人口の約3分の1が高血圧!測定の重要性を啓発する血圧計の売り方

超高齢社会を迎える日本。糖尿病・高血圧症・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病といかに向き合っていくかがクオリティ・オブ・ライブを左右する。なかでも国民の1/3が予備群と言われる「高血圧」は、脳血管疾患・心疾患などの命にかかわるイベントを引き起こす原因になりかねないが、多くの人が「見てみぬふり」をして過ごしているのが実情だ。地域の健康ステーションであるドラッグストアは、この問題にどうかかわるべきか。血圧計の売り方や、高血圧に関する情報発信について考える。

日本国内の高血圧をめぐる状況

患者数は全人口の約3分の1にあたる4300万人と、国民病とも称される高血圧。日本人の4人に1人は脳や心臓の血管トラブルで死亡しており、突然死の原因の約8割は脳や心臓の血管トラブルによるものといわれている。

高血圧治療ガイドラインによると、高血圧の基準値は診察室血圧が140/90mmHg、家庭血圧は135/85mmHg。高血圧者は、一定期間生活習慣の修正を積極的に行い、その効果が充分でなければ降圧薬治療を行うことが推奨されている。

近年、海外では高血圧の基準値を下げる傾向にある。アメリカでは上の数値を130 mmHgに規定されており、そうなると日本の人口の半数以上が高血圧に該当することになる。

高血圧の通院状況については約4300万人の患者の内、27%にあたる約1200万人が服薬による血圧コントロールができているが、全体の約半数は未通院で適切な治療を受けておらず、治療中の患者でも29%は適切なコントロールができていない。今後、降圧達成率を向上させるためには、患者の行動変容支援と共に、パーソナライズされた診断や治療が必要となってくるだろう。

また健康診断等の測定で正常値を示す6000万人のうち、10~15%が仮面高血圧の可能性がある。仮面高血圧は持続性高血圧の患者と同程度のイベント発症リスクがあり、正常血圧の人の約2倍のリスクを抱えている。高血圧を予防するには、規則正しい生活やバランスのよい食事、適度な運動と共に、家庭での定期的な血圧測定も重要となる。

国内の血圧計市場環境

家庭用血圧計の購買チャネルのメインは家電量販店とドラッグストアだ。2019年度の家庭用血圧計の市場は家電量販店が前年比98%、ドラッグストアでは同103%。家電量販店とドラッグストア計で120億円規模のマーケットであり、年々微増傾向にある。

近年はネット通販も伸長しており、特に新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛の影響から、2020年4月以降は家電量販店での購入割合が下がり、身近にあるドラッグストアやネット通販の利用が大幅に伸びている。

ドラッグストアにおける血圧計のメイン購買層は60・70代であり、男女比で見るとドラッグストアの業態の特性もあって女性が大半を占めている。

前述したように高血圧の未通院は約2000万人にも及び、早ければ30代半ばごろから症状が現れることがあるため早い段階での血圧管理が重要となる。

現状、30・40代の高血圧患者は血圧管理に対し「自分ゴト」という認識が低く、特に未通院の場合、サプリメントや特定保健用食品といった健康食品等に頼る傾向にある。40・50代の通院患者についても自宅で血圧を測る習慣のない人も多く、こういった比較的若い世代の高血圧患者に向け血圧計を訴求することが、同カテゴリーの課題となっている。

血圧計のタイプと購入者の傾向

家庭用の血圧計は「上腕式」と「手首式」に大きく分かれる。「上腕式」は動脈の血圧を正確に測定でき、病院で測定するときと同じ使用感である点がメリットとなるが、機器のサイズが大きいため場所を取るというデメリットがある。一方「手首式」は小型で軽く、携帯性に優れるが、測定姿勢による誤差が生じやすい。

オムロン ヘルスケアの調査によると、家庭用の血圧計マーケットは「上腕式」が約7割と10年前と比較し3割以上伸びている。高血圧治療ガイドラインでは「上腕式」タイプの血圧計で計測することを推奨しており、このことが同タイプの伸長につながっていると考えられる。購入金額を見ると10年前と比較し8000円以上の割合が増え、購入金額も微増傾向にある。

オムロン ヘルスケアの血圧計は、腕帯タイプの上腕式血圧計のほか、全自動タイプ(腕を通すタイプ)の上腕式血圧計、手軽で使いやすい手首式血圧計、最新鋭のウェアラブル血圧計と幅広いラインナップを持つ。

同社の血圧計の特徴は、独自の血圧測定技術「インテリセンス/Intellisense®」をはじめ、巻きやすさにこだわった使いやすい腕帯にある。さらに世界110か国以上で配信しているスマートフォン用の健康管理アプリ「オムロン コネクト」と対応する血圧計を連動することで、「かんたん血圧日記」といったサービスも利用可能だ。「オムロン コネクト」の利用者は従来の血圧計使用者と比較すると40・50代の利用者が多くを占めており、新たな客層の取り込みに成功していることが分かる。

血圧計の売場づくりのヒント

血圧計のマーケットは気温が下がり血圧が上がりやすくなる冬場に加え、健康診断の直後や父の日・母の日、敬老の日といった時期にも数字が跳ねあがる。消費者の購買行動を見ると、新規ユーザーは買い替えのユーザーに比べて手軽な「手首式」の構成比が高く、平均の購入金額も低い傾向にあることが分かっている。

ドラッグストアでの血圧計の取り扱いについては、頻繁に売れる商品ではないことから長年にわたり棚割りが変わっておらず、動きも鈍かった。しかし、前述したように高血圧に関する潜在ニーズは高いことから、使い勝手や機能、価格によって商品を選べるよう上腕式、手首式ともにラインナップを増やし、品揃えや売場づくりをブラッシュアップする必要がある。

血圧計は健康機器として、売場の奥まった位置に陳列されていることが多い。しかし、売上を拡大するためには、来店客に血圧に対する意識をもっと高めてもらう必要がある。

たとえば調剤部門で高血圧に関するリーフレットや血圧計のチラシを薬剤師の手で配布するといった取り組みは、患者に対し気付きを与えやすい。また血圧管理をテーマに、血圧や脂肪・糖分に配慮したトクホ飲料、健康食品等と一緒に血圧計を陳列し、ボード等を使ってコーナー化することも血圧計を目にする機会を増やすひとつの施策といえる。

とあるチェーンのID-POS分析によると血圧計購入者は購入後も血圧に関する商品を同じ店舗で継続購買する傾向にあり、カウンセリングによる受診勧奨から血圧計の販売につなげることで、その後ロイヤルカスタマー化する可能性が高まる。

血圧の管理はドラッグストアが推し進めるセルフメディケーションの柱のひとつだ。ドラッグストアはヘルスケア関連の豊富な品揃えに加え、薬剤師・管理栄養士といった専門人材、来店頻度の高さなどから、家電量販店に比べても優位性を持つ。今後は血圧計をフックにカウンセリングや売場づくりを強化することで、優良顧客の醸成につなげていきたいところだ。

協力:オムロン ヘルスケア(株)

 

インストアマーチャンダイジング(ISM)の全体像を把握する

ファネルの話の途中ですが、ここで「インストアマーチャンダイジング」の全体像について解説します。インストアマーチャンダイジングとは「①小売の店頭で、②市場の要求に合致した商品および商品構成を、③最も効果的で効率的な方法によって消費者に提示することにより、④資本と労働の生産性を最大化しようとする活動」のことです。かみ砕けば、「店舗のお客様の要望にあった商品をいかにお客様に提供するか」ということです。

商品露出と商品刺激に分類できるISM

インストアマーチャンダイジングはIn-store Merchandisingの頭文字を取って「ISM(イズム)」と呼ばれることもあります。広義のマーチャンダイジング(MD)は、店舗政策、商品政策、価格政策という冒頭の図のオレンジ色の部分を指しますが、インストアマーチャンダイジングはより店舗にフォーカスした概念で、どの商品を露出させ、どの商品の露出を控えるのかという商品露出力に関わる「スペースマネジメント」と、いかに需要を喚起させるか、つまり商品刺激力に関わる「インストアプロモーション」の2つに大別することができます。

スペースマネジメントは、「フロアマネジメント」と「シェルフスペースマネジメント」によって構成されています。「フロアマネジメント」は、店内の回遊をどのように設計し、通路幅をどれぐらい取り、どのカテゴリーをどの位置に配置するかという「レイアウト計画」や、クロスMDなどが含まれます。

「シェルフスペースマネジメント」はゴンドラの設置場所の検討をはじめゴンドラ内での棚割、商品のグルーピング、ゾーニング、フェーシングなどがこれにあたります。

フロアマネジメントは、どのようにお客に店内を回遊していただくかをマネジメントすることです。できるだけ多くの商品が目に入る機会をつくり、歩きやすい、見やすい、もしくはまたカートが通りやすい通路幅を検討します。店舗が広くなりすぎると、店内をくまなく歩いてもらえなくなるかもしれません。どこに注力してどこをそぎ落とすのか、自店舗のコンセプトやターゲットから落とし込んで計画を練る必要があります。

計画購買の店舗は直線的なゴンドラ配置が無難

店内レイアウトについて、多くのドラッグストア(DgS)チェーンは、ゴンドラを直線的に並べるレイアウトを選択しています。しかしドン・キホーテやロフト、蔦屋家電のように、あえて直線ではない入り組んだゴンドラ配置を選ぶ店舗もあります。商品を探し出す楽しさを演出したり、意外な商品を見つけることを面白がってもらおうという考えです。この目的は非計画購買の促進にあります。

しかしバラエティショップや雑貨店とは違って、DgSは「風邪をひいたから風邪薬を買いたい」「そろそろ化粧水が切れそう」などの理由が来店動機であり、計画購買が中心です。

お客にとってはなるべく迷わずに商品にたどり着ける方がうれしいので、ゴンドラがまっすぐ並んでいる方が使い勝手がいい店舗と評価されます。このことが、DgSが直線的なゴンドラ配置を好む理由のひとつです。

ゴンドラ接続数で売上は変わる

ゴンドラをつなげる数によって売れ方は変わります。計画購買がメインの店であれば、なるべくゴンドラの接続数は多い方が買上点数が上がり客単価も上昇するということは、実験などで明らかになっています。

ゴンドラの接続数が多ければ、全部の副通路を一方通行に歩くことで店内の商品をひととおり見ることができ、店全体の売上向上につながるのです。

エンドに売り込みたい商品を大量陳列し、非計画購買を増やしたいというチェーンでは、ゴンドラを短くすれば、店内にエンドをたくさん配置することができるでしょう。

どちらが正解ということはありませんが、「計画購買中心の店舗では、ゴンドラをつなぐ数が多ければ多いほど、売上も上がる」という経験則には留意しておきたいものです。

チラシ特売商品を必ずしも露出させる必要はない

ところで、読者の皆さんは、チラシ特売商品を店舗のどの位置に陳列をさせるべきだとおもいますか。チラシで激安と銘打った集客商品は、店前通行客の集客を狙ったり、お客からの販売場所の問い合わせをなるべく減らすために、店頭に山積みするという企業は少なくありません。

一方で、チラシ特売商品をあえて店舗の一番奥まった目立たない場所にひっそりと陳列し、お客の回遊を狙うという手法を取るチェーンもあります。集客商品は売れたら赤字になりますから、あえてチラシ商品を見つけにくくしていて、「見つからないから諦めて別のものを購入しよう」という判断を狙うという側面もありそうです。

チラシを見た人は店内を歩き回って探すから、目立つ必要はないという発想でしょう。このように、PI値の高い商品を、店舗の入り口から離れた場所に配置するのもよく取られる手法です。

なお、店内レイアウトを計画する場合には、売場の配置だけでなく作業動線についても配慮したいものです。細かい話は別の章に譲りますが、まだまだ検討の余地がある部分だと筆者は考えています。

ハイ・アンド・ローでお客の購買意欲を刺激する

インストアマーチャンダイジングのもうひとつの要素は「インストアプロモーション」です。これには「価格主導型」のものと「非価格主導型」のものがあります。DgSにおいては、ほとんどが「価格主導型」のプロモーションになります。

商品の値段がいつもより安いことは、お客の購入を後押しする刺激になります。しかしいつも同じ商品が同じように安いだけでは刺激になりません。そこで多くの企業が採用しているのが、期間によって価格を上げ下げする「ハイ・アンド・ロー」という手法です。

定番商品の値下げ販売、バンドル販売、チラシ特価、エンド特売などがこれにあたります。「エブリデーロープライス(EDLP)」という、価格を変動させず、毎日同じ低価格で商品を売る手法を採用しているDgSは日本では少数派です。

一方、「非価格主導型」のインストアプロモーションには、ノベルティや試供品の提供、複数個を合わせて販売する「バンドル販売」、値引きなしの「エンド山積み」による視認性アップなどが挙げられます。

店頭でよく見られるのはある商品に別の商品のサンプルを付けて販売する方法です。ノベルティや試供品を付けて商品を目立たせることで、普段からその商品を使っている人への購入を促し、競合店での購入を未然に防ぎます。

しかし、いくらノベルティ・試供品の提供といっても、なんでもかんでも一緒に販売すればいいというものではありません。

極端な例ですが、とある化粧品メーカーのおしゃれな日焼け止めに液体漂白剤を付けて販売している光景を目にしたことがあります。これではメーカーが積み上げてきたブランド価値も何もあったものではありません。

また、サンプル・試供品提供の際、消費期限がある商品を付けるのも避けた方が無難でしょう。期限管理が二重になってしまうからです。葛根湯に生姜湯のサンプルを付けて販売しているのを目にしたこともありますが、医薬品より食品の方が消費期限が短いことが多く、シーズン終盤には高い確率で生姜湯の消費期限が切れているというようなことが起きます。

これらは商品のプロモーションを目的として行っていることですが、オペレーションが増加し、結果として管理がずさんになる可能性も非常に高いのです。
期限切れのサンプルを渡してしまう、商品の魅力を損なう…などもあり得ます。マイナスの側面にも配慮して実施は検討した方がいいでしょう。

強い「企業文化」を持つ組織がコロナ後の大変化を克服できる

ポストコロナ社会は、消費者の購買行動、企業経営、業務システムなどの未曽有の大変化が起こります。この大変化を克服できる組織とは、実は根幹に強固な「企業文化」を持った組織です。時代の大変化を克服し続けている「ウォルマート」の企業文化に改めて学びましょう。

大変化の時代だから商売の原点に帰ろう

日米の小売業の栄枯盛衰を30年以上にわたって定点観測している筆者が断言できることは、「変化」や「ゲームチェンジ」は毎年なだらかに起こるものではないということです。歴史的な変化が起こった時期に、まるで階段を駆け上がるかのように一気に変化するものです。

新型コロナ後の次の10年もまた、平成の価値観がまったく通用しないゲームチェンジの時代が始まることを意味しています。平成バブルの崩壊という大変化の時代に、ドラッグストアは階段を駆け上がるように一気に大成長しました。コロナ後の10年間もまた未曽有の大変化が起こり、主役の交代も間違いなく起こります。これは歴史の必然なのです。

この大変化を克服するためにもっとも大切なことは、組織の根幹に太くてぶれない強い「企業文化」を持つことです。時流に乗ることが上手で、損得に敏感な企業は、短期的には成長しますが、時代の大変化を超えて、次の時代の主役であり続けることはできません。

企業の寿命30年説を克服し続けるウォルマート

企業の寿命は30年といわれています。たとえばアメリカの小売業も20~30年周期で主役が交代しています。太平洋戦争後にアメリカの退役軍人が帰国し、新しい家庭を持った「ベビーブーマー」時代の小売業の王様は「シアーズ」でした。その後、1960年代に台頭したディスカウントストアの「Kマート」がアメリカでナンバーワンの小売企業として君臨しました。

しかし、シアーズもKマートも、時代の変化を乗り越えられず衰退していきました。1980年代に台頭した「トイザらス」などのカテゴリーキラーも、アマゾンとの競争に敗れて倒産してしまいました。

ところが、Kマートと同時期の1960年代に創業した「ウォルマート」は、時代の変化を克服し続けて、現代もナンバーワン企業として成長を継続しています。1980年代にディスカウントストアという業態が時代に合わなくなると、ウォルマートはディスカウントストアとスーパーマーケットを合体した「スーパーセンター」という新業態を開発して大きな成長を遂げました。一方、時代の変化を克服できなかったKマートは衰退していきました。

もともと非食品業界の出身だったウォルマートが、食品流通に挑戦することは、当時のアメリカでは常識外れの無謀な挑戦と揶揄されたものでした。しかしウォルマートは外野の意見など意に介さず、食品流通に果敢に挑戦しました。今では全米でもっとも食品を販売する小売企業は、非食品出身のウォルマートなのです。ダントツの1位です。

巻頭に掲載したウォルマート創業者のサムウォルトンのサムズルールの10番目に「ルール10 逆流に向かって泳ぎなさい」という言葉があります。サムウォルトンは、逆境に挑戦し続けることがウォルマートの企業文化であることを、生前に明文化していたわけです。ちなみに、このサムズルールという小冊子は、アーカンソー州ベントンビルのウォルマートの創業店舗(現在は記念館)で配布していたものです。

変わってはならないもの 変わり続けるもの

ウォルマートの企業文化は、サムウォルトンの死後(1992年没)にも脈々と受け継がれています。近年のアメリカでは、Amazonに代表されるオンライン小売業の急成長によって、リアル小売業はシェアを奪われる側に回っていました。まさに「ゲームチェンジ」が進行中だったわけです。2017年のトイザらスの倒産は、その変化を象徴しています。また、4年ほど前のウォルマートは既存店の売上が低迷し、Amazonとの競争で業績を悪化させていました。

しかし、3年ほど前からウォルマートは新規出店投資を抑えて、ITに巨大な投資を行いました。デジタルトランスフォーメーションに挑戦することによって、オンラインとリアルの買物を融合しました。「リアルでの買物」「オンライン注文→店舗受取」「オンライン注文→宅配」と、オンラインとリアルの買物を融合した、ストレスフリーの新しい買物体験を提供することに成功しました。近年ウォルマートのオンライン売上は大きく成長しています。

また、全米にリアル店舗網を持つことが逆に強みになり、最近ではオンライン小売業のAmazonの売上を奪っているとも言われています。まさに、オンライン小売業との戦いという時代の大変化を克服しようとしているわけです。

創業経営者の最大の職務(=使命)は、生涯をかけて強固な企業文化をつくることだと思います。時代の変化に対応できる強い企業文化づくりのためには、「変わってはならないものと、変わり続けるもの」の両方を同時に持つことが重要です。

まずは時代が変わっても通用する普遍的な価値観や哲学を強固にすべきであり、それを明文化すべきです。その普遍的な考え方を組織の全員が共有し、困ったときにはその原則に戻れるような普遍的な言葉であるべきです。サムズルール10もまた現代にも通用する普遍的な価値観と言葉だと思います。

一方で、時代に合わせて「柔軟に変化できる。変化を恐れない。変化を善とする」という企業文化も持つ必要があります。ウォルマートのサムズルールのように、核となる企業文化が太くて強い組織ほど、変化に柔軟に対応できるのではないかと思います。

オンラインセミナー「コロナ後に激変する リアル店舗の売り方・接客・オペレーション」(2020/7/15 13:15~16:05)開催ご案内

新型コロナウイルス感染拡大予防のため、大きな業務の変化に直面する小売業。今回のセミナーは、月刊MD主幹 日野眞克による指針の提示、リテールマーケティングワンの渡會公士氏による化粧品、ヘルスケアの「新しい売り方」解説、エイジスリテイルサポート研究所所長の三浦美浩氏による食品小売業の動向分析など、小売実務者にとって価値ある貴重な情報を提供いたします。

開催概要

・開催日:2020年7月15日(水) 13:15~16:05
開始時間は運営の都合で若干ずれることがある旨をご了承ください。
※開始時間が変更になりました。
・実施方法:zoomによるオンラインセミナー
(アクセス方法はお申込み者様にのみご案内いたします)
・料金:1万5,000円(税別・1名様)
(※ニューフォーマット研究会会員企業様には会員価格でのご案内になります)
・申し込み締め切り:7月8日(水)

スケジュール

(1)変化はゲームチェンジのチャンス
コロナ後に激変するリアル店舗の売り方
[13時15分~14時15分頃]

NFI代表取締役 日野 眞克

・コロナ後には「絞り込み」「わかりやすいレイアウト」が基本になる
・新しい接客スタイルを確立しよう
・店舗の省人化・省力化・レジフリーが進む   他

(2)コロナ後に変わるリアル店舗の「接客」
化粧品・ヘルスの新しい接客対応
[14時20分頃~15時頃]

株式会社リテールマーケティングワン 代表取締役社長 渡會 公士氏

・三密を避けるドラッグストアの新しい接客
・リモートカウンセリングの可能性
・デジタルで示すビフォーアフター、新しいテスター管理  他

化粧品、ヘルスケアの「デジタル接客」を推進している株式会社リテールマーケテイングワンの渡會公士氏を特別講師に招いて、コロナ後の新しい接客スタイルについて提言していただきます。

(3)コロナ後に売場の省人化・省力化が進む
食品SMに学ぶ「これからのローコストオペレーション」
[15時5分頃~16時5分頃]

エイジスリテイルサポート研究所 所長 三浦 美浩氏

・コロナ後の新しいオペレーション(レジ・マイバッグ対応、補充・陳列など)
・コロナ後は品目数が減る→「オーケーストア」に学ぶ絞り込みの極意
・注目のローコストSM「エイヴイ」のローコストオペレーション  他

月刊「食品商業」「販売革新」の元編集長。食品スーパーマーケットの実務に精通しているエイジスリテイルサポート研究所の三浦美浩所長を特別講師に招き、コロナ後に進むことが予測されるローコストオペレーションのポイントを解説していただきます。

注意事項

・今回のセミナーはzoomを利用して実施します。具体的な接続手順、URLなどは、受講者様にお送りいたします。 あらかじめ https://zoom.us/ にアクセスできるパソコンをご用意ください。スマートフォンでも受講できますが、パワーポイントのスライドを画面に共有して進めますので、なるべくパソコンでの受講をおすすめしております。

・セミナー終了後10日間はアーカイブされた録画を閲覧することが可能です。
閲覧のためのURLは、セミナー終了後にご案内いたします。

・企業様によって、Zoomへのアクセスができないという場合がございます。
Zoomへの接続については、受講企業様にてご対応くださいますようお願い申し上げます。(弊社にてサポートは致しかねますのでご了承ください)。また、受講者様側の都合で当日受講できなかった場合も返金は致しかねますのでご了承ください。

お申込みフォーム

・お申込みは以下のお申込みフォームからお願いいたします。お申込み受付後、お申込み確認メールをお送りします。また、ご請求先として記入いただいた方宛に、請求書を発送させていただきます。
・ご入金後は、理由の如何に関わらず返金は致しません。あらかじめご了承ください。

本セミナーのお申込み受付は終了しました。
たくさんの参加申込み、ありがとうございました。

行列のできる繁盛店は過去の風物詩になる!?

ポストコロナ社会では、消費者の「購買行動」を収集することが、コロナ前よりも容易になります。その結果、固定客の個別の購買行動に応じたパーソナルな販売促進が主流になります。一方で不特定多数の浮動客向けの販促である「チラシ」「告知→行列」などが過去の「売り方」になります。

プライバシー意識がコロナ以前よりも低くなる!?

日本語版が出版されて話題になった『サピエンス全史』を執筆したイスラエルの歴史学者「ユヴァル・ノア・ハラリ」氏は、新型コロナ後の人類は、プライバシー(個人情報)を外部に提供することへの抵抗感が低くなると予言しています。

新型コロナを封じ込めたと自称している韓国政府は、国民の位置情報、クレジットカードの利用履歴、移動記録などのプライバシーを徹底的に追跡管理することによって、新型コロナの感染爆発を防いだといわれています。まるで独裁国家のように国民を監視したわけですが、政府のコロナ対策への韓国国民の支持率は高く、先の総選挙では現政権の圧勝に終わりました。まさにハラリ氏の予言のように、新型コロナ後の人類は喜んで監視されることを選択するのかもしれません。

昨年、「渋谷プロジェクト」という複数の書店で万引き犯の情報を共有するプロジェクトが、「プライバシーの侵害に当たる」という理由で頓挫したという記事を読みました。最近のAIカメラは高性能なので、渋谷のA書店で万引きした犯人の画像情報を複数の書店でデータ共有するプロジェクトです。B書店のAIカメラが、A書店の万引き犯の来店画像を特定したら店員にアラート(警告)が出て、万引き犯の行動を監視する仕組みです。

新型コロナ以前は、こういう個人情報の収集には根強い反対がありましたが、コロナ後の日本でも相対的にプライバシーの壁は低くなると思います。大阪府がQRコードでクラスターの参加者を追跡する仕組みを導入しています。ある程度プライバシーを外部に提供した方がコロナ対策には有効だったという成功体験は、コロナ後にも続くと思います。

前置きが長くなりましたが、新型コロナ後の日本では、消費者の「購買行動」「購買データ」「移動情報」などのプライバシー(個人情報)をさらすことに消費者の抵抗感が少なくなり、個人データに紐づいたパーソナルな販売促進が一気に進むと思います。この大変化も、コロナ後の「パラダイムシフト」です。

早いもの順は公平な販促ではない

販売促進がパーソナル化するもうひとつの理由は、新型コロナ騒動でマスクなどの品薄商品を開店前に並んで、早いもの順に販売する方法が、決して「公平な販促」ではないことが、はっきりとわかったことです。Twitterで以下のような投稿があったので記載しておきます(5月13日開催、ニューフォーマット研究会オンラインセミナーの郡司昇氏の講演より引用)。

Twitterの投稿(4月9日)「先日マスクを買うために朝からツルハに並んだのですが、朝7時の時点で20人近く並んでいて、そのほとんどがマスク集めが趣味と化している中年・年配の方ばかりでした。
私がツイートしようと思ったのは、その常連が自分達より遅く並んだ買えなさそうな方々に直接転売を持ちかける場面を目撃したからです」

ひどい状況です。その後ツルハさんは、マスクを朝一番には販売しない方法に変更しました。新型コロナ騒動によって、チラシや告知で開店前に行列をつくり、早いもの順に販売する売り方は、不公平であると多くの小売業が学びました。

仕事で朝から並ぶことができないロイヤルカスタマーは、行列→早いもの順の販促の恩恵を受けることができません。店を何店も回って品薄商品を買い占める暇人ばかりがメリットを得ることになります。

しかも行列に並んだのに買えなかった場合、店員さんがモンスターカスタマーの口撃にさらされる修羅場が頻繁に発生しました。店員さんのストレスを減らして、ES(従業員満足)を高めるためにも、行列をつくる売り方はコロナ後はなくなると思います。さらに、「ソーシャルディスタンス」に慣れた国民は、行列して商品を購入する方法を敬遠するようになると思います。「行列のできるラーメン屋」は、過去の遺物のような風景になってしまうかもしれません。

これからの販売促進は、「不特定多数の浮動客」相手に行列をつくる売り方ではなくて、「特定多数の固定客」へのパーソナルな販促が主流になります。マスク集めが趣味のバーゲンハンターではなくて、わが店のロイヤルカスタマーに優先的に販売した方が、公平・公正な売り方であるという意識に、コロナ後の小売業は変化していくでしょう。

不特定多数のマスマーチャンダイジングの時代は、「お客を区別してはならない」という考え方でしたが、これからは「あえてお客を区別する時代」になると思います。

以下は、大手ホームセンターの島忠とカインズが、会員向けに「品薄商品の抽選会」を実施したスマホ画面を掲載したものです。島忠はLINEに友達登録した人に限定した抽選会であり、カインズはアプリに登録した会員限定の抽選会です。どちらも不特定多数の販促ではなくて、特定多数の固定客向けの販促であることが、コロナ以前の販促との大きな違いであると思います。

(カインズの品薄商品抽選については、以下に詳しく記事化しています)

https://md-next.jp/15069

 

ホームセンター島忠の「マスク」LINE抽選会の告知

カインズのアプリを使った会員限定の「品薄商品」抽選会の告知

トップからのメッセージが小売業従業員のメンタルヘルスを守る

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ドラッグストア(DgS)をはじめとした小売業界でも様々な問題が浮かび上がっている。特に店頭に立つスタッフはお客からのクレームや商品の買い占めへの対応、品出しの増加などで精神的な負担を抱えており、現場の大きな課題となっている。本稿では店舗スタッフや本部が心がけるべきメンタルヘルスの在り方について考えていく。(取材:MD NEXT編集長 鹿野恵子 文:イシヤママキ)

強いストレスにさらされる従業員のメンタルケアが急務

企業内のストレスチェックやEAP(従業員支援プログラム)サービス等を提供しているピースマインドの臨床心理士・武田氏は、店舗従業員が抱えるストレスについて、「現状、最もストレスがかかっていると思われるのがお客様からの問い合わせです。問い合わせに対しお客様が納得する答えを持っていればいいのですが、コロナウイルス禍の現状では『マスクはいつ入荷するか?』と聞かれても『わかりません』としか答えられません。これではお客様に納得してもらうのは難しく、ここからトラブルに発展することも考えられます。対処のしようがないクレームに関する悩みを多くの従業員の方が抱えているのではないでしょうか?」と分析する。

国内でマスク等が不足している現状については大多数の国民が理解しており、「入荷は未定です」という返答でほとんどの人は納得する。しかし、一部の「話が通じない」「何を言っても全然納得しない」お客は論理が通じず感情をぶつけてくるため、そういった心無いお客への対応は従業員にかなりの精神的負担を強いることになる。

こういった状況を受けてDgSを含めた小売業界の本部も強い危機感を持っている。地域の健康を支えるため日夜店頭に立つスタッフのためにも、メンタルヘルスケアに対し真剣に取り組む必要があるだろう。

以下、①本部が店舗従業員に対して行うべきケア、②店長やSVなどのマネージャーが店舗従業員に対して行うべきケア、③従業員のセルフケアという3つの切り口で解説する。

①DgS本部が店舗従業員にすべきケア

まず本部が行うべきことは、危機的状況にある現状をしっかりと理解した上で、店舗従業員をねぎらうことだ。

従業員の中には「自分のせいではない」と分かっていても、繰り返し責め立てられることで、ネガティブ思考に陥ってしまう人も出てくる。そのため企業のトップは、この混乱した状況で業務に従事している従業員全員に感謝しているという旨をメッセージとして発信していくべきである。同時にマネージャーや店長に対し、パートタイマーを含めた従業員の精神的なケアをするよう伝え、従業員を取りまとめる彼らのケアは本部が行うという対応が望ましい。

また、「子供を預けられないため出勤できない」など、コロナウイルス禍により店舗の人手不足はさらに深刻なものになっている。とはいえ、本部から現場を預かる店長クラスの社員に「しっかりマネジメントしろ」といったプレッシャー”だけ”をかけることは適切ではない。

企業としては、常に人員を確保したいというのが本音であるし、退職については店舗内で十分に話し合ってもらう必要がある。しかしこういった状況下では、やむ得ない理由で退職せざるをえないケースもあるだろう。その時、本部に必要なのは、辞める人を出さないよう店長にプレッシャーをかけることではなく、辞めてしまった後の人員確保についてしっかりとフォローする点にある。業務の多忙化に加え人手不足を抱える店舗については、本社のサポートが不可欠だ。場合によっては営業時間の短縮や一時休業、モチベーションを上げるための金銭面でのケアといった対応も必要になってくる。

本部と店舗の間で軋轢が生まれないよう、気軽に相談できる専用窓口を設けたり、スタッフから直接トップにメッセージを届ける「ダイレクトコミュニケーション」を取り入れるなど、従業員のメンタルを支えるための仕組みを導入するのも一つの方策だ。

 

②店長やSVが店舗従業員にすべきケア

次にSV(スーパーバイザー)や店長が、店舗従業員に対して行える精神的なサポートについて考えてみよう。たとえば言葉を尽くしてもなかなかご理解いただけないようなお客に対応した従業員が疲弊していた際、接客後にバックヤードなどで話を聞いてあげれば、その従業員のストレスは軽減する。これは心理学で言うところの「デブリーフィング」のようなものだ。

大きなストレスがかかった人をそのまま放置していると、その後もストレスが蓄積し続け、深刻な状況に陥ることもある。大変な接客をしているスタッフを見かけたら、店長などが応対を変わることもひとつの手だが、それができない場合は、前述のように一度仕事を中断し、従業員の気持ちを一通り聞いてクールダウンすることが重要なのである。

現在のような状況が長引けば、心身の不調を訴える従業員は増えてくるだろう。精神的な疲労のケアについては、とにかく早期に行ったほうが良い。たとえば従業員から「精神的に参っている」という相談を受けた場合、休暇を取った3日後に職場復帰すれば大きな問題にはならないだろう。

最も気を付けなければならないのは、責任感等の理由から従業員が無理をし続けてしまい、仕事を継続できなくなってしまうことだ。そのため店長やSVは日頃から従業員とのコミュニケーションを密にし、朝礼などの際に無理をしないことを繰り返し伝える必要がある。

また体調や精神的なストレスについて尋ねる際も、「大丈夫か?」という聞き方では大抵の人が「大丈夫」と答えてしまう。これは「はい」「いいえ」のみで回答する「閉じられた質問」とも呼ばれ、相手の本心が聞き出しにくい。そのため、「夜ちゃんと眠れているか」「昨日のお客はどうだったか」というような、相手が具体的な返答をしてくれる「開かれた質問」で、従業員が安心して話せるような環境を作ることも大切だ。

③自身で心がけたいメンタルケアの方法

店舗従業員が自身で身を守ることも重要だ。精神的に無理をして働くことのデメリットは、会社、管理者、従業員全てが認識しなければならない。

精神的、肉体的な不調として表れやすい症状が睡眠障害だ。人間は交感神経、副交感神経の2つの神経のサイクルがある。起きて活動している時は交感神経が優位となり、休眠を取るときは副交感神経が優位となる。ストレスがかかっている時は、脳が活性状態を維持し続けてしまい、眠れなくなる。

睡眠障害が発露となり、そのまま体調を崩すケースも増えている。「もうだめだ、きつい」という状態になってからでは、医者に診てもらっても「仕事をしばらく休むように」という返答しかない。少しでも違和感があったら会社に相談し適切に休むことが、結果的に本人・会社ともに最善となる。プライベートの時間に楽しいことをする、ほっとする時間を作るというのも、セルフケアのために必要だろう。

もうひとつ大切なのが「認知の修正」と呼ばれる、話の捉え方を変える考え方だ。

ストレスへの対処法には「積極的対処法」「消極的対処法」の二つがあり、「認知の修正」は前者の「積極的対処法」の一種、「自責」は後者の「消極的対処法」の一種である。

最もストレスがかかるのは理由が分からない、もやもやした「悩む」状態だが、「自責」は「自分が悪い」という答えを与えることで悩みを解消しようとする。この場合、自分が悪いと決めることで一時的にストレス軽減にはなるが、最終的にはマイナス感情が蓄積していき、ストレスが増加し続けてしまう。

それに対し「積極的対処法」は、「認知の修正」による発想の転換や、ストレスの原因に対し根本的な解決を図るといった方法をとることを指す。たとえば理不尽なお客の応対については、「このお客は世間に対する怒りを消化できず、自分に対して怒りをぶつけている」と認識を修正することで冷静に対処できることができるはずだ。

先の見えないコロナウイルス禍で、国民全体が大きな不安を抱えている。DgS本部は前線で働く店舗スタッフを精神面でサポートし、信頼関係を構築していくことがこの状況を乗り切るカギとなるだろう。

■取材協力
ピースマインド株式会社(https://www.peacemind.co.jp/
公認心理師 ・臨床心理士・国際EAPコンサルタント
武田英彦氏

 

※2020/05/15 追記 記事タイトルを変更しました

オンラインセミナー「新型コロナ対応の反省と収穫・新型コロナ後の小売流通業」(2020/5/13 13:30~)開催のご案内

新型コロナウイルスの感染拡大を引き金に、業務量の急激な増加や頻発する品切れ、問い合わせ対応など、大きな変化にさらされる小売業。そこでこの度MD NEXT運営元のニューフォーマット研究所では、緊急オンラインセミナーを開催することになりました。この状況をどう読み解き、乗り越えていくべきか、月刊マーチャンダイジング主幹の日野眞克と店舗のICT研究所代表の郡司昇が提言します。

開催概要

・開催日:2020年5月13日(水) 13:30~15:40
開始時間は運営の都合で若干ずれることがある旨をご了承ください。
・実施方法:zoomによるオンラインセミナー
(アクセス方法はお申込み者様にのみご案内いたします)
・料金:1万5,000円 2万5000円 (税別・1名様)
(※当初価格より変更になりました)
・申し込み締め切り:5月10日(日)

スケジュール

(1)新型コロナ対応の反省と収穫
本部と店舗の連携と相互理解のポイント
(13時30分~14時30分頃)

店舗のICT研究 代表 郡司 昇

・新型コロナ騒動での店舗現場対応の悪かった点、良かった点
・現場まかせが店舗現場の疲弊を生んだ
・本部と店舗の連携と相互理解
・ITを活用した相互コミュニケーションと生産性向上

<休憩>

(2)新型コロナ後の小売・流通業
新型コロナ後の小売業はどう変化するか?
(14時35分~15時35分頃)

ニュー・フォーマット研究所代表 日野 眞克

・新型コロナ対応の店舗対応の問題点と成果ダイジェスト
(協力・エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング)
・ITを活用した業務の効率化が一気に進む
(店内作業・接客のIT化、商談のテレワーク化など)
・小商圏&低価格小売業の成長(コスモス薬品の事例)
・買物時間短縮、密集を避ける「店舗ピックアップ」が普及する

注意事項

・今回のセミナーはzoomを利用して実施します。具体的な接続手順、URLなどは、受講者様にお送りいたします。 あらかじめ https://zoom.us/ にアクセスできるパソコンをご用意ください。スマートフォンでも受講できますが、パワーポイントのスライドを画面に共有して進めますので、なるべくパソコンでの受講をおすすめしております。

・セミナー終了後10日間はアーカイブされた録画を閲覧することが可能です。
閲覧のためのURLは、セミナー終了後にご案内いたします。

・企業様によって、Zoomへのアクセスができないという場合がございます。
Zoomへの接続については、受講企業様にてご対応くださいますようお願い申し上げます。(弊社にてサポートは致しかねますのでご了承ください)。また、受講者様側の都合で当日受講できなかった場合も返金は致しかねますのでご了承ください。

お申込みフォーム

・お申込みは以下のお申込みフォームからお願いいたします。お申込み受付後、お申込み確認メールをお送りします。また、ご請求先として記入いただいた方宛に、請求書を発送させていただきます。
・ご入金後は、理由の如何に関わらず返金は致しません。あらかじめご了承ください。

本セミナーのお申込み受付は終了しました。
たくさんの参加申込み、ありがとうございました。

お申込み企業様につきまして
請求書発送先ご担当者様につきまして
こちらの方に請求書をお送りします。

こちらのご住所に請求書をお送りします。
連絡代表者様につきまして
請求書発送先ご担当者様と同一の場合は「同上」と記入ください。

※こちらのメールアドレスに、申し込み完了メールが届きます。
参加者様につきまして
参加者1(必須)
参加者2
参加者3
参加者4
参加者5
参加者6

「わかりやすい、見つけやすい売場」が計画購買を促進する

実店舗を運営する小売業におけるお客の購買行動をファネル分析します。第2弾は「入店」と「商品が目に入る」の部分について解説します。

マーチャンダイジング力によって左右される「入店率」

前回解説した「店舗前通行人数」のなかから、一定の人数が入店します。店舗前通行人数1,000人のうちどれだけの割合の人が入店したかを「入店率」といいますが、「店舗前通行人数」が天気や商圏の状況に左右されるのに対し、この「入店率」は店舗や企業のマーチャンダイジング力に影響を受けるものです。

お客を店内に誘引する要素としては、店頭に「いまこの瞬間に魅力的な商品」をきちんと大量に陳列できているかどうかが非常に重要です。たとえば春先であれば花粉症に関する商材、夏前であれば制汗剤や日焼止め、冬であれば使い捨てカイロや風邪薬などが山積みにできているかどうか。それらの商品が必要なお客は、大量陳列された季節商品を見つけて、ちょっと立ち寄って買っていこうという気持ちになります。しかし真冬の店頭に制汗剤が大量陳列されていても、誘引にはなりません。

アナログな方法ではありますが、店頭での「いらっしゃいませ」という呼び込みもお客の入店に影響を与えます。「ポイント〇倍キャンペーン」や、化粧品メーカーのワゴンセールのお声がけなどで立ち止まり、入店するお客もそれなりに多くいます。

昔のドラッグストアは「入店してもらえるかどうか」で勝負がほとんど決まっていたと言えます。だからいかに魅力的な商品を店頭にドカンと山積みするかに賭ける店長が多くいました。集客力のある商品を、低価格で大量に陳列して訴求するのですが、最近はそのような傾向はだいぶ薄まりつつあるという印象です。

店頭のクレンリネスも当然重要です。入口、床やガラスなどが汚い店舗に入りたいと思う人はいないでしょう。ゴミが落ちていないか、雨が降っている日には床が濡れていないか、傘立ては整然としているか、あるいは傘袋が据え付けられているか?などは基本的なことですが、だからこそ徹底しておきたいものです。

一定の犯罪抑止効果が見込めるグリーティング

入店する瞬間にするかどうか判断をすべき施策の一つがグリーティングです。入店したお客様に「いらっしゃいませ」と声掛けをしたり、カゴをお渡ししたりすることを指します。

アメリカのチェーンストアを視察すると、不審人物への威圧効果を見込んで、店舗入口に屈強な男性を立たせていることがあります。日本でそこまでやっている企業はほとんど見られませんが、屈強な男性でなくとも入口で「いらっしゃいませ」とお声がけをするだけでも、一定の犯罪抑止効果は見込めるはずです。

また、以前から地方の高級住宅街や別荘地近くの店舗では、入店時にかごを手渡しするようなことがよく行われていました。これはカゴをお渡しすることで客単価の上昇を期待するもので、最近はかごをセットしたカートをおすすめするようなことをしている小売業も散見されます。

お客の視界の広さを決める通路幅

入店後、お客は商品を求めて店内を歩き回ります。小売業のファネルに当てはめると次は「商品が目に入る」という段階になります。

このときに重要になるのが「わかりやすい、見つけやすい売場になっているかどうか」という点です。計画購買が遂行されるかどうかはここにかかっています。探している商品が見つけやすいようなコーナー表示が重要です。綿棒の場所がわからなくて結局購入しなかった、ということを未然に防がねばなりません。

目的のカテゴリーが陳列されている通路に入ったあと、計画購買の商品を見つけられるかどうかという段階で、意外と重要になるのが「通路幅」です。商品を探して通路に入ったときに、通路の幅によって視界の広さが違ってきます。通路幅が狭く、お客と棚の距離が近いと、視野は狭くなり、逆に幅が広い通路を確保すると、視野も広くなり、商品が目に入りやすくなるのです。

ゴールデンゾーンの商品だけでなく、最下段の商品や、最上段のトップボードまで目に入ります。通路幅が狭い店のゴンドラにトップボードを設置しても、目には入りません。貼ってもだれも見ないのに、本部指示だからと言って、通路幅が狭いのにトップボードを設置する。あまり意味がないことだと思います。

ゴールデンゾーンは「買う人」の身長に合わせる

ゴールデンゾーンは、棚の中でもっとも視認性が高く、有利な位置のことを指します。同じ条件であれば、特別に「売れる場所」のことで、買物客の目線から下に30度の範囲のゾーンと言われています。

しかしこれはたとえば「一律160cm」と設定するのは間違いで、「そのカテゴリーの商品を購入しようとする客層の身長」に合わせて考えるべきでしょう。

その人が女性なのか、男性なのか、子供なのか、大人なのか、高齢者なのか、ということです。たとえば生理用品は、代理購買が無く、ほとんど女性の方がお買い求めになられます。そこで女性の平均身長である160cmのあたりをゴールデンゾーンと考え、売れ筋と売りたい商品を陳列すべきでしょう。

一方、男性用化粧品は本人が購入する場合と、代理購買が多い店とに分かれます。ID-POSデータを見て、自店の男性用化粧品購入客に男性が多いのか、女性が多いのかでゴールデンゾーンの高さを検討すべきです。女性であれば150~160cm、男性であれば170cmあたりに設定します。

「誰が使うのか」ではなく「誰が購入するのか」に合わせて、陳列は検討すべきでしょう。

在庫があっても品出しされていなければ「欠品」である

当然のことですが、商品が目に入るためには、きちんと商品が店頭に陳列されている必要があります。たとえばある歯磨き粉の定番商品の理論在庫が10個あったとしましょう。しかし、いくら理論在庫が10個でも、品出しができておらず、店頭に1個も出ていなければ、それはお客にとっては「欠品」です。

これは新商品に顕著にみられる事象です。配荷はされたのだけれども、店舗の作業が追い付かず、陳列されていないということはままあります。当たり前のことなのですが、この機会損失はとても大きいので、配荷した商品をお客の目に入れるためには、とにかく陳列することが重要になります。

また、理論在庫が10個あり、そのうち7個がバックヤードに、3個が店頭にあったとします。店頭にあるにはあるのですが、棚の下段の方の奥の方に押しやられていると、目に入らないというケースがあります。店頭に在庫があっても、見えなければ欠品です。

POPについてのルールを決める

最後に、買いやすい売場を作るためにはPOPも配慮しなければなりません。POPが多すぎると、そもそも計画購買の商品が目に入らなくなりますし、非計画購買が見込める商品も目立たなくなります。

POPは、「3尺の棚1本につき2枚まで」など、制限するルールを決めないと、どんどん増え続けてしまいます。どの商品があなたの店にとっておすすめなのかを、きちんと伝えていく必要があります。

あるDgSチェーンでは、柔軟剤のコーナーで、ありとあらゆるNBが特売になっていました。そのDgSでは、PBの値段は変えないというルールを掲げていたので、NBはすべて特売の黄色いPOPなのですが、PBだけは白いプライスカードのままで、全く目立ちません。せっかく売り込みたいPBのはずなのに、ルールを決めて特売やPOPの運用をしないと、このようなことになりがちです。

全体のバランスを見て、目的の商品や、衝動購買してほしい商品を目に入りやすくすることが非常に重要なのです。

新サブカテ続々登場!伸び盛りの男性用化粧品で売場に差をつける

男性の身だしなみ意識の向上により、大きく伸長している男性用化粧品カテゴリー。市場の成長に大きく貢献しているのがスキンケアやエチケット、メイクアップといった新たなサブカテゴリーだ。今回はドラッグストア内でも存在感を増す男性用化粧品の市場環境と、トレンドを取り入れた次世代メンズ売場のあり方を考える。

市場動向:制汗剤とスキンケアが男性用化粧品市場を牽引

男性の身だしなみといえば、シェービングや整髪程度だったが、自分の容姿について、周囲からの目を気にする男性が増えている。

30〜40代男性にきいたアンケート調査によると(図表1)「顔や体について気になる部分」では「体臭・口臭」が最も高く、続いて「顔の肌質(テカリ、ベタツキ、肌荒れなど)」、「体型・スタイル」となっており、頭髪やひげ以上に、ニオイや肌質を意識していることがわかる。

男性用化粧品市場の2016 年〜2018年の3年間の平均成長率を見ると、市場全体では1.5%のマイナスとなった。これは「育毛・トニック」「スタイリング」「シェーブ(ひげ)」といった従来から続く代表的なカテゴリーがダウントレンドであることが大きく影響している。一方、「制汗剤」や「スキンケア」といった男性用化粧品の中でも比較的新しいカテゴリーについては伸長している(図表2)。

なかでもエチケットとして定着してきた汗や体臭を抑える「男性用制汗剤」市場の伸長は目覚ましく、直近3年間のカテゴリーの年平均成長率は5.0%となっている。またスキンケアの市場も成長していて、同じく3年間の年間成長率は4.3%。図表3の男性用スキンケア使用率を見ると2017年までは32.0%だったが、2019年は36.5%まで急上昇している。

サブカテ分析 (1)ニオイケア:汗以外のニオイに対処するニーズが増加

最近はニオイに関する意識が高まり、自身の体臭に対して気をつかう男性が増えている。図表4のようにワキに加えて、首筋、胸元、耳の後ろといった部位のニオイも気になり、エチケットとして制汗剤・デオドラントを手に取る男性は多い。また加齢臭やストレス臭といった、汗とは違うニオイのケアに対する意識も高まっている。

制汗剤にはスプレータイプやシートタイプ、ロールオン、直塗りなど様々な剤型があるが、男性にはしっかりと塗り込むことができるロールオンタイプや、広範囲に対して手軽にケアできるスプレータイプが人気だ。だが、制汗剤はワキの汗やニオイに対する訴求が中心であり、ワキ以外もニオイが気になってケアしたいのに、現実にはできていないという男性も多い。実際にワキ用のロールオンタイプを、胸元や首元などワキ以外の部位に塗っているというユーザーも2割以上いるようだ(図表5)。

サブカテ分析 (2)スキンケア:「手間いらず」のオールインワンが人気

フェイス周りのスキンケアには洗顔料やローション、乳液、クリームなどがあるが、特に伸びているのがオールインワンタイプの商品だ。スキンケアは「洗顔」、「化粧水などでうるおいを補給する」、「乳液やクリームでうるおいを保つ」の3ステップが一般的。しかし、洗顔後の化粧水やクリームによる保湿といった文化のない男性にとって、これらの商品をすべてそろえ、ケアする作業はハードルが高い。そういった意味でも化粧水と保湿クリームが一体化したオールインワンタイプは、できるだけ手間をかけたくない、店頭で商品選びに迷いたくないという男性のニーズに合致したアイテムとなっている。

資生堂のメンズブランド「uno」では、2016年秋に発売したオールインワンジェル「クリームパーフェクション」、肌あれ・ニキビ予防もできる「UV パーフェクションジェル」が好調に推移。また2019年秋に発表された「バイタルクリームパーフェクション」は、加齢に伴う肌の変化を感じ始めた男性のためのエイジングケアとして、30〜40代のビジネスマン世代に刺さっている。

肌のテカリ・カサつきに加え、シミや肌あれ、乾燥による小じわなど、顔周りのスキンケアについては男性も女性と同じような悩みを持っている。洗顔後にひと手間を加えるだけで、肌を整え健やかに保つことができる顔周りのスキンケア用品は、シェービングや洗顔の後の新常識として、今後も拡大していくことが予想される。

以下に、スキンケアの基礎知識をまとめた。ぜひ売場作り・接客の参考にしてほしい。

サブカテ分析(3)メンズメイク:BB クリームで肌ツヤをプラス

スキンケアからさらに一歩進み、日本でも注目が集まっているのが男性用のメイクアイテムだ。

日本で男性向けメイク市場のエポックメイキングとなったのが、2019年3月発売のBBクリーム「unoフェイスカラークリエイター」。日本の男性にも「商談やデート前など重要な場面では、きれいな肌でいたい」、「肌荒れやシミなどを速攻で隠したい」といったニーズが以前からあったものの、「メイクしていることがバレると恥ずかしい」「女性用のファンデーションを使うのには抵抗がある」といった声があった。

資生堂ではこのような男性の悩みに応え、クマやひげの青み、肌の赤味など、男性の肌悩み( 図表6)をカバーしつつ、塗布後に色が変化し自然な仕上がりとなるBBクリームを開発。同品はチャネルを絞った限定発売からスタートしたが、発売4ヵ月間の出荷実績が計画比の3倍と好調だったことから9月より全国発売に踏み切った。

化粧水や乳液といった基礎化粧品の場合、毎日のケアによって肌悩みを解決するため効果を実感するまで時間がかかる。しかし、BBクリームの場合、気になっていた部分をその場ですぐに隠してくれることから、若年層だけでなく30〜40代のビジネスマンにも支持され( 図表7)、同品は2019年の注目商品として様々な媒体で大きく取り上げられた。

さらに、資生堂では既存のナチュラルタイプではカバーしきれなかった、ニキビ跡や毛穴もカバーできる凹凸補正効果を加えた新商品「フェイスカラークリエイター(カバー)」を2020年3月に発売。ラインナップを拡充することで肌ツヤの良さで第一印象をよく見せたいという男性たちのニーズに応えていく。

眉の形を整えるアイブロウも登場

メンズメイクとしてもうひとつ注目したいのが眉のケアだ。顔のパーツの中でも眉の存在は大きく、メンズメイクの中でもアイブロウへの注目度が増している。

今後大きく成長する可能性を秘めたメンズメイクに対し、資生堂では新商品「uno バランスクリエイター」を投入する。カラーはどんな眉色にも馴染むナチュラルブラックを採用。楕円形を斜めにカットした芯は細い線も太い線も描きやすく、毛の流れを整え自然にぼかせるブラシも付いている。

これらのメイクアップ商品を手に取る男性は、総じてスキンケアにも力を入れており、スキンケアとメイクの両カテゴリーを訴求することで、バスケット単価アップにもつなげていけるだろう。

男性用化粧品売場の作り方

スキンケアからメイクへとステップアップ

汗や体臭をケアするための制汗剤・デオドラントに始まり、肌質をよくするためのスキンケア、顔周りの悩みを速攻でカバーするメイクといったように、男性のエチケット及びビューティーケアは徐々にステップアップしている。

男性用化粧品のマーケットがここまで広がった背景には、ブランドのコンセプトや販売チャネルも大きく影響している。男性用化粧品は百貨店などで取り扱うハイブランドでも展開されているが、スキンケアやメイクに初めて挑戦する男性にとってはハードルが高い。しかし身近なドラッグストアで扱う値ごろ感のあるマスブランド商品であれば、目に触れる機会も多く、「試しに使ってみよう」
という意識が働き、トライアルの促進につながったと考えられる。

現在、ドラッグストアの顧客の8割が女性といわれている。今後、少子高齢化が進み人口が減少していく中、女性の化粧品使用率を爆発的に上げることは難しい。しかし、男性化粧品は使用率が低く伸びしろがあることから、今後も拡大していくことが推測される。特にスキンケアやメイクについては、20〜30代の若い世代を取り込むチャンスのある商材であり、将来的にはカテゴリーの育成と安定した客数の確保にもつながるだろう。

男性若年層の顧客を創造

男性用化粧品は若年層や男性客といった顧客創造につながる非常に有望なカテゴリーだ。スキンケアやメイク、エチケッ次世代男性用化粧品売場の主役はエチケットとスキンケアトなど、今が旬のアイテムの取り扱い数を増やすことは、男性客の来店促進と客単価アップにつながるのではないだろうか。

3〜4月は新生活に向けて身だしなみを整えたいというニーズがあり、ドラッグストアでも男性の来店客数がぐっと増える。そこで制汗剤・デオドラントをフックに、スキンケアやメイクをエンドでトータル提案することにより気付きを与え、トライアルを促進していくといいだろう。

<取材協力>

資生堂ジャパン(株)ライフスタイルブランド事業本部
メンズ・ヘア・ボディマーケティング部 uno グループ
津倉 徳真氏

資生堂ジャパン(株)ライフスタイルブランド事業本部
ブランド事業推進部流通企画グループ
伊藤 邦浩氏

 

(提供:エフティ資生堂)

ドラッグストア業界周辺の新型コロナ対応、ざっくりまとめました 【2020年4月14日版】

新型コロナウイルスの感染拡大により、人々の生活は大きな変化を強いられています。幸運にも大半が営業できているドラッグストアですが、お客様対応に従業員は疲弊しています。ドラッグストア企業やその他小売業関係者が、新型コロナウイルスにどのように対応しているのか、現状をざっくりとまとめました。(MD NEXT編集長 鹿野恵子)

サツドラを発端に開店時のマスク・消毒薬販売を終了するドラッグストア

マスクを求めて、連日開店時に店頭に並ぶお客様の対応に忙殺されていた店舗で働く皆さん。過剰な在庫に関する問い合わせは、ドラッグストアで働く方を精神的に追い詰めていました。

早朝から並んでいる人しか購入できない不公平さや、早朝に店頭に並ぶことでさらなる感染拡大を引き起こすのではないかという懸念も指摘されていました。

しかし、ここにきてDgS各社が開店時のマスク・消毒液販売をやめるという告知を行ってきています。

きっかけになったのはサツドラHDさんの公式アカウントが4月7日にtwitterに投稿した以下の内容です。

このツイートに寄せられたコメントを見ると、多くのお客様が賛同していることが見受けられます。この方針転換は多くのメディアにも取り上げられました。

これに追随するかのように、4月10日からスギ薬局が、4月13日からはツルハドラッグが、公式アカウントや公式WEBで開店時のマスク販売などを実施せず、不定期に陳列する旨を告知しました。

https://faq.sugi-net.jp/info_and_news/show/9?site_domain=default より

ツルハドラッグのSNS公式アカウントは、これまで販促中心の内容をツイートしていましたが、本来の目的である企業の情報発信のツールとしての活用に成功したといえます。

また、顧客満足も重要ですが、このような局面では店頭で働いている従業員をいかに守るかを、企業としては考えていくべきです。今回のマスク販売方法の変更は、チェーン本部の従業員に対する前向きなメッセージにもなっています。

Youtubeに挑戦する企業、コンサルも登場

対面でのセミナーや記者会見などによる情報発信が難しい今、小売業界でもさまざまな方法でダイレクトに情報を発信しようとする動きがみられるようになりました。

サツドラHDでは社長の富山浩樹さんが、Youtubeでマスクの状況や今後の対応についての情報発信を行っています。

チェーンストア向け経営指導を行う、日本リテイリングセンターでも、Youtubeで情報発信をスタートしました。

国外の状況をまとめ、国内のチェーンストアに対し営業対策を具申しています。

ウエルシアでは、新型コロナウイルスによる電話受信についての対応を、自社ウェイブサイトから発信しています。

https://www.welcia-yakkyoku.co.jp/tel-jyusin/ より

決算説明会をオンライン配信で行う企業も増えています。「対面」が奨励されない昨今、情報発信の在り方はこれを機に大きく変わりそうです。

従業員をどう守る?感染者が出たらどうするか?

店舗内でのお客様へのソーシャルディスタンス確保のお願いだけでなく、レジに透明なカバーをつけて、従業員の感染を防ごうとする店舗が多く出てきています。

感染者が発見された場合、他の従業員を自宅待機にするのかどうか、応援体制をどのようにするのかなど、企業としての対応方針策定が非常に重要な局面になってきました。保育園の登園自粛により、仕事を休まざるを得ない従業員も増えています。

ドラッグストアでは、従業員の感染なども散見されるようになりつつあります。ウエルシア常盤平店では4月13日に従業員の感染を発表。店舗を消毒した上で営業を再開するとしています。

今ドラッグストアは幸運にも営業を続けることができていますが、これも従業員の方あってのものです。感染の不安と戦いながら店頭で働いてくれている従業員の方に特別報奨金を出す企業も登場することでしょう。

チェーンストアは今後どうなる?

しばらく続くと思われるこの「緊急事態」。生活必需品に対するニーズは引き続きあるものの、ドラッグストアも今後は大きく運営体制の展開を図られると思われます。

一点目として、EDLPへの転換が本格的に進むだろうという点です。ポイント還元セールやチラシ商品、期間限定特価での販売などの集客は当面難しくなり、またその必要もなくなります。とにかく安定して低価格で商品を供給することが、ドラッグストアに求められる機能になります。

二点目として、店づくりが大きく変わり、メーカーの淘汰が進むだろうという点です。狭い床面積の店舗に商品と人を詰め込み効率を追求するという日本の店舗の在り方が、これを機に代わるかもしれません。ソーシャルディスタンスを保つためには、ある程度余裕を持った通路幅が必要になります。そのため、店舗で取り扱うアイテム数が減少し、メーカー淘汰が進むきかけになると思われます。すでにお客様のマインドは、生活必需品について、自分好みのブランドではなく、必要なものであればどんなブランドのものでも購入するという方向に切り替わっています。

三点目として、店舗で働く人の地位が社会的にも向上していくだろうという点です。今回の未曽有の事態において、毎日の生活を支える小売業の重要性を痛感したお客様は少なくありません。店舗で働く人がいるからこそ、生活が回っているということに気づかれたお客様は多くいらっしゃいます。

四点目として、さらなるIT活用と仕組み化、自動化が進むという点です。店舗で働く人の地位が向上する一方で、人力に頼った店舗運営は、感染者が見つかることで、突如中断される危険性をはらんでいるということを皆痛感することになりました。なるべく機械やコンピュータに置き換え、人間がかかわる部分は最小限にとどめようという考えが進むでしょう。スマートフォンでの事前注文による店舗受け取り、ネット通販、キャッシュレス化…嫌でもチェーンストアは新しい売り方に挑戦せざるを得ない状況に追い込まれたといえます。

まさに世界中が100年に1度の大転換点を迎えることになった2020年。小売業も大きくその姿を変えることになることは間違いありません。

MD NEXTを運営するニューフォーマット研究所では、2020年5月13日に新型コロナ対策に関するウェビナーを実施する予定です。詳細は決定次第MD NEXTにてご案内します。新着情報を入手したい方は、以下からLINE公式アカウントにご登録いただくか、facebook、twitterなどのフォローをお願いいたします。