今週の視点

米国のリアル店舗で急速に普及中

第53回アプリで注文して駐車場で受け取る「カーブサイド・ピックアップ」に注目

お客が、スマホのアプリで買物商品を注文すると、店舗のスタッフが売場を回って商品をピックアップ(買物代行)し、駐車場の専用場所で買物商品を受け取れる「カーブサイド・ピックアップ」が、アメリカで急速に普及しています。「買物時間」を短縮できる新しい「買物体験」が、アメリカの消費者に支持されているようです。

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ダラス郊外のシャーマン地区にあるウォルマートスーパーセンターでは、店舗の側面のカーブサイド・ピックアップで、オンラインで注文した商品を無人で受け取ることができるサービスを開始した。

「完全無人」で商品を受け取れるウォルマート

テキサス州のダラス郊外のシャーマン地区にあるウォルマートスーパーセンターでは、カーブサイド・ピックアップをオートメーション化(無人化)する実験を行っています。「ウォルマート・グローサリー」という名称で、オンラインで注文された生鮮食品を含むすべての商品を、自動販売機のような仕組みで無人で受け取ることのできるサービスです。

上記の写真のように、店の左側面が一面ピックアップのスペースになっています。「オートメイテッド(自動)・ピックアップ」のスペースは、横幅が約40m、5つの専用窓口でピックアップできます。消費者は、スマホのアプリを使ってオンラインで商品を注文し、指定した時間に車でピックアップスペースに取りに行けば、店内に入らないで買物を完結することができます。

カーブサイド・ピックアップに車を駐車し、注文商品を無人で受け取ることができる。
専用の窓口(端末)にスマホに届いたコードをかざすと、買物袋に入った注文商品を自動で運んでくれる。わずか1~2分で商品が運ばれる。

消費者は、ピックアップスペースに車を駐車し、上記写真の窓口(端末)に、スマホに届いたコードをかざすと、1~2分後に扉が左右に開きます。3つの青い箱(オリコンのような箱)に置かれた買物袋(注文商品)を取り出すことができます。注文商品が多い場合は、「2グループのうち1つを用意できました。バッグをお取りください」と表示されて、次のグループの商品が再度運ばれてきます。買物袋に入った注文商品をすべて取り出すと、扉が自動的に閉まってピックアップが終了です。スタッフから手渡しされる従来のピックアップ・サービスよりも、無人のオートメイテッド・ピックアップの方が手軽なので、利用者が増えているそうです。

一方、テキサス州とメキシコに約400店を展開するリージョナルスーパーマーケットの「HEB」は3年前から、カーブサイド・ピックアップの実験を開始し、現在では100店以上の店舗に導入しています。カーブサイド・ピックアップの1日の注文件数が50件以上、平均の客単価が120ドルの店もあり、リアル店舗での買物プラスアルファの売上増に貢献していることがわかります。ネットスーパーを別にやるよりも、店内商品をヒックアップした方が在庫や廃棄のロスが少なくて、効率的だと思います。

カーブサイド・ピックアップに取り組む「ウォルマート」と「HEB」には、オンラインで注文した商品を店内でピックアップ(買物代行)する専門スタッフがいます。ウォルマートは、専用のショッピングカートで商品をピックアップしていました。一方、「HEB」は大量の注文を処理できるような専用のカートでピックアップしていました(下の写真)。

ネットで何でも買える時代において、リアル店舗の価値づくりこそが、もっとも重要な経営戦略です。「リアル店舗で買える」「オンラインで注文して配達してくれる」「オンラインで注文して店で受け取ることもできる」といった買物の「選択肢」を増やし、リアル店舗の買物をもっと便利にすることが、リアル店舗がネット販売に対抗するための回答のひとつだと思います。

オンラインで注文された商品を売場でピックアップする専用スタッフ(ウォルマート)。
大量の注文をさばけるように専用カートでピックアップしているテキサス州のリージョナルスーパーマーケット「HEB」。

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。