小売業者のSNS活用が進む中、近年YouTubeやインスタライブを活用した動画コマースに取り組む企業が増えてきました。今回の売り方調査隊では、ドラッグストアやスーパー、百貨店などの小売業者がどのように動画コマースを活用しているか調査してみました。(ライター:宮原智子)
注目高まる集める動画コマース
MD NEXTでは2018年、2019年、2020年にわたって小売業者のSNS活用状況を調査しました。それによると、FacebookやTwitter、Instagram、YouTubeなどSNSをマーケティングに活用する動きは年々活発になっていることがわかります。
小売業各社のSNS施策をまとめてみた 2020夏(1)〜コンビニ・100円均・ディスカウントストア編〜
小売業各社のSNS施策をまとめてみた 2020夏(2)〜ドラッグストア編〜
小売業各社のSNS施策をまとめてみた 2020夏(3)〜GMS・食品スーパー編〜
中でも近年注目されているのが、YouTubeやインスタライブなどの動画SNSです。これらのプラットフォームを活用して、動画コマースに取り組む事業者が増えています。
動画コマースとは?
動画コマースとは、YouTubeやインスタライブ、TikTokなどの動画プラットフォームを活用して商品の情報を流し、オンライン上で買い物ができるEC手法です。テレビショッピングのインターネット版といえばイメージが湧くかもしれません。
動画コマースを活用することで、視聴者の疑問や悩みを直接解消し、購買につなげることができます。
こうした動画コマースをリアルタイムで行う方法を、ライブコマースと言います。
Instagramのライブ配信活用するスギ薬局
スギ薬局では、Instagramを活用したライブコマースを配信しています。1時間ほどのライブの中で、アイシャドウやチーク、リップなどのコスメアイテムを紹介。動画の中で実際にメイクをしながら、コスメを肌になじませた色味や、相性のよいコスメアイテムの組み合わせなどを伝えています。コメント機能で投稿された視聴者の質問に答えながら進んでいくため、ライブ感があります。
YouTubeで生活の情報発信するココカラファイン
ココカラファインはYouTubeチャンネルを運営。「症状別!鎮痛剤の違いと選び方」「二日酔いの原因と対策講座」「重曹・セスキ・クエン酸 使い方のポイント」など、視聴者に役立つ生活の中のハウツーを伝えながら、商品を紹介しています。
チャンネル登録者数は2,990人ながらハウツー動画の視聴回数は1万件と流入数が多いことから、需要の高い内容を配信していることがうかがえます。
店内を歩き回る!「サツドラ超サ団」がユニークなサツドラ
サツドラはYouTubeを活用しています。視聴回数が5万回を超える「ドラッグストアおすすめシャンプー5選【お悩み別】」をはじめ、サツドラのスタッフが健康の知識やハウツーを伝えながら商品を紹介する動画を配信。
ほかに、サツドラ店内を歩きながら商品を紹介する「サツドラ超サ団」という企画もユニークです。
インスタライブで発信!フォロワー178万人のダイソー
ダイソーでは、全国の店舗の店頭からインスタライブを活用したライブコマースを配信。季節の商品や話題の商品を紹介しています。フォロワー数178万人、視聴回数も10万回を超える投稿が多く、注目度の高いアカウントであることがわかります。100円均一ショップの中でも、ダイソーは特にSNSでの発信に注力しています。
独自サイトで情報発信→オンライン購入試みるイオン
イオンではYouTubeやInstagramなどのプラットフォームを使わず、独自のサイト「AEON MALL LIVE SHOPPING!」を開設し、ライブコマースを展開しています。2021年2月からスタートしたライブコマースサイトでは、全国80モールの専門店からスタッフが自社商品を紹介。視聴者はスタッフとチャットでコミュニケーションを取ることができ、気に入った商品はオンラインで購入することができます。
視聴回数50万回越え動画もあるカインズ
カインズではYouTube、Instagramを活用し、積極的に動画を配信しています。YouTubeのカインズ公式アカウントでは、園芸・DIY、アウトドア、家事など、幅広い生活ハウツーを紹介。特に、園芸やDIYでは視聴回数50万回以上にのぼる動画も見られます。
カインズでは自分でものづくりをしたい人をサポートするDIY総合サイト「CAINZ DIY style」を開設しています。毎月第4金曜日にはインスタライブを開催。スタッフがカインズの商品や資材を使ってDIYする様子を配信しています。また、YouTubeの同アカウントでは30秒ほどのショートサイズのDIY動画を投稿。「自分にもつくれそうだ」という気にさせるイマジネーションあふれる動画が、DIYブームを後押ししています。
地元TVとタッグでYouTube運営する松坂屋名古屋本店
老舗百貨店の松坂屋名古屋本店では、地元TV局CBCテレビとタッグを組み、YouTubeチャンネル「デパチャン」を制作しています。出演するのは松坂屋のバイヤーや販売員。TV局の制作ノウハウを生かし、トレンド・季節感・お得情報など、情報番組の要素を取り入れ、「視聴者が本当に知りたい情報」を発信しています。チャンネル開設1ヶ月で登録者数169人と少数ですが、再生回数が1.6万回を超える投稿もあり、TV局との取り組みで今後どこまで数字が伸びるか注目しています。
企業ウェブサイト |
https://www.matsuzakaya.co.jp/nagoya/ |
YouTube |
https://www.youtube.com/channel/UCXlkqBKH7ApBh5NcsNdqZ1w
フォロワー数169人 |
やはり人気はハウツー動画の伊勢丹
伊勢丹でもYouTubeを開設。バイヤーによる商品紹介や、販売員のおすすめアイテム、レシピ動画など、さまざまな企画を形にしています。再生回数を見ると、やはり人気なのは「靴磨きのテクニック教えます」といったハウツー動画です。なお、伊勢丹では、スマホアプリからチャットを起動することで販売員に相談しながら買い物をすることができる、リモートショッピングを展開しています。
企業ウェブサイト |
https://www.mistore.jp/store/shinjuku.html |
YouTube |
https://www.youtube.com/channel/UCZDZkHchWEYTabIjhPjWhew
フォロワー数9,360人 |
ハウツー動画は再生回数が伸びやすい傾向にある
ジャンル別に動画コマースの活用状況を紹介してきましたが、全体を通しての「生活のハウツーを解説しながら商品紹介をする動画」は再生回数が高い傾向にありました。翻れば、視聴者が動画を見る目的は、自分の悩みや疑問を解消したいためと言えるでしょう。
動画コマースの中でも、特にライブコマースは、視聴者とコミュニケーションを取りながら商品を紹介できる機会となります。視聴者が何に困っているか、ニーズを探る手段としても有効です。
一方、どの企業も実際の購買に直接つながる動線は弱いように感じました。あくまで情報発信とエンゲージメントの確立に注力しているようですが、ここをどうテコ入れしていくか、各社の手腕が問われていきそうです。