「人口減少時代」を生き抜くためにマイクロマーケティングで機会損失を防ごう

『国立社会保障・人口問題研究所』が2018年3月に発表した「日本の地域別将来推計人口」によれば、今から12年後の2030年の日本の人口は、2015年対比で比較すると93.7%に減少することがわかります(図表1の最下段の数値参照)。今回紹介する「日本の地域別将来推計人口」は、2015年から2045年までの30年間の人口推移(年齢別)を5年間隔で推計したものです。「県」単位の人口データだけではなくて、全国1,682の市区町村を対象にも人口推移を集計しています。このデータはオープンデータであり、Excelで自由に加工できます。小売業の開発部、商品部、店舗運営部は大いに活用すべきでしょう。

人口減少率の高い県は秋田県、青森県

図表1は、2030年に人口が減少する「県」のトップ10です。東北、四国の人口減少が目立ちます。1位は秋田県、2位は青森県。トップ10の中に、宮城県を除く東北5県が入っています。

図表2は、さらに先の未来の2045年に人口が減少する「県」のトップ10です。秋田県は、27年後には2015年対比で、半分近くに人口が減少することがわかります。

一方、2030年の人口維持率の高い都道府県のトップ10は図表3の通りです。12年後に人口を維持できるのは、東京都と沖縄県の2都県のみです。

沖縄県は、40代以下の人口が多く、出生率も高いのが特徴です。2016年の全国平均の出生率1.44に対して、沖縄県の出生率は1.95と、日本の都道府県の中で出生率がもっとも高い県です。出店すると物流費がかかるという課題はありますが、こと人口だけを考えると、沖縄県は日本でもっとも将来性のある商業立地ということができます。

ちなみに東京都の出生率は1.24と全国平均を下回っています。12年後の2030年も東京都の人口は増えますが、少子高齢化が急速に進んでいることがわかります。これも深刻な未来です。

市区町村別の人口データを活用して機会損失を防ぐ

この調査の良い点は、「市区町村別」「年齢別(5歳刻み)」「性別」の人口推移データを参照できることです。

図表4は、2025年(7年後)に人口維持率の高い市区町村のトップ20です。大都市圏の市区町村が上位に来ていますが、福岡県新宮町のように、福岡市のベッドタウンとして宅地開発が進んだ市が6位にランクインしています。また、20位にランクインした埼玉県戸田市は、東京都心へのアクセスの良さや、行政による子育てサポートの充実などで、30代、40代世帯の流入が増加している地域です。

一方、図表5は、2015年時の人口1,000人以上の市区町村で、「子供人口(0~14歳)の維持率の低い市区町村」のトップ10です。中小規模の市町村でも7年後に子供人口がほぼ半減する地域があることがわかります。

日本全体では、2015年基準で、2020年(+2年)に子供(0-14歳)の人口を維持できるのは東京都(100.7%)と沖縄県(100.2%)だけです。子供(0-14歳)の人口は2025年以降すべての都道府県で減少します。データを見ると、日本の少子化は本当に深刻な問題ですね。

図表5は、子供人口の低い市町村ですが、逆に、子供人口の維持率が県平均よりも高い市区町村を抽出することもできます。たとえば、2030年に人口が約2割も減少する「秋田県」であっても、市区町村別に見れば、子供人口の維持率の高い市区町村、子育て世代の多い市区町村は当然あります。

深刻な人口減少時代に突入するこれからの小売業は、「県」単位の大雑把なマーケティングではなくて、市区町村別の小さなエリア単位の人口構成を分析し、その地域に適した棚割、売場づくり、売り方を実践する「マイクロマーケティング」に挑戦することが重要です。

逆説的にいえば、県単位の棚割、売り方のままでは、市区町村のニーズに合わず、大きな機会損失を起こしているといっていいと思います。人口減少時代には、何も手を打たなければ、間違いなく売上は減ります。市区町村単位のマイクロマーケティングで機会損失を防ぐことが、最大の売上対策になると思います。

最近の基礎データの良い点は、今回紹介した『国立社会保障・人口問題研究所』の「日本の地域別将来推計人口」のようなオープンデータが、無料で簡単に抽出・加工できることです。また、別のオープンデータ(国勢調査)では、2キロメートルの範囲の「職業別」の人口を抽出・加工することができます。田舎立地では、農業人口の多い町と、林業人口の多い町では、作業用手袋の売れ筋がまるで異なるそうです。

MD NEXTに連載されいる「Tableauを使った小売の数値可視化入門」でも紹介しているように、汎用化した分析ツールを活用すれば、オープンデータの取り込み、分析を低コストで行うことができます。本部主導一辺倒ではなくて、現場でマイクロマーケティングを実践する環境は整いつつあると思います。

同じ営業利益率4%でも稼ぎ方が全く違うウエルシアとコスモス

月刊マーチャンダイジングでは、毎年10月号で上場ドラッグストア企業の決算を特集しています。小売企業の経営数値はさまざまな見方がありますが、今回はその特集の中から売上総利益率(粗利益率)と販管費率に着目。「企業の営業方針」を分析する方法について学びます。

上の図表は「売上高」と「粗利益高」「販管費」「営業利益高」の関係を整理したものです。

「売上総利益率」は「粗利益率」のことを指します。売上総利益はひとつひとつの取引で稼いだ粗利益高の合計で、販売価格と仕入価格のバランスを表します。販売価格の変化は、同業他社の新規参入による競争激化や、技術革新による新製品の登場などが原因になります。

小売業においては、競争激化への対応や、プライベートブランド(PB)の開発による粗利益率の引き上げなどがこれに当たります。

「販管費」とは、「販売費および一般管理費」のことです。「販売費」とは、販売活動によって発生する費用です。これには広告宣伝費や店舗従業員の給与・手当、支払手数料、運送費などが含まれます。「一般管理費」は管理活動によって発生する費用です。本部の水道光熱費、家賃、本部職員の給与・手当、事務用品など消耗品も含まれます。売上高に占める販管費の割合を販管費率といいます。

売上総利益率は高ければいいというわけではありませんし、販管費も低ければ低いほどよいというわけではありません。販管費が高くても、接客重視で高粗利率の健康食品や化粧品を推奨販売するのが得意なチェーンもあれば、低粗利率でも食品などの商品を低販管費率で人手をかけずに大量に販売するのが得意なチェーンもあります。ただ、いずれの営業戦略を取るにせよ、売上総利益率と販管費の差である営業利益率は最大化させるべきでしょう。

上の図表はドラッグストア上場企業14社が2018年に発表した決算短信から売上総利益率(粗利益率)と販管費率をまとめたものです。

棒グラフの上の数字は売上総利益率、棒グラフの下の数字は販管費率。その差である棒の長さは営業利益率を表します。右から左へ売上総利益率が高い順に並んでいます。

このグラフを見てみると(1)売上総利益・販管費ともに高めの企業と、(2)売上総利益・販管費ともに低めに抑えている企業、(3)そのどちらでもない企業に分類できるのがわかります。

たとえば、(1)にはマツモトキヨシHDや、ウエルシアHDが該当します。両社とも売上総利益率がともに30%代と高い一方で、販管費率はマツモトキヨシHDが24.3%、ウエルシアHDが26.1%です。その差である営業利益率は、マツモトキヨシHDが6.0%、ウエルシアHDが4.1%になっています。

一方、コスモス薬品は(2)です。売上総利益率は19.8%とあまり高くありません。そのかわり、販管費率も15.7%と低く抑えていて、営業利益率も4.1%となっています。

つまり、ウエルシアHDもコスモス薬品も営業利益率は同じ4%台ですが、ウエルシアは粗利益率、販管費率ともに高い営業戦略で(おそらく化粧品などを接客で販売することで)稼ぎ出した4%であり、コスモスは低粗利率でありながら販管費も低めにして(おそらく高回転の食品をセルフで販売して)で稼ぎ出した4%である、と分析することができるのです。

14社中営業利益率が6.4%と最も高いサンドラッグは、売上総利益率が25.0%、販管費率は18.6%。売上総利益率はさほど高くはないものの、販管費率を非常に低く抑えているのが特徴です。

(1)、(2)いずれの経営方針をとっていたとしても、販管費をいかに適切な範囲に抑えるかが営業利益にとって重要となってきます。そして販管費の中で大きな割合を占めるのは人件費です。ですが、昨今の人不足も相まって、人件費をこれ以上下げることは難しい状況になっています。

小売業においては、いかに人の生産性を向上させるための仕組みをつくり、販管費を下げていくかが、どの企業にとっても重要なポイントになっているということがわかります。

多発する「避難指示」区域、刻々と変わる状況~レデイ薬局の災害対応 前編~

2018年6月28日から7月8日にかけて西日本を中心に起こった集中豪雨は各地に大きな被害をもたらした。のちに気象庁により「平成30年7月豪雨」と名付けられたこの大規模災害により、8月25日現在の消防庁の情報によると死者221人、行方不明者は9人に及んだ。とくに被害が大きかったのは広島県(死者108人、行方不明者6人)、岡山県(同61人、同3人)、愛媛県(死者27人)の3県で今回の死亡者の9割近くを占める。㆑デイ薬局はこの3県に出店しており、これまで経験したことのない自然災害の対応に追われた。今回は、7月6日から8日にかけて、愛媛県を襲った集中豪雨で浸水被害に遭ったくすりの㆑デイ東大洲(ひがしおおず)店を取材。豪雨被害への対応の難しさと、そこから得た教訓を紹介する。(月刊マーチャンダイジング2018年10月号より転載)

①臨時休業決定

2018年7月7日(土)
空前の大雨でダム放流 下流地域が水害に

今回話を聞いたのは、東大洲店店長の田村博氏、東大洲店を含む大洲市、西予市,八幡浜市、内子町という愛媛県内でも被害の大きかったエリアで8店舗を担当するスーパーバイザー(SV)の越智大介氏、本部で出店エリア全体の被害状況の把握と対応を担った代表取締役副社長執行役員営業本部長の白石明生氏の3人である。

7月6日(金)から激しい雨が降り続いた愛媛県南部では、同地域を流れる一級河川肱川(ひじかわ)上流をせき止める野村ダムが異常なペースで満水レベルにまで到達。共同通信など複数の報道によると、これを受け国土交通省では午前6時20分、基準の6倍にあたる最大毎秒約1,800トンを放流した。

ダムに近い西予(せいよ)市と下流域にあたる大洲市には避難指示が出されたが、報道などによると、早朝の出来事で激しい雨音とも重なり避難指示に気付かなかった住民も多かったという。結局、西予市で5人、大洲市で4人の死者を出すことになる。

レデイ薬局では大洲市に4店舗(2店舗は調剤専門)を出店。このエリアのSVを務める越智氏は当日の行動を次のように振り返る。

「朝6時前に大洲店(東大洲店から西南に約2km)の高砂店長から連絡があり、店舗前の道路がすでに2~3cm冠水しているので、当日の営業を検討する必要があるということになりました。その時点で近隣では防災無線などで避難を呼び掛けていました。

私は東大洲店から2kmくらい離れた場所に住んでいるので、大洲店の店長と2人で現場の確認を行いました。その場で従業員の安否の確認と出勤可能かどうかを緊急連絡網で確認しました。その結果、従業員の住まいの多くが、避難指示区域にあることがわかりました。

午前7時過ぎには従業員の安否、店舗周辺の状況確認が終わり、出勤できる従業員が少なく、本日の営業は困難なので店休したい旨、店舗運営部長に連絡しました。部長からは何よりも従業員の安全を優先させるように、という指示があり、店休が決定しました」

越智氏の報告に基づき、レデイ薬局ではこの日、四国にある店舗のうち大洲店、東大洲店、内子店の3店舗を休業とすることを決定。決定した時間は野村ダムの放流により肱川が氾濫して大洲市にも避難指示が出された時間とほぼ同時刻で、的確な判断であったといえる。近隣にはこの日営業して浸水し、従業員が危険な目に遭った店舗もある。

今回浸水被害に遭った東大洲店店長の田村氏は大洲市の東隣にあたる伊予市在住、当日朝はすでに道路が寸断されており店舗へ向かう手段がなかった。越智氏や従業員との連絡はスマホによる通話とLINEで行った。

[図表1]愛媛県の被害の大きかったエリア

大洲市のホームページによると、7月6日(金)午前6時20分に「土砂災害警戒情報」が出され、午前8時30分には各地区に「避難準備」・「避難勧告」が発令されている。7日(土)午前7時30分、市内全域に「避難指示」が発令、これが解除されたのが9日(月)午前9時である。

浸水したくすりのレデイ東大洲店店内(7月8日午前撮影)

避難を促す発令に関して図表2でまとめた。現状では「避難指示」がもっとも緊急を要する内容であり、今回の豪雨ではレデイ薬局の出店する多くのエリアで「避難指示」が発令され、被害地域の広域化に苦慮することになる。

[図表2] 市町村などが発令する「避難」に関する分類

②本部の対応

2018年7月7日(土)
SNSやネットで情報収集 「避難指示」区域の多発に苦慮

7月7日(土)と翌日は、レデイ薬局が主催する「健康フェスタ」の開催日にあたっていた。会場のある松山市内は雨こそ降っていたが、豪雨というほどの降り方でもなく、健康フェスタは通常どおり開催された。

会場には白石氏をはじめとする経営幹部が午前6時ころから一堂に会しており、これが迅速な意思決定をするには好都合だった。

「広島県、岡山県の被害規模の方が大きく、愛媛県の被害はマスコミ報道にのりにくかったとおもいます。私たちが情報源として活用したのは、インターネット、TwitterやInstagramなどのSNSでした。SNSに上がる写真を見て自店の近隣状況などを知りました。また、フェスタを開催していたので、メーカー、ベンダーの方に他企業の被害などの状況を聞いて情報をつかんでいました」(白石氏)

同社に緊急対策マニュアルはあるが、四国地方は南海トラフ地震が予想されていることもあり、主に地震を想定したものだった。豪雨被害となるとマニュアルではカバーしきれない状況も訪れた。

「地震の際は震度を基準に対応が決まっています。今回の豪雨の場合、過去に例を見ないほどに広範囲にわたり多数の区域に避難指示が出されました。SVの数で言えば6人が避難指示区域を持っていました。現場判断は重要とはいえ、各自が自分たちの判断だけで動いても困るし、常に連絡を取り合い、本部に情報を上げてもらいながら対策を立てていくことが重要だと痛感しました。

緊急で手配する商品や支援物資にしても、どこにどういう状態の人がいるかわからない、可能な限り情報は全部上げてもらい、四国は松山の本社、中国地方は岡山県の撫な つかわ川店に納品してもらい、そこから集めた情報を基に必要な店舗へ送る手配をしました」(白石氏)

図表3はマニュアルにあるレデイ薬局の緊急対策本部の組織図である。同社では、今回の災害を機に、避難指示が出店エリアに出た場合には対策本部を立ち上げるなどマニュアルを進化させた。

[図表3]レデイ薬局 緊急対策本部組織図

後編に続きます。

主婦が働きたい店の特徴は「〇〇〇がきれい」?

パートタイマー不足に悩むお店は多いことでしょう。そこで今回は、年間400万人以上の主婦が利用する「しゅふJOBパート」などを運営し、働きたい主婦のニーズに応えてきたビースタイルの代表取締役会長三原邦彦氏に「主婦が働きたいお店」の特徴について聞きました。(文:ワークスタイルマネジメント 小林麻理)

主婦にとって「ランチ」環境は超重要

まず、主婦が働きたいお店の「職場環境」については、次の事項が挙がりました。

・自転車や車通勤など、通勤しやすい環境であること
・清潔感があること
・トイレがきれいなこと
・休憩室など、ランチでくつろげる環境があること
・冷蔵庫など、お弁当を持参できたりする環境が整っていること
・社割など、生活に役立つ制度があること

従業員用の駐車/駐輪場スペースは場所が許せばぜひ設けたいところですが、立地の問題もありすぐには難しい場合もあるかもしれません。一方、清潔感を保ち、トイレをきれいにするといった店の清掃に関することができていなければ、すぐにでも着手したいところです。

また、ランチ環境に関する項目も注目です。「ランチ」を楽しく食べられるか、という点は主婦(女性)にとって重要なポイントだからです。お弁当をいれる冷蔵庫があるかを気にするのも、主婦ならではと言えます。

生活費の少しでも足しになればとパートに出ているのに、お昼や飲料を外で買う必要がある、というのに抵抗がある主婦の方もいることでしょう。休憩室の片隅に小型の冷蔵庫と電子レンジ1台を置くといった工夫はできそうです。

同様に生活費を少しでも切り詰めたい主婦にとって生活に役立つ「社割」は非常に魅力的というのも納得です。「働いてるからこそお得に買い物ができる」というのは、応募に際した動機づけにもなり、その後も店舗への帰属意識が沸きそうです。

「休みやすい」環境づくりは大変だけど……

主婦が働くさいに重要視するポイントとしては「子育てとの両立のしやすさ」も挙がりました。具体的には、次のようなものです。

・シフトの柔軟性がある
・出勤日数を週2日から選べたり、短時間勤務ができる
・子供が何かあったときには休みやすい雰囲気がある
・子供の成長にあわせて働き方に変化をつけられ、長く働ける

シフトの柔軟性は人員確保が必要であるなど、一朝一夕には実現できないことでもあります。まずは、前述の職場環境の見直しなどから始め、「働く人が集まらない、定着しない」→「人員に余裕がない」→「シフトに融通がきかず、休みもとりにくい」といった、人手不足の悪循環に陥らないようにする必要があります。

逆に、良い職場環境づくりをきっかけに、「人が集まりやすい、定着する」好循環を生み出すこともできるでしょう(図)。

三原代表は現状について、「勤務条件が選べてシフトの柔軟性が高い企業が増えています。一方、人気の商品を扱うなど人手不足感が少なかった店舗は、多様な働き方にあったシフトや時給になっていない傾向があり、これから採用に苦戦するかもしれません」と言います。

本当は、「若い人」がいいんでしょ!?

そして環境や条件面以外の面で、主婦から敬遠されるのは「『若手を採用したいけれど、仕方なく主婦を採用している』という雰囲気が感じられる店舗」だそうです。

そうした印象を与えてしまうのは「早番と遅番両方対応必要、10時-19時という遅い時間帯」といったシフトの面だけでなく「写真が若手ばかりで雰囲気も元気すぎる感じがする」といったように求人時に使用する写真が原因の場合もあるようです。

また、仕事を1度離れた主婦にとって「自分の年齢でもいいのだろうか」は非常に気になるものでしょう。ビースタイルが運営する「しゅふJOBパート」の調査によると、求人情報で書いてほしい内容の1位は「年齢」となっています。

ただし法令上、求人情報への年齢掲載は、原則できません。そこで考えられるのが、掲載写真などで主婦の方の活躍をアピールしたり、SNSなどを利用して店から情報発信するという方法です。 

三原代表は「取り組めることはまだまだたくさんあると思います。もちろん、考えこんでもアイデアは出てこない場合もあります。まずは、いま働いている従業員の方に意見を聞くことから始めてみてはどうでしょうか」と言います。

「働きたい、働いている主婦」の意外な本音を知っておくことは、人材募集における差別化のカギにもなりそうです。

取材協力/ビースタイル代表取締役会長 三原邦彦氏

小売各社PBを比較してみました~フェイスマスク・トレペ編~

編集部のTとNがPBについて実際に試しつつ紹介するお気楽対談第2段。今回はフェイスマスクとトイレットペーパーを調査します!(月刊マーチャンダイジング2018年8月号より流用)


ダイソーの「フェイスマスク」は侮れない!

トモズの天然香料は癒やし効果大

T
引き続きフェイスマスクです。ダイソーの馬油はパッケージ裏に英語の説明書きがあります。インバウンドを意識したダイソーらしいですね。
N
一方で、トモズは表面に日本語ゼロ。英語しか書いていないね。裏に日本語の説明がある。
T
もう、ジャケ買いに近いというか。おしゃれさを前面に出していて特徴的ですよね。売場のPOPには日本語で説明があるので、そこでカバーという感じでしょうか。1枚に含まれる美容液の量は、30mℓでダイソーが断トツ。コスパの高いマスクは韓国製のものが多いけど、これは日本製。こだわってつくっています。
N
パッケージもマットで高品質な印象を受けるね。色も落ち着いているし。
T
ダイソーの馬油は密着感も程よくて、シートの質感もしっとりしています。サイズは顔全体ほぼ覆えるけど、逆に大きすぎて途中で剥がれてしてしまいました。8点!という感じでしょうか。
N
108円で10点満点中8点はなかなか。やっぱりダイソーはコスメ系が強いね。
T
無印良品は可もなく不可もなくでしたが、敏感肌の方でも安心できるというのは強みですね。
N
私も、少し物足りなさを感じたかな。サラッとしていて効果感がもっと欲しいというか…。
T
トモズは自然な良い香りに包まれるようで、贅沢な時間を過ごしている気持ちになりました。剥がした後も、お肌ツルツルでしたし。 使用後も潤って、毛穴が見えにくくなっているのがわかりました。
N
ご褒美感は、嬉しいね。
T
マツキヨは使用後の肌のプルプル感が一番でしたが、それなりのお値段がするので。シートもアゴ部分からリフトアップできるような仕様になっています。
N
価格のバランスも考えると、女性としてはトモズに軍配という感じかな?

[図表3] フェイスマスク比較表(編集部調べ)

コスパ最強のカインズ「トイレットペーパー」

持ちにくさ、開けにくさはストレスに

T
トイレットペーパーですが、今回は再生紙の2枚重ね(W)で比較します。
N
使用前の結構大切なポイントとして、持ち手の形状があるね。
T
持ち運びやすさは重要ですよね。テープになって腕に掛けられる方が持ちやすい。ツルハとマツキヨはテープですね。
N
穴あきタイプは、どんどん持ち手が伸びてくるのがストレスになるので嫌だな。
T
セブンは4ロールだからか、そもそも持ち手がありません。まあ、このサイズならレジ袋に入れてしまうかもしれませんが。
N
あと、開けにくいのも案外ストレスになるんだよね…最終的に引きちぎって開ける感じに。
T
セブンはどこから開けたらいいのかわかりにくいです。
N
ツルハとマツキヨの製造元はどちらもコアレックスという会社ですが、マツキヨの方が開けやすいな。
T
そうそう、同じ製造元だけど、ツルハの方が長さもある分、少し値段も高めです。まめピカを使って、比べてみましょうか。(5枚重ね×2噴射した後、強めに10回こする)
N
まったく同じ力をかけているわけではないので、あくまでオマケの参考程度だけど…。
T
破れにくさでいうと、セブンとマツキヨでしょうか。マツキヨは牛乳パックを原料にしているというのが効いているのかもしれませんね。
N
たしかに。ちぎれて、紙がポロポロになりますが、破れはしない。
T
あと、カインズは2枚重ねの圧着が弱い気も…。あ!個体によって、圧着されている線の位置が違いますね。これが原因でしょうか。
N
Tさん、結構トレペにこだわりあるんだね(笑)。
T
やっぱり、柔らかさは価格も高いセブンが勝りますね。ロール全体が柔らかです。

[図表4] トイレットペーパー比較表(編集部調べ)

「コンビニに生ビール」を定着させたニューデイズの舞台裏

来店客数はセブン-イレブンの1.5倍、駅ナカ市場の魅力を知らしめる存在となったニューデイズ。目的買いの購買特性から客単価が低いなど課題も残されているが、生ビールの販売やご当地フェアなどのキャンペーンを行うことで“お客を飽きさせないコンビニ”を追求し、集客力アップに努めている。店舗前通行量の多さに安住せず、新たな商品、オペレーション、魅力ある販促に取り組む駅ナカコンビニの最新事情を探る。

躍進のカギを握る3つのポイント

駅ナカコンビニのニューデイズ(New Days)はJR東日本リテールネットが運営し、首都圏を中心として、北は青森から西は静岡まで496店舗(7月末、キオスクタイプを除く)を展開。特殊立地である駅ナカにおいて独自の進化を遂げてきた。このニューデイズが注目を集めている。

注目の一つは「生ビール」販売。この夏、セブン-イレブンが実験導入を計画したが、店内の告知段階でSNSにより拡散、yahoo!のトップニュースになると”賛否”をめぐってネット上で騒然となり、セブン側は、急きょ販売を中止とする事態になった。

その余波で、すでに生ビールを提供しているニューデイズがマスコミで紹介される。すると認知度が上がり生ビールの売上が急上昇するに至った。

二つ目は生産性の問題。2017年度の客数(1日平均)は1,548人、対してセブン-イレブンが1,039人だから1.5倍弱。この客数を駅ナカの狭い店舗でさばくのだから、お客にも従業員にも強い負荷が掛かる。

駅の乗降客を集客し、客数で他チェーンを圧倒するニューデイズが、働きやすく、快適な店内環境を、どう実現させるのか。

三つ目が客単価の底上げ対策。お客は「移動の途中」に立ち寄り、商品を購入する。余計な荷物を持ちたくないため、購入点数は上がりづらい。客単価は368円、セブン-イレブンの6割弱といった数字になる。果たして、これを高める方法はあるのか。

以上3点の詳細を見ていこう。

生ビール1日300~400杯の日も

生ビール販売は3年前にスタートし46店舗(7月末段階)で実施している。好調な店は、例えばJR上野駅の3階にある入谷改札外(パンダ橋口)の店舗。上野公園とつながり、7月は生ビールを1日平均40杯前後、販売する。3月下旬の花見シーズンには1日100杯を超す日もあるという。JR熱海駅の店舗では、7月から定期的に実施される花火大会の日には、1日300~400杯は動くという。

赤羽店(東京・北区)では夕方4時に、椅子を取り払い、昇降式のテーブルをハイカウンターにし、簡単な立ち飲みスペースを確保している

セブンが生ビール販売を取り止めた背景の一つに車客への配慮がある。ネット上でも「車客の飲酒運転を助長する」といった多くの批判が挙がっていた。その点、ニューデイズは、駅ナカか駅隣接の店なので、車客がほとんどいない。飲酒運転の助長にはつながらない。

価格は、3年前に始めたときは420円。2017年は380円に下げて競争力を高め、2018年は酒税法の関係があり398円に値上げ。ただし100円下げて298円のセールも実施する。

生ビールのサーバーから基本はセルフでビールを注ぐが、狭い店舗では設置スペースの関係から従業員が注ぐ。1杯税込398円(545mlカップ)

業態の垣根が低くなる近年の傾向に「飲食店以外」でも生ビールを提供する先駆的な取り組みであり、徐々に定着しつつある。

キャッシュレス社会を牽引

二つ目に生産性の問題。自動釣銭機付きPOSレジやセルフレジの導入は、市中のコンビニと比較して客数が多いため、早くからレジ業務の効率化に取り組んでいる。オペレーション上、非常に効果が高いとしている。

一方で、店舗の要員不足が課題。ニューデイズは客数が圧倒的に多いために、「忙しそう」に見えて敬遠する求職者がいる。そうした事態を憂慮して、3年以上前から自動釣銭機付きPOSレジを導入し、現状は9割の店舗に設置している。

レジにお客が並んだ状況が続いても、札の見間違いによる違算がなくなり、引継ぎ時も自動で金銭がカウントされるので、人時の削減も可能にしている。もちろん、外国人従業員に対しても働きやすい環境となり、導入前よりも人員不足に苦労しなくなっている。

セルフレジは要員不足を理由に、通常のレジと併用する形で270店舗(6月末時点)に320台を導入している。決済は交通系電子マネーのみだが、現金とクレジットカードを使用できるセルフレジを開発中。今年度中に一定のめどをつける。

コンビニ大手3チェーンは、現金以外の決済が2割程度。対してニューデイズは3割程度。キャッシュレス決済を牽引している。

通行量に安住せず独自の販促

三つ目が客単価の底上げ対策。駅ナカのコンビニは実用的でありさえすればよいと考える向きもある。しかし、ニューデイズはご当地フェアを実施するなど、機能的なコンビニとしての機能だけではなく、飽きられないコンビニを強く意識している。

今年夏の北海道フェアは始めてから10年。花畑牧場や町村農場とコラボしたチルド飲料、おにぎり、パン、スイーツ、飲料、珍味、雑貨に至るまで、幅広く展開した。北海道でしか販売していない「サッポロクラシックビール」もよく売れた。北海道限定の「いろはす ハスカップ味」も大きく動いた。えびそばで有名な一幻が監修した「えびしお風玉子おにぎり」、函館の老舗レストラン「五島軒」のカレーパンといった、北海道グルメの有名商品、有名店を動員してフェアを盛り上げた。

北海道フェア(7月10日から8月6日)の目玉商品。函館市の老舗洋食店の五島軒が監修したカレーパン149円と洋食&函館カレープレート598円
札幌市のトップランクに入る人気ラーメン店「えびそば一幻」が監修した、えびしお風玉子おにぎり159円(左)と手巻きえびみそ風おにぎり149円

JR東日本グループの後ろ盾はあるものの、店舗前通行量の多さに安住せず、新たな商品、オペレーション、魅力ある販促に取り組んで、ニューデイズはコンビニの中で、独自のポジションを築いている。

自律的に働けるチェーンストア目指して

前回は、チェーンストア化によるスケールメリットが低価格を実現するということを解説しました。今回はチェーンストアの重要概念である「標準化」と「分業」について、そしてチェーンストアの種類について説明します。

肝となるのは本部と店舗の「分業」

チェーンストアにとって「標準化」と「分業」という考え方はとても重要です。

チェーンストアにおける分業の筆頭は「本部」と「店舗」における分業です。

本部は「どの商品をどのように販売するのか」「店舗でどのように作業を行うのか」を決定し、店舗に対して指示を出します。店舗はその指示通りに作業を行い売場づくりを行います。そのために本部はマニュアルをつくり、従業員に教育を行います。

標準化は、店舗面積はもちろん、レイアウト、棚割りなどのコンセプトを統一した業態を開発し、展開していくことです。どこまでをセルフサービスで販売し、どこから接客販売を行うというように、従業員の接客水準まで標準化しているチェーンストアもあります。

なお、一つの資本で展開されるチェーンを「レギュラーチェーン」と呼びますが、それ以外に「フランチャイズチェーン」や「ボランタリーチェーン」のようなチェーンストアもあります。

コンビニエンスストアが店舗数を爆発的に増やすことができたのは、フランチャイズチェーンであり他人の資本を使って出店することができるからです。

コンビニの本部にとってのお客さまは、商品を購入し、ロイヤリティーを支払ってくれるオーナーであるとも言えます。

筆者はある大手コンビニの本部の片隅で一時期仕事をしていた時期があるのですが、スーパーバイザー(SV)さんが店舗に来店するお客さまのことよりも、オーナーとの折衝について熱く語っていたことを思い出します。

チェーンストアはクッキーカッター?

このように、規模を拡大することで、さまざまな恩恵を人々の生活に与えてきたチェーンストアですが、行き過ぎたチェーンストア化にも問題があると言われています。

もう10年ほど前のことですが、筆者が取材をした日本を代表するとあるアパレルチェーンの経営者の方がこんなことを言っていました。

「自分はこれまでチェーンストアビジネスについて深く勉強し、実践をしてきた。しかし、徹底的に標準化された店舗を出店し続けていたら、クッキーカッター(金太郎飴)になってしまって、自分も面白くなくなってしまった」

確かに働く人が面白くないと思ってしまうような店舗では、お客さまに楽しくお買い物をしていただくのも難しいのかもしれません。

しかし、そもそもその企業が当時正しいチェーンストア化を進めていたいのかも定かではありません。日本における小売業のチェーンストア化の水準はあまり高くないと言われています。残念ながら、チェーンストアとしての最低限の仕組みづくりもまだまだ至らない小売業が少なくないという状況なのです。

まずはその基本的なチェーンストアのシステムづくりをきちんと進めることが重要です。その上で、お客さまとの接点である店舗従業員がより自律的に行動し、やりがいをもって働くことができる、そんな仕組みづくりこそが今チェーンストア業界には求められているように思います。

遂に「1兆円企業」に成長するドン・キホーテ

従来の「チェーンストア理論」ではなかなか理解しにくい業態であった「激安の殿堂ドン・キホーテ」が今期、遂に売上高1兆円を突破します。GMS(総合スーパー)が、現代の消費者ニーズに合わず、長期低迷を続ける中、「ポストGMS」として快進撃を続けるドン・キホーテの成長戦略を紹介します。

GMS不況の中で営業利益率5%を達成

ドンキホーテホールディングスが8月10日に発表した2018年6月期の連結決算は、売上高9415億800万円(前期比13.6%増)、営業利益515億6800万円(11.7%増)、経常利益572億1800万円(25.7%増)、純利益364億500万円(10.0%増)となりました。ドン・キホーテ1号店の創業以来、29期連続の増収営業増益を達成しました。そして、いよいよ今期中に「年商1兆円」企業に到達します。

GMSの低迷と比較すると、ものすごい好決算ですよね。本業の儲けを表す「営業利益率」は5%を達成し、小売業としては極めて収益性の高い企業です。

20年前のドン・キホーテは、特殊な立地で、特殊な顧客に支持されている店というイメージでした。「ドン・キホーテの新大久保店」に夜中に行くと、深夜に冷蔵庫を購入する若いカップルに遭遇したことがあり、そういう特殊な客層に支持される特殊な店だと、偏見をもって見ていました。

しかし、その後、中堅GMSの「長崎屋」を傘下に収めたころから、ファミリー層にも支持される「ポストGMS業態」を徐々に確立し、特殊な立地の特殊な客層に支持される特殊な店ではなくて、老若男女を問わず幅広い客層に支持される、地域になくてはならない「生活ストア」として進化してきました。

以下に、月刊『マーチャンダイジング』2017年10月号に掲載した大原孝治社長の話のダイジェスト版を再掲載します。以下のインタビューで紹介しているドン・キホーテの強みは3つあります。

第1は、現場の知恵の総量を高める組織改革による「自立型マネジメント力」。
第2は、狭くて深い「商品開発力」。
第3は、強い非食品による総合業態としての「粗利ミックス力」です。

組織開発と人財開発で知恵の総量が大幅増強

ドン・キホーテの最大の強みは「変化対応力」に他なりません。さらにこれを因数分解すると「業態開発」「店舗開発」「商品開発」「組織開発」「人財開発」の5つの開発に分かれます。

2017年は「店舗軸の改革」を行いました。これまで18だった支社を52に増やしました。これは個店強化とスモールメリットという2つの強化テーマへの対応です。これにより、支社長ポストも約3倍に増えて、現場のモチベーションアップに成功し、個店ごとに権限を移譲することで変化対応力も一層強化されました。こうした組織改革による全社的士気向上が競争力に直結して、売上拡大の大いなる伏線になったと考えています。

もっとも、わが社の幹部ポストは決して安定的なものではありません。実力と実績で毎年2〜3割は入れ替わるという新陳代謝が繰り返されています。

真の企業力は、従業員が考える「知恵の総量」にあると思います。売上高が1兆円、2兆円と多いことも素晴らしいが、それを支える従業員の知恵がなければ、結局は身に余った企業規模になっていきます。知恵の総量を増やすことこそ企業経営の要諦であると考えます。

消費者は望むがメーカーがつくらないPBをつくる

商品開発において、当社PBである「情熱価格」には目立った進歩がありました。5万円台で販売した50V型(大型画面)4K液晶テレビは大きな話題になりました。

現在、PB比率は売上高で11%、粗利益高で16%弱、内容は年々精度が高まり収益力を牽引する存在になりつつあります。われわれのPB戦略は深くて狭い。メーカーはつくらないけど、お客さまに需要があるものを探し出して、それを深く掘り下げるという戦略をとっています。

ものづくりの専門家でない流通業が総花的にPBをばらまいても、消費者の理解は得られません。ものづくりにおいてメーカーに叶うはずがなく、消費者と最前線で接している小売業しかわからないニーズをくみ上げ、メーカーがつくならいものを、われわれが企画してPB商品で販売することこそ、流通業がモノをつくる意義だと思います。

お客さまが必要としているのに、メーカーがつくらないものとは、たとえば、メーカーは古い材料を使って新しい商品はつくりません。当社の4K液晶テレビのパネルは、メーカーの前の型(古い材料)です。消費者の中には、最新モデルでなくてもいいので、安い4K液晶テレビがほしいというニーズは多数あります。ここの間に入って仕様を決め、メーカーに商品をつくってもらうことが小売業の役割です。多少型は古くても安い4K液晶テレビは、ニーズがあってもメーカーがつくらない商品の代表でした。

非食品の粗利ミックスがドン・キホーテの強み

苦戦している小売企業が多い中、ドン・キホーテがこれほど成長している理由のひとつは競争優位なMD戦略にあります。具体的にいえば、客層を広げ商圏を広く取る。加えて食品部門を戦略的に拡充しました。元来、非食品中心のバラエティディスカウンターのドン・キホーテが食品部門を強化することで、強力なフルラインディスカウンターとして、競合となるGMSと比較しても、圧倒的な競争力を有するに至っています。

競合GMSが苦手としている「非食品、雑貨」の売れ行きが非常に好調です。GMSでここまで非食品の販売に成功している店はなく、粗利益率の高い非食品が強いので、粗利ミックスによって、GMSよりも店全体の粗利益率は高いです(店全体の粗利益率約26%)。

極論をいえば、食品の粗利率をゼロにしても、われわれには十分に戦っていけるのです。これが競争優位の源泉です。(編集部注・GMSの食品の売上構成比は約70%に達しており、粗利益率の高い非食品、衣料とのマージンミックスができていないことが、日本のGMSの最大の経営課題です)

日本の流通業の最大の課題といってもよいGMSの再生、その次に来るもの、「ポストGMS」の本命こそ、当社のようなフルラインディスカウンターであることを、改めてここに宣言したいと思います(大原孝治社長談。文責編集部)。

シェアサイクルは新たな集客装置となるか

短距離交通インフラとして注目を集めているシェアサイクル。セブン-イレブンの参入により盛り上がりを見せるが、コンビニが直面する「客数減」解消につながる集客装置となるか。法整備も進み、地域ぐるみで取り組みが始まっている最新シェアサイクル事情をひもとく。

さいたま市のセブン110店舗以上にシェアサイクル

コンビニの店頭に今、シェアサイクル(自転車レンタル)の設置が急ピッチで進んでいる。2017年11月21日より、さいたま市のセブン-イレブンに、自転車の借用と返却ができる駐輪ステーションが開設され、現在、同市の110店舗以上で自転車の利用ができる。

自転車の借用・返却時にセブン-イレブンで利用できるクーポン配信などにより店舗への送客も図っていく

ビジネスモデルは、セブン-イレブンがスペースを用意し、ソフトバンクグループのOpenStreetがシェアサイクルプラットフォーム「HELLO CYCLING」のシステムを提供、自転車の卸し・小売を手掛けるシナネンサイクルが管理運営する。このビジネスモデルを用いて、セブン-イレブンは2018年度中に、さいたま市以外にも拠点数を拡大し、計1,000店舗、5,000台の設置を計画する。

シェアサイクルはNTTドコモと各自治体とで運営する「ドコモ・バイクシェア」が先行し、都内10区のほか、仙台、大阪、沖縄などで約6,000台を、駐車場や公園、店舗の敷地等に配置している。

他にも、メルカリの100%子会社「ソウゾウ」は2018年3月から福岡市でシェアサイクル「メルチャリ」のサービスを提供、市内ファミリーマートの29店舗を皮切りに、6月には福岡市とシェアサイクルの実証実験事業を開始して拠点数を拡大している。

シェアサイクルの本場中国からは、IT二大企業の一つ、テンセント(WeChatを運営)が支援するモバイクがLINE と提携して日本で事業を開始、もう一つのアリババが出資する「ofo」は世界250都市以上でシェアサイクルを展開し、日本では2018年4月より滋賀県大津市で事業をスタートさせている。

スマートフォンやパソコンで、駐輪用の「ステーション」を検索し、利用予約、決済までの一連の手続きができる。黄色いマークが、さいたま市のセブン-イレブンに設置された「HELLO CYCLING」のステーション

シェアサイクルは環境先進都市に不可欠

ところで、なぜ今、シェアサイクルなのか?

第一に民泊から始まった(とされる)「シェアリングエコノミー」の一つとして、市場の期待感がある。

メルチャリをいち早く取り込んだファミリーマートは、「健康志向の高まりやライフスタイルの多様化、環境負荷低減に向けた意識の高まりなどを背景に年々ニーズが高まっている」と認識し、「今後もサービス拠点を増やし、より地域に密着した店舗づくり・生活支援サービスの提供を進めていく」として、コンビニが追求する地域密着を、シェアサイクルがサポートすると期待を寄せている。

第二に、2016年12月に公布(2017年5月1日施行)された「自転車活用推進法」。近距離の移動に自転車は適しており、環境に優しい交通手段と位置づけて利用促進を図っていくというもの。基本方針の中にも、自転車専用道路の整備、路外駐車場の整備などとともに「シェアサイクル施設の整備」が、重点的に検討、実施すべき施策として明記されている。

自転車が増えても都内では専用道路がほとんどない。トラブルを避けるためにもインフラの整備が必要だ

東京都もシェアサイクルは2020年に向けて推進する環境先進都市の一環であり、その中で自転車利用環境の充実をうたっている。都のシェアサイクル事業には、前述したドコモ・バイクシェアが参画。自転車本体に、通信機能やGPS機能、遠隔制御機能を全て搭載し、自転車の位置情報をリアルタイムで把握して、効率的な自転車の再配置を可能にするなど、実験と検証を繰り返している。

第三に、お隣り中国の影響。

シェアサイクルは中国で急拡大したサービスである。自家用車が普及する以前は、通勤や通学の主要な移動手段は自転車であった。都市部には専用レーンも用意され、朝夕は通勤・通学の人たちで、ごった返していた。それが、自家用車の普及につれ、自転車の利用頻度は減少する。

しかし自転車シェアリングにより状況が変わった。中国では実に自転車による交通手段が2倍になったと報告されている。もともと自転車に乗る素地があったとはいえ、駐輪ステーションの多さと、スマホアプリによる貸し出しと返却の容易さが、これを後押しした。圧倒的な利便性を提供しているからこそ支持を得ているのだろう。

コンビニと駐輪ステーションは抜群の相性

さいたま市の店舗に駐輪ステーションを一気に設置したセブン-イレブンだが、今度はグループ企業のイトーヨーカ堂が、同様のビジネスモデルにより、OpenStreet、およびシナネンサイクルと協業してシェアサイクルをスタートさせた。既に6月21日よりイトーヨーカドー浦和店でサービスを開始し、2018年度中に10店200台、2020年度末までに30店500台規模で全国展開を図るとしている。

もちろん狙いは、セブン-イレブンを中心とする周辺の駐輪ステーションとの相互送客である。お客は、近隣のセブンで自転車を借り、イトーヨーカドーまで乗って返し、帰りはまた借りてセブンで返す。ドリンクやヨーカドーで買い忘れた小物等をセブンで購入してもらえれば、グループ内での相乗効果が生まれるというものだ。

イトーヨーカドーの駐輪ステーション(イメージ)。マザーステーションとして市場拡大の一翼を担う

シェアサイクルを根付かせるには拠点数の多さがポイントになる。目に付く場所に駐輪ステーションがあれば、ふだん自転車を利用しない人たちも“使ってみようかな”と考えるようになる。その点、駅前と言われる立地にはコンビニがあり、駅の乗降客にとっては“近くて便利”である。課題は「目的地」の駐輪ステーションの有無。近くのコンビニを探すよりも、目的地そのものにあったほうが便利だ。

百貨店、総合スーパー、ショッピングセンターは、セブンであれば、グループ内の確保は容易であろう。他に、市役所、総合病院、観光施設(スポット)等への設置も望まれる。

駐車場の片隅に設置された1台だけの駐輪ステーション。1カ所当たりの台数が少なくても面で押えて利便性を高める

日本は自宅から500m圏内にコンビニが無いと“コンビニ難民”と呼ばれるくらい、店舗が密集している。1店舗で1日1,000人前後の客数を集め、商圏人口約2,000人をカバーする。シェアサイクルの拠点としては最適である。

近年のコンビニはイートインコーナーを標準装備し、淹れたてコーヒーやスイーツも拡充させている。自転車の利用にも快適な空間が用意されているのだ。参加プレイヤーが多く、先が読みにくいが、コンビニが直面する「客数減」を盛り返す、一つの集客装置として取り込んでいきたい。

スケールメリットで低価格を実現する「チェーンストア」

「このあたりにはチェーン店の飲食店があるから住みやすい」とか「チェーン店ばかりで商店街がつまらなくなった」というような言葉をよく耳にします。その存在なしに現代の小売業を語ることはできないというほど、「チェーン店」は私たちにとって身近な存在です。町の中にはさまざまなチェーン店が存在していますが、ではなぜチェーン店(小売りの専門用語ではチェーンストアといいます)がこれほどまでに増えたのでしょうか。(イラスト作成:ManatyDesign

一つの資本が11店舗以上を経営管理する

そもそもチェーンストアとは何でしょうか?
小売業や飲食店は、どれだけの数の店舗を、どのように管理しているかで分類することができます。

この定義によると「一つの資本で標準化された11以上の店舗を直接経営管理するもの」がチェーンストアとされています。しかし、チェーンストアとしての本領を発揮するためには200店舗以上の標準化(後述)された店舗が必要という説もあります。

チェーン規模が大きくなれば商品価格は下がる

ではチェーンストアの強さの秘訣とはいったい何なのでしょうか?

まず1点目は、同一のフォーマット(業態)を多店舗展開することで、特定の商品の販売数量を増やし、商品を買いやすい価格にすることができる、ということです。

1店舗で1週間に10個売れる商品は、1,000店舗を展開しているチェーンストアでは同じ期間で1万個売れます。この販売量を元に、メーカーに値下げ交渉などを行うのです。

販売の規模を大きくすることにより、仕入値が安価になることを「スケールメリット」といいます。このスケールメリットは、商品の販売価格だけではなく、店舗の建築資材の仕入値や、従業員の教育コストなどの経費圧縮にも影響を及ぼします。

2点目として、チェーンストアの規模が大きくなれば、ナショナルブランド(NB)メーカーが作らないような商品をチェーンストアが独自に開発・販売することもできるようになるということが挙げられます(プライベートブランド・PB)。

マクドナルドのようなハンバーガーチェーンがびっくりするような低価格の商品を打ち出すことができたり、ユニクロや無印良品のようなSPA企業が、独自性のある商品を安価に開発できるのも、この「チェーンストア化によるスケールメリット」が背景にあるからこそなのです。

次回は、チェーンストアにとって重要な「標準化」と「分業」という概念について解説します。