中間流通コストを下げ、大衆の豊かな暮らしに貢献する

卸売業大手のPALTAC。2018年8月に同社が新潟県見附市に開設したRDC新潟は、卸売業の枠を超えて自社で研究開発した次世代型物流システムを導入。78億円を投資し、年間出荷能力250億円を計画する。この倉庫の設計を担当した研究開発本部の三木田雅和氏に、そのコンセプトと卸売業が担う役割の変化についてお話を伺った。(聞き手:MD NEXT編集長 鹿野 恵子)(月刊マーチャンダイジング 2019年2月号より転載)

180度発想を転換した新物流方式

──新RDC新潟は御社の既存RDCとは大きくコンセプトを変更していると伺いました。

三木田 はい。2016年4月に立ち上がった研究開発本部が研究・開発を進めてきたSPAID(SuperProductivity Advanced InnovativeDistribution)という方式を導入しています。

従来のバラ商品の出荷作業は、作業者がピッキングカートを押して倉庫エリアを歩き回り、商品をピックするという方法でした。当社ではこの方式を20年かけて進化させてきたという自負があります。

しかし、より生産性を高めるためにはどうすればよいかと、改めて庫内作業を分析したところ、「ピッキング」作業は全体の50%にすぎず、残る50%を「歩行」が占めていたのです。そこで歩行をなくし、ピッキング動作を100%にするために、人がモノを取りに行くのではなく、モノが人の方に届くようにして歩行をなくそうというコンセプトを取り入れたのがこの新RDC新潟なのです(図表1)。

──稼働後の状況はいかがでしょうか。

三木田 日に日に生産性は上がっていて、稼働から3ヵ月の現状、従来の1.5倍の生産性を達成しています。最終的には従来型のカートピッキングと比較すると2倍の生産性になる計画です。

──従来とはまったく逆の発想ですね。

三木田 提案当初は社内でも大きな議論がありましたが、最終的には会長(三木田國夫氏)と山岸十郎氏(メディパルホールディングス特別顧問)の後押しで、新方式に挑戦してみることになりました。

[図表1] 次世代バラピッキング MUPPSの仕組み

倉庫無人化によって倉庫の配置が自由になる

──その発想は何かに着想を得たものなのでしょうか。

三木田 とくにほかから着想を得たわけではありません。この方式を取り入れたのにはもうひとつ大きな背景があります。当社は将来的に倉庫の完全無人化を目指していて、現在人間が作業をしているところを、最終的にはロボットに置き換えたいと考えています。

ロボット化するにあたり、人間が倉庫を歩き回って商品をピッキングする方式だと、自律移動型ロボットとピッキングロボットの両方を開発しなければなりません。ですが、人が動かず、モノの方が動く方式だと、ピッキングロボットの開発だけに専念することができます。

──それまで人間がやっていた庫内作業をすべてロボットに置き換えるのですね。完全無人倉庫はあと何年ぐらいで実現できるとおもいますか。

三木田 完全に置き換えるまでにはかなり時間がかかるとおもいます。初めは人間とロボットが混在するのではないでしょうか。人間とロボットの比率が9対1からスタートして、次のセンターでは人間とロボットの比率が8対2になり……と、どんどん比率を増やして、最終的にゼロになるというイメージを持っています。

ロボットの方が多くて、人の方が少ないという未来は、それほど遠くない将来には実現可能だとおもっています。

──雇用についてはどのようにお考えでしょうか。

三木田 雇用云々の前に、少子高齢化で倉庫作業に対応できる人が集まらないという状況で、そこをロボット化することで補完したいと考えています。

──そもそも物流センターは人を採用して運営するのが難しい状況です。人を集めるために倉庫をつくる立地も限定されてしまっています。

三木田 そうですね。人を雇用することができる場所に倉庫をつくならければならないという制約は大きいと考えています。ロボット化することで、人の雇用をそこまで考えなくてもよくなれば、物流センター設置の自由度は増します。

──物流を最適化する場所へ倉庫をつくることができるというわけですね。

メーカーから納品されたケースの商品を保管トレー(緑色)に詰め替える。保管トレーは、「トレー自動倉庫」に格納される。当然、人は歩かずにすべての作業が完了する
自動倉庫に格納された保管トレーが高速で移動する世界初のマルチタスククレーンシステム。1時間に1万以上のトレー仕分け能力を持つ
保管トレー(緑色)からピックトレー(青色)に詰め替えた後に、手元に搬送されたピックトレーの商品を店別のオリコンに詰める作業でピースピッキングは完了。人は動かない、商品だけが動く

ピースピッキングロボットの開発に挑戦

──2019年11月には埼玉県の杉戸に新しいRDCがオープンする予定です。

三木田 はい。RDC東京の老朽化に対応するため、その代替として埼玉県杉戸に設立するものです。年間出荷額は1,200億円で、当社としては最大のセンターになる予定です。

新RDC新潟では、ケースピッキングロボットを開発・導入しました。ロボットにカメラとAIを搭載することで、ケースの形状やサイズを認識し、認識した情報を基にケースをピックし、任意の位置から任意の位置への搬送を可能にしました。600ケース/時のピッキングを実現しています。これは世界最速のスピードです(2018年7月時点、PALTAC調べ)。

まだ実現できるかわからないのですが、来秋開設する杉戸RDCでは、これまでバラ物流で人間がやっていた作業をピースピッキングロボットに代替させたいと考えています。

──ピースピッキングロボットの難しさというのはどのあたりなのでしょうか。

三木田 ケースと違って、ピースにはさまざまな形状がありますのでそこを認識する部分が難しいのと、仮に認識できたとしても、さまざまな形状、重量、強度などがありますので、ピッキングすることそのものが難しいという2点です。

また、現在使用しているロボットは、マスター情報を事前に持っていて、それを基に認識をさせているのですが、このマスター情報がなくてもピッキングできるようなものを、埼玉のセンターではチャレンジしたいとおもっています。まだできるかどうかはわかりませんが(苦笑)。

──それ以外の全体の配置やデザインなどは、新RDC新潟と杉戸RDCで違いはないのでしょうか。

三木田 そうですね。そこはあまり変わりがありません。基本は一緒で、さらに自動化を進めようとしています。杉戸では、入荷も自動化できないか挑戦しています。

AIケースピッキングロボット。パレット自動倉庫からの出庫作業を完全自動化する。600ケース/時のピッキングを実現した

いかなる部分でも鍵を握る「需要予測」

──新潟での経験を経て東京をつくられたとおもうのですが、どこか工夫されたところはありますでしょうか。

三木田 新潟でも当初の設計の意図とは違う運用になってしまった部分などを、実際に人が動いているところを見て、アップデートをしていかなければならないと考えています。

こまごまとした点はいくつもあります。本当にこまごましたところなのですが、たとえば、一言で「バラ出荷する」といっても、お客さまによってはボールで出荷してほしいというお客さまもいらっしゃいます。(※編集部注:ボールとは、ケースの中で、さらに包装されている小箱の単位。たとえば、ビール24本入りケースでも、バラで24本入っているものと、6本ずつ包装された形状のものがある。6本ずつ包装された形状のものをボールと呼ぶ)

これをボール単位で出荷するのか、それともバラで出荷するのかを、あらかじめ予測できていないといけないということに気付きました。全部ボールで保管してしまうと、あとの工程でバラにする作業が発生してしまいます。ある程度その部分まで予測をして、トレー保管するときにボールで補充するのか、バラで補充するのか指定しなければなりません。

──どのような部分でも需要予測が重要になってくるということなのですね。

三木田 弊社は、PARS(パルス)という需要予測システムを小売業さまに提供しています。過去の売上データから、弊社独自のアルゴリズムで需要を予測するというものです。こちらを導入されている小売業さまからの発注に関しては、弊社も予測ができるので対応しやすくなっています。今後はPARSの需要予測精度を上げていくつもりです。倉庫も、需要予測システムに応じて在庫予測、作業予測を立て、無駄な保管トレー化をしないようにしたいと考えています。

──今後RDCの展開はどのようにお考えでしょうか。

三木田 いまの数では対応しきれませんので、RDCそのものの数も増やしていく予定ですし、既存のセンターを新しい方式のセンターにスクラップ&ビルドで置換していきたいとも考えています。

──ほかの卸売業さんとの差別化はどのようになさっていくのでしょうか。

三木田 物流のコストと品質の面で差別化をしていきたいです。決まった時間に間違いなく届けるということを、他社とはまったく違う精度で実現し、コストも安くすれば、弊社を選んでいただけるのではないかと考えています。

新RDC新潟
ダイレクトピックステーションでは高頻度出荷ケースからのハイスピードピッキングを実現した

所得が下がっても豊さを享受できる世の中を

──御社はメーカー、卸売業、小売業、お客さまというサプライチェーンをつなぐなかで、今後どのような役割を果たしていくのでしょうか。

三木田 私はもともと自動車メーカーでロボットの技術者をしていて、3年前にPALTACに転職してきました。

入社前は、メーカーが商品をつくってから一般の消費者の手元に渡るまで、なぜこれだけコストがかかるのかが疑問でなりませんでしたが、入社してから中間流通のコストが大きなウエートを占めているということに気付きました。この中間流通のコストを抑えることで、商品が消費者の手に届く価格をもっと下げることができると考えています。

これからどんどんロボットやAIが普及し、仕事の自動化が進んでいくなかで、人間の単純作業は減っていくことでしょう。人によっては所得が減る人も出てくるはずです。そうなったときでも、その方々が豊かに暮らすことができるような世の中にしたい。

PALTACが扱っているのは、高所得者向けではなくて、生活に根付いた必需品です。その価格を下げるのは、メーカーさんの努力だけでは難しいと考えています。

卸売業がより中間流通コストを抑えることによって、AIやロボットが発達して賃金が減ったとしても豊かに暮らすことができる世の中を実現できるのではないでしょうか。

──チェーンストアも大衆の生活を豊かにすることを目的として拡大してきたという歴史的な経緯があります。そういう時代を彷彿とさせる大きな志ですね。本日はありがとうございました。

株式会社PALTAC
研究開発本部
三木田 雅和氏

気合と根性の「人海戦術×高コスト体質」を脱し「仕組み化」による高収益体質を目指そう

小売業の勝ち組といわれたDgS(ドラッグストア)の収益性が急速に悪化しています。2019年2月14日の「日経オンライン」の記事によれば、大手ドラッグストアの第3四半期は、大手5社のうち4社で営業利益が減少しました。売上トップの「ウエルシアHD」の第3四半期は、営業利益が前年同期比10%減と失速しています。営業利益減傾向を克服する課題と対策について考えてみましょう。

販管費率の上昇が営業率益減の原因

営業利益低下の最大の原因は、人件費の増加による販管費率の上昇です。今後も労働人口の減少によって人件費と採用コストが増加する傾向は続きます。

下の図表は、DgSの2017年度(一期前。図表では2018年と表記)の販管費率(売上に占める経費の割合)を低い順に並べたものです。同じDgSと名乗っていても、販管費率がもっとも低い「コスモス薬品」15.7%に対して、もっとも高い「ウエルシアHD」26.1%と、10%以上も開きがあり、同じ業態とは思えないほどの違いがあります。

17年度の第3四半期で問題となった販管費率の上昇傾向は、すでに前期決算のときに現れていました。15年度(2016年)と比較すると、上場DgS14社の販管費率の平均値は、2016年21.2%に対して2018年21.7%と、0.5%も販管費率が上昇しています。過去3年間で見ても、DgSの販管費はじわじわと上昇を続けており、17年度の第3四半期に、その問題点が一気に噴出したわけです。

ドラッグストア販管費率ランキング(低い順)

※月刊MD2018年10月号「ドラッグストア白書」より引用
※販管費率が2年前と比較して0.5も上昇(11社平均)
※14社中11社は前年比で販管費率上昇。

「高粗利益率」頼みから仕組み化による高収益体質へ

Dg.Sが急成長を遂げた理由を以下に簡単にまとめてみます。

成長理由のすべてを解説すると長くなりますので割愛しますが、DgSの販管費が上昇する最大の理由は、「人で売る高粗利益率体質」に依存しすぎて、ローコストオペレーションの「仕組み化」が後回しにされてきたことです。

もちろん、接客やカウンセリングで消費者の問題を解決し、推奨品を自信をもって販売することは、美容と健康に貢献するDgSの社会的使命です。しかし、「人海戦術×高コスト体質」のままでは、販管費の上昇→営業利益の低下は止められません。

労働人口の減少によって、DgSの人件費と採用コストは今後も増加します。また、高粗利益率を牽引してきた調剤も、薬価差益の減少傾向が進み、長期的に見ると調剤の粗利益率は低下していきます。調剤の粗利益率が低下しても、薬剤師の人件費をカバーするためには、調剤作業の仕組み化は待ったなしです。

住友商事傘下のDgS「トモズ」が、調剤ロボットの導入で、調剤業務の自動化実験を始めました。AIやロボットなどの最新テクノロジーを活用した「生産性向上」「省人化・無人化」の挑戦は、生産性向上のためには不可欠の経営課題です。

(参考:薬局チェーンのトモズ、ロボット導入で調剤自動化に挑む

また、DgSの武器である医薬品や化粧品の接客に関しても、iPadなどのタブレットを活用した「接客のオートメーション化」に挑戦することも重要です。たとえば、多くのDgSが「化粧品のカウンセリング強化」のために化粧品担当者の教育を重視していますが、化粧品担当者の「接客時間」や「接客方法」はほとんど可視化できておらず、「担当者まかせ」なのが実態です。

iPadを活用した化粧品のカウンセリングの仕組みを導入すれば、接客のログ(記録)がすべて残るので、化粧品担当者の「接客時間」や「接客内容」を可視化することができます。接客の生産性向上にもつながります。

「顔に潜むハート形の診断」で店頭誘引、コーセー ルシェリの新しい「売り方」

以下の写真は、以前、コスモス薬品のホームページに掲載されていた「タブレットを活用した医薬品の接客」のイメージ写真です。人の生産性を向上し、販管費の上昇問題を解決するためには、IT技術を活用した「作業と接客の仕組み化」が最優先の経営課題です。

接客のオートメーション化の事例(コスモス薬品のHPより)

妊活売場不在のDgSに、お客の約7割が不満【プレコンセプションケア売場を考える】

晩婚化や晩産化などにより日本の出生率は1.43人(2017年)。男女ともに早い段階から妊娠・出産の正しい知識を持ち、健康と向き合いながら人生をプランニングするプレコンセプションケアという考え方に注目が集まっている。売場での認知度向上に取り組み、ロイヤルカスタマー育成の真の入り口といえるプレコンセプションケアの提案にチャレンジしよう。

【意義】男女が将来の妊娠に備えて健康な心身をつくること

プレコンセプションケアは、短期的に妊娠・出産を目指す妊活とは異なり、将来的に子供を持ちたいと考える男女が、10代など早い段階から取り組むことのできる生活改善や心身の健康づくりを指す(図表1)。

[図表1] プレコンセプションケアのポジションマップ

国立成育医療研究センターHPより)

2015年に国立成育医療研究センターが「プレコンセプションケアセンター」を開設。女性やカップルを対象に将来の妊娠のための健康管理を提供する相談外来や各種検診を設けているほか、セミナーやイベントを通してリーフレットなどを配布し、コンセプトの普及に努めている。

妊娠・出産に関する知識は、妊婦になったり、夫婦で妊活に取り組むなど、いざ妊娠が自分ごと化しない限り触れる機会はほぼない。

その一方で、厚生労働省が推奨する葉酸の摂取時期は妊娠の1ヵ月以上前からとされていること、そもそも卵子の数は母親のお腹にいる時がピークで、出生後は新しくつくられることはなく減っていくのみであることや(図表2)、喫煙や不規則な生活が精子の劣化や男性側の不妊を招くことなど、本来、妊娠・出産を計画する前に知っておくべき情報は多い。

[図表2] 卵子数の推移

(参考資料:日本産婦人科学会データ)

年々増加している2,500g未満で生まれる低出生体重児も、母体が痩せの傾向にあると増えるとされている。

体がつくられる時期である思春期の不必要なダイエットも将来の不妊につながる等、これからの体におもわぬ影響を及ぼすこともある。認知度アップが命題顧客育成の要となるカテゴリー プレコンセプションケアは、このような妊娠・出産の正しい知識を持つことを含めて、生活者の人生設計と健康を見つめるための重要な提案となる。

近年テレビ番組「あさイチ」やいくつかの出版媒体でも取り上げられ、徐々に世間の知るところとなりつつあるが、まだまだ認知度は低い。

いまのステージでもっとも大切なことは、プレコンセプションケアを広く知り、知識を持ってもらうことである。プレコンセプションケアは、優良顧客育成の最初の入り口として知られるベビー・マタニティカテゴリーの手前に位置する、真の入口ともいえる新カテゴリーだ。生活者の健康を支え、身近に立ち寄れるドラッグストア(DgS)という業態として率先して情報を発信しよう。

【対策】①自分の体を知る

まず、大切なのは、いまの自分の体の状態を知ること。BM(I ボディマス指数)や体脂肪率が適正か、女性であれば基礎体温や生理周期、生理痛や体の冷えの有無なども把握しておきたい(図表3)。当たり前におもわれがちな生理痛だが、本来、痛みは少ないもの。子宮や卵巣に異常があることで痛みが強く出るケースもあるため、症状が重い場合は一度婦人科を受診したい。

[図表3]プレコンセプションケア・チェックシート(女性用)

(引用元:国立成育医療研究センター

男性でも健康診断などを利用し、男性不妊につながる生活習慣病のチェックをしておこう。現状の健康状態を踏まえて、栄養バランスをしっかり考えた食事を摂り、運動不足を解消するなど改善策を考えたい。

【対策】②よい血液をつくる

とくに、女性側が妊娠するために重要なことは、よい血液をつくり、温め、めぐりをよくすること。よい血液は、毎日の食事からつくられる。3食バランスよく食べることを基本に、鉄分、鉄分の吸収率を高めるビタミンCや葉酸、良質なタンパク質の摂取を心掛け、鉄分の吸収を阻害する菓子や加工食品を控えることを意識したい。鉄分の豊富な食べ物は、レバー、カキやシジミなどの貝類、牛肉などが挙げられる。

栄養補給をサポートするサプリメントの摂取も効果的だ。鉄分や亜鉛、葉酸、ビタミンなども、必要量を手軽に摂ることができる。

【対策】③血流をよくする

血流をよくするためには、ウオーキングなどの適度な運動、ストレッチ、日々の入浴習慣がポイントとなる。筋肉量を増やすことは、代謝を上げ、体温も上げることに直結するため重要だ。また、セルフお灸や温パッド、カイロなどを使う方法や、家庭用の低周波治療器やマッサージ機なども血流改善効果が期待できる。

先述したように、生理痛は子宮がある腰まわりの血流が滞ることでも生じる。冷えはそのほかにも肩や首のこり、脚のむくみ、頭痛、肌荒れなどを起こす原因ともなり得る。また、起床時に白湯を飲んだり、スープを飲んだり、朝食でエネルギーを摂ることは、体温の上がり切らない体を体内から温めることにつながる。体温が上昇することで免疫力もアップするため、生活に取り入れたい。「プレコンセプション」という幅広い提案のなかには、「温活」というテーマも包括されるだろう。

【対策】④リラックスする

自律神経のバランスを取ることも、健康維持には欠かせない。心にかかる負荷であるストレスも、血のめぐりを滞らせ、体温を低下させる。仕事などで緊張状態が続き、交感神経がオンになる時間が長くなることで体が冷えると、倦怠感や頭痛、不眠、ひどくなるとうつの原因ともなる。副交感神経をオンにする=リラックスする時間をつくること、緊張を緩めることが重要だ。

ストレス緩和には、心が落ち着くアロマを活用したり、肌触りのよいルームウエアやフットケア用品、温感タイプのアイマスク、③と重なるが入浴も有効な手段のひとつだ。入浴剤やシャワージェルなど、入浴タイムをより楽しむことができる商品は多くある。

[図表4] プレコンセプションケアのCDTの一例

〈取材協力〉

オムロンヘルスケア
広報・デジタルマーケティング部
基幹職 石崎 恵 氏

【売場提案のポイント】妊娠前ニーズの受け皿なし 定番コーナー化にチャレンジ

妊娠検査薬、排卵検査薬をはじめ、鉄分、葉酸といったサプリメントなど妊娠に関連する身近な商品の買い場としてDgSは選ばれている。一方で、妊活に取り組んでいる生活者へのアンケートによれば、DgSの妊活関連商品売場に約7割が不満を抱いているという(図表5)。妊活とプレコンセプションケアはイコールではないが、テーマとしては、妊活はプレコンセプションケアの中に含まれる。アンケート結果は大いに参考にできるだろう。

[図表5] DgS妊活商品売場に関するアンケート(PALTAC調べ)

現状は定番コーナー化されていないため商品の陳列場所がバラバラで、欲しい商品をじっくり比較検討できるような状態にはない。たとえば妊娠検査薬や排卵検査薬は、使用目的やシーンが異なるコンドームなどの避妊具、セックスウエルネス用品と並べられていることも多い。

妊娠後はベビー・マタニティ売場という受け皿があるが、妊活を含め妊娠前のニーズに対する受け皿はほぼないといっていい。プレコンセプションケアという概念をうまく活用し、妊娠前の不安や不満をすくう新しい売場を提案していこう(図表6)。

[図表6] 売場提案例(PALTAC提供)

①妊活生活の必需品
②赤ちゃんを迎えるからだづくり
③日々の妊活をサプリでサポート
④よもぎ蒸しで冷えから卒業
⑤今日から始めるポカポカ習慣

プレコンセプションケアを提案する際に心に留めておきたいのが、短期的に妊娠・出産に興味のない人でも目につくような場所に売場を設けることだ。既存のべビー・マタニティ売場の近くではなく、たとえば健康意識が高まっている健康食品売場の近くなど、多くの人の目につく場所が望ましい。これはプレコンセプション以外の新定番ヘルスケアを提案するときにもいえることだろう。店舗の中で常設の新定番エリアを設けることで差別化につなげるのもひとつのアイデアだ。

  • 健康食品売場など、妊娠・出産に興味のない人にも気付きを与えられる場所で展開
  • 売場ではリーフレットやチェックシートを使い、認知度を上げる情報発信を行う
  • 「温める」「リラックス」など、定番棚内で小テーマをシリーズ化
  • 売場誘導POPは、ベビー・マタニティ売場やメイク売場が有効

〈取材協力〉

PALTAC執行役員 RS本部長
村井 浩氏

コスモス薬品が2020年5月期から肥沃な「関東平野」で超ドミナント出店開始

コスモス薬品の横山英昭社長は、今年1月17日に行われた2019年5月期第2四半期決算説明会で、2020年5月期中に関東で同社が主力とする「郊外型店」を出店開始する計画であることを発表しました。九州の宮崎からチェーン展開を始めたコスモス薬品が、遂に関東平野でのドミナント出店を開始します。ドラッグストア(DgS)の「国盗り物語」は、いよいよ最終章に突入します。

関東1,000店構想を掲げてドミナント出店を開始

コスモス薬品の2018年12月末現在の地区別の店舗数は、九州地区541店舗、中四国269店舗、関西地区122店舗、中部地区26店舗です。九州が計画の約90%の出店を終え、中四国は同様に68%、西から着実にドミナント化を進めていることがわかります。今期の第2四半期までに合計46店を出店しており、毎年100店の大量出店を継続しています。

コスモス薬品は、郊外型の出店に先行して、今期中に東京都渋谷区の広尾エリアに1店舗、中野区中野駅の近くに1店舗の都市型(50~100坪程度)を出店する計画です。郊外型に関しては、千葉、茨城、埼玉、神奈川の立地調査を開始しており、2020年5月期中の出店を目指しています。将来的には九州地区600店、中四国400店、関西地区1,000店、関東地区1,000店(本誌推定)という計画で出店を進めているそうです。

食品のラインロビングと常識外れの超ドミナント出店

コスモス薬品の宇野正晃・会長(当時社長)に最初にお会いしたのは、約20年前のことでした。月刊MDを創刊して2年くらいのことだったと記憶しています。まだ宮崎にコスモスの本社があった頃です。宇野社長(当時)から、「ニューフォーマット研究会の会員になりたい」と連絡が来たのがキッカケです。その後、宮崎県の日南市の店舗を案内してもらったことがありました。

当時、九州には大店法の規制を逃れる規模の150坪型のDgSを展開する「イレブン」(現在はJR九州の傘下)などが九州全域に先行して店舗展開していました。それに対抗してコスモス薬品は、広い駐車場を確保した、2倍の面積の300坪型のチェーン展開を開始していました。

150坪型だと、薬局・薬店業界の仕入れ先でもなんとか売場を埋めることができましたが、300坪型だと新規取引先を開拓しなければ売場は埋まりませんでした。とくにコスモス薬品は、「食品」を積極的にラインロビングし、従来の150坪ドラッグストアよりも来店頻度も客数も多い「生活ストア」を志向し、当時見学した日南店もとても繁盛していました。見学した300坪店舗があった日南市の商圏人口は3~4万人程度だったと記憶しています。

しかし、すぐに宇野社長(当時)は同じ日南市に2号店を開店しました。結果として商圏が広がり、2店とも繁盛しました。さらに、同一商圏内に3号店を開店しました。1店あたりの商圏人口が1万人程度に商圏分割したので、さすがにもう打ち止めかと思っていたら、同一商圏内に4号店を出店して驚いたことを覚えています。コスモス薬品は20年前から「常識外れの超ドミナント出店」を実行しており、現在に至ってもその戦略はまったくぶれていません。

「ドミナント」と「EDLP」が超ローコスト体質の秘密

前述したように、コスモス薬品の飛躍のポイントの第1は「食品のラインロビング」、第2は「超ドミナント出店」です。そして、第3のポイントは、「EDLP(エブリデー・ロープライス)」戦略への果敢な挑戦でした。

今でこそEDLPを志向する小売企業は増えていますが、20年前はチラシに過激な目玉価格を掲載し、広域から集客する「ハイ&ロー」型の安売り合戦の全盛時代でした。私が「EDLPの方がコストが低いから、最終的には勝つ」とセミナーや誌面で提言しても、「日野さん何言っているの」と鼻で笑われていた時代でした。

コスモス薬品は、2004年にマザーズに上場する前に、「ポイント販促」と「短期特価販売」をやめて、全店をEDLP戦略に一挙に変更しました。当時、宇野社長は、「ポイント販促をやめることも、EDLP化することも、短期的には売上が下がる政策でした。だから上場する前に実行したのです。上場した後では、これほど大胆には変更できなかったかもしれません」という趣旨の話を聞いたことを今でも覚えています。

また、ポイント販促をやめると宣言したところ、たまったポイントを交換に来店する消費者が店舗に殺到し、銀行の取り付け騒ぎのような騒動になったそうです。そういう混乱を乗り越え、売上の減少を恐れずに、EDLPに挑戦したことが、コスモス薬品の成長を支えた重要な要素のひとつであったとおもいます。

とくに、「超ドミナント出店」と「EDLP」の2つが、コスモス薬品の常識外れのローコスト経営体質の秘密です。ランチェスターの法則によれば、超ドミナント出店によって地域シェア率を高めれば、物流費などのコストが大きく低下し、ある時期から「売上成長率」よりも「営業利益成長率」の方が高くなるといわれています。コスモス薬品は、まさにランチェスターの法則を実践したわけです。

また、ハイ&ローよりもEDLPの方が、「売れ方」や「作業」の波動が少なく一定であり、当然、「作業コスト」と「在庫コスト」が下がります。

下の図のように、コスモス薬品の粗利益率は19.8%と、一般的なDg.Sと比べると極めて低いのですが、販管費率(売上に占める経費の割合)も15.7%と低いので、差し引き4.1%の営業利益率を確保しています。「安く売っても儲かる経営体質」を確立していることがわかります。

しかも、コスモス薬品は過去の成功体験に埋没しないで、常に新しいことに挑戦しています。近年は、ディスカウントドラッグコスモスと名乗りながら、「接客強化」に果敢に挑戦しています。月刊MD2018年12月号の「Dg.S顧客満足度調査」では、コスモス薬品がダントツの1位でした。「安いけれど、接客もよい店」を実現していることがわかります。

第2四半期決算説明会でコスモス薬品の横山社長は、「今後、所得と人口の二極化が起こり、いずれも関東圏に集中するとおもいます。それに備え関東への出店を加速させます。肥沃な大地である関東への出店を本当に心待ちにしています」と新商勢圏へのおもいを語りました。「ザッザッザッ」という軍足の音が聞こえてくるような気がするのは、私だけでしょうか?

飲む人は3割近くが半年以上継続して飲み続ける「トクホ」

特定保健用食品・栄養機能食品・機能性表示食品で構成される、保健機能食品は2018年の市場は前年比5.4%増の7115億円と予想されています。特定保健用食品は、メタボ対策として生活習慣病予防を訴求する商品が市場をけん引しており、保健機能食品市場の約60%を占めていますが(2016年)、機能性表示食品への需要流出もみられ構成比は縮小していると言われる中、(富士経済)、今回は、「特定保健用食品」の清涼飲料(以下トクホ飲料)について、分析します。

56.3%の人がトクホを飲んだことが無い

まず、当社の自主調査では、20代~60代の男女に、(N=3,975名)に、直近1年間でのトクホ飲料の飲用経験を調査しました。

直近1年間でトクホ飲料を「飲んだことがある」と回答した方は、36.5%となり、店頭で様々なトクホ飲料が発売されている中、意外にも「飲んだことがない」と回答した方は、半数以上の56.3%となります。その理由については、「効果を感じられるかわからない」や「通常の清涼飲料と比較した際の値段の高さ」などが挙がりました。

次からは、トクホ飲料を飲んだことがあると回答した1,452名を対象に、飲んでいる期間や頻度について調査をします。

まず、トクホ飲料を飲んでいる頻度は、「1か月~3ヵ月」が17.1%でもっとも多い結果となりましたが、3割近くの方が、半年以上長期間にわたって飲み続けていることがわかりました。

次に、トクホ飲料を飲む頻度については、「週に1回以上飲んでいる」が24.1%で、4人に1人が週に1回以上トクホ飲料を飲んでいます。「毎日飲んでいる」方の、10.3%と合わせると3割以上の方が、日常的にトクホ飲料を飲んでいることがわかりました。

人気のトクホは「体の脂肪に効果的なお茶」

実際にどのような銘柄のトクホ飲料が選ばれていたのか、代表的なトクホ飲料の銘柄をセレクトし、直近1年間での購入経験について調査をします。

直近1年間で、購入したことがあるトクホ飲料について、1位が「サントリー 伊右衛門特茶」が43.9%で、半数近くの方の購入経験があると回答しています。「価格も手ごろでおいしく、体脂脂肪を減らすのを助けてくれるところが気に入っている(40代女性)」や「毎日飲んでも飲み飽きない味、健康管理のために飲んでいる(50代男性)」といった、手頃な価格で日常的に飲んでいると言った声が目立ちました。

また、2位以下は、「花王 ヘルシア緑茶」34.8%、「サントリー 黒烏龍茶」が19.4%、「コカ・コーラ からだすこやか茶W」が14.3%と続き、高血圧などの血圧対策に効果的な8位「サントリー 胡麻麦茶」9.4%を除き、トクホ飲料の中でも、体の脂肪に効果的だと言われる(脂肪を分解する・減少させる)お茶系飲料が多くの支持を集めたことがわかります。

手に取りやすい容器と陳列位置で人気を集めた「伊右衛門 特茶」

ここからは、2013年からサントリー「伊右衛門 特茶」を販売するサントリー食品インターナショナル株式会社ジャパン事業本部 米谷氏に、近年のトクホ市場や消費者ニーズ、販促方法の変化についてインタビューします。

Q1.ここ数年のトクホ飲料の市場変化についてはどうお考えでしょうか?

2013年、「伊右衛門 特茶」発売当時のトクホ飲料は花王さんの「ヘルシア緑茶」、当社の「黒烏龍茶」および「胡麻麦茶」などでした。購入層は、メタボや体型が気になり出した中高年の方が多く、売り場では最上段の商品棚、低めのペットボトル容器で販売されていたニッチな市場でした。その中でも、「伊右衛門 特茶」は消費者が手に取りやすい500mlPETサイズで発売し、普段飲むペットボトルのお茶と同じ商品棚に並んだことで、他のトクホ飲料も同じくスリムラインの容器が一般的となり、日頃の健康を高めたい人が日常的に飲む飲料として、多くの方に親しまれました。これが、トクホ飲料市場拡大の要因だと考えられます。

その後、2015年に機能性表示食品制度が始まり、健康への効果を表示した飲料や食品が発売された相乗効果で、トクホ市場も活性化しました。近年は短期集中型のフィットネスジムや、糖質オフなど、ダイエットに対して消費者の選択肢が増えたことにより、トクホ飲料に対して消費者の期待価値が低下してきており、上昇傾向であったトクホ市場も2018年は7年ぶりに停滞気味となっています。特茶としても消費者ニーズの変化に合わせ、コミュニケーション手法も変化せねばと考えております。

Q2.「伊右衛門 特茶」が発売されたことにより、伊右衛門ブランドの売れ行きに変化はありましたか?

「伊右衛門 特茶」発売初年度は、通常の「伊右衛門ブランド」を購入している方の試し買いもみられましたが一時的なものであり、飲む目的が異なるため、カニバリは起きていません。「特茶シリーズ」としては、2016年の「特茶 カフェインゼロ」、2017年の「特茶 ジャスミン」の発売により、バリエーションが増えたことで飲み分けをするユーザーがみられ、「伊右衛門ブランド」全体で考えると売上は拡大しています。

Q3.消費者に継続購入の後押しとなるような、キャンペーンや販促事例があればお聞かせください。

継続購入を後押しするための施策として、昨年9月に「特茶スマートアプリ×FiNC」をリリースしました。既存ダイエットアプリは女性ユーザー9割を占めると言われる中、同アプリは、特茶をきっかけに普段ダイエットアプリへの関心が薄い男性ユーザーにもダウンロードをしていただき、男女比は半々となりました。アクティブ率も想定を超える高い数値となり、特茶の飲用や、運動、規則正しい生活の習慣化をアプリによりサポートすることで、健康意識を高める好循環を作り出すことができました。

取材協力)サントリー食品インターナショナル株式会社 ジャパン事業本部
ブランド開発第一事業部 米谷氏
※図表1~5:ソフトブレーン・フィールド株式会社「マルチプルID-POS購買理由データPoint of BuyⓇ」20代~60代のアンケートモニター3,975名を対象にした、トクホに関するアンケート結果より。(WEB調査、調査期間:2018年12月7日~12月10日)

総合感染対策売場の作り方:季節に応じたディスプレイで、定番売場としての確立を目指そう

菌やウイルスが人、空気、生物などを介して広がっていく病気が感染症である。簡単にいえば、自分以外のものから「移る」病気で、マスク着用や手洗い、うがい、手指の消毒などで「感染」を食い止めることはできる。秋・冬のシーズン商品という位置付けが主流だが、感染のリスクは春・夏もあり、通年カテゴリーという意識づけがまず重要となる。(月刊マーチャンダイジング2019年1月号より転載)

市場の可能性】マスク、空間除菌など大型市場商品があり、可能性大

感染症対策といえば、冬季の風邪、インフルエンザが主流であり、商品としては風邪薬を中心とした感染後の治療薬と、マスクやうがい薬など感染そのものを防ぐ予防の商品とが混在しているのが現状だ。

まず、この記事で提案している「総合感染」という新定番売場のテーマは、菌やウイルスが体内に入らないように「感染」そのものを防御する商材を集めた売場である。治療ではなく、未病・予防の領域に属するということを意識しておこう。したがって「総合感染症対策」ではなく、あくまで「総合感染対策」という用語を徹底させよう。

市場規模を見ると、通年化の兆しを見せているマスクが500億円近くあり、金額的には核となる。近年急成長している空間除菌も300億円を超え存在感がある。主要な品種を足し合わせると1,400億円規模となり、新定番の可能性の大きさがわかる。これらの商材を季節に合わせた棚割と情報発信で売場展開すれば、定番売場として十分な収益を挙げられるだろう。

[図表1]感染対策カテゴリーの市場規模

※2016年1〜12月、全業態 調査会社、メーカーの集計を基に編集部作成

【シーズン提案】感染対策カレンダーをPOPとして活用

2003年に流行した中国・広東省を起源とするSARS(サーズ/重症急性呼吸器症候群)は、世界の32の国と地域で発症が報告され、致死率は全体で9.6%、一度かかると10人に1人が命を落とす危険な感染症である(※1)。

2012年には致死率35%というきわめて危険な感染症MERS(マーズ/中東呼吸器症候群)が中東、ヨーロッパなどで流行(※2)。いずれも、日本国内で感染者は確認されなかった。しかし2017年の来日外国人観光客は約2,870万人(※3)に上り、2020年には東京オリンピック・パラリンピックを控えており、今後海外からの感染リスクには注意が必要だ。

過剰な恐怖訴求はいたずらに生活者に不安を与えるが、日ごろの手洗い、うがい、手指の消毒などを習慣化させることは、世界的な感染症の対策にもつながる。

世界的な感染リスクに加え、総合感染対策を定番化するにあたり、もっとも重要なのは「通年化」だろう。現状、秋冬に展開される風邪、インフルエンザ中心のシーズンカテゴリーとなっているが、春夏にもある感染リスクを売場で情報発信すれば、生活者の健康維持、売上アップ双方につながる。

年間の感染リスクは図表2を参照してほしい。こうした情報をPOP化することも定番確立には効果的だろう。

[図表2]感染症カレンダー

[図表3]流行しやすい感染症の主な特徴

【定番売場の例】季節に応じた情報発信で感染対策売場は根付く

図表4はアルフレッサ ヘルスケアの提案を基にした総合感染対策売場の棚割である。図表3の中の感染対策でも示しているが、感染対策は、うがい、手洗い、除菌、マスクが基本となる。それらの予防策を通じて、シーズンごとに、現在どの感染リスクが高く、それにどう備えるべきか、といった情報発信が定番売場定着にはカギとなるだろう。

[図表4]総合感染対策棚割提案(3尺1本)

また、春夏の感染リスクは乳幼児、子供が患者になりやすい。現在はオフシーズン的に扱われている春夏に「子供を感染から守る」という訴求で母親にアピールすることも定番確立には重要だ。

※1:国立感染症研究所資料より
※2:厚生労働省資料より
※3:日本政府観光局発表

ヘアカット専門店「QBハウス」が1080円→1200円に値上げ

東洋経済オンラインの記事によると、シャンプーもパーマもしないヘアカット専門店「QBハウス」を展開するキューピーネットホールディングスが2019年2月1日から、カット料金を1080円(税込み)から1200円(税込み)に値上げしました。理美容業界に革命をおこした「1000円床屋」の最大手であるQBハウスの値上げの理由はなんなのでしょうか? (QBハウスは34都道府県で552店を展開・2018年6月末時点)

働き方改革で徒弟制度を企業に変えた

個人的なことで恐縮ですが、私はずっと「QBハウス」で髪を切っています。「髪を切るのに時間と金をかけたくない」というのが利用する最大の理由です。それに加えて、徒弟制度を理由に長時間労働を強いる理美容業界の慣習を否定し、理美容師の「働き方」を変えたQBハウスの経営姿勢に共感を覚えていたことも、QBハウスを利用する大きな理由です。

理美容業界は典型的な「徒弟制度」です。社員ではないので、見習いは朝1番に出勤し終電で帰るという長時間労働です。休みも少なく残業代が支払われておらず、結果的に低い賃金となっています。さらに、社会保険に加入していません。カット技術などの研修費は給与天引きであることも多く、仕事が終わった後に研修に行くなどの過酷な労働環境です。指名がとれなくなった40代は、独立するか異業種転職しか選択肢はありませんでした(QBハウスのホームページより抜粋)。

以前、美容室に商品を供給している某化粧品メーカーから聞いた話では、美容室(ヘアサロン)のオーナーのゴルフコンペはとても派手だそうです。高級外車やスポーツカーに乗り、高級ブランドに身を包んだオーナー達が、颯爽とゴルフ場に現れるそうです。ヘアサロンのオーナー達は、とても儲かっています。原価がかかりませんからね。しかし、その儲けは、そのヘアサロンで働く弟子たちの犠牲の上に成り立った儲けです。いくらカリスマ美容師とおだてられていても、尊敬できる業界ではないとずっと思っていました。

一方、QBハウスは、社会保険に加入した社員として採用し、残業代も1分単位で支払う普通の雇用条件にしました。また、徒弟制度はオーナーに気に入られれば昇給する情実人事でした。しかし、QBハウスは2人以上の上司が評価し、さらに社内検定を受けることで昇給・昇格する人事制度を整えました。キャリアアッププランも明示し、評価制度と待遇制度をオープンにしたことも、従来の徒弟制度の理美容業界ではありえないことでした。

QBハウスは、2018年4月の上場前の5年間、「働き方改革」の一環でさまざまな革新を行いました。たとえば、定年制を廃止し、永年勤続を奨励し、定着率の向上を図りました。現在、現役美容師の最高齢は80歳だそうです。また、勤続10年の社員が457名もいるそうです。月間の休日は、6~10日の選択制で、土日、休日も休むことができます。さらに、徒弟制度では給与天引きだった研修も、「有給研修制度」(ロジスカット)によって研修も勤務の一環と規定しました。

美容師の採用難が値上げの最大の理由

徒弟制度を企業化したQBハウスが値上げに踏み切った最大の理由は、美容師の採用難です。理美容室は全国に約36万店あり、現在も微増傾向ですが、美容師の新規免許登録は減少しており、慢性的な人手不足の業界です。QBハウスは、値上げによる増収を原資に、カット技術を教育する「ロジスカット」スクールに投資し、未経験者でも6か月で美容師として育成することを目指しています。美容師の人手不足を教育制度の充実による「早期育成」で乗り切ろうとしているわけです。

1000円に据え置く同業者もあるなか、1080円が1200円に値上がりするのは痛いですが、きちんと教育されて、素晴らしい「カット技術」と「接客」で迎えてくれる美容師が増えるのなら、1割の値上げは我慢しようかな。いずれにしても、徒弟制度のヘアサロンには一生行きません。

ネットで注文、55分以内に在庫を準備。カインズ資材館の「商品取り置き」サービス

オムニチャネルとは、ネット販売をすることではありません。ネットとリアルの購買データ、在庫データなどを一元管理し、「買物体験の質」を向上することです。今回は、プロ向け商品を「スマホで店頭在庫確認」→「スマホで注文」→「店舗受け取り」サービスを実験しているカインズの事例を紹介します。

在庫が確認できる。仕事前に店に取りに行ける。

ホームセンター(HC)のカインズは、職人(プロ客)向けの商品を取り扱っている「資材館」の商品を対象に、スマホで注文→店舗取り置きサービス「55-DASHプロ」を、昨年12月から開始しました。当初は、鶴ヶ島店(埼玉県鶴ヶ島市)、新座店(埼玉県新座市)の2店舗で実験を開始し、順次店舗数を拡大していく予定です。

「55-DASHプロ」の導入目的は、職人(プロ客)の利便性向上です。プロ客は、カインズのオンラインショップで、仕事で使う道具・材料の在庫を事前に確認・注文します。カインズが55分以内に在庫商品を取り置きし、プロ客のスマホにショートメールや電話で「取り置き完了」の連絡が来ます。プロ客は仕事に行く前にカインズに商品を取りに行きます。「店に行ったが在庫がなかった」「店内で商品を探すのに時間がかかる」などの不満がなくなり、プロ客の利便性は大きく向上します。

Eメールではなくて、あえてショートメールや電話でプロ客に連絡します。会員登録のための入力手順をできるだけ簡単にするために、Eメールの登録は任意にし、電話番号を登録するだけで会員登録できるようにしました。

このサービスの最大のメリットは、資材館の約5万品目の在庫をプロ客が事前にネットで確認できることです。以前は、資材館の商品は、カインズのECサイト「カインズオンラインショップ」には登録されていない商品が大半でした。まず資材館の約5万品目の商品をカインズオンラインショップに登録しました。下の写真の「ECサイト」で商品を確認した後は、「在庫のある店舗を探す」をクリックして、必要な商品の理論在庫数を確認できます。在庫確認は、顧客だけでなくて、店員も見ることができます。

「来店したけど欠品していた」「10本必要なのに在庫が3本しかなかった」といった欠品ストレスは、顧客の最大の不満でしたが、それが解消されたことは顧客にとっての大きなメリットです。とくに、現場で必要な本数が揃わないと仕事にならないプロ客にとっては、在庫確認できるサービスは非常に便利だと思います。

今後の課題は、在庫確認したが必要在庫が不足していた場合の対応です。従来のオンラインショップでは、在庫が10個しかなければ、10個しか注文できませんでしたが、カインズのお取り置きサービスでは、在庫数量を上回る注文ができるようになっています。そして、不足分は、「〇月〇日なら取り寄せできます」と店舗から顧客に連絡して、商品を取り寄せます。ベンダーに注文するだけでなくて、他店在庫の店間移送などのサービスも考えられます。

プロ客が現場で使う道具と材料を現場に届けるサービスも

「55-DASHプロ」のカード会員であるプロ客の利便性を向上するためにカインズは、以下の5つの特典をECサイトで公開していたので紹介します。とくに「事前加工」「スピード配送」は、プロ客にとってはありがたいサービスですね。スピード配送を利用すると、プロ客はカインズに来店する必要がなく、必要な道具・材料が現場に直接届くサービスです。

◇「55-DASHプロ」カード会員限定の5つのサービス

  1. 55-DASH(スピード注文55分)
    店頭の商品をスマートフォンで簡単注文・取り置きできます。
    ご注文より55分以内にご準備致します。
  2. 事前加工、事前切り売り
    電材切り売り、木材カットなどの加工をスマートフォンでご注文できます。
    ご来店時にお待たせしない新サービスです。
  3. スピード修理
    本格的な修理工房を完備!エンジン工具を中心とした修理を承ります。
  4. スピード配送
    近隣エリアの現場、事務所へ、最短翌日配送致します。
    (配送料金につきましては、スタッフまでお問い合わせ下さい)
  5. 会員様限定価格
    いつもプロが使うものを、よりお求め安くをモットーに、限定価格商品をご用意

 

カインズは、プロ客向けの取り置きサービスからスタートし、徐々に一般向け商品の取り置きサービスも開始すると推測できます。たとえば、壁紙やカーペットなどの「切り売り商品」などは、事前に必要な長さを注文できれば、顧客の「買物時間の短縮」につながります。

※カインズと同じHC(ホームセンター)業態の「ホームデポ」(米国)もスマホアプリを活用した「買物体験の質」の向上に取り組んでいます。その事例は、この連載の第23回『自宅で「在庫」と「商品情報」を確認できる「ホームデポ」のオムニチャネルの凄さ』で紹介しています。

「作り置きニーズ」で保存容器の「売れ方」が変わった

働く女性の増加や、ライフスタイルの変化にともなう、「作り置き」や「食品保存」のシーンが増え、ジップロック®を活用する消費者が増えています。また、消費者ニーズを捉えた商品構成で、今では食品保存以外のあらゆる利用シーンでも活用されています。今回は、成長を続けているジップロック®が消費者の方々にいかに買われ、使われているかについて、旭化成ホームプロダクツ株式会社 マーケティング部 商品企画グループ 服部健人氏に取材をしました。

まず、ソフトブレーンフィールドの自主調査で、直近1年間で作り置きをしたことがある20代~60代の男女(N=2,099名)に、作り置きや食品保存における、ジップロック®の、「使用経験」や「直近1年間での購入経験」を聞いたところ、半数以上の方が使用・購入経験があることがわかりました。

Q1.半数以上の方が、使用・購入経験があったジップロック®(参考1・参考2)。改めて種類や用途について、お聞かせください。

まず、ジップロック®のバッグシリーズは、大きく分けて5種類です。冷凍保存に適した厚手の「フリーザーバッグ」、冷蔵に適した「ストックバッグ」、スライド式のジッパーで開け閉めしやすい「イージージッパー®」、気軽に使える「お手軽バッグ」、大きなマチ付きで自立するため、汁物の保存や料理の下ごしらえに適した「スタンディングバッグ」です。各種用途に合わせたサイズがあり、それを含めると全部で10種類ものバッグがあります。

次に、ジップロック®コンテナーは、大きく分けて3種類です。正方形と長方形の形状の「コンテナ―シリーズ」、冷凍保存したご飯を電子レンジでムラなくべたつかず加熱できる「ごはん保存容器 一膳用」、スクリュー式のフタで密閉性が高く液体や粉類の保存に適した「スクリューロック®」です。

Q2.ここ数年でジップロック®の売れ筋や消費者ニーズの変化について教えてください。

まず、ジップロック®バッグシリーズの売れ筋は、フリーザーバッグです。冷凍保存から電子レンジ解凍まで可能で、ジップロック®ブランドを代表する商品です。注力商品は、イージージッパー®です。スライド式ジッパーのためお年寄りでも開け閉めがしやすく、小物の持ち運びなど、頻繁に開け閉めする用途に特に適しています。

ジップロック®コンテナーの売れ筋は、使いやすいサイズの正方形1100mlです。注力商品は、競合と明確に差別化ができている「ごはん保存容器 一膳用」です。

Q3.自主調査では、購入業態としてスーパーが半数近くを占め、店頭購入が圧倒的でしたが(参考3)、注力している業態や販売経路などがあれば教えてください。

食品を扱うGMS(大型スーパー)、SMをベースとしつつ、成長著しいドラッグストアやECへの販促にも注力し始めています。また、ここ2~3年では、特に様々な企業とのコラボレーションを積極的に行い、食品保存以外のイメージでの消費者との接点を増やす取り組みをしています。

その一例として、今年はH.I.S.様と旅行シーンでの衣類などのパッキングや小物の整理に、ジップロック®の活用を提案したり、BEAMS COUTURE(ビームス クチュール)様とは、ジップロック®をポーチやリュックにアップサイクルして販売するなどの取り組みを行い、ファッションに敏感な若い層に向けて、ジップロック®=機能的でおしゃれ、というイメージを醸成することで、新たなファン層を開拓していくことを狙っています。

Q4.顧客との接点を増やす取り組みの中で、売れ方に変化はありましたか?

“時短”のニーズは根強く、作り置きだけではなく、ジップロック®フリーザーバッグに、肉や魚などの食材と調味料を入れて冷凍保存する“下味冷凍”での活用を提案し、今ではSNSでレシピの共有や、料理本も発売されるなど、認知が広がっています。

また、食品保存以外での、持ち運びのニーズが高まり、使用枚数が増えたことなども影響していると思いますが、入り枚数の多いジップロック®の大容量品の構成比が高くなってきています。中でも、開け閉めしやすいイージージッパー®の伸長率は高く、小物の整理や、スポーツや旅行での衣類の持ち運びなどでの利用が増えているのではと推測しています。

また、ヘビーユーザーになると、様々なサイズのジップロック®を購入し、入れる物に合わせた使い分けをし、自分に合った使い方をしている傾向が強いことがわかりました。ヘビーユーザーが牽引した結果もあり、あらゆるシーンでの活用範囲が広がったことで、金額、枚数ともにジップロック®は2ケタ成長をしています。

Q5.ジップロック®が伸びている中で、サランラップ®市場の売上に影響はありましたか?

ライフスタイルの変化で、食品保存のシーンが増え、ジップロック®とのカニバリは起きずに、サランラップ®市場も拡大しています。今後、食材をサランラップ®に包んでジップロックに入れて保存する「ラップ&ジップ」の訴求を強化し、より消費者に、よりよい保存スタイルを伝えていきたいと思います。

Q6.年末年始も含めた、これからの販促方法を教えてください。

SNSなどデジタルを活用して「下味冷凍」や「旅行でのパッキングなどの整理・持ち運び」を、一年を通して訴求しながらも、店頭では、季節にあった訴求を心掛け、これからの時期であれば、ジップロック®やコンテナーなど、クリスマスやお節の保存・下ごしらえなど、催事に合った販促に力をいれていくなど訴求ごとの使い分けを考えています。

Q7.最後にジップロック®をどんなブランドへと成長させたいですか?

ジップロック®バッグシリーズの「中身が見える」「密封性が高い」「開け閉めしやすい」などの機能と、ジップロック®コンテナーの、きれいに重ねて整理整頓しやすいスタッキング性は、キッチンだけでの使用に限らず、生活の幅広い場所に活かすことができると考えています。使う人にとって、毎日の生活をよりスマートにしてくれるような提案をしていくことで、ジップロック®をスマートなライフスタイルに欠かせないブランドとして成長させたいと考えています。

※参考1~3:ソフトブレーン・フィールド株式会社「マルチプルID-POS購買理由データPoint of BuyⓇ」20代~60代のアンケートモニター3,974名を対象にした、作り置きに関するアンケート結果より。(WEB調査、調査期間:2018年10月26日~10月29日)

 

ジップロックをスマートなライフスタイルに欠かせないブランドとして成長させたいと語る服部氏

IoT社会の到来で棚割、価格、販促の「個別化」が進む

前回に引き続き、「今年を振り返る」の第2回目です。従来のチェーンストアは、「標準化」することによって効率を追求するビジネスモデルでした。しかし、これからはIoT社会の到来で、チェーンストアの「売り方」が個別化していきます。「標準化」から「個別化」の時代が到来しようとしているのです。

Edge(エッジ)と呼んでいるクローガー(米国最大のスーパーマーケット)の電子棚札。横長の棚がサイネージになっているので、動画を流したり、棚札のデザインを変更したり、棚札を自由に移動できる。

人口構成、競合状況で「棚割」は個別化する

IoT(Internet of Things)時代とは、すべてのモノやビッグデータがインターネットにつながる社会のことです。IoT社会の到来によって、小売業の「売り方」や「作業」は劇的に変化します。「売り方」の個別化は、以下の3つに分けることができます。

個別化する3つの売り方
(1)棚割の個別化
(2)価格の個別化
(3)販促・接客の個別化

第1は「棚割」の個別化です。深刻な人口減少時代に突入する日本の小売業は、「県」単位の大雑把なマーケティングではなくて、市区町村別の小さなエリア単位の人口構成を分析し、その地域に適した棚割、売場づくり、売り方を実践する「マイクロマーケティング」に挑戦することが重要です。逆説的にいえば、県単位の棚割、売り方のままでは、市区町村のニーズに合わず、大きな機会損失を起こしているといっていいと思います。

しかし、従来の紙の棚札では、棚割を個別化すると、膨大な作業量が発生しますので、棚割の個別化は現実的ではありませんでした。従来のチェーンストアは、棚割の90%は標準化された棚割で統一し、残り10%を地域に合わせて変更する程度の個店対応しかできませんでした。

しかし、巻頭のクローガーの電子棚札のように、横長の棚をサイネージ化すれば、人的作業をまったく伴わずに、棚札を自由に移動することができます。その店の人口構成、人種構成、地域の特性、競合状況に応じて、棚割を個別化する時代がこれから到来します。標準化された棚割によって失われた機会損失を、個別化によってきめ細かく拾って売上を増やすことが可能になります。

ダイナミックプライシングと販促・接客の個別化

第2は、価格の個別化です。「ダイナミックプライシング」という言葉が最近使われるようになりました。需要と供給、競合状況に応じて、臨機応変に売価を変動させる方法のことです。これも、従来の紙の棚札では、膨大な売価変更作業が伴い、ダイナミックプライシングは現実的な手法ではありませんでしたが、電子棚札の普及が進めば、それが可能になります。しかも、本部で一括して変更し、管理することもできます。

第3は、販促・接客の個別化です。ID-POSによる購買データ、SNSの投稿データなどの「ビッグデータ」を活用して、その個人に最適の販促や接客を行う時代が到来します。チラシやポイント10倍などの不特定多数の販促が廃れ、ワントゥーワンマーケテイングが主流になります。「あなたに最適な販促」をスマホに送る販促の個別化時代が到来します。

SNSの投稿というビッグデータを活用した販促も始まっています。たとえば大手自動車メーカーは、「子供が生まれました」というSNSの投稿者に対して、ミニバンの案内をピンポイントで送る販促を実施しています。子供がいない時はセダンに乗っていた家族が、ミニバンに乗り換えるタイミングが出産だからです。不特定多数の販促よりも、大きな効果を上げています。

マスメディアやSNSなど、どのようなメディアに触れ、購買に至ったのかという幅広いデータを活用した顧客管理のことを「CXP(Customer Experience Management)」と呼びます。従来のID-POSを活用した固定客づくりのことを「CRM(Customer Relationship Management)」と言いますが、それを深化させた概念がCXPです。いずれにしても、来年からは「オンライン」と「リアル」の買物体験の境界が、どんどん曖昧になる10年が始まります。

良いお年をお迎えください。