肌の構成成分から高精度の肌色診断を可能に。自分に似合うコスメがわかるZOZOGLASS

今回、「新しい売り方」調査隊!で取り上げるのは、肌の色を計測しておすすめのコスメの色を教えてくれる「ZOZOGLASS」です。肌の色診断専用のメガネをかけてAIで分析。お店に行かなくてもぴったりのコスメを探せる、ZOZOGLASSの肌色診断を試してみました。(ライター:宮原智子)

メガネをかけて自撮りをするとパーソナルカラーがわかる「ZOZOGLASS」

パッと目を引くカラフルなメガネ。パーティー用ではありません。ファッション通販サイトZOZOTOWNが提供している、「肌の色計測用」メガネです。

ファンデーションやチーク、アイブロウなど色味で選ばれるコスメは、実際に店頭で試してみないことには自分に似合うかどうかが判断しにくいもの。

そこで近年では、コスメメーカーなどがパーソナルカラーを診断するアプリを展開し、リアル店舗とECの差を埋めようとしています。これらの多くはスマホでの自撮り画像をもとにAIがパーソナルカラーを診断するものですが、撮影時の光の加減によって診断結果に影響が出てしまうことがありました。

ZOZOGLASSは、肌の色を構成する成分であるヘモグロビン量とメラニン量を画像から推定し、肌の色を計測。環境光に影響されにくく、高精度の計測を可能にしています。

(2021年5月時点で、ZOZOGLASSは申込から4〜6週間程度で無料お届けされる仕組みになっています)

測定からおすすめコスメの購入までがワンストップでスムーズ

1.ZOZOTOWNアプリのマイページ画面で、「肌の色を測定する」をタップします。

ZOZOTOWNのマイペ-時画面から測定機能にアクセスすることができます。

2.画面に表示されるガイドに沿って、それぞれの角度から顔の色味を測定します。

ガイドに従い、さまざまな角度から顔の色味を読み込んでいきます。

3.ZOZOGLASSを外して、もう一度それぞれの角度から顔の色味を測定します。

もう一度、今後はメガネを外して測定します。友人同士や家族で測定すると盛り上がりそう。

4.測定が終わったら結果を表示します。

診断結果は顔全体、パーツごとに表示されます。

5.測定結果をもとに、おすすめのファンデーションが表示されます。
※現在おすすめアイテムはファンデーションのみですが、今後リップ、チーク等アイテム数が拡充する予定です。

肌色に合うファンデーションが一覧で表示されます。各商品ページでは、自分に合った色味に「YOU」とアイコン表示されます。どの色味が自分に合うか、迷子になることがありません。

6.気に入ったコスメが見つかったら、カートに入れてそのまま購入。測定から購入までがスムーズに行えます。

気に入ったコスメはZOZOTOWNのいつもの手順で購入。一連の流れがスムーズです。

詳しくわかりやすい計測結果がECへの不安をやわらげる。

測定結果はテキストだけでなく、グラフにも表されます。解説もわかりやすく、計測結果に信頼を寄せることができるので、ECでコスメを買うことへの不安がやわらぐように感じました。

ヘモグロビン量とメラニン量から、顔全体の色味は「やや明るいトーンのニュートラルカラー」と判断されました。結果はグラフでも表され、テキストでの説明に説得力を与えます。

秀逸なのは、顔全体の肌の色味だけでなく、額から目元、頬、鼻、上唇・下唇、顎まで、顔の各パーツの色味まで細かく計測できている点。それぞれのパーツのヘモグロビン量・メラニン量までが数値で表示され、「今のたったこれだけの測定で、こんなにいろいろなことがわかるんだ!」という驚きにつながります。

顔の各パーツの色味まで測定。現在はファンデーションへの適用のみですが、今後は測定結果をもとにリップやチークなどもおすすめされるようになるそうです。

「ただの計測アイテム」にとどまらないところが強み

これまで同社ではZOZOスーツやZOZOMATなどを展開してきましたが、今回のZOZOGLASSもインパクトでは負けていません。自撮り画像を撮ってSNSに投稿するユーザーも多く、マーケティングにもひと役買っていそうです。

ZOZOスーツのように見た目のインパクトがおもしろかったり、ZOZOGLASSのようにSNS映えするカラフルさがあったり。「ただの計測アイテム」にとどまらず、ついシェアしたくなるサービスをつくり出すところが同社のうまさだと感じました。

ZOZOでは今後、指のサイズが測れるZOZOMAT for handsをリリース予定。さまざまな計測技術を用いて、ECへの心理的ハードルを取り除いていく同社の取り組みに、今後も注目していきたいとおもいます。

ヴァーチャルウインドウショッピングを実現!「ホグロフス」のVRストア

今回、「新しい売り方」調査隊!で取り上げるのは、北欧のアウトドアブランド「ホグロフス」のVRストアです。店内を360°VRカメラで撮影し、フラッグシップストア原宿店をネット上に再現。ヴァーチャルウインドウショッピングが楽しめる「ホグロフス」のVRストアを試してみました。(ライター:宮原智子)

360°VR撮影技術を駆使した「ホグロフス」のVRストア

北欧初のアウトドアブランド「ホグロフス」。デザインや機能性の高さから、ファッションアイテムとしても人気です。

同ブランドでは、最新の360°VR撮影技術により、フラッグシップストア原宿店をウェブ上で再現。オンラインショップとリンクして、実際にショッピングが可能なヴァーチャル店舗をオープンしました。

ホグロフスのVRストアでは、人の目線から見た店内のウォークスルーだけでなく、フロア全体を俯瞰したり、計測機能を使って商品などの実寸を測ったりすることができます。

ヴァーチャル空間でウインドウショッピング!EC連動で買い物も可能

ホグロフスのVRストアへは、ホグロフス公式サイトからアクセスします。人の目線で店内を歩けるドールビューから始まります。

店内の雰囲気の隅々までヴァーチャルで映し出されます。

店内を移動したい場合には、カーソルの「◎」を店内の移動したい箇所の「◎」に重ねてクリックします。

移動はとてもスムーズです。視点を変えたいときは、マウスをクリック&ドラッグします。

気になる商品を見つけたら、商品に付いた「◎」にカーソルを重ねます。商品の説明と、オンラインショップへのリンクが表示されます。

オンラインショップへのリンクがある商品には「◎」がついています。「◎」にカーソルを合わせてリンク先にクリックするれば買い物をすることができます。

オンラインショップへのリンク先で商品の購入を行うことができます。

VRで商品を選んで購入するまでの導線がスムーズで、ストレスなくショッピングが楽しめます。

VRストアでは、ドールビューのほか、フロア全体を俯瞰して見る「フロアプラン」表示が可能です。

フロア全体を上から俯瞰表示。大規模店舗でVRストアを展開するなら便利な機能です。

また、スケール機能を使えばVR画像の中で商品の実寸を測ることもできます。スケール機能を使うには、VRストア画面左下のアイコンをクリックします。

「スケール機能」のアイコンをクリックすると、商品を計測するためのスケールが表示されます。身丈などを測ることができます。

シリコンバレーのベンチャー企業MatterportのVR技術を活用

ホグロフスが採用しているVR技術は、シリコンバレーのベンチャー企業「Matterport」によるもの。4K3Dカメラで撮影した画像をクラウドサーバにアップロードすると、AIが自動で3Dモデリングをし、ヴァーチャル空間を作成します。

商業施設だけでなく、美術館や博物館といった展示施設や建設現場などでも導入が進んでいます。VR技術は不動産とも親和性が高く、不動産情報サイト「SUUMO」(リクルート)がMatterportのVR技術を活用し、物件のヴァーチャル内覧を可能にした例もあります。

「モノ」だけでなく「コト」も含めてショッピング体験を提供できる

アパレルや雑貨店は商品という「モノ」だけでなく、空間や雰囲気といった「コト」も含めてショッピング体験を提供しています。VRストアはオンライン上でモノを買うとき、「ブランドの世界観をよりリアルに感じさせられる」という点で、これまでのECになかった「コト」の提供もできるのではないかと感じました。

また、ECで買い物をする多くの場合は「目当ての商品を自分で検索して購入する」という能動的な行動が必要で、リアルの世界で買い物をするときのように「ふと目に入ったものをつい購入する」といったことにはつながりにくいのではないでしょうか。

VRストアでは、例えば隣にかかっている服を「つい」購入してみたり、一緒にコーディネートされているアイテムを「ついでに」購入するなど、リアルなウインドウショッピングと似た消費行動が起こりそうです。

こうしたヴァーチャルストアを百貨店や大型ショッピングモールなどで展開すれば、PCの前にいながらウインドウショッピングを楽しむ「新しい買い物体験」を提供することができそうです。

[イベントレポート]小売業界誌編集長が語るドラッグストア・食品スーパーPB・NB開発事情!

近年、ドラッグストア(DgS)やスーパーマーケット(SM)で存在感を増すPB。圧倒的低価格の商品やハイクオリティな商品などその特徴はさまざまで、NBの売上を凌ぐものも登場しています。これらPB商品の開発戦略や販売戦略にはどのようなものがあるのでしょうか。2021年3月3日に行われたオンラインセミナーでは、小売業界専門誌で編集長を務める2名がDgSとSMにおけるPB・NB戦略について語りました。

メーカーと小売業の対立時代から「デュアル・ブランド」時代へ

野間口:ドラッグストア向けの雑誌『月刊マーチャンダイジング』を発行しているニューフォーマット研究所の野間口です。

諸定義はありますが、私たち月刊MDでは「PB」「SB」「専売品」を以下のように定義しています。

『月刊マーチャンダイジング』 におけるPB・SB・専売品の定義

PB(プライベートブランド)
小売業が仕様(スペック・機能)、デザイン、生産数量を決めて製造する。完全自主企画。製造責任まで追う。

SB(ストアブランド)
メーカー製造の商品に小売業のパッケージ、ブランドをつけて販売。小売業の企画、仕様が入っている場合とメーカー丸投げパッケージのみのパターンがある。ダブルチョップなどとも呼ばれる。

専売品
ナショナルブランド(NB)メーカーが作ったNB商品だが、販売企業を限定している。小売業側からは自社でしか買えない大手メーカーのブランド商品という位置づけで差別化できる。

DgSにおけるPB、NB戦略を語るうえで要点となるのが「デュアル・ブランド」という考え方です。

デュアル・ブランドとは、矢作敏行先生の著書「デュアル・ブランド戦略 NB and/or PB」に登場することばで、「NBとPBが競い合いなおかつ共存すること。NB、PBというシングルブランドの時代は終わった」と述べられています。NBとPBが共存共立するというのがデュアル・ブランドの時代ということです。

1950年代から90年代の中ごろまではメーカーが小売業や卸売業を系列化して価格決定権を握っていました。これに対して小売業はメーカー支配からの脱却を望み、チェーンストアを模索して大規模化を目指しました。彼らが目指したチェーンストアの原理は「良いものをより安く販売して国民の生活レベルを上げる」ことでした。ここで価格決定権をメーカーから奪うという構造ができてきます。

チェーンストア理論とメーカーの対立例としては「ダイエー・松下戦争」が有名です。ダイエーが松下電器(現パナソニック)のテレビを安値販売することに松下が反対して商品をダイエーから引き上げたのに対抗し、ダイエーはテレビの格安PBを開発しました。このように、メーカーが商品供給を止めて小売が低価格PBを作るといった対立構造がありつつも、NBが圧倒的に優位ではありました。

現代ではメーカーは小売業の販路と店舗数を活用してPBを作ったり、専売品を提供したりするようになりました。小売業側からすると、メーカーの技術や生産力を生かして自社PBを作ったり、低価格や高品質の商品あるいはオリジナル商品を作ってもらったりして他社との差別化を図っています。

このようにNBとPBが共存するデュアル・ブランドの時代が到来していることが、現在のPB・NB戦略のベースになっています。

低価格PBの開発を売上伸長の原動力に据える「ゲンキー」

野間口:ここからはDgSのPB戦略をご紹介します。

ゲンキーはPB比率が17.5%と上場DgS14社中で最も高く、徹底した低価格PBを開発しています。2023年には売上高2,400億円を目指していて、その原動力が低価格PBだとしてPB専門部署であるSPA推進部を創設しています。

ゲンキーではPBを2タイプに分類しています。ひとつは圧倒的低価格を訴求したボトムプライスPB。NB商品の3~5割安を目指しています。

もうひとつは「ライトスイッチングPB」です。有力NBの対抗商品として開発されたPBです。

ベリーラボのメイク落とし。「右側の論理」に基づき、NBの右側に配置されている

SPA推進部が作成したPBのポジショニングマップによると、ゲンキーのPBは価格では最安値で、品質は平均の少し下くらいに位置付けています。とにかくとがっていない商品を目指し、低価格を守るために品質の上限も決めているということです。

SPA推進部が作成したPBのポジショニングマップ

PBの多ブランド展開もゲンキーの特徴です。衛生用品の「アルコーサ」、化粧品の「コロラド」、HBC・化粧雑貨の「ベリーラボ」、菓子の「スイーツギャラリー」など、多くのPBブランドを展開することで疑似NB的な世界を演出しています。

例を挙げると、ビール系飲料の「麦のひかり」はキリンのどごし生より37%安くて77円。ベルギー産ホップを使ったビール系飲料は88円です。とても安いですね。

またゲンキーでは富士パール食品という自社の子会社をもっています。食品加工場と物流センターを一緒にした施設で米飯・惣菜を作っており、現在の注力商品は牛肉のコロッケだということです。

このように、PB専任部署や自社のプロセスセンターを作って徹底した低価格PB開発に当たっているのがゲンキーの戦略です。

ドラッグストア初!ゲンキーの食品加工&物流センター動画レポート

メーカーから優良パートナーとして支持される「ツルハ」

野間口業界2番手のツルハのPB戦略は「推奨力の強さで専売品強化」です。

主力PBは「くらしリズム」と「くらしリズムメディカル」。2021年5月期の第二四半期の業績は、くらしリズムシリーズで前期比136%増、売り上げ構成比は2.8%です。

ツルハの特徴は専売品が非常に強いことです。専売品・企業限定品だけでも110億円売っていて、売上構成比では2.8%。SKU数の構成比では、2,632SKUのうち専売品・企業限定品が1,636で62%以上を占めています。

企業限定商品の例には「ラ・ヴィラ・ヴィータ」という超高価格帯のヘアケア商品や、ファンケルと共同開発した「セラアクア」という中価格帯のスキンケアラインがあります。メーカー側としては、広告宣伝費をかけて売るよりも2,000店以上の規模を持つツルハに絞って売ってもらった方が費用対効果があると判断しているわけです。

高額アイテムも説明販売で業績を残している

またロートグループと共同開発した税込170円の機能性表示食品のあんぱんは、店のあちこちに5段パレットを配置して販売し、大ヒット商品になっています。

このように、「推奨力の強さで高額商品でも説明販売して業績を上げる」、「店頭展開の徹底力でセルフ商品、低価格商品でも大きな実績を残す」というのがツルハの戦略の特徴です。こうした専売品強化にプラスして「くらしリズム」によるPB開発を続けています。

徹底的なデータ分析でハイクオリティPBを開発する「マツモトキヨシ」

野間口:最後にマツモトキヨシです。マツキヨはインバウンド需要が消滅して今は苦戦中ですが、その復活戦略としてPBは重要な柱になります。PB比率は11.3%と高いですね。

マツキヨが成長戦略の3本柱に挙げているのが、「デジタル化の更なる高度化」、「グローバル化の更なる進展」、「専門領域の事業規模拡大」です。専門領域というのは化粧品・ヘルスケアで、この中にPBが含まれています。

マツキヨはデジタルによるデータ分析が非常に進んでいて、自社アプリやLINE、カード会員も含めて7,300万の接点があります。この接点を利用し、KBF(キーバイイングファクター)を徹底的に分析して商品開発に生かしています。

マツキヨのPBパッケージには「マツキヨスラッシュ」と名付けた斜め19度のラインがデザインされていて、ブランドとしての統一感があります。ユニークなデザインのトイレットペーパーは国際的なデザイン賞を受賞しており、ブランディングの有力手段としても活用されています。

KBFを分析して開発されたエナジードリンクは非常に話題になっています。税込み150円で、コスパが良いですね。

話題のエナジードリンク。ショッキングな色や、パッケージと中身の色が違うといった意外性が若者を中心に人気を集めている。マツキヨスラッシュがデザインされている

主力PBブランドの「matsukiyo」とは別に、ナリス化粧品との共同開発SBの「レチノタイム」や、ファブリックミストの「レプリカノーツ」など、NBに匹敵するようなブランドももっています。またサプリメントや機能性表示食品を扱う「matsukiyo LAB」というサブラインも展開しています。

このように、洗練されたデザインやNBに匹敵する機能をもつPB開発がマツキヨグループの差別化やブランディングの有力手段になっています。

以上のように、Dgs各社は自社の戦略に基づいてPB、NB、専売品を使い分け、我が店でしか買えない商品を開発することで差別化、競合優位を図っているといえます。

日本のスーパーマーケットにおけるPBの考え方とは

竹下:リテール総合研究所でウェブメディア『リテールガイド』の編集長をしております竹下です。親会社のロコガイドでは、チラシ・買い物サービスの『トクバイ』の運営を行なっています。

世界的にSMが誕生した1930 年代から、SMではNBを安く売って成長を遂げてきました。欧米では日本に比べてPBのシェアが高く、欧米の「トレーダー・ジョー」やイギリスの「クック」などPB主体の店もありますが、一般的なSMではNBが主体になっています。

一方で日本ではチェーンストアが発達する前にNBの小売支配が強まりました。さらに「小売業が製品開発に取り組んでもメーカーには勝てない」、「メーカーがNBより良いものをPBとして出すはずがない」という意見もあります。これらのことから、SMにおいてPBは限定的で、NBが大事な商品といえるでしょう。

ただしPBの成功事例もあります。有名なのは良品計画の無印良品ですね。ニトリ、ユニクロ、カインズもオリジナル商品が店の特色になっており、PB商品で成功するものには非食品が多いことがわかります。NBがあまりない分野でPBは普及していて、NBがある分野をPBに置き換えるのはなかなか難しいといえます。

日本リテイリングセンターでは、PBを「クオリティブランド」、「プライスブランド」、「コンペティティブルブランド」、「ゼネリック」の4つに分類しています。

また「エコノミーブランド」、「スタンダードブランド」、「プレミアムブランド」の「3層構造(+α)」として分類される場合もあります。

PB開発でよく使われる考え方として「トレードオフ」があり、無駄な機能を省いてその分価格を安くする取り組みをいいますが、最近では「トレードオン」ということばを使って、安さと機能の両立を目指す企業も出てきています。

SMにおけるPB戦略は、強みも重視ポイントもさまざま

竹下:ここからはSMにおけるPB戦略の具体例を見ていきましょう。

セブン&アイの「セブンプレミアム」は2007年に登場した日本最大のPBです。2万店以上というセブン-イレブンの店舗数が大きな強みですね。とにかくおいしいことが一番として、リピーターを重視しています。「セブンプレミアム向上委員会」を組織化して、商品リニューアルを繰り返しています。通常ラインに加えて、プレミアムラインの「ゴールド」、生鮮ラインの「フレッシュ」といったラインが出ています。

イオングループの「トップバリュ」は長らく最大規模のPBでしたが、現状はセブンプレミアムに抜かれています。通常ラインに加えて低価格志向の「ベストプライス」、品質にこだわった「セレクト」、ナチュラル志向の「グリーンアイ」の4つのラインを展開しており、最近ではグリーンアイがさらに3種類に分化しています。惣菜も増えていて、MSC認証の魚を使ったおにぎりやタスマニアビーフを使った弁当をPBにしてブランディングに生かしています。

西友のPB「みなさまのお墨付き」は約1,000アイテムあり、2022年には2,000アイテムを目指して開発が急増しています。コンセプトは「有名メーカーと同等以上の品質で10%以上低価格」。2012年の登場以来、外部団体が消費者テストをして70%以上の支持があれば商品化するという方針を謳っていましたが、一昨年からはそのハードルを80%以上に上げています。みなさまのお墨付きの他に、圧倒的低価格PBの「きほんのき」も展開しています。

「みなさまのお墨付き」をコーナー化して売り込みを強化している

ヤオコーでは3層構造を意識して開発しています。レギュラーラインアップの「Yes!」、高品質ラインの「Yes!Premium」、ライフコーポレーションと共同開発の「スターセレクト」です。「エブリデーライフスタイルアソートメント型SM」として品質にこだわった商品をアソートして売っている一方で、コモディティ化した商品では競争しないという方針でライフと共同開発しているのが現状です。

ヤオコーのPB「Yes!Premium」の讃岐カレーうどん。エプロン付きで差別化している

ライフのPBでは3層構造プラスαで展開しています。通常ラインの「スマイルライフ」、プレミアムブランドの「ライフプレミアム」、ヤオコーと共同開発の「スターセレクト」、体に優しい素材や製法を意識した「ビオラル」です。ビオラルは急速に開発が進んでいて、ビオラルだけでコーナーを作る店もでてきています。

開発が急増している「ビオラル」。ビオラルだけでコーナー化する店舗も

変化するPB開発の切り口。PBで企業の強みを想起させられるか?

竹下:時代の変化に合わせて、最近ではPB開発の切り口も変わってきています。

第1に、新型コロナを経てサステナブルへの意識が高まったという点。環境や健康への意識が強まって、ライフのPB「ビオラル」やイオングループの「ビオセボン」というオーガニックの店が絶好調です。オーガニックの分野にはNBがあまりないのでPB開発につながりやすいですね。

第2に、節約志向の高まりで、大容量や割安の商品、保存がきく冷凍や冷蔵の商品が増えています。新鮮なまま冷凍すると鮮度を保てて高品質であるうえ、保存性が良いのでお客さんにとっても使い勝手が良いんですね。店も人手不足なのでアウトパック化によって冷凍・冷蔵ものが増えていることもこの流れの要因のひとつです。

大容量かつ冷凍の肉

第3に、生鮮・惣菜こそ差別化の源泉という切り口です。生鮮・惣菜はDgSなどの他業態には手掛けづらいため差別化要因になります。加工食品とは違ってNBがあまりない分野なので、独自の調達ルートづくりや商品設計を強化して開発を活発化していこうということです。

現代では人口減少やSM店舗数の増加に加えて、新しい生活様式の定着によりまとめ買いの傾向が高まっています。このような状況でSMがシェアを獲得するには、地域の一番店になる必要があります。そのためには、NBを大切にしつつも企業の強みを想起できるPBを開発することが重要です。

ツルヤ、ロピア、コストコ、成城石井などの好業績企業には強いPBがあります。長野・群馬県に店舗を展開するSMのツルヤは、全国的なNBがない商品を地域のメーカーと組んで商品化しています。

ツルヤが地域のメーカーと作ったPB。地域色が色濃く出ている

このような独自商品の開発が企業の強みとなり、強い来店動機につながるといえます。

(談・文責/編集部)

開発不要でECサイトに自動接客AIを導入できる「SELF LINK」

今回、「新しい売り方」調査隊!で取り上げるのは、自動接客AI「SELF LINK」です。ZOOMによるオンライン接客やAR/VRなど、各社さまざまなアイデアでEC上での「接客」を試みています。SELF LINKでは開発不要でECサイトに接客AIを導入できるサービスを提供、実店舗での接客のような会話や提案を可能にしています。(ライター:宮原智子)

ECサイト上での接客を自動化するAI「SELF LINK」

買い物をするとき、たくさんの商品の中から自分が理想としていたものを見つけることができれば、購入にはもちろん、満足度やリピート率のアップにもつながります。

実店舗での対面接客であれば、お客が求めているものを聞き、目の前にある品を実際に見ながら提案することができるため、個々に合った商品を提案することが可能です。

一方、個々に合わせた提案が難しいECサイトでも、オンライン会議ツールZOOMを用いたオンライン接客や、ARを使ったバーチャル試着など、お客にフィットした提案をするためのさまざまな試みがされています。

そんな中、「SELF LINK」は開発不要でECサイトに自動接客AIを導入できるサービスを提供。AIとの会話を通しておすすめの商品を提案しています。「SELF LINK」がどのように使われているのか、産直お取り寄せのECサイト「ニッポンセレクト」を例に紹介します。

会話に答えていくとおすすめの商品を提案してくれる

産直お取り寄せのECサイト「ニッポンセレクト」は、株式会社ふるさとサービスが運営するお取り寄せ通販サイトです。全国の食品や飲料、工芸品といった商品を取り扱っています。

SELF LINKの自動接客AIは、ECサイト画面右下に表示されています。

AIとの会話は、画面右下のポップアップウインドウから行えます。
回答をクリックして商品を絞り込んでいきます。



AIからの問いかけに1クリックで答えていくと、商品が絞り込まれていきます。

過去の質問への回答履歴や購入履歴から、AIからの問いかけの内容が変わります。
利用すればするほど、質問内容が最適化されていきます。


「お客様のお酒の頻度は〜」「同居人は〜」といった問いかけが、常連心をくすぐります。

気に入った商品が見つかったら、購入手続きをします。

気に入った商品が見つかったらカートに入れ、購入手続きへ。

AIによる自動接客を体験してみて、商品の絞り込みがスムースで効率的であると感じました。一方で、お客への提案精度をより高めるのであれば、たとえば「日本酒」であれば、「味の好みは?——辛口・甘口・フルーティー」「どんなシチュエーションで飲みたいですか?——パーティーで・ひとりで・食事と一緒に」といったように、もう少し質問の粒度を小さくしてもよいのではないかと感じます。

質問への回答履歴やカート内容から商品を提案、「もう一品」を後押し

フッターレコメンド機能では、惣菜や調味料、スイーツなど、カテゴリーをまたいだ商品が提案されます。

SELF LINKには、会話機能のほかにフッターレコメンド機能を搭載しています。フッターレコメンド機能とは、たとえば検索履歴に「長野県」があった場合、カテゴリーをまたいで長野県の商品をレコメンドします。長野県の「お酒」を検索・購入した人に、長野県の「食材」「スイーツ」「工芸品」などを提案することで、ユーザーの興味を広げ、「もう一品」の購入を後押ししています。

サイトを訪れたユーザーが質問にどう答え、何を検索し、購入したか。蓄積したデータから提案制度を高め、「ついで買い」につなげます。

システム開発不要でAI接客を導入、DX化を促進するか

さまざまな分野でパーソナライゼーションが進む昨今、ECではよりお客のニーズにあった提案をしていく必要性が高まっています。

とはいえ、「自社でシステム開発するにはリソースが足りない」と悩む現場も少なくないでしょう。

SELF LINKは、追加のシステム開発は不要で、スクリプトのタグをサイトに埋め込む作業のみで運用を開始することができます。こうしたサービスをうまく取り入れることも、小売業の現場のDX化を促進するための1つの手段といえそうです。

画面越しにメイクカウンセリングを実現「オルビス」のオンライン接客

今回「新しい売り方」調査隊!で取り上げるのは、オルビスのオンライン接客です。コロナ禍でリアル店舗への来客が減少する中、百貨店やアパレル、化粧品といった業種では、対面で行っていた接客をオンラインで試みる動きが増えています。従来の対面での接客とは、どう違うのでしょうか。オルビスのオンライン接客を体験してみました。(ライター:宮原智子)

オンラインカウンセリングで接客の選択肢を広げる「オルビス」

コロナ禍でリアル店舗への来客が減少する中、それまで対面での接客を行ってきた百貨店やアパレルで、オンラインでの接客を取り入れる動きがあります。それは、化粧品メーカーも例外ではありません。

化粧品メーカー「オルビス」では、オンラインカウンセリングを展開。オンラインコミュニケーションサービス「ZOOM」やチャットを活用し、ビューティーアドバイザー(以下、BA)がメイクの方法や商品の選び方などを無料でアドバイスしています。

画面の向こうでメイクを実践「ZOOM」を活用したオンラインカウンセリング

「ZOOM」を活用したオンラインカウンセリングを受けるには、予約が必要です。手順は次のとおりです。

1.応募受付フォームをクリックし、カウンセリングを受ける日時を選びます。

カウンセリングのスケジュールを予約したら、当日までに、スマホやPCにZOOMのアプリをダウンロードしておきます。

2.予約した日時になったらURLにアクセスし、カウンセリングを受けます。

相談内容に対してどんな商品がおすすめなのか、画面共有機能を使って紹介。商品の使い方もレクチャーしてくれます。

3.カウンセリング後、レポートとともに紹介された商品のURLがメールで送られます。

カウンセリングで伝えてもらったポイントと商品URLが記載されています。

今回、BAには「オンライン映えするメイク方法」について相談をしました。画面越しに見た肌の色味や顔立ちをチェックしたあと、おすすめの商品を紹介。それをどう使えばオンラインで映えるメイクができるか、BAが自身の顔を使ってメイク方法を実践してくれました。

実際にBA自身の顔にメイクを施し、色味や見え方を見せてくれます。対面でのカウンセリングのようにお客の肌で実際に試せない分、伝え方を工夫しているのがよくわかります。

日常のメイクとオンライン用のメイク、方法を変えることで実際にどんな違いが出るかを画面越しに確認することができるので、お客としても納得できる買い物につながります。相談の進め方も丁寧で、不明点がないか、ほかに聞きたいことはないか、随時確認しながら進行。

所要時間約30分間のカウンセリングの中で、こちらが相談したことに対して十分なアドバイスを得ることができ、追加の質問にも丁寧に回答してくれたことから、高い満足度が得られるちょうどよい時間に感じました。所要時間がもしも20分間だったら、短いと感じていたでしょう。

また、1on1である分、店頭で接客を受けているよりも人目を気にせず、落ち着いて相談できる感覚がありました。

商品の販売への導線はカウンセリング後に送られるメールのみ

このオンラインカウンセリングでは、商品の販売への導線はカウンセリング後に送られてくるメールのみでした。

オンラインでの1on1は、周りに他者の目がない分ある種閉鎖的な状況です。もしもカウンセリング中に商品購入のURLや購入ボタンを提示されていたら、「買わなければいけないのではないか」という気まずさを感じて満足度の低下につながっていたかもしれません。

ただ、カウンセリング終了からレポートメールが送られてくるまではやや時間差があったため、人によっては購入意欲が低下し、購入につながらないケースもあるのではないでしょうか。カウンセリング後、終了画面から商品購入画面につながる導線を作るなどの工夫をする必要性を感じました。

オンラインカウンセリングのターゲットは既存顧客か

オンラインショップサイトをスクロールした最下部にオンラインカウンセリングへのリンクバナーが貼られている。

筆者がこのオンラインカウンセリングを知ったきっかけは、オルビスからのメルマガでした。オルビスのサイトではオンラインカウンセリングが大きく取り上げられておらず、画面を最下部までスクロールしなければ見つけることができないほどです。

メルマガは、「オルビスのサイトなどでメルマガ登録をした」か、「オルビスの商品をオンラインで購入したことがある」人に届くため、オンラインカウンセリングは既存顧客に向けて発信されているものと思われます。

チャット相談やアプリでの肌状態チェックなど多角的な試みを展開

チャットからはAIへの質問だけでなく、BAに質問することもでき、個々のお客に合ったきめ細かな対応をしているのが特徴です。

また、アプリを使って5年後〜20年後に予想される肌悩みをAIで分析する「AI未来肌シミュレーション」や、自分の顔立ちにあった眉の形を提案する「AIアイブロウシュミレーター」、以前紹介した「パーソナルAIメイクアドバイザー」を提供しています。

店頭では、BAによるメイクカウンセリングのほか、「AI未来肌シミュレーション」「パーソナルファンデーションカラーチェック」「スキンチェック」といった接客メニューを整えているオルビスですが、それらのほとんどをオンラインでカバーしています。

オンラインでも専門家による質の高い接客が可能

オルビスの事例では、専門スタッフによる質の高い接客がオンラインでも実現可能なことを示しています。コロナ禍で対面接客の機会が減ったことで、ECに注力しはじめた現場もあるでしょう。商品選びの際、口コミだけでなく実際に専門スタッフに相談できることは、ECの弱点を補うという点から見ても有効です。ZOOMなどコミュニケーションツールを活用したり、アプリを提供したりといった多角的なアプローチで、オンライン接客の顧客満足度を高めてみてはいかがでしょうか。

顧客のUXを向上させる「ユナイテッドアローズ」オンラインストア大解剖

今回、「新しい売り方」調査隊!で取り上げるのは、アパレルブランド「ユナイテッドアローズ」のオンラインストア。コロナ禍でECサイトでの消費が伸びる中、アパレルブランドでは衣類や靴といったファッションアイテムの質感やフィット感を伝えるためにさまざまな工夫をしています。中でも、顧客のUX向上に努める「UNITED ARROWS LTD. ONLINE STORE」の事例を取り上げます。(ライター:宮原智子)

コロナ禍で伸びるECサイトの需要

コロナ禍で、ECサイトの需要が伸びています。

アパレルブランドも例外ではなく、自社ECに注力したり、ショッピングモールに出店したり、各社さまざまな対策を講じています。

しかし、ECサイトはリアル店舗と異なり、試着をすることができません。「サイズが自分に合うかどうかわからない」「質感がわからない」といった不安から購入を躊躇するユーザーは、少なからずいます。

そうしたファッションECならではの課題を解決するために、「UNITED ARROWS LTD. ONLINE STORE」では顧客のUXを向上させるさまざまな仕掛けがされています。

ファッションECならではの課題を解決

ファッションECには、次のような課題があります。

・試着ができないため、サイズ感、服の質感がわからない。
・似たアイテムを比較したいとき、商品を探すのが大変。
・接客がないため、コーディネートの相談ができない。

そんな課題を解消するために、ユナイテッドアローズのオンラインストアではさまざまな工夫をしています。下記はその一例です。

・オンラインフィッティング
・類似アイテム検索機能
・ライブコマース「STYLING GUIDE」

オンラインフィッティング「VIRTUSIZE」

アイテム画像の右側にある「購入前に簡単サイズチェック」をクリックすると、体型や手持ちアイテムのサイズを入力する画面が開きます。

ファッションECの最大の弱点ともいえる、「試着できない問題」を解消するのが、オンラインフィッティング「VIRTUSIZE」です。

「VIRTUSIZE」では、
・過去に同ストアで購入した商品サイズまたは手持ちの衣服を採寸したデータを登録することで、ストアの商品とサイズ感を比較。
・年齢や身長、体重、身幅などを登録することで、おすすめのサイズをオファー。
といったことができます。

スマホの自撮りなどによる採寸ではなく、身長や体重、体型の特徴を入力するだけなので、利用のハードルが低く感じられます。

「popIn Action」の類似アイテム検索機能

「似たアイテムをさがす」をクリックするだけで、類似アイテムを並べて比較できます。求めている商品に最短距離でアクセスが可能に。

店頭では、複数のアイテムを並べて比較することが容易にできます。しかし、ECの場合は「今見ているアイテムから商品一覧に戻る→別の商品を探して詳細を見る」という手間が生じます。ユナイテッドアローズのオンラインストアでは「popIn Action」の類似アイテム検索機能を採用。ユーザーが閲覧しているアイテムと類似した商品の画像を、同じ画面に表示して比較することができます。

アイテム画像の「似たアイテムを表示する」というアイコンをクリックするだけで、形や色が似たアイテムが並ぶため、商品検索が便利に。「ブラウザやアプリ内を行ったり来たりするのが面倒で購入をあきらめた」といった離脱を防ぐことができそうです。

ライブコマース「STYLING GUIDE」

接客がないECの弱点を補うため、YouTubeやInstagramなどで動画配信を行うショップは増えています。ユナイテッドアローズでもこれまで、Instagramを使ったライブ配信を行っていました。しかし、動画内で紹介されているアイテムを購入したいと思ったら、一旦ライブ配信から離れ、ブラウザやアプリでオンラインストアを立ち上げる必要があったのです。

そこで、ライブコマース「STYLING GUIDE」でのライブ配信を開始。ライブ動画を見ながらアイテムを選んで購入できるように工夫がされています。

ECサイトの利便性を高めて選ばれるお店になる

非接触が求められるコロナ禍では、今後ますますEC市場が拡大していくでしょう。そんな中「選ばれるお店」を作るには、ユーザー視点に立って利便性を高める必要があります。

・ECサイトの弱点を補い、できるだけリアルな消費行動に近づける
・ユーザーの先回りをして次の行動を提案する

といった工夫をすることで、顧客満足度を高めていけるとよいですね。

レシピ動画アプリ「クラシル」が開始したネットスーパー垂直立ち上げサービス

今回、「新しい売り方」調査隊!で取り上げるのは、レシピ動画サービス「クラシル」です。クラシルではイオンネットスーパーと連携。レシピ動画からネットスーパーでの買物までをシームレスに利用できるようになりました。「クラシル」のネットスーパー連携サービスを試してみました。(ライター:宮原智子)

イオンリテールと連携した「クラシルリテールプラットフォーム」

管理栄養士が監修したレシピを38,000件以上提供する国内No.1のレシピ動画アプリ「クラシル」。2020年11月には累計ダウンロード数が2,600万に達成した人気のアプリです。

クラシルを運営する株式会社delyでは2020年8月、小売事業者向けに初期費用・システム開発不要でネットスーパーを立ち上げられる「クラシルリテールプラットフォーム」の提供開始を発表。2020年12月3日よりイオンリテールとの連携を開始し、レシピ動画からイオンネットスーパーでの買物までをシームレスに利用できるようになりました。

気になるレシピ動画からネットスーパーへシームレスで連携

1.クラシルを立ち上げ、イオンネットスーパーのアカウントと連携させます。

ネットスーパーにアクセスするには、画面右下の「スーパー」をクリック。イオンネットスーパーの画面でログインします。

2.クラシルでレシピを検索します。動画ページを下にスクロールすると出てくる「スーパーで検索する」をクリック。

約38,000件の中からレシピを検索。「材料」の上に表示される「スーパーで検索する」をクリックして売り場へ。

3.動画レシピの料理を作る材料が表示されるので、必要なものを選んでカートに入れます。動画レシピの材料以外の商品を追加したい場合の操作はやや手間に感じました。

必要な材料をカートへ。「トマト2分の1個」というサイズはないとの表示…。クラシルに戻って「スーパー」のボタンからネットスーパーに入り直します。ネットスーパーで追加したい商品を検索してカートへ。

4.カートの中身を確認したら、配達日時の指定と支払い方法を指定し、支払い手続きを済ませます。

支払い画面で支払い手続きを済ませます。

一気通貫のソリューションとアプリからの送客力が特徴

小売事業者のデジタルトランスフォーメーション(DX)の支援を主目的としてはじまったクラシルリテールプラットフォーム。ネットスーパーの立ち上げ・運用から店舗販促のデジタル化までをクラシルが一貫してサポートしています。

特徴は、基幹システムの構築から、アプリ・Webの注文フロント、ピッキング作業管理、配送ドライバー管理までを一気通貫でシステム開発し、専門人材による横断的なサポートが受けられる点。

また、累計ダウンロード数2,600万を誇る国内No.1レシピ動画サービスから送客が図れる点は大きなメリットです。

小売業のDX化を支援するプラットフォームの今後に注目

2020年8月には、献立提案アプリ「タベリー」を展開していた10X(テンエックス)が、開発不要でネットスーパーを立ち上げられる「Stailer」の提供を開始。イトーヨーカドーが導入し、ネットスーパーアプリを展開しました。

小売業のDXを推進するネットスーパーシステム「Stailer」

一方のクラシルはレシピ動画サービス発と、いずれもレシピ提案アプリからスタートしている点が共通しており、興味深いところです。

コロナ禍でネットスーパーの需要は高まっているものの、自社でシステム開発をするのはハードルが高い。そんな事業者をサポートするネットスーパーの垂直立ち上げサービスは、今後も要注目の分野といえそうです。

業界誌編集長が語る、コロナ禍でも好調な食品スーパーとドラッグストアの未来

2020年は新型コロナウィルスの影響で多くの小売業が業績不振に苦しむ中、スーパーマーケット(SM)とドラッグストア(DgS)は順調に業績を伸ばしています。2020年11月6日、ロコガイドとニューフォーマット研究所共催で行われたオンラインセミナーでは、業界専門媒体編集長の2名がコロナ禍でも成長を続けるSMとDgSの強みや課題、未来について語りました。不安定な社会情勢において、これからのSMとDgSはどのような未来を切り拓いていくのでしょうか。

コロナ禍で強みを発揮したスーパーマーケット

竹下:私どもロコガイドでは、チラシ・買い物情報サービスの『トクバイ』と地域情報『ロコナビ』、ウェブメディア『リテールガイド』の運営を行なっています。私からはスーパーマーケット(SM)の強みや課題、未来についてお話します。

SMの大きな強みは、需要が再生産される「食」をメイン商材としていること、かつ総合業態であるということです。生鮮食品・惣菜は取り扱いの難易度が高いため他社から参入されにくく、業績のブレが極めて少ないといえます。

今回のコロナ禍でもSMは業績絶好調の企業が続出しました。外出自粛によって買い物の頻度が減りまとめ買いが増え、「行くなら1店で済ませたい」という消費者の意識も働き、部門を超えたワンストップショッピング業態であるSMが一番店として支持されました。低価格での提供や、タッチレス・コンタクトレスで購入できる点も強みになりました。

上記のグラフは既存店の売上状況を示したものです。コロナが表面化してきた2月に惣菜系が一気に上がり、その後「ばら売りができない」「イートインが使えない」といった理由などから大きく下がっています。しかし巣ごもり需要の高まりや家庭での調理の機会が増えたことなどにより素材系が一気に上がり、総売上は非常に上がりました。ある部門で下がっても他部門でカバーできる、まさに総合業態の強みが発揮されたといえるでしょう。

コロナ影響後に再燃が予想されるスーパーマーケットが抱える問題とは

竹下:コロナの影響が落ち着いた後には、これまでSMが抱えていた問題が再燃する可能性があります。

まずはオーバーストア状態であるという問題です。現在人口が約1億2,500万人に対してSMの数は約2万2,000店。商圏人口5,000人代という中で商売を成立させなければなりません。

また少子高齢化と世帯人数減少の問題もあります。これまで家族をターゲットとした商売で成長してきたSMですが、単身や少人数世帯のニーズにも合う商売をする必要が出てきました。消費の傾向も多様化し、「マス」をおさえる以上の対応が求められるようになってきています。加えて地方の過疎化にも対応していかなければなりません。

こういった問題を踏まえてこれからSMが目指すのは、小商圏かつ高シェアのフォーマットです。商圏内1人1人に1日3食分、ハレでもケでも利用してもらうことを理想として、徹底的に需要を洗い出す必要があります。さらにネットも出てきている中で、リアルの店舗に来店してもらうためには何が必要なのかも考えていかなければなりません。

「食の機会とシェアの獲得」がスーパーマーケットの未来を拓く

竹下:これらの課題解決の決め手となるのが、食の「機会」と「シェア」の獲得です。

ここで1つ目のポイントとなるのが惣菜の強化です。惣菜は今コロナの影響で打撃を受けていますが、コロナ前には伸び盛りで10兆円産業になり、構成比でも10%を超えています。刺身やカット野菜も含めると20%程度は惣菜的なものになっているという話もあります。生鮮部門が加工度を高めて惣菜まで提供する動きも出てきて、精肉部門が惣菜をやったり鮮魚部門が寿司を提供したりしています。

2つ目のポイントは食事の「場」の提供です。イートインを拡大してその場で食べてもらったり、オーダーを受けて作りたての惣菜を提供したりする動きも出てきています。ただし生鮮や惣菜の取り扱いは難易度が高く販売管理費も高いため、この動きはさらに非効率な赤字体質につながっていく可能性があります。そこをいかに成立させられるかが肝となります。

ポイントの3つ目は半加工品の再興です。惣菜まではいかない、ある程度調理が済んでいるミールキットなどが増えています。各生鮮部門から素材を集めてセットにしたものや、レンジアップすればそのまま惣菜になるものなども出てきています。

ポイント4つ目は販売期限長期化への挑戦で、アウトパックによる冷蔵・冷凍食品を積極的に取り入れています。ベニマルでは生鮮を店内で急速冷凍したり、イオンリテールではフランスの冷凍食品スーパーであるピカールの商品を取り入れたりする動きがあります。ただし冷凍食品は取り扱い難易度が低く参入障壁が下がるため、DgSなどと競合する懸念があります。いかにSM独自の商品を開発して差別化を図るかがポイントになります。

ポイントの5つ目は、総合業態の強みを生かした売り場作りです。ワインとチーズと生ハムをまとめて置くなど、部門を超えた売り場作りをしている例もあります。また、災害対策の商品を各部門から集めてきてまとめて置くといった売り場構成も見られます。

ポイント6つ目はネットチャネルをどう成立させるか。ネットで利益を稼ぐのはなかなか難しい中で、ライフコーポレーションやヤオコーなどでは黒字になってきている店もあります。ライフはAmazonと提携していますし、オイシックスはサブクリプションモデルで成功しています。生協は定期購買が強いですね。ネットでは配送頻度の問題があり、お客様の都合と企業の都合をどれだけすり合わせて採算をとるかが重要になります。効率的なネットスーパーのモデルを構築できた企業が勝っていくのではないかと思います。

柔軟かつ人口減少に強いビジネスモデルで伸びるドラッグストア

野間口:ニューフォーマット研究所の野間口と申します。私どもでは雑誌『月刊マーチャンダイジング』の発行とウェブメディア『MD NEXT』の運営をしています。私からはドラッグストア(DgS)の強みや弱み、未来についてお話します。

DgSの強みとして高齢化、人口減少に強いビジネスモデルを開発できることがあります。現役世代の人口減少に伴って小売業の売上は縮小する傾向がある中でSMとDgSは売上を伸ばしており、DgSは2014年から2019年にかけて成長率141.8%という伸びを見せています。

高齢化、人口減少の中でもDgSが成長できる理由には、①調剤や介護用品など高齢者向け事業や商材が豊富であること、②日用雑貨の高付加価値化、③高粗利の医薬品、化粧品の部門が主力であること、④人口が少ないエリアでも採算がとれるフォーマット開発の4点が挙げられます。

「日用雑貨の高付加価値化」について説明しますと、例えばユニリーバのLUXビューティiDシリーズではニーズの多様化に合わせ、ヘアケアアイテムを9通りの組み合わせで選べる商品を展開しています。また「安心安全」「ナチュラル志向」といった付加価値を付けた商品を作り、マス商品の1.5倍から2倍の単価設定をしています。このように、人口減少を単価アップでカバーするのは消費財メーカーのひとつのキーワードになっています。

「人口が少ないエリアで採算がとれるフォーマット開発」では、福井県に本社を置くゲンキーの事例を見てみましょう。ゲンキーではいろいろなものの完全標準化と重要業務の自前化により、過疎地域でも採算をとれるモデルを開発しています。

また、他業態のカテゴリーを取り入れていくラインロビングも強みとなっています。お客様のニーズや自社戦略に合わせて柔軟にビジネスモデルを変えていけるのはDgSならではの強みといえます。

ドラッグストアの弱みになりうる危険要素とは

野間口:DgSのメイン商材は衛生用品や食品などの生活必需品であることから、コロナ禍においても業績は全体的によく伸びました。その一方で、マツモトキヨシとココカラファインは不振でした。

不振の原因はインバウンド需要頼みのもろさにあります。売上構成比を見ると、マツキヨは約15%、ココカラは5%が免税売上で、この需要消失は大きなものでした。また両者とも都市型を主力としているため、リモートワークの導入でオフィスのある都市部は苦しみました。インバウンドなど好調なところに舵を切りすぎるのは危険要素になりうるということが今回のコロナ禍で分かりました。

調剤事業への過剰投資も危険要素のひとつです。調剤事業の市場規模は7.5兆円。かつ上位が寡占していないためこれを取りに行こうとしていますが、増大する社会保障費を国が抑えにかかることが予想されるため、収益性は低下していくと見られます。また薬剤師の給料が高く高コスト体質であること、団塊の世代が亡くなっていくことによる市場の縮小などから、調剤への過剰投資は長期的に見れば危険因子といえるでしょう。

次に高速出店の落とし穴。高速出店はオペレーションの緩みや過剰競争による疲弊につながる可能性があり、量産される店長のキャリアプランなども懸念要素となります。これらの危険要素がDgSの弱みではないかと思います。

模索を重ねて伸びたドラッグストア。さらなる成長に必要なこととは

野間口:DgSの模索期は、1973年にAJD(オールジャパンドラッグ)が実験店を出店することから始まります。当時は日用品もファミリーユースが主流でアイテムが少なく、またカテゴリーの考えが希薄で、メーカー主導で売り場を埋めていたという試行錯誤の時代でした。

1980年代末から始まった第1次成長期では上野に出店したマツモトキヨシが大ヒットし、DgSという業態名を日本中に知らしめました。当時、郊外では大店法により151坪以上の店は作れなかったため、150坪以下のDgSが主流でした。この頃はパーソナルユースの面が出てきて、アイテム数が豊富になってきた時期でもあります。また1997年には化粧品の再販制度が廃止になり、メーカー主導から脱却していろいろなメーカーの商品を売ったり、メーカーとの値引き交渉も行われたりするようにもなりました。現在のDgSの原型ができた時期といえます。

第二次成長期の1999年には大店法が廃止されます。大型のDgSに挑戦する企業が増える中、150坪を維持する店は300坪規模の店に取り囲まれて負けていくという時代でした。DgSが大規模化することでメーカーや卸との交渉術や販売技術、売り方の工夫が磨かれていった時代でした。

第三次成長期は2009年から現在にかけてです。この時期に伸びた企業はどこも改装により店舗年齢の若さを維持したという共通点があり、古くて狭い店を放置した企業は停滞しています。店舗年齢の若さ維持に加え、ラインロビングやPB商品開発、M&Aによる規模拡大も起こってきた時期です。

こうした模索期と成長期を経て伸びてきたDgSですが、ここからさらに成長するためには業態を進化させていく必要があります。

進化の方向性として、ひとつは先ほどゲンキーの例でも紹介した、人口減少エリアにも対応できる業態開発です。

次に地域医療、地域貢献も含めた調剤事業の強化。過剰投資は危険要素になりうると前述しましたが、非常に大きな市場ですので積極的に取りに行かねばなりません。

次にヘルス&ビューティの強化です。化粧品、医薬品の売り方を磨いたりPB商品を開発したりして伸ばしていく必要があります。

さらにグローバル化も重要です。日本は既に飽和市場で人口も減っていくので、業態の成長のためには人口の多いASEAN諸国に打って出ること。現在インバウンドの方は減っているものの、日本製や日本の商品に対するニーズは高いので越境ECの展開も考えられます。

もうひとつはデジタル化。ECとリアルの店舗の一体化は、今回のコロナをきっかけに相当進むと思います。日本のDXは遅れているといわれていますので、基幹システムも含めてそこを勝ち抜けたところが優位に立つだろうと思われます。

これらの方向性を単一ではなく、「調剤を強化しながらグローバルに打って出る」というように組み合わせて戦略を立てていくことも考えられます。

店は心のインフラをも担う場所、創業100年を経た東京の老舗「コモディイイダ」

今回は、東京・北区に本社を置く食品スーパー「コモディイイダ」の底抜けに明るいストソンにズームイン。全国でもラテン風のストソンは珍しく、加えてラップのパートがある楽曲は唯一無二。閉塞感のある昨今、売場に求められている“楽しい”ストソンはこれだ!?

みんなで買えばお得になる、共同購入プラットフォーム「KAUCHE(カウシェ)」

今回、「新しい売り方」調査隊!で取り上げるのは、共同購入プラットフォーム「KAUCHE(カウシェ)」。ソーシャルECとも呼ばれる共同購入。中国で急速に伸びているソーシャルECプラットフォーム「Pinduoduo(拼多多)」が契機となり、日本でも再び注目を集めつつあります。KAUCHE(カウシェ)の売り方を試してみました。(ライター:宮原智子)

家族や友人に「シェア買い」を促すアプリ「KAUCHE(カウシェ)」

KAUCHE(カウシェ)は、家族や友人と共同で商品を購入することで、定価よりも安価で手に入れることができる共同購入プラットフォームです。

ユニークなのは、購入したいと思った人が自分で共同購入グループをつくる点。グループURLをつくって、SNSなどで家族や友人にシェアして必要な人数を集めます。

各商品の「目標人数」に達したら、共同購入が成立。お得な価格で商品を手に入れることができるという仕組みです。

制限時間内に目標人数を集めよう!シェア買いにはゲーム性も

1.スマホにアプリをダウンロードし、ユーザー情報を登録します。

共同購入プラットフォーム「カウシェ」。2020年11月現在、商品ジャンルは飲料・食品が中心です。

2.ほしい商品を購入します。

通常のECのように、ほしい商品の購入手続きをします。

3.購入手続きが済むとグループURLが発行されます。このグループURLを家族や友人にSNSなどでシェア。共同購入に必要な目標人数を集めます。

(左)グループURLの発行画面。グループURLはSNSやLINEでシェアします。
(右)画面に表示されている「残り時間」内に目標人数を集めます。スリリングでゲーム性を感じます。

4.グループURLをシェアした人が商品を購入し、目標人数に到達したら、購入が成立します。制限時間内に目標人数に到達しない場合は、購入がキャンセルされます。

目標人数に到達すると、はじめて行動購入が成立。目標人数に到達しないまま制限時間が過ぎると、残念ながら購入はキャンセルとなります。

再び注目を浴び始めた「共同購入」

共同購入は、お客にとっては「商品を通常よりも安価に購入できる」、事業者にとっては「新規顧客の開拓につながる」「仕入れ個数の把握・仕入れコストの削減につながる」といったメリットがあります。

ECでの共同購入といえば、かつて楽天市場がその仕組みを取り入れていたほか、米グルーポンやポンパレがクーポンの共同購入サービスを提供していました。

しかし、「共同購入の最低購入価格の水増し」「商品のダウングレード」といった出品者のモラル低下が起こるなど課題が散見されるようになり、サービスからの撤退を余儀なくされる事業者が相次いだのです。

しかしいま、ソーシャルECとも呼ばれる共同購入の仕組みが再び注目されはじめています。その背景には、中国で伸びている共同購入プラットフォーム「Pinduoduo(拼多多)」の存在があります。

中国で躍進する共同購入プラットフォーム「Pinduoduo(拼多多)」

中国で最大のユニークユーザー数を誇るAlibabaのショッピングモール「タオバオ」。Pinduoduoはそのタオバオに次ぐ中国第2位のECプラットフォームです。Pinduoduoは創業からわずか3年で上場を果たし、その後も年間2倍近くの成長を記録しています。

日本では2020年9月に「カウシェ」、翌10月に「hours」と共同購入プラットフォームが次々リリースされています。いずれもビジネスモデルとして参考にしたのはPinduoduo。これまでの共同購入のように、「見知らぬ人」と商品を共同購入するのではなく、家族や友人といった身近な人と一緒に商品を購入するという違いがあります。

ソーシャルECとも呼ばれる共同購入の仕組みは、事業者にとっても新しい集客の手段として定着していくのか。今後、要注目です。