コンビニネクスト

「新型」24時間ビジネスは早朝・深夜の客数増に寄与できるのか?

第3回増加するフィットネスやコインランドリーとの一体型コンビニ

ライフスタイルの変化や女性の社会進出なども影響し、新たな24時間ビジネスが市場を席巻している。24時間ビジネスがコンビニと相互送客することで客数対策につながるのか、最新の動向を追った。

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コンビニと相性がいい新たな送客装置とは?

コンビニの既存店は客数が頭打ち、それを客単価で補って、どうにか維持できている。最も深刻なのは、人手不足と人件費の高騰。これにより1店舗当たりの人員が減少傾向にある。採用できないのか、人件費の抑制が必要となり採用を控えているのか、あるいは、その両方なのか、いずれにせよ「これ以上は人手がかけられない」。これが、コンビニオーナーの総意であろう。

しかしながら、人が投入できなくても店舗の生産性は高めたい。

第一に、売れる商品を品揃えし、売上を上げる。これが王道である。

第二に、人時削減を可能とする設備の改善。十数年前にポリッシャー清掃が不要になった。近年は自動食洗器やスライド棚の導入、店舗納品分の検品(ほぼ)不要といった店舗業務を効率化し、生産性向上の改善が急ピッチで進んでいる。

第三に、新たな送客装置の設置、これが今回のテーマである。

送客装置として真っ先に思い浮かぶのがコンビニATMであろう。セブン銀行のATMは1日1台93件の利用がある(2018年5月調査)。ローソンも銀行への参入を表明し、今秋の開業を予定している。

しかし、送客装置はそれだけではない。社会環境の変化により、さまざまなニーズが生まれ、コンビニ店舗との併設が求められているのだ。

コンビニに隣接した立地の24時間フィットネスジム

「フィットネスジムの開発担当者の間では、コンビニ近隣の物件が取り合いになっています。そんなにコンビニと相性が良いのなら、自分たちでやってしまえと……」

ファミリーマート(以下、ファミマ)が24時間フィットネス事業に参入。今年2月14日、ファミマ店舗の2階にオープンした直営1号店「Fit&GO」大田長原店(東京・大田区)は、プール設備やエクササイズスタジオを持たない、マシン特化型の24時間フィットネスジムである。

「Fit&GO」大田長原店。階下のファミマには、プロテインやボディオイルなど関連商品180アイテムを独自に品揃え

出店目標は5年間で300店舗、適正立地やビジネスモデルは検証中だが、基本は加盟店に紹介してコンビニ店舗との相乗効果を図っていく。

「コンビニが併設すると、そこに毎日800人から900人の来店がある。これは(既存のフィットネスジムと比べて優位性が)大きい」とファミマ社長の澤田貴司氏は期待を掛ける。

コンビニに併設して出店すれば、毎日1,000人近くのお客が施設を認知する。さらにコンビニは夜間の出入りが頻繁なので、深夜にジムを利用するお客は安心感を得られる。ここがポイントである。

コンビニとフィットネスの親和性は、他社のフィットネスジムと併設するファミマの既存店において客数の増加が数字で実証されている

同じ業態で先行するのは2010年に米国から上陸した「ANYTIME FITNESS」(エニタイム フィットネス)。今年6月現在、国内350店舗を突破している。特徴は深夜から早朝にかけて無人になることだ。セキュリティについては、館内の全てをカメラで監視、入り口でセキュリティキー(ICチップ入り)による本人確認があり、緊急時には「パニックボタン」により警備会社(アルソック)が駆けつける安全・安心体制を確保している。

「Fit&GO」も同様に昼間は専任の従業員で運営し、夜間は防犯カメラが無人の館内を監視する。ファミマの従業員はノータッチである。同じ建物や近接地に人が出入りするコンビニがあれば心理的な安心感は得られるだろう。

コンビニの利便性に、24時間フィットネスジムをなぞらえると、次のようになる。

欲しい時に(ジムを利用したい時にいつでも)、欲しい商品を(使用したいマシンを)、欲しい量だけ(トレーニングしたい時間だけ)、購入できる(館内を利用できる)となる。

ちなみに筆者は自宅近隣のエニタイムを利用している。深夜でも女性が黙々とエアロバイクを漕いでいる。関係者に聞くと飲食店に勤める人たちに深夜の利用が多いという。

店舗は幹線道路沿いにあり、1階が24時間営業の業務用スーパー「肉のハナマサ」、2階がエニタイム、3階が24時間営業のトランクルーム。建物1棟が24時間稼働している。業務用スーパーとフィットネスジムに相互送客は期待できないまでも、24時間稼働の共通項で3つの業態を結び付けているのだ。

雨の日の客数を補完するコインランドリー事業

24時間フィットネスジムと同様の考え方で、ファミマは店舗と相互送客を図るコインランドリーを開設した。今年5月25日にオープンした「Family Laundry(ファミリーランドリー)杉並永福四丁目店」(東京・杉並区)が初のコンビニとランドリーの「一体型店舗」である。

コンビニと一体型のコインランドリー「Family Laundry(ファミリーランドリー)杉並永福四丁目店」。敷地面積330坪、売場面積48坪、駐車台数18台(コインランドリー店舗と共有)

女性の就業率は高まりを見せている。家事の負担軽減が求められる社会構造の変化に対して、需要が見込まれるコインランドリー事業を直営で展開していく。

都心のビルイン店舗や小型店などは一体型にするのが難しいが、郊外型店舗を中心に、既存店のうち3割から4割を一体型に改装することが物理的には可能だという。このランドリー「一体型店舗」を軌道に乗せれば、ファミマは数千店規模のコインランドリーチェーンを全国に展開できる。2018年度に50店舗、2019年度に300店舗体制を目指していく。

コインランドリーは1万8,000店舗を超える規模に成長。日中に洗濯する時間のない共働き世帯の増加、アレルギーや外気の関係で外干しができない人たち、タワーマンションの増加等で需要が高まっている

一般的にコンビニ店舗は降雨時に客数が減少する。反対にコインランドリーは客数が増加する。雨天時の客数対策としてはコインランドリーとは親和性が高い。ファミマのランドリーは委託業者が清掃や集金等を行うほかは、コンビニ同様、24時間無人で営業する。売場と屋内でつながってはいるものの、コンビニの従業員は基本ノータッチである。施設内の客同士のトラブルや機械の故障については、運営業者が全て遠隔操作で対応する。

スマホを使って洗濯機や乾燥機の稼働状況や予定終了時間が確認できる。時間を効率的に使う価値観という意味においては、ランドリーのお客はコンビニと親和性がある

ファミマは千葉県市原市の店舗で、(屋内はつながっていない)併設店舗でコインランドリーを実験したところ、客数が40人強、売上は1日2万円から2万5,000円前後で推移し、損益分岐点は超えていると説明した。

これもコンビニの利便性になぞらえると、欲しい時に(洗いたい・乾かしたい時にいつでも)、欲しい商品を(使用したい洗濯機や乾燥機を)、欲しい量だけ(洗い・乾したい量だけ)、購入できる(洗い・乾せる)となる。

ファミマの担当者は「広い駐車場とイートインスペースは支持されている。女性にとっても隣がファミマなので安全で安心。ファミマ自体の信頼性も強みになる」として相互送客に期待する。

ただし冒頭でも触れたが、コンビニ店舗は慢性的な「減員」に陥っている。24時間フィットネスジム、コインランドリーに続く、新しい併設・一体型の施設はあるのか。

条件は24時間営業、ファミマ店舗と相互送客、そしてファミマのスタッフはノータッチということだ。

有職主婦の増加による新しいビジネスの芽に期待したい。

著者プロフィール

梅澤聡
梅澤聡ウメザワサトシ

札幌市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、西武百貨店入社、ロフト業態立上げに参画、在職中『東京学生映画祭』を企画・開催。89年商業界入社、販売革新編集部、月刊『コンビニ』編集長、月刊『飲食店経営』編集長を経てフリーランスとなり、現在は両誌の編集委員を務める。アジアのマラソン大会と現地のコンビニ巡りをまとめた『時速8キロのアジア』を商業界オンラインに連載中。