アプリで精算が完了するスキャン&ゴー
Amazon Goは、カメラと重量センサーなどの技術で、商品をスキャンしなくても買物状況を把握し、精算が完了する仕組みです。一方、多くのアメリカ小売業が実験している「スキャン&ゴー(Scan&Go)」は、お客がスマートフォンアプリのスキャナーで商品を自分でスキャンして、最後はアプリ内に登録されたカードで精算する仕組みのことです。
アメリカ最大のSM(スーパーマーケット)企業の「クローガー」は、「スキャン&ゴー」の実験を順次進めています(下の写真)。当面は、専用の端末を使ってお客が自分で商品のバーコードをスキャンして、最後はセルフレジに専用端末をかざして一括精算する方法を実験しています。
また、専用のスマートフォンアプリを使って、セルフレジを通さなくてもアプリ内で精算を完了する実験も開始しました。将来的には、スマートフォンアプリを使った精算方法が本命のようです。なぜならスマートフォンアプリを使った精算であれば、店舗にレジがなくなり、人の生産性が飛躍的に向上するからです。
ウォルマートも、MWC(メンバーシップホールセールクラブ)の「サムズクラブ・ナウ」(売場面積900坪の小型店)で、スキャン&ゴーの実験を開始しました。この店にレジは存在しなくて、スマートフォンアプリだけでスキャンと精算が完結する仕組みです。レジなしのスキャン&ゴーの課題は、スキャンしないで商品を持ち帰る万引きや不正への対応です。サムズクラブ・ナウの天井には多くの監視カメラが設置されており、Amazon GOのようにカメラで不正を防ぐ実験を行っているようです。
ウォルマートは、スーパーセンターよりも買上点数の少ない小型店舗のサムズクラブ・ナウでレジなし店舗のオペレーションを実験しています。出口には、スマートフォンや買物商品を確認する専門の担当者が常駐していました。
店内作業の約30%を占めるレジ作業がなくなる
下の図表は、あるDgS(ドラッグストア)で1か月間、「作業棚卸」を実施した結果です。なんらかの形で商品に触る作業で、店内作業全体の60%以上を占めていることがわかります。しかも、レジ作業が26%と店内作業の30%近くを占める最大の作業項目なのです。
もし将来、レジなし店舗でのスキャン&ゴーによる精算が主流になると、小売業の「人の生産性」は飛躍的に向上します。しかも、レジ担当者の教育にかかるコストは膨大です。レジ担当者の教育コストも考慮すると、非常に大きな経費の削減につながります。5~10年後、レジもなく、キャッシャー(会計係)もいない店舗が主流になっているかもしれませんね。