身近な「しょうゆ」も1カテゴリに特化した売り方で「特別な逸品」に変わる

今回、「新しい売り方」調査隊!で取り上げるのは、日本の伝統調味料である「しょうゆ」の専門ECサイト「醤油職人」です。しょうゆ「だけ」で消費者のこだわりを刺激する「魅せる」売り方を試してみました。(ライター:宮原智子)

商品の「見せ方」でユーザーのこだわりを刺激する「醤油職人」

日本の伝統調味料であるしょうゆ。わたしたちの生活にあまりにも身近なしょうゆですが、見せ方ひとつで「いつもの」が「特別」に変わります。

今回「新しい売り方」調査隊!で取り上げるのは、ユーザーのこだわりを刺激する、しょうゆの専門ECサイト「醤油職人」です。

「しょうゆ」が分かる、「しょうゆ」が選べる、ユーザー視点のサイトづくり

「醤油職人」は、しょうゆのセレクトショップ。全国各地の醤油蔵を実際に訪問し、現地で選んだしょうゆをセレクトしています。とにかくしょうゆにこだわって、醤油蔵の訪問記事や、しょうゆを使った料理レシピ、しょうゆの知識を余すところなく伝えるこのサイトは、もはやECサイトというよりも、しょうゆブログのような趣き。初めてしょうゆの奥深き門を叩いた初心者でも、安心して選べるユーザー視点のサイトづくりが印象的です。

すべて100mlだから食べ比べに便利

1.「お買いもの」から、「料理帖」から、「蔵一覧」から、しょうゆを探します。

「お買いもの」「蔵一覧」「料理帖」「知識」など、充実したしょうゆのコンテンツ。

2.「料理帖」や「蔵一覧」でしょうゆを選ぶと、「お買いもの」に直接リンク。

料理レシピを見て、使ってみたい醤油をクリックするとお買いものページへ。

3.「お買いもの」ページでは、醤油の濃淡などからも選ぶことができます。

お買いものページでは、醤油の濃淡を色で表示。

4.気に入った商品をカートに入れて、お支払い手続きをします。

ギフトサービスを選ぶことができるので、ちょっとした贈り物にも。

今回、「料理帖」にあった「ステーキと醤油」というページに触発されて、自宅でも試してみることに。サイトに掲載されていた7つの中から、淡口・木桶仕込み・濃厚の3つを選んでみました。ステーキにつけて食べてみると、それぞれ味わいが異なっておもしろい!このしょうゆはこんな料理に合いそうだな、というヒントも浮かびます。

しょうゆの味比べや料理レシピなど、試してみたくなる記事がいっぱい。

今回のお買いものは、送料を含む合計2,229円。1本あたり平均すると500円ほどです。ボトルのサイズは100mlと小量なので食べ比べするにはぴったり。この価格帯なら、ちょっとしたギフトにしても喜ばれそうです。商品には「職人醤油」という醤油カタログも同封されてくるので、次なるしょうゆを吟味するのも楽しみ。

シェアしたくなる「おもしろい!」がある

「やってみたい」という動線につながるサイトづくり。

「醤油職人」のトップページには、ECサイトへのリンク「お買いもの」のほかに、「蔵一覧」「料理帖」「知識」など、しょうゆに関するレシピや知識、つくり手の情報などを閲覧することができます。その充実ぶりにはびっくり。料理のレシピ、しょうゆの知識など、読み進めるうちに「このしょうゆを使ってみたい」「これは誰かに教えたい!」など、誰かにシェアしたくなる情報が満載です。スーパーで買ういつものしょうゆから、ちょっとこだわったしょうゆへ変えてみようかな?というきっかけづくりに十分です。

まとめ

近年、「モノよりもコト消費へ」という言葉をよく目にしますが、ある商品の個性や多様性の中から、自分のこだわりを満たしてくれるものを選ぶという消費行動は、これから長らく小売業のキーになっていくのではないでしょうか。そうした時代にこそ、「醤油職人」のような、商品を手にすることで得られる価値を訴求する売り方は、生き残るヒントとなると感じた売り方調査隊でした。

カスタマーファーストを目指さない小売業に未来はない

小売業に一家言あるコンサルタント・実務家の方々に、2018年を振り返りつつ、2019年の展望を語っていただく特集企画「小売業界2019年業界展望」。第2回目はデジタルシフトウェーブ社長の鈴木康弘さんにお話を伺います。セブン&アイホールディングスの取締役執行役員CIOとして、同社のデジタルシフトに関ってきた鈴木さん。2018年はシアーズの破綻のニュースにGMSの未来を感じたと言います。(聞き手:MD NEXT編集長 鹿野恵子)

お客様の変化に合わせて組織、人材も変化すべき

――鈴木さんといえば、セブン&アイホールディングスでオムニチャネル戦略の指揮を執られていたことが知られています。その後、独立して会社を興されたそうですね。

鈴木:はい。2017年にデジタルシフトを支援する会社「デジタルシフトウェーブ」を創業しました。

現在さまざまな経営者の方とお会いしているのですが、デジタルシフトとは一体何なのか、自分の会社で推進してどのようなメリットがあるのか、そもそも社内に推進する人材がいないということが彼らの共通した悩みです。

一方、システム責任者やマーケティング責任者の方からは、システムが複雑化しすぎているとか、新技術と既存技術の併存についてどのように考えればいいのか、経営層がデジタルシフトについて理解してくれないという悩みなどを伺っています。

ーーデジタルシフトというのは具体的にどのようなことなのでしょうか。

鈴木:たとえば、ECであれば夜中でも買い物ができますし、地球の裏側の商品も買うことができます。棚の制約はなく、無限に商品を紹介することができますし、常にネットでつながっているので双方向のコミュニケーションも取ることができます。しかし20年前にはそんなことは決して考えることもできませんでした。つまり、デジタルシフトとは、アナログ時代にできなかった制約から人々を解放することなのです。

さらに、スマートフォンが登場したため、お客さまが入手できる情報量が膨大に増えています。

お客様が変わってきているのですから、求められる企業、組織、人材も変化が必要です。これも含めてデジタルシフトなのです。

ーーデジタルシフトの観点も交え、2019年の展望をうかがいたく思います。

鈴木:リーマンショック以降、欧米でカスタマーファーストという考え方が広まりました。カスタマーファーストとは、すべての社員が顧客第一の視点を持って業務に取り組むことを言いますが、Amazonが最たる例で、ITを活用してカスタマーファーストを実現していこうと彼らは考えています。

ビジネスの主戦場は完全にリアルからバーチャルに変化しました。デパート、スーパー、コンビニエンスストア、ショッピングモールなどの小売業が皆ネットショッピングをはじめています。そして、自分のお店にあるものを一生懸命ネットで売るようになりました。

そうこうしているうちに、Amazonは2億SKUまで商品数を増やしたわけです。圧倒的な物流を構築した上で、彼らは次に、この素晴らしいネットでの買物体験を、スマートスピーカー経由でできるようにしたり、ホールフーズを買収して店舗でネットショッピングの体験をさせようとしたり、Amazon Goをつくってしまおうという戦略に出たわけです。

カスタマーファーストだとか、デジタルシフトを目指さない小売業の先行きは暗いように思います。

今、唯一Amazonと戦っているのがウォルマートです。僕が社会に出た80年代、当時アメリカの小売業界を席巻していたシアーズは、2018年に破綻してしまいました。

シアーズの破綻に感じるGMSの未来

ーーシアーズの破綻は2018年の大きなトピックでしたね。

鈴木:ショックでしたね。60年代、70年代に日本の小売業がこぞってシアーズの真似をしましたが、そこにGMSの未来があると思うと、言葉を失ってしまいます。

ですが、ウォルマートはjet.comを買収してからの動きは素晴らしいですし、教育に投資し、人材の入れ替えも進めています。

一方、アメリカではトレーダージョーズのように、地域にあった商品を、お店の人がお客さまと対話をしながら決めているような小売業が成功しています。とはいえ、トレーダージョーズで店長さんにお話を伺ってみたら、ECをやらないとまずいということでみんな焦っていました。

——トレーダージョーズがECについて考えているというのは意外ですね。

鈴木:意外ですよね。それほどAmazonの影響が怖いわけです。ウォルマートがjet.comを買収し、Amazonがホールフーズを買収しました。結局、(ECと実店舗と)どちらか片方だけではだめなんだということを、2強が証明したのです。

2019年は、日本の小売企業もデジタルシフトに真剣に取り組む必要性に気づく年になるのではないかなと感じています。

後編に続きます。

商品にストーリーを与えるオウンドメディアが強み「北欧、暮らしの道具店」

今回、「新しい売り方」調査隊!で取り上げるのは、暮らしの中で道具として使われてこそ輝く家具・雑貨を販売するECサイト「北欧、暮らしの道具店」。ECサイトながらメディアとしての存在感を持ち、商品の魅力を引き出す「売り方」を体験しました。(ライター:宮原智子)

暮らしを豊かにする日用品や雑貨のECサイト「北欧、暮らしの道具店」

A店とB店で同じ商品を扱っているのに、A店ではまったく売れず、B店では飛ぶように売れていく。
A店とB店では、何が違うのでしょうか。
それは、商品の魅力を引き出す見せ方にあります。

今回「新しい売り方」調査隊!で取り上げるのは、北欧のアイテムを中心として、暮らしを豊かにする日用品や雑貨を販売するECサイト「北欧、暮らしの道具店」です。

オウンドメディアの先駆け的存在 情報の見せ方にひと工夫

北欧を中心とした世界の国々のアイテムを販売するECサイト「北欧、暮らしの道具店」は、2007年創業後、現在のオウンドメディアの先駆的存在としてコンテンツ・マーケティングを展開してきました。

サイトの印象は、もはやECサイトというよりも、商品の魅力を発信するメディア媒体のよう。記事のつくりかたも、「購入ありき」ではなく、商品の使い方や、暮らしをどんなふうに豊かにしているかを中心に構成されていて、読み物としても楽しめるのが特徴です。

「北欧、暮らしの道具店」を使ってみた

1.トップページはシンプルでナチュラルな雰囲気。商品は右サイドにカテゴリ分けされています。

ライフスタイル情報サイトのような、デザイン性の高いサイト。

2.お気に入りの商品ページへ進むと、スタッフが実際に商品を使った感想や使用例などが読み物として掲載されています。

文章も画像も凝っていて、商品のある生活がイメージしやすい。

3.購入は、通常のECサイトと同じように「カートに入れる」から。

シンプルな購入ボタン。「購入」よりも「商品」を見てもらうことに重点をおいている。

4.支払い情報等を入力し、購入を決定します。

画面の表示に従って購入手続きをします。

「その商品がある生活」をイメージできる

今回、「北欧、暮らしの道具店」で購入したのは、野田琺瑯の持ち手付きストッカー。持ち手がついて、鍋代わりに直火にかけられる、調理したものにフタをしてそのまま冷蔵庫にしまえる、そしてまた取り出して、直火で温められる、という使用例を掲載した記事がきっかけでした。

読んでいるうちに、これが我が家にあったら…と想像して、ついポチッ。

価格は2,646円(税込)と、店頭やほかECサイトでの金額と変わりませんが、ついつい「欲しい!」と飛びついてしまったのは、記事を読んでその商品がある生活をはっきりとイメージできたからに他なりません。

まとめ

商品をただ陳列したり、画像をサイトに掲載したりするだけでは、消費者に商品の魅力は伝わりません。その商品が生活の中にあったらどんな暮らしになるだろうと想像して、イメージが湧いて、ワクワクする。「北欧、暮らしの道具店」は、商品にストーリーを与えて付加価値をつける売り方を実践し、多くのファンをつかんでいます。

Amazon Goによって小売業の「常識」がひっくりかえった2018年

小売業に一家言あるコンサルタント・実務家の方々に、2018年を振り返り、2019年の展望を語っていただく特集企画「小売業界2019年業界展望」。第1回目は店舗のICT活用研究所の郡司昇さん。大手ドラッグストアでマーケティングとECの責任者を務めたのち、現在はコンサルタントとして企業の外部からマーケティングやEC事業、経営戦略などに関するアドバイスを提供していらっしゃいます。(聞き手:MD NEXT編集長 鹿野恵子)

Amazon Goでは商品を購入する際に値段を見なくなった

――2018年の小売業界を振り返って、郡司さんにとって興味深かったことをお聞かせください。

郡司:やはりAmazon Goの衝撃は大きかったと思います。

Amazon Goは2018年1月に一般公開されましたが、あれを抜きにしては2018年の小売業は語れません。Amazon Goに実際に訪れてみて感じたのが、「レジは接客の要という小売業の常識」は嘘だったということでした。

――概念が変わるほどの体験だったんですね。

郡司:変わりましたね。そもそも店舗小売業で一番多いクレームはレジでの接客なんです。商品を袋にどう入れるかとか、挨拶だとか。つまり我々は、レジでは決して良い顧客体験を提供できていないということなのだと思います。

ーーでは、店舗小売業は顧客体験をどこで提供しているのでしょう?

郡司:先日、たまたまあるお店をのぞいた時のことです。店員さんから商品の説明を受けてるうちに、それがつい欲しくなって買ってしまったんですね。つまり、顧客体験が起きているのはレジではなくて「売場」なのだと感じました。

ではAmazon Goのようにレジがない店ではどうなるかというと、最初はやはりレジが無いので違和感があります。それが2回目はだいぶ薄らいで、3回目ぐらいからはすいすい買い物できるようになるんです。

私はシアトル滞在中、Amazon Goで11回買物をしたのですが、回数を繰り返すごとに何が起きたかというと、商品を購入する際に値段を見なくなりました。これは驚異的なことで、値段によって買う・買わないを決めるという概念がなくなるということは、純粋に商品を選ぶことに集中できるということです。

Amazon Goでは買物して店舗から出た後にアプリにレシートが届くのですが、ほぼ100%の精度で精算されていました。それだけ正確に精算がされるとどうなるかというと、今度はレシートも見なくなります。「このサンドイッチを何円で買おう」と店舗で吟味するのではなくて、あたかも自宅の冷蔵庫にあるサンドイッチを「今日はこれでも食べるか」という、そんな感覚になるんですよ。

――日本でも、トライアルさんがタブレットカートを導入してお客様が商品を購入しやすくしたりしていますね。

郡司:トライアルさんの取り組みは、Amazon Goとはまったく違います。

トライアルさんはまさに「値段」に着目しているんですよ。タブレットカートのいいところは何かというと、カートを使うところです。カートを使うと自然と客単価が上がります。もう1つは、カートについているタブレットで商品をスキャンすると、関連商品やポイント○倍商品が表示される。ここでアップセル(より高いものを買ってもらうこと) になるレコメンドやクーポンを表示する可能性があります。クーポンがきっかけになってブランドスイッチが起きれば、メーカーさんが喜びます。メーカーさんの販促費も期待できるようになるでしょう。

一方、効果が出にくい買物体験と考えるのが、ローソンさん等でテストが行われているスマートフォンでお客様自身がスキャンしてお支払いをする方法です。

そもそもコンビニの平均買上点数は2.5点といわれていますが、スマートフォンで商品をスキャンするということは、必然的に片手が埋まってしまいますよね。ですので、あの方法では平均買上点数が減って、売上も下がるのではないかと思います。

Amazon Goに話を戻すと、お客様が価格を意識しなくなるので、商品を選ぶことだけに集中できるようになりますし、店側も純粋に商品の魅力だけを伝えればいいことになります。

Amazon Goの売場の店員に、商品について質問すると、とてもにこやかに答えてくれます。レジにお客様が並ぶと、店舗従業員にとっては大きなストレスになるのですが、それがなくて、品出しと品質管理、そして接客に集中すればいい。とても楽しそうに働いています。

DgSの好調・不調を分けた「食品」と「調剤」

――Amazon Go以外では何か気になる動きはありましたか?

郡司:そうですね。2018年は業界・業態の垣根がなくなっていくのを強く感じた1年でした。典型的なのが無印良品さんの堺北花田店です。

――無印良品とスーパーマーケットが一体となった店舗ですね。

郡司:はい。これだけ本格的にスーパーと無印良品が一体となった店が出てきたことは驚きました。スーパー売場の運営は外部に委託していますが、業態とは何かを考えるうえで、この動きは大きいですね。

ドラッグストア(DgS)は、インバウンドは堅調だし、食品も強化していて、基本的には好調です。しかし、食品に関しては強いところと弱いところで勝敗が出てきていますね。

――食品が強いDgSといえば、コスモス薬品さんの堅調ぶりが目立ちます。

郡司:そうですね。コスモス薬品さんやアオキさんのような食品強化型のDgSは順調に伸びています。食品スーパーは、商圏が狭くなってきていますが、そこに食品を強化したDgSが出店してくると、食品スーパーにとっては脅威でしかありません。

食品スーパー側ではグローサラント(※)のような動きが出てきています。知り合いに聴いた話ですが、フランスのプランタンという百貨店では、食品売場が一番眺めのいい最上階にあるということです。これを聞くと、食品売場は地下というような常識にとらわれる必要はないのだと思いますね。

※グローサラント:グロサリーとレストランを合わせた言葉。食品スーパーマーケットで売られている食材を調理し、店内のイートインスペースで食べる飲食業態のこと。

それから、興味深いのはホームセンターです。ホームセンターは長らく停滞している業態ですが、PBを強化したりモノ消費からコト消費へシフトする流れが生まれつつあります。カインズさんがDIY FACTORYさんと提携しているような動きは、その一端なのかなと感じますね。

保険(調剤)薬局ですが、これからはじまる遠隔調剤の動きに乗れないところは厳しいと思います今年の調剤報酬改定は業績に与えた影響が非常に大きかった。例えばアイン薬局、クオール薬局では、売上は前年とあまり変わらないのですが、営業利益ベースで3割ほど落ちています。日本調剤は調剤事業だけで43%営業利益が落ちています。

当然個人薬局も苦しくなりますので、それを買収しましょうという話になりますが、買う側も厳しいという状況です。なかなか今調剤は厳しいです。

DgSで不調な企業の原因は、調剤比率の高いところがこのあおりを受けています。ですから、調剤比率が高いココカラファインやスギ薬局は痛いと思いますよ。このように、DgSは全体的には好調ですが、調剤部門にとっては厳しい1年でした。

後編に続きます。

「タンスの肥やし」問題を解決。試着できるEC、「Amazon プライム・ワードローブ」

今回、「新しい売り方」調査隊!で取り上げるのは、インターネット通販の雄Amazonが提供する、今話題沸騰中の「prime wardrobe(プライム・ワードローブ)」です。まとめて試着、気に入ったらお支払い。つまり、お取り寄せして試着して、気に入ったものだけ購入できる、新しいカタチのインターネットショッピングです。(ライター:宮原智子)

アパレルをネットで買うときの「タンスの肥やしリスク」とは

あちこち歩き回る必要もないし、いろんなお店を比較して最安値で商品が購入できる。インターネット通販にはメリットがいっぱいです。

一方で、アパレルをネットで購入する場合、届いたものの色味が思っていたものと違ったり、着てみたら微妙にサイズが合わなかったり、形がいまいちだったり、「タンスの肥やし」が増える危険性も多分に秘めています。

今回「新しい売り方」調査隊!で取り上げるのは、インターネット通販のそうしたデメリットを解決する、試着してから買える通販、Amazonの「prime wardrobe(プライム・ワードローブ)」です。

試着してから買える通販「prime wardrobe(プライム・ワードローブ)」

Amazonの提供する「プライム・ワードローブ」は、Amazonプライム会員なら誰でも無料で利用できるサービス。Amazonに出品されているレディース・メンズ・キッズからスポーツまでのファッションカテゴリ100,000 以上から、3つ以上8つのアイテムを選んでお取り寄せし、自宅で試着することができます。

試着して気に入ったものはそのまま支払い、そうでないものは簡単な操作で返送手続きをすることができます。あとは、配送時に梱包されてきた箱に入れてアイテムを送り返すだけ。インターネット通販で衣類やファッション小物を買いたいけど、サイズや色味、形を実際に見たいんだよね…という、懸念を解決するシステムです。

「prime wardrobe(プライム・ワードローブ)」を使ってみた

1.Amazonでprime wardrobe(プライム・ワードローブ)を開きます。

Amazonプライム会員なら無料で利用可能。

2.豊富なカテゴリから、試着したいアイテムを選びます。

100,000以上ものアイテムから試着したい商品を選ぶことができます。

3.試着アイテムは3つ以上8つまで選ぶことができます。アイテムを選んだら、発送手続きをします。到着までは1〜3日ほど。

8つまでアイテムを選ぶことができるので、サイズ違い、色違いで注文するもよし。

4.選んだアイテムが届いたら、自宅で試着します。試着可能期間は配達完了の翌日から7日以内です。

自宅で試着できるので、人目や時間を気にすることもありません。

5.試着が終わったら、Amazonの注文履歴から購入するアイテム・返送するアイテムを選びます。

購入・返品アイテムはクリック1つで簡単に選ぶことができます。

7.返送アイテムを到着時に同梱されていた箱に梱包し、返送用伝票で返送します。

返送方法・返送伝票等は商品に同梱されています。

今回は、子どもの靴を中心に試着アイテムを選びました。異なる色・サイズを4種類配送してもらい、自宅で試着。

選んだアイテムの価格は3,564円(送料無料)と店頭で購入する値段とそう差はありませんが、ショップへ出かける手間がなく、お店の混雑具合やその日のスケジュールによって、せわしなくアイテムを試着し選ばなければいけないということもないという点では大満足。

人の目を気にすることなくリラックスして試着できるのも嬉しいポイントで、家族や友だちと利用するのも楽しそうです。

サイズ違い・色違いでいろいろ試すことができて便利。

まとめ

「インターネットで商品を購入する前に、リアル店舗に足を運んで実物を調べた」「実際に手に取ることができないからという理由でインターネットでの購入を躊躇した」という経験は、誰しも身に覚えがあるのではないでしょうか。そうした漠然とした「不安」は、ECの最大の課題といえるでしょう。

Amazonが、プライムワードローブでそうした弱点解消に動いたことで、今後ECがどのようになっていくのか、ますます楽しみです。

小売業各社の決済方法をまとめてみた 2018秋(3) ~GMS・食品スーパー編〜

小売業の決済方法の状況を調査しました。最終回の今回はGMS、食品スーパーを紹介します。来店頻度、買上点数の高さは他業態を上回るこれらの業態。日常使いの買物の場だからこその決済戦略が求められています。それぞれの業態の代表的な企業は、どのような決済戦略を採用しているのでしょうか?(2018年10月末現在の状況です)

「WAON」での支払いが圧倒的!イオン


イオンでは、独自のプリペイドカード「WAON」を展開しています。

WAONは店頭にあるWAONチャージャー、イオン銀行ATM、レジなどでチャージが可能で、イオンだけでなく提携店でも利用することができ、利用ごとにWAONポイントが貯まります。貯まったWAONポイントは1ポイントごとに1円分として加算されるので、使った分を次の会計時に還元することができます。

WAONカードの所持者を対象にお客さま感謝デーとして、割引の日やポイント倍デーなどを設けており、日頃イオンを利用する人にとって付加価値の高いプリペイドカードとなっています。

イオンではほかに、クレジットカード(ポイントが貯まるイオンカードあり)、iD、交通系電子マネー、LINE Pay、QUICPayなどが利用可能です。

ヘビーユーザーには嬉しい「nanaco」イトーヨーカドー


イトーヨーカドーは、クレジットカードをはじめ、iD、楽天Edy、交通系電子マネー、LINE Pay、QUICPayなどが利用可能です。

イトーヨーカドーでは、セブン&アイホールディングスの独自プリペイドカード「nanaco」が利用可能です。買い物毎にnanacoポイントが貯まるほか、毎月8のつく日(8日、18日、28日)は、食料品・衣料品などが5%オフになるハッピーデイを開催。セブン-イレブンでも使えるので、利用範囲も広いカードです。

セブン&アイホールディングスではほかに、nanaco一体型・紐付型から選べるセブンカード(クレジットカード)も展開しています。

提携先が幅広い「ユニコ」が便利なユニー


ユニーは、クレジットカード、iD、楽天Edy、交通系電子マネー、QUICPayが利用可能なほか、オリジナルのプリペイド型電子マネー「ユニコ」を発行しています。

ユニコは店頭のチャージ機やレジでチャージできるプリペイドカードで、利用するごとにユニコポイントが貯まります。ユニコポイントは500ポイント貯まると自動的にユニコカードに500円が還元される仕組みになっています。

ユニコの特典は、ユニーグループのスーパー「アピタ」「ピアゴ」だけでなく、サークルK・サンクス、ドンキホーテなど提携先との連携もしており、魅力的な内容です。

グループ内共通でWAON ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス


ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスでは、主な事業体としてマルエツを取り上げます。
マルエツでは、クレジットカードのほか楽天Edy、交通系電子マネー、WAON、Tカードなどの利用が可能となっています。マルエツTカードは、対象商品の購入でボーナスポイントが付与されたり、貯めたTポイントに応じてお買い物券が発行されたりといったサービスを受けられます。

別事業体のカスミでは、WAON機能のついたカスミカードを発行、マックスバリュではWAONと、グループ全体を通じてWAONが利用可能です。

ライフでのみ利用可能なプリペイドカードを展開 ライフコーポレーション


ライフでは、独自のクレジットカードLC JCBカードと、電子マネー機能付きポイントカード「LaCuCa」を発行しています。

LC JCBカードは、クレジットカードポイントの他にライフのポイントが貯まるほか、毎月7のつく日にボーナスポイント付与などのサービスを受けられます。

電子マネー機能付きポイントカード「LaCuCa」は、専用チャージ機でチャージできるプリペイド型電子マネーで、お買い物毎にポイントが付与されます。なお、LaCuCaは提携先はなく、ライフでのみ利用が可能です。

そのほかには、主要国際ブランドのクレジットカードが利用できます。

グループ内で利用できるハウスクレジット機能付きカードも アークス


アークスでは、アークスグループ統一の「アークスRARAカード」を発行しています。買い物スタイルに合わせて5つのラインナップからカードの種類を選ぶことができますが、決済手段として使うことができるのはそのうち4種類です。

1つ目はプリペイド型電子マネーの「RARAプリカ」。1,000円単位でチャージして使用することが可能なカードです。

2つ目はハウスクレジットカードの「RARAクレジット」。ポイントが貯まる現金専用カードにハウスクレジット機能がついたもので、アークスグループ指定店舗内で利用することができます。

3つ目がクレジットカード機能がついたRARAカードで、QUICPayまたはiD搭載いずれかを選ぶことができます。

グループ内で利用できる電子マネーを発行 バローホールディングス


バローホールディングスでは、グループ内で利用すると特典が受けられるクレジットカードと、グループ内で利用可能な独自のプリペイドカード「Lu Vitカード」を発行しています。

バローグループクレジットカード・Lu Vitカードは、いずれもバローだけでなく、バローホームセンターやV Drag、PET FORESTなどグループ内で利用可能。ポイントが貯まったり、特定日に割引を受けることができます。

バローでは、上記のほかは主要国際ブランドのクレジットカードを利用することができます。

決済方法は限定的なヤオコー


ヤオコーでは主要国際ブランドのクレジットカードのみ、利用可能です。

「ヤオコーカード」という会員カードを発行していますが、これは提示することでポイントが貯まるポイントカードで、プリペイド機能などは付いていません。

また、スマートフォン向けの「ヤオコーアプリ」が用意されていますが、こちらにも電子マネー機能はなく、クーポンやポイントの確認、チラシや旬の食材・レシピの配信といった内容が主となっています。

まとめ

  • スーパーマーケットは独自プリペイドカードを持っているところが多数。
  • GMSは決済方法が豊富だが、SMはクレジットカードと独自プリペイドカードのみが目立つ。
  • GMSが発行する独自のプリペイド型電子マネーは、提携先のコンビニなどでも幅広く利用が可能な傾向。

小売業各社の決済方法をまとめてみた 2018秋(2)~ドラッグストア編~

小売業の決済方法の状況を調査しました。第2回目の今回はドラッグストアの状況についてレポート。ツルハドラッグのようにさまざまな決済手段に対応する企業がある一方、コスモスのようにクレジットカード使用不可という独自の方針を貫く企業もあり、企業ごとの姿勢の違いが見えてきます。(2018年10月末現在の状況です)

主要どころは抑えている印象のウエルシアホールディングス


ウエルシアホールディングスでは、主たる事業会社としてウエルシアを取り上げました。

ウェルシアでは、クレジットカードをはじめ、交通系電子マネー、楽天Edy、LINE Pay、WAONなど、プリペイド型電子マネーについても広く利用が可能です。

WeChatPay、AliPayといった訪日中国人旅行客向けの電子マネーも使えますし、国内の主要なプリペイド型・ポストペイ型電子マネーは取り扱っており、スムーズにキャッシュレスでの買い物をすることができそうです。

ただし、決済方法は店舗によって異なる場合があるため注意が必要です。

※追記:本記事公開時に「nanacoが使える」「WeChatPay、AliPayが使えない」という記述をしていましたが誤りでした。お詫びして訂正いたします。

多彩な決済方法から選べるツルハホールディングス


ツルハホールディングスでは、主たる事業会社としてツルハドラッグを取り上げました。

ツルハドラッグは、クレジットカードはもちろん、交通系電子マネー、楽天Edy、WAONなど国内の主要プリペイド型・ポストペイ型電子マネー、WeChatPay、AliPay、台湾SmartPayなど訪日旅行客向けの電子マネーの利用が可能です。

店舗によって異なりますが、今回調査したドラッグストアの中でも最多の決済方法の中から選ぶことができ、特に中国系電子マネーに幅広く対応している点で、他ドラッグストアに大きく差をつけている印象でした。

意外に決済方法が少ないマツモトキヨシホールディングス


マツモトキヨシホールディングスでは、主たる事業会社としてマツモトキヨシを取り上げました。

マツモトキヨシは、クレジットカード以外に、iD、楽天Edy、Apple Pay、交通系電子マネー、QUICPay、nanacoが利用可能となっています。

SNS施策では他企業より一歩先んじた印象のあったマツモトキヨシですが、決済方法の種類ではウェルシアやツルハドラッグに水をあけられている印象。インバウンド需要が高まる中で、マツモトキヨシが訪日中国人客向けのWeChatPayやAliPayの取り扱いをしていない点も意外でした。

国内系・中国系の電子マネーをバランスよくそろえるサンドラッグ


全国に店舗を展開しているサンドラッグでは、 iD、楽天Edy、交通系電子マネーやQUICPay、nanacoなど国内系の電子マネーのほか、中国系電子マネーWeChatPayの利用が可能です。

SNSでの情報発信には注力せず、店舗・ネット通販運営の充実を図っている印象のあったサンドラッグですが、店頭では主要な決済方法はひととおり備え、インバウンドでの訪日客のキャッシュレスでの買い物にも対応しています。

クレジットカードが利用不可のコスモス薬品


化粧品から食品まで、幅広いカテゴリのプライベート商品を展開するコスモス薬品ですが、各種電子マネーだけでなく、クレジットカードの取り扱いもしていません。また、百貨店商品券やQUOカードなども利用不可となっています。

しかしながら、自社で発行するコスモス商品券をはじめ、ビール券、全国共通たまご券、おこめ券、アイスクリームギフト券など、各種ギフト券の利用は可能です。

今回調査した中では、ドラッグストアの中でコスモス薬品のみがクレジットカードでの支払いも不可となっていました。

ポイントが貯まるクレジットカードを発行するスギホールディングス


スギホールディングスでは、主たる事業会社としてスギ薬局を取り上げました。

SNSやアプリを実店舗への来店を促すツールとして利用しているスギ薬局ですが、店頭ではクレジットカード、iD、楽天Edy、各種交通系電子マネー、QUICPay、WAON、nanacoが利用可能です。

主要な決済方法には対応していますが、WeChatPayや銀聯カードなど、インバウンドでの来店客への対応には注力をしていない印象です。

なお、クレジットカードは、利用するごとにスギポイントが貯まるスギグループカードを発行しています。

独自のプリペイドカードを持つココカラファインホールディングス


ココカラファインホールディングスでは、主たる事業会社としてココカラファインを取り上げました。

ココカラファインでは、独自のプリペイドカード「ココカラクラブカード」を発行しています。レジでチャージして使えるココカラクラブカードは、国内外のVisa加盟店でもプリペイド機能が使え、利用するごとにココカラポイントが貯まるカードです。

ココカラクラブカードのほかには、クレジットカードと銀聯カードのみが利用可能で、その他の電子マネーは取り扱っていないようです。

クレジットカードのみ使用可能なカワチ薬品


東北・関東・中部地方でメガドラッグストアを展開するカワチ薬品では、決済方法はクレジットカードのみで、いずれのプリペイド型・ポストペイ型電子マネーも利用不可となっています。

SNS施策調査時には自己発信には消極的で、実店舗での販売に注力している印象のあったカワチ薬品ですが、多彩な種類の決済方法は取り扱いしていないようです。

ポイントが貯まるクレジットカードを発行 クリエイトSD ホールディングス


クリエイトSD ホールディングスでは、主たる事業会社としてクリエイトSDを取り上げました。

クリエイトSDでは、クレジットカード、iD、楽天Edy、交通系電子マネーのみが利用可能で、取り扱っている電子マネーの種類が豊富とはいえませんが、独自のクレジットカードを発行しています。

クリエイトSDが発行する「クリエイトエス・ディークレジットカード」は、クレジットカードポイントとは別に、クリエイトエスディーポイントが貯まる点が特徴です。

通販では後払いが選べるクスリのアオキホールディングス


クスリのアオキホールディングスでは、主たる事業会社としてクスリのアオキを取り上げました。

クスリのアオキでは、クレジットカードのほか、iD、楽天Edy、交通系電子マネー、WAONが利用可能です。プリペイド型電子マネーはレジではチャージできませんが、WAONのみ、WAON銀行ATM設定店でチャージが可能です。

ポイントが貯まるアオキメンバーズカードを発行していますが、これにはクレジット機能やプリペイド機能はついていません。なお、ネット通販ではGMO後払いサービスを導入し、商品の発送後の払い込みを選べるようになっています。

北海道民でなくとも欲しくなる「EZOCA」 サツドラホールディングス


サツドラホールディングスでは、主たる事業会社としてサッポロドラッグストアーを取り上げました。

サッポロドラッグストアーは、クレジットカード、iD、楽天Edy等国内のプリペイド型・ポストペイ型電子マネー、中国系のWeChatPayのほか、独自のプリペイド型電子マネー「EZOマネー」を利用することができます。

EZOマネーは、サツドラHDのグループ会社「リージョナルマーケティング」が手がけるポイントカード「EZOCA」にチャージして利用することができ、サッポロドラッグストアーだけでなく北海道内の100店舗以上の提携店で支払いが可能です。キャッチーなデザインで、北海道民でなくとも欲しくなるカードです。

店舗へ足を運ぶうまい仕組みを構築 薬王堂


薬王堂は、クレジットカード、iD、楽天Edyのほか、独自のプリペイド・ポイントカード「WA!CA」(ワイカ)を発行しています。

ポイントカード機能もあるWA!CAは、チャージ額に応じてボーナスポイントが加算されるシステムで、利用額によってポイント付与の倍率が上がります。

また、60歳以上限定で「WA!CAおでかけカード」を発行。1日1回の買い物ごとに3ポイントをボーナスポイントとして付与しています。薬王堂の公式アプリの万歩計機能とともに、店舗へ足を運ぶ仕組みをうまく構築していると感じます。

ゲンキー


ゲンキーは、クレジットカードの利用が可能です。

「ゲンキーカード」というカードを発行していますが、こちらは買い物に応じて付与されるゲンキーポイントを貯めるもので、プリペイド機能などは付いていません。公式HPにもオリジナルのクレジットカードやプリペイドカード等の案内はなく、チラシ上でゲンキーカード、ポイントシステムについて言及されているのみと、大々的に発信はしないようです。

まとめ

  • ドラッグストアはほとんどが独自のプリペイドカードを発行していない。
  • 交通系電子マネー、LINE Pay、QUICPay、WAONが強い印象。

小売業各社の決済方法をまとめてみた 2018秋(1) ~コンビニ・100円ショップ・ディスカウントストア編~

小売業の決済方法の状況を調査しました。第1回目の今回はコンビニエンスストア、ディスカウントストア、100円ショップを紹介します。日々の買物の便利性を追求するコンビニ、客単価が低く、カードの決済手数料が重くのしかかる100円ショップ、それぞれの業態の代表的な企業は、どのような決済戦略を採用しているのでしょうか?(2018年10月末現在の状況です)

nanacoの存在感大 セブン-イレブン


セブン-イレブンでは、独自プリペイド「nanaco」を利用することができます。 nanacoには、カードタイプとモバイルアプリタイプが存在し、モバイルアプリタイプではアプリ上でポイントから電子マネーへの交換が可能と便利です。

店頭では、nanaco会員限定でボーナスポイントやプレゼントなどのキャンペーンを展開しており、普段からセブン-イレブンを利用する人には大きなメリットがあります。

セブン-イレブンでは、nanaco以外にはクレジットカード、iD、楽天Edy、交通系電子マネーなど、主要な決済方法が利用可能です。

多様な電子マネーの利用が可能なファミリーマート


各種クレジットカードのほか、iD、楽天Edy、Apple Pay、交通系電子マネー、QUICPay、WAONが利用可能なファミリーマートでは、ほかにユニーのオリジナルプリペイドカード「ユニコ」、Tポイントのプリペイドカード「Tマネー」を取り扱っています。

Tマネーは、手持ちのファミマTカード・Tカードにチャージして利用する電子マネーで、クレジットカード機能のついたファミマTカードはWebからもチャージすることができます。Tマネーの月間利用金額に応じて、Tポイントがさらにプラスで付与されます。

決済方法が多彩でオリジナルプリペイドカードも強いローソン


ローソンは、今回調査した中で最多種類の決済方法が利用可能でした(公式HP掲載情報として)。Origami Pay、楽天Payなど、コンビニ他社であまり取り扱いのない決済方法も取り入れ、幅広くキャッシュレスでの買い物を実現しています。

ローソンでは、従来のポイントカード「Ponta」にプリペイド機能がついた「おさいふPonta」という独自のプリペイドカードを発行しており、会員限定でポイントボーナスや商品プレゼントなど特典を提供。

決済方法の多彩さでの集客だけでなく、Pontaカードを持つことによって店舗へのリピートを促しています。

アプリをインストールすればカードレスで決済もできるセイコーマート


クレジットカード、iD、楽天カード、交通系電子マネー、WAONと、大手コンビニ3社に比べ、利用できる決済方法は限定的な印象のセイコーマートですが、独自のプリペイドカードの発行を開始しています。

セイコーマートのオリジナルプリペイドカード「Pacomaカード」は、これまでポイントを貯めたり提携店での割引に利用することができたセイコーマートクラブカードにプリペイド機能がついたものです。アプリをインストールすれば、カードレスでスマートフォンでの決済も可能です。

ダイソー


ダイソーは、クレジットカードのほか、iD、楽天Edy、交通系電子マネー、QUICPay、WAON、銀聯カードの利用が可能です。ただし、店舗の出店形態によって、利用できる決済方法が異なります。

ダイソーでは500個以上の大量発注をWebにて受け付け、自宅まで送料無料で届けるサービスを行っていますが、こちらのお支払い方法は銀行振込のみとなっています。

オリジナルのプリペイドカードの発行はありませんが、主要な決済方法を抑え、キャッシュレスでの買い物を実現しています。

出店形態によって決済方法が異なるセリア


セリアでは、利用可能なクレジットカードほか電子マネーは店舗ごとに異なります。

大型商業施設内に出店する店舗は、大型商業施設が発行する独自のプリペイドカード(イオンのWAONやユニーのユニコなど)が利用可能など、決済方法は出店形態に依存します。セリア自体でのオリジナルプリペイドカードなどの発行はしていません。

なお、店舗で300個以上の大量注文をする場合は、銀行振込での支払いとなります。

セリアと同じく、決済方法は出店形態によるキャンドゥ


SNS施策では、他100円ショップでも抜きんでて情報発信を積極的に行っていたキャンドゥですが、セリア同様、利用可能なクレジットカードほか電子マネーは店舗ごとに異なります。また、独自のプリペイドカードの発行もしていません。

なお、キャンドゥではネット通販での大量発注を受け付けています。こちらでは、クレジットカード銀行振込・GMO後払いサービスを利用することができます。

強力な独自プリペイドカードを持つドン・キホーテ


ドン・キホーテでは、独自のプリペイドカード「maj!ca」を発行しています。maj!caは、チャージの際に1%がポイントを付与、1,001円以上のお買い物時に1円単位を最大9円まで切り捨てする円満快計、電化製品やブランド品を割り引き価格で提供などの特典が受けられます。

ドン・キホーテグループでの買い物が非常にお得になるカードで、会員入会の促進・グループ店舗への来店を促す強力なツールとなっている印象です。

そのほかにドン・キホーテでは、クレジットカード、iD、楽天Edy、交通系電子マネー、QUICPayが利用可能です。

まとめ

  • コンビニは決済方法の種類が豊富。
  • 100円ショップの決済方法は、路面店・大型商業施設内店舗など出店形態で異なる。
  • コンビニ・DSは独自プリペイドカードの発行に積極的。

「ホラクラシー経営」で意志決定を組織全体に分散させ生産性を高める

続々登場する流通小売業に関する用語や新しいコンセプト。この連載では流通小売業に携わる方であれば知っておきたい新しい用語を取り上げ、解説していきます。今回は、「ホラクラシー経営」「ティール組織」など新しい組織に関する用語です。

ホラクラシー経営

2007年、アメリカの起業家ブライアン・J・ロバートソン氏によって、組織における役職をなくし、意志決定を組織全体に分散させることで生産性を高める「ホラクラシー経営」が提唱されました。背景には、意志決定のプロセスで、より迅速な経営判断と施策の実行が必要とされはじめたことがあります。

ホラクラシー経営の特徴として、マネージャーという概念がないため、人を管理することがありません。また、役職ではなく、目的を達成するための役割が与えられます。メンバー内に情報格差を生み出さないよう、どのような情報であっても常に公開します。

ホラクラシー経営では、組織や人を管理するマネージャーがいないため、マネジメントに必要な時間や労力を本来の業務に充てることができます。また、メンバーひとりひとりに、自発的に課題の発見・解決を行う主体性が芽生えます。一方で、それぞれが意思決定権を持つことで、責任の所在が不明瞭になったり、お互いの行動が管理できない、情報をオープンにしているため漏洩のリスクが高いなどの懸念点が挙げられます。

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ティール組織

フレデリック・ラルー氏が著書『Reinventing Organization』の中で提唱したティール組織とは、次の5つの段階を経て成長していきます。

第一段階の「衝動型組織(レッド組織)」は、短絡的な思考を持つ小さな組織を、トップが物理的な力で支配している状態。第二段階の「順応型組織(アンバー組織)」になると秩序が生まれ、役職や階層が定められます。第三段階の「達成型組織(オレンジ組織)」では、前段階よりも柔軟性のある組織へと進化し、目標達成に向けたイノベーションが起こります。第四段階の「多元型組織(グリーン組織)」はピラミッド型の組織構成を残しながら、意思決定プロセスにボトムアップが見られるようになります。構成員は協調性を意識するようになります。第五段階の「進化型組織(ティール組織)」はピラミッド型がなくなり、各個人が主体となって自主経営組織を構築します。

「進化型組織(ティール組織)」には、パラレル構造・個別契約の網構造・チームの入れ子構造(ホラクラシー)の3つの構造が見られ、セルフマネジメント・存在目的・全体性の3つの特徴をそなえています。ティール組織を導入している主な企業としては、アメリカのアウトドアブランド パタゴニアが有名です。

スクラム

スクラムは、もともとアジャイはル開発などにおいて用いられてきた「チームで仕事を進めるためのフレームワーク」でした。現在では技術的な部分は取り除かれ、より広い分野で活用されはじめています。アジャイル開発では、クライアントの要求や仕様変更に柔軟に応える必要がありますが、スクラムはこうした対応に向いています。

スクラムチームには、開発チームへの依頼権限と開発の中止権限を持つプロダクトオーナー、開発チームが業務に専念できるようチームを守るスクラムマスター、開発を司る開発チームの3つのロールがあります。スクラムチームは、自らを管理できる状態(=自己組織化)でなければならず、同時にチーム内だけで目的を達成できるだけのスキルを備える(=機能横断的)組織である必要があります。

スクラムを導入するにあたっては、チームの現状の課題を見える化し共通認識を持つこと、チームの課題を確認すること、問題が起こった場合改善策を提示して対応することを意識して取り組むことで、より高い成果を得ることができます。

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状況に応じて価格が変わる「ダイナミックプライシング」

続々登場する流通小売業に関する用語や新しいコンセプト。この連載では流通小売業に携わる方であれば知っておきたい新しい用語を取り上げ、解説していきます。今回は、「ダイナミックプライシング」「シェアリングエコノミー」など「新しい売り方」に関わる用語です。

ダイナミックプライシング

従来、一律で据え置き型だったさまざまな商品やサービスの価格が、消費者と提供者間の需要と供給のバランスによって変動するようになってきました。これをダイナミックプライシング(Dynamic Pricing)といいます。夏休みや年末年始になると、ホテル代や航空券が普段よりも高くなるのはダイナミックプライシングの代表的な例です。

これまでダイナミックプライシングは、販売実績や在庫など、主に自社で得られる情報を用いて算定してきましたが、AI(人工知能技術)の進歩に伴い、天候データなど社外のさまざまなビッグデータを活用し、複雑な条件下においても素早く精度の高い結果を返すことが可能となりました。ECサイトの取引では、その瞬間のアクセス数や購入数に応じて、リアルタイムに価格変動させることも可能です。

近年、日本ではプロ野球の観戦チケットにダイナミックプライシングを導入する動きがあります。首位攻防戦や人気選手の引退試合など、需要が高い試合は価格が上がり、逆にストーブリーグは価格を下げることで空席を埋めることができるという仕組みです。

シェアリングエコノミー

シェアリングエコノミーは、直訳すると「経済の共有」という意味で、ヒトやモノ、コトなどを、複数の人と交換したり共有したりする仕組みのことをいいます。従来のように欲しいものを購入するのではなく、他人と共有し、必要なときだけ利用するという考え方が根底にあります。

シェアリングエコノミーの先駆け的存在が、Airbnbです。インターネットを介し、個人の持ち家の一部や全部を他人に貸し出すサービスとして急成長を遂げました。インバウンド需要で宿泊施設不足が懸念される日本でも、規制緩和により「民泊」という形態が生まれ、注目を集めています。ほかにも、自家用車をシェアするシェアライドや、家事・育児代行からPC・英会話等のプライベートレッスンなど、個人のスキルをシェアするサイトなど、さまざまなシェアサービスが登場しています。

日本でシェアリングエコノミーを活発化するための課題としては、現行法の改正や各種民間団体との調整、また、主にインターネットを介して取引が行われるため、顔の見えない個人対個人のやり取りに対する信頼性の担保などが挙げられます。

インバウンド

インバウンド=Inboundは、「外から中へ入る、内向きの」という意味を持ちます。近年、海外から観光のために来日する外国人が急増していますが、観光分野において、外国人が日本を訪れる旅行のことをインバウンドといいます。なお、インバウンドに対し、日本人が海外旅行へ出かける場合は、インバウンドに対して「アウトバウンド(Outbound)」といいます。

日本は2008年に観光庁を設置。観光立国を国の施策として掲げ、ビザ取得要件の緩和や免税措置を施すと、折からの円安基調で、2103年以降、日本を訪れる外国人観光客数は急増しました。インバウンド需要は観光業界のみならず小売業への影響も大きく、「爆買い」という言葉が誕生するほどの勢いを見せました。

一方で、訪日外国人客の増加に伴い、宿泊施設の不足が深刻化したことから、旅館業法を緩和して「民泊」を認めるなど、インバウンドが新たなムーヴメントを引き起こしています。

観光分野で注目されがちなインバウンドという言葉ですが、マーケティング分野などさまざまなビジネスシーンでも使われます。例えば、InstagramなどSNSで自社の情報を発信し、それを見た顧客が自ら企業に接触してくることを「インバウンドマーケティング」をいいます。

独身の日

中国では、毎年11月11日は「光棍節」と呼ばれています。「節」がつくものの公式な祝日ではなく、「1」が4つ並んでいたことから発した独身者のための記念日で、独り者を表す「光棍」という文字が当てられています。

2009年、11月11日の独身の日に、中国のECサイト「アリババ」が「双11(ダブルイレブン)」と呼ばれる大規模なインターネット通販セールを仕掛けたことから、中国では「独身の日」イコール「ネットセールの日」として浸透しました。近年では、アリババの通販サイトだけでなく、百貨店やスーパーマーケットなどのリアル店舗でもセールを開催。独身の日が国をあげてのセール期間となっています。

なお、2017年の独身の日に伴うセールでは、アリババの売上高は253億ドル。アメリカにおける同年のブラックフライデーによるオンラインセールの売上高50億ドルの5倍以上ものセールスを記録しました。

アリババなどの通販サイトは、優遇税率が適用される越境ECを運営しているため、日本でも「独身の日」セールにあやかろうと、越境ECに参入する企業が増えています。

サイバーマンデー

アメリカ合衆国では、11月第4木曜日が感謝祭(Thanksgiving Day)が行われますが、翌日金曜日から年末セールがはじまります(ブラックフライデー)。サイバーマンデー(Cyber Monday)は、感謝祭の休暇が明けた月曜日をいい、この日からEC各社がセールを開始します。インターネット上で行われるセールなので、「サイバー」というわけです。

巨大ECサイトのAmazonは、アメリカ本国だけでなく日本でもサイバーマンデーのセールを開催。日用品や家電、ファッションアイテムといった商品を割引価格で購入することができます。日本を代表するECサイトの楽天市場やYahoo!ショッピングでも、年末にかけて大々的なセールを開催しますが、今後日本でもサイバーマンデーの認知度が高まれば、この時期EC事業社あげての一大セールイベントになる可能性があります。

なお、12月第2週月曜日のグリーンマンデー(Green Monday)、同じく、12月中に行われる配送無料キャンペーンの日、フリーシッピングデー(Free Shipping Day)は、サイバーマンデーと同じく、ECの売上が急増します。

ブラックフライデー

ブラックフライデー(Black Friday)は、アメリカ合衆国の感謝祭(Thanksgiving Day)翌日の11月第4金曜日のことをいいます。日本語では「黒字の金曜日」とも呼ばれるように、小売業にとって1年で最も多い売上を記録する日といわれています。ブラックフライデーは、感謝祭休暇の在庫一掃セール日でもあり、実質上の年末商戦の幕開けでもあります。

日本では、トイザらスやGAPなど、アメリカ発祥のショップでブラックフライデーが行われていましたが、近年ではイオンリテールが「イオン ブラックフライデー」を展開。クリスマスやお正月を前に一時的に消費が冷え込む11月の売上を伸ばすものとして期待され、定着する兆しを見せています。

ブラックフライデーを皮切りに年末商戦に入るアメリカでは、感謝祭明けの月曜日にはサイバーマンデーがはじまります。Shop.orgやAmazon.comなどのECサイトが一斉にオンラインセールを開始。ブラックフライデーによる実店舗の売上、サイバーマンデーによるオンラインショップの売上と、アメリカの小売業界が1年で一番活気づく時期です。