商品を生かす伝え方のヒント【後編】

YouTube連動、ユーザーニーズ、現物比較…共感型へ売場をチェンジ!

スマートフォンの普及により、マス媒体からの限られた一方通行の情報提供から、インターネットを使った双方向の情報交換へとコミュニケーション方法が変化しています。店頭での情報発信もこうした環境変化に対応しなくてはなりません。後編では、「上からの情報発信」ではなく、「共感型の情報提供」への転換を売場事例から学びます。(前編はこちら)(月刊マーチャンダイジング 2018年7月号より転載)

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現代の10代、20代の女性の多くは、化粧方法をYouTubeから学んでいます。当然、母親や友達、化粧品専門店などから学ぶ女性もいますが、その比率は以前に比べて減少傾向です。

コスメ、カラコンの口コミサイト「ガルモニ」の調査によれば、コスメの最新情報を知るメディアとして18歳以下の1位 Twitter(27.6%)、2位 雑誌(21.9%)、3位 Instagram(17.9%)となっています。1位と3位にSNSが入っており合計で45.5%。インターネットが先生役を果たしているといえるでしょう。

[図表1]コスメの最新情報はどこで知りますか?(2017年ガルモニ調べ)

SNSの特徴のひとつは、圧倒的多数が個人発信の情報という点です。

商品選びに関して、「メーカーや供給側発の公式情報は、モノを売るためにいいことしかいっていないのではないか」とおもっている消費者も若年層中心に少なくありません。

このような環境の下、店頭を含む情報発信は、メーカー、供給者目線で「この商品はここが優れているから購入してください」というストロングポイントを訴求して購入を促す「推奨軸」よりは、「商品の使用感やコストパフォーマンスに満足している、この商品で何かが改善された」というユーザー目線の「納得・共感軸」が重視される傾向が強くなってきています。

こうした状況を踏まえて実際の情報発信を見てみましょう。

使っている様子がリアルに伝わるYouTube連動型

10代、20代への影響力が強いYouTubeを活用した店頭情報発信の事例です。商品は、まぶたに塗るだけで二重まぶたになるというアイメイク。ボードに基本情報を掲載し、設置されたプレイヤーではYouTuberが実際に商品を試している動画を流しています。投稿者であるYouTuberは一重まぶたの自分のことをかなり自虐的に表現。内容は言葉遣いも丁寧で好感が持てます。一重まぶたにコンプレックスを持つ人は共感するでしょう。

インフルエンサーの動画活用

いまや、YouTubeやInstagram上には個人で数十万人単位のフォロワーを持つインフルエンサーも少なくありません。

「ざわちん」はブログ上でメイクによりさまざまなタレントの顔まねをすることで人気が出たインフルエンサーです(いまはタレント業も)。多くの人にメイクの持つ力をあらためて認識させました。そのざわちんが商品の使用法を動画で解説する情報発信です。メイクで変身願望のある人には刺さるのではないでしょうか。

共感誘うNo.1訴求

オールインワンクリームの売場です。「@cosmeクチコミランキングNo.1」「スキンケアリピート率No.1」「スタッフおすすめNo.1」など、No.1訴求を重ねて情報発信し、「これほどまでに支持されている」ことで共感を誘おうとしています。スタッフの手製とおもえるチラシも付けて、商品のよさに共感してもらおうというオーラが前面に出ています。

「ユーザーニーズから誕生」訴求


つくり手側の理論や計画で生産する「プロダクトアウト」的な商品ではなく、使い手側のニーズから生まれた商品であることを強調するPOPが付いています。メーカー目線で上流から届けられたのではなく、みんなが欲しいとおもっていた商品であることを強調することによって、私も欲しいとおもわせる「同調欲求」的な心理を突いているといえるでしょう。たしかに視界を確保できればスマホ使用や読書もできて便利で、開発意図に納得できます。

現物比較と特長表記で共感納得

猫の爪とぎの実物POP。商品の3大特長を明快に書いてあり、猫を飼っている人なら納得・共感できる内容です。加えて、実物サンプルがあることで実感もできます。猫の写真もアイキャッチとしては効果的。商品力も大きいが、特長を端的に表現することで売場に目を留めさせ、ムダなく短時間で納得・共感させる情報発信といえます。

「その気持ちわかる」POP

時短訴求のシートマスク売場。60秒間シートマスクをつけるだけで洗顔、スキンケア、保湿下地の3つの効果があるという商品。メーカーのボードにプラスして店側が「朝は1分1秒でも長く寝ていたい…そんなあなたへ!!」と、共感性の高いPOPを付けています。商品特徴が明確で共感を呼びやすいので、店側のアイデア次第で効果が高い情報発信ができる事例といえるでしょう。