特別企画:ES向上のための働き方改革 21社アンケート調査①

7割以上の企業が「労働生産性の向上」などに着手

2018年6月の働き方改革関連法案の可決を受け、月刊MDではドラッグストアおよび小売業各社にアンケートを実施、その関心度と各施策の取組み状況について調査した。集計結果と分析を読み解きながら、自社および自店の「働き方改革における課題」を精査してみよう。(月刊マーチャンダイジング2018年10月号より転載)(文/社労士事務所ワークスタイルマネジメント・小林麻理 調査/月刊マーチャンダイジング編集部)

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調査概要

  • 調査時期/2018年7月
  • 調査方法/無記名式書面アンケート
  • 有効回答数/設問によって異なる(各図表に明記)

回答者属性

  • 協力社数/21社
    ドラッグストア 14社、コンビニエンスストア2社、食品スーパー1社、総合スーパー1社、バラエティストア1社、ホームセンター1社、100円ショップ1社
  • 対象者/人事もしくは労務部門の責任者、総務、店舗運営、マーケティング部門などに所属する広報担当者※各社において一人が回答

Q1 「働き方改革」はES(従業員満足)向上に寄与するとおもいますか?

「働き方改革」は取り組み方を間違えるとES低下の危機を招く

「働き方改革」はES向上に寄与すると回答した企業は75%。

そうした意識はほぼすべての企業が持っているだろう、と予想したのに反し、25%の企業が「どちらかといえば寄与しない」「まったく寄与しない」との回答だった。「働き方改革」は取り組み方を間違えるとES向上どころか、低下を招く危険があるということを感じさせる結果である。

たとえば、「残業削減」を現場に命令しつつも、業務量や業務手順がまったく変わっていなければ、当然ESは低下するだろう。

「残業削減は現場が頑張ればなんとかなる」というように、対応を現場任せにするトップのもとで、かけ声のみが先行する「働き方改革」は従業員にとって厳しいものとなる。大事なのは、号令をかけるだけで終わらず「どのような作業に時間がかかっているのか」といった現場の問題を把握し、働き方の仕組みを企業として見直すことである。

Q2 「働き方改革」に関連して自社ですでに実施していること、もしくは実施予定のことはありますか?

大半の企業が「働き方改革」の具体的な取り組みを実施

実施と実施予定の合計で上位にあがった「労働生産性の向上」「パートタイマーのキャリアアップ支援」「労働時間の削減」については、取組中の企業が7割以上となった。

また、パートタイマーの処遇改善に着手している企業は11社、関連する「多様な正社員制度」の導入済み企業も9社と一定数にのぼった。

そして、対応は遅れがちになるだろうと予想していた「有給休暇取得の推進」も10社が実施済みだった。制度解説で触れたとおり、一定の有給休暇の取得は義務化される。先行して取組んでいる企業が多いようだ。

「勤務間インターバル制度」については実施中の企業が3社(予定は5社)にとどまったが、全体として多くの企業が、「働き方改革」に具体的に取り組んでいることがわかる結果となった。

Q3 「働き方改革」に関して学びたい事項、関心のある事項はありますか?

「多様な正社員制度」とともに考えたい「同一労働同一賃金」

関心事の上位に「働き方改革」全般、法律(働き方改革関連法案)全般が挙がった。これは「働き方改革」が浸透している半面、すべての取り組み内容を把握するのが難しいほど幅広いものであることの裏返しともいえる(実際、今回アンケートで取り上げた内容も「働き方改革」の一部分のみである)。

法律に関しては、「裁量労働制」など一部の内容が大きく報道される一方で、実務としてどのような影響があるのかについての情報提供があまりなかったからという面もあるだろう。

また、法律全般と同様に「多様な正社員制度」が多くの票を集めたのは、勤務条件を限定して働くパートタイマーが多数活躍する小売業ならではかもしれない。「多様な正社員制度」は、職務に応じた賃金や評価制度について改めて考える必要がある。それを反映してか「多様な正社員制度」に関心がある企業は「同一労働同一賃金」にも関心あるという傾向が見られた。