「不正ロス」を削減するために抑えておきたい4つのポイント

店舗の利益を上げるためには、売上を上げる、粗利益率の高い商品を販売強化するなど収益性向上につなげる方策がある。それと並んで、欠品や(化粧品)担当者不在などで起こるチャンスロス対策、実在庫と理論在庫が合わない不明ロス対策などのロスへの対抗策がある。ここでは万引きを中心とした不明ロス対策の方法を紹介する。

正確な棚卸による「不明ロス」把握が出発点

企業、店舗問わず、どれくらい儲かっているかを把握するためには、まず、売上高から売上原価を引いて粗利益高を計算することから始まる。粗利益高を求める数式は〈粗利益高=売上高−売上原価〉である。

この数式で用いられる売上原価を求めるためには〈期首原価棚卸高+期中原価仕入高−期末原価棚卸高〉という計算が必要だ。

こうした過程の中、実地棚卸で計算した在庫(実在庫)金額と帳簿上の在庫(理論在庫)金額が合わない場合がある。店頭で売れた分、廃棄や破損などのロスを差し引いても、実在庫と理論在庫が合わない、原因不明のロス金額が「不明ロス」と呼ばれる(図表1)。

[図表1]不明ロスの定義

正確な実地棚卸で在庫金額を出さなければ「不明ロス」自体が不正確となり、適切な対策も立てられない。したがって、不明ロス対策の第一歩は正確な実地棚卸で正確な在庫金額、不明ロス金額を算出することである。

日本を含む世界24ヵ国が調査に協力した、小売業の窃盗犯罪に関する世界的な報告書である「グローバル・リテイル・セフト・バロメーター(GRTB)2014−2015版」によると、不明ロスの内訳は次のとおりである。従業員による不正39%、万引き38%、犯罪性のない管理上のミス16%、取引業者の不正7%(図表2)。

[図表2]不明ロスの発生原因割合

同報告書によると、日本の不明ロス率(売上高に占める不明ロス金額の割合)は1.35%、金額にして149億ドルに及ぶ。1ドル100円で換算すると1兆4,900億円という莫大な金額が不明ロスで失われていることになる。小売業で優良といわれる営業利益率の目安が5%といわれるので1.35%がいかに大きな数値かがわかる。

海外では不明ロス、とくに万引き対策を「ロス・プリベンション(lossprevention)」と呼び、役員レベルがトップに立って指揮を執る大手小売企業も多い。実行部隊である店舗レベルの対策も重要だが、組織を挙げトップの指示の下に体系的な対策が望まれる。

計画的な万引きには予兆させる特徴がある

不明ロスの約4割を占める万引きの被害に悩まされている店も多いだろう。万引きには個人による単独犯行と集団窃盗がある。集団窃盗には外国人が関わっている場合が多い。万引き対策のコンサルティング事業も手掛けるエイジスによると、単独犯と集団窃盗の発生件数の割合は7対3。

一度に大量に商品を盗む集団窃盗が注目されやすいが、実際は個人による犯行が多い。店舗関係者によると、常連客の中にも食品や日用品など少額の商品を万引きする人がおり、少額でも頻度高く盗難に遭うと被害は大きくなる。

万引きの動機には、衝動的に犯罪に及ぶ、いわゆる「出来心」による犯行と、集団窃盗を含む計画的な犯行がある。計画的に万引きを行おうとする人には、以下のような特徴がある。

このような人が店内にいたら要マーク。犯行に及ばないように注視する。従業員同士で要注意人物が店内にいることを共有すべきである。

ドラッグストアはセルフ販売が基本で、化粧品売場や医薬品の相談カウンター以外、補充時や質問対応時を除けば売場に人がいないことも多い。定期的な店内巡回、レジなど人がいる場所から店内を見渡し、異変がないかを注意することなども防犯には効果的である。

おもてなしの心が万引きしにくい店舗環境を作る

図表3、4はエイジスによる万引き発生への対応フローチャートである。図表からいくつかポイントを挙げてみよう。

万引き被害の大きさを認識し、企業トップが指示して責任者を決め、体系的なマニュアルを作成する。店舗ではマニュアルを着実に実行するとともに、困りごとはないか、気持ちよく買物しているかなど、常にお客に関心を払い、おもてなしの心を持つことで、万引きしにくい店舗環境が生まれる。

[図表3]万引き犯への声掛けフローチャート(資料提供:株式会社エイジス)
[図表4]防犯ゲート発報時のフローチャート(資料提供:株式会社エイジス)

令和元年はインターネット広告がテレビ広告費を抜く元年になる

電通が毎年発表している「日本の広告費」によると、インターネット広告費の増加率が非常に高くなっていて、今年中にテレビ広告費を追い抜きそうです。令和元年は、インターネット広告が主役になる元年でもあります。

テレビ、折込広告の「昭和メディア」が衰退している

電通が毎年発表している「日本の広告費」によると、昭和、平成に圧倒的な影響力を誇ったメディアである「テレビ広告費」の衰退が加速していることがわかります。2018年のテレビ広告費は1兆9,123億円。2015年から毎年減少していることがわかります。しかも、かつてはテレビ広告費といえば「地上波テレビ」の広告費のことでしたが、近年は「衛星テレビ関連」も加えた広告費で発表することで、かろうじて広告費1位をキープしています。

一方、2018年のインターネット広告費は1兆7,589円と急増しています。2015年対比で34%も成長しており、テレビ広告費に肉薄しています。「地上波テレビ広告費」だけだと、すでにインターネット広告費が、テレビ広告費を追い抜いています。令和元年(2019年)は、衛星テレビ関連を含めた「テレビ広告費」を、インターネット広告費が追い抜く元年になるのは間違いありません。

2018 年の総広告費6兆 5,300 億円のうち、「インターネット広告費」が占める割合は全体の26.9%にまで高まっています。また、インターネット広告費1兆7,589億円から「インターネット広告制作費」を除いた「インターネット広告媒体費」は1兆4,480 億円(前年比118.6%)です。

電通の調査によると、インターネット広告媒体費の広告種別の内訳は、検索連動型広告(39.4%)とディスプレイ広告(38.9%)の2種で全体の約8割を占め、その後にビデオ(動画)広告(14.0%)が続きます。取引手法別では、運用型広告が全体の約8割を占めています(下の図表)。

広告種別の定義は以下の通りです。

・ディスプレイ広告:サイトやアプリ上の広告枠に表示する画像、テキストなどの形式の広告およびタイアップ広告。
・検索連動型広告:検索サイトに入力した特定のワードに応じて、検索結果ページに掲載する広告。
・ビデオ(動画)広告:動画ファイル形式(映像・音声)の広告。
・成果報酬型広告:インターネット広告を閲覧したユーザーが、あらかじめ設定されたアクションを行った場合に、メディアや閲覧ユーザーに報酬が支払われる広告。
・その他のインターネット広告:上記以外のフォーマットのインターネット広告。メール広告、オーディオ(音声)広告など。

2018年の「インターネット広告媒体費」 1兆4,480億円をデバイス別に見ると、モバイル広告費が全体の70.3%(1兆181億円)となり、初めて1兆円を突破したことが特筆されます。つまり、インターネット広告費の主役はスマホ広告であり、PC広告ではないのです。

また、ビデオ(動画)広告が急成長しています。2018年のビデオ広告費は2,027億円。2019年には前年比130.8%の2,651億円へと拡大する見込みです。なかでもモバイルの動画広告の成長が著しく、前年比139.3%と全体の伸びをけん引すると、電通は予測しています。

昭和、平成バイヤーの常識が通用しない

一方、昭和、平成の小売業の商品部バイヤーにとって「打ち出の小槌」的な販促だった「折込チラシ広告費」は、2006 年の6,662 億円をピークに減少を続けています。リーマンショックの影響があった2009 年に6,000億円を割り込み5,444 億円、消費税増税の影響を受けた2014 年に4,920 億円に減少、そして、2017年は4,170億円、2018年は3,911億円と4,000億円を割り込みました。2006 年のピーク時を100 とした場合、2018年は58.7% となり、12年間で市場規模が42%とほぼ半減したことがわかります。

昭和、平成の商品部のバイヤーは、テレビ広告を大量投入する商品を仕入れて、チラシ販促で売上をつくることが、鉄壁の成功ストーリーでした。しかし、令和時代の小売業のバイヤーは、まったく異なる仕入れと販促を行わなければなりません。モバイル広告、SNSでの拡散情報に目を澄ましていなければ、令和時代の消費者の心に刺さる売れ筋を仕入れることができません。また、チラシ販促ではなくて、モバイル販促、SNS拡散対策が、販促の主役になります。

平成の後期に起こった「デバイス革命、SNS革命」は、つい最近の出来事です。デバイス革命をリードした「初代iPhone」が発売されたのは、平成19年(2007年)と、10年ちょっと前の出来事です。平成の中期には、スマホは存在すらしていませんでした。

また、SNS革命をリードした主要SNS(facebook、Twitter、YouTube、instagramなど)がサービスを開始したのは、平成22年(2010年)とつい最近の出来事です。変化の速度が速いですね。令和10年には、どんな未来が待っているのでしょうか?

「除菌」はもはや常識に。「スプレー」「速乾」が好調の食器用洗剤

台所用洗剤は、「洗浄力」だけではなく、近年では各社が付加価値の提案をスタートさせています。今回は当社独自に収集するPOB会員の「台所用洗剤」の購買データから、(レシート枚数 約9,000枚:調査期間2018年1月~2019年2月)トレンドについて分析します。

食品スーパーでの購入率高い理由は「ついで買い」

まずは、POB会員の「台所用洗剤」購入チャネルを調査してみました。

POB会員の購入チャネルは、「ドラッグストア」が49.4%で半数近く、「スーパー」が35.4%となります。(図表1)

参考までに、同じ洗剤カテゴリである「柔軟剤」「衣類用洗剤」の購入チャネルと比較すると「スーパー」で購入する方が比較的多く、食料品などの日々の買い物と合わせて、必要なときに“ついで買い”されるケースが多いことが言えます。(図表2)

購入者コメント(スーパーで台所洗剤を購入)からは、「チラシ掲載のヨーグルトを目当てにスーパーに行き、キュキュットが特売されていたのでついでに購入(40代男性)」や、「レジ近くで特売品として陳列されておりお得に感じて、買い物ついでに購入(40代女性)」といった声がありました。

人気トップは除菌タイプ。食洗器専用も上位に食い込む

次に「台所用洗剤」のトレンドを調査します。

POB会員の購入レシートからトレンドをみると、1位は洗浄力と除菌力、さらに香りを選ぶことができる「花王 キュキュット(19.7%)」であり、2位の「P&G除菌ジョイコンパクト(13.2%)」と、6ポイント差をつけ、購入された「台所用洗剤」のうち、2割近くのシェアを占めています。3位は「花王 キュキュットクリア除菌(10.6%)」、4位は「ライオン CHARMY Magica除菌+(プラス)(9.5%)」となりました。

他にも、7位「花王 食器洗い乾燥機専用キュキュット クエン酸効果」(3.4%)」、8位「ライオンCHARMY クリスタクリアジェル(3.3%)」、9位「レキットベンキーザー・ジャパン フィニッシュパワー&ピュア パウダー(2.4%)」といった食洗機専用洗剤が支持を集めています。今や共働き世帯は7割を超え(※1)、ライフスタイルの変化を捉えた商品がランクインしています。

「除菌」はもはや常識、多様化する悩みに対応する時代に

今までの調査結果から、「台所用洗剤」のトレンドを整理します。

まず1点目は、台所用洗剤に求める効果として「除菌」が重要な消費者ニーズになっている点です。その裏付けとして、POB会員の購入商品のうち、消費者にわかりやすく商品名に“除菌”があるものが上位を占め、5位の「P&G ジョイコンパクト」以外、全て“除菌”効果が期待できる商品でした。ノロウイルスやO-157など、ウイルスのもたらす危険な病気や感染症を予防するために、台所から「ウイルスを繁殖させない・増やさない」といった行動が消費者の中で浸透していることが伺えます。

そして2点目は、消費者の利用や悩みに合わせた商品タイプの変化や、機能が多様化しているという点です。その裏付けとして、スポンジが届かず洗えない汚れを落としたいという悩みに合わせて、商品をスプレーに変化させた6位の「花王 キュキュット CLEAR泡スプレー」が人気になっています。また、食器洗い後のぬれた食器を手早く片付けたいという悩みに合わせて“速乾”という機能を持たせた10位の「ライオン CHARMY Magica速乾+(プラス)」など、新しい提案でファンを増やしています。

この新しい提案を消費者はどう捉えているか、6位「花王 キュキュット CLEAR泡スプレー」の購入者コメントをみると、「汚れが良く落ちると書かれたPOPがあり購入。(50代女性)」や「CMで商品を見て、子どものストローマグや食器の洗いにくいところを簡単に綺麗にでき気に入った。(20代)」など、今までスポンジでは落としにくかったミゾやスキマの汚れに、スプレーをして洗い流す使用法や、商品の魅力が、POPやCMで明確に消費者に伝わり購入につながっていることがわかります。

また、「油汚れの強い鍋や、食器などの予洗いとして利用。汚れがすっきり洗い流せる。(30代女性)」料理の合間にスプレーすることで、食器洗いが楽になるといった声もありました。他にも、「購入後は、毎日欠かすことなく使用。他にはない商品なのでとても気に入っている。(20代女性)」といった声があり、消費者の利用や悩みに合わせて、商品を変化させたことが奏功していることが伺えます。

今年3月には、P&Gが「ジョイ」を1996年の発売以来、初めて洗浄成分からロゴまで全面刷新し、スポンジいらずの泡スプレータイプ「ジョイミラクル・クリーン泡スプレー」を新投入するなど、メーカーの動きが活発化しています。

まだまだ製品に工夫の余地がありそうな台所用洗剤。消費者をあっと驚かせるような商品開発に今後も期待したいと思います。

※1 厚生労働省「平成29年 国民生活基礎調査の概況」

※図表1~3:ソフトブレーン・フィールド株式会社
「マルチプルID-POS購買理由データPoint of BuyⓇ」
全国の消費者から実際に購入/利用したレシートを収集し、ブランドカテゴリや利用サービス、実際の飲食店ごとのレシートを通して集計したマルチプルリテール購買データのデータベース

出店急ブレーキのコンビニ、大量出店継続するドラッグストア

平成時代に「生活ストア」の主役として急成長を遂げた「コンビニ」と「ドラッグストア(DgS)」の成長性の明暗が分かれてきました。コンビニの店舗増加数(純増数)が急減速し、一方、DgSの大量出店は来期以降も継続しています。DgSがコンビニを追い抜く日が来るのでしょうか?(写真はイメージです)

主要コンビニの純増店舗数が40店に大幅減少

上記の図表は、主要コンビニ4社の「出退店」の推移を整理したものです。今年の決算(2018年度)では、主要4社の年間出店数は4,026店、閉店数が3,610店、純増店舗数は416店でした。2016年度からの純増店舗数を見ると、2016年度1,600店、2017年度800店、2018年度400店と、明らかに年々コンビニの純増店舗数が減少していることがわかります。

コンビニの出店数の急ブレーキは、来期(2019年度)はさらに顕著になります。セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンの大手3社は、過去3年間、1,000店以上の新規出店を続けてきましたが、来期(2019年度)は、3社すべてが年間出店数を1,000店以下に抑え、不採算店の立地移転や閉店を進める計画を発表しています。

その結果、来期の主要4社の新規出店計画は2,090店、閉店計画2,050店、純増店舗数40店と、店舗増加率が一気にスローダウンすることがわかります。セブン-イレブンは今期(2018年度)の純増店舗数が616店に対して、来期(2019年度)は100店と大きく減少しています。ローソンに至っては、2019年度の純増店舗数はゼロを計画しています。

人手不足、パートタイマーの人件費の高騰、24時間営業などが社会問題化しているコンビニは、FC(フランチャイズチェーン)契約によるチェーン展開が特徴です。FC店は、店長=オーナーであり、社員ではないのでオーナーに残業代を支払う必要がない、弁当の廃棄ロス費用はオーナーが負担するなど、「FCオーナー残酷物語」などと揶揄されることもあり、FC制度の問題点は以前から指摘されていました。

出店に関しても、FC本部側は、自社競合しながら、密度濃くドミナント出店した方が売上が増えて儲かるので、積極的に「カニバリ出店」します。一方、FCオーナー側からすれば、同じチェーンの競合が近くに開店すると、自店の売上が減ってしまいますので、近くに店を出してほしくはないわけです。

また、問題になっている24時間営業に関しても、本部は営業時間を短縮すると売上が減るので、営業時間短縮には絶対に反対します。しかし、FCオーナー側は賃金の上昇に耐えられないので、客の少ない深夜には営業したくないと考えます。こうした、FC本部とFCオーナーの利害の対立や矛盾が、一気に表面化した結果の急減速かもしれませんね。

大量出店を継続するドラッグストア

一方、DgSは、来期以降も出店意欲が非常に高いです。最大手のウエルシアHDは、DgS123店の開店を計画。さらに改装250店舗。化粧品専門店の「ナルシス」のような新業態も積極的に出店していく計画です。

まだ発表されていませんが、ツルハHD、コスモス薬品などの大手も、年間100店以上の新規出店を継続するはずです。また、この数年、新規出店数がやや少なかったスギ薬局も、来期は110店の大量出店を計画し、巻き返しを図ろうとしています。

コンビニよりも対象商圏人口が多いとはいえ、DgSは、「狭小商圏業態」です。地域によっては1店当たりの商圏人口が1万人を切っており、5,000人以下の商圏で成立しているDgSもあります。

1店当たりの商圏人口が少ないということは、日本全国に大量の店舗を展開できるということです。このままの出店ペースが続けば、全国どこに行っても存在する、もっとも身近な「生活ストア」としての地位を確固たるものにするでしょう。今年から来年にかけては、コンビニが減り、DgSが急増する光景を見ることになります。

低経費&絞り込み&激安に割り切った小型業態「トライアルBOX」に注目

スーパーセンターなどの大型店のイメージが強い「トライアルカンパニー」が最近展開を始めた「トライアルBOX」が話題になっています。開店セール時に目撃した水戸南店(茨城県)は、店内を歩けないほどの混雑ぶりでした。トライアルBOXとはどんな業態なのか? 解説してみます。

トライアルBOX。徹底して絞り込んだ300坪型。24時間営業。

小型店の出店を増やしているトライアルカンパニー

トライアルといえば、売場面積2,000坪を超える「スーパーセンター」の印象が強い企業です。また、デジタルサイネージ、店内にスマートカメラを何百台も設置、顧客が自分で商品をスキャンしながら清算する「ウォークスルー方式」のレジ革命などの、最先端の「スマートストア」への挑戦でも注目されている企業です。

ところが近年は、300坪程度の小型店の出店も強化しています。トライアルのドラッグストア業態である「トライウェル」。さらに2018年12月に開店した、有人レジゼロの小型スーパー「トライアルクイック」、1号店は福岡県の大野城市に開店しました(詳細は月刊MD6月号で紹介)。

そして、今回紹介するのが、徹底した商品の絞り込みとローコストオペレーションを追求した「トライアルBOX」です。最近、新規出店を開始しており、関東だけでも「水戸南店」「ひたちなか店」「成田店」の3店を開店しています。

「BOXストア」とは、商品を少しでも安く売るために店づくり(居抜き出店)と店内作業の経費を掛けないことが最大の特徴です。そのために、商品を絞り込み、「ボウル(小箱)」や「ケース(箱)」「パレット」などの大きな単位で商品を運び、陳列することで店内作業を軽減しています。アメリカの「アルディ」などのハードディスカウンター(=BOXストア)は、店内にはゴンドラ(棚)もほとんどなく、平台と倉庫型のラック式の棚と、冷蔵・冷凍庫などで店舗がつくられています。日本では、1970年代にダイエーの子会社として店舗展開を始めた「Big-A(ビッグ・エー)」が、関東で約200店の店舗網を築いています。

アルディは、パレット、ケース、ボウルが補充・発注・物流の単位。パンも補充ケースのまま陳列している。

トライアルBOXも同様に、商品を絞り込んでいます。ゴンドラはありますが、最下部に車輪が付いた棚を多用しています。「移動式棚1台で1品目」の売場も多く、店内作業の軽減化に取り組んでいます。また、従来の店舗よりも平台の割合が高く、単品の陳列面積が広いことが特徴です。弁当、総菜、精肉も取り扱っていますが、インストア加工よりもアウトパック加工が主体だと思われます。売場面積は300坪程度と、トライアルのスーパーセンターと比較すると小型店です。

トライアルBOXは、物流や店内作業などの経費率を下げることで、粗利益率を低く設定し、地域一番の低価格を実現しています。たとえば、「カープラーメン一律59円」「豚小間切れ肉100g89円」「たまご10個99円」「もやし10円」「ハムカツ2枚95円」などと、驚くべき低価格を実現していました。見学した水戸南店も、安さ目当ての顧客で大繁盛していました。最近は、「価格より品質が重要」という識者が多いですが、「買物のリアルな現場」は、やはり「安さ」が一番であることがわかります。

売場面積の広いカテゴリーは、「冷凍食品」「ペット用品」「キッチン雑貨」「カー用品」でした。買上率の高い必需品を主力にしていることがわかります。

トライアルBOXの本家米国「アルディ」の特徴

トライアルがベンチマークしていると思われるアメリカのハードディスカウンター(=BOXストア)「アルディ」の業態としての特徴を以下に解説します。

「Business Insider」によれば、アメリカ小売業は、2017年に約5,000店も閉店しました。2018年は、2017年を上回る店舗が閉店しました。さらに、2019年には3月時点で、すでに4,300店舗の閉店が発表されています。閉店店舗の多くは、大型SC(ショッピングセンター)テナントとして出店している店舗です。

その一方で、店舗数を大きく増やす小売業も存在します。小型のハードディスカウンターを展開する「アルディ(Aldi)」も、2019年に大量出店を計画しています。

アルディはドイツ出身の企業で、ハードディスカウンターと呼ばれる業態を世界中に展開するグローバルリテーラーです。ハードディスカウンターとは、ウォルマートスーパーセンターなどの大型ディスカウント店のさらに下をくぐる価格帯で食品、グロサリーを提供する小型業態です。米国アルディは、西海岸の有力SMの「トレーダージョーズ」を買収し、2017年度は売上2兆5367億円、対前年比9.6%、店舗数は2084店、対前年比7.0%、全米で18位の企業規模に躍進しています。日本でも有名な「トレーダージョーズ」と「アルディ」は同じ業態なのです。

アルディの冷ケースの陳列。PDQと呼ばれるメーカーの出荷段階からセットされたケース単位で陳列している。しかも後方から補充ができる。ローコストオペレーション。

アルディの特徴は、「300坪程度の小型店舗」「品目数が少ない」「SCに入居しない単独(居抜き)出店」で初期投資を低くしています。また、絞り込み、単品大量販売(単品の陳列面積大)、インストア加工ゼロによって、従来のSM(スーパーマーケット)よりも圧倒的なローコストオペレーションを実現しています。

また、完全なEDLP業態(価格販促がゼロ)なので、売れ方の波動が少なく、旧来の「ハイ&ロー業態」よりも、作業人時のかからないオペレーションです。下記の図表で整理したアルディの業態コンセプトは、商品を徹底して絞り込み、単品大量販売を実現することです。また、取扱商品の80%がPBであることも、アルディなどのハードディスカウンターの業態としての特徴です。

リアル店舗の閉店が続くアメリカで、店舗数を大幅に増やしているハードディスカウンター(=BOXストア)は、アマゾンとも差別化できる令和時代の成長する乗り物(=業態)と、トライアルは考えているのかもしれませんね。

バブル崩壊から始まった「平成」小売業の30年間を振り返る

平成の30年間は、小売・流通業にとっては大きな変動の時代でした。小売業の主役が交代し、IT革命が起きた時代でした。令和元年を迎えるにあたって、平成小売業の栄枯盛衰の総括をしてみましょう。

平成初期の大型投資はすべて失敗に終わった

ついに令和元年が始まりました。令和時代の小売・流通業は、どんな変化を遂げるのでしょうか? 小売・流通業は、「変化対応業」です。変化の第一は「消費者」の購買行動の変化です。変化の第二は、競合状況や法律改正などの「競争環境」の変化です。

平成の30年間を振り返っても、「消費者」と「競争環境」という2つの変化に対応できず、衰退していった業態や企業はたくさんあります。一方、平成時代に飛躍を遂げた小売業もあります。

平成は「バブル経済」の絶頂期からスタートしました。平成元年(1989年)の4月30日に誕生した「マイカル本牧(現・イオン本牧)」は、まさにバブル時代を象徴する大型ショッピングセンター(SC)でした。総投資額400億円、初年度年商目標320億円。投資回収期間100年といわれた無謀な投資でした。

関西のスーパーマーケット(SM)だったニチイは、マイカル本牧開店の前年に「マイカル宣言」を行い、社名・店名もニチイからマイカルに変更し、「質販店」なる疑似デパートへの投資に大きく舵を切りました。

マイカルのような戦後成長した小売業の経営は、「土地本位制」が基本でした。土地は上昇し続けるものという「土地神話」によって、ダイエーやマイカルなどの大手小売業は土地を購入し、それを担保に借入を行い、巨大な投資を行いました。

マイカル本牧が開店する5年前の昭和59年(1984年)にはダイエーが「プランタン銀座」(現在は閉店)を開店しました。これもまた土地本位制に基づいた投資回収期間100年という無謀なプロジェクトでした。

また、長崎屋(現・ドン・キホーテ)は平成4年(1992年)、北海道の苫小牧に全天候型の遊園地併設型のSCを開店しました(平成9年閉店)。開店披露の記者会見で、SMの隣の遊園地の中をジェットコースターが走っているのを目撃して、「大根を買ったついでにジェットコースターに乗る客がいるのだろうか」と呆然としたことを、今でも鮮明に覚えています。

その後、バブルの終焉に合わせるように、ダイエー、マイカル、長崎屋は経営破綻しました。まさに平成の小売業界は、バブル崩壊から始まったわけです。

ROA主義のDgSは平成に急成長した

バブル崩壊によって、小売業の経営は、「売上至上主義」から「ROA(総資産回転率×経常利益率)主義」に大きく転換していきました。平成の始まりの頃に勃興期が始まったドラッグストア(DgS)は、売上や市場が右肩上がりではなくなった時代に大量出店をスタートしており、投資回収の速さを重視した経営を行いました。企業の収益性をもっとも効果的に示す経営指標であるROAが、他の業態と比較して高いことが、平成時代に成長したDgSの経営の特徴です(図表1参照)。ROAの目安は10%以上であり、上場DgS14社中、9社が10%を超えています。

一方、バブル時代に驚くべき成長を遂げた代表企業が「ユニクロ」です。ユニクロは、バブル崩壊後の平成9年(1997年)頃からPB(プライベートブランド)の売上比率を一挙に高め、製造直売小売業(SPA)に業態転換したことで、大きく飛躍しました。月刊MD創刊(平成9年)の翌年の平成10年に発売された「フリース」は、衣料は2~3万枚も売れればヒットといわれた時代に、200万枚も販売しました。翌年は800万枚のメガヒットを記録し、日本中がフリースブームに沸いたのを今でも覚えています。低価格&高品質のユニクロの快進撃は、バブル崩壊、デフレ時代の申し子であったと思います。

バブル崩壊後に急成長した、ユニクロ、ニトリのような専門業態、コンビニ、DgSのような小商圏業態は、GMSといわれた「総合スーパー」の売上を、薄皮を剥がすように奪っていきました。そして、昭和時代の小売業の王様「総合スーパー」は衰退し、平成時代は小売業の主役が明確に交代した時代でもありました。

デバイス革命、SNS革命、IT化が進んだ平成後期

そして、平成の後半に起きた大きな変化は、「デバイス革命」「SNS革命」です。スマホで簡単に商品を購入できるようになり、消費者の購買行動は激変し、アマゾンなどの「オンライン小売業」が急成長しました。

この変化は、驚くほど急激でした。デバイス革命を牽引した初代「iPhone」が登場したのは平成19年(2007年)と、わずか10年ちょっと前の出来事です。また、SNS革命を牽引したfacebook、twitter、Youtube、Gmail、Instagramなどのサービスは、平成22年(2010年)から急速に普及したものであり、平成時代の前半には存在すらしていませんでした。そう考えると、平成時代の小売・流通業は、驚くべきスピードで変化していったことがわかります。

いよいよ新しい令和時代が始まります。小売業の主役が交代した平成時代と同様に、令和時代も主役交代、新業態の台頭が起こるのでしょぅか? 現在、平成時代の申し子であるコンビニの出店が急減速し、DgSの収益性にも陰りが出始めています。

いずれにしても、過去の成功体験にとらわれず、「消費者の購買行動の変化」「競争環境の変化」の2つの変化に素直に対応することだけが、令和時代の活路を拓く原理原則であるとおもいます。

[美白ケアの売り方]最大の山となる3月から7月、売場展開の継続でリピーターを獲得

季節商品は「シーズンファーストバイ(=季節商品の初回購入)」の獲得が命!定番商品でもニーズの高まりに合わせて在庫を厚くするべき時期があります。カテゴリーごとに、商品の仕掛け時期やピークを把握して、タイムリーな売場づくりに役立てましょう。

[美白スキンケア 季節指数] ※インテージSRI /カテゴリー:美白スキンケア市場/期間:2014年1月〜2018年12月/指標:販売金額ベースの季節指数(5ヵ年)/グラフの縦軸:5ヵ年の月別販売金額の平均を1とする

[概況]3,000億円の成長市場、スキンケアの構成比が8割

美白ケア市場は、2018年度で約3,000億円まで拡大する見込みで、10年前の2008年と比較すると、伸長率が約120%で非常に伸びているカテゴリーだ。そして、市場のうちスキンケアが80%、ベースメイクが15%、その他ボディケアが5%と、スキンケアがその多くを占めている。金額にするとスキンケアが2,500億円を占める見込みで、前年比106%で推移している。

スキンケアのうち構成比が高いのが美容液(3割)と化粧水(2割)で、2アイテムで半分以上を占めている。昨年度は、ONE BY KOSEシリーズから「メラノショットホワイト」の発売、資生堂「HAKU」のリニューアルなどカウンセリング化粧品で大きな動きがあり、美白美容液が好調だった。

市場拡大の背景にあるのは、2000年代から続く白肌ブームだ。スマートフォンなどでは美白補正アプリが人気となっているほか、肌のトーンをアップさせるクリームや、美白成分の入ったシートマスクなどの国内外のコスメも流行しており、美容業界の流れは引き続き美白傾向にある。

さらに、紫外線による皮膚がんを予防する意識が高まっていることも市場を後押ししており、今後も成長が見込まれる。

2019年は、先述の「HAKU」から高機能美白ファンデーションが発売されるほか、ロート製薬「Obagi」からは最高濃度のビタミンCを配合した美容液「Obagi C25セラム NEO」が発売される予定だ。安全・安心を確保したうえで、より高機能なアイテムが求められているといえる。

[ポイント]3月と7月に売上の山。購入から1年は継続使用の傾向

美白ケアカテゴリーは、大きく分けて年間に2回、売上のピークがある。最大のピークは、紫外線が増え始めてくる3月ころ、第二のピークは紫外線量が最大になる5月から7月だ。美白化粧品を購入するお客の特徴として、一度購入した商品を1年間は使い続ける傾向がある。お客も使ってすぐにシミ、そばかすが薄くなったり、消えたりするとは考えておらず、継続使用によって効果が生まれることを理解している。そのため、第二の山である5月から7月はリピート購入が期待できる。

第一の山に向けて2月に準備をした後に7月まで継続して販売を強化する形が、購買チャンスを逃さず、リピーターを確実に獲得するためにもっとも有効で理想的だ。そのほかにも、7月、12月のボーナス景気で売上の山が生まれる。

メーカー側も、増量キャンペーンや、「●本買ったら1本無料プレゼント」などの購入特典を用意することが多い。販売店でもPOPを活用するなど積極的に情報発信を行い、製販協働で売上アップに生かしたい。

あるメーカーが行った一般消費者調査によると、シミ、そばかす、くすみは、20代から50代の幅広い年代の悩みで、とくに40代前半から50代前半の肌悩みのトップにシミ、そばかすが挙げられている。ひとくちに美白といっても、世代によって肌悩みは異なる。20~30代はシミやそばかすをつくりたくないと予防する人が多く、40~50代はできてしまったシミをなくしたい人が多い。出産を機に、女性ホルモンが関係しているといわれるシミの一種、肝かんぱん斑が出てきて、慌てて美白ケアを始めるケースもある。それぞれの美白ニーズを把握したうえで、売場での訴求を行いたい。

〈 関連商品 〉
メラノショットホワイト
(販売名 OBK 薬用美白美容液 40mℓ)
医薬部外品

[売場提案]メカニズムをわかりやすく解説、情報ツールの活用が肝

売り方に関しては、商品のキャッチコピーだけでなく、この商品を使うとどういうメリットがあるのかをわかりやすく伝えることが、購買につなげるポイントとなる。

シミ、そばかすに対して深い悩みがあるユーザーは、インターネットなどで事前に情報を仕入れている場合も多い。各社の多様な成分やメカニズムを説明するPOPなど宣伝ツールを有効に活用することで、お客の納得度を上げ、選びやすさをサポートしよう。エンド陳列などでお客の目の届くところに配置することも大切だ。

2019年は、3月に資生堂「HAKU」から「薬用 美白美容液ファンデ」が発売されたほか、5月にポーラから新規美白有効成分を使った新商品の発売が発表されている。発売時期には品出しの遅れがないよう、売場をつくり込みたい。

美白ケアのプロモーション売場例

[敏感肌関連商材の売り方]冬の乾燥や、春先の花粉でお肌は敏感状態。冬の仕掛けは9月スタート

季節商品は「シーズンファーストバイ(=季節商品の初回購入)」の獲得が命!定番商品でもニーズの高まりに合わせて在庫を厚くするべき時期があります。カテゴリーごとに、商品の仕掛け時期やピークを把握して、タイムリーな売場づくりに役立てましょう。

インテージSRIカテゴリー:敏感肌基礎化粧品市場/期間:2015年1月〜2017年12月/指標:販売金額ベース季節指数(3ヵ年)/グラフの縦軸:3ヵ年の月別販売金額の平均を1とする

[概況]市場規模は900億円に ボディ・ヘアケア商品も増

現在、敏感肌市場は約900億円といわれるほどにまで拡大。ヘアケアやボディケア用商品も増加傾向にあるが、敏感肌市場でもっとも大きな構成比を占めるのがスキンケアだ。

敏感肌は、肌のバリア機能が低下した状態を指す。エアコンや紫外線などの外的要因で起こる「乾燥性敏感肌」、生活習慣の乱れや腸内環境悪化など内的要因によって起こる「ライフスタイル敏感肌」、季節の変わり目など一時的にニキビや吹き出物が出る「敏感ニキビ」といった、さまざまな原因とタイプがある。最近では、春先の花粉も肌荒れの一因となることから、花粉による肌の不調対策を訴求する商品も出ている。

敏感肌を自覚する女性は2人に1人ともいわれており、年代を問わないニーズの高まりに応える形で敏感肌をターゲットにしたブランドや新商品も次々に登場し、多様性が生まれている。

市場の拡大とともに、「敏感肌+α」の機能性(ニキビケア、エイジングケア)を持つアイテムやラインが増え、これまで敏感肌用スキンケアを使っていなかった生活者にも、安心できる高機能なスキンケアとして浸透していった形だ。

[ポイント]9月中旬に、冬場の仕掛けを。花粉関連の肌荒れ対策は1月下旬

敏感肌用スキンケアは、そこまで大きな季節変動は見られないが、多くの女性が敏感肌を感じるのは、季節の変わり目といわれる。売上が伸び始める時期は、大きく分けて2つ。

ひとつ目は、冬から春にかけての時期だ。夏が終わり、気温が下がり、空気の乾燥が進んでいく10月ころから需要が増え、12月にピークを迎えているのがわかる。

とくに、東京をはじめとする大都市圏の年間平均湿度は低下傾向にある。寒い冬には欠かせない暖房の使用も、肌の水分が奪われる要因のひとつとなる。乾燥が原因となる冬場の敏感肌への仕掛けは9月中旬を目安に行いたい。

その次のピークとなるのが3月から5月にかけての時期だ。冬の入りとは逆に、急激な気温の上昇や紫外線への対応に肌の代謝が追い付かず、バランスを崩すケースが多く見られる。そこに花粉をはじめ偏西風に乗った黄砂、PM2.5などアレルギーを引き起こす原因物質が飛来することで、肌荒れを起こす人も多く、敏感肌用スキンケアの売上も伸長傾向にある。

春先の揺らぎやすい敏感肌を自覚する生活者に向けては、1月下旬までには売場を整えよう。切り替えやすいクレンジングや洗顔料、ふだんのお手入れにプラスするだけの美容液などを入り口に、トライアルを訴求したい。

一方で、日本製の「安全・安心」を体現する最たる商品群でもあるため、インバウンド需要も比較的大きい。最近は、インバウンドでもスキンケアアイテムのニーズが高いという。2月の春節や4月のお花見シーズンなど、アジア圏の訪日外国人の集客が見込まれる。とくに都市圏のドラッグストアでは、在庫を厚くして臨みたい。

〈 関連商品 〉

アルージェ トラベルリペア リキッド

[売場提案]定番に「敏感肌」コーナー展開 花粉時期には重点的に仕掛けを

第一に、化粧品の定番売場内での、敏感肌ブランドを集めたコーナーづくりはマスト。そのうえで、肌が不調を感じやすい時期やタイミングに合わせて、医薬品やサプリメント売場、ボディケア売場などと連携し、適宜「敏感肌」訴求を試みたい。

春先は花粉のほかにも、日照時間が長くなり、日差しも強くなる季節。UVケアのニーズが高まるが、揺らぎやすい肌にとってはUV剤そのものが刺激になることもある。安全・安心素材の敏感肌用のUVケアや、角層の状態を整え、健康な肌に導くスキンケアの重要性を、改めて情報発信するのもよい。

パーソナルなタイミングとしては、肌が荒れやすい生理時期、肌質が変わる産前産後の女性に向けたトライアル訴求も有効だ。生理用品売場や肌荒れ対策ドリンク剤、自然派洗剤とのクロスマーチャンダイジングもよい。

[花粉症対策売場での展開例]
※トライアルセット、プラスワン商品などを展開

[デオドラント用品の売り方]シート好調で7月に最大、剤型別にピークの山あり

季節商品は「シーズンファーストバイ(=季節商品の初回購入)」の獲得が命!定番商品でもニーズの高まりに合わせて在庫を厚くするべき時期があります。カテゴリーごとに、商品の仕掛け時期やピークを把握して、タイムリーな売場づくりに役立てましょう。

[制汗剤市場 季節指数・販売構成比推移]

[概況]市場規模417億円。男女ともにシートが好調

2018年1~9月のデオドラント市場は約420億円。そのうち女性の市場は約290億円、男性の市場は約125億円だ。同時期での女性の市場は前年比約4%アップ、男性の市場は前年比約10%アップしている。同カテゴリーの剤型には、シート、スティック、ロールオン、パウダースプレー、クリーム、ミスト、ウォーターがあり、温度の変化や季節の流れの中で、お客の意識や購入の流れが変わってくる。

剤型別の利用目的は、スティックが汗も臭いもケアしたい人、ロールオンは汗と汗じみを抑えたいニーズに応えている。スプレーは制汗・消臭、シートがリフレッシュの目的で購入される傾向がある。

男女別で見ると、女性向け市場では、一時シュリンクしていたスプレーが伸長。ロールオンはやや縮小気味でシートの売上が拡大。特筆すべきは男性向け市場で、市場自体が圧倒的に伸びている。

男性は女性に比べるとトレンドがワンテンポ遅く、平均的に30代からビジネスシーンで使い始める向きが強い。使用するきっかけは、加齢に伴う体臭ケアだ。そのため、メーカー各社が20代から30代に向けてのプロモーションを行っている。男性の場合、ロールオンも好調だが、売上構成比でもっとも大きく占めるのはシートとなっている。

また、カテゴリー拡大の施策としては、未使用者を取り込む「ストレス臭」ケアなどの新しい価値観や、フットクリームなどアドオンにつながるケア部位の提案が見られる。

[売り方のポイント]2、3月が立ち上げ期 剤形の山に合わせ強弱を

デオドラント市場の売上の山は剤型ごとに異なり、気温の上昇とともに変動していく。日焼け止めが日差しの強さを感じる季節に売上を伸ばすのに対し、制汗剤は湿度を感じる時期に強く反応するのも特徴だ。

とはいえ、販売構成比の高いシートの売上によって制汗剤カテゴリー全体のピークは7月にある。例年、梅雨明け直後の海の日付近に大きな山を迎えることが多いが、スプレーは年間を通して安定的に売れており、ロールオン、スティックに関しては冬から春にかけて売れる傾向にある。

それを踏まえて、2、3月を立ち上げ期、4、5月を拡大期、6~8月を最盛期として展開を図りたい。1、2月はまだ冬期で寒いが、気温が高くなる前に売場を立ち上げれば機会損失にはならない。シートの売上が伸びる4月・5月の連休も狙い目だ。

ロールオンやシートは汗に対して比較的軽い悩みのお客向け。匂い意識が高い人には、スプレーを勧めたい。打ち出しの時期は2月後半からが適している。

〈 関連商品 〉

エージーデオ24
パウダースプレー(無香性)180g(医薬部外品)
※ストレス臭に着目した新製品

[売場提案]ライトユーザーや未使用者に目立つ場所で山積み

汗じみや匂いに悩み、積極的に制汗剤で対策をしたいお客は、男女それぞれの定番売場に向かうため、悩み別の訴求や情報発信、テスターなど、売場のつくり込みが必要となる。

一方、プロモーション売場では、悩みが浅いライトユーザーや、デオドラント未使用者にどれだけ訴求できるか、気付きを与えられるかが、売場づくりにおける大事なポイントになる。

気温が上昇し、お客が汗を気にするようになってくるタイミングで、店頭やレジ横など、目立つところに制汗シートを山積みすることで、ついで買いにつながる可能性も高い。新規ユーザー獲得には、新しい価値観を提供する商品の陳列も効果的だ。ニュースやSNSなどでも話題となり、注目度の高い「ストレス臭」を防ぐケア商品も発売されている。季節を問わず、使用部位も脇だけに限らないため、使用量も増え商品の回転率も高まる。いままでニオイ対策を何もしていなかった男性のトライアルも期待できるだろう。

新規獲得のためのプロモーション展開例

男性も3割近くが気にしている紫外線対策、購入の決め手は?

4月18日は、「よ(4)い(1)おは(8)だ」(よいお肌)と読む語呂合わせから、よいお肌の日と制定されています(株式会社明治制定)。今回は紫外線(UV)対策や、日焼け止めの買い方について、調査をします。

女性は約半数が通年で対策

まず、当社自主調査で、20代~60代の男女(N=3,867名)に、紫外線(UV)対策をしている時期について分析します。

紫外線(UV)対策をしている時期を男女別でみると、女性では「一年を通して」が46.8%、「紫外線が気になる季節」が38.0%となりました。また、男性では「紫外線が気になる季節」が18.3%、「一年を通して」の7.2%と合わせると、3割近くの男性が紫外線(UV)対策をしていることがわかります。

次からは、紫外線(UV)対策をしている回答した方(N=2,298名男女)を対象に、調査をします。

まず、紫外線(UV)対策をする理由は、「しみ・そばかす予防」が82.8%でもっとも多く、「しわ・たるみの予防」の37.5%、「白い肌を保つため」の31.9%を大きく引き離す結果となります。

女性のみ年代別で理由をみると、(図表2-2)全年代で「しみ・そばかす予防」が最多となり8割を超えます。

年代によって変化する紫外線対策のニーズ

年代別での特徴は、20代~30代の若い女性は「白い肌を保つため」が次に挙げられ、20代が69.9%、30代が46.9%となります。また、40代以上になると、「しわ・たるみの予防」が次に挙げられ、4割を超えています。また、年代が上がるにつれて、「皮膚がんの予防」や「眼の病気の予防」など、病気のリスクを避けるために紫外線対策を行う方が増えていることがわかります。

次に、紫外線(UV)対策に効果的な「日焼け止め」について、購入したことがある商品タイプや、購入時に重視するポイントなどを調査します。

紫外線(UV)対策をしている方の「日焼け止め」の購入経験は、女性ではほとんどの方の購入経験があり、男性でも8割近くの方の購入経験がありました。商品タイプは、「乳液」や「クリーム」が6割を超え、「スプレー」が32.9%、「ジェル」が31.2%と続きます。

重視ポイントは「SPF」「塗り心地」「べたつかなさ」

次に、「日焼け止め」を購入する際に、重視するポイントを調査します。

日焼け止めを購入する際に重視するポイントは、「SPF値が高い」が66.0%でもっとも多く、「塗り心地」が44.8%、「べたつかない」が43.1%と続きます。中でも、「塗り心地(男女差24.9pt)」や「肌への刺激が少ない(21.0pt)」「白くならない(20.2pt)」といった項目は、男女差が20pt以上となり、男性よりも女性のほうが重視する傾向が高いようです。

また、「店頭でのPOP」については、女性が8.6%に対し、男性が13.1%となり、女性よりも男性のほうが、POPなどの販促物が、購入の後押しとなっているようです。

日焼け止めの購入チャネルは、8割近くの方が「ドラッグストア」で購入しています。

一方で、店頭以外の「ネットショップ」が8.7%となり、「スーパー」の5.8%よりも多い結果となりました。

販売チャネルとしては、圧倒的に多くの方がドラッグストアで購入していますが、近年では、従来の「日焼け止め」以外にも、「飲む日焼け止め」が大手ドラッグストアやネットショップを中心に販売されています。まだ高額であり、商品の認知度も低く、購入経験がある商品タイプにはランクインしていませんが(図表4)、「日焼け止め」の購入経験がある方の3割近くの方が「機会があれば使ってみたい」と回答しています。

今回の調査では男性の3割が紫外線(UV)対策を行っており、女性よりも男性のほうが「日焼け止め」購入時に販促物が購入の後押しとなる傾向がわかりました。男性向けのスキンケア商品も増えていることから、「日焼け止め」についても今後、男性をターゲットとした商品開発や販促活動が、需要の拡大につながることが予想されます。

調査概要
※図表1~6:ソフトブレーン・フィールド株式会社「マルチプルID-POS購買理由データPoint of BuyⓇ」
20代~60代のアンケートモニター3,867名を対象にした、紫外線(UV)対策のアンケートより(WEB調査、調査期間:2019年2月21日~2月25日)