今週の視点

「来店目的」を増やすことが最大の売上対策

第67回アマゾンハブ、BOPISで客数と客単価を増やす

ファミリーマートが「アマゾンハブ」を導入します。純増店舗数が横ばいもしくは減少傾向のコンビニは、新店よりも既存店の売上を増やすことが重点政策に変化しています。アマゾンロッカーを設置することで、「来店目的」を増やし、既存店の客数増を目指しているようです。

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アマゾンロッカー利用客の60%は商品を購入する

日本全国での展開を計画している「アマゾンハブ」は、2つの受け取り方法があります。アマゾンで注文した商品を無人で受け取る「アマゾンロッカー」方式と、受け取りカウンターで人を介して商品を受け取る方式です。

アメリカでは2012年頃からアマゾンハブの導入が進められています。アメリカの「セブンイレブン」、DgS(ドラッグストア)の「ウォルグリーン」、スーパーの「セーフウェイ」などの店内にアマゾンロッカーが設置されています。

5年ほど前にニューヨークのマンハッタンにあるアマゾンロッカーを設置したセブンイレブンで話を聞く機会がありました。店のマネージャーによれば、ロッカー設置店舗は未設置店舗よりも客数が多く、ロッカー利用者の60%は店舗で買物し、店舗だけの利用者と比較して客単価は2倍にもなるそうです。

つまり、アマゾンロッカーに商品を受け取りに来ることで、客数が確実に増えます。また、来店客の60%は店内で衝動購買し、店舗だけの利用者よりも買上点数が多いので客単価が高い優良顧客です。この3つが、アマゾンロッカーを設置したリアル店舗のメリットです。

オンライン注文→店補受取で客数と客単価を増やす

3年間で1万5,000店補の店が閉店する大量閉店時代に突入したアメリカ小売業界は、新店投資で売上を増やすよりも、オムニチャネル化で既存店、既存顧客の売上を増やす戦略に大きく変化しています。

日本では、DgSは「大量出店時代」の真っただ中ですが、コンビニの出店に急ブレーキがかかるなど、他の業態の新規出店ペースは減速しており、既存店の売上を増やすことが重点経営課題に変化していくと思われます。

3年間で約1万5,000店も閉店したアメリカ小売業は、日本の未来か!?

既存店の売上(客数×客単価)を増やすためのひとつの方法が、地域に暮らす生活者の「買物目的」を増やすことです。アマゾンロッカーを設置することも、来店目的を増やす手段のひとつです。さらに、重要なことは商品を受け取りに来店したお客の「衝動購買」を誘発し、買上点数を増やすことです。

「BOPIS」という新しいサービスを拡大することで、アメリカの「ウォルマート」は、新店をつくらないで既存店の売上を4%も増やしました(2019年決算数値より)。BOPISとは、「Buy Online Pick-up In Store」の頭文字をとったものです。スマートフォンで注文した商品を、お客が店舗で受け取るサービスです。

アプリで注文して駐車場で受け取る「カーブサイド・ピックアップ」に注目

オンラインで注文したお客の60%以上は、店舗受け取り(BOPIS)を選択するそうです。宅配よりも店舗に取りに行った方が、時間を自分で選べるし、便利と考えるお客が多いことがわかります。つまり、BOPISのサービスを導入することで、来店目的が増えて、既存店の客数が増える効果があります。

また、アマゾンロッカー同様に、BOPISで来店したお客の多くは、店舗でなんらかの商品を購入するそうです。ウォルマートの「ピックアップタワー」(オンラインで注文した商品を無人で受け取るタワー)の近くには、衝動購買を誘発する商品を陳列する売場を設置しています。

ウォルマートのピックアップタワー。全店導入も間近。

日本もこれから人口が減少し、オーバーストアによって1店舗当たりの商圏人口は減少していきます。「買物目的を増やす」→「客数を増やす」→「衝動購買で買上点数を増やす」ことに貢献する店舗受け取りサービスを提供することは、狭小商圏で売上を増やすための重要な選択肢だと思います。

スーパーやDgSの店頭に設置している「給水サービス」も、水を汲みにくるという来店目的を増やして客数を増やすサービスですね。物販以外の「サービスで客数を増やす」という戦略は、これからは重要だと思います。

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。