「インスタント・シニア」体験から考える、高齢者にやさしいDgSとは?

超高齢化を迎える社会でのロイヤルティ向上は小売業にとって大きな課題だ。神奈川県を中心に店舗を展開するカメガヤは、ドラッグストア(DgS)企業では初となる高齢社会への取組みとして自店舗内での「インスタント・シニア研修」を企画した。Fit Care DEPOT北山田店で行われた高齢者疑似体験研修のレポートを紹介し、リアルなシニア体験から店と売場を見直し、よりよい環境へアップデートするためのヒントを探る。(月刊マーチャンダイジング 2019年4月号より転載)

高齢者の擬似体験で課題を洗い出す

「インスタント・シニア」とは、一般社団法人ウエルエージング協会(WAJ)が1992年にカナダ・オンタリオ州政府と独占契約を結び、日本へと持ち込んだ高齢者体験プログラムで、その名のとおり、健康体の若い人間でも即席で高齢者の疑似体験ができるというもの。

高齢者の視点から社会を観察することで、さまざまな問題を発見し、他者をおもいやる心で解決策を考え、実行していくことがこのプログラムの目的だ。これまでに成田国際空港の施設づくりや、都内を走るノンステップバスの誕生などに貢献してきた経緯がある。

今回レポートする研修は、WAJの加藤夕紀子、青木一由両インストラクター立ち合いの下、Fit Care DEPOT北山田店と最寄り駅(横浜市営地下鉄グリーンライン北山田駅)を徒歩で往復。店内で買物を行うというものである。

研修の所要時間は約2時間半。疑似体験前には研修の目的を理解するためのオリエンテーションを行った。器具装着前には参加者全員で体験コースを歩き、「横断歩道の見え方」「中分類サインは見やすいか」「チェッカーの声は聞きやすいか」など、体験時のチェック項目を確認する。疑似体験後には、チェック用紙やアンケートなどに記入した内容をもとに、参加者によるディスカッションも行われた。インスタント・シニア研修の肝は、疑似体験から生まれた実感を共有し、生かすことにこそある。

【インスタント・シニア装着具】
①利き足用サポーター、②両腕関節サポーター、③左右違った足首おもり、④利き手首おもり、⑤白内障用ゴーグル、⑥つえ、⑦ゼッケン。このほかに、耳栓とゴム手袋を加えて全9点を装着する
店内での疑似体験。いつもはなんの苦もなくできる買物が、大変困難に感じられる

シニア体験によって得られた気づき

ここでは、インスタント・シニア研修後のディスカッションで出された参加者の意見を紹介する。今後増えていく高齢者にとって買物をしやすい店舗とは、どのような店舗なのか。よりよい環境をつくっていくためには、どのような施策や方法があるのか。考えるヒントとして活用していただきたい。

足元が見えづらくつまづきやすい「出入口」

□出口と入り口が2ヵ所あり、帰る際に慣れないと入り口に向かってしまう
足元が見えづらいため、マットとの段差につまずいた

どこに何があるのかわかりにくい「売場」

DgSは食品スーパーに比べて取り扱うカテゴリーや商品数が多く、どこに何があるのか店や企業ごとに異なるため、わかりづらい
□店内に入った瞬間、狭い視界では処理しきれない情報が入ってきて混乱した
□常温のペットボトルを探していたが、冷蔵ケースとは離れた場所にあって、せっかく探しにきたのにと心が折れそうになった
棚最上段、上段の商品が取りにくく、商品を落としそうになった
棚の下段が目に入りにくいうえ、しゃがんで取る動作がきつい
つえを持った状態で、かごを持つと両手がふさがるため、商品を取るときに一度床にかごを置かなければならず不便だった
□遠くからカテゴリーサインを確認して目的の棚付近までたどり着けるが、実際に陳列線の中に入り込んでしまうと、視野が限定的で周囲にどんな商品があるのか見渡すことができず、把握しづらい
□視界が狭まり自分の体まわりが死角になって、ほかのお客や品出しのための段ボールにぶつかりそうになった
店舗内の配置物が障害物に感じられ、危険を感じた
□エンド横に陳列された商品にぶつかりそうになった
普段は楽しめる買物が苦痛だった

つえとかごで両手がふさがれるため、商品を取るときには、つえかかごのどちらかを下に置く必要があるうえ、しゃがむ動作がきつい

文字が小さく読みづらい「サイン・POP」

□プライスカードの価格は見えるが、商品名が小さく見づらい(商品パッケージ裏に表記されている食品表示なども小さすぎて見えない)
□「赤」と「黄」の色の組合せが見づらい
□通常時より、全体的に色の印象が弱く、不鮮明に見えて驚いた
□「白」と「黒」の組合せはコントラストが強く、わかりやすい

小銭を取り出すのにもたついてしまう「㆑ジ」

ディスプレーに表示される合計金額が見にくい
□つえやバッグを置く場所がなく、財布を取り出すときに手間取った
財布から小銭が取り出しにくく、もたついた
□サッキング後の買物商品がどこに置かれたのかわからず少しの間探した
□「商品はこちらになります」の声で、購入商品の存在に気付いた

レジではディスプレーに表示された合計金額が見えづらい。会計後も、商品をどこに置かれたのかわからず、「商品はこちらになります」という声掛けがあってはじめて気付くような状態だった

身支度を整えるのに狭い「トイ㆑」

□店舗壁面上部に取り付けられたトイレマークや、男女マークが目に入らない
個室内が、身支度を整えるには狭い
□荷物のフックや台が高い場所にあると、腕を上げるのがつらい
□つえを置く場所に困った

購入後には、実際にラップやストロー付きドリンクなどの商品を使用して、感覚の違いや使い勝手をチェックする。テーピングされた高齢者仕様の手は力の入れ加減が難しく、ソフトな素材のペットボトルを開栓しようとすると、こぼれそうになった

改善案と検討要素

上記の気づきからどのような改善案を見出すことができたのか、一部を紹介する。なお、改善策の項は、Fit Care DEPOT北山田店では対応済みであっても一般的なDgSが未対応の項目を含めて表記した。

【短期的に対応する】自転車の整理、レストスペース作り

◆店舗入り口付近に駐車している自転車の整理
◆店内に「お困りのことがあればお手伝いします」などの案内を大きく掲示する
◆売場に障害物となる段ボール、オリコンなどを放置しない
◆高齢者の目線の高さに合わせた接客
◆レジにつえ・バッグ置き場を設置する
◆腰を下ろせるレストスペースをつくる
◆レジ対応の高齢者マニュアルの作成
(例)
⇒サッキング後には、声掛けをしながら高齢者の手元に商品を置く
⇒低めの声で、ゆっくりと、滑舌よく声掛けする

【長期的に対応する】キャッシュレス導入、選びやすい売場作り

◆商品を絞りこみ、選びやすい売場をつくる
◆レジのディスプレーに映る価格を大きく、見やすい色に
◆小銭を必要としない、キャッシュレス(プリペイドカードなど)の導入
◆視界が狭まる高齢者のために、高齢者が使うアイテムで、テーマを持った売場をつくる

【取材協力】カメガヤ スタッフグループ 関口 敏明氏

5ドル以下で10代の生活をカバーする「ファイブ・ビロウ」が急成長している

「5ドル以下の価格」「顧客ターゲットはティーンエイジャー」と、価格帯と顧客を限定した「ファイブ・ビロウ(Five Below)」という「リミテッド・アソートメントストア」がアメリカで絶好調の業績をおさめています。「何でも屋」のリアル店舗よりも、顧客ターゲットを明確にした店の方が、アマゾンと差別化できるということなのでしょうか?

5ドル以下の価格帯で、キッズとティーンに顧客ターゲットを絞ったファイブ・ビロウ。

年間1,000店舗も出店する最大手のダラーゼネラル

1年間で5,000店を超える店舗がなくなる「閉店ラッシュ」が続くアメリカ小売業界で、価格帯と品揃えを限定した「リミテッド・アソートメントストア(LAS)」の業績が良く、大量出店を継続しています。

LAS業態の市場規模は約500億ドル(約5兆5,000億円)と推定されています。最大手の企業は「ダラーゼネラル」で、店舗数は約1万5,000店舗と、直営チェーンとしては世界最大の店舗数を誇ります。1年間に1,000店前後という超ハイペースの出店を継続しています。しかも、出店している州は44州であり、未出店エリアが残っており、アメリカでもっとも成長余地の大きいリアル小売企業として注目されています。

また、1ドルに価格帯を限定したLAS業態第2位の「ダラーツリー」は2019年に300店、第3位の「ファミリーダラー」は2019年に200店の新規出店を計画しています。閉店ラッシュのアメリカ小売業界の中で、LAS業態の出店意欲が旺盛であることがわかります。

ちなみに、アメリカ最大の小売企業「ウォルマート」の2019年の新規出店数はわずか10店舗です。ウォルマートは、新規出店よりもITに巨大な投資を行い、買物を便利にする「オムニチャネル化」を進め、既存店・既存顧客の売上を増やすことで成長する方向に舵を切っています。この連載で紹介した「カーブサイド・ピックアップ」(オンラインで注文→駐車場で受け取り)も、オムニチャネル化の投資のひとつです。

アプリで注文して駐車場で受け取る「カーブサイド・ピックアップ」に注目

LAS業態は、ダラーゼネラルが5ドル以下、ダラーツリー、ファミリーダラーが1ドルのワンプライスと、宅配サービスには適さない低価格帯の商品に限定しているため、アマゾンと差別化できることが最大の強みです。

また、売場面積も300坪程度と小型店であり、自宅から近い小商圏立地にドミナント出店しています。5,000坪のウォルマート・スーパーセンターの商圏内に、ダラーゼネラルが5~10店も取り囲んで出店するわけです。つまり、「近くて便利」が武器なので、自宅近くのダラーゼネラルを利用すれば、無理にアマゾンで注文して配達してもらう必要がありませんからね。

急成長中のファイブ・ビロウ。

キッズとティーンに限定したファイブ・ビロウが大人気

LAS業態は、価格を限定しているだけでなくて、客層も限定しています。ダラーゼネラル、ダラーツリー、ファミリーダラーの大手3社は、顧客ターゲットを「低所得者層」に限定しています。「1ドルステーキ」「99セントのドレッシング」などの品揃えは、低所得者向けの店であることが明確にわかります。

一方、ファイブ・ビロウは、8歳~12歳のキッズ、13歳~18歳のティーン、そして「その親」に顧客ターゲットを絞っています。キッズとティーンのための文房具、学校用品、衣料品、アウトドア用品、お菓子、化粧品、ホームパーティ用品などの多くの品種を5ドル以下の低価格で販売するLAS業態です。

創業は2002年と比較的新しい企業であり、店舗数は約750店で、毎年100店以上の新規出店を継続しています。全米で2,500店までの出店余地があるといわれています。20118年にはニューヨークの5番街に基幹店舗を開店したことが話題になりました。顧客ターゲットが低所得者層ではないので、マンハッタンの5番街にも出店できるわけですね。

低所得者層向けのダラーゼネラルと異なり、キッズとティーンの生活を楽しくする「ライフスタイルストア」の要素が強く、安さ以外の付加価値があることも大人気の理由のようです。
入口を入ると季節用品の売場で、6月に訪問した際には、夏休みのアウトドアライフに必要な商品が集められた売場を展開していました。「5ドルの水鉄砲」「5ドルの海用シューズ」などを、エンターテインメント性のある陳列で演出していました。また、「5ドルの化粧品」も初めての化粧を体験するキッズにとっては楽しい品揃えです。

「近くて便利で低価格の小型ライフスタイルストア」は、アマゾンと完全に差別化できる新しい乗り物(業態)なのかもしれませんね。

入口すぐは季節商品の売場。6月は夏休みのキャンプ用品を陳列していた。
「4個で1ドル」「10個で1ドル」のキャンディ売場。
キッズとティーン向けの化粧品コーナー。
化粧品はセット中心ですべて5ドルで販売されていた。

「加盟に不満」は5年で倍増、岐路に立つコンビニ業界

連日、一般マスコミを賑わせたコンビニ24時間営業問題。公正取引委員会も24時間営業の強要は独占禁止法に違反する可能性を示しており、深夜営業の見直し実験がコンビニチェーン大手でスタートしている。しかし、24時間営業にとどまらず、事の本質はかなり根深いところにある。

東大阪市のセブン事件は「事の発端」ではない

はじめに、この間の経緯をおさらいしよう。

4月5日にはセブン、ファミマ、ローソンなどチェーントップが世耕弘成経済産業相に呼び出され「意見交換」をする事態に至り、同月25日前後にはチェーンが揃って「行動計画」を提出。

きっかけは東大阪市のセブン-イレブン加盟店が人手不足を理由に深夜営業を拒否したこと。チェーン本部は契約違反を楯に違約金を口にしたが、ネットニュースが加盟店の窮状を詳しく報道、さらに本部に対して団体交渉を要求するオーナーらの団体も加わり、広く一般に知れ渡るに至った。

この頃から「セブン叩き」がネット上で盛んになる。著述家や評論家や研究者がこぞって「セブン」をタイトルに持論の展開を始める。“溺れる犬は石もて打て”はネット社会の傾向である。チェーン本部は、いちいち反論はしないし、周辺も口を閉ざしている。コンビニは客商売であり、チェーン本部の不用意な発言により、加盟店の客数にわずかな影響も、あってはならないからだ。

かつて居酒屋チェーンで、過労死と認定された社員の裁判に関して、チェーントップの遺族を傷つけるような発言により、企業の存続すら危機に陥る事態があった。こうした危機管理を企業は学習している。

チェーン本部が提出した「行動計画」を要約すれば、全ては“一人ひとりのオーナー様に向き合い、柔軟に対応する”というもの。実際はともかく、セブン-イレブン・ジャパンの永松文彦社長も日経新聞(6月14日)のインタヴューに応じて、営業時間の短縮は「テストをしてもらった上で判断はオーナーに委ねる」と態度を軟化させている。

ここまでが経緯だが、注意したいのは、事の発端をセブン加盟店の深夜営業に求めると本質を見誤るということ。

世耕大臣がコンビニチェーントップと「意見交換」をする際に頼ったのが『コンビニ調査2018 結果概要』である。経産省の消費・流通政策課が昨年12月に調査ページをWeb上に設置して、本年3月まで加盟店オーナーへのアンケート調査を実施している。経産省がチェーン本部を通してオーナーに協力を要請し、回答を(経産省が)用意したWeb上に直接記入する方式をとった。回答まで本部経由にすると余計な配慮が入る可能性があるため、ダイレクトに経産省へ届くようにした。対象者は日本フランチャイズチェーン協会に加盟する8チェーンの加盟店オーナー約 30,757 人、回答は11,307 人から得ている。

すなわち、東大阪市のセブンの前に、経産省は既に調査を始めているのだ。

経産省・コンビニ調査に見る3つの変化

調査は1万人以上のオーナーの声を集めた非常に価値がある内容である。その一方で、筆者は残り2万人以上の非回答率が気になった。加盟店の現状を問う中央官庁の直接調査に対して、忙しい合間を縫って回答する方たちは「不満の度合い」が強いオーナーの傾向にあるのではないか。「私たちの声を聞いて欲しい」との切実さがある故に、わざわざ回答しているのではないかと。

担当課長は、その点についてコメントを控えたものの、重視しているのが前回と比較した「数字の変化」だという。調査回答者に、ある傾向が見られたとしても、同じ質問に対する5年前と今とでの変化には注視する必要があるのだと。

確かに、その通りである。比較可能な3つの変化を見ていこう。

質問「従業員の現在の状況はいかがですか?」に関して、「従業員が不足している」と回答した割合が5年前は22%だったが、今回の調査では61%に上昇している。有効求人倍率(全国)は、14年の1.09から18年は1.61と倍率が上がり、特に「販売の職業」は2.5倍前後と厳しい環境にある。人を集めたくても集まらない、最低賃金に近接していては、昔と違って満足に集まらない雇用環境にある。

集まらない理由の中に「必要な一部の時間帯に勤務できる人が少ないから」が上位にある。東京都の最低時給は本年10月には1,000円を突破するだろう。人が集まりにくい深夜は割増料金で1,250円を超えてくる。1,300円を出しても集まらない店舗も増えてくるだろう。

理由の中に「コンビニの業務が複雑になっている」とある。サービスの増加と、レジ精算の多様化により、覚える仕事が雪だるま式に膨らんできた。その内容に時給が伴っていない。かといって時給を上げられる余力もない。

質問「あなたは加盟したことに満足していますか」に関して、不満に思っている加盟店オーナーは5年間で17%から39%へと倍増した。その理由を見ても(図表中示していないが)一番上位に「想定よりも利益が少ない」とあった。

チェーン大手の既存店日販はおおむね下がっていないので問題はコストの上昇だ。最も大きいのが最低時給の上昇による人件費高騰の影響である。上位二番目が「労働時間/拘束時間が想定したより長すぎる」である。人が集まらないのでオーナーが深夜帯に入らざるを得ない店が増加している。

「あなたは次回のフランチャイズ契約更新をどのように考えていますか」に関して、「更新をしたい(経営を続けたい)」が前回の68%から45%へ、「分からない(無回答、分からない、その他)」が16%から37%へ、「更新したくない(経営を止めたい)」が17%から18%へ、と変化した。

次回の更新を明確に拒否した割合は実は変わっていない。経産省が注視したのが、積極的に「更新したい」加盟店オーナーが20%以上も減少し、その減少した分が「分からない」と答えている現状にある。

日本のコンビニは社会のインフラ、生活のライフラインである。世界に誇れるビジネスモデルとしてアジアにも“輸出”されている。しかしながら、店を経営する加盟店オーナー自身が将来に疑問符を抱いている事実が明るみになった。

経産省の担当課長は「コンビニ第一世代が、そろそろ代替わりとなっています。やはり、夢が持てないと、フランチャイズ・システムは持続しないと考えています。その夢を、どこに求めるのか、きちんと考えて、(本部と加盟店は)共存共栄を図ってもらえればと思います」とコメントしている。

世耕大臣がチェーン本部のトップと「意見交換」した際の問題意識は、以上3点の調査結果である。コンビニの持続的な成長に黄色信号が灯り、世耕大臣はチェーントップに対策を迫った格好になる。

今回のコンビニ騒動と、大手経済紙を中心としたチェーン本部への圧力には政府の強い意思があると、元セブン-イレブンで現在コンサルタントの山﨑泰嗣氏(シムテクノ総研社長)は次のように語っている。

求められる「コンビニ」のビジネスモデル変革

「アベノミクスは最終段階に入り、昨年まで5年連続して経団連に賃上げを要請してきた。1億総活躍社会の実現と、トリクルダウン効果により、国民生活が良くなると喧伝してきた。しかし、経団連傘下の大手企業には賃上げを実現させても、労働者全体の実質賃金は増えていない。国民の多くが豊かになったと感じていない。それに対して政府全体に焦りがある」とした上で、次のターゲットはコンビニ業界ではないのか考えている。

「所得水準の高い大手企業ではなく、業界が収益を挙げている一方で、収入の少ない人たちが多い業界から給料を上げさせるアプローチ。今、政府が伝えようとしているのは、24時間営業問題の是非なのではなく、加盟店オーナーに“富”が十分に行きわたっておらず、その結果、従業員にも条令が定める最低時給しか出せていないということ」(山﨑氏)

だからといって、加盟店に課しているチャージを引き下げるだけでは単なる「取り分」の話に終始してしまう。そうではなくて、なぜ日本において、Amazon Goや、中国の無人コンビニといったイノベーションが起こらないのか、といった政府の焦りがあると山﨑氏は指摘する。

「コンビニ業界で稼いだ “富”が、どこに消えてしまったのか。国内に再投資されているのか。ビジネスモデルを変えるような、新たなシステムの開発に果たして挑んでいるのか。ただ単純に店の数を増やして、店舗面積を拡大するだけでは、基本は同じビジネスモデルに設備投資をしているだけ。果たして、それでいいのかといった政府からのメッセージが込められている」

コンビニのチェーン大手は、今期は既存店への投資、さらにはデジタル投資を強めていく意向である。営業時間や食品ロスの課題を、先進テクノロジーなどを駆使して解決を図っていくようなビジネスモデルの改革が迫られている。

事業の幅を広げ、新たな役割を目指す「あらた」須崎裕明社長インタビュー

2002年、ダイカ、伊藤伊、サンビックの3社が共同で持ち株会社を設立し誕生したのが「あらた」である。同社では従来の中間流通業の機能に加え、グループ内には「データ分析」「販促の立案・実行」「店頭管理」など、マーケティング機能に特化した企業も擁している。新たな中間流通業の役割を追求する同社の戦略を、代表取締役社長執行役員COOの須崎裕明氏に聞いた。(聞き手:本誌主幹 日野 眞克/月刊マーチャンダイジング2019年5月号より転載)

資本の統合と事業の分割で規模を生かし専門性を高める

──どういった事業に注力し、成長戦略を描かれているでしょうか。

須崎 ひとつはグループ力を生かした経営に注力しています。たとえば、ペット専業の卸売業を行っているグループ会社の「ジャペル株式会社」はあらたとして持っていたペット関連の百数億円の取引をすべて移管しました。これによりジャペルの売上高は約1,200億円になり、ペット関連の卸売業では断トツで1位になりました。

これは規模を大きくするのが主目的ではなく、グループで分散していた分野を統合してより専門的な提案や事業展開をするためです。ペットはこれまでホームセンターさま(HC)が主力でしたが、伸びている業態はドラッグストアさま(DgS)や食品スーパーさま(SM)で、これらは、あらたが取引していたチャネルでもあります。

さらにサブカテゴリーで見ればペットフードは頭打ちで用品やペット保険といった周辺の領域が成長しており、今後可能性もあります。しかし、あらたではそうした専門性の高い提案や商品供給する機能がありません。ですから、ジャペルの専門性をDgS、SMといった成長分野で生かして、小売業さまの売上にも貢献できるように移管したのです。

同じく子会社に「株式会社ファッションあらた」があり、軽衣料と化粧品を専門に扱っています。化粧品はこれまでベーシックな商品が多く、DgSでの扱いがメインでしたが、近年、バラエティショップなどが特徴のある商品を扱いだして人気もあります。ここ数年DgSでもそういう商品が増えています。

従来、そういった特徴ある商品を扱うのがファッションあらたの役割だったのですが、そうした商品の市場が大きくなり、一般の化粧品と分けることはあまり意味がなくなりました。そこで、2019年4月1日にファッションあらたをあらたと統合して、全国展開の物流網を生かし、機能としてはファッションあらたがこれまで持っていた特徴ある化粧品の扱いを増やしていく。こうした組織の統合で専門性がより発揮できるようにして、化粧品全体を強化していきます。

──グループ企業各社の専門性を生かして、コストや効率では規模を大きくすることで改善を図るということですね。

須崎 そうです。あらた単体が扱っているカテゴリーは、ペットをジャペルに完全移管したので、化粧品、トイレタリー、家庭用品、家庭紙の4つですが、今後はグループ力を生かしてこれらのカテゴリーを深掘りしていきます。

家庭用品でもタイミングを見て効果的な組織に改めたいと考えています。われわれは2018年から家庭用品の見直しを始めました。HCで販売しているような比較的大型の用品や器物よりは、DgS、SMの売場を想定したコンパクトな商品を強化したいと考えています。

たとえば食器洗いのスポンジや、洗濯用の角ハンガーなどは関連する消耗品と一緒にエンド展開できます。

──スポンジと食器洗い洗剤といったように、購買頻度が違う2種類の必需品を一緒に展開すれば、粗利ミックスにもなりますし、地域のお客さまの来店頻度を上げることができます。家庭用品で小売業へ提案して成功した事例などありますか。

須崎 SMなどは焼き芋を売っているお店が多いですが、その近くで芋が焼ける特殊なホイルの陳列を提案したところ、実施店では大変な効果を出しました。

通常定番で月に数本売れるかどうかという商品だったのですが、あるSMでは約3ヵ月の間に2,000ケースほど売れました。

定番にあるだけでは動きづらい商品でも、売り方を変えるだけで大きな需要を開拓できることが証明できたとおもいます。製配販で売り方を考えていくこともこれから重要です。

[図表1]あらた グループ企業

製配販共同開発の店頭販促ツールを開発

──あらたさんではグループ内にデータ分析など、卸とは異なる機能を持つ会社をお持ちです。

須崎 われわれはモノをつくっていないし、売場も持っていません。メーカーさまからモノを仕入れて小売業さまへ運ぶ、それが卸の中心的な機能で、これは絶対に必要でなくならないとおもいます。

しかし、それをいつまで事業の柱にできるかは別問題です。ですから、売場づくりや陳列の維持などの店頭管理、販売データの分析、販促の立案・実行といった物流や保管とは別な機能で小売業さまのお役に立てる事業も進めています。

グループ内に「株式会社インストアマーケティング(ISM)」という企業がありますが、ここでは新商品や季節品の店頭展開のお手伝いをしています。

あるメーカーさまが春夏の新商品の展開を自前でやったら、全国約6,000店の売場づくりを終えたのはスタートから4ヵ月後、あと2ヵ月たてば秋冬の商品が発売されるというタイミングでした。

これをISMの専門部隊で実行したところ1ヵ月半ですべてを終了させ、メーカーさまにとっても小売業さまにとっても販売チャンスを広げることができました。

ISMの中には「販促工房」という部署を設けて、メーカーさま、小売業さまと販促工房の従業員の三者でどのような販促物をつくれば効果的になるかを話し合い、オリジナルのPOPや売場支援ツールをつくっています。

メーカーさまがつくった販促物はサイズなどの関係で店頭に付けられないことも多いのですが、こうして生まれた販促物は小売業さまの考えも反映されているので、はるかに店頭実現率が高くなるのです。

目先の利害だけでなく社会的にも意味のある「返品削減」

──モノを仕入れて売るだけでなく、プラスアルファの機能を強化するということですね。これからの売場は「ペットと暮らす」とか「洗濯する」とか、ある生活行動をテーマに商品を集めることも重要ですね。

須崎 おっしゃったようなテーマによる売場提案は今後強化したいとおもっています。

それから、日本は人口減少に向かうし、コストも上がるので販売やコスト削減を考えなくてはいけません。それに加えて、企業の社会的責任(CSR)も考えないと長期的にはお客さまからの支持を得られません。

こうした問題と絡めて当社が注力しているのは、返品削減です。このテーマは従来、返品されると営業的に厳しくなるからどう対策を打とうかと考えていましたが、最近ではこうした一企業だけの損得の問題だけでなくて、社会的にムダをなくす、環境へ貢献するというところにきています。

──具体的にどういう方法で返品削減に取り組んでいますか。

須崎 われわれは北海道、東北で長い間返品削減に取り組み、一定の成果を挙げてきました。こうした経験をもとにいえるのは、返品削減にひとつの絶対的な答えはないということです。返品削減だけを目的に話を進めれば、行き着くのは返品なしならどういう条件で取引できるかという商談になります。

こうした短期的な損得だけを考えるのではなく、返品にはムダなコスト、環境への負荷がかかるから製配販が一緒になってこれを減らそうという意識の問題が大きいとおもいます。

返品すれば確かに小売業さまの店頭からも、卸の倉庫からもモノはなくなるのですが、そこに至るまでに輸送コスト、店頭作業コスト、返品コスト、廃棄コストなど実にさまざまなコストがかかっており、コストをかけて店頭展開した商品を利益ゼロで販売したようなものです。

コスト的には製配販の三者が、傷んでなおかつ環境的にもダメージを与える返品をなるべく出さないようにしましょうという意識が大切だとおもいます。

幸いこうした意識はここ3年のほどの間に小売業さまの間で目覚ましく高まっているように感じます。

また、返品削減にはメーカーさまの安定供給も大事です。品薄になるとどうしても商品確保の心理が働いて多めに仕入れてしまう。

それから、売り方開発も重要な要素です。先ほどの焼き芋売場でのアルミホイルの陳列のように、売り方を変えるだけで開拓できる潜在需要もありますから、どれだけ売れるか予測すると同時に、どうやって売るかを考えることで店頭消化が上がって返品削減にもつながります。

メーカー・小売共同キャンペーンをプロデュースして発展させる

──アメリカの流通業を見ていると、顧客データや販売データを駆使したプロモーションを仕掛けています。そういった事例はありますか。

須崎 グループ内に広告代理店の電通などと共同出資してつくった「電通リテールマーケティング(DRM)」という会社があります。

電通、DRMと協働で、ローカルテレビ局の冠を付けたスポーツなどのイベントを開催し、イベント関連で消費者キャンペーンを行う。こういう活動はこれまで続けてきました。

しかし、それだけでは小売業さまの販売促進には十分貢献できないので、最近ではインストアキャンペーンに力を入れています。

成功事例をご紹介すると、ある小売業さまの店内で化粧品、家庭用品のメーカーさまとタイアップして、対象商品を一定額購入した人が応募して、抽選で商品が当たるというキャンペーンを打ちました。1回目は応募資格が得られる購入金額を2,000円と4,000円の2コースにしました。

商品はコースに応じて設定し、応募方法は店内とはがきです。1万通くらいの応募があって、そのうちカード会員に関しては購買データを分析して、キャンペーン期間中に幾らぐらい購入しているかを調べました。分析から、4,000円コースの応募者の中には対象商品を7,000円、8,000円と規定の金額を大幅に超えて購入している人がいることがわかりました。

この結果も踏まえて2回目は、2,000円、5,000円、8,000円の3コースにしました。応募は1回目の方法に加えてWEBからも受け付けました。そうしたところ応募は5万通までに増えました。そのうちWEBからの応募は約1万通、購買データを分析して、購入金額に加えて対象商品以外どのような商品を買っているかを調べました。キャンペーン期間はいずれも2ヵ月間です。

2回目に応募が飛躍的に伸びたことで3回目もやろうということになり、対象商品を化粧品、家庭用品から店内の全商品にまで拡大しました。応募方法は2回目と同じ。今度はWEB応募者にはポイントを付け優遇しました。

応募数は約5万5,000通と伸び率こそ2回目には遠く及びませんでしたが、WEB応募が約40%、2万2,000通にまで上がり、ユーザー情報の収集という意味では大成功でした。

DRMのノウハウを使ってキャンペーンに応募した会員の購買データを分析したことにより、チラシが有効なエリアとあまり効果のないエリアを区分して、効果のないエリアには配布をやめ、浮いた予算をWEB広告に振り分けるといったマーケティング施策の見直しもできました。

会員データの分析を基に、比較的優良顧客には、購買履歴からその人が買いそうな商品を特定して1人に3商品まで個人のスマートフォンにダイレクトにその人に向け配信できるシステムを開発しました。

チラシは一律配布で広く行き渡る半面ムダも生まれますが、こうした有望ターゲットを絞って個別に販促する方法なら購買の確度が上がります。

こうした企画の中心には小売業さまとメーカーさまのタイアップ企画があって、それをわれわれが結び付けて、販促にとどまらず、データ分析やマーケティングプランにまで展開する。このような役割分担で成果を出した事例です。

──小売業は今後、不特定多数を広範囲で集めるのではなく、特定の優良固定客と長く付き合った方がいいとおもいます。データを調べると特定の優良顧客の店舗貢献度は高いのではないでしょうか。

須崎 そのとおりです。優良顧客をいかにして見つけて、その人たちに向かって情報を出すか、やり方はたくさんあるとおもいます。コアなお客さまへのアプローチは今後注力すべき分野です。

2月に展示会がありましたが、そこで、いまお話ししたようなキャンペーンやチラシ配布エリアの見直し、ダイレクトに個別に販促情報を配信するといった内容をまとめてプレゼンしたら、小売業さまから大きな反響がありました。

[図表2] 店頭キャンペーンの概要

小売業の企業価値を上げることも事業のひとつ

──ほかに小売業との取組みはありますか。

須崎 2016年から環境省が主導する「Re-Style(リスタイル)」という取組みに参加しています。これは循環型社会を目指すためにReduce(リデュース=ごみの減量)、Reuse(リユース=再使用)、Recycle(リサイクル=再生)の3R活動を進めていこうというものです。

ある小売業さまにお声掛けして、Reduceにつながるような詰め替え商品などをカテゴリー横断で集めて売場をつくる「3Rキャンペーン」を行いました。お客さまの反応もよく手応えを感じました。

こうした環境に配慮した事業を展開していることをお客さまに認知していただくことで、企業価値も上がりますし、賛同したお客さまがロイヤルカスタマーになってくださる可能性も上がるとおもいます。

小売業さまが、社会貢献できるようなお手伝いも大切な仕事です。

Re-Styleパートナー企業「2019調印式」にて、畑中伸介会長(左)と秋元司環境副大臣

──ごみの減量は大事なテーマですね。コンビニの恵方巻きの廃棄が大きな話題になりました。事業者側の責任も大きいです。

須崎 われわれはトイレタリーなどのカテゴリーでは詰替商品の提案でごみ削減を呼び掛け、家庭用品カテゴリーでは保存容器などの提案で食品廃棄ロス削減を啓発するなど、製配販売一体となり、いろいろなカテゴリーで3Rを前に進める活動ができます。

──小売業へ貢献できる御社の強み、他社との差別化要素はどういうところでしょうか。

須崎 先ほどご紹介した販促手法などはいままであまり公開しておらず、2月の展示会ではじめてオープンにしたものです。

物流中心の中間流通業の役割に加え、これまでご紹介してきたように、当社は店頭活動、データ分析、販促立案実施など売上向上につながる事業メニュー、企業価値を上げる活動を行っていますので、ぜひ一緒に取り組んでいただきたいとおもいます。

──本日はありがとうございました。

「レジなし店舗」の実現で、小売業の生産性は飛躍的に向上する

Amazon Goやスキャン&ゴーなどの、店舗に「レジ」がなくて、「キャッシャー(会計係)」もいないレジフリーの実験が、アメリカで急速に進んでいます。店内作業の約30%を占めるといわれるレジ作業がなくなれば、小売業の人の生産性は飛躍的に向上します。

アプリで精算が完了するスキャン&ゴー

Amazon Goは、カメラと重量センサーなどの技術で、商品をスキャンしなくても買物状況を把握し、精算が完了する仕組みです。一方、多くのアメリカ小売業が実験している「スキャン&ゴー(Scan&Go)」は、お客がスマートフォンアプリのスキャナーで商品を自分でスキャンして、最後はアプリ内に登録されたカードで精算する仕組みのことです。

アメリカ最大のSM(スーパーマーケット)企業の「クローガー」は、「スキャン&ゴー」の実験を順次進めています(下の写真)。当面は、専用の端末を使ってお客が自分で商品のバーコードをスキャンして、最後はセルフレジに専用端末をかざして一括精算する方法を実験しています。

また、専用のスマートフォンアプリを使って、セルフレジを通さなくてもアプリ内で精算を完了する実験も開始しました。将来的には、スマートフォンアプリを使った精算方法が本命のようです。なぜならスマートフォンアプリを使った精算であれば、店舗にレジがなくなり、人の生産性が飛躍的に向上するからです。

ウォルマートも、MWC(メンバーシップホールセールクラブ)の「サムズクラブ・ナウ」(売場面積900坪の小型店)で、スキャン&ゴーの実験を開始しました。この店にレジは存在しなくて、スマートフォンアプリだけでスキャンと精算が完結する仕組みです。レジなしのスキャン&ゴーの課題は、スキャンしないで商品を持ち帰る万引きや不正への対応です。サムズクラブ・ナウの天井には多くの監視カメラが設置されており、Amazon GOのようにカメラで不正を防ぐ実験を行っているようです。

ウォルマートは、スーパーセンターよりも買上点数の少ない小型店舗のサムズクラブ・ナウでレジなし店舗のオペレーションを実験しています。出口には、スマートフォンや買物商品を確認する専門の担当者が常駐していました。

専用端末(右)とモバイルアプリ(左)のどちらかを使って、お客が商品のバーコードを自分でスキャンしながら買物&精算を完結する。
レジなしのスキャン&ゴーを実験中のサムズクラブ・ナウ。

店内作業の約30%を占めるレジ作業がなくなる

下の図表は、あるDgS(ドラッグストア)で1か月間、「作業棚卸」を実施した結果です。なんらかの形で商品に触る作業で、店内作業全体の60%以上を占めていることがわかります。しかも、レジ作業が26%と店内作業の30%近くを占める最大の作業項目なのです。

もし将来、レジなし店舗でのスキャン&ゴーによる精算が主流になると、小売業の「人の生産性」は飛躍的に向上します。しかも、レジ担当者の教育にかかるコストは膨大です。レジ担当者の教育コストも考慮すると、非常に大きな経費の削減につながります。5~10年後、レジもなく、キャッシャー(会計係)もいない店舗が主流になっているかもしれませんね。

タブレットカート、電子棚札、AIカメラがさらに進化「トライアルクイック 大野城店」

2018年にオープンしたアイランドシティ店を皮切りに、次々とスマートストアに関する施策を打ち出すトライアル。2018年12月に同社がオープンした「トライアルクイック 大野城店」(以下、大野城店)は、技術を詰め込んだショーケースのような店舗である。「流通情報革命」をスローガンに、テクノロジーでの流通変革を目指す同社の新店舗に迫る。(MD NEXT編集長 鹿野 恵子/月刊マーチャンダイジング2019年6月号より転載)

近隣にコスモス、マルキョウ、厳しい競合環境

今回お目見えしたトライアルの「クイック」業態は既存業態になぞらえると小型食品スーパーに近い印象だ。売場面積は約300坪で、生鮮三品、総菜、日配を中心として、グロサリー、飲料、日用雑貨なども取り扱う。

大野城市は福岡市のベッドタウンで、店舗周辺には住宅地が広がる。恵まれた周辺環境からドル箱になることが期待されているアイランドシティ店とは打って変わって、大野城店の近隣には食品スーパーのマルキョウ、ディスカウントドラッグコスモスなどがあり、競合環境は厳しい。「コスモスさんに負けないようにできれば、今後さまざまな場所に展開できる業態として成立する」と同社グループCIO(最高情報システム責任者)の西川晋二氏はこの業態に懸ける意気込みを語る。

有人レジゼロでカート利用率30%

大野城店に入店してまず驚かされるのは、高齢者を含め多くのお客がタブレットカートを利用して、手元で商品をスキャンしながら買物をしている光景だ。現在同店でのタブレットカートの使用率は30%程度だという。大野城店のチェックアウト方式はセルフレジ、タブレットカート、スマートフォンの3種類。有人レジを一切配置していない店舗は国内の小売業としては稀有な事例だろう。

タブレットカート。搭載しているOSをWindowsベースのものからAndroidベースのものに変更した

タブレットカートの利用方法は、基本的にはアイランドシティ店とほぼ同様だ。お客はタブレットカートに付いているスキャナーでプリペイドカードをスキャンして顧客情報を紐づけたあと、店内で商品を選択しながら商品バーコードをスキャンする。その際、タブレットカートの画面に登録した商品の一覧と、その合計金額が表示される。

タブレットカートで商品をスキャンすると関連商品が表示される。将来的には購買履歴などからリコメンドする商品を選定したいと考えている

また、商品をスキャンすると、タブレットにおすすめの関連商品情報や、ポイントの付与倍率が変わるクーポン情報などが表示される。この関連商品は、現在はスキャンした商品から単純に関連商品をリコメンドしているだけだが、今後はお客一人ひとりの購買履歴データなどと紐づけておすすめを表示するようにしたいと考えているという。

会計の手続きも、アイランドシティ店と同様、店舗出口そばにある会計エリアで行う必要がある。タブレット上でレジ袋の必要枚数や利用ポイント数を入力し、合計金額を確定すると、プリペイドカード(プリカ)からその場で引き落とされる。会計エリアのゲートを通る際に、タブレットカートの足元に付いたバーコードが読み取られ、ゲートの外のプリンターからレシートが出力される。

決済エリア。大野城店では有人レジは廃止されていて、すべてセルフチェックアウト方式。セルフレジは現金とプリペイドカードの2種類の支払い方法が選べる
現金専用のセルフレジでは会計機が別になっている

お客が自分でスキャンしながら買物をするもうひとつの方式が、スマートフォンアプリだ。アプリでの買物もタブレットカートと同じく、商品バーコードをスマートフォンのカメラでスキャンして商品登録を行い、アプリ上で会計ボタンを押すと、プリカから支払いが行われるという流れだ。

その後、画面に表示されるQRコードをゲートでスキャンすると、紙のレシートが印刷され、レジ担当者が決済完了を確認する。なお、スマートフォンアプリでの買物の利用率は現在10%以下にとどまり、今後さらにプロモーションを進める意向だ。

据え置き型のレジは、すべてセルフレジである。こちらは現金とプリカ用に分かれていて、プリカ専用セルフレジは、1台のレジで商品登録とプリカ決済が完了する一方、現金専用セルフレジは、商品登録をしたあとに現金専用の会計機に移動して会計を行うという手順になっている。

この店舗ではじめてお目見えしたのが、銀行口座からキャッシュカードを使って直接プリペイドカードに入金する仕組みだ。J-Debitのネットワークに加入しているキャッシュカードである必要があり、入金は1,000円単位となっている。

なお、トライアルはもともとクレジットカード手数料削減の目的で、店舗でのクレジットカード利用を推奨しておらず、大野城店に至ってはクレジットカードを利用することができない。現在大野城店では現金以外の決済方法が60%を超えるという。

リテールメディア化の軸、店頭サイネージ

入店してすぐエンドにサイネージが並ぶ。サイネージを活用したリテールメディア化を目指す。サイネージに流す動画などは社内で製作している

トライアルが推進しているのが店舗のリテールメディア化だ。お客が購入する商品を決定するのは圧倒的に店頭である。そこで、メーカーがこれまでテレビCMなどのマスメディアに投下していた広告費を店頭に落としてもらおうというもので、タブレットカートでのクーポンプロモーションはそのひとつということができる。

そして同社がもうひとつのリテールメディアの軸と考えているのが、店内の至る所に配置されたサイネージだ。入店してすぐすべてのエンドに、売場サインと商品紹介が動画で掲示されている様子にはかなりのインパクトがある。

同社では、これまでの単にテレビCMを流すようなサイネージから脱却し、訴求力を持ったコンテンツを掲載していきたいと考えていて、社内の製作部門がサイネージで流す動画の製作に当たっている。

電子棚札でダイナミックプライシングを実現

中国のメーカーHanshowの電子棚札を採用。赤黒2色表示で視認性もよい。電子ペーパー方式で消費電力が非常に少なく、電池交換も数年単位でよいのがポイント

顧客接点の革新という意味で、もうひとつの大きなポイントは電子棚札の活用だろう。大野城店では1万2,000SKUのほとんどすべてを電子棚札化した。中国のHanshowというメーカーの製品で、表示方式は電子ペーパーの技術を用いており、表示は黒と赤の2色。電力を消費するのは表示内容を変更するときだけで、数年間電池を替える必要がない。価格は既存の電子棚札に比較するとかなり安価になってきているという。

サイズ展開も豊富で、大型のものは幅十数cm、小型のものは幅2cm程度で、歯ブラシのつり下げ陳列にも対応できる小ささだ。

電子棚札はサイズの種類が豊富。歯ブラシ売場のつり下げ陳列にも対応するサイズを展開している。このほか冷凍ケース内で使えるものも

この電子棚札はネットワークに接続されているため、システム上のデータを変更するだけで表示内容を自在に変更することができる。取材時は、「広告の品」「値下げ商品」「店長推薦」「貯まるクーポン30倍」「ずっと、ずーっと低価格。」などのキャッチコピーが表示された電子棚札が展開されていた。

温度が低い環境にも対応していて、リーチインの冷凍ケースの中でも使用することができる。

リーチイン冷凍ケースの中に配置された電子棚札
オープンのアイス売場に配置された電子棚札

「10年ほど前に、電子棚札が流行したことがありました。当時は液晶で視認性が低く、価格もいまと比べて非常に高かった。導入企業の多くは、売価変更によって棚札を張り替えるコストを削減することができると考えていたのですが、運用コストが高く、目標としているROI(投資効率の指標)を実現できた企業はほとんどありませんでした。そのため、一度寿命がきたタイミングで電子棚札をやめた企業が多かったようです」

西川氏はこれまでの電子棚札の導入状況についてこう分析する。

今後ますます人手不足になり、そもそも人手に頼って頻繁に店頭売価を変更することができなくなることが予測される。だが価格の変更が生命線と考える同社では、ダイナミックプライシング(※)を採用して、価格の適正なコントロールを行うことで、値下げ額と廃棄ロスを減らし、売上と利益の最大化を目指そうとしているのだという。

「作業コストを減らすことも狙っていますが、むしろ販売力を上げる手段として展開していきたいと考えています」(西川氏)

※店頭の売価を消費者と提供者間の需要と供給のバランスによって変動させること。

たとえば現状の総菜売場であれば、夕刻になった段階で売場担当者が棚の状況を見ながら割引シールを商品に付与して総菜の見切りを行っている。そのような勘と経験に頼った画一的な見切りを行うのではなくて、販売状況や閉店までの時間、客数などのデータから最適な見切りタイミング・価格を見極めようという考えだ。

なお、表示するデータをネットワークを経由して電子棚札に送るソフトはHanshowのものであるが、その手前までの商品マスタ管理、プライス管理のソフトウェアはトライアルが開発したものを使用している。

約300坪の売場を150台のカメラで分析

天井に設置されたスマホカメラ

アイランドシティ店では天井に多数のカメラを設置して顧客の行動分析や商品管理を行っていたが、大野城店にも約300坪の売場に150台のカメラを設置してデータを取得している。カテゴリーごとにカメラの要不要を判断し、分析のニーズが発生しない場所のカメラは設置台数を減らした。そのため、アイランドシティ店よりも面積当りのカメラ台数は減っている。

日配売場。冷蔵ケース上部にカメラを設置し、顧客行動をデータ化する。電子棚札にさまざまなサイズが用意されているのもわかる

また、2018年時点では、スマートフォンを転用したカメラを活用していたが、大野城店では自社で独自開発したカメラを一部テスト展開。お客の回遊状況などを記録、分析してメーカーとともに次の打ち手を考える基盤とする。

冷蔵ケース上部に設置されたカメラ。黒いカメラで棚の状況を取得し、白いカメラでお客の行動を取得する

また、冷蔵ケースにカメラを組み込み、AIの技術を用いて、商品の在庫状況や棚に立ち寄ったお客の行動、属性などを分析。POSデータでは得られなかった「非購買データ」などが取得できる。将来的に、AIカメラを組み込んだ冷蔵ケースという形で展開ができないかと考えている。

新しい取組みとして、イートインコーナーも展開。モバイルオーダーも提供の予定で、スマートフォンのアプリからオーダーした注文が、プリペイドカードから支払われるという仕組み
トライアルクイック大野城店 店舗レイアウト

「ビオリス」の登場で、ボタニカルシャンプーに地殻変動が起きている?

株式会社I-neが2015年に発売したボタニカルシャンプー(※1)「BOTANIST(ボタニスト)」は、ノンシリコン・オーガニックに次ぐ“第3のシャンプー”として注目を集めました。そして2017年後半頃から大手メーカーからのボタニカルシャンプーが発売され市場に広がっているといいます。そこで今回は、POB会員の「シャンプー」の購買データから「ボタニカルシャンプー」の買われ方について分析します。(調査期間2018年3月~2019年4月)

使用率は1割程度だが、リピート購入が多い

まず、POB会員の「シャンプーカテゴリ」のレシートから、「ボタニカルシャンプー」のレシート枚数および総購入金額の割合をみます。

調査期間中の「シャンプーカテゴリ」総レシート枚数は約2.7万枚(27,302枚)、総購入金額は約2,000万円(¥19,967,854)。そのうち「ボタニカルシャンプー」のレシートは9.4%(2,598枚)で、購入金額の割合は12.4%(¥2,475,767)となり、レシート枚数および購入金額ともに、店頭購入における「ボタニカルシャンプー」の割合は1割程度でした。

しかしながら、通常のシャンプーと比較すると高価格帯でありながらも、購入者のコメントをみると「いつも使っている」や「詰め替え用を購入」といったリピート購入や、「定番棚から購入した」といった声もあり、販売チャネルには美容院やネットなどの店頭以外も考えられるため、消費者にも“ボタニカルシャンプー”というカテゴリは認知され受け入れられていることが伺えます。

店頭の販促活動が購入の後押しになった「ビオリス」

次に、POB会員のレシートからボタニカルシャンプーのトレンドをみます。

POB会員が購入していたボタニカルシャンプーのブランドは、1位がコーセーコスメポート「ビオリス(32.1%)」で10ポイント以上の差をつけ、2位がネイチャーラボ「ダイアン(18.7%)」、3位がI-ne「BOTANIST(17.4%)」、4位がコーセーコスメポート「ジュレーム(12.4%)」と続き、1位から4位までのブランドで8割を占めています。

また、購入チャネルをみると全体的に「ドラッグストア」が多くの方に選ばれていましたが、1位の「ビオリス」は特徴的でした。(図表3)

「ビオリス」の購入チャネルは、「ドラッグストア」が60.1%に対し、「スーパー」が29.9%で、3割近くの方がスーパーで購入し、2位「ダイアン(8.3%)」、3位「ボタニスト(8.1%)」よりも、20ポイント以上の差をつけています。スーパーでの「ビオリス」購入者のコメントをみると、「イオンのお試しクーポンで試しに購入」や「イオンで前回購入した際にクーポンをもらったので購入」など、チェーンと連動した販促活動が購入の後押しになっていたことがわかります。

定番として受け入れられているボタニカルカテゴリ

次に、主要メーカーのブランド別で購入金額構成比の推移をみます。

2018年3月時点での主要メーカー別の構成比は、1位が「コーセーコスメポート」で、主要ブランドは同年3月に新発売の「ビオリス」と、2013年より発売されている既存商品の「ジュレーム」です。「ビオリス」の投入により、購入金額構成比が3月15.7%から、4月43.5%に跳ね上がっています。その後は、縮小傾向となりますが、既存商品の「ジュレーム」により、購入金額のうち3割~4割の構成比を占め、2019年2月「ビオリス」の新ライン投入により、再び4月には同社の構成比を押し上げています。

また、「コーセーコスメポート」に続き、大きな構成比をみせる「I-ne」は、主要ブランドの「BOTANIST」が、ボタニカルシャンプーの先陣であった認知度で既存商品の根強い人気をみせていますが、「ビオリス」の新商品発売月は構成比が下がる傾向がみられます。

これまでの分析の中で、POB会員のレシートから購入金額の構成比をみると、「コーセーコスメポート ビオリス」の発売により、ボタニカルシャンプーカテゴリに変化が起きていると言えそうです。

ボタニカルシャンプーを牽引し認知度も高い「BOTANIST(I-ne)」が大きな構成比を占めていますが、好調な「ビオリス」と、既存商品の「ジュレーム」の根強い人気もあり「コーセーコスメポート」がボタニカルシャンプーの購入金額の構成比を拡大させていることがわかります。

「ビオリス」の購入者コメントをみると、発売当初の2018年は、「以前からCMを見て気になっていた」や「最近ボタニカルシリーズが流行っているので、使ってみたかったから」といったコメントが多数でCMや広告による“試し買い購入者”で構成されていたことがわかります。

これが1年後の2019年になると、「いつも購入している」や「しっとり仕上がり、香りもよい」などといった“リピート購入者”や“商品に対する満足度”を挙げたコメントが目立ち、定番商品として受け入れられたことがPOBデータからわかりました。

※1:植物由来で作られた成分を多く配合したシャンプー

※図表1~4:ソフトブレーン・フィールド株式会社
「マルチプルID-POS購買理由データPoint of BuyⓇ」
全国の消費者から実際に購入/利用したレシートを収集し、ブランドカテゴリや利用サービス、実際の飲食店ごとのレシートを通して集計したマルチプルリテール購買データのデータベース

中間流通業の「つなげる力」を活用して売上最大化を実現しよう

これからの時代、プロモーションの主戦場がマスメディアから店頭とWEBへと移ることになれば、店頭プロモーションで主導的な役割を果たせるのは「日本型カテゴリーマネジメント」を推進する卸売業である。日本の卸売業が持つ「つなげる力」を生かし、新しい世界を切り開くための手法と考え方について解説する。(ニュー・フォーマット研究所 副社長 村瀬 一弘/月刊マーチャンダイジング2019年5月号より転載)

前編の記事はこちら

卸売業の機能の中で情報収集は今後カギになる

卸売業の機能について詳しく説明すると、卸売業は商品を倉庫(物流センター)に在庫して発注に応じて店舗に届ける物流機能を事業の土台としている。これが①ロジスティクスで、その中にある「総取引極小機能」とは、メーカーが小売に直接取引(配送)するのと比較して、中間に卸売業が入れば総取引数が減るということだ(図表3)。

[図表3]総取引極小機能(取引総数極小の原理)(マーガレット・ホールの理論をNFI作図)

マーチャンダイジングには複数の意味があるが、ここでいう②マーチャンダイジングとは新商品の売場展開や販促物の設置、売場メンテナンスなど作業の効率化、売上最大化のための店頭管理のことである。本来小売業の役割だが、卸売業の豊富な情報に基づく効果的な売場展開や短期間に集中して人時をかけて完了させる売場実現力などは、小売が活用すべき重要機能である。

③情報提供機能は今後重視されるべき機能である。多数のメーカー、小売業と取引のある卸売業にはもっとも多くの情報が集まるといってよい。売り方の成功事例、商品開発のストーリー、商品特徴など、こうした情報がカテゴリー内のあらゆる商品に関して集まる。情報を整理して活用することが中間流通業の未来にもつながる。

④与信機能、代金回収機能などは「金融流」と呼ばれる分野である。私の台湾赴任時のエピソードでも紹介したように、これも重要な機能である。

⑤商品開発機能。アルフレッサ ヘルスケアでは、自社に集まる豊富な情報をもとに、医療に頼る前に自己治癒を目指す「セルフメディケーション」やそもそも病気にかかるのを防ぐ「セルプリベンション」という理念を掲げ、これらに合致する商品をメーカーと協働で開発している。メーカーのナショナルブランド(NB)商品、小売のプライベート(PB)商品とのすみ分けが必要になるが、卸に集る豊富な情報をもとに、適切なパートナーメーカーを選んで商品開発することも今後の中間流通業の可能性である。

⑥小売店経営指導機能。これはかつて小売業の大規模化が進む前に持っていた機能である。いまでは小売業の大規模化、経営の高度化で希薄になった機能ではあるが、私はこのDNAをベースに今後中間流通業には果たすべき使命、成長する領域があるとおもっている。それを最後に述べたい。

「つなげる力」を生かしたカテゴリーの最適化

欧米では、ウォルマートとP&Gの取組みに代表される、巨大企業同士の協働戦略、カテゴリーマネジメントは存在するが、それらの例は、少SKU、大量取引が前提となっており、日本の商習慣や風土には必ずしもそぐわない。

また、現在主流であるメーカーがカテゴリーキャプテンになり、カテゴリーマネジメントするのもたしかに効果を生むが、卸はより中立的な立場からのカテゴリーマネジメントが可能だろう。

中間流通業は製造と小売の文字どおり中間に位置して、両方の現場に関わるポジションである。これを生かして、カテゴリーの最適化、売上最大化をリードする「日本型カテゴリーマネジメント」の推進役になり、これを流通業が活用すべきというのが、私の提言である。

既述のように、日本には欧米と比較して、中小から大手までたくさんのメーカーとブランドが存在する。ヘアケアカテゴリーを例に取ると、中小メーカーから高単価高粗利のヒット商品が生まれることもあり、必ずしもシェアの高い商品から利益を取れるとは限らない。もちろん高シェア商品を低価格で集客するという戦略も必要となる。こうしたさまざまな事情を汲み取り、データを分析し、カテゴリーを最適化することは非常に難しい。

しかし、日本の卸売業なら、メーカー、小売双方の情報に通じ、知見を蓄えている。そこを、小売業の戦略に沿って、適切なメーカー、ブランドを組み合わせ、商品を編集する力、私はこれを「つなげる力」と呼んでいるが、この力を活用してカテゴリーの最適化、売上最大化の調整役を務めることができるのではないか。

「OODAループ」の活用で新世界を切り開く

「日本型カテゴリーマネジメント」を推進する際注意すべき点を指摘したい。

日本の卸売業はメーカーからの販売代理店契約に近い「帳合権」というものを持っており、これにより卸はメーカーから商品を仕入れて、小売へ販売して利益を得ている。ここで卸売業が行いがちなのは、メーカーとの間に帳合権があるからといって、そのメーカーの新商品をすべて店頭に配荷しようとすることである。

こうした「帳合権の罠」にはまることなく、今後は販売データの分析やマーケティングによって商品の価値や可能性を評価する能力をもっと磨くべきだ。お客が必要とする豊富な選択肢を提供するのと、帳合のあるメーカーの商品をなるべくたくさん店頭に並べようとするのは、まったく異なることである。

「日本型カテゴリーマネジメント」の推進には「OODA(ウーダ)ループ」と呼ばれる手法が有効ではないかとおもう。これはよくPDCA(Plan、Do、Check、Action)サイクルと比較される意思決定に関する考え方である。

OODAループとは、Observe(見る/情報収集)、Orient(仮説構築)、Decide(決定)、Act(実行)の各頭文字で、これをスピーディに何回も繰り返すのでループという言葉が付いている。店頭やメーカーで起こっていることから情報を収集し、仮説を立て、どのような施策を打つのか意思決定して実行する。結果を見ながらこれをスピーディに細かく繰り返す。市場と現場を見ながら仮説と検証を繰り返すというスピード重視のフレームワークである。

OODAループを体系的に実践できるのは、メーカー、小売双方の現場、現物、現時点に立つ卸売業がもっとも適しているとおもう。この研究と実践をお勧めする。

そして、OODAループを使って小売業とカテゴリー商談を行う。現在卸と商品部の間では、エンドなどプロモーション商談がメインではないだろうか。これを定番中心のカテゴリー商談へと変えていく。図表4はこうした商談や「日本型カテゴリーマネジメント」において、小売業がメーカーに求めるポイントである。ぜひ参考にしていただきたい。

これからの時代、若年世代のメディアへの接し方を見ていると、マス広告は効かなくなってくる。プロモーションの主戦場は店頭とWEBへと移るだろう。そのとき店頭プロモーションで主導的な役割を果たせるのは「日本型カテゴリーマネジメント」を推進する卸売業である。マス広告の膨大な予算が店頭へと移ることを考えれば、ここにも大きな可能性がある。

長年の経験と実績で培った「つなげる力」を卸売業は顕在的にも潜在的にも持っている。潜在的なパワーを呼び覚まし、本来持つ進取の気性をいかんなく発揮すれば、日本の卸売業は新しい世界を切り開くことができると私は信じている。

マツキヨ・スギ・ココカラの経営統合が実現すれば1兆5,000億円超の巨大DgSが誕生!?

平成最後の金曜日、2019年4月26日、業界第4位のマツモトキヨシHD(以下マツキヨHD)と、同7位のココカラファインが資本業務提携に関する検討と協議を開始すると発表しました(その後、経営統合も含む検討と協議に修正)。このビッグニュースに驚いていたら、令和元年の6月1日、業界6位のスギHDとココカラファインが「経営統合に向けた協議を始めた」という発表がありました。先行きはまだ不透明ですが、もし3社が経営統合すれば、売上高1兆5,000億円超の巨大ドラッグストア(DgS)チェーンが誕生します。

3社の出店戦略と立地戦略は共通している

3社の経営統合の話は唐突のように感じる人も多いと思いますが、経営指標を分析すると、3社には共通点があります。第1の共通点は、「出店戦略」と「立地戦略」が似ていることです。

2018年決算のDgSの「純増店舗数(新店数-閉店数)」の多い順の第1位は「ツルハHD」176店、第2位が「ウエルシアHD」158店、第3位が「コスモス薬品」85店、第4位が「クスリのアオキHD」72店と続きます。それに対して、マツモトキヨシHDの2018年決算の純増店舗数は49店、スギHDは57店、ココカラファイン18店と、ツルハHD、ウエルシアHDと比較すると、店舗増加率が低いことがわかります。

さらに、2017年決算の純増店舗数は、マツモトキヨシHD10店、ココカラファインはマイナス3店舗と、マツモトキヨシとココカラファインは、この2~3年の店舗増加数が停滞していたことがわかります。ちなみにスギHDの2017年決算の純増店舗数は52店です。

2社の店舗増加数が停滞していた理由は、「スクラップ&ビルド」の期間にあったということです。とくにマツモトキヨシは、2105年頃から、不採算店のスクラップを断行して、一時的に減収になっても、営業利益率(2019年決算の営業利益率6.3%)の高い、「筋肉質の経営体質」に改革しました。大店法の規制時代に大量出店した「150坪の郊外店」を思い切って大量閉店しました。この決断はなかなかできないことです。店舗年齢の古い既存店は、店舗の償却が終わっており、売上は減少傾向にあるが、営業利益が出ている店舗が多いからです。競争力はないが、儲かっている既存店をスクラップすることは、短期的には売上と利益の減少要因になります。しかし、マツモトキヨシは、この3~4年の間に、スクラップを断行し、筋肉質の経営体質に改革したことは、とても評価できることだと思います。

同様に、ココカラファインもスクラップ&ビルドを進める途上にあると思われます。3社の中では、純増店舗数が多いスギHDは、「古い店舗を閉めない」ことで有名でしたが、これからは既存店のスクラップ&ビルドを推進すると決算発表で強調しています。そういう意味で、スクラップ&ビルドを進めているという意味で、3社の出店戦略は共通しています。

第2の共通点は「立地戦略」です。マツモトキヨシHDは、郊外店を閉店する反面、都市型・繁華街型の出店を加速しています。ココカラファインは、1,354店のうち、比較的人口の多い「都市型179店」「商店街型332店」「住宅地型389店」で大半を占めています。「郊外型」立地の店舗は208店に過ぎません。主戦場は人口の多い立地であることがわかります。

スギHDは郊外型店舗も多いですが、2019年決算では過去最高の101店の新店を開店しており、純増店舗数も84店舗と、出店競争の巻き返しを図っています。しかも、大阪や東京の「都心部」への新規出店を加速しています。

化粧品と医薬品が強く食品の構成比が低い

図表1は、上場DgSの食品の売上構成比です。食品の売上構成比が50%を超えるDgSもある中、マツモトキヨシHDの食品の売上構成比は9.7%と極めて低いのが特徴です。同様に、ココカラファインは11.0%、スギHDは12.9%(図表1では未掲載)と、3社ともに食品の売上構成比が低いことが共通しています。

一方、図表2は、スギHDを除く「化粧品」の売上構成比のランキングです(2018年決算の数値)。第1位がマツモトキヨシHDの40.5%、第2位がココカラファインの29.8%です。食品が少なく、化粧品が主力であることが、この2社の共通点です。ちなみにスギHDの「ビューティ」の売上構成比は、2018年決算では22.0%です。

図表3は、スギHDを除く医薬品(調剤含む)の売上構成比のランキングです。マツモトキヨシHD 33.9%、ココカラファイン33.9%と、医薬品の構成比が高いことが共通しています。図表4は、「調剤」の売上構成比のランキングです(2018年決算)。調剤の売上構成比は、スギHDが21.9%とダントツの1位です。

スギHDは「ヘルスケア(OTC含む)」の売上構成比が18.6%であり、「調剤」+「ヘルスケア」で40.5%と、ヘルスケア特化型の企業です。ココカラファインの調剤比率も15.6%と高く、スギHDとココカラファインは、「調剤併設型DgS」を志向していることがわかります。マツモトキヨシは、調剤の売上を公表していませんが、1店舗当たりの調剤売上はトップクラスだそうです。

調剤は、「診療報酬」の改訂によって、調剤の単価が下落し、「薬価」(調剤の粗利益率)も低下しています。調剤は、「薄利多売」で儲けなければならないので、必然的に調剤主力型の企業は、ボリューム(量)を求める必要があり、経営統合に前向きなのだと思われます。

ちなみに、アメリカのDgSは、調剤の売上構成比が70%を超えています。かつては、ローカルDgSがたくさんありましたが、どんどん経営統合が進み、現在は、「ウォルグリーン」と「CVS」の2社に集約されています。日本も、そうなるのでしょうか?

スマートストア化に積極的に投資

マツモトキヨシHDは、売上・顧客データ分析に基づく売場づくりに定評があります。また、「マツキヨアプリ」を使った顧客獲得施策、ワントゥワンマーケテイングに接客的に取り組んでいることでも知られています。同社のポイントカード会員、LINEの友だち、公式アプリのダウンロード数を合計したグループ会員数は、延べ5,100万人超(2017年9月末現在)まで拡大しています。

またココカラファインもクラブカードの会員が700万人を超え、カード会員に「ココカラアプリ」を利用してもらう活動を進めている途中です。2019年の経営方針には、「おもてなしスマートストア化」という戦略を掲げています。全店舗のレジシステムを今年の9月までに入れ替える計画です。また、陳列状態をリアルタイムで可視化できる「棚割確認システム」、「無人レジ」「マーケテイングカメラ」、タブレットを活用した「化粧品のカウンセリングシステム」などのITを活用したイノベーションにも積極的に挑戦しています。

スギHDも、スマホアプリ「スギサポdeli」(栄養に配慮した冷凍食品の宅配)、「スギサポeats」(管理栄養士を活用した食事指導)、「スギサポwalk(歩行距離に応じてマイル/ポイントが貯まる)」など、デジタルを活用したトータルヘルスケアサービスを推進しています。

このように3社とも、DgS業界の中においては、攻めのIT投資を行っている企業ということが共通点です。もし3社が経営統合すれば、会員データという巨大なビッグデータを活用することができるようになります。

(※編集部注:本記事は2019年6月6日時点の情報をもとに執筆されたものです)

日本の小売業が直取より卸売業を活用すべき理由

小売業の大規模化と寡占化は進行しており、ドラッグストア(DgS)も例外ではない。2018年度の決算では上位5企業が売上高5,000億円を超えており、2019年度の通期予想で7,000億円を超える売上高を見込んでいる企業もある。これに加えて、ECの台頭、科学技術の発達、趣味嗜好の多様化、人口減少など消費や流通を取り巻く環境は激変の中にある。こうした時代、日本の中間流通業はどこに進路を取ればよいか、日用雑貨・トイレタリーの分野に関して、歴史を振り返りつつ未来戦略を提言する。(ニュー・フォーマット研究所 副社長 村瀬 一弘/月刊マーチャンダイジング2019年5月号より転載)

価格決定力の推移で見る流通業の歴史と勢力図

私の前職はある外資系消費財メーカーの営業担当で、入社した1980年ころには日用雑貨・トイレタリー用品の卸(中間流通企業)は三次卸の存在も含めると、それだけで2,000社ほどあったとおもう。現在は恐らく200社あまりになっているのではないか。まず、こうした中間流通業界の変動を振り返るとともに、本稿で述べる中間流通業、卸売業というのは、DgSの主力部門のひとつである日用雑貨・トイレタリー用品を扱っている企業に限定していることをお断りしておきたい。

図表1は流通市場における「価格決定力」の動向の変化を示している。価格決定力とは、メーカーの立場からは、時間をかけて開発・製造した製品がどれだけの利益をもたらすかを決定するものであり、卸、小売からすれば同業他社に優位に立ちどれだけのお客を集め、利益を残せるかという生命線で、サプライチェーン(製造から消費者に商品が届くまでの取引経路)に関わるすべての事業者の成否を分ける重要な要素となる。これを巡る勢力争いが流通の歴史と考えることもできる。

[図表1]価格決定力の動向の移り変わり(NFI作成)

戦後、モノの少ない時代は国内製造業の生産力もまだ弱く、限られた商品をいかに消費者まで分配するかが流通のカギであり、そのカギを握るのは卸売業であった。

1960年代、高度成長期に入ると日本の製造業も生産力を付け、メーカーの力が大きくなってくる。化粧品や大衆薬(OTC)メーカーは小売業を系列化して自社の影響力を強めていた。日用雑貨・トイレタリー用品メーカーは、自社製品の販売権を与えた「代理店」と呼ばれる卸を各都道府県に置いて価格決定に関しても強い影響力を持っていた。

小売業に割引販売を許さない「再販制度」や卸・小売の利益も見込んで、あらかじめメーカーが販売価格を決める「建値制」と呼ばれる商習慣も一般的であった。

卸や小売の自由な活動を極端に制限するような再販制度は、公正取引委員会の指示で是正されていくが、それでもメーカー優位の時代はしばらく続く。しかし、1990年代に入り、化粧品の再販制度が廃止されるなど、価格決定権は次第に小売業へと移っていく。この背景には規模を拡大した小売業が全国に多店舗展開(チェーン展開)し、一企業で大量の仕入れを行う力、いわゆるバイイングパワーを付けたことがある。

小売業が広域展開し大規模化すると同時に、各地域に高速道路網が整備され、都道府県を越えて広域にモノを運ぶ物流が可能になる。それ以前は、各都道府県に1店、もしくは数店あるメーカーからの指定を受けた「一次卸」と呼ばれる卸売会社が商品を仕入れ、そこからさらに二次卸、三次卸といった下流の卸に商品が供給され、地域内の店舗にモノが行き渡る流通経路が一般的だった。つまり、都道府県単位で一次卸を頂点に、ピラミッド形をした多数の卸が、メーカーから供給された商品を小売業へと配荷して利益を分け合っていたのである。

ところが、小売業の広域多店舗展開と高速道路網の整備で、こうしたやり方は著しく効率が悪くなる。山で越えられなかった県境を高速道路でやすやすと越えられるなら、積載力のある大型トラックで広域にモノを運んだ方が効率がよいのである。

また、大企業化した小売業と対等に商談し、提案していくためにも中間流通業は規模を拡大して、情報収集力や資本を蓄える必要性に迫られた。こうして、地方の中小卸の合併が相次ぎ、中間流通企業は社数を減らしながら規模を拡大させていくことになる。

さらに2000年代に入ると、ブランドの数や有力な小売業の店舗数が増え、消費者は商品や店を選ぶ時代に入る。さらに、生産性向上に伴い商品が過剰に供給され始め、価格決定力は消費者、小売業とサプライチェーンの下流に移っていく。この流れはいまも続いている。

市場への影響力を強めるため直接取引を目指す

価格決定力がメーカー優位であった1960年代、花王(当時花王石鹸)は市場への影響力を強めるために、いい換えれば価格決定力の優位性を保つために、自社製品専門の卸売会社(販社)をつくる。卸を使わずに中間流通機能を自社で持つ、いわゆる「直接取引(直取)」の本格的な開始である。これに刺激を受けたライオン(当時ライオン石鹸)も販社こそつくらなかったが、自社製品を主力で扱う卸売業を増やし、中間流通において系列網を強化(サブシステム化)していく。

花王はいまに至るも直接取引を継続しているが、これを試みて成功しなかったメーカーも私が知る限りでも数社ある。

私は前職で営業の責任者をしていたとき、リージョン(アジア地域)責任者の意向により、「直取をしたいのでコストと必要な従業員数を算定せよ」というミッションを受けたことがある。そのとき一定期間をかけ調査した結果、数百億円の投資と数百人規模の人員が必要なことがわかった。これを責任者にリポートしたところ、結局直取は断念せざるを得なくなった。

直取には優れたところがあるので、これを否定するものではないが、私の考えではメーカーは、日本の卸売業の優れた機能を大いに活用すべきだ。バラからケースまでのきめ細かな配送、安定した代金回収、店頭のメンテナンスなど、日本の卸売業はメーカーを支援する機能を総合的に持っており、これは日本特有のビジネスモデルである。

私が前職の外資系メーカーで台湾の営業責任者をしていたとき、円換算で年商200億円程度でほぼ直取だった。当時、売上の入金遅れや金額違いをチェックするために専任で3人ほどのスタッフを貼り付けていた。それほど、頻繁に入金日や金額の間違いは起こり、確実な代金回収には手間暇がかかるのだ。一例だが、日本の卸売業はこうした手間暇のかかる業務を着実に実行している。

日本と欧米では商習慣が大きく異なる

欧米には日本的な卸売業はなく、ウォルマートなど大手小売業は自社の物流センターで在庫管理をしてメーカーから直接商品を受け取り、各店に配送する物流機能を自社で持っている。自社物流に加えて、商品回転の速いものはメーカーから店舗へ直送させるなど、商品回転率や定番商品、シーズン商品などによって直接取引、自社のセンター経由など物流方法を使い分けている。

また、欧米には卸の機能を個別に持ったアウトソーシング企業が存在し、小売業がそれらを利用することが多い。たとえば、日本の卸が行っている情報収集やマーチャンダイジングなどはマーケティングエージェンシーが代行することが多い。

こうした機能の違いに加え、日本と欧米の流通事情の決定的な違いは、メーカー、ブランドの数である。欧米ではメーカー、ブランドの数が日本と比べると極端に少なく、商品管理がしやすいので比較的容易に直接取引できる。ところが、日本の場合ひとつのカテゴリーに多数のメーカー、ブランドがひしめいており、小売からすれば、一メーカーごとに直接取引していては効率が悪い。

また、日本は春と秋に棚替えされるのが一般的だが、欧米ではメーカー、ブランドの数が日本ほど多くのないので、決まったタイミングではなく新商品が発売されたタイミングで随時棚替えが行われる。

多ブランド並立でリニューアル品の多い日本のカテゴリー状況で、欧米のような頻繁な棚変えは難しいだろう。しかし、春の棚変え後1、2ヵ月で販売データをチェックして売れない商品は入れ替える。秋も同様にチェックして、修正する。死に筋商品が次の棚変えまで売場を占拠するのは非効率なので、戦略的な重要カテゴリーでは、卸売業と協働して、こうした修正・チェックを含め年4回程棚変えをしてもよいのではないか。

このように日米の商習慣は大きく異なるので、必ずしも直取が最善策ではない。日本の場合、卸売業をサプライチェーンの中に取り込んだ方が売上の最大化につながる。

図表2では卸売業の機能とメーカー、小売業が期待する機能をそれぞれ書き出してある。ロジスティクス(物流)は当然のこと、マーチャンダイジング、情報提供、商材調達といった機能は、特集記事のトップインタビューの中で、各トップが詳細に語っている。

[図表2]中間流通業の機能

アルフレッサ ヘルスケアではトータル・ヘルスケア・マーチャンダイジング・ホールセラーというスローガンを標榜して「専売商品」と呼ばれるカウンセリングで販売する高粗利商品を開発・販売している。販管費増加で縮小傾向にある営業利益を伸ばすには格好の商材である。

パルタックは先進的なデジタル技術を物流センター(RDC)に採用することで生産性を上げ商品の安定供給に努めている。さらに、AIを取り入れた無人レジの実験に着手するなど、デジタル技術で小売業の省人化や生産性アップまでをサポートする態勢を整えている。

あらたでは、購買履歴の調査や販促計画の立案・実行などをグループ企業と一緒に進め、物流以外の機能強化を進めている。メーカーとの共同販促を単なる販促で終わらせることなく、結果検証、次の施策への反映などデータ分析に基づき小売業へ提案をしている。

小売業は卸の持つこうした現状をいま一度認識して最大限に活用した方がよい。卸の進化した機能をチェックすれば、自分たちが十分認識していなかった新しく優れた機能を発見するはずである。

MD NEXT運営元のニュー・フォーマット研究所では、上記の卸売業の機能やメーカーの進化に関する詳細な資料をご用意しました。ご興味がある方は、ぜひ以下からご連絡先をご入力ください。追って担当者からご連絡させていただきます。(メーカー様に限定させていただきますのでご了承ください)