「マインド」と「アクション」の変革が小売DXの未来を切り開く(前編)

今回はサイバーエージェントでリテールメディア事業を率いる藤田統括と、本誌で情報技術(IT)を活用したチェーンストアづくりの連載を執筆中のリテイリングワークス株式会社の佐々木代表取締役との対談が実現。日本の小売業が今後どのようにDXに取り組んでいくべきか、藤田統括が聞き手となってマインド、組織、パートナーシップなど真のDXを実践するために必要なアプローチを掘り下げる。(まとめ/青木 剣太郎)(月刊マーチャンダイジング2023年12月号より転載)

DX推進に必要な小売企業のマインド(意識)

藤田 今回は経営者、そしてコンサルタントとして日本の流通業、小売業を長年にわたって多面的に見てこられた佐々木先生に日本の小売企業が今後どのようにDXに取り組んでいったらいいかということを色々な切り口からお伺いしたいと思いますのでよろしくお願いします。

今、小売業の各社がDXにさまざまな形で取り組んでいますが、間近で見させていただいている中で、うまく推進されている企業とそうではない企業があります。その違いのひとつは、DXを推進して行く上で、そこに関わる方々のマインド、意識なのではないかと感じていますが、いかがでしょうか?

佐々木 やはりトップマネジメントのマインド、意識が一番最初に問われる部分です。トップのコミットメント(責任をもってある事象や物事に関わっていくことを公約・明言すること)といってもよいと思います。

DXはあくまでも手段です。まずはトップマネジメントが、こういう会社をつくりたい、こういうお店をつくりたい、というビジョンに対するコミットメントが最初に来るべきです。

そして、その実現のためにどんな人が我々の顧客なのか、その顧客にどんな事を提供していくのか、という分析・プランニングがあります。そして最後に、その具体的な方法論として、たとえばパーソナライズ(個客最適化)された情報をデジタルを活用して提供しよう、というDX推進のプロセスが来るべきです。

ところが、日本の小売業のDXについての議論を聞いていると、多くの場合”デジタル”とか、”DX”が主語になってしまう。繰り返しますが、DXは目的ではなく手段です。その点で多くの企業のアプローチが本質的ではないのが現状です。

やはりうまくいっている企業の例を見るとDXが主語ではない。彼らのアプローチは、我々はこのままでは市場で競争力を維持できない、だから競争力を高めるためにどんな会社になるべきかという議論の積み上げがあって、結果として特定の領域でデジタルの力を活用することが、その競争力を高める上で最善であるという考えに則っているわけです。

成功事例を安易に取り入れる「帰納法アプローチ」の危険性

藤田 今DXを進める上で、自社がどうありたいかをちゃんと明確にすることから始めるべきなのですね。一方で、よくあるのがうまくいっている事例をそのまま活用したいからとにかく事例をたくさん教えて欲しい、それをまねたい、というお話です。成功事例を取り入れてDXを進めていく、という観点についてはどのようにお考えですか。

佐々木 日本の小売企業の多くは事例をもとに考える帰納法的アプローチなので、そういった声が多いこともよく理解できます。ただこのアプローチの危険なところは、大抵の場合、他社が成功したのは特定の仕組みを導入したから、というシンプルな因果関係にない、ということを見落としがちだということです。

システム会社、SIer(システムインテグレーター)さんは、ここで上手くいっているとか、この会社で導入されましたよ、ということが最初の営業フレーズです。

ただ、小売業でいうと立地や品揃え、従業員など、自社と他社は全く違うリソースを使って運営しているわけです。すべてのリソースの条件が同じであれば、その仕組みを導入して成功する確率は高いと思いますが、実際はそうではないので、単に他社が導入して成功したからといって導入しても、失敗することが多いのが現実です。

DXの前提となるデジタルの世界で何かを実現しようとすると、まずはアルゴリズムいわゆるフローを考えなければいけないですね。これは事例をもとに考える帰納法的アプローチではなくて、原理原則から考える演繹法的アプローチです。

これは実は1980年代の日本の小売業が実践していたアプローチに近いのです。その頃の流通業セミナーではフローチャート図を書かせるとか、PERT図(プロジェクト内のタスク間にある依存関係を視覚的に表現するためのツール)を書かせることが当たり前でした。

ところがいつの間にかそういったアプローチがなくなって、あそこがあの基幹システムを入れてうまくいっているから自社も、といった話になっている。その基幹システムの中で何がどう動いているか、そんなことは気にせずに事例をまねるわけです。

こういったアプローチでは結局自社の事業、リソース、業務プロセス、システムに最適化された仕組みの構築は難しいわけです。そうした帰納法的に成功事例を導入するやり方で成功した企業は、ほぼないのではないかと思います。

外部企業とのパートナーシップ構築について

藤田 小売企業がDXを推進していく上では、外部企業とのパートナーシップをもって推進することがあると思いますが、パートナーの選び方や信頼関係の構築で苦労されている企業が非常に多いという印象があります。外部の企業をどう選び、パートナーシップをいかに構築していくのかについてぜひ教えてください。

佐々木 大事なことは、協力してもらう外部企業の長所は何か、そしてその長所を可能な限り素直に出してもらうにはどうしたらよいか、ということだと思います。

私が小売業の経営者時代に、さまざまなメーカーさんと取り組みをやる場合、基本的に相手の提案を全部100%に近い形で受け入れて実行することを大切にしてきました。小売業としての自分たちの色を入れない、ということです。そうすることで自社にない発想を含んだ結果を得ることができる。

その後2回目、3回目以降にこういうところを変えたほうがお客さんにとって、もっと便利じゃないのかといった視点で顧客の動向や、自社の考えを入れていくことが重要です。日本リテイリングセンターの故・渥美俊一先生は昔から、日本の優秀なメーカーさんの“ディーラーヘルプ”、これを積極的に使いなさいということを主張していました。メーカーさんの方がいろんな小売企業のケーススタディをもっているので、それをできるだけ有効活用したほうが小売企業自身のためになります。

たとえば、私が富士薬品(セイムス)にいた時も、メーカーさんにいろいろなデータを共有してもらって、この競合店とシェアがどれだけ負けているか、どのカテゴリーでシェアが負けているか、曜日でいつ負けているか、時間帯でどこまで負けているかということを可視化する作業を共同でやっていました。

メーカーさんはこうしたデータベース構築に対する投資もしているので、リアルタイムでデータが共有され機動的な対策が簡単にできます。これを小売業が持っているリソースだけでやろうとすると100%無理です。ある大手小売企業にそういった方法を教えたら、それは自分たちのPOSデータでやるということでしたが、自分たちだけでやろうとしたら毎月数百万円かかって利益どころじゃなくなります。

そのあたりについて、日本の小売業の方々は本質的なところを理解していないのではないかと私は思っています。これを理解して、外部企業との協業・信頼関係が構築できるようになったら、日本の流通は一気に変わると思っています。

ただ現状では、いつの間にか小売企業にとって“メーカーは安売りを阻止する存在”という敵対関係の構図ができてしまって、メーカーさん、問屋さんに言われたものをそのままやるのはダメという刷り込みができてしまっているように思います。

パートナーシップ構築の阻害要因 日本的マネジメント手法

藤田 渥美先生は外部企業を有効活用すべきだとおっしゃっていたのですね。なぜそれが実現・実行できないのか、何がその阻害要因となっているのでしょうか?

佐々木 一番の阻害要因は、トップ同士のコミットメントが不足していることです。アメリカでは基本的にダイヤモンド型のマネジメントで、トップ、情報システム、バイヤーなど各部署が全部横で直接連携してパートナーシップを築いていきます。それに対して日本の場合はいわゆるバタフライ型で、バイヤーと営業担当の接点しかないのです(図表1)。

[図表1]商談モデル

そうすると会社対会社の信頼関係ができない。社長同士が会うといっても単純に挨拶するだけで終わっています。お互いにどういう課題を持って取り組むかも、バイヤーに丸投げというところが多い。

そのバイヤーも、この条件を出さないのだったら取り組みをやめるぞ、とか一発で信頼関係がなくなるようなコミュニケーションをしていることが多いと思います。そういったアプローチでは、ウォルマートのようなダイヤモンド型のマネジメントで先行しているアメリカの小売に対抗するのは難しいのではないかと思います。

藤田 マネジメントという点では、DX推進に必要な事業者間の「プロジェクトマネジメント」の回し方も、パートナーシップを深めていく上で重要なポイントになってくると思いますが、このあたりについてはいかがでしょうか?

佐々木 まずは自社内できちんとプロジェクトを推進できるという前提が必要です。部署を横断した一番小さい単位のプロジェクトを管理することができないと、外部のDX人材をうまく活用しようとしても、日常的にプロジェクト管理をしているIT企業とスピード感をもってうまくプロジェクトを進行することができません。

まずは目的、予算、実行の工程管理、結果の検証といったプロジェクトのPDCAを回すことに慣れてない日本の小売企業については、小さな単位の取り組みから始めることが必要だと思います。

[図表2]DXを成功させるための「マインド」

“現場の一人一人が経営者”ウォルマートのDX根幹にある視点

藤田 小さなプロジェクトを回していく、という点では、われわれがデジタルのサービスをつくる時も同じようなアプローチです。

まずはモックアップ(試作品)をつくってとにかく動かしてみて、それでうまくいったらそこから大きくしていくことをしますが、小売におけるデジタル活用についても同じ考え方が大事だということですね。

DXの成功事例というと必ずウォルマートが引き合いに出されますが、その成功要因で特筆すべきことは何ですか?

佐々木 一番は顧客との接点を最適化することです。小売業の場合、顧客との接点は店舗ですから、顧客を一番知っている店舗現場にどのように自律性を持って仕事をしてもらうかが大事になってきます。

日野先生が主催されたアメリカでのセミナーで、ウォルマートの本部でバイスプレジデント(副社長)に直接お話を伺う機会がありました。その中で「なるほどな」と思ったことは、“現場の人が経営者”という考えを前提として、すべての仕組みができているという点です。”経営者”である現場の人自らが自律的に判断できるように必要な情報を端末を使って提供する、その上で判断は現場に任せる、ということです。

しかし、ただの丸投げで判断を任せてもうまくいかないので、いくつかの選択肢を用意してその人に選ばせることで、判断の品質を一定範囲にコントロールしながらも、現場に自分で判断したという経験をしてもらう。「店舗現場に情報を与えよ」という仕組みづくりをずっとやってきたことが、ウォルマートの本質的な強さであると確信しました。

創業者のサム・ウォルトンは、従業員がベルトコンベアで単純な作業をするような会社をつくりたくない、現場の人たちが自律的に働ける職場をつくりたい、それが創業初期からのビジョンであり、そのトップのビジョンの実現に向けて組織全体がコミットメントをしているとも言えます。

ウォルマート幹部から直接聞いた話に衝撃を受けて、私の小売業におけるシステム開発・構築に対する発想がガラリと変わりました。この考え方をもとに実際に大黒天物産、富士薬品でも、自動補充などのパラメーターを現場でも変えられる仕組みに変更しました。

ただ、実際には富士薬品1,200店舗でパラメーターを変えた人は一人しかいませんでした。自分で判断することに慣れていないのです。

それでもこれまで本部の指示に対して文句を言っていた人が、自分で変えられる、となった瞬間に文句を言わなくなったという良い副作用はありました(笑)。

(後半へ続く)

 

《取材協力》

リテイリングワークス株式会社
代表取締役
佐々木 桂一氏
サイバーエージェント
AI事業本部協業リテールメディア
Div事業統括
藤田 和司氏

月刊マーチャンダイジング25周年記念式典レポート

1997年秋に創刊ゼロ号を発行し年間購読者を募り、1998年の春に創刊号を発行して25年が経過しました。今月号(2023年12月号)で創刊311号に達しています。四半世紀も月刊誌を継続したことを記念して、月刊MD創刊25周年記念式典を、2023年10月16日午後4時から、品川プリンスアネックスタワー5階で開催しました。(月刊マーチャンダイジング2023年12月号より転載)

25周年記念式典は、月刊MDを通じて「つながっている」読者の皆様、広告主の皆様、そして取材協力をいただいている皆様が、リアルに集まって交流する初めてのイベントとして開催しました。当日は、500人を超える製配販の経営トップと業界関係者が集まりました。当日の様子を写真でレポートします。

式典の開催前に行われた月刊MD25周年記念式典の発起人会の皆様の写真撮影
式典入口には大手ドラッグストアの経営者の皆様からの花を掲示しました
約100基のお祝いの花をいただきました(感謝)
月刊マーチャンダイジング25周年記念式典 発起人会の皆様
式典の冒頭は、月刊MD主幹の日野眞克から、「ドラッグストアの過去と未来」というテーマで30分間の講演を行いました

500人を超える業界関係者が一堂に会しました
出席者には、製配販の35人の経営トップが寄稿した「私と月刊MD」という特別編集した小冊子を贈呈しました。多忙な経営トップの皆様が、単なるお祝いの言葉ではなくて、月刊MDを通して体験し、影響を受けたことを御自分の言葉で熱い思いを書いていただたきました。25年間、雑誌を継続して良かったなと思えた寄稿文でした。

この寄稿文は、webメディア「MD NEXT」で順次公開していきます

受付は、実行委員会のメーカー、卸の有志の皆様に御協力いただきました。感謝申し上げます
総合司会は実行委員会会長の今田里美さん(アース製薬)
第2部の懇親会冒頭の挨拶は、出席者を代表して、ユニ・チャームの高原豪久社長にお願いしした。ユニ・チャームさんは月刊MDの表4広告を25年間継続して出稿していただきました
乾杯の音頭は、月刊MD主幹の日野眞克と同郷(愛媛県)で同い年のレデイ薬局会長の三橋信也氏にお願いしました
ツルハHD会長 鶴羽樹氏(右)と日野眞克。長年にわたり月刊MDを応援していただきました
カワチ薬品社長 河内伸二氏(右)。創刊号の発行部数500部の半分はカワチ薬品の社員の読者でした
元ハックイシダ創業者の石田健二氏(左)と、新生堂薬局社長の水田怜氏(右)。ドラッグストアの新旧の挑戦者のツーショット
右からウエルシアHD会長 池野隆光氏、アルフレッサヘルスケア会長 勝木尚氏、クスリのマルエ会長 江黒純一氏、ジェムコ社長 黒田克己氏
ロート製薬社長 杉本雅史氏(左)
右から資生堂ジャパンエグゼクティブオフィサー 渡辺英樹氏、コーセー化粧品販売社長 藤原功氏、資生堂ジャパン社長 直川紀夫氏
大木ヘルスケアHD会長 松井秀夫氏(後列左)、石田氏(左)、鶴羽氏(右)
右からクスリのアオキHD社長 青木宏憲氏、クスリのアオキHD取締役 飯島仁氏、日野眞克、ウエルシア薬局副会長 石田岳彦氏、クスリのマルエ社長 江黒太郎氏
サツドラHD特別顧問 富山睦浩氏(中央)、ユニ・チャーム社長 高原豪久氏(右)
右からユニ・チャーム顧問 森信次氏、ジャパンフューチャー営業本部長中島克彦氏、マツキヨココカラ&カンパニー社長 松本清雄氏、アース製薬営業本部本部長 社方雄氏
後列左からTGMD社長 有馬康幸氏、ツルハHD能力開発本部長 木根崇臣氏、前列左から資生堂ジャパン森川幸平氏、JACDS事務総長 田中浩幸氏
ピップ代表取締役会長 藤本久士氏(左)、ジェイビートゥービー社長 奥島晶子氏(中央)
マツキヨココカラ&カンパニー副社長 塚本厚志氏(左)、コンサルタントの郡司昇氏(右)
中締めの挨拶は資生堂ジャパン社長の直川紀夫氏
スギHD社長の杉浦克典氏(右)、大日本除虫菊社長 上山直英氏(左)
プルミエ社長 及川純氏(右)、プルミエCHO 及川美江子氏(左)
日本チェーンドラッグストア協会事務総長 田中浩幸氏(左)、ツルハHD社長 鶴羽順氏(右)
PALTAC社長 吉田拓也氏
PALTAC専務 山田恭嵩氏(右)、サツドラHD社長富山浩樹氏(左)
右からオムロンヘルスケア統括マネジャー 渡邊琢哉氏、ツルハ南東北部長板澤有希氏、ツルハ社長八幡政浩氏、オムロンヘルスケア事業統括本部長 加藤宏行氏、オムロンヘルスケア国内営業本部長 大川力也氏
あらた社長 須崎裕明氏(右)、クスリのアオキ取締役最高顧問 青木保外志氏(左)
25周年記念ビデオの制作を担当してくれたサイバーエージェントの皆さん。左からリテールメディア事業本部統括 高橋篤氏、株式会社MG-DX社長堂前紀郎氏、サイバーエージェントリテールメディア事業本部局長 長岡琴美氏、サイバーエージェント協業リテールメディアDiv 伊藤理沙子氏、サイバーエージェントリテールメディア事業本部 瀬良純司氏。 前列はサイバーエージェント協業リテールメディアDiv統括 藤田和司氏
右からアース製薬ニューチャネル事業推進部部長 平野正勝氏、アース製薬ニューチャネル事業部室長補佐 橋本正宏氏、アース製薬販売企画部部長 皆川裕之氏、月刊MD編集長 野間口司郎
最後に月刊MDを発行するニュー・フォーマット研究所専務取締役の日野克哉が次の10年の抱負を語りました
25周年記念式典実行委員会の皆様

NFI定例セミナー「2024年の最重点経営課題 ほか」(2024/1/24 13:00~16:10)開催ご案内(リアル・リモート)

今回のテーマは、「2024年の最重点経営課題」です。とくに人手不足、人件費の上昇によって、「人の生産性向上」は、待ったなしの経営課題です。また、新業態開発、PB開発による「差別化戦略」の事例を解説します。さらに、DXを活用した生産性向上、買物体験の変化についても解説します。

2024年1月定例セミナーは、「リアル」と「リモート」の併用セミナーとします。

今回のテーマは、「2024年の最重点経営課題」です。

とくに人手不足、人件費の上昇によって、「人の生産性向上」は、待ったなしの経営課題です。また、新業態開発、PB開発による「差別化戦略」の事例を解説します。さらに、DXを活用した生産性向上、買物体験の変化についても解説します。

月刊MDで連載中のリテイリングワークスの佐々木桂一氏をゲスト講師に招き、「データドリブン経営のススメ」というテーマで講演をお願いします。

佐々木桂一氏はダイエー出身で、ジェーソン代表取締役、大黒天物産の取締役副社長、富士薬品(セイムス)の専務取締役を歴任した人物です。現在は、小売業の「経営」「現場」「情報システム」のすべてがわかるコンサルタントとして活躍中です。

※座席数が限られているため、リアルでの参加の方は先着順とさせて頂きます。

開催概要

・開催日:2024年1月24日(水) 13:00~16:10(会場受付開始:12:30)
※昼食は各自お済ませの上ご来場下さい。
※セミナー開催中の途中入場はお断りします。
※リモートでの途中退席は申込責任者に報告します。

・会場:エッサム神田ホール1号館6階(601)(※案内図をご参照ください)
・実施方法:リアルとZOOMによるリモートセミナー
(ZOOMセミナーアクセス方法はお申込み者様にのみご案内いたします)
・料金:20,000円(税別・1名様)
(※ニューフォーマット研究会会員企業様には会員価格でのご案内になります)
・申し込み締め切り:2024年1月15日(月)

スケジュール

[第1講座]
2024年の最重点経営課題

[13時~14時30分頃]

NFI代表取締役 日野 眞克

(1)待ったなし!人の生産性向上
(2)新業態、PB開発による差別化戦略
(3)DXの推進によるイノベーション 等

[第2講座]
データドリブン経営のススメ

[14時40分頃~16時10分頃]

リテイリングワークス株式会社代表取締役 佐々木 桂一氏

(1)データに基づいたデータドリブン経営への転換
(2)情報技術を活用した強い「組織づくり」
(3)人の生産性向上のための数値管理のポイント 等

※講演時間は予定よりも短くなることも長くなることもあります。

会場案内図

会場詳細

〒101-0045
東京都千代田区神田鍛冶町3-2-2
エッサム神田ホール1号館6階(601)
URL:https://www.essam.co.jp/hall/access/#access_1

【アクセス】
●JRでお越しの方
神田駅東口より徒歩1分
●東京メトロ銀座線でお越しの方
神田駅3番出口より徒歩0分

注意事項

①会場へお越しの方は開催会場をご確認の上、お間違えの無いようご注意ください。
アーカイブ動画の配信はいたしません。当日参加でのみセミナーのご受講が可能です。
(配信の不備等によりご視聴頂けなかった場合には、後日動画のご案内をいたします。)

③リモートの場合はZOOMウェビナー形式で行います。1月19日(金)までに、お申込書に記載された受講者のメールアドレス宛に受講用URLを記載したメールを送付いたします。

お申込みフォーム

・お申込みは以下のお申込みフォームからお願いいたします。お申込み受付後、お申込み確認メールをお送りします。また、ご請求先として記入いただいた方宛に、請求書を発送させていただきます。
・ご入金後は、理由の如何に関わらず返金は致しません。あらかじめご了承ください。

申し込みフォーム

NFI定例セミナー「DX活用の業務改革・生産性向上 最新フード&ドラッグの事例研究」(2023/11/15 13:00~16:10)開催ご案内(リアル・リモート)

11月の定例セミナーは、月刊MDで連載中のリテイリングワークスの佐々木 桂一氏をゲスト講師に招き、「DX活用の業務改革と生産性向上」というテーマで講演をお願いします。また、DXを活用した業務改革の最前線を整理し、フード&ドラッグなどの注目の新業態の最新事例も紹介します。

2023年11月定例セミナーは、「リアル」と「リモート」の併用セミナーとします。

今回は、月刊MDで連載中のリテイリングワークスの佐々木 桂一氏をゲスト講師に招き、「DX活用の業務改革と生産性向上」というテーマで講演をお願いします。

佐々木 桂一氏はダイエー出身で、ジェーソン代表取締役、大黒天物産の取締役副社長、富士薬品(セイムス)の専務取締役を歴任した人物です。

現在は、小売業の「経営」「現場」「情報システム」のすべてがわかるコンサルタントとして活躍中です。

また、DXを活用した業務改革の最前線を整理して紹介します。

さらに、フード&ドラッグなどの注目の新業態の最新事例を解説。食品のラインロビングだけでなくて、DXを活用した生産性の向上事例も解説します。

重要なテーマですので、ぜひご参加ください。

※座席数が限られているため、リアルでの参加の方は先着順とさせて頂きます。

開催概要

・開催日:2023年11月15日(水)13:00~16:10(会場受付開始:12:30)
※昼食は各自お済ませの上ご来場下さい。
※セミナー開催中の途中入場はお断りします。
※リモートでの途中退席は申込責任者に報告します。

・会場:エッサム神田ホール1号館6階(601)(※案内図をご参照ください)
・実施方法:リアルとZOOMによるリモートセミナー
(ZOOMセミナーアクセス方法はお申込み者様にのみご案内いたします)
・料金:20,000円(税別・1名様)
(※ニューフォーマット研究会会員企業様には会員価格でのご案内になります)
・申し込み締め切り:2023年11月6日(月)

スケジュール

[第1講座]
注目の新業態の最新事例研究

[13時~14時30分頃]

NFI代表取締役 日野 眞克

■ 最新フード&ドラッグの事例研究
■ 注目の新業態の事例研究
■ DXを活用した業務改革と生産性向上の事例研究 その他

[第2講座]
DX活用の業務改革・生産性向上

[14時40分頃~16時10分頃]

リテイリングワークス株式会社代表取締役 佐々木 桂一氏

■ 「現場に情報を与えよ」ウォルマートの情報システム戦略
■ MD工程の可視化、データに基づいたデータドリブン経営への転換
■ データウエアハウス構築の考え方
■ 情報技術を活用した強い「組織づくり」   その他

※講演時間は予定よりも短くなることも長くなることもあります。

会場案内図

会場詳細

〒101-0045
東京都千代田区神田鍛冶町3-2-2
エッサム神田ホール1号館6階(601)
URL:https://www.essam.co.jp/hall/access/#access_1

【アクセス】
●JRでお越しの方
神田駅東口より徒歩1分
●東京メトロ銀座線でお越しの方
神田駅3番出口より徒歩0分

注意事項

①会場へお越しの方は開催会場をご確認の上、お間違えの無いようご注意ください。
アーカイブ動画の配信はいたしません。当日参加でのみセミナーのご受講が可能です。
(配信の不備等によりご視聴頂けなかった場合には、後日動画のご案内をいたします。)

③リモートの場合はZOOMウェビナー形式で行います。11月10日(金)までに、お申込書に記載された受講者のメールアドレス宛に受講用URLを記載したメールを送付いたします。

お申込みフォーム

・お申込みは以下のお申込みフォームからお願いいたします。お申込み受付後、お申込み確認メールをお送りします。また、ご請求先として記入いただいた方宛に、請求書を発送させていただきます。
・ご入金後は、理由の如何に関わらず返金は致しません。あらかじめご了承ください。

本セミナーのお申込み受付は終了しました。
たくさんの参加申込み、ありがとうございました。

欠かさず読む「今月の視点」を事業の参考に

月刊マーチャンダイジングにゆかりのある経営者の皆様から、創刊25周年を記念してお祝いの言葉をいただきました。今回は、株式会社クスリのマルエ 代表取締役会長 江黒 純一氏のコメントをご紹介します!

日野さんがまだ駆け出しの記者時代に、体調不良の故松村先生に代わるピンチヒッターでドラッグストア研究会の講師兼引率として、50名余のDgSオーナーと経営幹部を相手に四苦八苦されていた研修ツアーが私と日野さんとの出会いです。

不慣れな役回りに、車中での講義も抑揚の少ない緊張した話し方ではありましたが、業界を良く勉強され、また自身の意見もきっちり盛り込んで参加者に伝える内容は、松村先生とは違う新しい切り口で大変勉強になる研修ツアーであったと記憶しています。

数年後に独立して月刊誌を創刊するということで、毎号1、2冊購入していました。当時はデザインやレイアウトが拙かったのか、残念ながら内容の充実度に反して非常に読みにくい雑誌でした(笑)。

ある時から、蛹が蝶に生まれ変わるようにA4サイズでデザイン性の高い「月刊マーチャンダイジング」としてリニューアルされ、非常に見やすく読み応えのある立派な雑誌となりました。

毎号端から端まで読み切ることはできておりませんが、日野さんの「今月の視点」は欠かさずに読み、業界の動向を勉強させていただき、事業の参考にさせてもらっています。

今後も業界発展のために、益々勉強になり参考になる実践的で刺激的な内容・視点を届けてください。

 

「薬急便モバイルオーダー」が実現する調剤と物販の融合とは?

月刊マーチャンダイジングではこれまでも、顧客接点を強化し、調剤体験の質を向上させるため、「調剤DX」の推進を繰り返し提唱してきた。今回サイバーエージェントが発表した、「薬急便モバイルオーダー」は、調剤の利便性をさらに向上させつつも、調剤の患者を物販に誘導し、同時に物販のお客へ調剤利用を促すという、「物販と調剤の融合」を図るサービスだ。薬急便を開発・提供するMG-DX(サイバーエージェント100%子会社)代表取締役社長堂前紀郎氏に本サービスの狙いと、調剤DXの目指すべき姿を聞いた。(月刊マーチャンダイジング2023年11月号より転載)

出店は進むが利用率は低いDgS併設調剤薬局

「薬急便(やっきゅうびん)」は、MG-DXが提供するオンライン調剤サービスだ。同サービスは、オンライン診療・オンライン服薬指導・処方箋事前送信ツールなど、調剤DXに必要な機能をすべて兼ね備える。

薬剤師は、薬急便を通じて処方箋受付、ビデオ通話、ワンtoワンメッセージ管理などの機能を利用することができる。

一方患者は、処方箋のオンライン送信や、オンライン服薬指導などのサービスを受けることができる。病院、クリニックでの診察から薬局での服薬指導、患者の手元に薬が届くまでを、一気通貫してオンラインで完結できるツールである。

現在同サービスは、クオール薬局、サンドラッグ、サツドラ薬局など全国の薬局で導入されている。

薬急便を開発するMG-DX社の堂前紀郎社長は、ドラッグストア(DgS)の経営者に同サービスを提案するなかで、調剤DXに対する期待の高まりを実感しているという。

「現在DgSの調剤市場は約1兆円規模ですが、年1,400億~1,500億円というペースで伸長しており、向こう5年間で2兆円規模に成長することが見込まれています」

[図表1]DgS・調剤薬局調剤部門売上高ランキング

弊誌の調査でも、調剤薬局専業の企業に対し、調剤併設型DgS企業が売上高で迫ってきており、調剤業界における存在感を増していることがわかる(図表1)。

「そのような成長を背景に、どの企業様も調剤併設率を上げていこうという中期経営計画を掲げていますが、一方でその利用率に関しては、課題を感じている企業様も少なくありません」(堂前氏)

調剤併設店舗の出店は進むが、利用率は思うように伸びない。それに対し、堂前氏は物販客に対する調剤サービスの認知率向上施策こそが重要と訴える。

「調剤の利用率が高い企業様は、調剤サービスを物販エリアでも積極的に訴求しています。これまで私たちは、販促、集客をデジタル化することにより、外からお客様を調剤に呼び込むことを中心にご提案をしてまいりました。それはそれで重要でありつつ、DgSの本分に立ち返って考えると、買物のため来店されているお客様に調剤を利用して頂ければ、10万、20万枚という単位で年間処方箋の獲得につなげることができるはずです。投資の回収もそれだけで十分に可能でしょう」(堂前氏)

店舗に買物をしに来ても、調剤薬局が併設されていることに気付いていないお客様は多い。つまり、物販の利用客に対し、調剤サービスを提供していることを認知してもらうのが、調剤利用率向上のための第一歩なのである。

DgS併設調剤が抱える3つの課題

MG-DXでは、DgSに併設された調剤薬局は3つの課題を抱えていると考えている。

1)待ち時間が見通せないことによる満足度の低下

[図表2]調剤薬局に対する不満

1つ目は、患者が待ち時間を見通せないことによる満足度の低さだ。調剤薬局に対する患者の不満のナンバーワンは、待ち時間が見通せないことにある(図表2)。

処方箋を受付してもらったあと、長時間待たされるのは満足度の低下に直結する。店内が混雑していると、薬剤師にとってもプレッシャーがかかるし、「あとどれぐらい待つのか?」と患者から質問されることで調剤作業が中断されることもしばしばだろう。ときに長い待ち時間がクレームにつながることもある。

2)調剤薬局の認知度の低さ=利用率の低さ

2つ目が、先に述べたような、物販利用客へのアピール不足による調剤併設に対する認知度が低いことだ。繰り返しになるが、調剤併設店で、利用率が高い店舗と低い店舗を比較すると、物販のエリアで調剤を訴求しているかどうかが大きな違いとなっているという。

「物販の方で処方箋を受け付けていることをどれだけアピールできているか、調剤サービスが便利だと言い切れるかが重要」と堂前氏は言及する。

3)電送率の低さ

3つ目の課題は、オンライン経由の処方箋応需率を伸ばし切れていない点だ。この指標を「電送率」と呼び、各社10〜20%を目標としている。

[図表3]DgSの処方箋電送率

しかし現実は、堂前氏の体感では7〜8%が平均だという(図表3)。これはなかなか伸長させるのが難しいKPIで、各社伸ばすためにどのような打ち手を取るべきか、頭を抱えている状況なのである。

オンラインとオフラインの業務フローを融合する

MG-DXが今回リリースした「薬急便モバイルオーダー」は、薬急便がこれまで提供してきたオンラインでのデジタル接点を強化しつつ、さらに店内での顧客接点も強化するものである。同サービスは、オンラインとオフラインの業務フローを融合し、オンラインの処方箋事前送信の受付と、直接来店による処方箋の受付、店内での服薬指導、会計までを担う。

[図表4]薬急便モバイルオーダーの流れ

患者は以下のような流れで同サービスを利用する(図表4)。

オンライン受付の場合、スマートフォンから処方箋を送信し、受け取り時間を予約する。薬の準備ができると、スマホに通知が届く。薬局では処方箋と引き換えに、薬を受け取るだけでいい。会計も、あらかじめ登録しているクレジットカードから自動的に完了するスマートさだ。

店頭受付の場合、処方箋と引き換えに待ち札が発券される。待ち札にはQRコードが印刷されていて、これを読み込むことで、待ちの状況をスマホから確認することができる。

さらに電話番号を登録すると、調剤完了通知をSMSで受け取ることも可能だ。完了通知を受け取った後は、自分のタイミングで薬局へ戻り、薬を受け取ることができる。呼び出しの状況は、店内のサイネージにもリアルタイムで反映される。

待ち時間を可視化し顧客満足度を向上

先に述べた3つの課題に対して、この薬急便モバイルオーダーは以下のように解を示す。

まず「待ち時間」という悩みだが、これまでの事前送信アプリは、オンラインで受付をしているシステムと、店内の受付システムが別個に存在していたため、処方対応も別個の業務フローで進んでいた。そのため、処方箋を提出した患者からしてみると、あとどれぐらいの待ち時間があるのかよくわからない、という状況にならざるを得なかった。

薬急便モバイルオーダーでは、オンラインと店頭の受付処理を統合することで、待ち状況を一元的に可視化。待ち時間が明確になることにより、調剤体験の質は確実に向上する。

[図表5]薬急便モバイルオーダー、店内における効果

また、同サービスは、調剤と物販の自然な相互誘導も期待できるのがポイントだ(図表5)。物販エリアに掲示されたサイネージに、調剤の待ち状況が投影されるため、それを目にした物販利用のお客様は自然と調剤サービスの存在を知ることになる。

また、調剤の受付後、待ち時間が長くかかりそうなお客様のスマホにオトクなクーポンを発行して店内への回遊を促すという施策も実施できる。調剤にとっては新規の患者獲得につながるし、物販も売上が上がる。スマホへのクーポン配布を通じた調剤と物販の連携は、サイバーエージェントの得意とするところといえよう。

店頭受付の患者に対しては、QRコードが印刷された待ち札を渡すのだが、このようなデジタルサービスに触れることで、処方箋の事前送信についても認知が高まり、ひいては電送率向上にもつながる。

待ち札のQRスキャンで、自然にデジタル接点へ誘導

[図表6]薬急便モバイルオーダー、オンラインへの誘導に関する効果

MG-DXによれば、待ち札を手渡された患者のうち、7.7%がQRコードを読み込み、待ち状況をスマートフォンで確認するという。さらにそのうちの94.1%が、薬急便に会員登録を行う(図表6)。

これらの利用者は、次回以降の利用の際は、オンラインで処方箋を事前送信することが見込まれる。つまりこのサービスを導入することで、自然と電送率の向上が期待できるわけだ。

本サービスは、店舗に足を運んだありとあらゆるお客様に対して、これでもかこれでもかと、調剤に対する訴求を繰り返し、調剤利用率の前段となるKPI、電送率を上げていく。

さらに「調剤から物販を伸ばす」「物販から調剤を伸ばす」「リアルをデジタルに引き込む」という、相互の融合までも効果として見込めるものなのである。

調剤と物販の壁を崩し、融合する

これまで調剤DXが進まなかった背景には、DgSの組織における、商品部を中心とした物販部門と、調剤部門の組織間の壁があったのではないだろうか。そもそも、両部門がどのように事業貢献しているのか、数値をもって可視化できている企業はそう多くはない。

また、物販の顧客ID(ポイントカード)と、調剤の患者ID(レセプトコンピューターで発番される店舗ごとの患者管理番号)は紐づいておらず、その関係性も不透明で、多くのDgSでは十分に議論できていない。そのため、調剤DXをどの部門が主導し、どう進めていくかが曖昧で、実効性のある戦略を進めることができないという状況が往々にして見られる。

今後、調剤併設DgSを伸長させていくためには、この部門間の壁を壊し、真の意味での相互送客を実現していく必要がある。

薬急便モバイルオーダーは、導入によるサービス連携を契機に、店舗における買物体験や調剤体験の質を向上させ、次回以降のデジタル接点利用につなげていくという一連の流れをつくることができる。

「DgSの皆様が抱える、物販と調剤を融合し、調剤併設DgSを伸長させるという経営課題に対する答えのひとつとして、ご提案できるのではないかと思います」と堂前氏は語る。

その実効性を見込んで、すでにいくつかの大手DgSチェーンが導入を決定しているという同サービス。今後DgSの調剤併設利用率の向上に寄与することは間違いなさそうだ。

 

〈取材協力〉

(株)MG-DX
代表取締役社長
堂前 紀郎氏

現在の経営方針「フード&ドラッグ」に舵を切るきっかけとなった

月刊マーチャンダイジングにゆかりのある経営者の皆様から、創刊25周年を記念してお祝いの言葉をいただきました。今回は、株式会社クスリのアオキホールディングス 代表取締役社長 青木 宏憲氏のコメントをご紹介します!

この度は、月刊MDご創刊より25周年を迎えられましたことを御祝い申し上げますと共に、これまでの日野眞克先生の業界発展へのご尽力に対し、心より敬意を表します。

月刊MDとクスリのアオキの関わりは、前社長の青木保外志の頃に遡ります。日野先生が月刊MDを創刊されました1997年は、まさに、第一次ドラッグストア成長期の頃であり、弊社が富山・福井両県に1号店を出店し、チェーン化に踏み出した頃とも一致いたします。

月刊MDは、当時まだ少なかった、ドラッグストア業態の理論や技術に特化した大変貴重な冊子であり、その理論の実証に当たっては、ツルハドラッグ様と共に、弊社も積極的に売場を提供いたしました。

医薬品や化粧品のみならず、機能性を中心とした食品の現場検証を重ねるなど、現在のフード&ドラッグの端緒となる取組みも数多く、25年続く業界のバイブルとなるお手伝いをさせていただけたのではないかと思っております。

この間新たにドラッグストアと取組むメーカー様も増えwin-winの関係が築かれておりますのも、日野先生のご功績の一つであると敬服いたしております。

私自身は、弊社が経営難に陥った2010年、代表取締役兼営業本部長として会社を牽引する立場に就きましたが、製薬メーカーに勤めていた私はドラッグストアについての知識が浅く、一から学ぶ必要がありました。

そんな中、月刊MDを精読し、店舗フォーマットなどの基礎的な学びを貴書より得ると同時に、現在のクスリのアオキの経営方針となる「フード&ドラッグ」に舵を切るきっかけとなりました。

2010年6月号の今月の視点にありました、『「来店頻度」を高める商品群、「買上点数」を増やす商品群』の記事に、実験結果と共に来店頻度を高める食品導入の利点が記載されており、ここから知恵をいただき、パン、牛乳、冷食や酒などを扱い、当時は「食品強化型ドラッグストア」とも言っておりましたが、そのフォーマット作りに邁進し、全店改装を実施しました。これが功を奏して、既存店売上高の前期比が大きく伸びて業績もV字回復を実現することができました。

その後、2010年代後半には同質化競争に陥り、地盤の北陸地域に大手競合ドラッグストアの進出も相次ぎ、再び経営難に直面し、現在進行中の新中期経営計画・Vision2026を策定する際、悩みながら生鮮強化や調剤強化に進むべきではと考えていたところ、日野先生のこれからは「フード×ドラッグ×調剤」が最強フォーマットになるという見解に触れて背中を押していただきました。自信をもって既存店に生鮮導入の改装を一気に進め、今期の既存店売上高の前期比が大きく伸び成果が出始めております。

このように、どんな時代でも私の考えに最も合致し、感銘を受けたのは月刊MDでありました。クスリのアオキは月刊MDと共に成長してきたと言っても過言ではありません。

これもひとえに日野先生との出会いがあればこそのことであり、スーパーマーケットやホームセンターが勢いを伸ばしている時代に、先見の明でドラッグストアの可能性を見出し、専門誌の創刊を決意されましたことに、改めて感謝申し上げます。

25年前には、ドラッグストアの売上は2兆5,000億円もいかず、経済産業省の商業動態統計にも取り上げられないような存在でしたが、今や、2025年度末に10兆円を目指すほどの規模となり、コンビニエンスストアの売上に迫る規模へと成長して参りました。ニュー・フォーマット研究所の名前にありますように、25年間たゆまず現場より改革を発信し続け、ドラッグストア業界を牽引し続けてこられた日野先生と、今後もお互いを高め合い、共にドラッグストア業界を盛り上げていけましたら、これほど嬉しいことはありません。

結びに、貴研究所の今後のご隆盛とともに、我が国におけるドラッグストアの更なる躍進に向けてご活躍されますことを願い、挨拶とさせていただきます。

 

[新生堂薬局]OTC薬の購買履歴と接客応対履歴を元に開発した「受診勧奨プログラム」が特許取得

新生堂薬局(本社福岡市、代表取締役社長水田怜氏)では、タブレット上で運用する医薬品、健康食品のカウンセリング販売支援ツール「健康台帳®」を共同開発し店舗で活用している。この健康台帳®を使った受診勧奨システム及び受診勧奨方法(以下受診勧奨プログラム)が2023年6月特許を取得。同社では、この特許技術は自社活用だけではなく、他社へもライセンス供与してドラッグストア(DgS)業界全体の価値を上げるとしている。(月刊マーチャンダイジング2023年11月号より転載)

2009年改正薬事法の功罪を踏まえDgSの医薬品売場の価値を取り戻す

2009年の薬事法改正により、これまでになかった「登録販売者(医薬品登録販売者)」という新しい資格者が誕生。OTC医薬品は副作用のリスクにより第1類から第3類まで分類され、指定第2類、第2類、第3類の医薬品は薬剤師だけでなく、登録販売者でも販売できることになった。

「この制度改正でDgSの多店舗展開には拍車がかかり、生活者にとって家から近いDgSで手軽に医薬品が買えるようになったことはいいことだと思います。一方で、改正以前には多くのDgSでは医薬品売場に薬剤師が常駐して、お客様の健康相談に乗り、適切な医薬品を紹介し、必要だと思えば医療機関での受診をお奨めしていました。DgSが健康相談拠点として機能していたのです。

ところが、登録販売者制度の導入で医薬品売場の主役は薬剤師から登録販売者へと変わっていきました。経験の浅い登録販売者は医薬品の説明や健康相談を積極的に行うことには躊躇があります。お客様の既往歴やアレルギーなどを確認するようマニュアルに書かれていても、いざ実践の場となると経験不足から、相手の健康状態を正確に把握できるか、聞かれたことに間違いなく応えられるか自信がなく、積極的に医薬品の説明や健康相談に応じるという姿勢はなかなか取りづらいのです。

これは登録販売者の責任ではありません。医薬品販売を支援する実践的なツールがないことが原因なのです。研修や座学には限界があります。医薬品販売を具体的にサポートできるツールが不可欠という思いで、新生堂薬局では子会社のNewromics(ニューロミクス)社とMMI社との共同開発で医薬品の販売支援ツール『健康台帳®』を開発しました。

健康台帳®はお客様の既往歴やアレルギーなどの基本的な健康情報を入力するようになっており、医薬品、健康食品の詳細な情報も多数収録されています。登録されたお客様情報を元に、お悩みや症状を聞けば、それに合った適切な商品をご案内することができます。接客履歴はクラウドに保存され、ID-POSとも連携しているので、どの担当者でもそのお客様が過去どのような商品を購入され、接客を受けたのかを知ることができます」(新生堂薬局代表取締役社長CEO・COO・CHO水田怜氏)。

健康台帳®を使えば、経験の浅い登録販売者でも適切なカウンセリングを行うことが可能になり、これを重ねることで自信が付き積極的に医薬品の紹介、健康相談へ対応ができるという好循環が生まれる。

薬剤師が担っていた役割を登録販売者と健康台帳®で実現

OTC薬を継続的に服用する人のなかには、医療機関での治療を要する人が少なからずいると思われる。こうした状況にある人を新生堂薬局では「潜在患者」と呼んでいる。カウンセリング販売に注力する新生堂薬局でもOTC薬をカウンセリングで購入するお客は30%程度に止まり、潜在患者の発見は困難だ。

健康台帳®を使ってOTC購入客との接点を増やし、一人でも多くの潜在患者を発見し、OTC薬の適切な利用、および医療機関での受診を勧めることを同社では「プレホスピタルカウンセリング®」と命名。今回特許を取得した「受診勧奨プログラム」を活用することで、潜在患者にプレホスピタルカウンセリング®を提供し、早期発見、早期治療開始を促すことが可能になる。

[図表1]「ヘルスケアステーション®」構想

新生堂薬局では、地域において医療機関や行政などと連携し、健康サポートの拠点=「ヘルスケアステーション®」となることがDgSの使命であるとして、ヘルスケアステーション®を新生堂薬局が目指す次なる業態と位置づけている(図表1)。

[図表2]ヘルスケアステーション®と健康台帳®の関係

この新業態の4つの重点項目が「早期発見」「早期治療開始」「治療継続」「重症化予防」である(図表2)。今回特許取得した「受診勧奨プログラム」はヘルスケアステーション®を実現させる大きなステップになる。

「DgSには元来、薬剤師を活用して地域の健康相談拠点としての役割がありました。それを健康台帳®、特許取得の受診勧奨プログラムを通じて、登録販売者によって実現させたい。

それにより、新生堂薬局だけではなく、DgS全体の価値を上げていきたいと思っています。受診勧奨プログラムはライセンス使用という形で他のDgS様にも提供していきます。DgSにおける医薬品販売と専門家の関わり方について問題が指摘されていますが、医薬品の安全な提供、医療機関との連携において、薬剤師同様に登録販売者は必要不可欠な存在であるはずです」(水田氏)

登録販売者は医薬品販売のために資格だけが重用され、医薬品の説明販売や健康相談という活動においては「休眠資産化」している店舗が多い。健康台帳®および特許取得の受診勧奨プログラムは登録販売者という活動面においては店舗に眠る大きな休眠資産を呼び覚まし、優良資産へと転換するアプローチでもある。

顧客の健康情報を登録することで安全な個別カウンセリングが実現

[写真1]特許証

健康台帳®の開発者の一人で、それを使った受診勧奨プログラムの発明者として水田氏と並んで特許証(写真1)に名を連ねる株式会社MMI、CMOで薬剤師の中村恵子氏に話を聞いた。

「DgSでOTC薬を購入するお客様の中には、事前にネットなどで調べて自分の判断でお薬を選んで購入している方もいらっしゃいます。現場の登録販売者たちはカウンセリングしたいけど、何か既往歴や特別な理由でお奨めしてはいけない薬があるのではないかと不安を持っています。私自身薬剤師ですが、売場での経験が十分でないこともあり、OTC薬をカウンセリング販売してくださいと言われると自信がありません。現状ではお客様の行動、登録販売者の心理両方からカウンセリング販売が実現しにくい状況です。まずは、登録販売者の不安を取り除き、経験が浅くても自信を持ってカウンセリング販売できるようにという思いで健康台帳®を開発しました」(中村恵子氏)

[図表3]健康台帳®の健康情報
画面年齢、性別、アレルギー、既往歴などの基本的な健康情報を登録する
[図表4]接客対応履歴
紹介した商品や対応内容をメモとして保存。疾病につながるキーワードを発見する

健康台帳®はまずお客の性別、年齢、既往歴、アレルギー、妊娠の有無、服用中の医薬品、健康食品などの健康情報を登録。商品を紹介する際は、頭や腹部といった部位別、症状、悩み別など複数の検索が可能。商品紹介の際は、健康情報に基づき禁忌(使用不可)の商品を除く商品がリストアップされ、各商品をタップすると詳細情報が出る。何をお奨めしたか、会話の中で重要と思われるキーワードなど接客応対履歴はクラウドに保存される。新生堂の会員カードと連携することで購買履歴を閲覧することもできる(図表3、4参照)。

ID-POSの購買履歴と対応履歴を元に受診勧奨

今回特許を取得したのは、この健康台帳®を使った受診勧奨方法である。まず、ID-POSにより、特定のOTC薬を継続的に購入している履歴があれば、独自の基準に基づき「過量服用」という判断がなされる。その上で、接客応対の中で疾病と関連する特定のキーワードが相手の言葉として出れば健康台帳®上で「疾病アラート」が出る。疾病アラートの出たお客に対して専門医が監修した「チェックリスト」を記入してもらい、規定のチェック数に達したら受診勧奨をする。

[図表5]健康台帳®を使った「受診勧奨プログラム」(特許取得)

服用中の医薬品、購買履歴(一定期間内にどれくらい購入、服用しているか)、健康台帳®上の健康情報、記入してもらったチェックリストなど一連の健康情報はお客に渡し診療時の医師の参考にしてもらう。この①「疾病アラート」の発信→②「チェックリストの記入」→③「受診勧奨」→④「健康・購買データの共有」までが特許取得の発明となる(図表5)。

単純に受診を勧めるだけでなく、明確な根拠を示し、診療の現場で使える健康情報を提供することは大きなポイントだろう。OTC薬の正確な服薬情報は医療機関で把握することは不可能だし、患者個人からも上がってこない。極端な例を示せば、ある高齢女性が診察時、医師から普段どのようなOTC薬を服用しているかと聞かれて「白い錠剤」と答えたという話もある。それほどにOTC薬の正確な服薬情報を医療現場と共有することは難しい。一方で、これが治療の貴重な資料になることも少なくない。生活に身近なDgSがOTC薬の正確な服薬情報、カウンセリングを通じて知り得た生活情報を医療機関に橋渡しすることには大きな価値がある。

2つの疾患に絞って運用。積極的な医療連携もカギ

受診勧奨プログラムでは、対象とする疾病を当面二つに絞って運用する。ひとつが月経のある女性の10%、推定260万人の患者がいる「子宮内膜症」。子宮内膜症とは、子宮内膜という本来子宮の内側にあるべき組織がそれ以外の場所で発育することで、痛みや不妊を引き起こす疾病だ。月経痛として現れるので鎮痛剤を定期的、継続的に過量服用することにつながる。20代、30代の女性に多く見られる。

「私も女性ですし、女性の悩みを解決したいという思いは強くあります。また、不妊につながることは、妊娠を希望する女性には大きな問題ですし、少子化を考えれば社会にとっても大きな課題です」(中村氏)

月経時、鎮痛剤の継続利用という特徴的な購買行動が見られるので、受診勧奨プログラムを活用すれば比較的発見しやすい疾病だろう。今後DgSでこの疾病が発見され、早期治療につなげれば個人のQOL(生活の質)改善に加え、社会的にも意義のあることだ。

もうひとつの対象が認知症である。認知症は自身にとって不便、不利益を与えたり、徘徊による失踪の危険があるばかりでなく、家族に介護の負荷を与えるなど周囲への影響も大きい。

「行政の人と話をする機会が多くありますが、認知症は大きな社会課題として認識されています。特に高齢化が進む地域ではそれだけ患者数も多く深刻になりつつあります。高齢者の方と日頃から接点の多いDgSがこれを早期発見し治療につなげることは価値の高いことです。当社ではエーザイ様とプロジェクトを組んでDgSで認知症の早期発見をする取り組みを検討しています」(水田氏)

エーザイは米国バイオジェン社と共同で脳内に蓄積し神経細胞を壊すとされるアミロイドベータの除去を目的とするこれまでの認知症治療薬とは異なる新しいタイプのアルツハイマー病の治療薬を開発している。

「認知症に関しては、ID-POSによる購買履歴で絞り込むことは難しいので、主にチェックリストや相談会を通じて行うことになると思います。登録販売者にも認知症やチェック方法の研修をしっかり行います。研修や座学を実践の場で生かして受診勧奨まですることは難しいのですが、健康台帳®や受診勧奨プログラムという具体的なサポートツールがあることが強みになります」(水田氏)

効果的な受診勧奨には相手との信頼関係が土台となる。これがなければいくら受診勧奨しても行動へと移さないだろう。特にセンシティブな問題を含む認知症においては信頼関係の構築は欠かせない。そのためにも健康台帳®を使って日頃から接客することが重要となる。

また、受診勧奨プログラムは普段の接客のなかで行うだけではなく、疾病アラートが出たお客にアプリ通知したり、疾病アラート予備群に向けた健康相談会を行うなど、店舗側からの働きかけが重要だ。

[図表6]接点を多くとって効果的に潜在患者に受診勧奨

現状、子宮内膜症と認知症という2つの疾病を対象としているので、この疾病の早期発見をテーマとした相談会の開催も有効だろう。受診勧奨プログラムの効果的な運用では、普段の接客+αの接点づくりが求められる(図表6)。

さらに、受診勧奨をしたら、具体的にどのクリニックのどの診療科目、どの医師から受診すればよいかまで案内することも早期治療に役立つ。健康台帳®を使った受診勧奨プログラムでは、近隣のクリニックをマップにして案内するサービスも構築中だ。DgS側は自社の受診勧奨プログラムを理解し患者を受け入れてくれるクリニック、ドクターを開拓して医療連携することも重要だろう。

生活者に近いDgSが日頃の買物行動や接客の中から潜在患者を発見し受診勧奨することで、早期治療開始、治療継続、重症化予防が実現すれば地域で信頼される健康相談拠点になれる。

〈取材協力〉

新生堂薬局代表取締役社長
兼CEO 兼COO 兼CHO
水田 怜氏
株式会社MMI
薬剤師 CMO
中村 恵子氏

我々に気づきと勇気を与えてくれる月刊MD

月刊マーチャンダイジングにゆかりのある経営者の皆様から、創刊25周年を記念してお祝いの言葉をいただきました。今回は、株式会社キリン堂ホールディングス 代表取締役社長 執行役員 寺西 豊彦氏のコメントをご紹介します!

「少年老い易く学成り難し、一寸の光陰軽んずべからず」

思い起こせば、商業界の月刊「販売革新」の編集記者を経て、日野眞克青年は21世紀に通用する流通システムの構築を目指して、流通向け専門誌「月刊マーチャンダイジング」を創刊されました。そして今年で25周年を迎えられました。この25年間の功績に対し、心より敬服申し上げるとともにお慶び申し上げます。

創立間もないころより、多方面での勉強会や研究会でお会いすることはもちろんのこと、弊社の店舗取材にも来ていただき多くの気付きと学びをいただきました。寸暇を惜しんでのアグレッシブな取材の時の目の輝きと学ぶ姿勢がまぶしかったことを忘れることはできません。

先日もご来社いただき、これからのドラッグストアの在り方、業界の動向、売場の楽しさと可能性等のお話を伺うことができました。その後も店舗取材をいただきましたが、25年の年月が経ったことを忘れてしまうような当時の眼差しが蘇ってきました。

日野先生は月刊誌の発行と並行して、研究会や米国視察研修を企画いただき我々に気づきと勇気を与えていただいております。

また、流通業やドラッグストアを志向する同志・働く仲間のバイブルとして「マーチャンダイジングとマネジメントの教科書」を発刊いただき、思考・行動と仕事の基本や基準となり生かされております。

日野先生におかれましては、これからも激動する業界の現場=取材・インタヴューに時間を惜しまず、業界発展のためにご尽力いただくことを心よりお願い申し上げます。これからも、更に若々しく瑞瑞しくご活躍されることを祈念いたします。

25周年本当におめでとうございます。

 

二刀流ファネルと複数メディアを縦横に駆使。ファミリーマートがリテールメディアを大活用

本誌9月号で「ファミリーマートがリアルリテールで逆襲~」と題する、ファミマのデジタル事業の全体像をリポートした。今号はその続編として、ファミマの担当者(デジタル・金融事業本部デジタル事業部長の国立冬樹氏)に直接話を聞き、リテールメディアは小売業をどのように変えるのか、その取り組みを深掘りした。ファミマが推進するデジタル事業と、店舗のメディア化の詳細をリポートする。(構成・文/流通ジャーナリスト 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2023年11月号より転載)

新規客をロイヤル化させる2つのファネルの取り組み

ファミマはリテールメディアを2つの(マーケティング)ファネルとして捉え、各段階においてタッチポイントを創出、商品やサ―ビスの購入に結び付けている(図表1)。

[図表1]縦横無尽に駆使する2つの(二刀流)ファネルと5つのメディア

ファネルとは、顧客が商品を認知してから、実際に購入するまでの一連の流れを図で表したものを意味する。従来の広告は、図表1の左半分のように、商品やサ―ビスを、新しいお客に「認知」させ、「興味・関心」を持たせ、「比較・検討」させて「購入」を促していた。テレビ広告がその代表的なものであり、ファミマのデジタルサイネージもその一つである。

一方のリテールメディアは、図表の右半分のようにファネルを超えたマーケティングを加えたもので、一度購入したお客に対して、再度の購入(リピート)から発信・拡散を促していく。詳細を説明する。

第1に「リピート」。仮にナショナルブランド(NB)の炭酸飲料Aを初めて購入したとする。最初に販促による値引きの効果で購入したお客に、2回、3回と同じ商品を試してもらうと継続率が高くなる。まずは、2回目、3回目のリピート購入を促すために、どのような施策をとるのかを決める。最初と同様に値引きクーポンの送付なのか、アプリ上で他のユーザーの感想を伝える情報なのか、リピートを促す施策を実施する。

第2に「クロスセル」。購入を検討する商品と、別の商品を一緒に提案すること。例えばカウンターコーヒーとスイーツの組み合わせ、あるいは飲料とポテトチップスの組み合わせなどを提案する。商品の購買データを活用して嗜好性の似ているお客をセグメント。そこにメーカーのプログラムを展開してクロスセルを上げていく。複数の接触ポイントにより来店するお客には効果が高く、顧客のロイヤル化につなげていく。

第3の「ロイヤル化」。例えば3ヵ月の間にファミチキ10個を購入であれば1本無料にするスタンプ施策のようなプログラムが有効である。こうしたロイヤルプログラムをアプリの中で展開することにより、ロイヤルティを増していく。

第4の「発信・拡散」。主にSNS上での発信と、それに伴う拡散については、ファミマ側がコントロールできるものではなく、あくまでも利用者の自由意志に掛かっている。ファミマ側が、しっかりとファンづくりに取り組むことで成果が期待できる。

「こうした2つのファネル、いわばファネルの二刀流により、私たちのリテールメディアは、新しいお客様の獲得と既存客のロイヤル化を、同時に推進することを可能にしたのです」(ファミリーマートデジタル・金融事業本部デジタル事業部長の国立冬樹氏)

5つのメディアを駆使してお客のタッチポイントを創出

二刀流のファネルによるマーケティング、さらに次に説明する5つのメディアによるタッチポイントの創出により、ファミマはリテールメディア戦略を推進していく。

この5つのメディアの内容を図表1の上から見ていく。

第1に「サイネージ」。全国の店舗に導入を進めるデジタルサイネージ「ファミリーマートビジョン」は2023年内に1万店舗への設置を目標にしている。これは複数人が同時に視聴するメディアであり、自分が能動的に見なくても自然と目に入ってくる。テレビの視聴者が減少し、若者がユーチューブなどの動画に流れる中で、新たな役割を担うようになっている。

例えば、ユーチューブに関しては、利用者はIDによりセグメントされた広告を視聴している。偶発的な情報や広告との「出会い」は少なくなっている。ターゲティングの精度を高めていけば効率は良くなる一方で、ターゲットユーザーが先細っていく懸念もある。メーカーにしてみれば、これまで興味を示さなかった利用者に商品を試してもらいたいニーズはある。ファミマはサイネージをテレビと同じマスメディアに位置付けて継続させていく。

ファミマの期待は、サイネージを通して店頭の商品はもちろん、今のトレンドをキャッチしてもらいファンを増やすことにある。そのため、広告枠は50%に抑えて、残り50%を独自の番組に充てている。滞在時間の平均は5分といわれている。この5分を楽しい時間と空間にしていく。その一環として、レジ待ちの27秒で、ひと笑いを起こすコンテンツの配信を、吉本興業とのタイアップで配信している。

ファミリーマートビジョンを用いた、日本コカ・コーラとファミチキの連動企画は、実施前、実施後の比較において、ファミチキとコークの併買率を6倍から7倍に増やすことができた。

コークの企画に関しては、ファミリーマートビジョンに加えて、ファミペイへの広告も打っている。これにより、さらに販売係数が高くなるといった結果が出ている。こうしたクロスメディアの効果を活用しながら、広告主に還元していくとしている。

第2の「店頭(売場)」については、ファミマ本部とフランチャイズ加盟店との連動が求められていく。サイネージやファミペイアプリ、デジタル広告やSNSで発信したとしても、売場で対象商品を欠品させたり、目立たせなかったりすれば広告効果も半減する。発注、陳列、販売、検証のサイクルの中に、リテールメディアの展開をしっかりとつなげて、効果を高めていくことが求められる。

第3の「アプリ」については、ファミペイのデジタル会員1,700万ダウンロード(DL)を活用する。お客が求めているのは、ファミマで買物するときのベネフィットがある機能や付加価値である。それがファミペイのDLにつながるので、商品の販促施策に連動した形でDLを促している。

例えば、「ファミマスイーツを買うと100円引きファミペイクーポンもらえる!」といったファミペイ会員だけが100円割引になるキャンペーンを展開した。こうした商品の連動により会員数を増やしていく。既にファミペイを使用している会員にとっても、そうしたお得が続けば継続する動機につながっていく。

第4の「デジタル広告」について、事業会社の「データ・ワン」が担っている。広告の枠を買い付けるDSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)エンジンを自社開発。同時にクリエイティブを配信する両方の仕組みをデータ・ワンは持っている。

データ・ワンの分析によると、単に広告を見てもらうだけの枠と、見た人が購買行動に移した人の枠は実は違っているという。市場において、低値で取引きされている枠に、デジタル広告として飲料メーカーのCMを打ったところ、購買行動への効果が非常に高かったという。AIアルゴリズムを使って、購買効果の高い枠だけを買い付ける仕組みを、データ・ワンでつくり出している。

第5の「SNS」については、500万人以上のフォロワーを持つファミマの公式X(旧ツイッター)を中心に情報を発信、他に公式インスタグラムやTikTok、LINE、フェイスブックなども活用している。

「この5つのメディアを私たちは作り込んできました。これを縦横無尽に駆使しながら、必要なポイントで顧客にタッチしていき、このファネルの両方をカバーしていくのです。これを作り切ることが、私たちのリテールメディア戦略になっていく」(国立氏)

デジタルのアセットを組み合わせ小売業の価値を再定義

ファミマはデジタル戦略を進めるにあたり、店舗を「カスタマーリンクプラットフォーム」と再定義して、顧客と深くつながる政策を実施している。

この店舗の再定義はファミマ独自の戦略である。お客とのつながりを常に創出することに経営資源を集中させていく。その考え方は、世界最大の小売業であるウォルマートも同様のデジタル戦略を描いている。お客とのつながりを強化するために、店舗だけではなくデジタル接点を使った形で、一つのアセット(資産)を形成していく。

それは時間も場所も問わず、お客と常につながっていくことを意味する。店舗の外においても中においても、お客とつながっていき、有益な情報を発信したり、フィードバックを得たりしていく。店舗で商品を販売するタッチポイントに、リテールメディア機能、コミュニケーション機能を加えたプラットフォームをデジタルでつくっていく。

「コンビニに新商品を楽しみに来店されるお客様は多いと思います。それに加えて、新しく有益な情報が発信される拠点として、お客様の生活導線の中でファミマに立ち寄っていただくようなつながりの強化を、リテールメディアを含めて実践していきます」(国立氏)

ファミマは、約1万6,500店舗のリアルなアセットを強みとしている。そこにデジタルの新しいアセットを組み合わせて、小売業の価値を再定義する。このDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組むことで、新規顧客の獲得と、既存客のロイヤル化を図っていく。

 

《取材協力》

ファミリーマート
デジタル・金融事業本部デジタル事業部長
(兼)経営企画本部経営企画部
国立 冬樹氏