小売業のコスト管理の基本「分配率」を知っていますか?

小売企業の中堅幹部は、本業の儲けである「営業利益」の達成が最大の数値目標になります。そのためには、売上高を増やすだけではなくて、販管費(経費)=コストをコントロールすることが重要です。

分配率は粗利益に占める利益と経費の割合

小売業のコスト管理の基本が「分配率管理」です。冒頭の図表1に示したように、分配率とは粗利益(売上ではありません)に占める利益と経費の割合を表したものです。分配率管理で重要なことは、まず最初に、粗利益の中から「営業利益」を確保することです。

粗利益に占める営業利益(もしくは経常利益)の割合のことを「利潤分配率」と言います。利潤分配率の目安は20%です。つまり、粗利益の2割を営業利益として最初に計上し、残りの8割を経費として配分するわけです。経費分配率の中でもっとも割合の多い経費は人件費であり、それを「労働分配率」と表現します。労働分配率の目安は、粗利益の3分の1強です。

労働分配率を計算する際は、給与だけではなくて「役員報酬」、「福利厚生費」「退職金の積み立て費用」「訓練費用」などの給与以外の労働コストをすべて含めて計算することが重要です。労働分配率以外にも、「不動産分配率」「販促分配率」が主要なコストです。コストコントロールで重要なことは、それぞれの分配率の目標を決めて、その範囲内でコストを管理することです。

販促分配率が低いコスモス薬品

※月刊MD2021年2月号記事から引用

図表2は、上場企業であるコスモス薬品の財務諸表をベースに「分配率」を計算したものです。粗利益(=売上総利益)に占める経費(販売費一般管理費)の割合は78.4%(経費分配率)となっています。つまり、利潤分配率(粗利益に占める営業利益の割合)は21.6%と計算できます(2020年5月末決算)。

利潤分配率の目安が20%なので、コスモスや薬品はより多くの営業利益を確保しています。コスモス薬品の店名は「ディスカウントドラッグコスモス」と安売り店であると堂々と表現していますが、利益配分は高いことがわかります。安売りで儲けが少ない従来のディスカウンターとは収益構造が異なると言っていいでしょう。

一方、コスモス薬品の労働分配率は38.0%と決して低くありません。小売企業としては平均賃金が高いと推測できます。低賃金で安売りを仕掛けるディスカウンターとは報酬面でも異なることがわかります。

特筆すべきは、コスモス薬品の「販促分配率」が3.2%と極めて低いことです。販促分配率の目安は5~7%なので、コスモス薬品の販促費用の低さが目立ちます。販促分配率の低さは、EDLP(エブリデーロープライス。常時低価格)政策の結果だと思われます。

売価を上げ下げして、売れ方(需要)の波動をつくる「ハイ&ロー」の価格政策よりも、売価が一定で売れ方の波動も少ないEDLP政策の方がオペレーションコストが低く、販促にかかる経費も非常に少ないことがわかります。コスモス薬品の販促分配率の低さを見ると、EDLPはEDLC(エブリデーローコスト)であることが改めて実感できます。

コスモス薬品の販管費率(売上に占める販売費一般管理費の割合)は15.5%(2021年5月末決算)とローコスト経営を実践しています。ちなみにマツモトキヨシの販管費率は25.7%ですから、10%以上の差があります。その驚異的なローコスト経営の理由のひとつが、EDLP政策による販促分配率の低さなのです。

大人用おむつを売るための3つのポイント

大人用おむつの市場はこの20年で2.5倍以上に成長している。しかし、ドラッグストア(DgS)の従業員は介護経験もなく商品への理解が不十分というケースが多い。ユニ・チャームではこのロスを埋め、正しい商品が消費者に届くよう、大人用おむつの商品理解とカウンセリングの手法を長年にわたり開発、改善し続けている。(月刊マーチャンダイジング2021年6月号より抜粋)

大人用おむつ市場「重度」は減少 「中度」と「軽度」で市場二分

全人口に占める高齢者(65歳以上)の人口割合を高齢化率というが、この数値は2000年の17.4%から2020年は28.9%と21年間で11.5ポイント上昇している(内閣府調べ)。これに伴い、大人用おむつの市場も拡大(図表1)、2020年は1,247億円に達している。

大人用おむつは、寝て過ごすことが多い、座れる、立てる、歩けるなど日常生活能力(ADL/Activities of Daily Living)に合わせ商品が開発・販売されており、ADL別では能力の高い順に「軽度」「中度」「重度」と区分される(以下図表)

2001~2010年の10年間は寝て過ごすことが多い人を主な対象とした重度の構成比が大きかったもののその割合は低下傾向にあった(図表2)。

同じく中度も低下する一方で、女性の尿もれを含む軽度は構成比を上げている。2011年から2020年までの10年間で重度は18.1%にまで縮小、残りを中度と軽度が二分するような市場構造になっている。

背景には寝たきりを避け、なるべく身体を動かすような介護方針が社会的に進んだこと、それに合わせた大人用おむつ(パンツタイプ)の開発や販売強化がある。また、軽い尿もれに対する意識が高まったことも軽度市場を押し上げている。

withコロナ時代に合わせた新売場の提案

図表3はユニ・チャームが長年提唱し続けているADL別売場である。カウンセリングでも使用者のADLを確認することが、適切な商品と使用者をマッチングさせる基本となる。

図表にあるように同社の売場づくりでは、自立している人(軽度)には「外出意欲促進」、トイレが使える人(中度)には「自立排泄支援」、寝て過ごすことが多い人(重度)には「離床促進・夜間良眠」と、現状に合わせた商品を案内するだけではなく、身体状況の改善、尊厳の維持、QOL(生活の質)向上など、使用者の生活をより前向きにする提案が込められている。

カウンセリングのなかで、こうしたメッセージを伝えることもショッパーにとっては有意義なことでロイヤル化にもつながる。「軽度の方は、なるべく外出することで体力もつくし、認知能力の維持にもつながります」といった言葉はお客の心理的な満足度を高めるだろう。

2021年の上期からは、従来のADL別売場から一歩進んでwithコロナの状況に配慮した売場を提案。代理購買者が中心のため、わかりやすいブランド別ADL売場を基本に、コロナ禍で来店頻度を抑えまとめ買いをする人が増えたので、①大容量パックの品揃え、売れ筋商品のフェースを増やして、②欠品ロス対策を強化している。

さらに、パンツ用パッド、テープ用パッドの売場を明確に分離することで誤使用を防ぎ、③パッドを販売促進する、などが新売場の主なポイントである。

パッドの販売促進はカテゴリー拡大のカギ

新売場3番目のポイントである尿とりパッドの販売促進に関して、この施策はカテゴリー拡大の大きなカギになる。尿とりパッドとはおむつの内側にあてる用品で、「内側のおむつ」ともいわれる(写真1)。

尿とりパッドを使えば、「交換が楽」「経済的に安価で済む」というメリットが生まれるのと同時に、店舗にとっては併買が進むという利点もある。尿とりパッドに関する認知や正しい使い方の理解は大人用おむつの適切な利用には重要な要素だが、現実には理解は十分に進んでいない。

「当社の調査によれば、パンツタイプ専用の尿とりパッドを使っている割合はわずか23%なのに対し、テープタイプ専用尿とりパッドを使っている方は48%と、明らかに使用方法を誤っており、これを正すような売場づくり、カウンセリングが重要です」(Home Health Care推進部長 辨野方一氏)

尿とりパッドを使った大人用おむつの使い方としては、中度であればパンツ用尿とりパッド、重度にはテープ専用のパッドを併用するのが適切な使用方法となる。パンツ用、テープ用それぞれ専用のパッドがあることを理解するのが基本。カウンセリングのキーフレーズは「交換が楽になって、外側のおむつの交換回数も減らせます」「費用が安く済みます」などである。

大人用おむつのカウンセリングは優良顧客育成につながる

ユニ・チャームが行ったカメラを用いたショッパー調査によれば、大人用おむつの購入者はほかのカテゴリーの購入者と比較して売場滞在時間が長いことがわかっている(図表4)。

また、ID-POSのデータによればシニア層になるほど利用店舗数は少なくなる傾向があり、いい換えれば高齢者ほど店舗ロイヤルティーは高い。さらに、必然的ではあるが、大人用おむつの購入者は中度、重度になるほどに本人以外の代理購買者であることが多い。

これらの事実を整理すると、大人用おむつの購入者は…

続きは月刊マーチャンダイジング 2021年6月号で!

〈取材協力〉 ユニ・チャーム株式会社 Home Health Care推進部長 辨野 方一(べんの まさかず)氏

カインズ「楽カジ」に学ぶ、日用雑貨売場の作り方

2020年夏、カインズが首都圏初出店した新業態「Style Factory」。200坪の小型店で日用雑貨を中心に取り扱う。本業態は売場をいくつかのテーマで商品をくくっているのが特徴だが、そのテーマのひとつとして掲げるのが「楽カジ」だ。「KITCHEN」「LAUNDRY」「CLEAN」の3つの切り口で、お客の生活をサポートする「楽カジ」。同社が長年にわたり開発し続けてきた楽カジ商品開発の裏側と、その特徴的な「売り方」について伺う。(月刊マーチャンダイジング2021年6月号より抜粋)

家事の工程・回数・時間を30%削減

「楽カジ」はカインズが提案する生活雑貨のコンセプトだ。くらしの大半を占める家事を、調理(KITCHEN)、洗濯(LAUNDRY)、掃除(CLEAN)の3つの軸に分類し、それぞれの工程や回数、時間を約30%削減するという約束を掲げ商品を取り揃える。「楽カジ」によって削減できた家事の時間で、自分らしさや楽しみを新たに生み出し、「くらしを家事から変えていく」ことを提案するという。

「楽カジ」コンセプト誕生の背景について、同社で長年商品開発を担当し、「立つほうき」や折り畳める物干し「パタラン」をはじめとする数々のヒットアイテムを生み出した、商品本部ライフスタイル事業部 オフィス・家庭用品部部長代理の清水政良さんはこう語る。

「小売業はメーカーと違ってお客さまとの最後の接点であり、お客さまの声を生かした商品を開発することができるのが強み。弊社も当初は、既存の商品を海外製造に切り替え、価格優位性を出すことを主眼に置いた商品開発を行っていましたが、そこからお客さまの視点を入れたオリジナル商品の開発へと変更するのは当然の流れでした」

カインズ 商品本部ライフスタイル事業部
オフィス・家庭用品部部長代理
清水 政良さん

カインズはホームセンター(HC)業態として、工具や木材からインテリア用品、グリーン、生活雑貨、ペット用品、食品など幅広いカテゴリーを取り扱う。共通しているのは「DIY」の精神だ。そしてDIYを提案できるのはHCならでは。ただ単にDIYをおすすめするだけではなく、くらし全体をDIYして、その中でも家事を楽しくしたり、時間を縮めるという提案が、楽カジのコンセプトの背景にある。

「家事を楽にして、浮いた時間で自分らしい時間を過ごしていただく。その結果、DIYでお部屋を自分らしくカスタムしてもらったり、グリーンを育ててもらったり…。家事そのもののやり方を、もっと自分らしくしていただくこともできるかもしれません」

そして開発者自身もいち生活者として、日々の料理や洗濯、掃除などの家事に関わり、その生活の中で「これって面倒だよな」「こうだったらいいのにな」という気付きを一つひとつ形にしていったのが楽カジアイテムの源流にあるという。

同社ではさまざまな商品を開発しているが、「楽カジというコンセプトに合っているかどうか」という点については、外せない大前提だという。時短をうたう商品の集積は、ともすると「アイデア雑貨売場」のようになりかねないが、具体的に工程や回数、時間を約30%削減ができなければ「楽カジ」を名乗ることを認めないという社内的なラインを明言することで、統一感を出すことに成功している。

「新商品の開発も行いますが、既存商品のブラッシュアップも欠かさずに行っています。たとえば20枚入りの商品を、毎日使う商品という観点で30枚入りに変更するとか、スポンジ置きの新商品に合わせて、既存のスポンジの形を変えるなど、商品開発には終わりがありません」と清水さんは語る。

カインズが楽カジという商標を登録したのは2014年。長年の積み重ねがあり、ラインアップされるアイテム数も豊富だ。

「はじめは点と点だったものが、線になり、最近ではちょっとした面になって、その面を“楽カジ”として提案できるようになりました」

2020年11月に発売されてから爆発的なヒットとなっている「まな板シート」。調理時のまな板洗いの面倒くささをなくす。

不満・不便の解消で既存商品の倍売れる

「これまでたくさんの商品を開発してきましたが、圧倒的にお客さまの支持を得られるのは生活の不便や不満を解消するためのアイテムです。ちょっとした改善で大幅に販売数が伸びたものもあります」

日常生活の不便解消を考えて開発したのが、ベストセラーとなった「パタラン」だ。「パタラン」はアルミの折り畳みランドリーラックで、大量の洗濯物を干すことができ、軽量で簡単に小さく畳んで収納できるのが特徴。

人気の「洗濯家具」パタラン

価格は7,980円からとそう安価ではないが、発売当初から爆発的な人気で、発売から6年たついまなおベストセラーとして売れ続けている。この商品の開発のきっかけは店頭での接客だった。

「店頭で室内用の物干しが欲しいとおっしゃるお客さまに接客をする機会があったのですが結局購入まで至りませんでした。何がネックなのかと尋ねたところ、(既存の商品は)組み立てるのが怖い。出しっぱなしにするのも嫌だ。簡単に収納できるといいのだけど、とおっしゃられた。そこから、たくさん干せて簡単に畳めるものがあれば売れるのでは?とおもいました」

別の製品の開発の際、メーカーにこのような商品をアルミでつくれないかと軽い気持ちで相談してみたところ試作品があがってきた。試しに新店で実験的に300個販売したところ、メディアに取り上げられたこともあり、あっという間に売り切れてしまったという。そう安い商品でもなかったので、はじめはさまざまな意見があったが、即増産へとかじを切った。

パタランはその後強度を上げたり、デザインのバリエーションを増やすなどのマイナーチェンジを続け、いまなお売れ続けている。家事を楽にしながら、素材や見た目を重視し、インテリアとしても見られるような洗濯用品をカインズでは「洗濯家具」と呼んでいる。

当たり前の不満や不便を掘り起こす

もうひとつ商品開発に関するエピソードをご紹介しよう。ほうきの定番売場を棚割り変更した際の話だ。

続きは月刊マーチャンダイジング 2021年6月号に!

ストック需要・簡便性ニーズで好調の大型ペットボトル・スティック飲料分析

今回は、POBデータの飲み物カテゴリーから、「お茶系飲料(日本茶・麦茶・中国茶・その他茶飲料などのペットボトル・紙パック)」、「コーヒー(レギュラー・インスタントなど)」の商品カテゴリーをセレクトして、新型コロナ感染拡大前(2019年)と新型コロナ感染拡大後(2020年)における、購買行動の変化を分析しました。

お茶系飲料46円、コーヒー157円購入単価アップ

上図は、「お茶系飲料」「コーヒー」におけるレシート1枚あたりの購入状況を2019年と2020年で比較したものです。平均購入個数に変化はほとんどみられませんでしたが、平均購入金額は「お茶系飲料」が、195円から241円に増加し(46円アップ)、「コーヒー」は、311円から468円に(157円アップ)に大きく増加していていることがわかります。

「清涼飲料」、「野菜ジュース」、「炭酸飲料」など、他の飲み物カテゴリーにおいても、30円~40円程度増加していました。

飲料メーカー各社が大型ペットボトルの製品の値上げを発表したのは、2019年4月であったため、その要因を探るべく、全国のPOB会員を対象とした「飲み物の購買行動に関するアンケート(2021年3月18日~19日、N=2015人、平均年齢53歳)」を実施しました。

その結果、コロナ禍により自宅で過ごす時間が増えたことで、「自宅でお茶、コーヒーを飲む頻度が増えた」、「家族と共用するため、容量の少ない飲料よりも大容量のものを買うになった」といった声が多く挙がりました。他にも、新しい買い物様式の浸透により、密を避けるために特売やセールの機会が減少していることも、単価アップの要因として考えられることが推測されます。

また、お茶系飲料市場を牽引する緑茶飲料においては、2020年のオリンピック開催にともなう和文化への注目から、各メーカー緑茶市場の成長を予測し、同年の3月以降、「お~いお茶(伊藤園)」、「綾鷹(コカ・コーラ)」、「生茶(キリン)」、「伊右衛門(サントリー)」の4大緑茶ブランドのリニューアルが続きました。

その効果が消費者の購買行動にどう変化を与えたのか、次からは4大緑茶ブランドを例に、主力商品が同時期にリニューアルを実施した場合の消費者の購買行動を分析しました。

外出自粛・在宅勤務の影響で伸長したコーヒー市場

次からは、「コーヒー」における購買行動の変化を分析します。

「コーヒー」におけるレシート1枚あたりの平均購入金額を2019年と2020年で比較すると、「コーヒー<311円→468円:157円アップ>」と抜きんでており、「今までカフェでお茶をしていたが、自宅で過ごす時間が増え、ドリップ式のコーヒーを数種類購入するようになった」、「コーヒー豆も大容量タイプをストックするようになった」といった声がありました。

2020年は、新型コロナの影響で外出自粛や在宅勤務が広がったことにより、レギュラーコーヒーやインスタントコーヒーだけではなく、スティック飲料においては、350億円の市場規模が予想されるほど注目されています。他にも店頭では、ポーションやカプセルコーヒーマシーンに対応したカプセルなど、様々な用途や嗜好に対応した商品を手軽に購入することができます。

67.7%がスティックタイプ飲料を自宅に在庫

次からは、POB会員アンケートから、主にスティック飲料に着目し調査を進めます。

まず、スティック、ポーション、カプセルタイプの飲料を自宅に保有しているか尋ねると、およそ7割が「ある(67.7%)」と回答しました。その種類は(N=1364人)、最多回答は、「2種類(29.0%)」でしたが、半数近くが「3種類以上ある(46.0%)」と回答しました。

コメントからは、「レギュラーコーヒー、インスタントコーヒー、カフェオレスティックなど、コーヒーのラインナップを充実させている」、「在宅勤務中は、簡単に飲めるポーションやスティックのコーヒーなどを休憩時間に飲んでいる」など、複数の種類をストックし、仕事中やリラックスタイムなど、シーンに合わせて飲み分けをしていることがわかります。

また、豊富な種類から自分の好みにあった商品を見つけることができるため、2人に1人が「自分専用のものがある(48.8%)」と回答し、パーソナル化が進んでいることがわかりました。

ネスカフェ エクセラにみる、スティックタイプコーヒーのバラエティー

最後に、様々な商品のラインナップがあるコーヒーブランド「ネスカフェ エクセラ(ネスレ日本)」のレシートから、商品タイプ別の構成比を分析しました。注目のスティックはどれだけ購入されていたのでしょうか。

上図は、2020年の「ネスカフェ エクセラ」ブランドの購入レシート(N=10,282枚)の商品別の構成比を表したものです。主力は「ネスカフェ エクセラ(47.0%)」や「ネスカフェ エクセラ 詰め替え(11.3%)」などの、瓶や袋タイプがおよそ6割を占めています。

注目すべきは、スティックの構成比です。「ネスカフェ エクセラ ふわラテ(18.3%)」「ふわラテ ハーフ&ハーフ(6.6%)」、「ネスカフェ エクセラ スティック(4.5%)」、「ふわラテ まったり深い味(3.7%)」で(計33.1%)3割を越え、現代人のニーズ・コロナ後のライフスタイルの変化に応える飲料として、広く受け入れられていることがわかります。「カフェ気分を味わうために飲むようになった」など、家庭で簡単に本格的な味が再現できるところも魅力につながっているようです。

今回の調査結果から、新型コロナの感染拡大による飲み物の購買行動の変化として、在宅時間が増えたことにより、家族でシェアして飲むために、複数カテゴリーの大型ペットボトル購入機会の増加だけではなく、コーヒーの飲用シーンの増加にもつながり、イエナカ消費にあった購入が拡大していることがわかりました。

中でもコーヒーにおいては、レギュラーコーヒーやインスタントだけではなく、スティックなど、様々な製品から、仕事中やリラックスタイムなど、様々なシーンや嗜好に合わせて、自分好みのものを楽しんでいることがコメントからうかがえます。

また、新しい買い物様式の浸透により、「買い物に行く回数が減り、いろいろな種類の飲み物を買い置きをするようになった」といった声も多く、身近な場所で購入できる飲み物においても、ストックする傾向があるようです。自宅での飲用・ストックのしやすさだけではなく、持ち運びニーズにも対応しているスティックは、密を避けるためにキャンプなど、屋外でのレジャーが人気を集めていることから、さらに市場の拡大が予想されるでしょう。

 

(※POBデータ…ソフトブレーン・フィールドによる、 全国のアンケートモニター(以下、POB会員)から独自に収集する、日本初のレシートによる購買証明付き・購買理由データベース「マルチプルID-POS購買理由データPoint of BuyⓇ(以下、POBデータ)」。リアル消費者購買理由データベースとしては国内最大規模の月間300万枚のレシートを収集したもの(提携サイト含める))。

[調査概要]
・POBアンケート N=2015人
調査対象:全国のPOB会員アンケートモニター
調査日時:2021年3月18日~19日
調査方法:インターネットリサーチ
調査機関:ソフトブレーン・フィールド

・POBデータ分析は図表内に調査概要を記載。
①お茶系飲料とコーヒーの購入状況(レシート1枚あたり購入単価)
③「ネスカフェ エクセラ」ブランドレシート全体に占める商品別構成比

リアル店舗は「遊び場」だ!「オーサムストア」最大級の旗艦店が渋谷にオープン

デザイン性の高い生活雑貨を低価格で提供する「オーサムストア」(運営:レプレゼント)。全国に60店舗を展開する同チェーンが、2021年3月12日、「オーサムストア トーキョー」をオープンした。今後拡大を目指す同社の商品をフルラインアップした注目のグローバル旗艦店舗だ。(MD NEXT編集長 鹿野恵子/月刊マーチャンダイジング2021年5月号より抜粋)

デザイン性高い生活雑貨をEDLPで展開

東京屈指の繁華街、渋谷センター街の奥にオープンした「オーサムストアトーキョー」は、1982年創業のレプレゼントが運営する低価格生活雑貨店「オーサムストア」のグローバル旗艦店だ。売場面積は1階約83坪、2階約114坪、計200坪弱と同業態都内最大級。ニューヨークを彷彿とさせる内装の店内に、約5,000SKUの生活雑貨を展開する。

1階の内装はニューヨークの実在する地下鉄駅をイメージ

まず店舗の全体像を紹介しよう。人通りが多いセンター街に面した1階、入店してすぐのコーナーには、「デイリーオーサムプライス」というキャッチコピーの下、EDLP(エブリデーロープライス)のお値打ちアイテムを集積。オープン時にはおしゃれなデザインのボックスティッシュ(5パック)が298円で展開されていた。

店頭では「オーサムプライス」というタイトルで低価格の商品を訴求。写真はロットが大きいため「念願かなって」開発となったオリジナルの国産ティッシュペーパー。5パックで298円

オーサムストア トーキョーでは限定・先行アイテムを積極的に取り扱う予定だが、このアイテムもそのひとつ。別コーナーには台所用品と重曹、セスキ、クエン酸、オキシウォッシュ(酸素性漂白剤)を各98円で取り揃える。ユーモラスでおしゃれなパッケージは、これまで掃除にこれら消耗品を使ったことがないお客も手に取ってみたくなるような雰囲気だ。

台所まわりの生活用品も「オーサムプライス」でくくり店頭で訴求。98円で購入できる重曹やセスキは、これらの消耗品を使ったことがないお客の入門に最適。パッケージのビジュアルもユニーク

1階奥の平台で大きく展開されていたのはお弁当用品コーナー。「オーサムライフ スプリング」と題し、弁当箱、おかず用のケースなどお弁当用のおしゃれなアイテムを、自宅などでのお花見提案と関連付けた。季節を訴求したプロモーションを目立つ場所に展開することで、売場に新鮮な印象を与える。

お弁当用品を「オーサムライフ スプリング」としてくくって提案。季節を感じさせる売場に

ビンテージ加工が施されたアメリカ風家具も陳列。ただしこれらは店舗に在庫を持たず、オンライン限定での販売となっている。コロナ禍を背景に好調な販売を続けるスマートフォンの三脚やLEDライト、クリップホルダーなどのガジェット類は、100円ショップなど他業態でも販売されているが、オーサムストアらしいセンスあふれるパッケージで差別化を図った。

コロナ禍がスマートフォンアクセサリーの人気を後押し。他業態でも販売されている商品だが、オリジナル性の高いパッケージでつい手に取ってしまう

なんとなく行く店から目的買いの店への転換を志向

写真手前がフィットネス用品、奥がインテリア用品の集積。いずれも安価で手軽にエントリーすることができる

2階にはマグネット効果を見込み、キッチン用品やフィットネス関連など目的性の高い商品や、インテリア用品など「おうち時間を楽しむ」アイテムを展開。オーサムストアといえば、ニューヨークの倉庫をイメージした武骨な内装が特徴的だが、こちらの店舗のキッチン用品売場は床や棚にウッドを取り入れ、ナチュラルな雰囲気。

今後より強化していく台所用品売場。これまでアイアンとモルタルという武骨な印象の売場を志向していたが、こちらはウッディで少しやわらかい雰囲気
コーヒー関連の商材と焼き菓子用のケースをクロスで展開。コーヒーでいえばステンレスのコーヒードリッパーからコーヒーメーカーまでひととおりの用具が揃う
新商品の軽量磁器は見た目は高品質ながら驚くほど軽量

「今後、長期にわたりお客さまに支持していただくためにも、(バラエティ雑貨だけでなく)生活雑貨、なかでもキッチン雑貨に注力していきたい」と、レプレゼント取締役運営部部長の堀口周作さんは語る。

「現時点でのオーサムストアは、“なんとなく遊びに行ってみたら面白い商品があって購入する”という位置付けの店。これからはそうではなくて“〇〇を買いにオーサムストアに行こう”という目的買いの店に移行していなければなりません。そのためにも今後はカテゴリーを広げるよりも、カテゴリー内の商品をより深めていくという方向にシフトしていきたいとおもっています」

取締役 運営部部長
堀口 周作氏
 

現在オーサムストアのメイン客層は20代後半〜40代の既婚女性。そこで低価格のコスメやアクセサリー、文具など、若い客層が手に取りやすいカテゴリーを大きく打ち出すことで…

同社のSNS活用法など、続きは月刊マーチャンダイジング 2021年5月号で!

ココカラファイン東京新宿三丁目店「体験と発見」をテーマに新たな試みを続々投入

2021年10月からマツモトキヨシホールディングスとの経営統合により、新会社マツキヨココカラ&カンパニーの一翼として生まれ変わるココカラファイン。同社では2020年12月に東京・新宿三丁目にコスメを軸にした4層の都市型旗艦店をオープンした。新店に投入された数々の新たな取り組み、コロナ禍により消失したインバウンド需要をどのようにカバーしていくかなどを取材した。(月刊マーチャンダイジング2021年5月号より抜粋)

物販だけではなく店舗をメディアとして活用

ココカラファイン東京新宿三丁目店は、新宿駅東口から徒歩5分、人通りの多い新宿通り沿いに位置している。隣は老舗書店の紀伊國屋書店新宿本店。4層構造の売場はそれぞれにテーマを持っている。1階のテーマは「WOW!」。驚きと感動の空間。入口を入ってすぐ右手にはネットで話題の商品、これから売り出したい商品のコーナーを設置してショールーム的なスペースにしている。

オープン当初はインテリアショップのLAWYA(ローヤ)と提携、椅子やテーブルがこのスペースに展示されていた。これまでのドラッグストア(DgS)の枠組みを超えるという強烈なメッセージである。

〈取材協力〉

(右)ココカラファインヘルスケア
ドラッグ事業本部 東日本エリア
東京地区統括店長
梁野 哲平氏
(左)ココカラファイン
東京新宿三丁目店
店長
岡野 裕也氏

D2C(Direct to Consumer/メーカーから消費者への直販)スペースと呼ばれるが、商品によっては在庫があり店内で購入できる。在庫のない商品は、QRコードなどを通じて店内、もしくは店外からECサイトにアクセスして購入する。

取材時にこのスペースには玄米を炊いて数日寝かせることで独特の食感と風味が出る「寝かせ玄米」や富士フイルム発売の「アスタリフト」、女性の悩みを解決することをコンセプトにしたセレクトショップ「fermata(フェルマータ)」社の商品が展示されていた。

D2Cスペース、女性の悩み解決の商品を販売するfermata社のコーナー。月経カップや潤滑ジェル剤などを紹介
D2Cスペース、向かって右が「寝かせ玄米」、左がアスタリフト。店頭販売に加えネットに誘導、詳しい情報発信、ネット購入も促進する

物販だけでなく、主にECで流通している商品、リアルで販売しているが販路が小さな商品の紹介、体験を提供することで、メディア(広告媒体)としても店舗を活用し収益を得る。広告媒体としては、D2Cスペースに加え店内外のサイネージも活用する。

店舗中央のアイランド型の什器にはそのときどきの話題の商品を陳列、また、取材時には壁面をワイドに使ったさまざまなマスクの陳列もあった。

1階の壁面に大きく面を取ってマスクを展開。デザイン性に加えDgSならではの機能性の高い商品も陳列

1階には定番売場は置かず、すべてがプロモーション。トレンド商品、これからトレンドになりそうな商品を取り揃えて入店を促進する。

1階はすべてがプロモーション売場、関心を持って回避してもらう

東京新宿三丁目店の「店舗のメディア化」、新商品の紹介の中で反響のあったものは他の都市型店舗にも横展開する体制になっており、この店には実験店、アンテナショップの役割もある。

「1階は常にわくわくする空間を意識して、一度入店すると各プロモーション売場がマグネットになって、お客さまが順次回遊するように売場をつくっています。また、上層階へ誘導するPOPも置いて店舗全体の回遊の起点となることも心掛けています」(岡野裕也店長)

1階のお菓子タワー。近隣で働く女性などが気軽におしゃれに食べられるスナック菓子を選んで目立つように陳列

マツキヨのPBが加わり接客販売がさらに進化

2階はヘルスケア、日用品の売場で「Casual&Warm」(カジュアル&ウォーム/日常的&温かい)がテーマ。東京新宿三丁目店のターゲット客は「働く女性」「観光客」「地域住民」となっている。

続きは月刊マーチャンダイジング 2021年5月号にて!

 

スギ薬局 新宿三丁目店、インバウンドに頼らない!地域住民の生活も支える都市型ドラッグストア

都心の買物客の基本行動は、「ショートタイムショッピング(短時間での買物)」である。売場の回遊性を重視した「レイアウト計画」や、コンビニで品揃えする商品群の「ラインロビング」が、極小商圏で成立するための基本対策となる。今年1月末に開店したスギ薬局「新宿三丁目店」では、コンビニ需要を奪いながらも、「化粧品」を同社最大級の売場面積で展開し、「利便性」と「専門性」を両立したプロトタイプづくりに挑戦している。(月刊マーチャンダイジング2021年5月号より抜粋)

都心の極小商圏で成立するビューティ特化型店舗に挑戦

スギ薬局 新宿三丁目店は、緊急事態宣言が首都圏1都3県に発令中の2021年1月28日に開店した。開店から1ヵ月後時点の売上構成比は、化粧品が43%を占め、同店がビューティ特化型店舗の位置付けであることがわかる。

ドン・キホーテに品揃えされているようなカラーコンタクト売場を大きく展開

調剤併設型・2層構造・合計212坪であり、地上1階は「医薬品」「軽食」「飲料」「男性化粧品」「オーラルケア」「ベビー用品」、地下1階は「化粧品」「ヘアケア」「ボディケア」「日雑」などで構成されている。客数の割合は、地上1階が6割、地下1階が4割。取材した3月1日(水)昼時点では、地下では女性客、地上では通勤客・観光客が多く見られた。

〈取材協力〉

庄司亘範店長(左)、要貴大スーパーバイザー(右)

商圏内には、ココカラファイン東京新宿三丁目店、コスモス歌舞伎町一丁目店、アットコスメストアなどがある。極小商圏内で成立させるため、通勤客の「コンビニ需要」、30~40代女性の「デパートコスメ需要」に対応する商品群を積極的にラインロビングしている。

キャンメイクの売場。高価格品のデパートコスメだけでなく、低価格品であるバラエティコスメも強化している
スギ薬局のプライベートブランド(PB)「プリエクラ」のテスターを設置

既存店と大きく異なる点は、モニターの数である。同店では、大小「23台」のモニターを設置している。画像・動画で「情報発信」をする一方で、「広告媒体」として収益源の役割も担っている。新宿三丁目店は、極小商圏で成立するノウハウを蓄積するプロトタイプであると同時に、デジタルシフトの実験店でもあるといえよう。

競合店との差別化を図る化粧品の新ブランドを導入

新宿三丁目店では、スギ薬局がこれまでに組んだことのないメーカーの商品の品揃えに挑戦している。地下1階に下りると目の前の壁面には、日本最大級のコスメ通販「NOIN」をコラボ展開している。すぐ右の棚には、トレンドである「韓国コスメ」「アットコスメ」をコーナー化している。

エスカレーターを下りてすぐの壁面に、日本最大級のコスメ通販「NOIN」とのコラボ売場を展開。スギ薬局でははじめての導入となる

続きは月刊マーチャンダイジング2021年5月号にて!

薬王堂が店頭ピックアップサービスを開始。契約から半年でリリースできた背景

東北地方に322店舗を展開するドラッグストア(DgS)チェーンの薬王堂。2021年3月にスタートアップ企業10X(テンエックス)との協業で「アプリで注文・店舗受け取り」サービスをスタートした。2022年には「アプリで注文・自宅へ配送」サービスの提供開始も視野に入れる。高齢化が進む地域で模索する、新しい地域密着の形とは。(MD NEXT編集長 鹿野 恵子/月刊マーチャンダイジング2021年5月号より抜粋)

ルーラルで成長続ける独特のビジネスモデル

1978年創業の薬王堂は岩手県、宮城県を中心とした東北地方に「小商圏バラエティ型コンビニエンスドラッグストア」という業態の店舗を322店舗展開している。人口密度が低いルーラル(田舎)を中心に出店し、商圏人口は7,000人程度。医薬品にこだわらない品揃えで、食品の売上構成比率は40%以上となっている。

販促物が少ないシンプルな売場や、いつでも安いESLP(EverydaySame Low Price)の推進により、ローコストオペレーションを追求。地方の生活に寄り添うビジネスモデルを構築しているのが特徴だ。

その薬王堂が2021年3月にリリースしたのが「P!ck and」という「アプリ注文・店舗受け取り」サービスである(写真1)。お客はスマートフォンの「P!ckand」アプリで商品を選択して注文。「車上受け取り」を選択した場合は、店舗の駐車場に駐車したあと、店舗従業員が車まで商品を届ける。将来的には「レジ受け取り」も選択できるようになる予定だ。

写真1 「P!ck and」アプリのイメージ

2021年3月より岩手県内の4店舗でサービスを開始。年内にも全店舗の展開を目指す(なお、1注文につき220円〈税込み〉のサービス利用料がかかる)。

この「P!ck and」は、チェーンストアECの垂直立ち上げプラットフォーム「Stailer」を展開する株式会社10Xと薬王堂が共同で行う「ドラッグストアDX推進プロジェクト」の第1弾という位置付けだ。

10Xはこれまで「Stailer」をイトーヨーカドー(東京都)やライフ(大阪府)、フレスタ(広島県)などの食品スーパーマーケット(SM)に提供してきたスタートアップ企業。今回は初のDgS企業との協業となる。

「Stailer」は、チェーンストアを対象に、ECやドライブスルーなどの便利な顧客体験を実現するための複数のシステムをまとめたもの。お客向けのスマートフォンアプリや店舗向けのピッキング&パッキングアプリ、在庫管理システム、配送業者向けのオペレーティング・システム、分析ツールといったシステムを一括して提供する。

簡単な使用感 作業ミス防止の工夫も

「P!ck and」のアプリを使ってみると、とてもシンプルな使用感である。以下に順を追って利用方法を紹介する。

①商品選択〜注文まで
お客はアプリ上の商品選択画面で、購入したい商品を選択し、受け取り日時と受け取り方法を選択する。あらかじめ支払い方法などが登録されていればあとは注文を確定するだけ。2ステップ程度で注文は完了する。

②従業員の作業
店舗従業員は、従業員向けのピッキング&パッキングアプリ(写真2)に従い、商品のピッキング&パッキングをする。商品のバーコードをスキャンしてから作業を行うことで、ミスを防止する。パッキングの際はお客にお渡しする商品の小口数をアプリに登録し、それぞれの小口用にラベルを印刷して貼付する。

写真2 従業員用のアプリ画面と作業手順

③来店〜お渡しまで
お客は店舗に到着すると、アプリから店舗従業員に向けて「店舗に到着した」旨の通知を送る。従業員はピッキング&パッキングした商品を、お客の車まで持っていってお渡しする(写真3)。

写真3 受け渡しの様子

お客に渡す商品に貼付するラベルやお客のアプリには、それぞれQRコードが発行されていて、それをカメラで読み取らないと、次の作業に進むことができない。受け渡しのミスを防ぐための工夫である。近々導入予定の新機能ではレジでの受け渡しも選択可能で、その場合は、レジでしか使えない決済方法で支払いもできる。

いずれの方法にしても、できるだけ非接触で、あるいは店舗の滞在時間を短く済ませることができる。コロナ禍でなるべく人と接したくないというニーズにも適合する方法だ。

契約から半年でリリース スピードの裏に在庫システムあり

「P!ck and」スタートの経緯で驚かされるのがそのスピード感だ。薬王堂と10Xが正式に契約してからサービス開始までに要したのは約半年。Stailerという既存のプラットフォームを利用しているとはいえ、驚くべき短期間でのリリースだ。

その背景には薬王堂の在庫管理システムの精度の高さがあった。薬王堂は、店舗作業の軽減のために、自動発注システムへの投資を積極的に行っていた。薬王堂 営業本部 DX推進室 マネジャーの西郷泰広さんは次のように語る。

「弊社は12、13年前から自動発注の仕組みを取り入れようとしていましたが、当時精度はそう高くなかったそうです。しかし、5年ほど前にパルタックさんの物流に切り替えてから本格的に自動発注の精度アップに注力し、現在は全商品の88〜89%を自動発注しています」

薬王堂 営業本部 DX推進室 マネジャー
西郷 泰広さん

発注精度向上前は、1店舗当り1日7、8時間かかっていた発注作業であるが、現在では1店舗1日当り30〜60分までに短縮。店舗従業員が発注にほとんど時間を割かずに済むようになっている。人口が少ないルーラルで、いかに高効率の店舗運営を続けるかを考えた末にたどり着いた施策だったといえる。そして、自動発注の前提となるのが在庫管理システムだ。薬王堂は同プロジェクト開始前には、既に全店舗のSKU単位での在庫数を1時間ごとに更新し、参照できるようなシステムを構築していたという。

10X 代表取締役CEOの矢本真丈さんは、今回のシステム立ち上げについてこう評する。

「今回のようなサービスを開始する際には、デジタル上での在庫管理システムの実現と、ピッキング・パッキングのオペレーション効率化の2つが肝になります。ピッキング・パッキングについては、これまでの開発などから弊社に知見があり、薬王堂さまをサポートしつつ、ともにテストを行い、オペレーションを構築してきました。

一方、在庫管理については、在庫を適正に管理し、ネットでも店舗でも販売できる状態をつくり上げなければなりませんが、その仕組みが整っている小売業は、現状ほとんど存在していないといえます」

10X 代表取締役CEO
矢本 真丈さん

そのため、これまでStailerの導入時には、小売業の持つ在庫管理システム上のデータを膨大な手間をかけてクリーニングし、構造化する必要があった。「ですが薬王堂さまは今回のプロジェクトスタート前から店舗で個品管理できる状態をつくっていました。データも整っていて、これまでとは逆に弊社が薬王堂さまに助けられる形になりました」

薬王堂側では西郷泰広さんを中心とする4人が同プロジェクトに参加。店舗オペレーションを把握しているメンバー、社内システムに精通しているメンバー、法務的な課題を調整するメンバーなど、社内のスペシャリストが揃った。

西郷泰広さんは、10Xに業務を依頼した経緯をこう語る。

「優秀な人たちが揃っていて、自律的に動いている企業さんと感じますし、その分スピーディにリリースができました。ドライブスルー受け取りも、10Xさんが私たちの店舗を訪れて1回目のデモで提案してくれました。当初は自社開発も検討していましたが、仮に自社で開発していたらこの半年というスピード感でリリースはできなかったとおもっています」

続きは月刊マーチャンダイジング2021年5月号にて!

  • 使いやすさを最優先 割り切ったアプリ構成
  • 売上げの3%占めるサービスを目指す
  • ラストワンマイル配送 生鮮・総菜販売にも挑戦する薬王堂のルーラル戦略とは

リアル店舗の狭小商圏化は加速 「商圏人口3,000人」時代に備えよう

月刊MDでも何度か紹介している食品強化型ドラッグストア(DgS)「ゲンキー」は、人口が減少し、高齢化率が上昇する地方都市の「過疎地」立地に、売場面積300坪の店舗を出店する経営戦略で急成長しています。ゲンキーが想定する商圏人口は7,000人~5,000人と、従来の総合小売業の商圏人口としては極めて狭小商圏立地を想定しています。

商圏人口7,000~5,000人を狙うゲンキー、薬王堂

月刊MDでも何度か紹介している食品強化型ドラッグストア(DgS)「ゲンキー」は、人口が減少し、高齢化率が上昇する地方都市の「過疎地」立地に、売場面積300坪の店舗を出店する経営戦略で急成長しています。ゲンキーが想定する商圏人口は7,000人~5,000人と、従来の総合小売業の商圏人口としては極めて狭小商圏立地を想定しています。

また、東北地域にドミナント展開する「薬王堂」も、商圏人口5,000人の過疎地の生活を支える業態を店舗展開しています。今年からはアプリを活用したBOPIS(Bye Online Pickup In Store。アプリで注文し店舗受け取り)のサービスを開始し、近い将来は客の自宅まで商品を届ける「宅配」にも挑戦する計画です。高齢化が進み、免許返納の高齢者が増加する東北の過疎地の「ラストワンマイル」を実現する宅配に取り組むことで、「狭小商圏高シェア」を目指す戦略のようです。

小売業は「立地産業」と呼ばれ、人口の増加している地域に出店するのがセオリーです。しかし、車で30分もかけて来店するような大商圏のリアル店舗は、Amazonなどのeコマースとの競争に弱いと考えられます。「コストコ」のようなAmazonにはない特別な来店目的を持つ業態以外は成立しにくくなると考えられます。

Amazonと共存できるリアル店舗は、「近くて便利」という価値を磨いた小商圏店舗だけになる日が来るかもしれません。ゲンキーや薬王堂は、あえて人口5,000~7,000人の人口減少立地に「逆張り出店」することで、残存者利益を獲得し、需要を総取りする作戦です。

5,000人~7,000人の立地でも商売を成立するためには「ラインロビング」は不可欠の戦略です。新しいカテゴリーを増やすことで「来店目的」を増やし、一人当たりの支出金額を増やすことが、狭小商圏立地で成立させるためのセオリーです。ゲンキー、薬王堂ともに生鮮食品までラインロビングし、地域の便利な店を目指そうとしています。

年1,000店の出店続けるダラー・ジェネラル


ゲンキーや薬王堂がベンチマークしているアメリカ小売業は「ダラー・ジェネラル」だそうです。ダラー・ジェネラルは、ルーラル(田舎)立地に高密度でドミナント出店し、毎年1,000店前後の新規出店を継続しています。

最近のアメリカ小売業界は、大商圏立地の「大型ショッピングモール」の大量閉店が続いています。ショッピングモールに入居している核店舗のデパートやGMSの閉店が相次ぎ、コロナ禍の中で、ショッピングモールにテナント出店するアパレルなどの専門店の倒産も相次ぎました。

一方で、ダラー・ジェネラルやアルディのような「小型の小商圏業態」の大量出店が続いています。両社とも人口の少ない立地に出店できる売場面積300坪程度の「小商圏小型ディスカウンター」です。ダラー・ジェネラルは、ほとんどの商品が10ドル以下で売られ、2020年1月末で全米45州に16,278店舗を展開。アメリカは50州なので、まだ出店していないエリアが残っており、アメリカでもっとも成長余地の大きいリアル小売企業として注目されています。

ダラー・ジェネラルの店舗の多くは、大型店が少ない人口1万人以下の郊外やルーラル(田舎)地域に展開されています。2019年度、975店舗の新規開店、1,024店舗を改装、100ヵ所の店舗を移転しました。これら店舗網で全米45州をカバー、人口の75%以上が店舗から半径5マイル(約8㎞)以内に住んでいる小商圏店舗です。

ダラー・ジェネラルの大きな特徴は、Amazonのようなネット通販と棲み分けできることです。「近くて便利」「10ドル以下の低価格帯」が武器なので、自宅近くのダラー・ジェネラルを利用すれば、無理にAmazonで注文して配達してもらう必要がありません。また、オンラインで注文して店舗受け取りという新しい買物体験「BOPIS」にも2019年から挑戦していますが、自宅から近いので受け取りが便利という理由で好調です。また、総合ディスカウントストアのウォルマート以上の安さを実現しており、所得格差の激しいアメリカでは、低所得者層にとって便利な業態として定着しています。

日本でも地方都市は人口減少と高齢化が進み、免許返納によって遠くの大型店よりも、近くの便利な小商圏店舗を選ぶ高齢者が増えていきます。人口減少が続く地方都市の店舗が少なくなる中で成立すれば、唯一残った便利な店舗として「残存者利益」を得ることになるでしょう。また、コンビニしかないような過疎立地であれば、300坪店舗でも地域の最大店舗です。「小さな町に大きな店をつくる」という昔からある商業経営の格言は、洋の東西を問わず共通しています。

また、アメリカ同様に日本も所得格差が開いています。ゲンキーで販売している弁当の最安値は198円ですが、こういう激安商品を好んで購入する消費者が増えていきます。とくに高齢者は年金生活者なので、ストック(資産)はあってもフロー所得は少なく、節約志向は今後も高まっていきます。

ゲンキーは、300坪型の「Rタイプ」店舗を今後3年間で272店も開店し、2023年6月期の店舗数568店、売上高2,400億円の目標を立てています。ダラー・ジェネラルのように、大量出店を計画しているわけです。ゲンキーは自動発注など店舗で考える作業を極力減らし、入社2年で店長になれる仕組み化を武器にして、レイアウトもまったく同じの「金太郎飴店舗」を量産しようとしています。

生鮮全店導入により7,000人商圏での勝ち残り図るゲンキー

人口減少、Amazonとの競争の中で、リアル店舗の狭小商圏化は加速していきます。近い将来、「商圏人口3,000人」時代に備える必要があるかもしれません。

ビー・アンド・ディー「既存の強みと標準化で、次のステージ目指す」

愛知県春日井市に本社を置く株式会社ビー・アンド・ディーは県内に68店舗を出店。売上高294億6,000万円(2020年5月期)のローカルドラッグストアだ。売場づくりの完成度には定評があり、店舗運営レベルも高い。2018年からツルハグループの一員となり、DgS激戦区愛知県での勝ち残りを図る。2019年6月、代表取締役社長に就任した上條明子氏に聞いた。(聞き手:本誌編集長 野間口 司郎/月刊マーチャンダイジング2021年4月号より抜粋の上転載)

出店エリアに合わせ地域密着を徹底追求

──愛知県は全国でも有数のDgS激戦区です。こうした環境にあってどのような店づくりを目指されているでしょうか。

上條 よくいわれる言葉ですが、地域密着型の営業を徹底する、それに尽きるとおもいます。地域密着とひと言でいってもそれを実現させるのは大変に難しいことです。当社の出店エリアである愛知県は高齢化が進んでいる地域、比較的若い方の多い地域などエリア特性はさまざまです。店舗も150坪、300坪など立地により売場面積が異なります。地域密着とは地域や店の状況に合ったコミュニケーションスタイルでお客さまとの距離をいかに縮められるかだとおもっています。

当社にはほかのDgSから転職してきた社員が多数おりますが、多くの転職者たちはB&Dドラッグストア(以下B&D)の従業員とお客さまの関係を見て驚きます。たとえば、店長の出勤スケジュールを把握しているお客さま、旅行に行ったらお土産を買って届けてくださるお客さまなどがいらっしゃいます。商品とは関係のない何気ない会話の時間を持つ、店長の異動も抑えてなるべく長い期間ひとつの店で働いてもらう。お客さまのご要望は可能な限り取り入れることなどが、このような緊密な関係づくりには重要だとおもいます。

私たちはお客さまから品揃えしてほしいというご要望があった商品は、そのときだけの取り寄せで終わるのではなく、定番化しようという考えをずっと持ってきました。たとえ、それがDgSらしい商品でない場合もです。一人のお客さまの声が地域を代表しているケースは少なくありません。

また、パート従業員の方は女性が多いので、家事や子育てを最大限応援することで長く働ける環境をつくることにも注力しています。子供さんの急な発熱や学校行事などでお休みを取らなければいけなくなったときは絶対にイヤな顔をせず、快く了承するようにと前社長のときから店舗には厳命してきました。こうした取組みを地道に続けていくことで本当の意味での地域密着型の店をつくっています。

食品の売上構成比約40% 早い時期から小商圏対応の店舗に

──部門別のざっくりとした売上構成比、標準店の売場面積など教えていただけますか。

上條 申し上げたように、店ごと、地域ごとで売場面積、売り方も違うので一概にはいえないのですが、平均すると食品が40%近く、化粧品、医薬品、日用雑貨は各20%といったところです。DgSの小商圏化を感じて食品に力を入れ始めたのも早かったですし、雑貨に特色を持たせることにも昔から注力しています。B&Dは創業者の意向や競合との差別化を図る意味でも「バラエティストア」のようなDgSを志向していましたし、現在もその路線は継続しており、食品、雑貨の品揃えを工夫することで、バラエティストア色を発揮しやすくなります。

当社の店舗はドン・キホーテのような感じがするとたまにいわれることがあります。面白い商品があるという意味では褒め言葉ですが、老若男女にさまざまな商品が選びやすいという意味ではまだまだ改善すべき点が多いとおもっています。そして、今後のB&Dにとってもっとも重視している視点は「優しさ」なんです。ちょっとした気づかいが売場に反映されてこそリアル店舗の意味はあるのだと考えています。

売場面積は昨年の全店平均で197坪。よい物件があれば300坪の店も出しますし、まだ挑戦していませんが400坪、500坪といった大型店にも挑戦していきたいです。地域に合った個性のある店をつくれる自信はあります。ただ、150坪型には150坪型のよさがあると個人的には考えています。

──調剤薬局に関してはいかがでしょう。

上條 現在、DgS併設、単独店合わせて調剤薬局を21店舗運営しています。これまで立地のいい場所にクリニックを誘致して医療モールをつくることを得意にしていました。ツルハグループに入ってノウハウを共有できることもあり、今後はDgS併設型をどんどん進めていきます。売上も大変順調です。

カウンセリング販売の基本は商品を好きになり理解すること

──今後の成長戦略でもっとも重視することは何でしょうか。

上條 接客、カウンセリングの強化を進めています。HBCは当然ですが…

続きは月刊マーチャンダイジング2021年4月号で!

食品構成比50% 顧客満足重視の繁盛店「B&D 長久手東浦店レポート」

2020年12月号に掲載した「顧客満足度調査2020」の店舗部門にて、500店舗中5位にランクインした「B&D 長久手東浦店」をリポートする。B&Dは、平均197坪の店舗に常時売場スタッフを多数配置し、お客が質問できる態勢を整えている。顧客満足向上に徹底的にこだわることで、地域シェアを高める経営方針である。

同店は、食品・雑貨の品揃えを工夫することでバラエティ色を演出している。他店と差別化できる品揃えにするため、ツルハグループ専売品を強化して「目的来店性」をつくっている。手の込んだPOPは読み応えがあり、担当者の創意工夫にあふれた楽しい売場である。

加藤 淳一店長

入り口外にB&Dの売れ筋である「紙製品」「スリッパ」を陳列。地域客のニーズに応える
大迫力のお菓子のプロモーション
ドラゴンボールの「フリーザ」が「フリーザーバッグ」を推奨
買上点数の多いカップ麺プロモ

[DATA]
店舗名/B&D 長久手東浦店
所在地/愛知県長久手市東浦1009
店舗面積/250坪
平均月販/約4,000万円
食品(酒込み)/構成比 約50%

続きは月刊マーチャンダイジング2021年4月号で!