DgS決算分析、売上高1兆円規模の企業3社出現 月刊MD2021年10月号の見どころ紹介

皆さんこんにちは、月刊MD編集長の野間口です。 秋ですね。近所の水元公園ではセミと鈴虫がまだ共演中ですが、セミの頑張りもあと少し。先日、その水元公園にテントを持って行き、くつろいでいたら、短パンで無防備な足を蚊に食われまくりました。冬が来る前に体力を付けて産卵する母蚊の本能です。かゆくなければ少しの血液くらいあげるのに、かゆみを感じて感染症を防御するのは人体のメカニズムですね。蚊の繁殖本能vs人類の生存本能を体験した1日でした。蚊に食われただけですが。虫よけを持っていきなさいという話です。

さて、月刊マーチャンダイジング10月号の紹介です。

特集は恒例の「ドラッグストア白書」、上場ドラッグストア、調剤薬局チェーンの決算分析です。

特集①ドラッグストア白書2021

売上高1位のウエルシアHDは約9,500億円、2位のツルハが約9,200億円、3位コスモス薬品が約7,300億円、ウエルシアHDは来期(2022年2月期)1兆円を超える予想です。ツルハHDは2022年5月期の売上高予想が9,560億円、マツモトキヨシHDとココカラファインの経営統合によって生まれるマツキヨココカラ&カンパニーと並んで2023年の決算期には1兆円を超えると思われます。コスモス薬品は2025年までに1兆円を目指すとしており、5年以内に売上1兆円規模のDgSが4企業以上生まれる様相です。

上位10社の売上高合計が5兆7,900億円で約72%のシェアを占める寡占状態にあります。調剤専門チェーンの上位10社の調剤事業売上高を足しても市場の15%弱という状況とは対照的です。

調剤専門チェーンはコロナ禍で受診控えが起こった影響で処方せん枚数が落ちて厳しい結果になりました。調剤事業売上高上位10社のうち売上高の前期比がプラスになったのは日本調剤、シップヘルスケア、ファーマライズHDの3社のみ(図表参照)。

家の近くにあり、調剤以外の買物もできるDgS併設の調剤薬局が構造的に優位に立ったといえるでしょう。

[図表] 調剤薬局の調剤事業の業績推移(2021年の売上高順に掲載)

DgSは規模の拡大と共に調剤事業でも専門チェーンに追いつき追い越しシェア拡大することが予想されます。

ウエルシアHDの過去3年間の調剤事業の売上伸長率(18.2%)で計算すると2025年には3,400億円を超える見通しで恐らく調剤売上No.1になるでしょう。DgSの強さが益々際立った2020年度決算です。

特集では決算数値を多方向より分析、手もとに残しておきたい1冊になってます。

特集②激戦地区リポート 焼津市のDgS

その他激戦地区リポートとして静岡県焼津市のDgSを視察報告します。

焼津市は人口13万8,000人、DgSは26店出店しており1店舗あたりの人口は約5,300人。ウエルシア、コスモス、杏林堂、クスリのアオキなど有力DgSがしのぎを削るエリアでの各社の戦い方を詳細に見ています。

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DXはあくまで手段、目指すは「デジタルを使った生活者の買物体験向上」

サイバーエージェントは1998年の設立。自社開発のインターネット広告商品がヒットして2年後の2000年には東証マザーズに上場。2004年にはブログサービス「アメーバーブログ(現Ameba)」をスタート。以来、文字どおりサイバー空間を舞台に幅広く事業を展開している。近年、販促のデジタル化、小売業のDX支援事業にも乗り出し成果を挙げている。今回は同社の役員である宮田氏と事業統括責任者である藤田氏を取材した。(月刊マーチャンダイジング2021年10月号より)

AI、デジタルを活用すれば個人に合った提案が可能

サイバーエージェントの事業領域

以下の記事で紹介したように、世界最大の小売業であるウォルマートは出店による成長からDXを駆使した商圏の深掘り、個人の買物予算のシェア拡大に成長戦略のかじを切っている。

ECも店舗もすべての買物体験をひとつのアプリに集約する

 

一度つながったお客(新規客)にベストとおもわれる商品提案、価格や時間を含む快適な買物体験を提供し続けることで、長期にわたり関係を継続しLTV(生涯顧客価値)を上げていこうという戦略である。LTVの考えは古くからあり、顧客の買物動向を知り、顧客に合った商品やサービスを提供するために、ID-POS(顧客情報付き購買データ)を使うことが主流だった。

現在、アメリカの小売業ではこの段階をはるかに超え、多額の投資をしてDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、快適な買物体験の提供、顧客分析に基づく商品提案、集客、販促、在庫管理などあらゆる施策をデジタルによって最適化、効率化し成果を挙げている。こうした海外、あるいは今後進むであろう国内小売業のDXのポイントはどこにあるのだろうか。

小売におけるDXのあるべき姿は、『生活者の買物体験をより便利にすること』だとおもいます。たとえば、一口に30代女性といっても生活スタイル、購買傾向はさまざまです。子育て中でなるべく時間をかけずに必要最低限のものを買い揃えたいという人もいれば、健康意識が高く、少し高級でもいいから健康を気使った商品を購入したい、という方もいらっしゃいます。

いままでは性年代やお客さまからご提供いただいた情報を基に商品や販促の案内を送ることしかできませんでしたが、AIを活用すれば普段の購入傾向や来店頻度、位置情報などを統合して、買物に対する価値観、ライフスタイルまで推定することが可能です。AIによる顧客分析の結果、同じ日用品でも『お得な大容量パック』を『お届け』するのか、『いま話題の高品質な商品』を『店舗でピックアップ』してもらうのか、顧客に合った商品、買物方法が導き出されるのです」(宮田氏)

いま、ライフスタイルや価値観は多様化しており、大多数、マジョリティ、マスといった概念は相対的に小さくなっている。「大多数の人」に向けたつもりの販促が、だれにもハマらなかったということも起こり得る時代だ(図表1)。

[図表1]同じような性年代でもライフスタイルによって最適な買物方法は異なる

お客に、より快適な買物体験を提供するためには「パーソナルユース」を見極め、最適とおもわれるパターンを導き出すことが求められる。そのために、デジタル、AIが有効で、それを実現できれば、「新規客の獲得」「既存客の深掘り」の可能性が格段に高まり、地域シェアを上げられるのだ。繰り返しになるが、ウォルマートはじめいくつかのアメリカ小売企業は大胆な投資によりそれを実現させ、常にレベルアップを図っている。

DXに投資してスマホアプリを店舗にする

AI、デジタルによる「パーソナルユース」の抽出で重要かつゴールとなるのが「1to1マーケティング」である。性年代や学生、既婚者といった大まかなグループ分けではなく、個人の属性を類推して文字どおり「一人にひとつの提案」という対象を絞ったマーケティングである。

その事例として、アメリカのウォルマートではネットスーパー上でAIによる代替品推奨システムを稼働させている。コロナ禍の影響もありネットスーパーのニーズが飛躍的に高まったことで欠品問題も浮上した。これを解消するためウォルマートでは希望の商品の在庫がない場合、過去の注文履歴や代替品の返品率など100近い項目をAIで学習することで「お客さまが満足できる可能性の高い代替品」を提案できるシステムを構築。このシステムの活用で代替品の返品率を5%以下にまで下げることに成功している。

在庫管理、欠品アラートといった業務レベルを超えAIを使うことで、在庫がなければお客さまの好みに合わせて最適な代替品を提案するという買物体験を第一に考えた対策に進化している。

代替品提案のシステムを自社サイトの動画で解説

顧客目線のアプリ開発で既存店の深掘りが実現する

アプリ活用の際、もっとも重要なことを藤田氏は次のように語る。

「ウォルマートのAIを使った代替品の提案に見られるように、アプリの活用でもっとも重要なのは、店舗同様『徹底した顧客目線での運用改善』です。ウォルマートやクローガー、ウォルグリーンといったアメリカの主要な小売業は週一回程度の高い頻度でアプリに見直しをかけ、細かい運用改善を繰り返しています。その結果アプリの評価も5点満点で4.5を超えるものが多く、使いやすくお客さまに支持されているのです。

アプリをより便利に、お客さまに継続して使って頂ける『もっとも身近な店舗』に育てることで1to1マーケティングに必要なデータの収集にもつながります。また、アプリから来店促進することもできます。その第一歩が『アプリへの投資強化』であり、その意識が非常に高いことがアメリカの小売DXが成功している大きな理由のひとつです(図表2)」

[図表2] 出店成長の次に来るトレンド(アメリカで進行中)

前の原稿で見たようにウォルマートの2021年の国内設備投資額は78.3億ドル(約8,613億円)、そのうちの72.6%がデジタルへの投資で、次いで改装、新規出店への投資は微々たるものだ。

年次報告書によれば、米国ウォルマートとサムズクラブ(会員制ホールセールクラブ/コストコのようなもの)の合計店舗数は、2021年(1月末時点)が5,342店、2020年(同)が5,355店なので、出店どころか前期より13店舗削減している。これは、アプリ、デジタルを使った既存店、既存商圏の深掘りが成長路線に乗っていることを示している。

デジタルを使って1to1マーケティングを実現

サイバーエージェントでは2017年「販促革命センター」という部署を創設。これまでの紙やアナログの販促をデジタルに置き換えることで、お客の買物体験を「革命的」に向上させることを目指している。サービス提供の対象は小売業だが、商品を絡めた販促ではメーカーとコラボすることもある。

また、同社ではLINEやPayPayといったコミュニケーション・決済のプラットフォーム企業(社会インフラともいえる程、大規模にサービスを提供している企業)と組んでさまざまなデジタル販促の企画、実施、運用を一貫して行っている。LINEに至っては全代理店売上の約25%を占めるほどで、いずれの企業とも豊富な取引量があり、その分さまざまなノウハウが蓄積されている。

小売企業のアプリに機能集約して店舗化するのはひとつのゴールだが、LINEを使っても1to1マーケティングは可能だ。LINEを使った販促で120%売上を上げるなど成功事例も豊富にある。

「今後もっとも重要になるのは、企業アプリやLINEを使った1to1マーケティングの実現です。LINEはインフラといっていい程、生活に密着したアプリで販促手段としても非常に有効です。最近の例でいえば、LINE上に自社独自のアプリを構築できる『LINEミニアプリ』という機能も登場しており、これを使ってクーポン配信や処方せん受け付けを行っている企業さまも出てきました。

現状、世代によっては企業アプリよりもLINE公式アカウント(企業のメッセージ送信やクーポン配信などが行えるサービス。無料と有料のプランあり)の方を利用しているというアンケート結果も取れており、今後はお客さまのライフスタイルや志向に合わせ、ツールを選んで情報発信、サービス提供をすることが大事になります」(藤田氏)

設計、開発から運用、集客までデジタル販促を総合的にサポート

販促革命センターを設けて小売業のDX、デジタル販促の領域に本格参入した同社だが、その理由のひとつは、生活インフラ、そして広告媒体としての小売業の可能性に注目したことにある。

「時代の流れで、ライフスタイルも関心事も分散しているなか、リアル小売業は店舗を構え、集客し一定の売上を挙げ続けています。コロナ禍でも感染防止のルールを設け、これだけの人を集めることができる店舗は地域にとってはなくてはならない存在ですし、媒体としても可能性があります。デジタル販促やDXを進めることでお客さまの買物体験はもっともっとよくできる、それに合わせて小売業さまも成長できるとおもっています」(宮田氏)

一方、藤田氏は自社のデジタル販促、小売業のDX支援事業の強みを次のように語る。

「ひとことで言えば『徹底的に効果に向き合う運用力』に自信があります。弊社では、営業、コンサル、研究開発組織が一体となって『設計』『開発』『運用』まで一気通貫で小売業さまを支援します。この体制は弊社の規模、経験がなければ実現できないでしょう。

DXによる大きなメリットのひとつは、データを用いた分析を基に、運用改善できる点にあります。いままでの販促物やアプリでは一度つくったらそれでおしまいということが多かったのではないでしょうか。弊社ではインターネット広告でお客さまの効果を最大化するために構築してきた運用体制やノウハウ、自社のサービスを成長させるために行ってきたアプリの改善ノウハウが膨大に蓄積されています。そのノウハウを活用しながら、小売業のDXが成功するまで徹底的に運用と改善を行っていきます。効果が出るところまで伴走することができるのが、弊社の強みだと考えています」(図表3)。

[図表3]専門性が高く一貫した事業体制

DXの波をいかに捉えるか 今後10年の成長を決める

率直にいって、小売業はローコストオペレーションを重視するあまり、販促やDXに投資するという概念が弱い。DXに関しても、できることならメーカーやベンダーの販促費用を使って無償でできるスキームを好む傾向がある。

一方で、ネット、デジタルの世界は日進月歩ではなく秒進分歩といわれるほどにニーズが目まぐるしく変化し、日次、長くても週次でシステムや施策を見直す必要がある、大量の対象に働き掛け、短いスパンでニーズの変化に対応する分、大きなリターンも期待できる。このような世界で小売単独で成果を挙げていくのは困難だろう。

まず、デジタルのノウハウを持ち、一気通貫してスピーディーに対応できるパートナーを選択し、適正な投資をしてパートナーとプロセスやゴールを共有しながらDXを推進することが重要だ。小売業はまだ知らないが、取組み次第では着実に成果が挙がるというデジタル施策は豊富にあるだろう。

出店による成長を基盤にしながら、変化に備えてDXを使った既存店の強化策も同時に進めていくべきだ。

コロナ禍はライフスタイルを変え、ECやデリバリーの習慣は一気に前進した。販売や販促以外にも在庫管理や教育などDXが効果を挙げる領域はあり、将来的にはDXの導入が業績を左右するとおもわれる。アメリカや中国などDX先進国は既にその世界に突入している。

ドラッグストア(DgS)に身近な例でいえば、オンライン診療やオンライン服薬指導は規制緩和され、厚労省はこれを後押しする構えだ。調剤事業に出遅れている大手DgSがDXの力を借りて、比較的少ない設備や人材への投資で大きな成果を挙げられるという時代が来るかも知れない。常にイノベーションは起こっている。

サイバーエージェントではAI技術の研究開発組織も社内に持っており、特に経済学を実ビジネスで積極的に取り入れている数少ない国内企業である。同社が現在積極的に取り組みたいとしているのは「データと経済学を活用した価格の最適化」。無駄な値下げによるロスは意外に多い。1品5円のムダな値下げでも、1日10個売れて2,000店で365日営業すればなんと年間3,650万円のロスになる。

こうした課題をデータ分析と経済学理論で解決していこうという取組みで、一部企業では既に導入しているとのことだ。第一線で活躍する経済学者を社内で複数雇用している。

10年前には多くの人が映画や漫画の世界だと思っていた車の自動運転は、いまやほぼ現実のものだ。小売業にも同様のDXの波が押し寄せており、これにいかに乗るかが今後10年の成長を分けるだろう。

〈取材協力〉

宮田 岳氏
執行役員/インターネット広告事業本部 販促革命センター統括2012年サイバーエージェント新卒入社。2015年10月、サイバーエージェント最年少執行役員(当時)に就任し、営業部門統括を務める。現在は販促革命センターの担当役員として、販促・小売のDX事業の立ち上げを狙う。
藤田 和司氏
AI事業本部DX本部統括2002年サイバーエージェント入社。メディア事業、広告事業で幅広く事業立ち上げを経験した後、2013年よりアドテクノロジー事業に従事。現在はAI事業本部DX本部の統括を務める。

ECも店舗もすべての買物体験をひとつのアプリに集約する

リアル小売業の次の10年の最大の競争戦略は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進である。しかし、DXの本質を理解している小売業の人材は少ない。このシリーズでは、IT用語が苦手な「経営幹部」「営業担当(商品部や店舗運営部)」のために、リアル小売業のDXの強化戦略と戦術を解説する。第1回は、ウォルマートを中心に、アメリカのリアル小売業で起こったDXの本質をリポートする。数年後の日本の未来だと思って読んでほしい。(月刊MD 主幹 日野 眞克/月刊マーチャンダイジング2021年10月号より抜粋)

マス広告が減少しデジタル広告が急成長

アメリカの広告市場は、2017年まではマス広告(テレビ、新聞、ラジオなど)がデジタル広告(パソコン、スマホ)を上回っていたが、2018年にはデジタル広告が逆転した。

[図表1]アメリカのデジタル広告売上の推移

図表1によれば、マス広告の2018年の売上高975億9,300万ドル(約10.5兆円)に対して、デジタル広告は1,104億7,800万ドル(約11.8兆円)。しかも、2019年、2020年のマス広告はそれぞれマイナス成長なのに対して、デジタル広告は2桁成長と、年々その差は開いている。

ちなみに日本の「電通」調査では、昨年(2020年)にはじめてマス広告の売上をデジタル広告の売上が上回った。日本はアメリカの約3年遅れで、デジタル広告革命が進んでいることがわかる。

アメリカの「ウォルマート」は、メディアのデジタル化が進む過程で、思い切りデジタル分野に投資を振り向けた。ウォルマートの2020年(1月末時点)の米国内の店舗数5,355店が2021年(同)は5,342店と、過去数年間は新規出店に投資せず、総店舗数は横ばいもしくは減少している。

一方で、「EC&IT」への投資比率は2017年52.5%だったものが、2018年には60.7%、2019年には67.9%と年々拡大している。新店投資を抑えて、デジタルに巨額の投資をしてきたことがわかる。

[図表2]ウォルマート国内設備投資額推移

そして2021年には国内の設備投資額の72.6%がEC&IT投資である。この投資の振り幅の大きさには驚かされる。まさにデジタル小売業に大きく変貌していることがわかる(図表2)。

日本のように、申し訳程度にECサイトを運営しているのとは異なり、店舗販売小売業から「デジタル小売業」に一気にビジネスモデルを大転換したといえよう。

ウォルマートは巨大なIT投資によって、どんな小売業に生まれ変わろうとしているのか?

すべての買物体験をひとつのアプリに集約

ウォルマートのEC&IT投資の最大の目的は、すべての買物体験の入口をひとつのアプリに集約することである。かつては、店舗ピックアップとネットスーパーのアプリ、オンラインストアのアプリが複数存在していたが、2020年3月にすべての顧客接点をひとつのアプリに集約した。

ひとつのアプリで店舗購入、EC購入、アプリ注文→店舗ピックアップを選ぶことができる(ウォルマート)

ウォルマートのテクノロジー担当 バイスプレシデントのSanjay Radhakrishnan氏は、「ウォルマートで活用しているIoTデバイスは、取引先のベンダーやメーカーがそれぞれつくっており、さまざまなサプライチェーン上で導入されていました。

そのため、各デバイスから収集されるデータがバラバラな形式で集まっており、顧客体験の最適化のためにデータを一元化することが課題だった」ということです(米国情報サイト「Venture Beat」2021年4月22日配信記事より抜粋)。

つまり、DX投資の最大の目的は、すべてのデータを一元管理することであった。

そのために、さまざまな形式でバラバラに存在していたデータをひとつのシステムで管理するIT技術に投資してきたわけである。当然、ECとリアル店舗の在庫・販売・顧客データをひとつのシステムで一元管理することができる。

ウォルマートのアプリは、購入する際に「ECで購入するか?」「リアル店舗で購入するか?」を選ぶ必要がある。

日本の小売業のように「店舗販売」と「EC販売」が別々に存在するのではなくて、ECも店舗も買物の選択肢として同列であり、ECとリアルの2つの買物体験をひとつのアプリで選択できるようになっている。

最近は日本でも「出口EC」という言葉が注目されているようになっているが、ECもひとつの業態として考えることが今後は重要である。しかも接点はひとつのアプリであるべきだろう。

日本でも今後、ひとつのアプリにECとリアルの買物体験を集約化しなければ、本当の意味でのDXの推進にならない時代がすぐそこまで来ている。

アプリがすべての買物体験の入口になるためにもっとも重要なことは、アプリの使い勝手をよくするために「改善PDCA」を短期間で回すことである。

【編集部注】 IoT(アイオーティー)の正式名称は「Internet of Things」。すべての「モノ」がインターネットでつながる状態のこと。

週次の改善PDCAがアプリ満足度向上の肝

[図表3]日米小売業のアプリ評価と更新頻度

図表3は、日米の小売業のアプリの評価(AppStore)と更新頻度をまとめたものである。ウォルマートやドラッグストア(DgS)のウォルグリーンの評価が4.8なのに対して、日本のDgSのアプリの評価はほとんど2点台である。

その評価(顧客満足度)の差の大きな原因は、アプリの更新頻度であるという。ウォルマートは、少なくとも週に1回は「改善PDCA」を繰り返して、アプリの使用体験を改善している。

日本のデジタル広告のナンバーワン企業である「サイバーエージェント」のAI事業本部DX本部統括の藤田和司氏は次のように強調する。

「インターネットの世界の時間は、1ヵ月が1年に相当します。3ヵ月に1回しかアプリを改善しないということは、アプリを3年放置しているのと同じことなのです」

リアル店舗が定期的に改装し、店舗年齢を短く保つのと同様に、「アプリ年齢」も若くなければ顧客満足度は高まらない。しかし、店舗年齢よりもアプリ年齢はさらに若く維持しなければならないという。

ウォルマートは週に1回改善し、ウォルグリーンは2週間に1回改善している。こうした短期の「改善PDCA」が、2社のアプリの顧客満足度の高さに直結しているといえよう。

そう考えると、日本の小売業のように、システムベンダーに依頼して、アプリの改善に2ヵ月もかかり、そのたびに改修費用がかかるというスピード感では、アプリの顧客満足度は高まらないし、アプリの利用率も高まらない。

ひとつのアプリを買物体験の入口にする以上、顧客に使ってもらってなんぼである。アプリの「改善PDCA」が小売業のDX推進の肝であることが、アメリカの事例を見るとよくわかる。

図表4は、ウォルグリーンのアプリで代表的な機能をまとめたものである。ウォルグリーンもウォルマート同様に、ひとつのアプリに買物体験を集約している。アメリカのDgSは、調剤の売上構成比が70%超と高いので、「リフィル処方せんのスキャン機能」「処方せん事前送信」などの調剤に関する機能の活用が多い。

[図表4]ウォルグリーンのアプリ活用内容

とはいえ、「商品ピックアップサービス(BOPIS)」「オンラインショッピング」「翌日配達」などの物販に関するサービスも、ひとつのアプリで提供してもらえる。

図表4には記載してないが、アプリで送信した写真データの紙焼き写真を店舗で受け取るサービスもメニューにはある。ウォルマート同様、すべての買物体験の入口がアプリなのである。

小売業の「デジタル広告」は飛躍的に伸びている

ウォルマートは、デジタル投資を進める過程で、さまざまなIT企業を買収し、ノウハウを構築しながらデジタル部門の内製化を進めてきた。2021年1月28日には、取引先であるメーカーなどに対して、ウォルマートの店舗やウェブサイトで掲出するデジタル広告を提供する部門を「Walmart Connect」として再編した。

さらに、ウォルマートは2021年2月4日に、デジタル広告のスタートアップ企業サンダーインダストリーズ(Thunder Industries)の広告の自動配信技術を買収し、「デジタル広告」の分野に本格的に参入した。

リアル小売業のデジタル広告は、以下の2つに分けられる。

◆リアル小売業のデジタル広告
(1)アプリ画面へのデジタル広告
(2)店頭サイネージへのデジタル広告
(3)購買データを使ったSNS等外部メディア(Youtube、Twitter等)への広告配信

ある外資系金融機関の調査によるとウォルマートは、上記2種類のデジタル広告の売上が、1年前は日本円で約3,000億円だったものが、今年は約5,000億円、5年後にはデジタル広告売上5兆円を目指す計画である。

ウォルマートはデジタル広告が、5年後に10倍も伸びる有望なビジネスと考えているわけだ。

「アプリ広告」と「店頭広告」の比率は不明であるが、おそらく現時点ではアプリのクリック広告の売上高の方が大きいと推測できる。いずれにしてもウォルマートは、ECとリアルの両方で毎週1億5,000万人の顧客接点がある。

顧客がアプリを見る、リアル店舗でサイネージを見るという接点数の多さを考えると、アプリと店頭が非常に重要なメディアであることがわかる。

ちなみにウォルマートは、リアル店舗全店で約17万台のディスプレイを設置しており、店頭メディア化を推進していく計画だ。小売業のデジタル広告は、これからも大きく成長していくことは間違いないと思われる。

冷蔵ケースの扉を広告メディア化したウォルグリーン

参考までに、Amazonの広告事業(スマホアプリとECサイト)の売上高を見てみよう(図表5)。

[図表5]Amazonのアプリ広告の規模(参考)

アメリカのAmazonは、ECサイトの売上高に対して、約8%の113.8億ドルをアプリとECサイト内の広告事業で稼いでいる。

日本はアメリカよりも広告売上は少ないが、今後は増えていくと予想される。

アメリカにおいてAmazonが広告事業を開始したのが2012年。日本で開始したのが2016年ということを考えると、日本でもアメリカと同様に広告売上はこれまで以上に増えていくことが予想される。

最近は自動車や不動産、ネットサービスなどの出品メーカー以外の広告出稿も増えている。

アプリだろうが、リアル店舗だろうが、人が集まる接点は重要な広告メディアなのだろう。

しかも、小売業の物販で得られる利益と比較して、小売業の広告ビジネスは、利益率が非常に高いことも魅力的である。

また、リアル小売業のデジタル広告で重要なことは、「アプリ広告」と「店頭広告」を一元管理して連携することである。店頭にサイネージを設置して、メーカーから広告料を取る方法だけでは、アプリとの連携ができず、あくまで部分的なDXの取り組みに過ぎない。

アプリ広告も店頭広告も入口と運用はひとつであるべきである。アプリ広告も店頭広告も、ひとつの画面で選択してアップロードできるようにすべきである。

たとえば、ウォルマートのメーカー用の広告出稿のための管理画面では、メーカーのニーズに応じて、アプリ広告のアップロードを選択できるし、東部地区のウォルマートの店頭サイネージに限定したデジタル広告をアップロードすることもできる。

デジタル広告もまた、店頭とアプリを別に管理するのではなくて、入口はひとつであるべきなのだろう。

AIカメラで購買行動や欠品を可視化する

ウォルマートは、ニューヨーク州にある実験店舗に1,000台以上のカメラを設置し、来店客の購買行動や、店内作業の可視化、欠品削減などのオペレーション改善にも取り組んでいる。社内プロジェクト「インテリジェント・リテール・ラボ(IRL)」を組織し、AIカメラの活用の実験を内製化し、取り組んでいる。

ウォルマートのAIカメラ

AIカメラの活用としては、欠品対策への応用が興味深い。以前は、店内の在庫管理のために、夜間に棚を撮影する自走ロボットを導入していたが、巨大投資したにもかかわらずロボットの在庫管理の仕組みは廃止した。

ちなみに、1,000店以上に導入し、巨大投資した「ピックアップタワー」の運用も廃止しており、そのあたりの「トライ&エラー」のスピードと、失敗を恐れない決断のダイナミックさには驚かされる。

在庫管理ロボットの代わりに赤外線のAIカメラで在庫管理を行っている(写真参照)。商品が売れて黒い棚が露出すると、赤外線カメラが黒色を吸収して欠品を認識し、従業員のアプリに「欠品アラート→補充」の作業指示が届く仕組みになっている。

どんな商品でも、黒い棚が露出したら欠品アラートが出るので、在庫管理ロボットよりも低コストで運用できる。

DX(デジタルトランスフォーメーション)のトランスフォーメーションという言葉は、「痛みを伴う改革」という意味である。現状維持の改善(インプルーブメント)ではDXを推進することはできない。デジタル企業の買収などのIT投資、組織改革、失敗を恐れないトライ&エラーなどの痛みを伴う改革を断行しない限り、DXは推進できないことが、ウォルマートの事例からよくわかる。

陳列の基本技術「上下の法則」「左右の法則」を知っていますか?

買いやすく、選びやすい陳列が、「ショートタイムショッピング(短時間の買物)」と「ワンストップショッピング(買上点数の多さ)」を両立させます。買いやすさ、選びやすさを実現する定番売場の2つの陳列技術を紹介します。

商品の発見段階はバーチカル陳列

写真1 バーチカル(縦方向)陳列は商品を発見しやすい

買いやすく、選びやすい定番売場の第1の陳列技術は「バーチカル陳列」です。バーチカル陳列とは縦方向の陳列という意味です。巻頭の写真1は、典型的なバーチカル陳列です。一般的に商品を発見する段階の陳列はバーチカル陳列が適しています。写真1は、「焼肉のたれ」「お酢系商品」という共通したカテゴリーを、ゴンドラ単位で縦方向にまとめています。

同一カテゴリーを縦方向にまとめることで、買物客の視線が上にあっても、下にあっても「焼肉のたれ」を発見することができます。一方で、ゴンドラの上半分を「焼肉のたれ」、下半分を「お酢系商品」と横方向に陳列すると、下方向に視線を向けて買い回りする買物客は、焼肉のたれを見逃してしまいます。

店が買物客から聞かれることの大半は、「この商品はどこにあるのですか?」という質問です。同一カテゴリーを縦方向にまとめて陳列することで、商品を発見する可能性は高くなり、選びやすく、買いやすい定番売場になります。縦方向に陳列したカテゴリーが連続している定番売場は、ショートタイムショッビングとワンストップショッピングの両方に貢献します。つまり、商品を発見する段階の陳列はバーチカル陳列が正しいのです。別の言葉では、この陳列技術のことを「上下の法則」と呼びます。

定番の棚は、女性の目線の30度下の角度の範囲を「ゴールデンゾーン」といいます。かつてはゴールデンゾーンには販売数量の多い「売れ筋商品」を陳列することが多かったのですが、最近は高利益率や高機能・高単価の「売り筋商品」をあえてゴールデンゾーンに陳列する陳列方法が増えています。

この陳列のポイントは、販売数量の多い売れ筋商品は棚の下段に陳列するかわりに、単品の陳列量を多く並べることが原則になります。売れ筋は、下段の悪い陳列場所(劣位置ともいう)でも、陳列フェースを広く維持すれば目立つので、商品を見逃す確率が低くなるからです。この陳列方法のことも「上下の法則」といいます。利益率の高い売り筋をゴールデンゾーン陳列することで、定番ゴンドラの「粗利ミックス」を目指すための陳列技術でもあります。

商品の比較段階はホリゾンタル陳列

写真2 左右の法則でブランドスイッチを促進

買いやすく、選びやすい定番売場の第2の陳列技術は「ホリゾンタル陳列」です。ホリゾンタル陳列とは横方向の陳列という意味です。写真2は、典型的なホリゾンタル陳列です。商品を発見する段階の陳列はバーチカル陳列が適していますが、商品を比較して購入を決定する段階はホリゾンタル陳列が適しています。

同一カテゴリーは縦方向にまとめますが、同一の用途・機能の中で、どのブランドを選ぶかは横方向に商品を陳列することで比較購買を促します。商品の発見段階は縦方向、比較・選択段階は横方向と覚えておくといいでしょう。

写真2は、「幅広歯ブラシ」という同一用途・機能の棚の左側に「売れ筋商品」を陳列し、その右隣にPB(プライベートブランド)の「売り筋商品」を比較陳列している事例です。一般的に、その棚の中で「買上率」の高い売れ筋商品の右隣が「優位置」であるといわれています。買上率の高い売れ筋商品は、その棚の中でもっとも視認率が高く、その右隣は視認率の高い良い場所という意味です。理由は、この文章のように、横文字が左から右に流れることに日本人は慣れているので、売れ筋を見た買物客は、自然にその左隣の商品を見るからです。この陳列技術のことを「左右の法則」といいます。利益率の高い売り筋商品を左に陳列すれば、「上下の法則」と同様に粗利ミックスが実現できます。

横文字が右から左に流れるアラビア語圏で商売をすれば、売れ筋の左隣が優位置になるかもしれませんね(笑)

参考記事

お客様の視線の「上下」「左右」に気を付けて売場を作ろう

商品陳列、「発見段階」はバーチカルに、「選択段階」はホリゾンタルにする理由

NFI定例セミナー「狭小商圏&コロナ時代の顧客満足度(CS)向上戦略」(2021/11/17 13:00~15:40)開催ご案内(オンライン)

11月の定例セミナーのテーマは、「狭小商圏&コロナ時代の顧客満足度(CS)向上戦略」です。『2021年度CS(顧客満足度)調査』の調査結果を分析し、CS向上のポイントを解説します。また、最新のデジタルマーケティング事例に学ぶ「固定客との絆づくり」「新規客の増やし方」についても解説します。また、エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング社の協力のもとに実施した月刊MDの調査結果のダイジェストを分析し、狭小商圏&コロナ時代に選ばれる店になるための戦略を提言します。

2021年11月セミナーは、コロナの状況がまだ不透明なので「リモート」セミナーのみで開催します。

開催概要

・開催日:2021年11月17日(水) 13:00~15:40
開始時間は運営の都合で若干ずれることがある旨をご了承ください。
・実施方法:zoomによるオンラインセミナー
(アクセス方法はお申込み者様にのみご案内いたします)
・料金:16,500円(税込・1名様)
(※ニューフォーマット研究会会員企業様には会員価格でのご案内になります)
・申し込み締め切り:2021年11月8日(月)

スケジュール

(1)狭小商圏&コロナ時代のCS向上戦略
[13時00分~14時30分頃]

NFI代表取締役 日野 眞克

・2021年CS調査に見るwithコロナ時代の顧客満足度向上戦略
・固定客との絆を深めるマーケティングと売り方
・新規客を増やすデジタルマーケティング
・Withコロナ時代の「接客」のポイント  他

(2)店頭調査に見る「選ばれる店の条件」
[14時40分頃~15時40分頃]

月刊MD編集長 野間口 司郎

・完全作業力が選ばれる店をつくる。開店前100%補充の重要性
・ドラッグストアのクリンリネス調査
・ドラッグストアの「化粧品」と「医薬品」の接客調査  他

※講演時間は予定よりも短くなることも長くなることもあります。

注意事項

・今回のセミナーはzoomを利用して実施します。具体的な接続手順、URLなどは、受講者様にお送りいたします。あらかじめ https://zoom.us/ にアクセスできるパソコンをご用意ください。スマートフォンでも受講できますが、パワーポイントのスライドを画面に共有して進めますので、なるべくパソコンでの受講をおすすめしております。

・セミナー終了後10日間はアーカイブされた録画を閲覧することが可能です。
閲覧のためのURLは、セミナー終了後にご案内いたします。

・企業様によって、Zoomへのアクセスができないという場合がございます。
Zoomへの接続については、受講企業様にてご対応くださいますようお願い申し上げます。(弊社にてサポートは致しかねますのでご了承ください)。また、受講者様側の都合で当日受講できなかった場合も返金は致しかねますのでご了承ください。

お申込みフォーム

・お申込みは以下のお申込みフォームからお願いいたします。お申込み受付後、お申込み確認メールをお送りします。また、ご請求先として記入いただいた方宛に、請求書を発送させていただきます。
・ご入金後は、理由の如何に関わらず返金は致しません。あらかじめご了承ください。

申し込みフォーム

ドラスト公式アプリ、利用率が高いのは「スギ薬局」。秘訣は「クーポン施策」と「健康サポート」

新型コロナウイルスの感染拡大により、事前にクーポンやデジタルチラシなどの販促を活用し、購入する商品を決めて計画購買する人が増えています。また、CRMの強化につながる施策として、小売チェーンのアプリ活用が進んでいます。そこで今回は、ドラッグストアのアプリ活用状況を、ソフトブレーン・フィールドが、全国のアンケートモニター会員(以下、POB会員)に対して行った調査内容をご紹介します。

メーン利用者のおよそ8割がアプリを利用しているスギ薬局

今回は、ドラッグストア(以下、DgS)におけるアプリ活用を明らかにすべく、全国のPOB会員に対し、「DgSのアプリ活用に関する調査」を実施しました。

アンケートの対象者は、「普段メーン利用するDgSチェーン」が、公式アプリをリリースする「ウエルシア(855人)」「サンドラッグ(738人)」「マツモトキヨシ(659人)」「スギ薬局(628人)」「ツルハドラッグ(327人)」「ココカラファイン(277人)」「クリエイトSD(235人)」「コスモス(202人)」8チェーンのうち、いずれかであると回答した3,921人です。

※()内人数はメーン利用すると回答した人、調査期間は2021年7月7日~12日の6日間

アンケートでは、最初にアプリ活用が進んでいるチェーンを探るべく、メーン利用するDgSチェーンの公式アプリ利用経験を調査しました。

図表1は、公式アプリをリリースするDgS8チェーンのメーン利用者のうち、当該DgS公式アプリを「現在利用中である」と回答した人の割合が高い順に並べたものです。

POB会員は、日ごろからレシートを投稿してポイントを貯めることが習慣化しているためDgSアプリのポイントカードを利用する人も多く一般的な数値よりも高い傾向があることが考えられますが、調査対象の8チェーンのメーン利用者が「当該DgSチェーン公式アプリ利用中である」と回答した人の割合は、平均で5割を越えました(57.5%)。

公式アプリを「現在利用中である」と回答した人の割合がもっとも高いチェーンは、「スギ薬局(79.8%、N=628人)」で、メーン利用者のおよそ8割がアプリを現在利用しています。

8チェーン平均(57.5%)を上回ったのは、「ココカラファイン(66.1%、N=277人)」、「マツモトキヨシ(66.0%、N=659人)」、「ツルハドラッグ(63.0%、N=327人)」、「ウエルシア(62.7%、N=855人)」、「サンドラッグ(57.6%、N=738人)」の5チェーンとなりました。

一方で、8チェーン平均を下回った「クリエイトSD(43.0%、N=235人)」は、リリース時期が2019年3月と比較的新しいことが理由として考えられますが、アプリ内のポイントカードは電子マネー付で(おさいふHippo)事前に現金をチャージしておけばアプリから決済できる点や、チャージによるボーナスポイントが獲得できるメリットもあり、これから利用者を拡大していくことが予想されます。

また、「コスモス(22.3%、N=202人)」の利用率をみると、「毎日安い(Everyday Low Price)」による現金販売でポイント戦略をとらないチェーンが、アプリ利用者の獲得と利用促進を図るには、大きな課題があると思われます。

アプリ利用のきっかけは会員証/ポイントカード連携がナンバーワン

次からは、DgSメーン利用者のうち、当該チェーンの公式アプリ利用者(「現在利用中」および「利用経験があるが現在は利用なし」を含む人)の割合が高い上位5チェーン「スギ薬局(83.3%)」、「ココカラファイン(71.5%)」、「マツモトキヨシ(71.5%)」「ウエルシア(68.1%)」、「ツルハドラッグ(65.7%)」をセレクトして、どのような施策やきっかけがアプリ利用につながったのかみていきます。

※()内は、メーン利用者に占める当該DgSチェーン公式アプリ利用経験者の割合、図表はアプリ利用者の高いチェーン順、上位4回答まで抜粋。

アプリ利用のきっかけについて5チェーンの平均値は、「会員証/ポイントカード連携(45.0%)」や、「店頭での告知(41.7%)」が半数近くとなり、それに次ぐ「アプリ限定クーポン(28.5%)」や「初回特典(21.4%)」を上回りました。

チェーン別では、「ウエルシア」が、アプリ利用経験者582人のうち、「会員証/ポイントカード連携(48.6%)」がもっとも回答率が高く、その背景として、ウエルシア利用者の間で広がる“ウエル活(毎月20日にTポイントを利用して1.5倍の買い物ができるサービスを利用すること)”の広がりにより、「アプリのモバイルTカードだと付与されるポイントの倍率が高くなるから(神奈川県60代男性)」といった、アプリを活用して効率的にポイントを貯めるといった人が多くみられました。

また、「マツモトキヨシ」は、アプリ利用経験者471人のうち、およそ4割が「アプリ限定クーポン(36.1%)」と回答し、5チェーン平均値を(+7.6pt)上回りました。「毎月もらえる10%OFFクーポンのほか、クーポンが当たるくじが毎日引けて高確率で当たる(大阪府40代男性)」、「クーポンはオンラインと店頭共通で使える(東京都50代女性)」といった、マツキヨルーレットや、クーポンの使いやすさが、アプリ利用者の獲得につながっていることがわかります。

そして、今回アプリ利用率が8割を越えた「スギ薬局」は、「初回ダウンロード特典(31.0%)」で、5チェーン平均値を(9.6pt)上回りました。アプリダウン後のクーポン画面では、「10%OFFクーポン(割引・除外品を除く全品)」「100ポイントプレゼント(店内商品やアプリ掲載商品と交換できる)」といった特典のほか、購買意欲を促進するような、複数カテゴリーのクーポンがすでに配信されていました。

次に、アプリで利用する機能について5チェーンの平均値は、「クーポン(90.3%)」となり、ほとんどの人が利用していました。クーポンには、「多くの商品に適応される割引クーポン(例:一部商品を除きお好きな商品1品10%OFF)」、「特定商品の割引クーポン(例:対象のおむつ1点500円引き・10%引きなど)」、「特定商品購入でポイントがもらえる(例:対象のシャンプー1点購入ごとに150p進呈)」といった種類が、各チェーンのアプリから確認できました。

中でも「スギ薬局」は、アプリ利用経験者523人のうち、「クーポン(94.3%)」の回答率がもっとも高く、配信クーポンの種類が「特定商品の割引」が多く消費者がお得感を感じやす点や、「使いたいクーポンがレジでみつからないときがある」といった不満が挙がった中、スギ薬局のクーポンは、カテゴリー別に大きな画像でクーポンを一覧でみることが、回答率の高さにつながっていることがうかがえます。

その一方で、クーポン利用時の不満として、「ポイントカード機能とクーポンを別々に開かないとないといけない(愛知県50代男性)」といった声は、チェーン関わらずアプリ利用者から多く挙がり、会計時の操作性の向上には課題がありそうです。

他に利用する機能としては、「会員証/ポイントカード(5チェーン平均52.4%)」となり、特に「ツルハドラッグ」は、アプリ利用経験者の215人のうち、およそ6割が「会員証/ポイントカード(59.1%)」を挙げ、「ツルハのポイントカードだけではなく、楽天ポイントカードの連携もできていて、アプリを変えることなくバーコードを表示できるので便利(北海道50代男性)」といった声が多く、1つのアプリで双方のポイントがたまるメリットや、利便性が評価されていました。

また、「キャンペーン告知/参加(5チェーン平均15.4%)」においては、「プレゼントキャンペーンやモニター応募に参加する(青森県40代女性)」、「店頭ではあまり意識していないキャンペーンのお知らせが掲載されて、対象商品購入のきっかけになる(千葉県30代女性)」といった声があり、アプリからの情報の質と頻度を高めることが、コロナ禍で貴重な店頭接点を生み出し、チェーンとの関係性が深まっていることが推測できます。

「簡単で便利」の追求が継続利用の秘訣

次に、各チェーンのメーン利用者のうち、公式アプリの利用を継続していると回答した人「スギ薬局(501人)」、「マツモトキヨシ(435人)」、「ココカラファイン(183人)」、「ウエルシア(536人)」、「ツルハドラッグ(206人)」に、利用期間を調査しました。
※並びは公式アプリのリリース時期順

まず、各チェーン公式アプリのリリース時期を述べると、「スギ薬局(2014年4月)」、「マツモトキヨシ(2014年8月)」、「ココカラファイン(2016年5月)」、「ウエルシア(2016年9月)※ウエルシアHD公式アプリ」、「ツルハドラッグ(2019年11月)※ツルハHD傘下のDgSチェーン全ブランド公式アプリ」となります。ここでは、「コロナ禍で新規利用者を獲得できたか」、「長期間にわたり継続利用されているか」をポイントにみてみましょう。

まず、14年リリース「スギ薬局」と「マツモトキヨシ」における、公式アプリ「2年未満」の利用者を比較すると、「スギ薬局(62.6%)」、「マツモトキヨシ(43.7%)」となり、スギ薬局が(+18.9pt)上回りました。その理由としては、前出の初回特典やクーポン施策の他、19年リリースの株式会社Mediplatと共同で運営するトータルセルフケアサービス「スギサポ」シリーズ(※)が好調であることが挙げられます。

中でも「スギサポwalk」は、「スギサポwalkの質問回答でポイントをためている(兵庫県30代女性)」、「スギ薬局へ来店した時に、チェックインでポイントをためている(京都府50代男性)」など、アプリで来店促進にもつながる「楽しさやお得さ」を提供し、昨年8月に累計100万ダウンロードを達成するなど、コロナ禍で健康意識が高まる中で、消費者にフィットしたと言えそうです。
※スギサポシリーズは、毎日の「食べる」「歩く」などの日常行為を中心に、楽しくお得に健康をサポートし、「スギサポwalk」の他、管理栄養士が監修した食事を冷凍便で届ける「スギサポdeli」、アプリを活用して食事管理をする「スギサポeats」の3つのサービス

一方、「4年以上」の利用者を比較すると、「マツモトキヨシ(26.4%)」、「スギ薬局(11.6%)」となり、マツモトキヨシが(+14.9pt)上回り、その理由としては、早くからデジタル戦略に注力する企業としてアプリの充実度が挙げられます。まず、処方せん送信機能は、「処方せんが医院からすぐ送信でき調剤の待ち時間が短縮できる上、ポイントもついてお得(千葉県60代男性)」といった、シニア世代からのコメントが一定数みられたため、機能の使いやすさがうかがえます。他にも、アプリから「商品の店頭在庫状況や店頭価格の確認」や、店頭でアプリから「商品バーコードを読み込むと商品情報やレビュー閲覧ができる」点など、オムニチャネルの構築により、利用シーンに応じた生活に密着するアプリに進化したことが、アプリ利用者の4人に1人が、4年以上の長期間にわたり継続利用する「ロイヤルカスタマー」の育成に寄与していると考えられます。

次に、2016年リリースの「ココカラファイン」と「ウエルシア」を比較すると、「1年~4年未満」の利用者割合は、それぞれ1~2%程度しか差がなかったものの、「4年以上」の利用者は、「ココカラファイン(14.2%)」、「ウエルシア(8.8%)」となり、ココカラファインが(+5.4pt)上回り、楽しく継続利用を促す「店舗チェックインや、スクラッチなどでポイントが貯まる」などといった、コメントが書かれていました。そして、5チェーン中もっとも新しい2019年リリースの「ツルハドラッグ」は、およそ6割が「1年未満(57.3%)」となり、直近1年間での利用者を大きく伸ばしています。

今までの調査結果から、チェーンが公式アプリ活用を促進していく上で、「会員証/ポイントカードのデジタル化」は、いつも持ち歩くスマホでカードの提示やポイント確認ができるため、必要不可欠な要素であることがわかりました。また、「クーポン配信」は、顧客接点を増やす施策として効果的ですが、当たり前ながら、顧客目線での使いやすさや、ストレスフリーな操作性が重要視されます。

また、アプリ利用を辞めた人からは、「クーポン→会員証を出して、支払いはPayPayとなると、レジで時間がかかる」、「チェーンのポイントではなく、共通ポイントを貯めるようになった」といった声もありました。流動的な顧客ニーズやトレンドを察知し、機能の見直しや追加をしながら、メリットを実感できるアプリを目指すことや、「アプリはポイントカードとして、チラシやクーポンはLINEで確認」といった声もみられ、消費者が「簡単で便利」といった部分を、常に追求したデジタル戦略が、新たな顧客接点を増やす上で重要であると言えるでしょう。

参考)各DgSチェーン公式アプリについて(並びはアプリリリース順)

〇POBアンケート調査概要(平均年齢53歳、関東エリア在住者が半数)
調査期間:2021年7月7日~12日、インターネットリサーチ:公式アプリをリリースするDgSチェーン、「ウエルシア(855人)」「サンドラッグ(738人)」「マツモトキヨシ(659人)」「スギ薬局(628人)」「ツルハドラッグ(327人)」「ココカラファイン(277人)」「クリエイトSD(235人)」「コスモス(202人)」8チェーンのいずれかをメーン利用する3921人

誰でもできる「平凡」なことを徹底することは「非凡」である

時代は変わっても、大量の店舗を展開する「チェーンストア」にとって、もっとも重要な競争戦略は「基本の徹底」です。とくに、本部で決めたことを現場で徹底する「完全作業力」の高さこそが、チェーンストア組織の最大の差別化戦略です。

汚い売場からは女性の固定客が逃げる

「汚い売場は女性が逃げる」という言葉は、顧客満足度調査のミステリーショッパー(買物調査隊)のスタッフが残した格言です。本誌が組織したミステリーショッパーに、覆面で複数のドラッグストア(DgS)に買物に行ってもらったところ、その店で商品を「買わなかった理由」の第1位が、「売場が汚い、テスターが汚れていた」というクリンリネスに関する項目だったからです。小売業というのは、「基本の徹底がなによりも重要である」ということを再認識したと同時に、売場や商品が汚れていても、平気で放置している店舗があることに驚いたものです。

図表1 現場力を高める基本5原則

図表1は、店頭の現場力を高める5ヵ条を整理したものです。すべての項目は、だれにでも理解でき、だれにでも実行できる「当り前のこと」です。しかし、当り前のことを全員で、全店で、100%実行することは、とても困難なことであります。「小売業とは、誰でもできることを、誰にもできないくらい徹底する」ことが、最大の差別化戦略であるということが、今回の視点の結論です。

ダメな組織ほど、商品部、店舗運営部、社長、副社長、専務—etc.から、店舗現場に対して、ありとあらゆる方向から、ありとあらゆる異なった指示が嵐のように降り注いでいます。しかも、指示を出す側は、指示を出すことで安心してしまうので、指示が実行されたかどうかは確認しないまま放置されます。店頭現場では、指示を実行しなくても叱られないということが分かると、必ず、指示を左から右に受け流すようになります。

そして、本部からの指示・命令は、現場では実行されず、「指示の屍」が累々と積み上げられていきます。実は、こういう組織ってほんとに多いと思います。つまり、小売業の店頭実現力を高めるためには、「100の指示より1の徹底」という意識をなによりも優先することが大切です。

100の指示より1の徹底を重視せよ

江戸時代の商家である三井家で、享保年間の初期に、組織のタガが緩んで業績が悪化した時期があったそうです。創業家(オーナー経営者)が業績回復のために、ありとあらゆる指示を出しましたが、一向に現場では実行されませんでした。しかし、ある番頭さん(サラリーマン経営者)が、ただひとつの指示だけを徹底するという組織改革を断行しました。

その「ただひとつの指示」というのは、当時の商家は、住み込みの丁稚奉公でしたから、全員が「門限を守る」というひとつのルールを徹底することだけでした。だれにでもできる簡単な決まりを、たったひとつだけ守ることを、番頭さんは従業員と約束した代わりに、その決まりに関しては100%妥協しないことを徹底しました。

妥協しないとは、1分でも遅れたら、門を閉めて、寒い夜に外に締め出すのは可愛そうだからと、同情して門を開けることは絶対にしないことを徹底したのです。結果として、たったひとつの決まりを、全員が守るようになることで、組織は活性化し、企業文化は変わり、業績も回復したそうです。現代にも通用する「組織改革のセオリー」が、その逸話の中にあると思います。

また、何年か前に、あるDgSの経営者が、新社長に就任した際に、「仕事が終わって帰社する時に、机の上のもの(書類や本、事務用品など)をすべて引き出しにしまって、机の上に何も置かないで帰る」という決まりだけを徹底したそうです。その経営者は、あれこれやりたいのを我慢して、図表1の「整理・整頓」の1点を全員で守り、徹底することだけに、こだわったそうです。

「机の上に何も置かないで帰る」という、だれにでもできそうな決まりも、実は全員で徹底するのは簡単なことではなくて、繰り返しいい続けて、何ヵ月もかかって、やっと徹底することができたそうです。

ところが、不思議なことにひとつのことが徹底できると、2番目、3番目の「決まり」を徹底する速度は、確実に速くなるそうです。つまり、ひとつのことを徹底することが、組織を活性化する近道だということが分かります。そういう意味で、図表1の「整理・整頓」と「クリンリネス」の徹底は、小売業がまず実行すべき基本中の基本です。

売れ筋の陳列量を全店で維持しよう

図表1の3番目の項目である「フレンドリーサービス」も重要な差別化戦略です。尾行販売やディープなカウンセリングを実施するデパートとは違って、月刊MDのメイン読者であるDgS(ドラッグストア)は、短時間の「接客」「コミュニケーション力」が重要です。さらに、清潔な身だしなみと、感じのいい挨拶を徹底することが重要です。

4番目の「鮮度管理」も小売業の基本です。生鮮食品を取り扱っていないDgSの場合、鮮度に鈍感な企業が多いようです。賞味期限切れの食品や、精米日から3ヵ月以上経過した米を店頭で発見した買物客は、黙って二度と、その店に行かなくなります。「賞味期限管理の仕組み」、「死に筋退治の仕組みづくり」も、基本の徹底のためには不可欠です。

5番目の「売れ筋の陳列量」も商品構成のもっとも大切な基本です。50坪の店だろうが、1,000坪の店だろうが、買物客から聞かれる質問の第1は、「○○はどこにあるのですか?」という質問です。

「売れ筋」や「売り筋」が1フェース陳列では、買物客が商品を見落とすことで売り逃がしが発生し、さらに店頭欠品による機会損失も膨大です。売れ筋や売り筋は、「売れる陳列量の維持」が重要であり、それが小売業の商品構成の「当り前の基本原則」なのです。

先日も、あるDgSで、有名な売れ筋商品のシリーズが5品目陳列されていましたが、すべて1フェース陳列でした。店の人に「売れ筋品目はどれか?」と確認したら、案の定、1番目の売れ筋が欠品しており、2番目の売れ筋が品薄であり、残り3品目は十分に在庫がありました。

つまり、「売れる商品は陳列量を多くする」という小学生でも理解できる簡単な原理原則を、全店で実行し、その状態を維持することは、とてつもなく難しいことなのです。誰でもできることを徹底できる組織だけが、他店との競争に勝ち、差別化できるのだと思います。つまり、真の差別化とは、奇をてらうことではなくて、当り前のことが当たり前にできる状態を継続することなのです。

[月刊MD2009年1月号の今月の視点より引用]

ドラッグストアならではの「カラダにいいPB食品」ってなんだ?月刊MD2021年9月号の見どころ紹介

皆さんこんにちは、月刊マーチャンダイジング編集長の野間口です。エンジェルスの大谷翔平選手が心の支えです。朝一でヤフーニュースで大谷選手の速報を確認します。ホームランを打っていたら動画を見ます。1日5回くらい見ることもあります。日本男児がメジャーリーグでホームラン40本打って、8勝挙げてるんですよ!!最早ヒーローアニメの世界です。子供と同学年ですが、大谷選手を本当に尊敬しています。日本の希望です。大きくなったら野球選手になりたいです。もう十分大きいのでこのまま編集者を続けます。

…さて、月刊マーチャンダイジング2021年9月号の特集は「ファンづくりの切り札 カラダにいいドラッグストアPB」です。

ドラッグストア(DgS)は2,000店を超える企業が2つ。10月にはマツキヨココカラ&カンパニーが誕生して3,000店ドラッグが出現します。これだけの店舗数(販路)があれば、規模で言えばNBに匹敵する程のPB展開が可能になり、品質、価格だけではなく、どういう「コンセプト」、「メッセージ性」を持たせるかが、お客との絆づくりに大きな影響を与えます。客数確保の切り札になり得るということです。

特集ではウエルシアHDとマツモトキヨシHD2社を取材しています。

特集①ウエルシアHD

ウエルシアHDの松本社長のインタビューも掲載。

同社では「医食同源プロジェクト」を推進、これとも連動して新PBブランド「からだWelcia」を本格始動させています。「食事を通して健康なカラダをつくりましょう」というメッセージの発信です。

PB開発チームの平均年齢28歳、若手が同社のPBづくりを牽引します。

横浜薬科大が監修した「食べるヌルねば生姜スープ」オクラ、モロヘイヤなど9種類のヌルねば食材使用

特集②マツモトキヨシHD

マツモトキヨシHDのPB食品はマザーブランドであるmatsukiyoとは別に管理栄養士、薬剤師、ビューティスペシャリストが監修したmatsukiyo LABがあります。

さらにその下に、プロテインを中心にした「アスリートライン」、低糖質商品で構成する「サステナブルロカボライン」があります(図表参照)。

2021年5月にスタートした「サステナブルロカボライン」は単なる低糖質ではなく「美味しく続けられる」というコンセプトを持たせて味にもこだわります。

同社ではPB利用者をロイヤルティ別に3層に分類して、もっともロイヤルティの高い「絆層」の割合を数値化して経営目標のひとつに入れています。

特集③ゴダイ

その他、地域密着DgSとして兵庫県姫路市本社のゴダイを取材、地域シェアを上げるための進んだ戦略をご紹介。

カテゴリー強化企画では「メンズ美容」をお届けします。

スキンケア、メイクする男性急増中、将来は化粧品のジェンダーフリー化が予想されます。つまり、現在の女性用化粧品の市場はマックスで倍増する可能性ありということです。

異常気象、異常事態の世の中ですが、心を平静に前を向いて仕事に勉学に励みましょう!

月刊マーチャンダイジング2021年9月号を是非ご購読ください。

一部記事はnoteでもご購読いただけます!

コロナ禍で激動のフードビジネスは新業態を目指す

コロナ禍による酒類提供の自粛要請や営業時間短縮のあおりを受け、苦しい局面に立たされている飲食業。帝国データバンクの調査によれば、2020年の飲食業の倒産件数は780件と過去最高で、今後も増加すると見られる。その一方、積極的にテイクアウトやデリバリーなどの新しい販売方法に挑戦する企業も登場。飲食業中心にモバイルオーダーのシステムを提供するShowcase Gigの新田剛史CEOにお話を伺う。(MD NEXT編集長 鹿野 恵子/月刊マーチャンダイジング2021年9月号より抜粋)

「猫も杓子もBOPIS」混乱の2020年

新田氏は、この1年の変化を「猫も杓子もモバイルオーダー・BOPISといっていた1年前と比較して、いま進んでいる案件は、チェーンストアが真剣にBOPISにどう取り組むかを考えた末で導入を進めているものが多い」と総括する。

2020年春、1都3県にはじめての緊急事態宣言が発出されたころ、飲食業を中心に急速に高まったのがBOPIS(Buy Online Pickup In Store)への期待だった。モバイルオーダーを起点とした次世代店舗創出プラットフォーム「O:der Platform(オーダープラットフォーム)」を提供するShowcase Gig社にも相談や問い合わせが相次いだが、当時の問い合わせは「ただただ混乱していた」と新田氏は振り返る。

緊急事態宣言発出により、営業時間短縮が要請され、酒類提供時間も制限された。感染への不安から外食をする人も激減。企業規模も業種も異なる企業から、モバイルオーダーやデリバリーシステムを導入したいという相談が相次いだという。

アプリやインターネットを介した注文をどう処理するかにはいくつか種類がある。主なものはモバイルオーダーとデリバリーだ。

モバイルオーダーは、スマートフォンアプリやインターネットから注文をして、それをお客自身で店舗に取りに行くというもの。店舗カウンターで受け取るもの、店舗内外のロッカーで受け取るもの、店舗に入らなくても駐車場で受け取れるカーブサイドピックアップなどの種類がある。

デリバリーは、アプリやインターネット経由で受けた注文を、お客の指定する場所まで配達するもの。自社便や提携業者を通じて配送する企業もあれば、Uber EatsやWoltのようなプラットフォームを通じて受注し、ギグワーカーが配達するケースもある。

ちなみに、お客が飲食店の自席でスマートフォンやタブレットから注文をして、できた食べ物をフロアスタッフがお客の席まで届けるものをテーブルオーダーと呼ぶ。

ところが昨年4月の緊急事態宣言の際は、これらの区別も理解していないような企業から「とにかくなんとかしたい」という問い合わせが殺到した。「個店からの問い合わせも多く、前提となるモバイルオーダーの種類からご説明する状況でした」。

デジタルを活用した新業態への期待

一方で、2021年に入ってからは、デジタルをどう自社の営業に戦略的に取り込むかを考え抜いたうえで、新業態構築へ挑戦しようとする企業からの問い合わせが増えている。腰を据えてデジタルに取り組もうという企業が増えている印象だ。

そもそもコロナ禍以前から、飲食業は決して楽な業種ではなかった。材料費や人件費高騰で苦境に立つ飲食業界に追い討ちをかけたコロナ禍だったが、そのことにより業態の変化に弾みがついた。

「未来のためにきちんと予算を確保し、企業の枠組みをデジタルも活用しながら再構築し、新業態をつくっていこうとしています。やっとみんな少しずつ元気になって未来を向き始めました。これから形骸化した古いものを捨てて、未来に向かっていく時代が来るのではないかとおもっています」

新しい業態として新田氏が注目しているのが、一家ダイニングプロジェクトが運営している「大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん」のような「テーブルタップ+テーブルオーダー」の業態だ。

期待される新業態「テーブルタップ+テーブルオーダー」(一家ダイニングホームページより)

ラムちゃんは食べ放題中心のジンギスカン店だが、すべてのテーブルにハイボールのタップが設置されている。飲み放題を選択すれば、手元のレバーをひねるだけで、飲みたいだけハイボールを飲むことができる。

また、テーブルに貼り付けられたQRコードを自分のスマートフォンでスキャンして、表示された画面からオーダーをすることもできる。従業員を呼び止めて、注文を伝えるという手間もかからない。フロアスタッフには外国人労働者も多く、日本語でのコミュニケーションが難しいことも多い。そういった場合にも、テーブルタップ&オーダーは便利だ。

「若いお客さまたちは、オーダーをするときに、うるさい店内で大声を出して従業員さんに声を掛けたくないとおもっている方が少なくありません」。「接客は人間がやらなければならない」と考える経営者もいるが、若い世代の感覚はそれとは真逆といえる。ビジネスでもプライベートでも、チャットツールでやりとりするのが当然となった若年層は「テキストでスマートフォンからオーダー」することに対してまったく抵抗がないのである。

「テーブルタップ+テーブルオーダー」であれば、ほとんど従業員と会話をしなくても、自分のペースで好きなだけ、好きなものを飲食することができる。この業態は追随する企業も登場し始めており、飲食業界のひとつのスタンダードになり得るのではないかと新田氏はいう。

3年前倒しでデジタル化進む海外動向

日本より感染状況がひどかった海外諸国はどのような状況なのか。新田氏によれば「3年前倒しで進んだ状態」だという。

まず、アメリカでのテーブルオーダーの急速な普及だ。テーブルオーダーは2010年代中盤ごろから、中国の飲食店において爆発的なブームとなっていた。一方、チップの文化があるアメリカでは、なかなか普及が進まなかった。しかしコロナ禍によって一気に普及が進み、いまではフルサービスのレストランでもテーブルオーダーが一般的なものになったのだという。

アメリカでは複数のデリバリープラットフォームをつかう飲食店が多い (写真はイメージです)

モバイルオーダーの企業も急速に成長を遂げている。アメリカのモバイルオーダーでトップツーとなっているのが、「toast」と「SQUARE」である。2011年に創業した「toast」は、アメリカで飲食店向けのPOSシステムや管理プラットフォーム(モバイルオーダーや顧客ロイヤルティープログラム、データ分析)を提供する。

アメリカのモバイルオーダープラットフォームで急成長する「toast」
toastの管理画面

コロナを機に売上を拡大し、2020年には4億ドル(440億円)を調達。評価額は49億ドル(5,380億円)で、2021年には上場を検討している。SQUAREはもともとモバイル決済をメイン事業としていた企業だが、モバイルオーダーサービスも提供。こちらは飲食だけではなく物販、小売にも対応しているのが特徴だ。

日本に存在してない業種が「olo」のようなSaaSプラットフォーム(モバイルオーダー、デリバリー一括管理)も急成長を続けている。デリバリーを導入している飲食店で、ひっきりなしに「Uber Eats」「出前館」「Wolt」それぞれから注文が入った通知音が鳴っているという状況に遭遇したことはないだろうか。

[図表1] olo業績推移

各プラットフォームからどんどん注文が入ってしまうので、製造工程が混乱してしまった…という飲食店は多い。アメリカの飲食デリバリーにも「Grubhub」や「DoorDush」のようなさまざまなプラットフォームが存在しており、oloは飲食店向けにそれら複数プラットフォームから入ってきた注文を管理するツールを提供している。同社は2020年には売上高前年同期比194%、利益306万ドル(3億3,600万円)と急成長を続けており、2021年3月には上場を果たした。

(写真はイメージです)

業務システムと消費者向けUI/UXはまったく異なる

国内飲食業においては、後述する丸亀製麺やマクドナルド、吉野家などの店舗数4桁のチェーン店がモバイルオーダーを導入して一定の成功を収めるなど、デジタル活用の機運が高まってきている。

しかし、いざモバイルオーダーなどを取り入れようと、ロッカーを設置したり、アプリを導入してはみたものの、活用されないという悩みを抱えている企業は少なくない。

ここで配慮しなければならないのが「業務システムのUI/UX(顧客接点や顧客体験)」と、「消費者向けのUI/UX」はまったく異なるという点だ。

たとえば…

本文の続きは月刊MD note版にて!

 

新田 剛史(にった たけふみ)
上智大学卒業後、東京ガールズコレクション立ち上げ期のプロデューサーとして数々のプロジェクトを手掛ける。2009年、株式会社ミクシィ入社。新規事業の責任者として「ソーシャルギフト」「ソーシャルコマース」など数々のヒットを生み出す。2012年、株式会社Showcase Gigを設立し、国内初のモバイルオーダープラットフォーム“O:der(オーダー)”を開発。

物流設計の精度を高めるには「買い手に対する解像度を高める」こと

工具や部品の通販会社であるモノタロウの物流センター立ち上げを指揮し、現在株式会社CAPES代表として物流のコンサルティングを行う西尾浩紀さん。EC専業企業から実店舗を運営するチェーンストアまで幅広く物流の経験を積んできた西尾さんに、昨今の物流の動向と、これからの小売業の物流について聞いた。 (聞き手:MD NEXT編集長 鹿野 恵子/月刊マーチャンダイジング2021年9月号より抜粋)

海外では店舗を物流拠点に位置付ける事例も

──物流と聞くと、漠然としていて捉えづらい印象もあります。最近は有店舗、無店舗が入り乱れているというのも理解を難しくしているようです。私たちは物流という観点からはどのように分類して理解すればよいのでしょうか。

西尾 いわゆる「物流」というと、一般的には最終消費者の手に届く「ラストワンマイル」とおもわれがちですが、実はその工程はチェーンのように長く、階層も深いものです。

物流を分類するときに、明らかに作業の質が違うのは、「最終消費者に届けるための機能を有する物流」か「物流センターや店舗に分配する物流」かというところです。ですから、実店舗を運営している企業の物流なのか、無店舗・通販なのか、あるいはそのハイブリッドなのか…というのが物流の種類を分類するカギになりますね。

昨今の小売業の物流トレンドとしては、実店舗を物流拠点としてどう位置付けるかが話題になっています。アメリカや中国は一歩進んでいて、店舗を在庫保管拠点として位置付け、そこから最終消費者まで商品を運ぶというような取組みも進んでいます。(※編集部注:マイクロ・フルフィルメント・センター、MFCと呼ばれる)

日本でもそのようなことに挑戦している企業もありますが、取り扱っているのがコモディティ中心で、単価が低いため、利益の大半を配送費で食いつぶしてしまうという問題があり、ビジネスとして成立させるのは非常に難しい状態です。

わかりやすくいえば、コンビニで1本100円のジュースやおにぎりをお客さまのご自宅までお届けするのに、どれぐらいの費用がかかるのか…という話で、構造的にはどう考えても赤字になってしまいます。

一方で、「〇円以上送料無料」というように、送料無料となる購入金額を設定する方法もあるんですが、「そもそもコンビニで5,000円も買うか?」という問題になってきてしまいます。

ネットスーパーのようなモデルは世界を見渡してもまだ成立しづらい状況です。とはいえ、自宅に配送を行って、成立しているモデルもあります。たとえば都心で配達を中心に規模を拡大しているカクヤスさんのように、商品単価が高いアイテムを取り扱っていて、都心で高密度に配送すればよいというモデルです。

──昨今ではBOPIS(Buy Online Pickup In Store)に取り組もうとする企業も増えてきました。

西尾 弊社では小売業の物流センター設計の支援をさせていただいているのですが、物流を設計をするのに、ネットやアプリから注文された商品をどうやってお客さまに店頭でお渡しするのかということまで加味して設計をしています。ですから、必ずしもお客様のところまで届けに行くことがすべてではないということです。

人の介在とリードタイムをゼロにする潮流

──世界的に、物流の潮流というのはどういう方向に進んでいるのでしょうか。

西尾 確実に挙げられる世界的な動向は2つあります。

ひとつは商品配達までのリードタイムをゼロにしていくという流れ、もうひとつは人間の介在をゼロにしていくという流れです。

まず配達までのリードタイムをゼロにするという点です。ECでは、ここしばらく「注文翌日配送」や「受注1時間後に配送」など、注文から配送までのリードタイムをゼロに近づけるための努力が進んでいました。しかしその動きはいったん緩和されているようにもおもいます。

もちろん、お客さまに買った瞬間に手元に届けてほしいというニーズはあるものの、そこに労働力が追いつかず、コストも合わないという状況です。さらにこの数年で、「そこまではしなくてもよい」と消費者のマインドがやや変わったように感じています。とはいえ、購入してから到着まで5日、10日かかるのはちょっと長すぎるので、各社適切なリードタイムを模索している状況といえます。

もう一点が自動化の流れです。世界各国で自動化の流れは出てきていますが、全自動がいいのか、人の作業を一部残した方がいいのかという「自動化の程度」についてはまだ答えが見つかっていません。

これは私の推測ですが、Amazonは明らかに人間の介在を物流工程に残しています。物流の設計から人のよさと機械のよさをうまく使い分けようとしているのが感じ取れて、彼らは全自動となることをよしとしていないように感じます。

一方、中国の企業は「全自動の物流センターを立ち上げました!」と華々しくアピールすることも少なくありません。中国EC大手企業「京東集団(JD.com)」は、2017年に全自動倉庫の設立をリリースしました。全自動の未来が来たと、関係する企業は色めき立ったのですが、それ以降とんとそのニュースを聞かなくなりました。ある種宣伝的な位置付けで設計した物流だったのではないかとおもっています。

日本の物流自動化を妨げる「こまやかな対応」

西尾 日本の自動化はきわめて遅れている状況です。これには日本特有の「こまやかな対応」が関係しています。アメリカや中国の物流機器メーカー、物流システムメーカーは「俺たちの提供するサービス・プロダクトはこうだ。使いたいのであれば、御社の業務を仕組みに合わせるべきだ」というスタンスを崩しません。

日本は逆で、物流機器メーカー・システムメーカーは「御社では一体どのように業務を進めていらっしゃるのですか? それに全部きめ細かに対応させていただきます」というスタンスです。

結果、日本の物流の現場は、各社各様という状況に陥っています。ホームセンターであれば、カインズ、ビバホーム、ホーマックでは同じような物流作業でいいのではないか、とおもいますが、それぞれの企業がそれぞれ特殊な仕事の仕組みを持っていて、同じ物流の設計では対応できません。

自動化にとってもっとも重要なのは業務の標準化なのですが、同じXという商品を「Aというお客さまに納品するときにはこういうラベルをここに貼る」、Bというお客さまに納品するときには「違う印刷のしてあるこういうラベルを別の場所に貼る」…という個別対応が必要になってきてしまうんですね。

これまで私は、膨大な「うちの現場は特殊で、自動化に向いていないです」と、自動化を見送るケースを見てきました。

これは日本らしいといえば日本らしいのですが、日本が強みとしてきたきめ細かなサービスが、自動化やシステム化の前では足を引っ張ってしまっているわけです。自動化という局面では、日本企業は苦しんでいる状況といえます。

──Amazonはまだ人のよさを残そうとしているとおっしゃられましたが、なぜなのでしょうか。特殊なオペレーションに急に対応できるとか、特殊な荷姿の商品にも対応しやすいという点なのでしょうか。

西尾 たとえば判断をしながら行う検品作業は機械にはできなくて人間でなければ対応ができません。お客さまが買ったこのAという商品と、こちらのBという商品は同じものを指しているととか、箱がへこんだ商品を値引きして販売するべきか、これぐらいならそのまま出荷しても大丈夫と考えるか…だとか。現時点では、このような現場で起こる事象を機械で画一的に判断するのは難しいんです。

人間の方が状況に応じた対応をすることができるので、検品検査は人間が頑張ってやっている分野ですね。

もう一点は、波動対応のようなものです。1日に機械で処理できる荷物の分量というのは上限が決まってしまいます。ですが、ブラックフライデー&サイバーマンデーのように、受注が跳ねるタイミングがあり、それをすべて機械に対応させようとすると、オーバースペックになってしまいます。

ですが、低めに設定してしまうと、急に入荷・出荷量が跳ねたときに対応できません。この波動対応は機械が苦手な部分なので、人がそのときどきに応じて処理する必要が出てきます。

──日本特有のこまやかなサービスのせいで自動化が進んでいないとおっしゃられていましたが、それは強みといえるのでしょうか。

西尾 これは非常に難しい問題なのですが、私はそういった考えは捨てるころ合いに来ているのではないかとおもっています。現場が回せなくなってきたからです。現場でいろいろなご用聞きを続けていた結果、そのしわ寄せが個別性を生んできました。

個別性があるということは、それぞれの現場に「匠」がいるということです。

定型化しづらい作業、標準化しづらい作業を匠が抱えていたのですが、その匠がどんどん定年退職しています。標準化しておかなければ量をさばくことができません。匠を抱え込んでおければいいのですが、今後人口が減少する世の中ではそれも難しくなってくることでしょう。

ある程度作業を標準化し、人間の判断をなるべく減らすようなプロセスを構築しないと、とくに物流関連の企業は永続的に企業活動を続けていくことが難しくなってきています。人手を集めて匠の世界でやっていくのはもはや限界です。

モノタロウは「買い手に対する解像度」が高い

──西尾さんが立ち上げに関わられていたモノタロウの物流については、非常に評価が高いですね。その秘訣をご自身ではどのように分析なさっていますか。

西尾 物流は、それそのものが主役になることはないと、個人的にはおもっています。どのような販売戦略を取るのか…つまり、だれにどのようなリードタイムで、どんなふうに商品を提供するのか…という意思があり、それに合わせて設計されるべきものです。

それで、モノタロウの物流をご評価いただいているのであれば、そもそも会社としてその物流設計の前段階である「買い手に対する解像度の高さ」が理由なのではないかとおもいます。

Amazonや楽天のように、一般消費者向けのECサイトは、衝動買い的に「欲しい!」とおもって、ポチッと購入することが多いとおもいますが、モノタロウのお客さまは小さな町工場のような事業者さんがとても多いんです。

このような方々は、「この部品は摩耗するから年に1回、毎年1月に交換しよう」というように、計画的な購買をされていたり、一方で、「今日作業をしようとしたら、このパーツが足りない!」といって慌てて購入されるようなケースもあります。

企業であれば平日の日中は必ず人がいるから時間帯指定はいらないかもしれません。このような、買い手に対する理解が深く、買い手の方に対して「お客さまがこういうことを求めているなら、こんなふうに届けよう」と、販売側から展開されてくる要件を、物流でどう実現するのかを考えるのが私たちの仕事でした。

そのためには「どの配送会社にお願いしようか」「配送料はいくらぐらい?」「拠点の立地はどこ?」…などを検討します。商品も、小さなねじから物干しざおまで取り扱いますから、どこまでを自動化の対象にするのか、緻密に考えて設計する必要がありました。

モノタロウの物流は、まずお客さまを正しく理解して、その方たちに価値を提供するための物流であるという考え方が、わりと明確だったのではないかと思います。

──お客さまの解像度の高さというのは意識してそうなさっていたということでしょうか。

西尾 そうですね。私の管轄外の業務なので私の個人的な認識にはなりますが、通販の会社だからこそ、取得したお客さまのデータを活用しようと意識していたとおもいます。どのカテゴリーがどう売れているか、どんなお客さまがどの商品を購入されたかなどの分析はかなり力を入れていたのではないかと思います。

──実店舗を運営している小売業でさえ、まだそこまでデータ分析は進んでおらず、モノタロウのような解像度は得られていないと感じています。

西尾 実店舗の小売業は、ネット通販ほどお客さまのデータを取ることできませんよね。もしも、そのデータが物流設計のインプットとして存在していれば、もっと効率的なセンター運営ができるのではないかとおもいます。

たとえばペットフードとミネラルウォーターを同じリードタイムで店舗に運ぶ必要があるのか。いまは細かいお客さまの買い方、店舗での売れ方がわからないので、とにかく同じ基準で出荷し、同じリードタイムで配送するという設計になっているのではないかとおもいますが、販売のデータがわかれば、ロジスティクスの設計はもっとしやすくなるはずです。

店内物流作業はもっと減らせる

──現状の実店舗の小売業の物流に対して、西尾さんがどのように見ているかを教えてください。

西尾 店内の物流作業をもっと減らしていくことができるのではないかとおもっています。店舗の従業員の方が、もっと接客に時間を割きたくても、接客時間以上に品出しに時間がかかっている。狭いバックヤードに詰め込まれたかご車を引っ張りだしながら品出しをする…。そこをもっとスマートにできるのではないかと。

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