肝となるのは本部と店舗の「分業」
チェーンストアにとって「標準化」と「分業」という考え方はとても重要です。
チェーンストアにおける分業の筆頭は「本部」と「店舗」における分業です。
本部は「どの商品をどのように販売するのか」「店舗でどのように作業を行うのか」を決定し、店舗に対して指示を出します。店舗はその指示通りに作業を行い売場づくりを行います。そのために本部はマニュアルをつくり、従業員に教育を行います。
標準化は、店舗面積はもちろん、レイアウト、棚割りなどのコンセプトを統一した業態を開発し、展開していくことです。どこまでをセルフサービスで販売し、どこから接客販売を行うというように、従業員の接客水準まで標準化しているチェーンストアもあります。
なお、一つの資本で展開されるチェーンを「レギュラーチェーン」と呼びますが、それ以外に「フランチャイズチェーン」や「ボランタリーチェーン」のようなチェーンストアもあります。
コンビニエンスストアが店舗数を爆発的に増やすことができたのは、フランチャイズチェーンであり他人の資本を使って出店することができるからです。
コンビニの本部にとってのお客さまは、商品を購入し、ロイヤリティーを支払ってくれるオーナーであるとも言えます。
筆者はある大手コンビニの本部の片隅で一時期仕事をしていた時期があるのですが、スーパーバイザー(SV)さんが店舗に来店するお客さまのことよりも、オーナーとの折衝について熱く語っていたことを思い出します。
チェーンストアはクッキーカッター?
このように、規模を拡大することで、さまざまな恩恵を人々の生活に与えてきたチェーンストアですが、行き過ぎたチェーンストア化にも問題があると言われています。
もう10年ほど前のことですが、筆者が取材をした日本を代表するとあるアパレルチェーンの経営者の方がこんなことを言っていました。
「自分はこれまでチェーンストアビジネスについて深く勉強し、実践をしてきた。しかし、徹底的に標準化された店舗を出店し続けていたら、クッキーカッター(金太郎飴)になってしまって、自分も面白くなくなってしまった」
確かに働く人が面白くないと思ってしまうような店舗では、お客さまに楽しくお買い物をしていただくのも難しいのかもしれません。
しかし、そもそもその企業が当時正しいチェーンストア化を進めていたいのかも定かではありません。日本における小売業のチェーンストア化の水準はあまり高くないと言われています。残念ながら、チェーンストアとしての最低限の仕組みづくりもまだまだ至らない小売業が少なくないという状況なのです。
まずはその基本的なチェーンストアのシステムづくりをきちんと進めることが重要です。その上で、お客さまとの接点である店舗従業員がより自律的に行動し、やりがいをもって働くことができる、そんな仕組みづくりこそが今チェーンストア業界には求められているように思います。