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有給取得義務化に対する施策実施済み企業は7割超
Q5:5日間の有給取得義務化に対し、従業員向けになんらかの施策をしましたか?または予定はありますか?
全従業員実施済みが7割超。ただし検討中の企業も
「有給取得義務化」は4月から適用が開始されている法律の対応とあって、全従業員へなんらかの施策を実施している企業が7割超(75%)となった。ただし検討中の企業もあり、今後の対応が急がれる。
法定有給「20日」のうち「5日」の取得や、パートタイマーの有給取得に対して感じるハードルは、企業によってかなり差があるだろう。しかし、とくに家庭の事情を抱えていることが多いパートタイマー人材には、有給制度の運用実績が募集時のアピールポイントにもなる。ぜひ人材獲得にプラスになると捉えたい。
また、義務化にあたっては、続くアンケート調査にもあるように取得させる方法はさまざまである。自社の状況を踏まえて、組み合わせるとよいだろう。
Q6:有給取得義務化に対する具体的な施策は?
■5日取得義務化を実行するための方法について
計画年休や推奨日の設定など多様な施策で対応
周知・指導だけでなく、期日を設ける、期間を区切るなど方法は分かれた。また、企業や個人単位で計画年休を導入したり、推奨日を設定するなど各社の工夫が見られる。
その他には、「長期休暇取得制度」の取組みもあった。従業員が「一定期間職場を離れる」ことは、従業員自身がリフ㆑ッシュできるのはもちろん、業務の「属人化(特定の人に仕事がつき、その人がいないと業務が回らない状態)」を防ぐ効果もある施策だ。
■店舗・組織運営上の有給取得推進の工夫
雰囲気づくりがトップ。新規人員の採用や閉店も検討
施策の中では、「休みやすい」雰囲気づくりがトップだった。漠然とはしているものの、「休みづらい」雰囲気の日本企業にとっては、これも立派な施策のひとつといえる。続く「新規人員の採用」がうまくいくかどうかは、従業員のための「働き方改革」ができているかに左右されるといえる。さらに、営業日・時間を減らす、閉店を検討している企業もあった。
■人事労務管理上の工夫
データ整備が最多。導入予定はシステムが最多
この機会に有給管理簿をデータで整備したという企業がもっとも多かった。紙の整備でも法律的には問題ないが、少なくともデータ整備、できればシステムの導入をおすすめする。
有給を適切に管理するのはもちろん、従業員の勤怠管理を人手で管理する手間は極力、効率化しておきたいところ。それが、バックオフィスの働き方改革につながるだろう。
施策の実施で「自身の計画が崩れる」という意見も
Q7:有給取得義務化に関して従業員の反応はどのようなものですか?
フリーコメントを一部紹介する。
◆どちらかといえば肯定的である
◆どちらともいえない・わからない
実際の取得には不安も多い
「とても肯定的である」+「どちらかといえば肯定的である」が8割弱(76%)と有給取得義務化自体には肯定的との見方が大勢を占めた。
必要時に取得できるようにするのはもちろん、普段できない家庭や地域の役割を担う日、生活者としての視点を磨く日として、積極的に有給を利用できるとなおよいだろう。
また、職場のだれかがいつでも有給を取得できる状況をつくることは、Q6でも触れた業務の「属人化」防止にも効果的である。有給取得によって業務が滞ることや、作業品質の低下を不安視する現場を心配する声も一定数ある。こうした不安の声を払拭するためにも、業務の見直しと改革を進めたい。
調査概要
- 調査時期/2019年6月
- 調査方法/無記名式書面アンケート
- 有効回答数/設問によって異なる(各図表に明記)
※グラフ表記については、小数点以下四捨五入のため、100%にならない場合もある。回答者属性
- 協力社数/25社ドラッグストア22社、食品スーパー1社、総合スーパー1社、ホームセンター1社
- 対象者/人事もしくは労務部門の責任者、総務、店舗運営部門などに所属する担当者(各社1名が回答)