販管費率の上昇が営業率益減の原因
営業利益低下の最大の原因は、人件費の増加による販管費率の上昇です。今後も労働人口の減少によって人件費と採用コストが増加する傾向は続きます。
下の図表は、DgSの2017年度(一期前。図表では2018年と表記)の販管費率(売上に占める経費の割合)を低い順に並べたものです。同じDgSと名乗っていても、販管費率がもっとも低い「コスモス薬品」15.7%に対して、もっとも高い「ウエルシアHD」26.1%と、10%以上も開きがあり、同じ業態とは思えないほどの違いがあります。
17年度の第3四半期で問題となった販管費率の上昇傾向は、すでに前期決算のときに現れていました。15年度(2016年)と比較すると、上場DgS14社の販管費率の平均値は、2016年21.2%に対して2018年21.7%と、0.5%も販管費率が上昇しています。過去3年間で見ても、DgSの販管費はじわじわと上昇を続けており、17年度の第3四半期に、その問題点が一気に噴出したわけです。
ドラッグストア販管費率ランキング(低い順)
「高粗利益率」頼みから仕組み化による高収益体質へ
Dg.Sが急成長を遂げた理由を以下に簡単にまとめてみます。
成長理由のすべてを解説すると長くなりますので割愛しますが、DgSの販管費が上昇する最大の理由は、「人で売る高粗利益率体質」に依存しすぎて、ローコストオペレーションの「仕組み化」が後回しにされてきたことです。
もちろん、接客やカウンセリングで消費者の問題を解決し、推奨品を自信をもって販売することは、美容と健康に貢献するDgSの社会的使命です。しかし、「人海戦術×高コスト体質」のままでは、販管費の上昇→営業利益の低下は止められません。
労働人口の減少によって、DgSの人件費と採用コストは今後も増加します。また、高粗利益率を牽引してきた調剤も、薬価差益の減少傾向が進み、長期的に見ると調剤の粗利益率は低下していきます。調剤の粗利益率が低下しても、薬剤師の人件費をカバーするためには、調剤作業の仕組み化は待ったなしです。
住友商事傘下のDgS「トモズ」が、調剤ロボットの導入で、調剤業務の自動化実験を始めました。AIやロボットなどの最新テクノロジーを活用した「生産性向上」「省人化・無人化」の挑戦は、生産性向上のためには不可欠の経営課題です。
(参考:薬局チェーンのトモズ、ロボット導入で調剤自動化に挑む)
また、DgSの武器である医薬品や化粧品の接客に関しても、iPadなどのタブレットを活用した「接客のオートメーション化」に挑戦することも重要です。たとえば、多くのDgSが「化粧品のカウンセリング強化」のために化粧品担当者の教育を重視していますが、化粧品担当者の「接客時間」や「接客方法」はほとんど可視化できておらず、「担当者まかせ」なのが実態です。
iPadを活用した化粧品のカウンセリングの仕組みを導入すれば、接客のログ(記録)がすべて残るので、化粧品担当者の「接客時間」や「接客内容」を可視化することができます。接客の生産性向上にもつながります。
以下の写真は、以前、コスモス薬品のホームページに掲載されていた「タブレットを活用した医薬品の接客」のイメージ写真です。人の生産性を向上し、販管費の上昇問題を解決するためには、IT技術を活用した「作業と接客の仕組み化」が最優先の経営課題です。