今週の視点

POPはサイレントセールスマン

第99回店頭の「手書きPOP」はリアル店舗の価値を高める

Withコロナの時代は「非接触」の接客が求められるようになり、店頭でのPOP広告の価値が今まで以上に高くなります。POPによる非接触の接客によって、商品の「売れ方」が大きく変わるからです。

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買物客がリアル店舗に求める4つのニーズ

買物客がリアル店舗に求めるニーズは以下の4つです。

リアル店舗の4つのニーズ
(1)コンビニエンス・ニーズ
→近くて便利
(2)ディスカウント・ニーズ
→安い、ポイント販促
(3)スペシャルティ・ニーズ
→親切な接客、深い品揃え、専門的なカウンセリング
(4)エンターテインメント・ニーズ
→楽しい、ワクワクする、新しい発見

もっとも強いニーズはコンビニエンス・ニーズです。Amazonでなんでも買える時代において「近くて便利」がリアル店舗の最大の価値です。もちろん「ディスカウント・ニーズ」(安さ)も、「スペシャルティ・ニーズ」(接客・深い品揃え)も重要です。

これからのリアル店舗は、とても安いけれど、遠くに立地しているので不便、しかも不愛想な接客という「単一価値」の店は、選ばれる店にはなりません。これからのリアル店舗は、近くて便利で、安くて、親切な店という、すべての価値をレベルアップしなければ競合優位に立つことができません。

さらに、Amazonとの競争が激化する中で、リアル店舗の価値を高めるためには「エンターテインメント・ニーズ」が4番目のニーズとして重要視されるようになりました。リテール(小売業)とエンターテインメントを掛け合わせた「リテールテインメント」という造語で表現されることもあります。店頭でのPOP広告は、売場の楽しさ、ワクワク感、新しい発見に貢献するツールなのです。Amazonでなんでも買える時代において、ローコスト一辺倒の「自動販売機」のようなリアル店舗では、わざわざ時間とコストをかけて来店する価値がなくなります。

ドラッグストアが平成時代に大成長した理由のひとつが、「セルフ販売」と「接客販売」をミックスした売り方を採用したことです。しかも、人による接客のサポートツールとして、当初からPOP広告を重要視しました。店内に「手書きPOP」が溢れるようなドラッグストアの売り方が、新しい発見のある楽しい売場づくりにつながったのだと思います。

手書きPOPは客と社員の商品理解を深めるツール

POP広告はサイレントセールスマン(物言わぬ販売員)とも表現されます。売場の楽しさを演出するだけではなくて、商品の価値を理解させる「非接触の接客ツール」でもあります。とくに「手書きPOP」の有効性は高く、現場で働く店長や化粧品担当者に質問すると、「手書きPOPを付けると間違いなく売れる」という回答がもれなく返ってきます。

また、手書きのPOP広告は、お客の商品理解を深めると同時に、現場で働く社員・パートさんの「商品知識」の勉強にもなります。巻頭の「軽失禁・給水量の早見表」を作成した売場担当者は、POPを作成する過程で軽失禁の商品知識を勉強し、深く理解できたと思います。つまり、手書きPOPの作成過程そのものが、商品知識の勉強に最適のツールなのです。当たり前の話ですが、本部から支給されたPOPを貼る作業だけを繰り返しても、その商品やカテゴリーに関する商品知識は身に付きません。

もちろんすべての商品に手書きPOPを付けることはコスト的にも不可能ですが、わが店の重点商品や推奨品に関しては「手書きPOP」を推奨しているドラッグストアも多いようです。いずれにしても、手書きPOP以外のPOP広告も、サイレントセールスマンとしての価値がありますので、以下の5つの種類に整理して、店頭POPを管理すべきだと思います。

POP広告の種類
(1)手書きPOP(売場担当者が主に作成)
(2)エリアでの共有POP(エリアのPOP名人が作成した手書きPOPを印刷)
(3)本部から提供されたPOP広告(できれば手書きPOPを印刷したものが良い)
(4)メーカー提供のPOP広告(その小売業の専用POPがベスト)
(5)商品名と価格を表示した基本POP

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。