駅前250坪超の進化形「matsukiyo LAB市川駅南口店」レポート

matsukiyo LABは、薬剤師、管理栄養士、ビューティスペシャリストの専門スタッフが美容と健康を総合的にサポートする専門性の高い業態で、2015年9月に千葉県松戸市に1号店をオープン。現在、26店舗を出店しており(2020年12月末)、市川駅南口店は2020年10月30日オープンの最新店である。美容と健康関連商品の充実はもちろんのこと、食品、日用雑貨の品揃えも豊富で、新たな可能性を追求した店舗である。(月刊マーチャンダイジング2021年2月号より抜粋)

自社開発の電子台帳を使って接客履歴を記録

店舗はJR総武線市川駅前に立地している。市川駅から東京駅まではJR総武線快速で20分。商圏内には東京へ通勤・通学する人も多い。

入り口は歩道に面した場所と駅ビルに面した場所の2ヵ所あり、後者からの入店客が約7割を占める。駅直結という立地特性から入り口付近には飲料や菓子、朝食として簡単に食べられる食品などを品揃え、コンビニや駅売店的なニーズに応えている。

駅前立地なのでレジ付近には、ガム、あめ、菓子、飲料などを販売

matsukiyo LAB業態では、「HEALTH CARE Lounge」(処方せん受け付け、ヘルスチェック)」、「SUPPLEMENT Bar」(サプリメント、健康カウンセリング)、「BEAUTYCARE Studio」(化粧品カウンセリング)、この3つの機能を持つことが条件となっている。

市川駅南口店は地上1階、地下1階の2層で、売場面積は地下1階、1階合わせて約260坪。駅前立地が多いmatsukiyo LABでは2018年11月にオープンした妙典駅前店と並んで最大レベルである(妙典駅前店は1層)。この広さを生かしてHBC(ヘルス&ビューティケア)の深い品揃えと同時に、地下では食品、日用品を幅広く揃えている。

壁面には制度化粧品を陳列。 店内は木調のフロア、 明るい照明で商品を演出
マツモトキヨシグループでの専売品、化粧下地「プリマヴィスタ」のトーンアップ(明るい発色)商品

化粧品売場は壁面に制度化粧品を陳列し、中面にはセルフ商品を展開。コロナ禍でニーズが高まる目元メイクはとくに品揃えを強化している。若年層のニーズに応えるために、バラエティストアなどで扱うブランド「excel(エクセル)」、人気韓国コスメ「espoir(エスポア)」や、「マジョリカマジョルカ」「キャンメイク」「セザンヌ」など特徴ある商品、ブランドを取り揃えている。

中面に配置されたセルフ化粧品売場には「エクセル」などバラエティストアなどで扱うブランドを品揃え
espoir、CLIOなど人気韓国コスメを集めた棚
テスターの備品も充実

ビューティコンサルタント(BC)はすべて自社スタッフ。matsukiyo LABでは電子台帳を採用しており、メーカー、ブランド問わず接客、サンプリングの履歴は保存され、次回のカウンセリングに生かされる。また、管理栄養士が使う電子台帳の記録と化粧品の記録は相互に閲覧可能で、管理栄養士が肌悩みに合ったサプリを紹介することもある。

カウンセリングカウンターには肌チェック機を設置、肌の状況を定期的に見ることで必要なケアや商品の案内ができ、継続来店を促進できる。

化粧品のカウンセリングカウンター、背面にはPBの「THE RETINOTIME」を陳列
肌チェック機、肌状態を測定することで、継続的な来店、カウンセリングができる

日配、冷凍食品、酒類は郊外型以上、豊富な品揃え

地下にはヘアケア、ボディケアなどのトイレタリーを含む日用雑貨と食品売場を配置している。階段を下りて最初の壁面は男性化粧品売場。3尺8本の棚があり…。

続きは月刊マーチャンダイジング2021年2月号で!

参入余地のない成熟市場でも必ず「新業態」は誕生する

2018年6月にスタートしたMD NEXTに連載してきた「今週の視点」の第100回目の原稿です。今週の原稿は、流通専門のジャーナリストという仕事を30年以上も継続してきた筆者が目撃してきた小売企業の「イノベーションのジレンマ」と「栄枯盛衰」について述べたいと思います。

オーバーストア時代に成長したドラッグストア

[イノベーション(革新)のジレンマとは、業態(ビジネスモデル)が通用する期間は20~30年。既存業態が絶好調の時に新しいイノベーションに挑戦しなければ、次の時代には衰退してしまう、というサイクルを図式化したもの]

日米の小売業の30数年の栄枯盛衰の歴史を振り返ると、その時代に絶好調のビジネスモデルが通用する期間は20年程度です。いつの時代にも、必ず新しい革新者が登場して、画期的な新業態を開発し、主役の交代劇が繰り返されてきました。現在、「ドラッグストアは大手5社しか生き残れない」とも言われていますが、本当でしょうか?

1990年代前半からわずか30年の期間で驚異的な成長を遂げたドラッグストアという業態の成長物語をまとめた『ドラッグストア拡大史』(イースト新書)という本が、2月10日に発売になりました。ドラッグストアという新しい業態の歴史をまとめた本は他にないので、ぜひご購読ください。ドラッグストアのことを知る入門書として最適の一冊です。

ドラッグストアが成長を開始した1990年代前半は、すでに全国津々浦々に近代的な業態が大量出店していた「オーバーストア時代」です。多くの小売企業がチェーン展開を始めた昭和時代のように、個人商店しかなかった「店不足時代」とは大きく異なります。

1990年代前半は、後発のドラッグストアが成長する余地などないように感じたものです。しかし、ドラッグストアは「店不足」「右肩下がり」の時代に、後発でありながら驚異的な成長を遂げています。「なぜドラッグストアだけが成長できたのか?」についてはドラッグストア拡大史を読んでもらえば理由がよくわかります。

そして、1990年代の後半には、昭和時代の小売業の王様だった総合スーパーの長崎屋、マイカル、ダイエーなどが経営破綻しています。まるで小売業の主役が交代するかのように、ドラッグストアの急成長が始まったわけです。

筆者が20歳代の頃に、正式な書名は忘れましたが、『日本の小売業は6社しか生き残れない』という本が発売されてよく売れていました。6社というのは、ダイエー、ジャスコ、イトーヨーカ堂、西友、マイカル、ユニーの総合スーパー(日本型GMS)のことです。戦後に急成長した巨大企業である総合スーパーこそが、日本の小売業の近代化、そして国盗り物語のゴールであり、他の小売企業はすべて大手6社の傘下に入ると、真顔で力説する人も大勢いました。

しかし、ご存知のように、ダイエー、マイカルは経営破綻し、西友はウォルマートの子会社になり、ユニーはドン・キホーテの傘下に入りました。つまり、日本の小売業は6社しか生き残れないのではなくて、「日本の大手小売業6社のうち2社しか生き残れなかった」というのが正解だったわけです。

変化対応できなければどんな大企業も滅びる

現在のドラッグストアは、1兆円企業を視野に入れた企業が数社も登場しています。ドラッグストア国盗り物語の歴史をたどると、地方予選を経て、準決勝が終わり、いよいよ決勝戦(最終決戦)の舞台に来たと感じる人も多いようです。数社の大手ドラッグストアしか生き残れないと感じている人が多いことも事実です。

しかし本当にもうこれがゴールなのでしょうか?商業の栄枯盛衰の歴史を素直に分析すると、次の10年も間違いなく主役の交代が起きると考えた方が必然であるように思えます。

全盛期を迎えた業態(ビジネスモデル)が通用する期間は20~30年です。変化に対応できなければ、どんな巨大な企業も滅びるという歴史は何度も繰り返されています。「今度だけは繰り返さない」という確率の方が低いことは、歴史が教えてくれます。

アメリカの経済学者である(故)クレイトン・クリステンセンの名著『イノベーションのジレンマ』によれば、ビジネスモデルが通用する期間は20年程度で、もっとも儲かっている時期に新しいビジネスモデルに挑戦しなければ、必ず衰退の道をたどると書かれています。しかし多くの企業は、儲かっている時期に、儲からない新しい挑戦をやりたがらないのです。

しかし、長く続く企業は、既存のビジネスモデルが絶好調の時期に、必ず新しいビジネスモデルに挑戦していると書かれています。写真フイルム大手の「コダック」が倒産し、同業の「富士フイルム」がビジネスモデルを乗り換えて生き残っているのは、まさにイノベーションのジレンマの典型的な事例です。

ドラッグストアの次の10年も、現在の規模の大きさよりも、「変化対応力」によって勝敗が分かれると思います。

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コロナストレス対応や休暇助成金も新設、妊娠中の従業員のための制度

新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)禍の収束が見えないなか、前回は「雇用シェア」をはじめとした最新の主なコロナ対応制度について押さえました。今回は特に、出産を控える従業員自身、そうした従業員の方とともに働く人々や事業主が知っておきたい、働く妊婦さんのための制度についてまとめます(2021年1月25日執筆時点)。

母体保護に必要な労働時間の削減や業務配慮

コロナ特例措置をご紹介する前に、平時の制度について押さえておきます。まず、基本となるのは、妊娠・出産する女性の身体を守る(労働基準法上は「母性保護」と言います)ための規定です。次表のように、産休制度をはじめ、職務内容、労働時間に関する制限があります。

事業主には症状に応じた措置が義務付けられている

そして、男女雇用機会均等法には、妊娠中の女性の身体を守りつつその能力を十分発揮することを目的とした「母性健康管理」の規定などが設けられています。主な内容をまとめたのが次表です。

なお、健康検査(表中No.1)の回数は、標準的な妊婦検診に合わせた回数になっていますが、医師などが指示した場合、その必要な時間を確保する必要があります。

また、指導事項の実施(表中No.2)に関する措置の1つ、「通勤緩和」は、在宅勤務も含まれます。そして、始業・終業の時間の移動、フレックスタイム制度の導入や、時短を取り入れるなども選択肢の1つです。

こうした対策を通じて(つわりの悪化や流・早産につながるおそれがある)ラッシュの苦痛を妊婦がうけないようにする必要があります。

そして、医師の指導に対し適切な措置を実施するために、「母性健康管理指導事項連絡カード(通称、母健連絡カード)」を利用することが推奨されています。

母性健康管理指導事項連絡カードの一部

「コロナ感染ストレス」も対象、休暇助成金が新設

そしてコロナ禍の特別措置として、措置対象の症状に「コロナへの感染のおそれに関する心理的なストレスが母体又は胎児の健康保持に影響がある」場合が加わりました。

医師の指導の例として「感染のおそれが低い作業への転換又は出勤の制限(在宅勤務・休業)」が挙げられています。

休業を支援するための助成金も設けられました(新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援助成金)。

これは通常の年次有給休暇とは「別に」、休業が必要とされた妊娠中の女性が取得できる有給(年次有給休暇で支給する賃金相当額の6割以上)の休暇を整備し、この休暇を合計して5日以上取得させた事業主に対して給付する助成金です。

対象労働者1人当たりの金額は、休暇計5日以上20日未満は25万円、以降20日ごとに15万円加算(上限額:100万円)です。

1つ目のコロナ感染ストレスへの対応に関する特別措置が、2021年1月末→2022年4月末日まで、2つ目の助成金制度は2021年1月末→2021年3月末に延長されることが、2020年12月に決まりました。

また、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)において、コロナへの感染について、ストレスを感じたり、通勤や働き方で悩む妊婦の方を対象に、「母性健康管理措置等に係る特別相談窓口」を設け、相談に対応しています。この相談窓口の開設期間についても、2022年1月末まで延長されました。

個人の体調に合わせた働き方ができる職場づくりを

さて、平時でもコロナ措置でも、前述のように法律措置で義務化しているのは、「医師の指導があった場合」が原則となっていますが、そうでない場合も従業員の申し出に応じて配慮するのが望ましいことはもちろんです。

筆者の経験上からも、妊娠中は異常な状態(病気・著しい症状がある)と診断が下されなくても「つらい」と感じるケースがあるからです。特に、つわりをはじめ、妊娠に伴う体調不良はとても個人差があります。実際、ほぼつらさを感じず出産直前まで通常通り働いていたという人から、つわりや体調不良で以前と同じ勤務状況が耐えられないことをきっかけに、退職してしまったという人までいます。

なお、厚生労働省の発表(2020年12月)によると、2020年4月以降の妊娠届出数は昨年割れを続けており(下図)、特に5月は17.6%減でした。コロナ禍のなか、妊娠・出産に不安を感じる人の多さがわかる数字です。

▲出典:厚生労働省・令和2年度の妊娠届出数の状況について

妊娠・出産への不安に拍車をかけるコロナ禍のなか、出産を控える従業員が体調に合わせた働き方ができるように、職場全体で配慮いただき、助成金も活用していただければと思います。

妊娠中の従業員に関するコロナ対応特別措置・助成金の詳細や最新情報は「職場における妊娠中の女性労働者等への配慮について」をチェックしてください。

NFI定例セミナー「Withコロナ時代の商品構成と商品分類」(2021/03/17 13:00~16:10)開催ご案内(オンライン)

3月の定例セミナーのテーマは、「Withコロナ時代の商品構成と商品分類」です。Withコロナ時代の売り方は、密を招く「短期特価特売」が廃れていきます。必然的にプロモよりも「定番売場」の強化が重要になります。そのためには陳列量にメリハリのある「商品構成グラフ」を維持することが買いやすく選びやすい定番売場の条件になります。改めて商品構成グラフの原則と実例を学びましょう。また、ワンストップショッピングを実現する「商品分類」と「売場レイアウト」の原則も解説します。

開催概要

・開催日:2021年3月17日(水) 13:00~16:10
開始時間は運営の都合で若干ずれることがある旨をご了承ください。
・実施方法:zoomによるオンラインセミナー
(アクセス方法はお申込み者様にのみご案内いたします)
・料金:1万5,000円(税別・1名様)
(※ニューフォーマット研究会会員企業様には会員価格でのご案内になります)
・申し込み締め切り:2021年3月8日(月)

スケジュール

(1)ショートタイムショッピングを実現する商品構成&分類
(2)ワンストップショッピングを実現する商品構成&分類
[13時00分~14時10分頃]

NFI代表取締役 日野 眞克

・商品構成グラフの原則と作成方法
・良い商品構成、悪い商品構成のグラフ比較
・Withコロナ時代は品目の「絞り込み」が進む
・買上点数を増やす商品分類と売場レイアウトの原則  他

(3)「非接触接客」時代の「POP広告」の原理原則&実例集
[14時20分頃~15時頃]

月刊『マーチャンダイジング』編集部

・リアル店舗の価値を高めるPOP広告の原則
・お客に価値が伝わるPOP広告の実例紹介
・推奨品・重点商品のPOP作成は商品理解の重要な機会  他

(4)特別講座・ドラッグストア「食品売場」の課題と強化策
[15時10分頃~16時10分頃]

エイジスリテイルサポート研究所(株) 三浦 美浩所長

・今注目すべき、強いスーパーマーケットの売場づくりに学ぶ
・ドラッグストアの食品売場の課題
・ドラッグストアの食品売場の強化策  他

注意事項

・今回のセミナーはzoomを利用して実施します。具体的な接続手順、URLなどは、受講者様にお送りいたします。あらかじめ https://zoom.us/ にアクセスできるパソコンをご用意ください。スマートフォンでも受講できますが、パワーポイントのスライドを画面に共有して進めますので、なるべくパソコンでの受講をおすすめしております。

・セミナー終了後10日間はアーカイブされた録画を閲覧することが可能です。
閲覧のためのURLは、セミナー終了後にご案内いたします。

・企業様によって、Zoomへのアクセスができないという場合がございます。
Zoomへの接続については、受講企業様にてご対応くださいますようお願い申し上げます。(弊社にてサポートは致しかねますのでご了承ください)。また、受講者様側の都合で当日受講できなかった場合も返金は致しかねますのでご了承ください。

お申込みフォーム

・お申込みは以下のお申込みフォームからお願いいたします。お申込み受付後、お申込み確認メールをお送りします。また、ご請求先として記入いただいた方宛に、請求書を発送させていただきます。
・ご入金後は、理由の如何に関わらず返金は致しません。あらかじめご了承ください。

店頭の「手書きPOP」はリアル店舗の価値を高める

Withコロナの時代は「非接触」の接客が求められるようになり、店頭でのPOP広告の価値が今まで以上に高くなります。POPによる非接触の接客によって、商品の「売れ方」が大きく変わるからです。

買物客がリアル店舗に求める4つのニーズ

買物客がリアル店舗に求めるニーズは以下の4つです。

リアル店舗の4つのニーズ
(1)コンビニエンス・ニーズ
→近くて便利
(2)ディスカウント・ニーズ
→安い、ポイント販促
(3)スペシャルティ・ニーズ
→親切な接客、深い品揃え、専門的なカウンセリング
(4)エンターテインメント・ニーズ
→楽しい、ワクワクする、新しい発見

もっとも強いニーズはコンビニエンス・ニーズです。Amazonでなんでも買える時代において「近くて便利」がリアル店舗の最大の価値です。もちろん「ディスカウント・ニーズ」(安さ)も、「スペシャルティ・ニーズ」(接客・深い品揃え)も重要です。

これからのリアル店舗は、とても安いけれど、遠くに立地しているので不便、しかも不愛想な接客という「単一価値」の店は、選ばれる店にはなりません。これからのリアル店舗は、近くて便利で、安くて、親切な店という、すべての価値をレベルアップしなければ競合優位に立つことができません。

さらに、Amazonとの競争が激化する中で、リアル店舗の価値を高めるためには「エンターテインメント・ニーズ」が4番目のニーズとして重要視されるようになりました。リテール(小売業)とエンターテインメントを掛け合わせた「リテールテインメント」という造語で表現されることもあります。店頭でのPOP広告は、売場の楽しさ、ワクワク感、新しい発見に貢献するツールなのです。Amazonでなんでも買える時代において、ローコスト一辺倒の「自動販売機」のようなリアル店舗では、わざわざ時間とコストをかけて来店する価値がなくなります。

ドラッグストアが平成時代に大成長した理由のひとつが、「セルフ販売」と「接客販売」をミックスした売り方を採用したことです。しかも、人による接客のサポートツールとして、当初からPOP広告を重要視しました。店内に「手書きPOP」が溢れるようなドラッグストアの売り方が、新しい発見のある楽しい売場づくりにつながったのだと思います。

手書きPOPは客と社員の商品理解を深めるツール

POP広告はサイレントセールスマン(物言わぬ販売員)とも表現されます。売場の楽しさを演出するだけではなくて、商品の価値を理解させる「非接触の接客ツール」でもあります。とくに「手書きPOP」の有効性は高く、現場で働く店長や化粧品担当者に質問すると、「手書きPOPを付けると間違いなく売れる」という回答がもれなく返ってきます。

また、手書きのPOP広告は、お客の商品理解を深めると同時に、現場で働く社員・パートさんの「商品知識」の勉強にもなります。巻頭の「軽失禁・給水量の早見表」を作成した売場担当者は、POPを作成する過程で軽失禁の商品知識を勉強し、深く理解できたと思います。つまり、手書きPOPの作成過程そのものが、商品知識の勉強に最適のツールなのです。当たり前の話ですが、本部から支給されたPOPを貼る作業だけを繰り返しても、その商品やカテゴリーに関する商品知識は身に付きません。

もちろんすべての商品に手書きPOPを付けることはコスト的にも不可能ですが、わが店の重点商品や推奨品に関しては「手書きPOP」を推奨しているドラッグストアも多いようです。いずれにしても、手書きPOP以外のPOP広告も、サイレントセールスマンとしての価値がありますので、以下の5つの種類に整理して、店頭POPを管理すべきだと思います。

POP広告の種類
(1)手書きPOP(売場担当者が主に作成)
(2)エリアでの共有POP(エリアのPOP名人が作成した手書きPOPを印刷)
(3)本部から提供されたPOP広告(できれば手書きPOPを印刷したものが良い)
(4)メーカー提供のPOP広告(その小売業の専用POPがベスト)
(5)商品名と価格を表示した基本POP

無人決済システムでスマートショッピングを実現する「TOUCH TO GO」

2020年10月、JR山手線目白駅改札口隣に「KINOKUNIYA Sutto」がオープンした。この店舗は無人決済レジシステムを導入しており、レジでの商品登録作業なしに、お客が手に取った商品の合計金額を計算、セルフで会計を済ませることができる店舗だ。国内でも先進的なこの取組みの開発と導入の背景について、株式会社TOUCH TO GOの代表取締役社長、阿久津智紀さんにお話を伺った。(取材・文:MD NEXT 鹿野 恵子/月刊マーチャンダイジング2021年1月号より抜粋)

レジ前に立つだけで購入商品が一覧に

「KINOKUNIYA Sutto目白駅店」は約12坪の小さな店舗だ。店内には弁当、総菜、飲料、菓子などが品揃えされており、ひっきりなしに通勤途中のビジネスマンや地元の住民が訪れる。一見普通の店舗だが、天井を見上げると無数のカメラに驚かされるだろう。このカメラが店内のお客の動きを読み取り「だれがどの商品を手に取ったか」を自動で判別する。

KINOKUNIYA Sutto目白駅店。JR山手線目白駅改札脇に立地。場所柄ビジネスマンの利用が多い
レジ台数は2台。青枠の中に入ると会計がスタートする

会計の方法は非常に簡単。入り口の入場ゲートを通過し、商品を手に取り、2台あるレジの前に立てば、その瞬間画面に自分が購入しようとしている商品がディスプレーに映し出される。その内容を確認し、レジ袋が必要か不要を選択した後、交通系ICカードかクレジットカードかという決済種別を選択、会計すればそれで買物は完了。スマートフォンを取り出したりする必要もなく、直感的に買物を済ませることができる仕様になっている。

ただ商品を手に取るだけ。ここで持参したバッグの中に入れてもよい
購入した商品とディスプレーの表示を見比べる。間違いがあればここで修正可能。年齢確認が必要な商品はこのあとの画面で遠隔で確認できる
レジ袋の要否を確認
決済手段を選ぶ。現在は交通系ICカードとクレジットカードのみ。近々現金決済にも対応したい考え

この店舗に導入されているのが、JR東日本のCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル事業会社が自社の戦略目的のために行うベンチャー投資のこと)であるJR東日本スタートアップと無人レジシステム「ワンダーレジ」を開発していたサインポスト社の合弁会社であるTOUCH TO GOの無人決済システムだ。

2017年、「JR東日本スタートアッププログラム」の最優秀賞受賞企業であったサインポスト社は、同社が開発した無人AI決済システム「スーパーワンダーレジ」の実証実験をJR東日本スタートアップの支援の下、JR大宮駅で実施。さらに2018年にはJR赤羽駅のホーム内店舗で実証実験を展開した。

2019年には、無人AI決済店舗の開発をさらに加速するため、JR東日本スタートアップとサインポストが合弁で株式会社TOUCH TO GO(以下TTG)を設立。2020年3月、JR山手線の高輪ゲートウェイ駅構内において、無人AI決済店舗の第1号店となる「TOUCH TO GO」を開業した。そして、2020年11月に開店したKINOKUNIYASutto目白駅店は、同システムの外部導入第1号店となる。

同時入店10人 認識率95%

赤羽での実証実験のときは入店制限が約3人で認識精度も高くはなく、コンセプトが先行している印象だったTTGの無人AI決済システム。KINOKUNIYA Sutto目白駅店では10名前後の同時来店に対応でき、認識率は約95%になるまで進化を遂げた。天井に設置されたカメラ台数もTTG高輪ゲートウェイ駅店が50台であるのに対し、KINOKUNIYA Sutto目白店は30台で済んでいる(ただしこれはTTG高輪ゲートウェイ駅店は18坪、KINOKUNIYA Sutto目白店は12坪という売場面積の違いも関係あろう)。

入り口にはゲートを設置。現在入店客数の上限は7〜10人

なお、どのお客がどの商品を手に取ったかについては、カメラ以外にもさまざまなセンサー類を使用し、総合して判断しているとのこと。

天井に設置されたカメラ
棚にも重量計のようなものが見受けられる。既存設備に変更なしで導入可能

また技術力向上による精度アップだけでなく、アルバイト1人でも店舗運営ができるレベルにまで使いやすさも磨いているそうだ。

「ソフトウェアをバージョンアップする場合には、まず実験店である高輪ゲートウェイ駅店でテストを行い、実用に耐え得ると判断できたら、ほかの店舗にも展開するという形を取っています。(アメリカの電気自動車会社大手の)テスラの自動車のように、ハードウエアはそのままでも、ソフトウェアがどんどんアップデートされていくような運用です」と阿久津さんはいう。今後、決済種別に現金を加えるなども検討しているそうだ。

KINOKUNIYA Sutto目白駅店はオープン後の手ごたえも上々だ。

「もともと有人店舗だったときと比較して、無人化してからも売上は維持できています。もっとも売上の高い朝の時間帯はビジネスマンの方がぱっと買物を済ませてお帰りになります。日中来店する女性のお客さまは、まだ利用に対して迷いがある方もいますが、一回使っていただけると、次回以降は抵抗なく利用してもらえる印象です」(阿久津さん)

ちなみにKINOKUNIYA Sutto目白駅店の大まかな売上構成比は菓子2割、飲料2割、米飯2割、アルコール1.5割という割合で、食品スーパーよりもコンビニに近い構成になっている。

なお紀ノ国屋は、2010年よりJR東日本グループ入りしており、これまでもエキナカ店舗を運営していたという縁で今回の導入に至った。TTGの無人AI決済システムを導入することで、省人化による店舗オペレーションコストの低減を目指す。

実店舗運営の背景持つテック企業のトップ

TTG代表の阿久津さんは、JR東日本に入社後、駅ナカコンビニNewDaysの店長や、JR東日本ウォータービジネスでのバイヤー、青森でのシードル工房事業、ポイント統合事業の担当などを経て、JR東日本スタートアップの立ち上げに参画、2019年7月にTTGの社長になるという経歴の持ち主。テックスタートアップの代表者でありながら、実店舗運営のバックグラウンドを持つ。

阿久津さんがCVCを立ち上げた背景には、JR東日本という超大企業で感じた「歯がゆさ」があった。「大企業は大きすぎて、スピード感ある意思決定ができません。予算取りで1年かかるようなことは往々にしてありますし、システム発注の仕様決定にも時間がかかる。PoC(Proof of Concept新しい技術や理論が実現可能か、目的の効果や効能が得られるか、などを確認するための検証工程のこと)すら進めることができません」。しかし環境変化のスピードは日に日に早まっている。物事を決定してから数ヵ月以内に着手しないと、世の中の流れ自体が変わってしまいかねない。

「そうであれば、外部の人や企業と連携するのが一番手軽であると考えました。スタートアップ企業も、最後は大企業と組まないとスケール(規模拡大)することができません。そこで、JRがある程度出資して、スタートアップ企業をサポートし、自社にとってもメリットが得られるような体制をつくりたいと考え、CVCを立ち上げたんです」(阿久津さん)

狙うは採算が合わない「マイクロマーケット」

TTGは今後この無人AI決済システムを、月額サブスクリプションモデルで提供していく予定だ。2020年度中にあと数店舗出店の予定もあるという。

JRグループだからといって、エキチカ、エキナカにこだわるわけではなく、「マイクロマーケットで人手不足に悩んでいるようなところをターゲットとしている」と阿久津さんはいう。広い店舗で、従業員が常駐していても採算が合うようなところはターゲットから外している。

過疎化が進み買物難民の悩みを抱える地域、高速道路のサービスエリア内店舗、道の駅のような、商品を買う場所のニーズはあっても、人件費をかけると成立しないような立地への出店を、テクノロジーの力でサポートする。

さらに、非接触がウリの無人AI決済システムは、このコロナ禍で一気にニーズが高まった。

TTGの無人AI決済システムは、もともと省人化のために開発されたもので、現在のような状況はまったく想定していなかった。しかしコロナ禍によって、病院内のコンビニからの引き合いが増えているという。病院内コンビニは、もともと立地的に人を集めにくいうえ、感染対策などを考えると、無人化のニーズは非常に高いからだ。

また、コロナ禍で、アルバイトが集めやすいという話も聞かれる一方、売上が下がっている店舗も少なくはなく、採算を合わせるのが難しくなっている業態も多い。無人決済レジの実用化・一般化は、省人化によるコストダウンで、売上の減少に悩む企業にとっても恩恵を受けることになり得る。現在は、TTG高輪ゲートウェイ駅店、KINOKUNIYA Sutto目白駅店、いずれも従業員1人での運営態勢となっている。米飯や乳製品などは食品販売管理者が常駐していないと販売することができないための措置だが、そういった商品を扱わない場合は、完全無人での運営も不可能ではない。配送トラックが複数店舗を巡回して商品の納品と品出しを行う、「自動販売機」と「コンビニ」の中間のような店舗オペレーションが現実となる日も近い。

重要なのは既存の買物のUIを変えないこと

注目度が高まる一方の無人AI決済システム。阿久津さんは一番の競合をAmazonだと考えているが、Amazonが既存小売業をディスラプト(破壊)してすべてをEC化しようとしている一方、TTGはあくまでも実店舗小売業をサポートするためのシステムでありたいと言う。

「日本の小売業は海外に比較すると現金比率が高く、POSレジとのつなぎ込みが必要であるなど障壁が多い。海外から簡単に参入できる市場ではありません。そういう意味で私たちはかなり先行していると考えています。

駅の中というのは本当にいろいろなお客さまがいらっしゃっていて、6割の方が現金決済を求めるような場所です。モバイルアプリをダウンロードしないと使えないような店舗では、一般のお客さまにはまったく受け入れられません。既存の買物のUI(ユーザーインターフェース、利用者と製品やサービスとの接点のこと)を変えないことが重要です」

2020年11月、TGGはコンビニエンスストアのファミリーマートと無人決済システムを活用した無人決済コンビニ実用化に向けて業務提携を行った。1号店のオープンは2021年春ころに予定されている。

〈取材協力〉

株式会社TOUCH TO GO
代表取締役社長 阿久津 智紀さん

ラインロビングに挑戦したウエルシア「600坪型」最新標準店

狭小商圏の立地で成立するための基本対策が「ラインロビング」である。ラインロビングによって買物目的が増えれば、「ワンストップショッピング性」が高まり、従来よりも小さな商圏でも商売を成立させることができる。ウエルシア薬局は、従来のプロトタイプである300坪型の2倍の売場面積の「600坪型」店舗「平塚四之宮店」(神奈川県)を開店し、最新標準店(プロトタイプ)づくりに挑戦している。(月刊マーチャンダイジング2021年1月号より一部転載)

狭小商圏で成り立つ600坪の最大店舗に挑戦

ウエルシア平塚四之宮店の開店は2020年4月9日。新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が出される直前であった。従来の300坪型の2倍の面積なので、青果、精肉、総菜、弁当、園芸などの新しい商品群をラインロビングしている。車で5分圏内の狭小商圏でも成立する実験店という位置づけである。狭小商圏で成立する600坪型のノウハウを蓄積し、今後は600坪型をプロトタイプとして全国に出店していく方針だという。

初めてラインロビングに挑戦した青果の島陳列

新しくラインロビングした「青果」「精肉」は、客数の増加に貢献している。「青果の購入客は1日100人と、1日の客数700人の7%を占めており、買上率が高い商品です。また青果の1日の買上点数は180点前後と多いので客数増に貢献していると思います」(石庭俊一・店長)

定番陳列の青果と精肉。食品売場の最初に配置されている。鮮魚の取扱いはないが、「塩干」商品の品揃えを充実させている

冷凍食品、日配品、パン売場は、300坪型よりも売場面積を広くし、品目数も増やした。酒類に関しては、焼酎の量り売り、地域一番の缶チューハイ売場、4ℓのウイスキーを10種類以上も品揃えするなど、広くて深い品揃えに挑戦している。

売場面積を大幅に拡大し、品目も増やした日配商品。ボリューム感を維持しながら、廃棄と値引きのロス管理の精度を高めることを最重要視している
冷凍食品も大きく売場を広げたカテゴリー

開店7ヵ月の時点で、食品の売上構成比は42%を占めており、ウエルシア全店の食品の売上構成比22.1%(2020年決算)よりも大幅に、食品の売上構成比を高めていることがわかる。取材時点の1日の客数は700人、客単価2,000円、買上点数8.7点。とくに買上点数が300坪型よりも多いのが特徴で、9~10点に増えるのも時間の問題である。開店直後の売上と客数の伸び率が、従来の300坪型よりも高いそうである。

カテゴリー単位で品揃えの強弱を明確に付けている。コンビニのデザート需要を奪うことを意識したデザート売場。手書きPOPが目立つ
パウチ惣菜も強化している
タンパク質という切り口でゾーニングした陳列

接客を強化する化粧品、調剤、医薬品

売場面積が2倍に増えても、それぞれの売場をまんべんなく増やしたのではない。酒類、パンなどの特定のカテゴリーを思いきり広げている。化粧品、調剤、医薬品のようなDgSの専門性を発揮する売場も大きく広げている。

全文は月刊マーチャンダイジング2021年1月号で!

「ローカルチェーンの価値はもっと高まる」サンキュードラッグ平野氏

日本のドラッグストア(DgS)市場の寡占化が進んでいる。市場規模約7兆7,000億円のうち上場企業14社の売上げは約76%。そんななか、人口約95万人の北九州市で「調剤併設型DgS」を狭小商圏でドミナント展開する「サンキュードラッグ」の平野健二社長に、地域密着のローカルチェーンの「可能性」を聞いた。(聞き手:月刊MD主幹 日野 眞克/月刊マーチャンダイジング2021年1月号より転載)

地域の多くの立地に出店できることが強み

──大手ドラッグストア(DgS)の集約化が進んでいますが、大手小売業の寡占化は今後も進むのでしょうか?

平野 現在、日本では人口の減少が加速し、高齢化が進んでいます。北九州市の「高齢化率(65歳以上の人口の割合)」は30.7%と、日本の市区町村の中でもっとも高齢化率の高い市です。まさに、われわれが商売している地域は、日本の「未来都市」なのです。

人口減少、高齢化が進む日本において、次の10年間の戦略として、全国に多店舗展開することが正解なのだろうかと疑問に感じています。大手小売業が当たり前だと思っている「スケールメリット」は、人口が増え続けていた時代には有効でした。早く多店舗化し、早く大型化することで、空白市場を獲得し、売上と利益の両方を伸ばしていたことは間違いありません。

しかし、1店当りの人口は減り始め、新市場はなかなか生まれません。この10年間でDgSチェーンの「坪当り売上高」は半分以下に下がり、今後も1店当たりの売上高は減少します。多店舗化は将来赤字になるリスクの高い店を増やしていくことになります。今の延長線上だと大手DgSの出店戦略は、近い将来に飽和状態になると思います。

また、ナショナルチェーンは、プロトタイプ(最新標準店)に適した「立地」を選んで、全国に出店しています。しかし、われわれのような「ローカルチェーン」は、ひとつの商勢圏の中のさまざまな立地に出店し、より深く地域に密着していきます。

北九州市のさまざまな立地に出店しているサンキュードラッグ。その高密度展開によって地域医療の「かかりつけネットワーク」の役割を担うことができる

サンキュードラッグの立地は、三方山で一方海の閉鎖商圏です。北九州市内で、サンキュードラッグの店舗数と、「コスモス薬品」さんの店舗数は肉薄しています。しかしコスモス薬品さんは、車で行きやすい「車来店」の立地に出店しています。

一方、サンキュードラッグは「徒歩来店」の立地に出店しています。北九州市内の店舗数はほぼ同じですが、立地が異なります。たとえば、冷凍食品のまとめ買いはコスモス薬品さんでして、お昼の冷食はサンキューで買うので、あまり競合せずに「すみ分け」ができています。大手DgSチェーンと差別化する場合は、立地戦略が重要になります。

半径500m間隔で超高密度出店しているサンキュードラッグ

とくに、地域のローカルチェーンの店舗展開で大切なことは、「店舗密度」だと思います。ナショナルチェーンと1店舗単位で戦えば負けるかもしれません。ですが、ローカルチェーンが密度をつくる戦い方を貫けば、「近さ」という最大の武器が手に入ります。ナショナルチェーンよりも1店舗当りの商圏を更に小さく取る戦略が重要になるわけです。

調剤DgSの高密度出店が「面処方」の最適条件

──狭小商圏DgSを成立させるためには、「調剤」の併設が重要ですね。

平野 そうです。当社はDgS43店(うち28店が調剤併設型)、調剤薬局32店を展開しています。半径500mの狭小商圏で成立するためには調剤はとても重要な役割を果たします。ローカルチェーンの立地戦略による「近さ」という便利性に加え、調剤を併設して地域のヘルスケアの専門性を強化すれば、本当の意味での地域密着型モデルを実現できると考えます。

入口の近くに調剤の待合室、漢方の相談薬局も併設している

人口減少時代に重要になるのは「調剤」です。いま調剤は約8兆円の巨大マーケットです。さらに、これまで個人の調剤薬局が担ってきた調剤市場は、処方せん単価下落によってマンツーマン調剤薬局が淘汰され、集中率の低い「面分業」のDgSの調剤枚数が増えていきます。調剤を取り込むかどうかがDgSの次の10年の成長を決めると思います。

高齢者は1人当り3~4の病院を受診していますので、DgSは複数の病院の処方せんを取り扱って、1人の患者さんを総合的に見ていく必要があります。だからサンキュードラッグは、1kmごとに出店し、500mで来店できる「高密度」の店舗展開をしているわけです。

──地域の医療機関との人間関係、地域医療の担い手と考えると、全国チェーンより地域密着チェーンの方が有利かもしれませんね。

平野 調剤における高密度の店舗展開は、ローカルチェーンに適しています。大型病院の門前だけではなくて、地域に集中的に調剤併設型で店舗展開すれば、大型病院の処方せんと、内科のお薬を一緒に見ることができます。圧倒的な高齢者市場である調剤においては、「歩ける距離」の強みが生きてきます。

今後、DgSで調剤の構成比は上がっていきますが、スケールメリットは減っていくと思います。なぜなら、日本では医療用医薬品の売価が「公定価格」だからです。調剤薬局チェーンが2、3社と言われるアメリカの売価は自由であり、保険会社との交渉力で売価が決まるため、巨大化せざるを得ませんでした。

一方で、日本は公定価格であるため、大手、中小に関わらず売価は一緒です。したがって、大型化するよりも、調剤で選ばれる店を目指すべきです。そのためには、地域の緻密な店舗網や、薬歴を共有する重要性が増していきます。在宅医療に関しても、サンキュードラッグは1kmごとに出店しているため、ローコストかつ迅速にお薬を届けることができます。

結局、ローカルチェーンは、ミニナショナルチェーンになってはいけないのです。エリアを拡大しないで、ディープに地域を深掘りするべきです。地域の人のお役に立つためのお店ならば、決してローカルチェーンは捨てたものではありません。

アメリカよりも敷地の狭い日本では、車を受付口に停車する「ドライブスルー調剤」ではなくて、「ドライブイン調剤」の方が適している

固定客の来店頻度を増やすことが重要

──病気になる前のアドバイスができる管理栄養士の育成にも力を入れていますね。

平野 はい。管理栄養士は、お客さまの「来店目的」をつくる重要なサービスです。現在、「スマイルクラブ」という会員組織をつくり、管理栄養士が地域の患者さんの栄養相談に、週1回の頻度で乗っています。歩数計も記録し、「今月はどのくらい歩いたか?」などのデータを競い合っています。

とても「コミュニケーション能力」の高い栄養士さんが、親切に栄養相談に乗ってくれる

売上=客数×客単価という公式がありますが、1回当りの客単価を上げる論理は、「一元客」が多い大商圏型モデルのもので、狭小商圏型のローカルチェーンでは成り立ちません。ローカルチェーンの場合、新規客は少ないため、1人の固定客の「年間購入額」が勝負になります。年間購入額は、年間客数(=ユニーク客数×来店頻度)と年間客単価(=1回の客単価×来店頻度)の掛け算です。つまり年間購入額は、「来店頻度」の関数なのです。

来店頻度を上げるためには、食品に代表される「購買頻度」が高い商品の構成比を上げることです。2つ目は、「来店目的」を増やすことです。来店目的が増え、来店頻度が上がると「ついで買い」が増え、年間客単価も上がります。したがって、1週間に1回アドバイスを受けるなど、お客さまの来店目的になる管理栄養士の接客には、力を入れるべきです。

狭小商圏で成立するために来店頻度を高めてくれる精肉や青果もラインロビングしている

また、来店頻度は、サービスと商品の幅を広げることでも上がります。人口が減少している北九州では、文具屋、肌着、本屋が減っています。要は、買いたいのに買う場所がないのです。この地域では、カテゴリー単位、サブカテゴリー単位で、無くなったお店の商品をラインロビングすることが重要になっていくでしょう。

地域で買い場がなくなっている「文具」「実用衣料」などもラインロビングしている

続きは月刊マーチャンダイジング2021年1月号で!

  • 調剤併設DgSの処方せんは調剤薬局の5倍の枚数
  • 地域をさらに深掘りするOne to Oneマーケティング
  • ローカルDgS32社、8,000億円をグループ化したSOO

EC、棚チェック、清掃…小売業におけるロボット活用状況[2021年版]

生産性向上のため小売業でも期待されているロボット活用。その小売業における2021年時点の活用状況について、ロボット・自動化分野を長年取材し続けているライターの森山和道氏が解説。今後小売業のどの分野に、どの技術が適用されていくのか。

企業のロボット活用を阻んできた原因は「高コスト」と「技術不足」

既存の製造業以外の分野でのロボット活用が期待されると言われ始めて久しい。しかし実際にはなかなか始まらなかった。主な理由は二つ。高コストと技術不足である。しかしながら技術は徐々にであっても着実に向上していく。ロボットはようやく、それなりに物体を認識し、比較的安定して移動できるようになり、事前マスター登録しようがない多品種商品であってもある程度なら扱えるようになった。使い勝手も徐々に徐々にだが向上し始めている。少なくともメーカーもロボット慣れしてないユーザーのことを意識し始めている。導入においても購入だけではなくリースやRaaS(Robotics as a Service)と言われるモデルが登場し、自社でハードウェアアセットを保有しなくても、ロボットを使ったサービスのみを活用できる社会的な仕組みが構築されつつある。

コロナ禍により新たなフェーズを迎えつつあるロボット業界

こういった変化が、生産性の向上、そして2015年ごろから本格的に深刻化した人手不足時代を背景として、ゆっくり進んでいたのだが、2020年に始まった新型コロナウイルス・パンデミックにより、ロボット活用は今また新たなフェーズを迎えつつある。人手による人海戦術に頼っていた業界でもロボットが使われ始めただけでなく、ロボットの用途として新たに「感染予防」、ひいてはBCP(事業継続計画)が加わったのである。

新型コロナウイルス禍は、ロボット業界にとっては時間加速装置として働いている。業界課題の多くはこれまでも存在していて、やがて来るだろうと思われていたものである。それらの課題が早送りされて一気にやってきた。それが新型コロナ禍の影響だ。そのため、保守的な日本での導入はまだしばらく先だと言われていたようなロボットも2020年には一気に導入される時代となり、ロボットがついに一般人にとっても身近なところに現れはじめた。

最大の導入課題は「既存のやり方にフィットするかどうか」

一例がレストランの配膳ロボットである。どんなロボットでも、特にサービス領域では既存のやり方にフィットするかどうかが最大の導入課題だが、配膳ロボットについては、特にテーブルオーダー式の焼肉屋ではオペレーションに問題なく馴染んでいる。あまりにごく普通に馴染んでいるため、客にとってもほとんど意識されていない。客が「あ、ロボットだ」といった反応をするのは最初の一回だけで、あとは皿を持って来るのだがロボットだろうが人だろうが、ほとんど気にされていない。飲食店ホールにおけるロボット活用はまだ始まったばかりだが、今年が面白い年になりそうだということだけは確実だ。

現状の配膳ロボット活用は属人的要素も大きい。つまりどれだけロボットを使い倒せるかは人によるので、運営側としては今後はおそらく、厨房との連携へと踏み込んでいくものと思われる。そうなると今度はどこまで自動化技術を店舗に入れていくか、考え方の問題となっていくだろう。

全体最適と現場の改善

では小売分野において、積極的な活用が可能なロボット技術、あるいは自動化技術にはどんなものがあるのだろうか?小売の業務は大別すると、「作る」、「運ぶ」、「売る」の3つだ。生産性を上げるためには、それぞれの工程を連携させて無駄をなくして効率化する必要がある。

経営側から見ると、ロボット活用にせよAI活用にせよ、目的は全体の最適化なので、それぞれの工程をまたいだデータ連携・計画立案がもっとも重要なポイントだ。いっぽう現場からすれば、データ連携による効率化よりも、まずは目の前の作業量の負荷を少しでも減らしたいと考えているだろう。そのためには訓練を受けていない人であっても簡単に使える機械でなければならない。両者は必ずしも対立するわけでははない。バランスをとりながら進めていくことが重要だ。

いわゆるAI活用であれば、需要予測による自動発注や販売管理、惣菜の割引幅自動算出や欠品予測などが既に始まっている(NEC、日立、富士通などのシステムのほか、ベイシアとオプティムによるシステム、東急ストアとダイエー、シノプスによるシステムなど)。また決済や広告提示の可能なスマートカートの活用(トライアルによる取り組みなど)、環境固定カメラの活用による無人ショッピング(TOUCH TO GO)等のほか、チャットボットによるリコメンドや商品問い合わせ対応、写真画像を使ったビジュアル検索などなども活用され始めている。

本稿ではとりあえずロボットの活用に話を絞るが、AIとロボットは線引きされるソリューションではなく、相互連携で真価を発揮する。また、製造業で培われてきた業務分析ツールを使えば、負荷が大きい作業や無駄の多い作業の特定やプロセス改善策を具体的に立てて検討することも容易だろう。5S徹底はロボット導入の前提でもある。

高まるECニーズと物流

まず、もっとも今後の活用が期待されるのは小売店店頭ではなく、環境が既に構造化されている物流倉庫になるだろう。EC通販はコロナ禍によって、さらに活発になった。日本国内では今後ますます伸び代があることが予想されている。当然、バックヤードである物流倉庫でのロボット活用は進む。単なる保管だけではなく顧客への直接発送も進むので、いわゆるフルフィルメントサービス、すなわち受注・決済から始まり、商品の管理、検品やラベル貼りなどの流通加工やピッキングからの発送など一連の流通過程すべてにおいて自動化が進むだろう。

物流ロボットは棚を移動させて人のところに持って来る「GTP(Goods-To-Person)」タイプがよく報道されている。コープさっぽろほかが導入している自動倉庫「AutoStore」などもその一つだ。ものは手元までやってくるので人はピッキングステーションに張り付いていればいい。また空間を高密度に活用することが可能なので、より都市部に近い場所に倉庫を持ってくることができる。

MonotaROが笠間ディストリビューションセンターに導入している日立の搬送ロボット「Racrew(ラックル)」などもこの一種だ。従来のピッキング作業に比べて3倍超の作業効率向上が期待でき、搬送設備全体の制御を行うWCSと連携する。日立とMonotaROはシステムのさらなる高度化をめざしており、2022年には約400台を導入するという。

スーパーマーケット最大手のKrogerとネットスーパーのイギリスOcadoによる取り組みもよく報じられている。そのOcadoはコロナによって高まったEC需要を背景に投資を加速。国内でも2020年夏にはイオンとの提携も発表した。千葉市緑区にイオンが建設するネットスーパー専用配送センターにOcadoの技術を導入する。生鮮を含む食品・日用品5万品目を在庫するカスタマーフルフィルメントセンターで、2023年に稼働する予定だ。

だがGTPタイプは初期投資が必要である。そこで、既存の棚倉庫でのピックアップを助ける自律走行搬送ロボット「AMR(Autonomous Mobile Robot)」も活用され始めている。ロボットがピックアップをサポートし、人が歩く距離を限定することで歩行距離を減らすことができる。国内ではGROUNDやRapyuta Robotics、Syrius Japanなどが提供している。レトロフィットを重視する場合はこちらということになる。

さらに、これまでは完全に人手任せだったピッキング業務もロボット化することで、「GTP」をさらに進めた「GTR (Goods-To-Robot)」という考え方も生まれ始めている。一度入庫してしまえば出庫までほぼ無人ということも不可能ではなくなりつつある。

そうなると倉庫自体もロボット・自動化対応を前提とした作りに変わる可能性がある。倉庫内全体の作りもコンベアでどれだけ一筆書きで運べるかを基本に考えるようになるだろうし、将来はさらに自動運転車両と組み合わせることを想定するとなると、倉庫のバース自体から作りを変えることになるかもしれないし、また今後どんどん無人化が進むと、採用の問題がなくなるので、倉庫の立地自体が変化する可能性もある。

ただしECニーズが高いのは都市部なので、店舗と一体化した小規模物流倉庫、マイクロ・フルフィルメントセンターの自動化技術こそが今後もっともニーズの高い本命ということになるのかもしれない。ちなみにNECは自動ピッキングロボットと自動決済を組み合わせたミニ店舗の提案をリテールテック2019で行なっていた。

THKは2019年の国際ロボット展で多様な商品を一つずつピッキングしてケースに入れるロボットのデモを行なっていた。いわば大型で品目の多い自動販売機のような機械だ。こういった機械ならば、EC向け・既存店舗との相性も悪くはないかもしれない。

店舗内の商品棚チェック

問題は小売店舗内での活用である。ルーティーンワークを少しでも機械化できれば、人を違う作業に回すことができる。またロボットが動き回ることで店内の情報を収集できれば、そのデータを利活用することも可能になる。現状では店舗内で何が行われているか正確に把握している人は誰もいない。

ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスは日本ユニシスと共同で、夜間に商品棚のPOPのチェックを行うロボットの研究開発を行なっている。2018年11月からは「フードスクエアカスミ オリナス錦糸町店」で実際の運用も行なっている。

その後、POPの期限チェックだけでなく商品棚の品切れ検知機能なども開発し、2020年12月には、日本ユニシスから小売店舗の棚チェックを行うAIロボットサービス「RASFOR(Robot as a Service for Retail)」として外部提供も始まった。2021年6月ごろには陳列状況を把握する棚割実態把握機能の追加を予定しているとのことだ。

RASFOR-小売向け自律走行型業務代行AIロボット

国内ではこのような取り組みは珍しい。だが米国ではウォルマートがいち早く、2017年からBossaNova Roboticsの在庫スキャンロボットを導入していた。特に2020年1月には既に導入されていた350店舗に加えて650店舗にロボットを導入すると発表。大いに注目された。

The Future of Retail

この検品ロボット、ウォルマートからは「Auto-S」と呼ばれ活用されていた。ところがその後の同年11月に、ウォルマートとBossaNova Roboticsとの提携解消がウォールストリートジャーナルから報じられた。理由は、新型コロナ禍よるECの増加、サブスクサービス「Walmart+」の開始により、人間の従業員によるピックアップの機会が増え、その時に一緒に棚の在庫管理をしてしまうことができるから、というものだった。

ウォルマートは他に荷下ろしロボットや掃除ロボットなどを導入している。掃除ロボットはBrain Robtics製で「Auto-C」と呼ばれており、2000台近く導入されているようだ。ウォルマートは他のロボット導入を丸ごと切り捨てたわけではない。しかしBossaNovaを切ったことは、業界全体に大きなマイナスメッセージを発することになった。

Autonomous Floor Care for Retail

店舗の清掃

清掃に関しては様々な清掃ロボットが国内でも開発・販売されている。以前よりも自律移動能力、清掃能力も向上している。ただし多くは駅や空港、ショッピングモール、大型ビルの共用部などのハードコートの床を清掃するためのもので、通路がそれほど広くない店舗内での清掃を想定しているものは少ない。

日本の小売店で使えそうな清掃ロボットは、サイズから考えると、ソフトバンクロボティクス「Whiz i」と、パナソニック「RULO Pro」くらいが現実的だろうか。どちらも乾式バキュームだ。特にソフトバンクロボティクスはドラッグストアなどにもロボットを提供している。

ただどちらも店舗で使うことは実のところあまり想定されていないように思われる。既存のロボットをまずは使ってみることも重要だが、むしろ店舗内清掃に適した新たな掃除ロボットを新規開発する必要があるのかもしれない。

売場の自動案内・巡回警備

大型店舗では何がどこに売られているか顧客を案内する業務も発生する。デジタル戦略を進めているカインズは、2020年11月にオープンした大型ホームセンター「カインズ朝霞店」にデジタルサイネージのほか、案内用の移動ロボットを2台導入している。タッチパネルで商品を選ぶとその売り場まで自律移動して案内してくれる。

使用されているロボットはハウステンボス系のhapi-robo stが国内代理店として販売している temi USA inc.の「temi」。ただ、カインズに筆者も実際に訪れて店舗で試してみたが、まだ使いこなせているとは言い難かった。そもそも案内ロボット自体が目立っていないし、操作インターフェースも使いづらい。これはロボットだけではなくデジタルサイネージも同様だった。

このほか大型店舗ならば、警備ロボットによる巡回警備を行うことはできるだろう。SEQSENSEの自律警備ロボット「SQ-2」は空港のほか、一部のビルで実証実験を行っている。Mira Roboticsの遠隔操作警備ロボット「ugo」も同様だ。ugoにはよりシンプルな「ugo Stand」というタイプもある。

また、研究レベルだが巡回ロボットが「マスクをしてない客に店員ロボットが近づいて警告する」といった研究は行われている。将来はロボットによる自動接客が行われるというのもまったく夢物語ではないのかもしれない。

品出しや陳列はまだまだ

在庫の荷下ろしや載せ替え、商品の仕分け、売り場への品出し・陳列等はどうか? これらが最も省力化が望まれている工程だろうが、残念ながらこの工数を減らせる自動機械ソリューションは、ほとんど存在していないので、マニュアルや動線を整理したりするくらいしか効率化しようがない。

使える技術は、せいぜいが荷下ろし作業時の腰痛を防止するためのアシストスーツくらいだ。アシストスーツは、ゴムやバネを活用することで動力を使わないものと、センサーやモーターを積極的に使うもの、それぞれタイプが違う。大雑把に言えば後者のほうが価格は高いがアシストの効果も高い。だが装着は面倒だ。どれを使うかは各現場次第だ。

また、遠隔操作するロボットを使って品出しを行う実証実験を行っている会社もある。Telexistence社だ。同社は自社開発している半自律型遠隔操作ロボット「Model-T」を使って、コンビニのバックヤードでの品出しの実験にトライしている。人間側はロボットにつけられたカメラ画像を見ながらロボットを遠隔操作する。うまくいけば、世界中のどこからでも労働力を調達できるというわけだ。

ローソン「Model-T 東京ポートシティ竹芝店」ではガラス越しのその様子を見ることができる。見ればわかるが、本当にまだまだだ。ただTelexistence社は自らがコンビニフランチャイズオーナーとしてこの店を運営してトライしているので、今後の発展に期待したい。

加工・惣菜作業

店舗での青果や鮮魚など生鮮食品の加工、あるいは惣菜作業はどうだろうか。食品工場では多くの自動機械が導入されている。冷凍・冷蔵環境で使われるロボットもあり、今後の活用が期待されている。

ただ、スーパー等で自動機械を導入するのはやはり難しい。店舗容積の課題もあるが、何よりも業務負荷が平準化されていないことが問題だ。ロボットに限らず機械の効果を最大化し、投資利益率をあげるにはできるだけ一定のペースで使い続けることが重要だ。しかし、そういった仕事が小売店の現場には、あまりない。

前述のアシストスーツ等があまり活用されない理由も同様だ。物流倉庫であればひたすらものを運び続ける作業があるが、小売店にはない。だから試験導入されはしても、継続的には使われない。

ただ近年はスーパーでも人手不足が進むことでセントラルキッチン化が始まっている。各地域のチェーン店全体の作業を1箇所に集約して行うのであれば、食品工場で使われているようなソリューションが活用できるだろう。

調理ロボットは客寄せにも

店舗全体の雰囲気作りのための要素も重要だ。2019年のCESで発表されたWilkinson Baking companyの「BreadBot(ブレッドボット)」は焼きたてパンを焼き続けるロボットだ。1時間に10本焼くことができる。

日本のコネクテッドロボティクスのたこ焼きロボット、ソフトクリームロボットは、イトーヨーカドー幕張店の「ポッポ」で活用されている。ソフトクリームロボットはイベント時の臨時客寄せとしても使われている。

また同社は現在、駅そばロボットに注力しており、こちらはJR東日本グループと提携して導入を進めている。2020年3月にJR東小金井駅の「そばいち」に期間限定の実証実験として導入されたが、2021年1月現在も稼働している。「ロボット」という存在をどう捉えるかだが、こういったものをバックヤード、または敢えて来客からも見える場所で動かすというかたちはあるのかもしれない。

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https://md-next.jp/17715

「雇用シェア」支援も!小売業が使える2021年1月版・コロナ禍対応制度

新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の感染拡大を受け、2020年1月7日に一都三県に緊急事態宣言が発令され、その後、対象が拡大しています。目下、収拾が見えないコロナ禍のなか、「雇用シェア/従業員シェア」と呼ばれている「在籍型出向」の支援強化が予定されています。今回は、こうしたコロナ禍に対応する労務関連の制度の現状について押さえていきます。(※本稿の内容は、1月14日執筆時点のものです。)

コロナ関連で働けなくなった従業員への補償は?

最初に、第2回でも紹介した従業員の休業に関する主な制度を改めておさらいしておきます(下図)。

 

コロナに関連して働けなくなった従業員への休業補償は?

図のうち、①~④は、平時でも運用されている制度で、コロナ禍に対応する場合は次のようになります。

①「労災保険」の給付:従業員のコロナ感染が「労災認定」されて休業する場合に給付
②「健康保険」の「傷病手当金」:従業員が「業務外でコロナ感染」した場合に給付
③「休業手当」:コロナ禍に関し会社都合で休業する場合、「企業」に支給義務が発生
④「雇用調整助成金」:「企業」の申請にもとづき「休業手当」の一部を「国」が助成

そして⑤⑥が、コロナ禍に対応するための特例措置や新制度です。

⑤雇用調整金の助成率引き上げ→1万5,000円を上限に「休業手当」の最大100%を助成(※1)
⑥会社から「休業手当」の支払いがない場合に、従業員が直接国に申請できる「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」を創設

なお、繰り返し延長・拡充されてきたこれらのコロナ禍対応制度は対象期間が現状、2021年の2月末までですが、さらに延長される可能性もあります(※2)。

※1:条件を満たした場合。また、平時の水準は、中小企業が休業手当の3分の2、大企業は2分の1などとなっています。特例措置では、中小企業は最大100%、大企業は最大4分の3となりました。

※2:「雇用調整助成金」特例措置の延長について、加藤官房長官が検討中であることを表明という報道がでています(日本経済新聞2021年1月8日)、最新情報は各々下記の厚生労働省の専用サイトをチェックしてください。

【雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)】
【新型コロナウイルス感染対応休業支援金・給付金】

保護者の有給休暇制度に対する「小学校休業等対応助成金」

ほかにも、コロナ禍で新設された休業に関する助成金として「小学校休業等対応助成金」があります。「小学校休業等対応助成金」は、労基法上の年次有給休暇(一般に有給、年休と呼ばれているもの)とは「別に」、コロナに関する子供の事情で休業する保護者のための「有給」の休暇制度を設けた企業へ助成金を出す制度です。

(なお、年次有給休暇が一般に「有給」と呼ばれることから「休暇」といえば、「有給」のイメージがありますが、「休暇」は「労働義務を免除する」という意味であり「無給」の場合もあります)

コロナに関する子供の事情とは、子供自身がコロナに感染したり、小学校がコロナ対応のために臨時休業したりする場合などです。助成金の額は、上限1万5,000円として支払った賃金の100%です。この助成金は、対象期間が2021年3月末までに延長されることが2020年12月に決定しました。詳細や最新情報は下記をご覧ください。

【小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援のための新たな助成金を創設しました】

「雇用調整助成金」を実際に利用した企業と支給金額は?

では、こうした支援制度は、どの程度利用されたのでしょうか。昨年の「雇用調整助成金」の利用状況を見てみましょう。厚生労働省の発表(2021年1月12日)によると、累計約218万件、約2兆5,324億円の支給を決定(2020年~2021年1月1日)しています。

また、東京商工リサーチの発表(2020年12月25日)によると、昨年4月~11月までの期間で雇用調整助成金を計上/申請した上場企業は599社(上場企業の15.6%)、計上額は2,414億5,420万円。そして受給額の上位は、コロナ禍で利用者が激減した交通インフラ関連や、インバウンド消失の打撃を受けた百貨店とあります。

実際、旅客運送業の動向を見ると(下図)2020年5月に活動指数が5.4まで落ち込んだ航空旅客を筆頭に鉄道、道路、水運のそれぞれで、(個別業種の生産活動をもとに計算された)活動指数が大きく落ち込んでいることがわかります。

▲出典:経済産業省・ミニ経済分析室・旅客運送業へのコロナ禍の影響とは(2020年12月23日掲載)

一方、百貨店が属する「小売業」は業態別によって影響はまちまちです。経済産業省が2020年10月に発表した、上期の業態別・商業販売額を見ると(下図)、小売業全体は前年同期比-5.3%で、百貨店が同-33.1%、コンビニエンスストアが同-4.5%でした。

しかしそれ以外の、ドラッグストア(同+9.3%)、ホームセンター(同+7.5%)、スーパー(同+3.8%)、家電量販店(同+3.5%)はいずれも前年同期比増となっています。

▲出典:経済産業省・ミニ経済分析室・2020年上期小売業販売を振り返る(2020年10月9日掲載)

つまりコロナ禍において、(従業員を休業させざるを得ず)雇用調整助成金を利用したり、売上が大きく減少している企業と、売上がむしろ増加している企業の両方が存在するということです。

「在籍型出向」の推進による雇用維持制度の検討

こうした状況を背景に、昨年の時点で大規模な在籍型出向(「雇用シェア」や「従業員シェア」などと呼ばれています)の事例も出てきました。

たとえば、ノジマは日本航空や全日本空輸グループから計300人、スーパーのロピアはワタミから400人、イオンリテールはチムニーから45人を受け入れたことが報道されています(日本経済新聞2020年12月1日)。

さらに、イオンリテールはそのうち10人を転籍させたとのことです(なお出向元に在籍しながら出向先で働く「出向」に対し、「転籍」は退職したうえで働くことを指します)。

しかし、事例のような企業間の人の移動は会社同士の連携が不可欠で、簡単ではありません。

それに対し、「雇用維持のための出向」に対する支援が産業雇用安定センターにて行われています。雇用調整の必要にせまられている企業と現状も人手が不足する企業とのマッチングを無料で支援する「雇用を守る出向支援プログラム2020」です。

▲出典:産業雇用安定センター 雇用を守る出向支援プログラム2020紹介サイト(20年9月28日公開)

そして、2020年12月に閣議決定した第3次補正予算案では、「産業雇用安定助成金(仮称)」の創設が盛り込まれました。出向先と出向元の両企業に出向初期費用の一部(10万円/1人)、さらに出向先には運営経費の最大10分の9(上限1万2,000円/日)が助成されるとのことです。

ただし、この制度は、第三次補正予算の成立、厚生労働省令の改正などが必要であり、現時点では「予定」です。現状、想定されている具体的な内容については、「産業雇用安定助成金(仮称)のリーフレット」をご覧ください。

以上、今回は、2度目の緊急事態宣言を受け、直近のコロナ禍に対する主な対応制度についてご紹介しました。コロナ禍関連の制度は繰り返し延長・拡充が行われてきていますので、最新の情報は随時、ご紹介したサイトなどをチェックいただければと思います。