MD NEXT リリースセミナーレポート サツドラホールディングス富山浩樹社長

時代が変わる、チェーンストアの役割も変化する

2018年6月21日、150名以上の来場者を迎え盛況のうちに幕を閉じたMD NEXTリリースセミナーの一部を抜粋してお届けします。これまでのチェーンストアは地域間の格差を無くし、どの地域に住む人でも豊かな生活ができる社会を実現してきました。しかしそのチェーンストアの役割は、この情報化社会のなかで変化していくとサツドラホールディングスの富山浩樹社長は語ります。(まとめ:編集部、写真:曽根田源)

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北海道を深掘りし、次の成長への基盤をつくる

我が社は今年で創業46周年になり、2016年8月にサツドラホールディングスに持ち株会社化しました。北海道を中心にドミナントを形成していまして、昨年店舗数は200店舗を越えました。グループの概要としては、ドラッグストア事業としての「サツドラ」、その下に製造・卸し会社「Creare」、地域マーケティング事業を展開する「リージョナルマーケティング」、新電力会社「エゾデン」、AIソリューション開発事業「AI TOKYO LAB &Co.」と、POSシステム開発事業「GRIT WORKS」、BtoBのインバウンドマーケティング事業を行う「VISIT MARKETING」、台湾ドラッグストア事業の「台灣札幌藥粧有限公司」から成ります。

現在、サツドラホールディングスでは「リテール×マーケティング」というコンセプトのもと、2021年5月期に向けて中期経営計画を実施しています。「北海道の深掘りと次の成長への基盤づくり」をテーマに、4つの成長戦略と2つの組織戦略を掲げています。成長戦略の1つ目は「強固なリージョナル・チェーンストアづくり」。2つ目は「リージョナル・プラットフォームづくり」。3つ目を「アジアン・グローバルへの発信」としておりまして、本丸が4つ目の「デジタルトランスフォーメーションの推進」です。

現在事業の柱として展開しているのが、地域マーケティング事業です。4年前に立ち上げた「リージョナルマーケティング」という会社で、地域が輝くプラットフォームづくりというコンセプトを掲げ、地域の共通ポイントカード「EZOCA」を発行しました。

おかげさまで、EZOCAの提携先企業はこの4年間で114社653店、発行数が1,650,000件となっており、北海道の中では世帯カバー率が50%以上です。EZOCAはサツドラのポイントカードを中心として立ち上げたためにユーザーの72%が女性で、20代から40代の女性が50%以上を占めています。

我が社は地域連携ということで、北海道さんをはじめとするさまざまな自治体さんと包括連携協定を結んでおります。ほかにも、Jリーグのコンサドーレ札幌さんなどと業務提携を結んでいまして、マーケティング領域で協業しています。また、フリーペーパーも発行していまして、発行部数13.5万部、約40の市町村、230の保育園・幼稚園・託児所に配布して、コミュニティの紹介や提携店の情報を発信しています。同じようなスキームで新電力も行っておりまして、地域プラットフォームづくりに取り組んでいます。

また、道外にもインバウンドフォーマットの出店を加速していますが、こちらはただ店を出すだけではなく、リージョナルマーケティングと同じ発想で、WeChatPayを展開するテンセントさんといち早く業務提携を結ばせていただきました。

他にも、別業態として「北海道くらし百貨店」を立ち上げ、北海道のものを国内、海外に発信するなど、プラットフォームやデジタルソフトウェアというかたちで拡げていって、リテールに還元していこうとしています。そして、これらの取り組みをグループ全体の成長につなげています。

地域間の格差を無くしてきたこれまでのチェーンストア

これまで、チェーンストアは人の暮らしを変えてきました。北海道でいえば、薬局が1店もなくなってしまった3千人規模の街ですとか、そうした場所でもチェーンストアがあれば札幌など都市部と変わらない価格、品揃えで買い物をすることができます。このように、これまでチェーンストアは地域間の格差をなくしてきました。

そしてこれからは「情報格差」が大きくなってくるのではないかと思っています。銀行や自治体の機能をはじめいろいろなサービスがデジタルに代替されてなくなっていく。そうなった時に、買物難民ならぬ情報難民が出てくるのではないかと思うのです。

そのような時代にあって、これからのチェーンストアは「リアルな場」として、サービスも含めて格差を解消していく役割を担うのではないかと考えています。また、省人化、オートメーション化が進んでいく中で、「人」がいるからこそ生み出せるライフコンシェルジュという価値をどう実現していくか、そのために、どうデジタルトランスフォーメーションを推進していけるのかを大きなテーマとして取り組んでいます。

変わり始めた現場の意識

デジタルトランスフォーメーションを推進するうえで、我々は体制づくりが非常に重要だと考えております。今、我が社にはグループ会社としてリテール型AIソリューション開発の「AI TOKYO LAB」、そしてPOS開発の「GRIT WORKS」という会社があります。

AIはどんどんコモディティ化し、早くも淘汰が進んでいます。しかし、サツドラグループにはリアルな店舗があって、EZOCAがあって、POSがあって、地域との連携があります。

そして、データや業務、サービスに対しての有効なツールとして、自社でAIを活用することができます。今、北海道大学内にR&D拠点として「AI HOKKAIDO LAB」を開設しまして、サツドラやEZOCAのオペレーションを改善するために動いています。北海道大学とも連携しながら、地域でどう新しいものを生み出していくかという体制の仕組みづくりをおこなっています。

もう1つ、クラウドでリアルタイムで動くPOSを開発しようということで、「GRIT WORKS」が誕生しました。

チェーンストア側からいうと、POSはいかに安全に取引ができるかが命題で、新しいことをやるというのはベクトルとして向かないのですね。しかし、いろいろと試行錯誤しながらも、この開発会社では非常に価値あるクラウドPOSを開発することができました。現在も現場の声やノウハウを蓄積して、どんどんアップデートしています。現場でも、システムは意見をしても変わらないという認識だったものが、何かしら言えばすぐ変わるという意識になっていったのです。そういう文化ができたのは大きなメリットでした。

日本は課題先進国といわれていまして、人口減少ですとかいろいろな問題を抱えています。特に北海道は日本の中でも超課題先進エリアなのですね。高齢化伸び率、長期療養の入院日数、そのほかにも完全失業率や過疎化など、社会課題の宝庫みたいなエリアなのです。この北海道で新たなテクノロジーを使って社会課題を解決する社会実装をすれば、自治体さんも巻き込みながら、新たなイノベーションを起こせるのではないかということで、Satudora Innovation Initiative(通称SII)を立ち上げました。

新たな組織文化づくり

新たな組織文化づくりということで、現代はビジネスモデルの寿命がどんどん短くなっていく中で、企業側からは多様性のある人材を取りたい。個人としては今までと違うキャリアを積んで多様性を持っていく。お互いが相互選択できるような多様性のある土壌をつくっていく必要があると思います。

我々は2年前に「サツドラジョブスタイル」というのを発表しまして、多様な働き方の実現を推進しています。副業、兼業、在宅ワークや連続休暇制度もなど、働き方の選択肢を増やしています。また、外部人材を積極登用しておりまして、既存の人材と掛け合わせて多様性を見出していくということもやっています。

東京でキャリアを積んで地域で働きたいという人も潜在的にいるのですが、面白い仕事と住みたい場所がマッチしないということがあるのですね。こちらが面白い仕事、ワクワクする仕事を提示すれば、人が来てくれる。それでこうした人事制度を採っております。一方で、グループ会社や組織を作ることによって、まずはそこでエンゲージメントしてもらって、うまくシナジーを出すことで多様性を目指せるのかなとも考えています。

デジタルトランスフォーメーションを実現するにあたって、1番大事なのは組織文化をどうつくるかであると思っています。一例を挙げると、3年ほど前からペーパーレス化を推進し、オペレーションをスマートデバイスで完結するようにしたり、チャットでコミュニケーションすることでスピードを上げたりという環境の改善をしています。また、日常の仕事やそのプロセスにフォーカスして表彰するサツドラアワードの導入、社内広報を強化するなど、新たな組織文化を生み出そうというところです。

現代は非常に時代の流れが早い中で、変化に対応できる組織体制をどうつくるかというのは非常に重要で、多様性のある文化をどう生み出すかというのが、デジタルトランスフォーメーションをしていくのに1番重要なことであると捉えまして、私も含めて、今後も変化を楽しみながら進めてまいりたいと思います。

(談・文責:編集部)