採用難時代のES向上 25社アンケート②

[小売業働き方改革のリアル]5日間の有給取得義務化は7割超の企業が実施済み

月刊MDによるドラッグストアおよび小売業各社へのアンケート調査第2回。今回は有給取得義務化について、具体的な施策や従業員の反応などを聞いた。(月刊マーチャンダイジング2019年8月号より転載)(分析・執筆/社労士事務所ワークスタイルマネジメント・小林麻理 調査/月刊マーチャンダイジング編集部)

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前の記事「労働時間削減に8割弱が肯定も、残業代減への不安残る」はこちら

有給取得義務化に対する施策実施済み企業は7割超

Q5:5日間の有給取得義務化に対し、従業員向けになんらかの施策をしましたか?または予定はありますか?

全従業員実施済みが7割超。ただし検討中の企業も

「有給取得義務化」は4月から適用が開始されている法律の対応とあって、全従業員へなんらかの施策を実施している企業が7割超(75%)となった。ただし検討中の企業もあり、今後の対応が急がれる。

法定有給「20日」のうち「5日」の取得や、パートタイマーの有給取得に対して感じるハードルは、企業によってかなり差があるだろう。しかし、とくに家庭の事情を抱えていることが多いパートタイマー人材には、有給制度の運用実績が募集時のアピールポイントにもなる。ぜひ人材獲得にプラスになると捉えたい。

また、義務化にあたっては、続くアンケート調査にもあるように取得させる方法はさまざまである。自社の状況を踏まえて、組み合わせるとよいだろう。

Q6:有給取得義務化に対する具体的な施策は?

■5日取得義務化を実行するための方法について

計画年休や推奨日の設定など多様な施策で対応

周知・指導だけでなく、期日を設ける、期間を区切るなど方法は分かれた。また、企業や個人単位で計画年休を導入したり、推奨日を設定するなど各社の工夫が見られる。

その他には、「長期休暇取得制度」の取組みもあった。従業員が「一定期間職場を離れる」ことは、従業員自身がリフ㆑ッシュできるのはもちろん、業務の「属人化(特定の人に仕事がつき、その人がいないと業務が回らない状態)」を防ぐ効果もある施策だ。

■店舗・組織運営上の有給取得推進の工夫

雰囲気づくりがトップ。新規人員の採用や閉店も検討

施策の中では、「休みやすい」雰囲気づくりがトップだった。漠然とはしているものの、「休みづらい」雰囲気の日本企業にとっては、これも立派な施策のひとつといえる。続く「新規人員の採用」がうまくいくかどうかは、従業員のための「働き方改革」ができているかに左右されるといえる。さらに、営業日・時間を減らす、閉店を検討している企業もあった。

■人事労務管理上の工夫

データ整備が最多。導入予定はシステムが最多

この機会に有給管理簿をデータで整備したという企業がもっとも多かった。紙の整備でも法律的には問題ないが、少なくともデータ整備、できればシステムの導入をおすすめする。

有給を適切に管理するのはもちろん、従業員の勤怠管理を人手で管理する手間は極力、効率化しておきたいところ。それが、バックオフィスの働き方改革につながるだろう。

施策の実施で「自身の計画が崩れる」という意見も

Q7:有給取得義務化に関して従業員の反応はどのようなものですか?

フリーコメントを一部紹介する。

◆どちらかといえば肯定的である

責任感の強い従業員は、時間短縮で仕事の精度が下がることを懸念している傾向が見受けられる。
有給取得が進むことにより業務が滞る・負荷が増えることを危惧する従業員はいる。
いままでなかなか利用できなかったため、積極的に利用していきたいが、現場の状態を考えると不安が残る。

◆どちらともいえない・わからない

従業員の個人的な意見としては有給休暇の取得日数が増えることに肯定的であるが、所属長はじめ管理者からすれば労働時間の減少になるため否定的である。
病気になったときなどのためにあえて消化したくない従業員もいる。
有給付与期間の設定により、自身の計画がずれるといわれた。いままでは、有給の使用に関して推進してきたのだが、かえって使用の制限が発生するようになってしまったから。

実際の取得には不安も多い

「とても肯定的である」+「どちらかといえば肯定的である」が8割弱(76%)と有給取得義務化自体には肯定的との見方が大勢を占めた。

必要時に取得できるようにするのはもちろん、普段できない家庭や地域の役割を担う日、生活者としての視点を磨く日として、積極的に有給を利用できるとなおよいだろう。

また、職場のだれかがいつでも有給を取得できる状況をつくることは、Q6でも触れた業務の「属人化」防止にも効果的である。有給取得によって業務が滞ることや、作業品質の低下を不安視する現場を心配する声も一定数ある。こうした不安の声を払拭するためにも、業務の見直しと改革を進めたい。

調査概要

  • 調査時期/2019年6月
  • 調査方法/無記名式書面アンケート
  • 有効回答数/設問によって異なる(各図表に明記)
    ※グラフ表記については、小数点以下四捨五入のため、100%にならない場合もある。

回答者属性

  • 協力社数/25社ドラッグストア22社、食品スーパー1社、総合スーパー1社、ホームセンター1社
  • 対象者/人事もしくは労務部門の責任者、総務、店舗運営部門などに所属する担当者(各社1名が回答)