キャッシュレス&グルテンフリーレストラン
キャッシュレスは、レジを締めた後に行う会計の作業を削減し、また売上金額が合わないなどのリスクや、不正行為という疑心暗鬼の発生を解消し、従業員をストレスから解放する。
日本は海外諸国と比べてキャッシュレス化が遅れている。その要因として、治安がいい、ニセ札をつくりにくい、店舗のレジの処理が早い、現金の入手が容易といったものが挙げられるが、人材不足問題を解決する上でもキャッシュレス化は必要なことであり、これから一気に進むことであろう。
食の多様性は、インバウンドが増加してグローバル化が進むことによって、宗教やアレルギー、主義に基づく食の禁忌が顕在化し、これらに対応した品ぞろえを心掛けることが重要になる。
ちなみに筆者は、3年前よりインバウンド対策の取材を継続しているうちにハラールを知り、そしてフードダイバーシティ(食の多様性)を知り、この過程で自分はグルテン不耐症であることを確信して、グルテンフリーの食生活を心掛けることによってすっかりと体調がよくなった。
この2つを兼ね備えた飲食店「TACO FANATICO」(タコ ファナティコ)が2018年10月19日にオープンした。経営は株式会社グローバルダイニング(本社/東京・港区、社長/長谷川耕造)。立地は、中目黒駅から徒歩2分の目黒川沿い、14.4坪(カウンター席22席、スタンディング8席~)となっている。
同店の規模は、同社の史上最小店舗であるが、この狭さを最大限に活かして、フルオープンキッチン、エンターテインメント、ライブ感を演出している。こうしてお客同士、カウンター越しのスタッフとの距離感も近くなり、スモールコミュニティが生まれることに配慮した。メニューはタコスの品揃えにこだわった品揃えで客単価は2,000円。店舗デザインもメニュー設計も造り込みが行き届いている。
キャッシュレス化を2年前に想定していた
同店のキャッシュレスとグルテンフリー対応について、同社取締役の小林庸麿氏が解説してくれた。
同店のキャッシュレスは、クレジットカード(VISA、MASTER、AMEX、DINERS、JCB、DISCOVER、銀聯)、電子マネー(iD、nanaco、Edy、WAON、QUICKPay、Apple Payなど)、交通系電子マネー(suica、pasmo、icocaなど)に対応する。
キャッシュレス化に踏み込むことについては、2016年に広尾の日赤通りにサラダ専門店をリニューアルで出店をするときに検討された。しかしながら、このときは時期尚早ということで見送られた。
その理由として、社員の中にカードを使用することに親しんでいない人がいたこと、キャッシュレス対応のカードとしては交通系のものであればたいていの人が持っているという判断があったが、店が駅から遠くて残金不足でチャージに出向くとしても不便な距離にあると想定した。
今回同店がキャッシュレスに踏み切ることになったのは、まず「新規出店」であること。既存店の場合はリピーターが定着していることから、切り替えによって多少の不便をもたらすことになるのではという懸念があった。次に「小型店」であること。大型店は宴会が入ると現金決済が多くなることから、導入は今後の課題とした。さらに「客単価が低い」ということ。手軽な価格であることから交通系カードが対応しやすいのではと考えた。
そして、肌感覚で「キャッシュレスを容認する時代になってきた」と感じてきたことが決断を後押しした。実際に、同店がオープンしてから、お客の多くは決済をするときに「便利ですね」と語り、好意的だという。
同社の他の店のキャッシュレス化については、一斉に行うことをせずに、できるところから切り替えていくという方針である。
「グルテンフリー」は大きな差別化となる
グルテンフリーについては、同社の「安全安心」、「健康」というミッションが根底にある。
添加物の入っている食品はなるべく使わない方針であり、ベジタリアン・ヴィーガンにはすでに7、8年前から対応している。既存店では、パスタにそば粉や玄米、低糖質の商品も用意してあり、お客からの要望があれば同じ料理であっても材料をグルテンフリーにチェンジして提供する。
また、カリフラワーライスや、カリフラワーのチャーハンもラインアップしている。これは「このようなことをアピールして、健康に気遣っている人たちに存在を認めていただくための試み」(小林氏)であるという。
今回の店のメニューをタコスに特化することに決めたときに、「グルテンフリー」の発想がすぐにひらめいた。それは、グルテンフリーを実践する人が増えていることを実感しており、これに対応したことをうたうことで大きな差別化になると考えた。
同社ではアメリカ・ロサンゼルスに2店舗を展開しており、現地でのレストランの動向についてここを拠点にリサーチしていることも奏功している。
冒頭で述べた食の多様性について、現地では今やマイノリティではなくなってきていて、一般の人もヴェジタリアンも、ハラールも同じレストランの中で垣根がなく同時に食事を楽しんでいる。こうして、「同じ店で、価値観や習慣の異なる食を選ぶことができる」ということがスタンダードになってくるということを確信している。
感度の高い中目黒から、「新スタンダード」を発信
同店がこだわっているタコスは、イエローコーンマサをベースとして、つなぎにスーパー穀物を使用して店内でハンドメイドしている。これをオーダーを受けてからお客様の目の前で焼き上げている。
タコスの色は4種類あり、白はプレーン、ピンクはビーツ、黒は竹炭、黄色はクミンとターメリックによるものだ。
タコスの種類は10種類以上あるが、一例を挙げると以下のようになる。「名物!アルパストール・ポーク」」260円(税別、以下同)、「チキンモレ」350円、「ビーフステーキ」450円、「角煮ポーク」350円、「天ぷらシュリンプ」350円。いずれもインスタ映えする彩りである。
アルコールのメニューでは、プレミアムテキーラとメスカルを約100種類ラインアップしていることも特徴である。
現在の営業時間は、平日17時~26時、土日祝11時30分~26時となっている。キャッシュレスとグルテンフリーという先進的なレストランの試みが、時代を読み取ることに敏感な人が多く住む中目黒で定着することによって、フードサービス全体に影響を及ぼすことは必然的なことであろう。