コンビニネクスト

お客を飽きさせない独自の戦略で突き進む、駅ナカコンビニの次なる一手は?

第5回「コンビニに生ビール」を定着させたニューデイズの舞台裏

来店客数はセブン-イレブンの1.5倍、駅ナカ市場の魅力を知らしめる存在となったニューデイズ。目的買いの購買特性から客単価が低いなど課題も残されているが、生ビールの販売やご当地フェアなどのキャンペーンを行うことで“お客を飽きさせないコンビニ”を追求し、集客力アップに努めている。店舗前通行量の多さに安住せず、新たな商品、オペレーション、魅力ある販促に取り組む駅ナカコンビニの最新事情を探る。

  • Facebook
  • Twitter
  • Line
  • Hatena

躍進のカギを握る3つのポイント

駅ナカコンビニのニューデイズ(New Days)はJR東日本リテールネットが運営し、首都圏を中心として、北は青森から西は静岡まで496店舗(7月末、キオスクタイプを除く)を展開。特殊立地である駅ナカにおいて独自の進化を遂げてきた。このニューデイズが注目を集めている。

注目の一つは「生ビール」販売。この夏、セブン-イレブンが実験導入を計画したが、店内の告知段階でSNSにより拡散、yahoo!のトップニュースになると”賛否”をめぐってネット上で騒然となり、セブン側は、急きょ販売を中止とする事態になった。

その余波で、すでに生ビールを提供しているニューデイズがマスコミで紹介される。すると認知度が上がり生ビールの売上が急上昇するに至った。

二つ目は生産性の問題。2017年度の客数(1日平均)は1,548人、対してセブン-イレブンが1,039人だから1.5倍弱。この客数を駅ナカの狭い店舗でさばくのだから、お客にも従業員にも強い負荷が掛かる。

駅の乗降客を集客し、客数で他チェーンを圧倒するニューデイズが、働きやすく、快適な店内環境を、どう実現させるのか。

三つ目が客単価の底上げ対策。お客は「移動の途中」に立ち寄り、商品を購入する。余計な荷物を持ちたくないため、購入点数は上がりづらい。客単価は368円、セブン-イレブンの6割弱といった数字になる。果たして、これを高める方法はあるのか。

以上3点の詳細を見ていこう。

生ビール1日300~400杯の日も

生ビール販売は3年前にスタートし46店舗(7月末段階)で実施している。好調な店は、例えばJR上野駅の3階にある入谷改札外(パンダ橋口)の店舗。上野公園とつながり、7月は生ビールを1日平均40杯前後、販売する。3月下旬の花見シーズンには1日100杯を超す日もあるという。JR熱海駅の店舗では、7月から定期的に実施される花火大会の日には、1日300~400杯は動くという。

赤羽店(東京・北区)では夕方4時に、椅子を取り払い、昇降式のテーブルをハイカウンターにし、簡単な立ち飲みスペースを確保している

セブンが生ビール販売を取り止めた背景の一つに車客への配慮がある。ネット上でも「車客の飲酒運転を助長する」といった多くの批判が挙がっていた。その点、ニューデイズは、駅ナカか駅隣接の店なので、車客がほとんどいない。飲酒運転の助長にはつながらない。

価格は、3年前に始めたときは420円。2017年は380円に下げて競争力を高め、2018年は酒税法の関係があり398円に値上げ。ただし100円下げて298円のセールも実施する。

生ビールのサーバーから基本はセルフでビールを注ぐが、狭い店舗では設置スペースの関係から従業員が注ぐ。1杯税込398円(545mlカップ)

業態の垣根が低くなる近年の傾向に「飲食店以外」でも生ビールを提供する先駆的な取り組みであり、徐々に定着しつつある。

キャッシュレス社会を牽引

二つ目に生産性の問題。自動釣銭機付きPOSレジやセルフレジの導入は、市中のコンビニと比較して客数が多いため、早くからレジ業務の効率化に取り組んでいる。オペレーション上、非常に効果が高いとしている。

一方で、店舗の要員不足が課題。ニューデイズは客数が圧倒的に多いために、「忙しそう」に見えて敬遠する求職者がいる。そうした事態を憂慮して、3年以上前から自動釣銭機付きPOSレジを導入し、現状は9割の店舗に設置している。

レジにお客が並んだ状況が続いても、札の見間違いによる違算がなくなり、引継ぎ時も自動で金銭がカウントされるので、人時の削減も可能にしている。もちろん、外国人従業員に対しても働きやすい環境となり、導入前よりも人員不足に苦労しなくなっている。

セルフレジは要員不足を理由に、通常のレジと併用する形で270店舗(6月末時点)に320台を導入している。決済は交通系電子マネーのみだが、現金とクレジットカードを使用できるセルフレジを開発中。今年度中に一定のめどをつける。

コンビニ大手3チェーンは、現金以外の決済が2割程度。対してニューデイズは3割程度。キャッシュレス決済を牽引している。

通行量に安住せず独自の販促

三つ目が客単価の底上げ対策。駅ナカのコンビニは実用的でありさえすればよいと考える向きもある。しかし、ニューデイズはご当地フェアを実施するなど、機能的なコンビニとしての機能だけではなく、飽きられないコンビニを強く意識している。

今年夏の北海道フェアは始めてから10年。花畑牧場や町村農場とコラボしたチルド飲料、おにぎり、パン、スイーツ、飲料、珍味、雑貨に至るまで、幅広く展開した。北海道でしか販売していない「サッポロクラシックビール」もよく売れた。北海道限定の「いろはす ハスカップ味」も大きく動いた。えびそばで有名な一幻が監修した「えびしお風玉子おにぎり」、函館の老舗レストラン「五島軒」のカレーパンといった、北海道グルメの有名商品、有名店を動員してフェアを盛り上げた。

北海道フェア(7月10日から8月6日)の目玉商品。函館市の老舗洋食店の五島軒が監修したカレーパン149円と洋食&函館カレープレート598円
札幌市のトップランクに入る人気ラーメン店「えびそば一幻」が監修した、えびしお風玉子おにぎり159円(左)と手巻きえびみそ風おにぎり149円

JR東日本グループの後ろ盾はあるものの、店舗前通行量の多さに安住せず、新たな商品、オペレーション、魅力ある販促に取り組んで、ニューデイズはコンビニの中で、独自のポジションを築いている。

著者プロフィール

梅澤聡
梅澤聡ウメザワサトシ

札幌市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、西武百貨店入社、ロフト業態立上げに参画、在職中『東京学生映画祭』を企画・開催。89年商業界入社、販売革新編集部、月刊『コンビニ』編集長、月刊『飲食店経営』編集長を経てフリーランスとなり、現在は両誌の編集委員を務める。