コンビニネクスト

ついに「1日分の野菜」も摂取できるチルド麺まで登場

第6回健康志向、惣菜強化、冷食拡充…注目4商品からコンビニの次世代を予測する

秋冬の商品政策について、セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、デイリーヤマザキを取材した。その取り組みの中で、事例として提示された商品を、(春夏の関連商品も含めて)幾つかピックアップした。チェーン独自の政策を具現化した商品もあれば、各チェーンに共通するコンセプトの商品もある。コンビニの新商品から次世代の成長戦略を探っていきたい。

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牛丼専門店チェーンに対して優位性を発揮

一つ目は10月16日にリニューアルしたセブンのチルド商品、「熟成肉の特製牛丼(アンガス種牛肉使用)」398円(税込み、以下同)。外食チェーンとガチンコで戦える商品であることを示した。セブン-イレブン・ジャパン取締役執行役員商品本部長の石橋誠一郎氏が、その差別化ポイントとして挙げたのが塩分の使用量である。

一日に摂取してよい塩分量は、厚生労働省の指針が男性8.0グラム未満、女性7.0グラム未満、世界保健機構(WHO)は5.0グラム未満と、さらに基準値は厳しい。同商品を最初に発売した11年は塩分相当量が3.6グラムあった。食材と製法を変更し、肉のうま味を増すことで徐々に塩分量を削減し、今回は1.8グラムまで減量させた。

食品表示法に基づき2019年3月からは、現行の「ナトリウム」ではなく「食塩相当量」の表示が義務付けられる。この変更により消費者は塩分に対して、より意識するようになる。その変化に先駆けて対応した。

一方の、ある牛丼専門店チェーンは一食約6グラムの塩分を使用している。この点でセブンは「競合」を大きく引き離している。もはや牛丼専門店チェーンの補完的な商品ではなく、明確に戦える商品として展開していく。

若い男性客に冷凍食品を訴求する意図

セブン-イレブンは「蒙古タンメン中本 汁なし麻辛麺」321円(画像)を本年6月に発売、1店舗1日平均3.7個の売上は“冷凍商品においては、これまでにない実績を残すことができた(石橋氏)”ヒット商品である。

筆者は、この商品を発売当初に食べたとき、極端な辛さに驚いた記憶がある。辛さを売りとする繁盛店の商品を再現するのだから辛いのは当然として、こうした味覚の尖った商品を、他チェーンは発売しても、大衆路線の真ん中を走るセブンは、避けて通ると思っていたからだ。

発売から数カ月経ち、その狙いが明らかになった。「この商品は若い男性客に訴求できた。今までセブン-イレブンで冷凍食品を購入しなかった客層が一気に変化した。結果として冷凍食品の伸長が著しく高い。お客様に対して、購入してもらう“きっかけ”を提供することにより、どんどん(商品の動きが)変わる手応えを感じている」(石橋氏)

コンビニ各チェーンは冷凍食品売場を拡充している。買い物に慣れた主婦層であれば売場への寄り付きに抵抗はない。一方、若年層は、弁当類に馴染みがあっても、冷凍食品に手を伸ばす人たちが少ない。売場に意識を向けさせるため、あえて若者向けの味覚の尖った商品を投入したのだ。

しかも続きがある。11月19日の週に、カップのまま電子レンジで温められる冷凍食品「7プレミアム 炒め油香るチャーハン」「7プレミアム バター香る海老ピラフ(ともに213円)を投入する(執筆時は発売前で画像なし)。店内の業務用レンジで温められる即食性の冷凍食品は初めてである。皿に移さなくても、車の中やオフィスで食べることができる商品だ。

この食の場面を拡大する画期的な商品は、若い客層を中心に訴求できるだろう。その意味で、先の「蒙古タンメン中本 汁なし麻辛麺」から若い客層を引き付ける冷凍食品売場に対する政策には、一連の流れがあったのだろう。

コンビニは惣菜強化で夕夜間の売上拡大を図る

夕夜間の惣菜強化はコンビニ各チェーンの共通テーマである。時間のない有職主婦、近くで買い物がしたい高齢者、一人分の食事で足りる単身者、こうした客層を、既存のスーパーマーケットに取られるのではなく、コンビニが取り込んでいく政策である。

ただし、それだけではなく、購買行動の変化も起こっている。

ファミマは客数だけではなく、客単価にも注目している。ファミマの平均客単価は573円。一方で、惣菜や冷凍食品を購入するお客の客単価は高く、特に惣菜シリーズ「お母さん食堂」(画像)を購入するお客の客単価は1349円と、それ以外の客単価より圧倒的に高いことが判明したのだ
「スーパーマーケットの平均客単価が1902円(推計)だから買い方がスーパーマーケットに近づいているイメージ」とファミリーマート常務執行役員 商品・物流・品質管理本部長の佐藤英成氏は分析する。

客単価が高い理由は購入が「自分用」だけでなく「家族用」にもシフトしている。客単価が一気に高くなる「使われ方」の変化が起こっているのだ。

野菜は1/3日分から1/2日分、そして1日分へ

画像はデイリーヤマザキが、この秋に発売する「1日分の野菜が摂れるちゃんぽん」550円。炒めたり、ボイルした“1日分”の野菜が加わり手に持つとずっしりと重い。

同チェーンによると、野菜を多く加えると女性の購入率が高くなり、昨年は1日の2分の1の野菜が摂れるシリーズを発売したところ、女性の購入率が10%高くなったという。

それでも若い女性のお客から次のように聞かれた。
「じゃあ、残りの半分は、どうやって摂ったらいいの?」
このやりとりが、“1日分の野菜”のヒントになったという。

セブン-イレブンは今年度から“1/2日分の野菜を使用”と量目を数字で示すようになった。数字で示した方が反応は良いという。

コンビニは野菜不足のサポートを一斉に謳いだした。冬はサラダの需要が落ちるので温野菜系の商品もトレンドになっている。

一時期は不健康の代名詞のように呼ばれた「コンビニ弁当」も、もはや過去の話となりつつある。

著者プロフィール

梅澤聡
梅澤聡ウメザワサトシ

札幌市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、西武百貨店入社、ロフト業態立上げに参画、在職中『東京学生映画祭』を企画・開催。89年商業界入社、販売革新編集部、月刊『コンビニ』編集長、月刊『飲食店経営』編集長を経てフリーランスとなり、現在は両誌の編集委員を務める。アジアのマラソン大会と現地のコンビニ巡りをまとめた『時速8キロのアジア』を商業界オンラインに連載中。