開発不要でネットスーパーを立ち上げられる10Xの「Stailer」が土台
イトーヨーカ堂では6月15日、同社のゼネラルマーチャンダイズストア「イトーヨーカドー」の「ネットスーパーアプリ」の本格運用を開始しました。
ネットスーパーとしては初のスマホアプリ。技術を提供したのは、献立提案から材料の注文までができるアプリ「タベリー」を提供する10Xです。
※「タベリー」は2020年9月30日サービス終了予定。
10Xが提供する「Stailer(ステイラー)」は、次のようなことができます。
・既にネットスーパーを展開している事業者は、既存システムの開発不要でアプリへ移行可能
・新しくネットスーパーを立ち上げる事業者は、商品データを連係させるだけで配送やドライブスルー受け取りを可能に
レシピ画面から材料を注文、ブラウザとの差別化にはやや疑問も
イトーヨーカドー・ネットスーパーアプリを利用するには、スマホにアプリをダウンロードします。
アプリで買い物をする方法は大きく2つ。1つは、通常のネットスーパーと同じように、「売り場」画面で食材を選んで買い物かごに入れる方法。もう1つは、「レシピ」画面から必要な材料をまるごと買い物かごに入れる方法。
「レシピ」画面から買い物する方法は、10Xが「タベリー」で得た知見をそのまま活かしており、「献立を考える」というユーザーのプチストレスを解消してくれます。
一方で、「売り場」画面からの買い物は、アプリとブラウザで大きく使い勝手は変わらない印象。むしろ、カテゴリー別に商品を探すならブラウザのほうが目的へのアクセスがしやすく感じました。
とはいえ、商品選択から買い物カゴ、支払い画面への画面遷移はアプリならではのスムーズさ。ブラウザよりも手軽にアクセスできるという点で、ユーザーの購買行動につながりやすいのではないかと感じます。
アプリの横展開は可能か。一方で、ピッキングの効率化も課題
10XのStailerを使えばシステム開発不要でネットスーパーアプリを立ち上げられるという点は魅力的です。しかし、同社のアプリを横展開させるには、いくつか課題もありそうです。
1つは、事業者側が他社と同じ基盤のアプリを使いたがらないのではないかという懸念。もう1つ、アプリの使用料が「Stailer利用料としての定額利用料」+「売上に応じた連動費用」という同社のビジネスモデルが、事業者のアプリ導入・活用をためらわせる可能性があるということです。
小売業のDX化を促進するためには、事業社側にも課題があります。特に、店舗を倉庫とするネットスーパーは、ピッキング作業に最適化されていません。ピッキングと配送にコストがかかり赤字化することで、ネットスーパーそのものを断念してしまう企業も少なからずあるようです。
コロナ禍で需要が高まるネットスーパーですが、ピッキングや配送の効率化こそがポイントとなるでしょう。
※追記)2020年8月20日:アプリの利用料の表記に関して誤りがありましたので修正いたしました。