オンラインカウンセリングで接客の選択肢を広げる「オルビス」
コロナ禍でリアル店舗への来客が減少する中、それまで対面での接客を行ってきた百貨店やアパレルで、オンラインでの接客を取り入れる動きがあります。それは、化粧品メーカーも例外ではありません。
化粧品メーカー「オルビス」では、オンラインカウンセリングを展開。オンラインコミュニケーションサービス「ZOOM」やチャットを活用し、ビューティーアドバイザー(以下、BA)がメイクの方法や商品の選び方などを無料でアドバイスしています。
画面の向こうでメイクを実践「ZOOM」を活用したオンラインカウンセリング
「ZOOM」を活用したオンラインカウンセリングを受けるには、予約が必要です。手順は次のとおりです。
1.応募受付フォームをクリックし、カウンセリングを受ける日時を選びます。
2.予約した日時になったらURLにアクセスし、カウンセリングを受けます。
3.カウンセリング後、レポートとともに紹介された商品のURLがメールで送られます。
今回、BAには「オンライン映えするメイク方法」について相談をしました。画面越しに見た肌の色味や顔立ちをチェックしたあと、おすすめの商品を紹介。それをどう使えばオンラインで映えるメイクができるか、BAが自身の顔を使ってメイク方法を実践してくれました。
日常のメイクとオンライン用のメイク、方法を変えることで実際にどんな違いが出るかを画面越しに確認することができるので、お客としても納得できる買い物につながります。相談の進め方も丁寧で、不明点がないか、ほかに聞きたいことはないか、随時確認しながら進行。
所要時間約30分間のカウンセリングの中で、こちらが相談したことに対して十分なアドバイスを得ることができ、追加の質問にも丁寧に回答してくれたことから、高い満足度が得られるちょうどよい時間に感じました。所要時間がもしも20分間だったら、短いと感じていたでしょう。
また、1on1である分、店頭で接客を受けているよりも人目を気にせず、落ち着いて相談できる感覚がありました。
商品の販売への導線はカウンセリング後に送られるメールのみ
このオンラインカウンセリングでは、商品の販売への導線はカウンセリング後に送られてくるメールのみでした。
オンラインでの1on1は、周りに他者の目がない分ある種閉鎖的な状況です。もしもカウンセリング中に商品購入のURLや購入ボタンを提示されていたら、「買わなければいけないのではないか」という気まずさを感じて満足度の低下につながっていたかもしれません。
ただ、カウンセリング終了からレポートメールが送られてくるまではやや時間差があったため、人によっては購入意欲が低下し、購入につながらないケースもあるのではないでしょうか。カウンセリング後、終了画面から商品購入画面につながる導線を作るなどの工夫をする必要性を感じました。
オンラインカウンセリングのターゲットは既存顧客か
筆者がこのオンラインカウンセリングを知ったきっかけは、オルビスからのメルマガでした。オルビスのサイトではオンラインカウンセリングが大きく取り上げられておらず、画面を最下部までスクロールしなければ見つけることができないほどです。
メルマガは、「オルビスのサイトなどでメルマガ登録をした」か、「オルビスの商品をオンラインで購入したことがある」人に届くため、オンラインカウンセリングは既存顧客に向けて発信されているものと思われます。
チャット相談やアプリでの肌状態チェックなど多角的な試みを展開
また、アプリを使って5年後〜20年後に予想される肌悩みをAIで分析する「AI未来肌シミュレーション」や、自分の顔立ちにあった眉の形を提案する「AIアイブロウシュミレーター」、以前紹介した「パーソナルAIメイクアドバイザー」を提供しています。
店頭では、BAによるメイクカウンセリングのほか、「AI未来肌シミュレーション」「パーソナルファンデーションカラーチェック」「スキンチェック」といった接客メニューを整えているオルビスですが、それらのほとんどをオンラインでカバーしています。
オンラインでも専門家による質の高い接客が可能
オルビスの事例では、専門スタッフによる質の高い接客がオンラインでも実現可能なことを示しています。コロナ禍で対面接客の機会が減ったことで、ECに注力しはじめた現場もあるでしょう。商品選びの際、口コミだけでなく実際に専門スタッフに相談できることは、ECの弱点を補うという点から見ても有効です。ZOOMなどコミュニケーションツールを活用したり、アプリを提供したりといった多角的なアプローチで、オンライン接客の顧客満足度を高めてみてはいかがでしょうか。