郡司昇のリテール・ニュー・フレームワーク

実店舗小売業の購買行動ファネル分析(3)

第6回インストアマーチャンダイジング(ISM)の全体像を把握する

ファネルの話の途中ですが、ここで「インストアマーチャンダイジング」の全体像について解説します。インストアマーチャンダイジングとは「①小売の店頭で、②市場の要求に合致した商品および商品構成を、③最も効果的で効率的な方法によって消費者に提示することにより、④資本と労働の生産性を最大化しようとする活動」のことです。かみ砕けば、「店舗のお客様の要望にあった商品をいかにお客様に提供するか」ということです。

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商品露出と商品刺激に分類できるISM

インストアマーチャンダイジングはIn-store Merchandisingの頭文字を取って「ISM(イズム)」と呼ばれることもあります。広義のマーチャンダイジング(MD)は、店舗政策、商品政策、価格政策という冒頭の図のオレンジ色の部分を指しますが、インストアマーチャンダイジングはより店舗にフォーカスした概念で、どの商品を露出させ、どの商品の露出を控えるのかという商品露出力に関わる「スペースマネジメント」と、いかに需要を喚起させるか、つまり商品刺激力に関わる「インストアプロモーション」の2つに大別することができます。

スペースマネジメントは、「フロアマネジメント」と「シェルフスペースマネジメント」によって構成されています。「フロアマネジメント」は、店内の回遊をどのように設計し、通路幅をどれぐらい取り、どのカテゴリーをどの位置に配置するかという「レイアウト計画」や、クロスMDなどが含まれます。

「シェルフスペースマネジメント」はゴンドラの設置場所の検討をはじめゴンドラ内での棚割、商品のグルーピング、ゾーニング、フェーシングなどがこれにあたります。

フロアマネジメントは、どのようにお客に店内を回遊していただくかをマネジメントすることです。できるだけ多くの商品が目に入る機会をつくり、歩きやすい、見やすい、もしくはまたカートが通りやすい通路幅を検討します。店舗が広くなりすぎると、店内をくまなく歩いてもらえなくなるかもしれません。どこに注力してどこをそぎ落とすのか、自店舗のコンセプトやターゲットから落とし込んで計画を練る必要があります。

計画購買の店舗は直線的なゴンドラ配置が無難

店内レイアウトについて、多くのドラッグストア(DgS)チェーンは、ゴンドラを直線的に並べるレイアウトを選択しています。しかしドン・キホーテやロフト、蔦屋家電のように、あえて直線ではない入り組んだゴンドラ配置を選ぶ店舗もあります。商品を探し出す楽しさを演出したり、意外な商品を見つけることを面白がってもらおうという考えです。この目的は非計画購買の促進にあります。

しかしバラエティショップや雑貨店とは違って、DgSは「風邪をひいたから風邪薬を買いたい」「そろそろ化粧水が切れそう」などの理由が来店動機であり、計画購買が中心です。

お客にとってはなるべく迷わずに商品にたどり着ける方がうれしいので、ゴンドラがまっすぐ並んでいる方が使い勝手がいい店舗と評価されます。このことが、DgSが直線的なゴンドラ配置を好む理由のひとつです。

ゴンドラ接続数で売上は変わる

ゴンドラをつなげる数によって売れ方は変わります。計画購買がメインの店であれば、なるべくゴンドラの接続数は多い方が買上点数が上がり客単価も上昇するということは、実験などで明らかになっています。

ゴンドラの接続数が多ければ、全部の副通路を一方通行に歩くことで店内の商品をひととおり見ることができ、店全体の売上向上につながるのです。

エンドに売り込みたい商品を大量陳列し、非計画購買を増やしたいというチェーンでは、ゴンドラを短くすれば、店内にエンドをたくさん配置することができるでしょう。

どちらが正解ということはありませんが、「計画購買中心の店舗では、ゴンドラをつなぐ数が多ければ多いほど、売上も上がる」という経験則には留意しておきたいものです。

チラシ特売商品を必ずしも露出させる必要はない

ところで、読者の皆さんは、チラシ特売商品を店舗のどの位置に陳列をさせるべきだとおもいますか。チラシで激安と銘打った集客商品は、店前通行客の集客を狙ったり、お客からの販売場所の問い合わせをなるべく減らすために、店頭に山積みするという企業は少なくありません。

一方で、チラシ特売商品をあえて店舗の一番奥まった目立たない場所にひっそりと陳列し、お客の回遊を狙うという手法を取るチェーンもあります。集客商品は売れたら赤字になりますから、あえてチラシ商品を見つけにくくしていて、「見つからないから諦めて別のものを購入しよう」という判断を狙うという側面もありそうです。

チラシを見た人は店内を歩き回って探すから、目立つ必要はないという発想でしょう。このように、PI値の高い商品を、店舗の入り口から離れた場所に配置するのもよく取られる手法です。

なお、店内レイアウトを計画する場合には、売場の配置だけでなく作業動線についても配慮したいものです。細かい話は別の章に譲りますが、まだまだ検討の余地がある部分だと筆者は考えています。

ハイ・アンド・ローでお客の購買意欲を刺激する

インストアマーチャンダイジングのもうひとつの要素は「インストアプロモーション」です。これには「価格主導型」のものと「非価格主導型」のものがあります。DgSにおいては、ほとんどが「価格主導型」のプロモーションになります。

商品の値段がいつもより安いことは、お客の購入を後押しする刺激になります。しかしいつも同じ商品が同じように安いだけでは刺激になりません。そこで多くの企業が採用しているのが、期間によって価格を上げ下げする「ハイ・アンド・ロー」という手法です。

定番商品の値下げ販売、バンドル販売、チラシ特価、エンド特売などがこれにあたります。「エブリデーロープライス(EDLP)」という、価格を変動させず、毎日同じ低価格で商品を売る手法を採用しているDgSは日本では少数派です。

一方、「非価格主導型」のインストアプロモーションには、ノベルティや試供品の提供、複数個を合わせて販売する「バンドル販売」、値引きなしの「エンド山積み」による視認性アップなどが挙げられます。

店頭でよく見られるのはある商品に別の商品のサンプルを付けて販売する方法です。ノベルティや試供品を付けて商品を目立たせることで、普段からその商品を使っている人への購入を促し、競合店での購入を未然に防ぎます。

しかし、いくらノベルティ・試供品の提供といっても、なんでもかんでも一緒に販売すればいいというものではありません。

極端な例ですが、とある化粧品メーカーのおしゃれな日焼け止めに液体漂白剤を付けて販売している光景を目にしたことがあります。これではメーカーが積み上げてきたブランド価値も何もあったものではありません。

また、サンプル・試供品提供の際、消費期限がある商品を付けるのも避けた方が無難でしょう。期限管理が二重になってしまうからです。葛根湯に生姜湯のサンプルを付けて販売しているのを目にしたこともありますが、医薬品より食品の方が消費期限が短いことが多く、シーズン終盤には高い確率で生姜湯の消費期限が切れているというようなことが起きます。

これらは商品のプロモーションを目的として行っていることですが、オペレーションが増加し、結果として管理がずさんになる可能性も非常に高いのです。
期限切れのサンプルを渡してしまう、商品の魅力を損なう…などもあり得ます。マイナスの側面にも配慮して実施は検討した方がいいでしょう。

著者プロフィール

郡司 昇
郡司 昇グンジ ノボル

小売業のICT活用研究所代表。薬剤師。前職は大手ドラッグストアにおけるマーケティングとEC 事業の責任者としてグループ統合マーケティング戦略を立案・実行。現在は主に(1)IT企業のCRM、位置情報、画像AI解析などの小売業活用 (2)事業会社のEC・オムニチャネル改善についてコンサルティング活動中。