コンビニネクスト

さいたま市のセブン110店舗以上に設置、イトーヨーカドーへの設置も始まり全国展開へ

第4回シェアサイクルは新たな集客装置となるか

短距離交通インフラとして注目を集めているシェアサイクル。セブン-イレブンの参入により盛り上がりを見せるが、コンビニが直面する「客数減」解消につながる集客装置となるか。法整備も進み、地域ぐるみで取り組みが始まっている最新シェアサイクル事情をひもとく。

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さいたま市のセブン110店舗以上にシェアサイクル

コンビニの店頭に今、シェアサイクル(自転車レンタル)の設置が急ピッチで進んでいる。2017年11月21日より、さいたま市のセブン-イレブンに、自転車の借用と返却ができる駐輪ステーションが開設され、現在、同市の110店舗以上で自転車の利用ができる。

自転車の借用・返却時にセブン-イレブンで利用できるクーポン配信などにより店舗への送客も図っていく

ビジネスモデルは、セブン-イレブンがスペースを用意し、ソフトバンクグループのOpenStreetがシェアサイクルプラットフォーム「HELLO CYCLING」のシステムを提供、自転車の卸し・小売を手掛けるシナネンサイクルが管理運営する。このビジネスモデルを用いて、セブン-イレブンは2018年度中に、さいたま市以外にも拠点数を拡大し、計1,000店舗、5,000台の設置を計画する。

シェアサイクルはNTTドコモと各自治体とで運営する「ドコモ・バイクシェア」が先行し、都内10区のほか、仙台、大阪、沖縄などで約6,000台を、駐車場や公園、店舗の敷地等に配置している。

他にも、メルカリの100%子会社「ソウゾウ」は2018年3月から福岡市でシェアサイクル「メルチャリ」のサービスを提供、市内ファミリーマートの29店舗を皮切りに、6月には福岡市とシェアサイクルの実証実験事業を開始して拠点数を拡大している。

シェアサイクルの本場中国からは、IT二大企業の一つ、テンセント(WeChatを運営)が支援するモバイクがLINE と提携して日本で事業を開始、もう一つのアリババが出資する「ofo」は世界250都市以上でシェアサイクルを展開し、日本では2018年4月より滋賀県大津市で事業をスタートさせている。

スマートフォンやパソコンで、駐輪用の「ステーション」を検索し、利用予約、決済までの一連の手続きができる。黄色いマークが、さいたま市のセブン-イレブンに設置された「HELLO CYCLING」のステーション

シェアサイクルは環境先進都市に不可欠

ところで、なぜ今、シェアサイクルなのか?

第一に民泊から始まった(とされる)「シェアリングエコノミー」の一つとして、市場の期待感がある。

メルチャリをいち早く取り込んだファミリーマートは、「健康志向の高まりやライフスタイルの多様化、環境負荷低減に向けた意識の高まりなどを背景に年々ニーズが高まっている」と認識し、「今後もサービス拠点を増やし、より地域に密着した店舗づくり・生活支援サービスの提供を進めていく」として、コンビニが追求する地域密着を、シェアサイクルがサポートすると期待を寄せている。

第二に、2016年12月に公布(2017年5月1日施行)された「自転車活用推進法」。近距離の移動に自転車は適しており、環境に優しい交通手段と位置づけて利用促進を図っていくというもの。基本方針の中にも、自転車専用道路の整備、路外駐車場の整備などとともに「シェアサイクル施設の整備」が、重点的に検討、実施すべき施策として明記されている。

自転車が増えても都内では専用道路がほとんどない。トラブルを避けるためにもインフラの整備が必要だ

東京都もシェアサイクルは2020年に向けて推進する環境先進都市の一環であり、その中で自転車利用環境の充実をうたっている。都のシェアサイクル事業には、前述したドコモ・バイクシェアが参画。自転車本体に、通信機能やGPS機能、遠隔制御機能を全て搭載し、自転車の位置情報をリアルタイムで把握して、効率的な自転車の再配置を可能にするなど、実験と検証を繰り返している。

第三に、お隣り中国の影響。

シェアサイクルは中国で急拡大したサービスである。自家用車が普及する以前は、通勤や通学の主要な移動手段は自転車であった。都市部には専用レーンも用意され、朝夕は通勤・通学の人たちで、ごった返していた。それが、自家用車の普及につれ、自転車の利用頻度は減少する。

しかし自転車シェアリングにより状況が変わった。中国では実に自転車による交通手段が2倍になったと報告されている。もともと自転車に乗る素地があったとはいえ、駐輪ステーションの多さと、スマホアプリによる貸し出しと返却の容易さが、これを後押しした。圧倒的な利便性を提供しているからこそ支持を得ているのだろう。

コンビニと駐輪ステーションは抜群の相性

さいたま市の店舗に駐輪ステーションを一気に設置したセブン-イレブンだが、今度はグループ企業のイトーヨーカ堂が、同様のビジネスモデルにより、OpenStreet、およびシナネンサイクルと協業してシェアサイクルをスタートさせた。既に6月21日よりイトーヨーカドー浦和店でサービスを開始し、2018年度中に10店200台、2020年度末までに30店500台規模で全国展開を図るとしている。

もちろん狙いは、セブン-イレブンを中心とする周辺の駐輪ステーションとの相互送客である。お客は、近隣のセブンで自転車を借り、イトーヨーカドーまで乗って返し、帰りはまた借りてセブンで返す。ドリンクやヨーカドーで買い忘れた小物等をセブンで購入してもらえれば、グループ内での相乗効果が生まれるというものだ。

イトーヨーカドーの駐輪ステーション(イメージ)。マザーステーションとして市場拡大の一翼を担う

シェアサイクルを根付かせるには拠点数の多さがポイントになる。目に付く場所に駐輪ステーションがあれば、ふだん自転車を利用しない人たちも“使ってみようかな”と考えるようになる。その点、駅前と言われる立地にはコンビニがあり、駅の乗降客にとっては“近くて便利”である。課題は「目的地」の駐輪ステーションの有無。近くのコンビニを探すよりも、目的地そのものにあったほうが便利だ。

百貨店、総合スーパー、ショッピングセンターは、セブンであれば、グループ内の確保は容易であろう。他に、市役所、総合病院、観光施設(スポット)等への設置も望まれる。

駐車場の片隅に設置された1台だけの駐輪ステーション。1カ所当たりの台数が少なくても面で押えて利便性を高める

日本は自宅から500m圏内にコンビニが無いと“コンビニ難民”と呼ばれるくらい、店舗が密集している。1店舗で1日1,000人前後の客数を集め、商圏人口約2,000人をカバーする。シェアサイクルの拠点としては最適である。

近年のコンビニはイートインコーナーを標準装備し、淹れたてコーヒーやスイーツも拡充させている。自転車の利用にも快適な空間が用意されているのだ。参加プレイヤーが多く、先が読みにくいが、コンビニが直面する「客数減」を盛り返す、一つの集客装置として取り込んでいきたい。

著者プロフィール

梅澤聡
梅澤聡ウメザワサトシ

札幌市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、西武百貨店入社、ロフト業態立上げに参画、在職中『東京学生映画祭』を企画・開催。89年商業界入社、販売革新編集部、月刊『コンビニ』編集長、月刊『飲食店経営』編集長を経てフリーランスとなり、現在は両誌の編集委員を務める。アジアのマラソン大会と現地のコンビニ巡りをまとめた『時速8キロのアジア』を商業界オンラインに連載中。