートフォン用のデジタルコンテンツである。

「瞳色チェッカー」(写真2)は5段階の瞳の色を印刷したドーナッツ状の部分を瞳に合わせ、自分の瞳色がどの色に近いかをチェックするツールである。自分の瞳の色が分かれば、なじむ「運命のブラウン」アイシャドウが導き出される。店舗従業員が案内しながらチェックしてもいいし、セルフで簡単に試すこともできる。

〈写真2〉瞳色チェッカー

「I(EYE)SHADOW」(写真3、4)は、スマホでサイトにアクセスして自分の顔を撮影すると、資生堂独自の解析システムが瞳色を解析し、5種のブラウンアイシャドウの中から最適なものを選んでくれる。

〈写真3〉I(IEYE)SHADOW画面1

〈写真4〉I(EYE)SHADOW画面2

アイシャドウ以外のメイクとのコーディネーションも提案

「瞳色チェッカー」を使えばアイシャドウの接客は怖くない

店頭でのアプローチは「瞳の色に合わせて、自然に目を大きく見せることができるアイシャドウをご存じですか」と声掛けすることから始まる。色の説明をした後で、瞳色チェッカーを使い色を選んでいく。日本人の瞳色の平均を中心色としているので、その色を起点に合わない場合は明るい色、または暗い色を試し、自分の瞳の色を確認する。自分の瞳の色がわかれば、「運命のブラウン」アイシャドウが見つかるという仕組みだ。

こうした接客で、技術を要さない簡単な案内ながら、お客の関心、納得度は高まる。資生堂でドラッグストアチェーンの化粧品販売の責任者を対象に研修を担当している資生堂ジャパン コスメティクスブランド事業本部 事業戦略推進部所属の澤田幸(みゆき)氏はこう語る。

「これまでアイシャドウの色選びは難しいとおもわれていました。『運命のブラウン』というコンセプトで瞳色チェッカーを使えば、高い技術がなくてもお客さまに納得してご購入いただけるチャンスが広がります。ツールを使うことで苦手意識を払拭していただきたいです」

瞳色チェッカーはセルフでも使えて、アイシャドウの色選びをサポートする。そこに運命のブラウンが見つかるツールがあることを案内するだけでも購買チャンスは格段に広がるだろう。これは化粧品の深い知識がないパート従業員や男性店長でもできることである。

「I(EYE)SHADOW」はスマホ用のサイトで瞳色チェッカー同様色選びが簡単にできる。その他、アイシャドウのメイクアップ方法、他のポイントメイクとのコーディネーションのコンテンツがある。

2017年7月にサイトを立ち上げ、同年12月までに445万PVを記録した。「I(EYE)SHADOW」は自宅など店外での使用を想定しており、デジタルによる店外カウンセリングツールともいえる。

「最近の女性はカラーコンタクトをしている人も多く、付けているときと外したとき、両方の色を見たい場合にI(EYE)SHADOWは便利です」(澤田氏)

「運命のブラウン」を見つけるという同じ目的で、店頭ツールとデジタルツールを用意して、接客機会を広げている。

購入する根拠、目的をテーマとして設定する

「運命のブラウン」の成功のポイントは、使う側、販売する側双方にとって迷いがちなアイシャドウの色選びを、瞳の色で絞り込んだことだろう。加えてこの5種類の中にあなたに合った「運命のブラウン」がある、というコンセプトは、購買に向けて背中を押す有力な一手になる。

現代は情報があり過ぎて買う側はどの情報を根拠に購買すればいいのか迷っている人は多い。SNSでお気に入りのインフルエンサーの情報に頼ったり、行動を後追いしたりするのも、膨大な情報を自分では処理しきれないことの表れだろう。

そこに、確かな研究結果に基づいた選択肢があり、それを試すツールが用意され、選択した結果に「運命のブラウン」という情緒あふれるコンセプト、ワードが裏打ちされていたら購買率は高まる。215%成長もうなずける。

マキアージュでは2018年3月、「透明感を引き出す」口紅とチークを発売し好調だった。通常、透明感を引き出すのはファンデーションやスキンケアの領域だが、ポイントメイクにその手法を取りいれたことは新鮮な切り口である。これも「運命のブラウン」同様、テーマ設定により成功したマーケティングである。

何を根拠に購入するか(5種の中に「運命のブラウン」がある)、何を目的に購入するか(透明感を引き出す)、膨大な情報量で選びづらい環境では、商品選びのナビゲーターとなる根拠、目的を指し示すことの重要性を、マキアージュの成功事例は物語っている。これはメーカー㆑ベルの話にとどまらず、店頭での売り方にも共通する。不特定多数を対象に商品を並べるのではなく、収益性の高い重点商品は、購入すべき根拠や目的を示して選びやすくすることで購買は促進される。

壁のない組織体制で販促はより機能する

「運命のブラウン」の成功の裏には、組織体制という要素もある。資生堂ではブランド、営業、販売(美容部員)が一体となって動いており、意見交換も活発に行っている。マキアージュではブランドと営業が月一回ミーティングを行い、施策や意見をすり合わせる。

瞳色チェッカーに関しては、「運命のブラウン」というキャンペーンの準備段階で、カラコンの色合わせツールをヒントに営業と連携しながらブランドが製作したものである。こうした緊密な連携は当然販売の現場まで落とし込まれている。

「ブランド、営業の考えや施策はすべて販売の現場と共有しています。さまざまなアイデアや販促ツールが出てくるので、美容部員は販売しやすくなったと感謝しています」(澤田氏)

情報源は多様化しており、膨大な量がある。選択肢を絞って、買いやすく一次選別することでマキアージュは売上拡大に成功している。加えて、多様化する情報源に対応するため、メーカーもこれまで以上に多くの媒体で情報を発信し、販促を打たざるを得ない。複雑になるマーケティングは、ブランド、営業、販売が一体となり、その意図や施策を共通理解していなければ機能しない。販促が機能するためには壁のない組織体制が重要なのだ。

「天災」発生時の現場の行動力で「企業文化」の強さがわかる

企業経営は、「企業文化づくり」に始まり、「企業文化づくり」に終わると言われています。企業文化の強さが、その企業の競争力であるといっても過言ではありません。企業文化の強さがもっとも試されるのは、天災などの突発的な出来事が発生したときです。今年は、「西日本大豪雨」「北海道胆振( いぶり)東部地震」と立て続けに天災に見舞われました。月刊MDで取材した、天災発生時の店舗現場の「行動力」の実例を掲載します。

東日本大震災の発生後、東北のツルハドラッグの店頭に行列ができた様子。まさに小売業は地域のライフラインである。

「行動」が変わって初めて企業文化は強くなったといえる

企業文化とは、その企業の「経営理念」や「経営哲学」が、単なるお題目ではなくて、その企業に属する社員全員の意識に深く浸透し、それが全員の「行動」に結びついた状態のことをいいます。

すべての企業は、「顧客第一主義」「店は客のためにある」などの素晴らしい経営理念を掲げています。しかし、経営理念は素晴らしくても、現場社員の行動は、客のことなどまるで考えていない組織はたくさんあります。企業文化の強さは、組織に属する全員の「行動」が変化したときに初めて、達成できるものです。

そのためには、経営理念を具現化する「行動改革」を何度も何度も繰り返し教育し、こういう状況のときには、こういう行動をとるべきだということを全員が共有化できるまで徹底することが大切です。

本部と連絡の取れない非常事態でも、現場の判断で正しい行動を選択できる「強い企業文化」をつくった組織が、最終的に競争優位に立つことができます。

以下に、月刊MDで取材した天災発生時の現場の行動力を紹介します。2つの事例ともに企業文化の強さが、現場の行動力に表れています(古い事例に関しては、人も店も変わっている可能性がありますので、あえて匿名で掲載しています)。

現場の判断で震災直後に営業開始~ツルハドラッグ~

2011年3月、東日本大震災直後、停電状態で電気もレジも使えない中、現場の判断で地域の消費者に商品を販売したツルハドラッグ(巻頭写真)。地域生活のライフラインとして、「1日も早く店を開ける」という企業文化が、現場社員の自主的な行動に結びついた事例です。

東北エリアでは地震の後、ガソリンの供給が止まり出勤できない従業員が続出しました。当時の担当SV(スーパーバイザー)は、営業を続けるために、また保安上の理由からも店舗駐車場に車を駐め、3日にわたり車内で寝泊まりしながら仕事に当たったそうです。この間、口にしたものは店の商品であるポテトチップスと水だけでした。

「(地震があっても)全店営業というのが会社の方針でしたし、私も絶対に担当する店は閉めないという強い意志を持っていました。車に寝泊まりしたのは私だけではなく店長たちも同じです。

地震直後から大勢のお客様が、「商品がほしい」といって店に来られました。店内は危険だったので店の外で商品を販売し続けました。駐車場に並んで待っていただきましたが、多い時で700mくらいの行列ができる程に商品へのニーズは強く、特に赤ちゃんのミルクを求めるお客様が多くいらっしゃいました。

地震の混乱で皆疲れて、極限状態ともいえるような状況だったと思います。それでも皆、紙と鉛筆と電卓で必死に外売りを続けました。

私たちの支えになったのは『こんな時に店を開けてくれてありがとう』というお客様の声でした。困難な状況でもこれだけのお客様に必要とされ、感謝され、ライフラインである店を守り続けていることに誇りを感じました」。

(※月刊MD2011年5月号掲載の記事を抜粋)

企業文化の定着がわかったことが、不幸な出来事からの大きな収穫~レデイ薬局~

2018年7月6日(金)から激しい雨が降り続いた愛媛県南部では、一級河川「肱川(ひじかわ)」上流をせき止める野村ダムの水位が急上昇し、これを受け国土交通省では午前6時20分、基準の6倍の量にあたる最大毎秒約1,800トンを放流しました。

浸水被害にあったくすりのレデイ東大洲店。

このエリアのSVの越智氏は、当日の行動を次のように振り返ります。「朝6時前に大洲店(東大洲店から西南に約2km)の高砂店長から連絡があり、店舗前の道路が既に2〜3cm冠水しているので、当日の営業を検討する必要があるということになりました。その時点で近隣では防災無線などで避難を呼び掛けていました。

私は東大洲店から2kmくらい離れた場所に住んでいるので、大洲店の店長と二人で現場の確認を行いました。その場で従業員の安否の確認と出勤可能かどうかを緊急連絡網で確認しました。その結果、従業員の住まいの多くが、避難指示区域にあることが分かりました。

午前7時過ぎには従業員の安否、店舗周辺の状況確認が終わり、出勤できる従業員が少なく、本日の営業は困難なので店休したい旨、店舗運営部長に連絡しました。部長からは何よりも従業員の安全を優先させるように、という指示があり、店休が決定しました」

決定した時間は野村ダムの放流により肱川が氾濫して大洲市にも避難指示が出された時間とほぼ同時刻であり、的確な判断であったといえます。近隣にはこの日営業して店内が浸水し、従業員が危険な目にあった店舗もありました。

什器の下段まで浸水被害にあったくすりのレデイ東大洲店。

その2日後の7月9日に東大洲店の復旧作業が始まりました。田村店長の号令の下、東大洲店の従業員たちは午前8時、店舗復旧のため店に集合しました。本部からの応援メンバーに加え、前日に依頼していたベンダー、メーカーの応援部隊も駆けつけ、東大洲店復旧チームは90人程になりました。

「当日は道路が復旧していたことも分かっていたので午前7時前には東大洲店に到着しました。当日駆けつけた従業員の中には、自宅が浸水したり、断水になるなど困難な状況にある人もいましたが、自分がDgSという地域に貢献する店に勤務しているという責任感から店舗復旧に駆け付けてくれた人もいました」(店長談)

店舗復旧にあたり本部からは営業本部副本部長を筆頭に、商品部長、店舗運営部長の3人が陣頭指揮を執り作業が進められました。第一に行ったのが、浸水で廃棄処分となった商品の運び出し。それらすべてを一旦駐車場に集め、罹災証明用の写真を撮った後、設置されたコンテナの中に廃棄する作業が行われました。

店内から廃棄物を出し終わると床や什器の清掃に取りかかった。店舗内の床清掃、消毒には外注した清掃業者も加わりました。「事前の報告により什器の下段が浸水にあったということだったので、最下段と下から二番目の棚にある商品は前日に本部から発注をかけていました。9日午前に発注した商品が到着。廃棄物の撤去、床の清掃・消毒、商品の補充を終え東大洲店を再開させたのは10日の正午頃というスピーディな復旧でした」。

田村店長は当初、被害状況から見て店舗の再開までには1週間くらいかかるのではと心配していましたが、作業に加わったメンバーのチームワークで、驚異的なペースで店は復旧していったそうです。

最後に、白石明生・代表取締役副社長執行役員営業本部長は、次のように感想を述べています。「自分の困難よりも店舗復旧を優先させた従業員がいるように、レデイ薬局では企業文化の定着に一定程度成功していると実感しました。これは、不幸なできごとからの大きな収穫だったと思います。当社の企業スローガンは、『すべてはお客さまのために』とあります。そのスローガンが災害時の具体的な行動に結びついたことは大きな収穫だったと思います」

(※月刊MD2018年10月号掲載の記事から抜粋)