今週の視点

アマゾンゴーに続け!?

第72回PALTACが提携した米国企業のレジフリー実験店を見てきた

話題のアマゾンゴーのように天井の「AIカメラ」で購買行動を補足し、レジを通らないで買物が完結するレジフリー方式を「ジャスト・ウォークアウト」(Just Walk Out)といいます。アマゾンゴーに続く最新事例を紹介します。

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サンフランシスコのダウンタウンにある「スタンダードストア」。

アメリカ小売業で起きている3つのトレンドは「レジフリー」「BOPIS」「差別化」

カメラで購買行動を補足するジャスト・ウォークアウト方式

アメリカのスタートアップ企業「スタンダードコグニション社(Standard Cognition)」が、米国サンフランシスコのダウンタウンで実験中の「スタンダードストア」を見てきました。日本の大手卸売業「PALTAC」が提携して話題になった企業です。

東北のドラッグストア「薬王堂」が、スタンダードコグニション社(以下SC社)の技術を導入して、レジなし店舗の実験を開始する計画です。SC社は、今年の6月に東京オフィスを開設し、日本でも小売業向けの「レジ無人化システム」の導入を計画しています。

SC社の技術は、アマゾンゴーと同様に「AIカメラ」でお客の購買行動を補足し、お客は商品を自分のバッグに入れて、そのまま退店すれば精算が完了します。アマゾンゴーとの違いは、アマゾンゴーよりもカメラの台数が少なくてすむため、投資額が低いことです。また、アマゾンゴーは棚に「重量センサー」が付いていますが、SC社の技術では「カメラのみ」でお客の購買行動を補足できます。

さらに、アマゾンゴーのAIカメラが記録したお客の「購買前行動」のデータは原則非公開になるであろうと推測されるのに対し、SC社は「購買前行動」のビッグデータを小売業や取引メーカーに公開します。AIカメラが記録した「ショッパーリサーチ」のマーケティングデータを、製配販で分析し、売り方の改善に結びつけられるのは魅力ですね。

SC社のプレゼン用の実験店。日本人の見学者も多いのか、売場には日本語表示もある。

退店してから約10分後に電子レシートが来る

事前に「SC Checkout」の無料アプリをダウンロードし、メールアドレス、パスワード、クレジットカード情報を入力すると、下の画面が出てきます。入店した後に、「CHECK IN」を押すと買物がスタートします。

スタンダードストアは、あくまでもSC社のプレゼン用のモデル店舗なので、営業時間も平日3時間程度です。売場面積は約40坪の小型店で、1回に来店できる人数は5人以内に制限されていました。この店舗でデータを蓄積し、本格的な「レジ無人化システム」の実現を目指している段階のようです。スタンダードストアは、ノースカロライナ、トロント、ヒューストンにもありますが、売場面積の小さな「売店」からスタートしています。

店内には約30台のカメラがあります。商品を棚から取って、店の外に出ると、買物が完了します。店を出てから約10分後にアプリに電子レシートが飛んできます。今回体験した人達の中で「合法的万引」に成功した人はおらず、カメラのみで購買行動を正確に補足していました。

AIカメラのみで購買行動を補足する。
約10分後にアプリに電子レシートが飛んできた。

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。