図解でカンタン!小売業超基礎講座

チェーンストアってなんだ? 前編

第2回スケールメリットで低価格を実現する「チェーンストア」

「このあたりにはチェーン店の飲食店があるから住みやすい」とか「チェーン店ばかりで商店街がつまらなくなった」というような言葉をよく耳にします。その存在なしに現代の小売業を語ることはできないというほど、「チェーン店」は私たちにとって身近な存在です。町の中にはさまざまなチェーン店が存在していますが、ではなぜチェーン店(小売りの専門用語ではチェーンストアといいます)がこれほどまでに増えたのでしょうか。(イラスト作成:ManatyDesign

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一つの資本が11店舗以上を経営管理する

そもそもチェーンストアとは何でしょうか?
小売業や飲食店は、どれだけの数の店舗を、どのように管理しているかで分類することができます。

この定義によると「一つの資本で標準化された11以上の店舗を直接経営管理するもの」がチェーンストアとされています。しかし、チェーンストアとしての本領を発揮するためには200店舗以上の標準化(後述)された店舗が必要という説もあります。

チェーン規模が大きくなれば商品価格は下がる

ではチェーンストアの強さの秘訣とはいったい何なのでしょうか?

まず1点目は、同一のフォーマット(業態)を多店舗展開することで、特定の商品の販売数量を増やし、商品を買いやすい価格にすることができる、ということです。

1店舗で1週間に10個売れる商品は、1,000店舗を展開しているチェーンストアでは同じ期間で1万個売れます。この販売量を元に、メーカーに値下げ交渉などを行うのです。

販売の規模を大きくすることにより、仕入値が安価になることを「スケールメリット」といいます。このスケールメリットは、商品の販売価格だけではなく、店舗の建築資材の仕入値や、従業員の教育コストなどの経費圧縮にも影響を及ぼします。

2点目として、チェーンストアの規模が大きくなれば、ナショナルブランド(NB)メーカーが作らないような商品をチェーンストアが独自に開発・販売することもできるようになるということが挙げられます(プライベートブランド・PB)。

マクドナルドのようなハンバーガーチェーンがびっくりするような低価格の商品を打ち出すことができたり、ユニクロや無印良品のようなSPA企業が、独自性のある商品を安価に開発できるのも、この「チェーンストア化によるスケールメリット」が背景にあるからこそなのです。

次回は、チェーンストアにとって重要な「標準化」と「分業」という概念について解説します。

著者プロフィール

鹿野恵子
鹿野恵子カノケイコ

MD NEXT編集長。宮城県仙台市生まれ。早稲田大学法学部卒。アスキー、商業界、ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所を経て独立。一貫して流通小売業とITを軸にした活動を続ける。2018年より現職。2016年11月生まれの娘の育児を楽しみつつ働いています。twitter: @keikoka